(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164581
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】口元コーキング装置、口元コーキング構造及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20241120BHJP
E21D 9/04 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E21D9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080174
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】瀧 穂高
(72)【発明者】
【氏名】安東 直希
【テーマコード(参考)】
2D040
2D054
【Fターム(参考)】
2D040BB09
2D040CB03
2D040DA11
2D040DC02
2D054AC15
2D054FA07
(57)【要約】
【課題】地山穿孔に打設された長尺補強管に複数本の注入管で注入材を注入する場合に、穿孔の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる。
【解決手段】地山100の穿孔101に打設された長尺補強管104に内挿され、注入後に膨張する注入材105を注入する複数本の注入管2と、複数本の注入管2を束ねるようにして穿孔101の口元近傍位置に対応する位置に周設される筒状パッカー3と、筒状パッカー3の内部の位置で、少なくとも1本の注入管2に形成されている注入材吐出孔21と、注入材吐出孔21を覆うメッシュ材4を備え、注入材吐出孔21とメッシュ材4を介して内部に注入された注入材105の発泡膨張で筒状パッカー3が膨張する口元コーキング装置1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の穿孔に打設された長尺補強管に内挿され、注入後に膨張する注入材を注入する複数本の注入管と、
前記複数本の注入管を束ねるようにして前記穿孔の口元近傍位置に対応する位置に周設される筒状パッカーと、
前記筒状パッカーの内部の位置で、少なくとも1本の前記注入管に形成されている注入材吐出孔と、
前記注入材吐出孔を覆うように設けられるメッシュ材とを備え、
前記注入材吐出孔と前記メッシュ材を介して内部に注入された前記注入材の発泡膨張で前記筒状パッカーが膨張することを特徴とする口元コーキング装置。
【請求項2】
前記筒状パッカーが布製であることを特徴とする請求項1記載の口元コーキング装置。
【請求項3】
地山の穿孔に打設された長尺補強管に内挿された複数本の注入管と、
前記複数本の注入管を束ねるようにして前記穿孔内の前記穿孔の口元近傍位置に周設された筒状パッカーと、
前記筒状パッカーの内部の位置で、少なくとも1本の前記注入管に形成されている注入材吐出孔と、
前記注入材吐出孔を覆うように設けられるメッシュ材とを備え、
前記注入材吐出孔と前記メッシュ材を介して内部に注入された前記注入材の発泡膨張で前記筒状パッカーが膨張し、
膨張状態の前記筒状パッカーが前記穿孔の周壁に押圧されていることを特徴とする口元コーキング構造。
【請求項4】
地山に穿孔を形成するようにして長尺補強管を打設し、前記長尺補強管の端末補強管を前記穿孔の孔口よりも奥に配置する第1工程と、
前記長尺補強管に複数本の注入管を内挿すると共に、前記複数本の注入管を束ねるように周設された筒状パッカーを前記端末補強管の後端よりも後側に配置する第2工程と、
前記複数本の注入管に注入材を圧送し、前記筒状パッカーの内部の位置で少なくとも1本の前記注入管に形成された注入材吐出孔と前記注入材吐出孔を覆うように設けられたメッシュ材とを介して前記筒状パッカーの内部に前記注入材を注入し、注入された前記注入材の発泡膨張で前記筒状パッカーを膨張させて前記穿孔の口元近傍位置の周壁に押圧する第3工程とを備えることを特徴とする口元コーキング構造の構築方法。
【請求項5】
前記注入材としてウレタン系注入材、前記筒状パッカーとして織布製筒状パッカーを用いることを特徴とする請求項4記載の口元コーキング構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば注入式長尺先受け工法(AGF工法)の長尺補強管に注入管で注入材を注入する際に穿孔の口元部をコーキングする口元コーキング装置、口元コーキング構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注入式長尺先受け工法(AGF工法)の長尺補強管に注入材を注入する場合、例えば
図4に示すように、地山201に吐出孔が形成された複数の補強管を連結した長尺補強管203を地山201の穿孔202に打設し、注入材吐出部205が長さ方向で異なる位置に設けられた複数の注入管204をキャップ206で保持し、キャップ206に形成されたねじ部を長尺補強管203の端末管207の端末に形成されたねじ部に螺着し、各々の注入管204の注入材吐出部205を長尺補強管203の内部で長尺補強管203の長手方向の異なる位置に配置している。
【0003】
そして、AGF工法では、先頭管に設けられた管外径より僅かに大きいビットで掘り進めながら補強管を引っ張り込んで打設していくという特性上、穿孔の孔径は長尺補強管203の外径よりも大きくなり、又、穿孔202の口元部の周辺の地山201は荒れるため、穿孔202の口元部と長尺補強管203の端末管207との間の隙間208に作業員が人力でウェス等を詰めて口元コーキング209を形成し、注入管204で注入する注入材が隙間208から漏れ出さないように口元コーキング209で隙間208を塞いている。
【0004】
尚、特許文献1の
図10及び段落[0004]には、長尺補強管を長さ方向に複数のゾーンに分け、各ゾーンにおいて開口するように長さが異なる複数の注入管を長尺補強管に内挿し、地山と補強管の口元部の隙間を口元コーキングで塞ぎ、各注入管で長尺補強管の内部に注入材を注入して補強管の吐出孔から注入材を吐出させ、周辺地山に固結領域を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、穿孔202の口元部と長尺補強管203の端末管207との間の隙間208に作業員が人力でウェス等を詰めて口元コーキング209を形成する作業は非常に労力と時間を要する作業である。また、例えばAGF工法の長尺補強管は切羽のアーチ形状に沿って斜め上向きに打設してあるため、人力でウェス等を詰めて口元コーキング209を形成する作業は高所で危険な作業となる場合もある。また、作業員の人力に依拠する口元コーキングは不十分な口元コーキングになり易い。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、地山穿孔に打設された長尺補強管に複数本の注入管で注入材を注入する場合に、穿孔の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる口元コーキング装置、口元コーキング構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の口元コーキング装置は、地山の穿孔に打設された長尺補強管に内挿され、注入後に膨張する注入材を注入する複数本の注入管と、前記複数本の注入管を束ねるようにして前記穿孔の口元近傍位置に対応する位置に周設される筒状パッカーと、前記筒状パッカーの内部の位置で、少なくとも1本の前記注入管に形成されている注入材吐出孔と、前記注入材吐出孔を覆うように設けられるメッシュ材とを備え、前記注入材吐出孔と前記メッシュ材を介して内部に注入された前記注入材の発泡膨張で前記筒状パッカーが膨張することを特徴とする。
これによれば、注入材吐出孔が形成されている注入管に注入材を注入すれば自動的に筒状パッカーが膨張して穿孔の口元部に口元コーキングを形成することができ、口元コーキングを形成する作業に要する労力を飛躍的に削減し、作業時間を大幅に短縮することができる。また、高所で人力で行う口元コーキングを形成する危険な作業を無くすことができる。また、作業員の人力に依拠せずに口元コーキングを形成することができので、確実性の高い口元コーキングを形成することができる。即ち、地山穿孔に打設された長尺補強管に複数本の注入管で注入材を注入する場合に、穿孔の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる。
【0009】
本発明の口元コーキング装置は、前記筒状パッカーが布製であることを特徴とする。
これによれば、筒状パッカーを布製とすることにより、注入材の発泡膨張で筒状パッカーが膨張する際に筒状パッカー内のエアを外に逃がし、筒状パッカーをスムーズに膨張させることができると共に、発泡膨張した注入材を通過させて口元付近の荒れた地山にリークさせる懸念なく筒状パッカーを安定して膨張させることができる。また、穿孔の孔壁に凹凸があってもしっかりと密着させることができると共に、注入材が孔口から漏れ出すことをより確実に防止することができ、地山補強効果の確実性も高めることができる。また、
【0010】
本発明の口元コーキング構造は、地山の穿孔に打設された長尺補強管に内挿された複数本の注入管と、前記複数本の注入管を束ねるようにして前記穿孔内の前記穿孔の口元近傍位置に周設された筒状パッカーと、前記筒状パッカーの内部の位置で、少なくとも1本の前記注入管に形成されている注入材吐出孔と、前記注入材吐出孔を覆うように設けられるメッシュ材とを備え、前記注入材吐出孔と前記メッシュ材を介して内部に注入された前記注入材の発泡膨張で前記筒状パッカーが膨張し、膨張状態の前記筒状パッカーが前記穿孔の周壁に押圧されていることを特徴とする。
これによれば、注入材吐出孔が形成されている注入管に注入材を注入すれば自動的に筒状パッカーが膨張して穿孔の口元部に口元コーキングを形成することができ、口元コーキングを形成する作業に要する労力を飛躍的に削減し、作業時間を大幅に短縮することができる。また、高所で人力で行う口元コーキングを形成する危険な作業を無くすことができる。また、作業員の人力に依拠せずに口元コーキングを形成することができので、確実性の高い口元コーキングを形成することができる。即ち、地山穿孔に打設された長尺補強管に複数本の注入管で注入材を注入する場合に、穿孔の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる。
【0011】
本発明の口元コーキング構造の構築方法は、地山に穿孔を形成するようにして長尺補強管を打設し、前記長尺補強管の端末補強管を前記穿孔の孔口よりも奥に配置する第1工程と、前記長尺補強管に複数本の注入管を内挿すると共に、前記複数本の注入管を束ねるように周設された筒状パッカーを前記端末補強管の後端よりも後側に配置する第2工程と、前記複数本の注入管に注入材を圧送し、前記筒状パッカーの内部の位置で少なくとも1本の前記注入管に形成された注入材吐出孔と前記注入材吐出孔を覆うように設けられたメッシュ材とを介して前記筒状パッカーの内部に前記注入材を注入し、注入された前記注入材の発泡膨張で前記筒状パッカーを膨張させて前記穿孔の口元近傍位置の周壁に押圧する第3工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、複数本の注入管に注入材を圧送すれば自動的に筒状パッカーが膨張して穿孔の口元部に口元コーキングを形成することができ、口元コーキングを形成する作業に要する労力を飛躍的に削減し、作業時間を大幅に短縮することができる。また、高所で人力で行う口元コーキングを形成する危険な作業を無くすことができる。また、作業員の人力に依拠せずに口元コーキングを形成することができので、確実性の高い口元コーキングを形成することができる。即ち、地山穿孔に打設された長尺補強管に複数本の注入管で注入材を注入する場合に、穿孔の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる。更に、長尺補強管の内部に注入材を注入するように複数本の注入管に注入材を圧送すれば、自動的に筒状パッカーが膨張して穿孔の口元部に口元コーキングを形成することができ、独立した口元コーキング形成工程を行う必要がなくなるため、地山補強全体の施工効率を高めることができる。
【0012】
本発明の口元コーキング構造の構築方法は、前記注入材としてウレタン系注入材、前記筒状パッカーとして織布製筒状パッカーを用いることを特徴とする。
これによれば、注入材としてウレタン系注入材を用いることにより、先行して膨張状態の筒状パッカーで口元コーキングを形成し、穿孔の孔奥に注入材を適切に注入することを容易に行うことができる。また。筒状パッカーとして織布製筒状パッカーを用いることにより、注入材の発泡膨張で筒状パッカーが膨張する際に筒状パッカー内のエアを外に逃がし、筒状パッカーをスムーズに膨張させることができると共に、発泡膨張した注入材を通過させずに筒状パッカーを安定して膨張させることができる。更に、穿孔の孔壁に凹凸があってもしっかりと密着させることができると共に、注入材が孔口から漏れ出すことをより確実に防止することができ、地山補強効果の確実性も高めることができる。更に、必要に応じて筒状パッカーの糸の太さ若しくは繊度、目開き、開口率の調整、選択を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地山穿孔に打設された長尺補強管に複数本の注入管で注入材を注入する場合に、穿孔の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の口元コーキング装置が用いられる注入式長尺先受け工(AGF工)を示す縦断説明図。
【
図2】(a)は実施形態の口元コーキング装置の斜視説明図、(b)は同図(a)の口元コーキング装置における注入材吐出孔とメッシュ材の周辺を示す拡大図。
【
図3】(a)~(c)は本発明の実施形態の口元コーキング構造を構築する工程を説明する工程説明図。
【
図4】(a)~(c)は従来の注入式長尺先受け工法における口元コーキング処理を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態の口元コーキング装置及び口元コーキング構造〕
本発明による実施形態の口元コーキング装置による口元コーキング構造は、例えば、
図1に示す注入式長尺先受け工(AGF工)に設けられる。
図1の注入式長尺先受け工では、切羽102直近の地山100から斜め前方に向けて、3m程度の部分鋼管である補強管103を4本程度連結しながら穿孔101を形成するように打設して長尺補強管104が形成され、長尺補強管104の周囲の地山100に注入材105を浸透させて固結領域が形成され、これから掘削するトンネル空間Tの周囲の地山100が傘のように覆って補強されている。注入式長尺先受け工法の施工の際には、通常、トンネル掘進時に、1m程度掘り進む毎に支保工106を建て込んで吹付コンクリート107を施すと共に、10m程度掘り進む毎に長尺補強管104を打設する。
【0016】
注入式長尺先受け工法を無拡幅で施工する場合、切羽102の直近の地山100から斜め前方に向けて長尺補強管104を打設することにより、次段、次次段の掘進サイクルで掘削すべき地山100内に、長尺補強管104を構成する端末部分鋼管である端末補強管103aとその周囲の注入材105による固結領域が配置される。この端末補強管103aには、一般的にスリットや環状溝が形成されたものが用いられ、トンネル掘進にともなって邪魔になった端末補強管103aとその周囲の注入材105による固結領域は除去される。
【0017】
また、本実施形態の口元コーキング装置1は、
図1~
図3に示すように、地山100の穿孔101に打設された長尺補強管104に内挿され、注入後に膨張する注入材105を注入する注入ホースのような複数本の注入管2と、複数本の注入管2を束ねるようにして穿孔101の口元近傍位置に対応する位置に周設される筒状パッカー3と、筒状パッカー3の内部の位置で、少なくとも1本の注入管2に形成されている注入材吐出孔21と、注入材吐出孔21を覆うように設けられるメッシュ材4を備える。
【0018】
図示例では3本の注入管2を束ねるようにして筒状パッカー3が周設されており、筒状パッカー3の前端部と後端部とをそれぞれ束ねた複数本の注入管2の外側に密着させ、この密着状態で筒状パッカー3の前端部と後端部に接着テープ5を巻き付けることにより、筒状パッカー3が複数本の注入管2に対して固定されている。筒状パッカー3は、例えば穿孔101の孔口から500mm~1000mm程度の位置の穿孔101内に配置されるようにする。
【0019】
筒状パッカー3は好適には布製の筒状パッカー3とするとよい。筒状パッカー3を布製とすることにより、後述するように発泡膨張して硬化する注入材105の発泡膨張で筒状パッカー3が膨張する際に筒状パッカー3内のエアを外に逃がし、筒状パッカー3をスムーズに膨張させることができると共に、発泡膨張した注入材105を通過させて口元付近の荒れた地山にリークさせる懸念なく筒状パッカー3を安定して膨張させることができる。
【0020】
更に、筒状パッカー3を布製とする場合、糸の太さ若しくは繊度、目開き、開口率を適切に調整可能或いは適切に選択可能であることから、より好適には織布製の筒状パッカー3とするとよい。織布製の筒状パッカー3の好適例としては、原糸:Ny66、繊度:470dtex、フィラメント:72f、密度(タテ):51本/インチ(JIS L 1096)、密度(ヨコ):51本/インチ(JIS L 1096)、厚み:0.32mm(JIS L 1096)、重量:194g/m2(JIS L 1096)等の高密度の基布を用いるとよい。
【0021】
また、図示例では筒状パッカー3の内部の位置で1本の注入管2に形成されている注入材吐出孔21を覆うようにして、注入材吐出孔21を有する注入管2にメッシュ材4が周設されており、メッシュ材4は図示省略する接着テープを前端部と後端部に巻き付けられ、注入管2に固定されている。メッシュ材4には、例えば幅50~80mm程度のステンレスメッシュが用いられる。ステンレスメッシュのメッシュ材4は本発明に用いる発泡膨張性注入材の仕様により開き目の間隔等が適宜選定されるが、例えば注入材にシリカレジン系注入材を用いる場合のメッシュ材4の好適例としては、線径:0.1~0.4mm、メッシュ数:10~80(mesh/inch)、開き目(線材間隔):0.1~0.9mmとするとよく、より好適には、線径:0.16mm、メッシュ数:60(mesh/inch)、開き目(線材間隔):0.26mmとするとよい。
【0022】
口元コーキング装置1では、注入管2とその注入材吐出孔21、この注入材吐出孔21を覆うように設けられたメッシュ材4を介して筒状パッカー3の内部に注入材105が注入され、注入材105が筒状パッカー3の内部で発泡膨張することにより筒状パッカー3が膨張するようになっている。発泡膨張した注入材105は、メッシュ材4で注入材吐出孔21を介して注入管2に逆流することが防止され、安定した膨張状態の筒状パッカー3が穿孔101の周壁に押圧されるようになっている。
【0023】
次に、本実施形態の口元コーキング装置1を用いて口元コーキング構造を構築する方法について説明する(
図3参照)。先ず、
図3(a)、(b)に示すように、地山100に穿孔101を形成するようにして長尺補強管104を打設し、長尺補強管104の端末補強管103aを穿孔101の孔口よりも穿孔101内の奥に配置する。
【0024】
図示例では、打設機のガイドシェル108上に必要に応じて設けられた押し具109と削孔ロッド110を用い、注入材105の吐出孔1031が周壁に点在形成された部分鋼管の補強管103を表面に吹付コンクリート107が設けられた地山100に打ち込む。そして、穿孔101を形成するようにして部分鋼管の補強管103を打ち込むと共に、例えば4本の補強管103を連結するように打ち込むことにより、長尺補強管104を形成、打設している。尚、補強管103の部分鋼管には、例えば外径114.3mm、厚み6.0mm、4本繋ぎの長尺補強管104にした状態の全長が12700mmになるものや、外径76.3mm、厚み4.2mm、4本繋ぎの長尺補強管104にした状態の全長が12690mmになるもの等を用いることができる。
【0025】
地山100に長尺補強管104を打設して削孔ロッド110を長尺補強管104から引き抜いた後、
図3(b)に示すように、長尺補強管104に3本等の複数本の注入管2を内挿すると共に、複数本の注入管2を束ねるように周設された筒状パッカー3を端末補強管103aの後端よりも後側に配置する。
【0026】
筒状パッカー3を端末補強管103aの後端よりも後側の穿孔101内に配置した状態で複数本の注入管2に注入材105を圧送し、例えば3本の注入管2を長尺補強管104の内挿する場合には、3本の注入管2に同時並行して注入材105を圧送し、複数本の注入管2による注入材105の注入を開始する。
【0027】
複数本の注入管2で注入材105の注入を開始すると、まず、筒状パッカー3の内部の位置で少なくとも1本の注入管2に形成された注入材吐出孔21と注入材吐出孔21を覆うように設けられたメッシュ材4とを介して筒状パッカー3の内部に注入材105が注入される。筒状パッカー3の内部に注入された注入材105は発泡膨張してポリマーセルを形成し、メッシュ材4で注入管2に逆流することが防止されることにより、筒状パッカー3を膨張させる。
【0028】
内部の注入材105の発泡膨張で膨張状態になった筒状パッカー3は穿孔101の口元近傍位置の周壁に押圧し、膨張状態の筒状パッカー3で穿孔101に口元コーキングが形成される(
図3(c)参照)。また、注入材吐出孔21を有する注入管2で注入材吐出孔21から吐出されない注入材105や、他の注入管2で注入される注入材105は、穿孔101の所定位置に配置された注入管2の開口端から長尺補強管104の内部に吐出され、更に、補強管103の吐出孔1031を介して地山100に吐出される。地山100に吐出された注入材105は地山100に浸透し、発泡膨張、硬化することにより、周囲の地山100に注入材105による固結領域が形成される(
図1参照)。
【0029】
ここで膨張状態の筒状パッカー3で口元コーキングを形成する際に注入する注入材105には、二液混合タイプのウレタン系注入材を用いると好適であり、特に二液混合タイプのシリカレジン注入材を用いるとより好適である。二液混合タイプのウレタン系注入材を用いることにより、クリームタイム(発泡開始時間)、ライズタイム(発泡終了時間)、ゲルタイム(樹脂化時間)、発泡倍率を調整し、膨張状態の筒状パッカー3で口元コーキングを形成してから穿孔101の孔奥に注入材105が回るようにすることが容易となる。
【0030】
注入材105をシリカレジン注入材の好適例としては、主成分であるA液(珪酸ソーダ)とB液(ポリイソシアネート)の配合比率(容積比)がA液:B液=1:1(±0.1)、自由発泡倍率が7±3倍、圧縮強度が2.5±0.5N/mm2(4倍発泡時)、曲げ強度が2.0±0.5N/mm2(4倍発泡時)、ライズタイム(発泡終了時間)が60±15秒(25℃)等の材料を用いることができる。
【0031】
本実施形態によれば、注入材吐出孔21が形成されている注入管2に注入材105を注入すれば自動的に筒状パッカー3が膨張して穿孔101の口元部に口元コーキングを形成することができ、口元コーキングを形成する作業に要する労力を飛躍的に削減し、作業時間を大幅に短縮することができる。また、高所で人力で行う口元コーキングを形成する危険な作業を無くすことができる。また、作業員の人力に依拠せずに口元コーキングを形成することができので、確実性の高い口元コーキングを形成することができる。即ち、地山穿孔101に打設された長尺補強管104に複数本の注入管2で注入材を注入する場合に、穿孔101の口元部を簡単、安全且つ確実にコーキングすることができる。
【0032】
また、長尺補強管104の内部に注入材105を注入するように複数本の注入管2に注入材105を圧送すれば、自動的に筒状パッカー3が膨張して穿孔101の口元部に口元コーキングを形成することができ、独立した口元コーキング形成工程を行う必要がなくなるため、地山補強全体の施工効率を高めることができる。
【0033】
また、筒状パッカー3を布製とすることにより、穿孔101の孔壁に凹凸があってもしっかりと密着させることができ、注入材105が孔口から漏れ出すことをより確実に防止することができ、地山補強効果の確実性も高めることができる。また、注入材105としてウレタン系注入材を用いることにより、先行して膨張状態の筒状パッカー3で口元コーキングを形成し、穿孔101の孔奥に注入材105を適切に注入することを容易に行うことができる。また、筒状パッカー3として織布製の筒状パッカー3を用いることにより、必要に応じて筒状パッカー3の糸の太さ若しくは繊度、目開き、開口率の調整、選択を容易に行うことができる。
【0034】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や下記の更なる変形例も含まれる。
【0035】
例えば本発明で用いられる注入材は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、上記実施形態のシリカレジン注入材等のウレタン系注入材以外の注入材を用いることも可能である。また、本発明で用いられる筒状パッカーは本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、上記実施形態の織布製の筒状パッカー3、布製の筒状パッカー3以外の筒状パッカーを用いることも可能である。また、本発明は注入式長尺先受け工法(AGF工法)を施工する際に用いると好適であるが、適用可能な範囲でAGF工法以外の補助工法で用いることも可能である。また、本発明における注入材吐出孔が形成された注入管は複数本設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば注入式長尺先受け工法(AGF工法)の長尺補強管に注入管を内挿して注入材を注入する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…口元コーキング装置 2…注入管 21…注入材吐出孔 3…筒状パッカー 4…メッシュ材 5…接着テープ 100…地山 101…穿孔 102…切羽 103…補強管 103a…端末補強管 1031…吐出孔 104…長尺補強管 105…注入材 106…支保工 107…吹付コンクリート 108…ガイドシェル 109…押し具 110…削孔ロッド 201…地山 202…穿孔 203…長尺補強管 204…注入管 205…注入材吐出部 206…キャップ 207…端末管 208…隙間 209…口元コーキング T…トンネル空間