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特開2024-16460ヒートシール機能を有する不織布シート及び水切り袋の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016460
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ヒートシール機能を有する不織布シート及び水切り袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20240131BHJP
   B65F 1/00 20060101ALI20240131BHJP
   D04H 1/4258 20120101ALI20240131BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20240131BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20240131BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20240131BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20240131BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
D06M15/263
B65F1/00 102F
D04H1/4258
D04H1/425
D06M15/227
D06M15/333
B01D23/02 C
B01D39/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118603
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】591196315
【氏名又は名称】金星製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】小久保 英恵
(72)【発明者】
【氏名】友永 淳
(72)【発明者】
【氏名】上西 浩平
【テーマコード(参考)】
3E023
4D019
4D116
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
3E023CA10
3E023DA10
3E023FA01
4D019AA03
4D019BA12
4D019BB03
4D019CA04
4D019CB06
4D116AA30
4D116BB01
4D116BC17
4D116DD01
4D116FF15B
4D116GG13
4D116KK01
4D116UU01
4D116VV19
4D116ZZ01
4L033AA02
4L033AB07
4L033AC15
4L033CA12
4L033CA18
4L033CA28
4L047AA08
4L047AA12
4L047AB02
4L047AB06
(57)【要約】
【課題】ヒートシール特性が均一付与されても詰まりが生じず、水切性及び固体捕捉性に優れた不織布シートを提供する。
【解決手段】不織布シート10は、レーヨン、コットン及びパルプから選択される1以上の繊維1aから成る繊維シート又は繊維ウェブ1に、熱可塑性樹脂含有シール剤が含侵され構成された、ヒートシール機能を有する材料である。このため、不織布シート10は、自然環境上好ましく、高強度及び高剛性である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーヨン、コットン及びパルプから選択される1以上の繊維シート又は繊維ウェブに、熱可塑性樹脂含有シール剤を付与することで、ヒートシール機能を有することを特徴とする不織布シート。
【請求項2】
レジ袋、水切り袋、出汁袋、調理袋、お茶パック又は緩衝材に使用される請求項1に記載の不織布シート。
【請求項3】
請求項1に記載の不織布シートに内折部を形成すると共に、不織布シートの幅方向両端を合わせるように折り畳み、不織布シートの開放端を形成する工程と、
開放端を外側に折り畳み折返片を形成した後、不織布シートの幅方向にわたる接続部を、不織布シートの長さ方向に一定間隔離間させて複数形成し、接合部間に本体シートを形成する工程と、
接合部を略二等分するように切断して、袋本体を順次分離する工程とを含むことを特徴とする水切り袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール機能を有する不織布シート及びその不織布シートを用いた水切り袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジ袋、水切り袋、出汁袋等の袋状物には、製造コストが安価で、耐久性、及び強度に優れ、加工が容易なポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂フィルムが従来から使用されている。また、インターネット通信販売や物流が発達した今日では、製品を破損させずに安全に消費者に配送するための梱包材、緩衝材、発泡材が多く使用され、これらには、PE、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)等の合成樹脂が使用されている。
【0003】
合成樹脂及び合成繊維は、自然環境や処分場に廃棄された場合、水と二酸化炭素まで分解されず、廃棄された状態を維持して残留する。また、合成樹脂及び繊維が海洋中に廃棄された場合、そのままの形態又は自然環境中で粉砕されてマイクロプラスチックの形態として残存し、海洋生物や鳥が体内に摂取して、生態系に悪影響を及ぼす。このようなプラスチックごみ問題を解消しなければ、持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられる「つくる責任つかう責任」、「海の豊かさを守ろう」及び「陸の豊かさも守ろう」の各目標を達成できない。このため近年、不織布やその袋状物でも、合成繊維の代わりに、半合成繊維、再生繊維、天然繊維又は生分解性繊維を使用したものが開発されている。半合成繊維等を用いた不織布では、一般的に強度及び剛性が弱い。
【0004】
特許文献1は、ポリ乳酸を原料とした生分解性プラスチックで形成され、通水性を有し、収容された生ゴミの水分を水切りできるネット又は不織布製の生ゴミ処理用入れ物を開示する。しかしながら、特許文献1の生ゴミ処理用入れ物では、レーヨン不織布を使用せず、また、エチレン含有樹脂等により不織布の強度及び剛性を改善しヒートシール機能を付与する着想がなく、それによる繊維間閉塞の問題も生じ得ない。更に、広い底面により自立させる着想もない。
【0005】
特許文献2は、繊維長が0.05~5mmの主としてパルプ繊維からなるマットを形成した後、吹き付け法によりバインダーを含浸せしめ、乾燥機により該バインダーを固着させた後、反対面にもバインダーを含浸固着せしめ、熱接着させる面のバインダーが非架橋エマルジョン、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)である熱接着性不織布を開示する。また、熱接着させない面に、主としてレーヨン繊維からなる層をマット層に接して構成させる。しかしながら、特許文献2には、非架橋エマルジョンの粒子径及び形状の記載がないため、粒子分散、固体捕捉及び水分除去について問題にしていない。また、吹き付け法により不織布両面にそれぞれ別種のバインダーを含侵させるため、製造効率が悪い。更に、特許文献2の不織布では、パルプ繊維のマット層とレーヨン繊維層との2層からなり、レーヨン不織布単層の強度及び剛性の向上を目的としていない。
【0006】
特許文献3は、綿、レーヨン等からなる不織布に、ポリ酢酸ビニルエマルジョンと汎用ゴムラテックスとを含む清拭剤を含浸、乾燥させた清拭クロスを開示する。しかしながら、特許文献3には、ポリ酢酸ビニルエマルジョンの粒子径及び形状の記載がなく粒子分散性の開示もない。また、清拭クロスであるため、当然ながら固体捕捉性及び水分除去性について議論されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-338840公報
【特許文献2】特開平9-324353公報
【特許文献3】実用新案登録第3042258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、プラスチックごみ問題を解決し自然環境保護の観点から好ましく、高強度及び高剛性の不織布シートの提供を目的とする。また、熱可塑性樹脂含有シール剤が均一分散されてヒートシール特性が全体的に付与されても、繊維間閉塞が生じず、水切性及び固体捕捉性に優れた不織布シートの提供を目的とする。更に、手間なくコンポスト化処理できる水切り袋の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による不織布シート10は、レーヨン、コットン及びパルプから選択される1以上の繊維シート又は繊維ウェブ1に熱可塑性樹脂含有シール剤を付与することで、ヒートシール機能を有する。
【0010】
本発明による不織布シート10では、レーヨン、コットン及びパルプから選択される繊維1aを100%使用した繊維シート又は繊維ウェブ1から構成されるため、自然環境に残留せず、動植物環境、生態系、景観、衛生面において好ましい。また、熱可塑性樹脂2を含有するシール剤を含むため、ヒートシール機能付与と共に、合成繊維ではない繊維1a、即ちレーヨン、コットン及びパルプから成る繊維シート又は繊維ウェブ1の機械的強度及び剛性を増強して、例えば、自立可能な水切り袋50を形成できる。シール剤として含有する熱可塑性樹脂2は、繊維シート又は繊維ウェブ1の繊維間に付着されて、適度な空間11及び抵抗を形成して、例えば、不織布シート10から形成した水切り袋50では、目詰まりが起こらず水切特性に優れ、かつ生ごみ等の固体を捕捉する特性(キャッチ率)に優れる。
【0011】
本発明による水切り袋50の製造方法は、前記不織布シート10に内折部51aを形成すると共に、不織布シート10の幅方向両端を合わせるように折り畳み、不織布シート10の開放端87を形成する工程と、開放端87を外側に折り畳み折返片56を形成した後、不織布シート10の幅方向にわたる接合部83を、不織布シート10の長さ方向に一定間隔離間させて複数形成し、接合部83間に本体シート64を形成する工程と、接合部83を略二等分するように切断して、袋本体54を順次分離する工程とを含む。本発明による製造方法により得られた水切り袋50は、強靭で自立可能であり、使用の際、破れ難い。また、水切り袋50は、レーヨン、コットン及びパルプから選択される繊維1aから成るため、塵(生ごみ)を水切り袋50から分離する必要が無く、塵を水切り袋50に収容した状態で手間なく容易にコンポスト化処理できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による不織布シートでは、合成繊維を使用しないため、自然環境保全の観点から好ましくプラスチックごみ問題を解決し、熱可塑性樹脂含有シール剤を繊維間に含むため、強度、剛性及び強靭性を補強して、例えば、使用の際、自立可能で破れ難い水切り袋を形成できる。また、繊維間閉塞による目詰まりが生じず、水切性及び固体捕捉性を共に向上でき、固液分離用途に最適である。本発明による水切り袋の製造方法では、塵を水切り袋から取り出さずに水切り袋に収容した状態で手間なくコンポスト化処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による不織布シートを示す断面図
図2】(a)図1に示す不織布シートの拡大断面図、及び(b)繊維間が閉塞した状態の不織布シートを示す拡大断面図
図3】不織布シートの製造方法を示す概略図
図4】本発明による不織布シートを用いた水切り袋を示す正面図
図5】本発明による不織布シートを用いた水切り袋の開口状態を概略示する立体図
図6】(a)図4に示す水切り袋のI-I線の部分断面図、及び(b)水切り袋の開放端を被覆した状態を示す部分断面図
図7】本発明による水切り袋の製造方法を概略示する工程図
図8】コンポスト化処理方法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による不織布シート及びその不織布シートを用いた水切り袋の製造方法の各実施形態を図1図8を参照して説明する。下記実施形態及び各図面は例示であり本発明を限定的に解釈するものではない。
【0015】
図1及び図2(a)に示す本発明による不織布シート10は、合成繊維ではない繊維1aから構成された繊維シート(又は繊維ウェブ)1と、繊維シート1に含侵されたシール剤とを含む。合成繊維ではない繊維1aは、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、パルプ、コットン、麻等の天然繊維から選択される1以上の繊維である。特にレーヨン繊維が好ましい。本明細書では、用語「合成繊維」について、「半合成繊維、再生繊維、天然繊維を含まない」意味で使用する。シール剤は、平均粒子径が0.1~1.0μmの熱可塑性樹脂(エチレン含有樹脂)2であって、繊維シート1の繊維1a間に含侵及び分散されて、ヒートシール機能を付与する。熱可塑性樹脂2が平均粒子径0.1μm未満であると、小径であるため、浸漬によりシール剤(ディスパージョン、エマルジョン等)含有液12を含侵する際(図3)、繊維1a間に熱可塑性樹脂2が残留し難く脱落し易い。熱可塑性樹脂2が平均粒子径1μmを超えると、粒子が大きく繊維間を通り難く熱可塑性樹脂2の均一分散しないため、繊維シート1全体にヒートシール特性が付与されない。繊維シート1の繊維1aの径は、5~50μmである。
【0016】
繊維シート又は繊維ウェブ1の繊維は、繊度が1~5dtexである。繊度が1dtex未満であると、繊維間が過密になり水切性が低下する。5dtexを超えると、繊維が太く塵等の収容物が抜けるおそれがあり、かつ繊維数が少なくなり強度及び剛性が低下する。最も好ましくは繊度が1.3~2.2dtexである。繊維シート又は繊維ウェブ1の不織布は、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布、エアレイド不織布、又はスパンボンド不織布であって、特にスパンレース不織布及びニードルパンチ不織布が好ましい。繊維シート又は繊維ウェブ1は、目付17~100g/m2を使用でき、特に目付25~80g/m2が好ましい。目付を25g/m2未満とすると、繊維シート又は繊維ウェブ1が薄く強度及び剛性が低下し、例えば水切り袋50に使用したとき自立及び起立が困難である。80g/m2を超えると、強度及び剛性が高く自立性が向上するが、水切り袋50では、水切性及び透液性が低下し、最終的に廃棄する水切り袋50として過剰設計であり、出汁袋では、出汁成分の放出が不十分となり、鍋内で使用する調理袋では、熱が食材全体に伝わり難い。
【0017】
熱可塑性樹脂(エチレン含有樹脂)2は、エチレン-メタクリル酸(EMMA)共重合体、若しくはエチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体の何れかが好ましく、又は前記何れかの重合体のアイオノマーが好ましく、図2(a)に示すとおり、繊維1aに結合する結合部2aと、結合部2a以外の実質的球状部2bとを構成する。アイオノマーは、金属イオンとポリマーを含有する物質であり、金属イオンによる凝集力を利用して高分子を凝集体とした合成樹脂である。アイオノマーは、ヒートシール性、透明性、強靭性、耐摩耗性等を付与するために、使用される。
【0018】
本実施形態では、前記共重合体の何れかを含む(アイオノマーも含む意味である)シール剤を例えば水性エマルジョンとして用いるため、繊維1a、特にレーヨン繊維から成る単層繊維シート又は繊維ウェブ1の機械的強度及び剛性を大幅に向上する。また、レーヨン繊維1aは、一般的に表面が滑らかなため固体捕捉性が通常良くないが、結合部2aを通じて熱可塑性樹脂2aをレーヨン繊維1a表面に付着させて、レーヨン繊維1a表面が複雑な凹凸を形成して固体捕捉性を向上する。
【0019】
以下、不織布シート10の製造方法を説明する。
【0020】
本実施形態では、スパンレース法又はニードルパンチ法により繊維シート(又は繊維ウェブ)1を製造する工程と、繊維シート1から不織布シート10を製造する工程とを主に含む。繊維シート1を製造する工程では、最初に、解繊された比較的短い繊維(ステーブル・ファイバ)を噴出装置から下部に設置されたネット上に堆積させる。本実施形態では、繊度が1~5dtex、繊維長が32~64mmの繊維を使用する。具体的には、レーヨン、コットン及びパルプから選択される何れかの繊維を使用する。繊維長は、カーディング方式に使用される一般的な長さ32~64mmであれば、繊維シート1の物性に大きく影響しない。好ましくは38~44mmである。ネット上に堆積した繊維ウエブに対し、スパンレース法では高圧水流により、又はニードルパンチ法では複数のニードル(針)により、繊維間を三次元的に交絡させて繊維シート1を形成する。
【0021】
不織布シート10を製造する工程では、最初に、例えばレーヨンの繊維1aから製造された前記繊維シート(又は繊維ウェブ)1に対し、浸漬、スプレー噴霧、又は塗布によりシール剤含有液(ディスパージョン又はエマルジョン)12を含侵させる。図3は、シール剤含有液12を含む槽8内に繊維シート1を連続通過させて、繊維シート1に対しシール剤含有液12を浸漬させる工程を示す。浸漬法では不織布シート10を効率良く製造できる。シール剤含有液12の含浸により、これに含まれる平均粒子径0.1~1.0μmの実質的球状の熱可塑性樹脂2が繊維シート1全体に分散して、ヒートシール機能を均一に付与し、また機械的強度及び剛性を向上する。ここで「実質的球状」とは、真球に限らず、外観上ほぼ球状を意味し、多少いびつでも良い。
【0022】
次に、シール剤含有液12を含侵して熱可塑性樹脂2が分散した繊維シート(又は繊維ウェブ)1を、槽8外に導出して、図3に示す乾燥装置9により乾燥する。乾燥工程により、繊維シート1の温度は、50~150℃となり、熱可塑性樹脂2は、実質的球状を維持しながら表面のみ融解し、図2(a)に示すように、繊維1aに付着した熱可塑性樹脂2の結合部2aと、結合部2a以外では形状を維持した実質的球状部2bとを形成する。熱可塑性樹脂2が完全融解しないため繊維間閉塞21(図2(b))が起こらず、本発明では、繊維シート1全体に熱可塑性樹脂2が分散しても、通液性能、水切性能及び塵捕捉性能を向上できる。熱可塑性樹脂2aは、実質的球状の粒子であるため、あらゆる含浸方法により、繊維シート1の繊維1a間にスムーズに侵入し分散配置されて、ムラなく均一なヒートシール特性を有する高品質な不織布シート10が得られる。
【0023】
図4及び図5は、本発明による不織布シート10から製造された水切り袋50の折畳み状態及び開口状態の各実施形態を示す。水切り袋50は、内折部51aを有する底縁51と、開口86を形成する一対の上縁52,52a,52bと、底縁51から上縁52まで延在して一対のシート状の袋本体54を部分的に接合する一対の封止側部53とを備え、袋本体54は、底縁51及び上縁52及び一対の封止側部53により包囲される。袋本体54から上縁52を介し上縁52を折り目として外側に折り畳まれた一対の折返片56,56a,56bを備える。水切り袋50は、袋本体54と折返片56とが当接して上縁52近傍で二重構造(図6)を形成する。
【0024】
ガゼット又はマチと称される図4の内折部51aは、その折込み高さ(ガゼット幅)(E)が10~70mm、好ましくは20~60mmである。ガゼット幅(E)が大きければ、水切り袋50開口時(図5)に、大面積の底縁51面積を形成でき、水切り袋50は、例えば台所で水分を吸収しても自立安定性を維持できる。一対の上縁52,52a,52bは、袋本体54と折返片56とを接続しかつ袋本体54から折返片56を約180°外側に折り畳む折り目となり、一対の封止側部53の上端間に、図5に示すように一方の上縁52aと他方の上縁52bとを備える。本実施の形態では、底縁51から一方の上縁52a及び他方の上縁52bまでの高さが略等しい。
【0025】
図4の水切り袋50の上縁52と底縁51との間の長さ、即ち封止側部53の長さ(B)は、一対の封止側部53間の長さ、即ち底縁51の長さ(A)に対し、0.3~1倍である。底縁51の長さに対する封止側部53の長さ(B/A)が0.3倍未満であると、底縁51面積に比較して水切り袋50の背丈が小さく自立安定性は増すが、水切り袋50が浅く、収容可能な塵の量が少な過ぎる。B/Aが1倍を超えると、自立機能が低下し水切り袋50が倒れる。封止側部53の長さ(B)が底縁51の長さ(A)の0.45~0.73倍が特に好ましい。矩形シート状の袋本体54は、図5に示す開口時に一対の袋本体54間に空洞を形成し、空洞に塵を収容できる。
【0026】
図6(a)は、図4に示す水切り袋50のI-I線の部分断面図を示し、図6(b)は、開口86を折返片56aで覆った被覆状態の部分断面図を示す。図4及び図5より、一対の上縁52は、一対の封止側部53間に一方の上縁52aと他方の上縁52bとを備えて開口86を形成し、一対の折返片56は、一方の上縁52aに接続された一方の折返片56aと、他方の上縁52bに接続された他方の折返片56bとを備える。図6(a)の矢印F方向に、一方の折返片56aを折り戻すと、一方の折返片56aは、図6(b)のとおり、開口86と他方の上縁52bと他方の折返片56bの少なくとも一部とを被覆して被覆状態を形成できる。被覆状態により、開口86を十分に被覆でき、水切り袋50内に収容された塵が外部に排出しない。
【0027】
以下、図7を参照して、本発明による不織布シート10を用いた水切り袋50の製造方法の実施形態を説明する。
第1段階では、準備した不織布シート10の連続シート74を加工装置(図示せず)に移動可能に配置して、連続シート74の長さ方向、即ち送り方向(矢印M)に搬送する(図7(a))。第2段階では、連続シート74の中央線85付近に底縁51の内折部(ガゼット)51aを形成しながら、K方向に連続シート74をその幅方向両端を整合するように半分に折り畳み、連続シート74の開放端87を形成する(図7(b))。
【0028】
第3段階では、不織布シート10の連続シート74の一対の開放端87を、各外側(矢印L方向)に折り畳み、折返片56と、折返片56と袋本体54とを接続する上縁52とを形成する(図7(c))。第3段階では、折返片56を形成した後、封止端部53の形成予定箇所43に、連続シート74の幅方向に長い接合部83を一定間隔離間させて複数形成する(図7(d))。底縁51から上縁52に至る接合部83は、ローラ(図示せず)による熱圧着により、送り方向(連続シート74の長さ方向)(M)に一定間隔離間して複数形成されるため、袋状物の本体シート64が接合部83間に連続して形成される。最後に、接合部83を略二等分するように連続シート74の幅方向と略平行に接合部83を切断する。即ち、送り方向(M)と略直角方向に接合部83をP-P線に沿って切断することにより、袋本体54を順次分離して、複数の水切り袋50を連続製造できる。
【0029】
以下、本発明による前記製造方法により得られた水切り袋50を用いた、コンポスト化処理方法を説明する。最初に、図5のように、水切り袋50の一対の上縁52a,52bを開きかつ底縁51を開き底面61を略水平に形成して、例えばキッチンシンク内に水切り袋50を自立させる。自立させた水切り袋50内に塵、特に食料品の屑や残り物等の生ごみを廃棄収容して、底面61を通じ塵の水分を除去する。塵が適当量に達した後、塵が収容された水切り袋50の上縁52,52a,52b及び開口86を図6(b)のように一方の折返片56aにより閉じて、塵の収容を終了する。
【0030】
図8(a)は、一方の折返片56aにより開口86が閉じられた水切り袋50をコンポスト化装置(図示せず)に配置した状態を示す。内部に収容された塵を水切り袋50から取り出す必要がない。コンポスト化装置に配置された水切り袋50の不織布シート10は、微生物62により分解されて、図8(b)のように開口部61aが形成される。開口部61aから微生物62が侵入して、水切り袋50内の塵が微生物62により分解される。図8(c)のように、水切り袋50の開口部61aが大きくなり、微生物による塵の生分解が早く進み、最終的には、水切り袋50は殆ど残らず、塵と共に、コンポスト化装置内で、水、二酸化炭素及び僅かな残留物に分解される。僅かな残留物は、例えば肥料として利用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の不織布シートは、台所で生ごみを廃棄する水切り袋、購入商品を入れるレジ袋、鰹節等を収容して出汁を抽出させる出汁袋、煮込む食材を収容してそのまま鍋に投入できる調理袋、搬送時の商品を梱包する緩衝材、マスク、タオル、生理用品、おむつ等の衛生用品、ガーゼ、手袋、キャップ、感染防護服等の医療品等、様々な用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1・・繊維シート又は繊維ウェブ、 1a・・繊維(レーヨン繊維)、 2・・熱可塑性樹脂(エチレン含有樹脂)、 2a・・結合部、 2b・・実質的球状部、 10・・不織布シート、 12・・シール剤含有液、 50・・水切り袋、 51a・・内折部、 52,52a,52b・・上縁、 54・・袋本体、 61a・・開口部、 62・・微生物、 74・・連続シート、 83・・接合部、 86・・開放端、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8