(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164608
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20241120BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241120BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/53
H01L21/304 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080217
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】傍島 駿介
(72)【発明者】
【氏名】政近 諄
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA01
4E168CA02
4E168CB07
4E168EA02
4E168EA11
4E168EA13
4E168KA01
5F057AA03
5F057BA01
5F057BB09
5F057CA02
5F057DA22
5F057GB02
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】レーザ加工装置において、調整作業をよりいっそう短期化あるいは簡便化しつつ、高品質な加工を可能とすること。
【解決手段】レーザ加工装置(1)は、レーザ発振器(3)と、照射部(45)と、空間光変調器(43)と、制御部(5)とを備える。レーザ発振器は、レーザビーム(B)を出力する。照射部は、レーザ発振器から出力されたレーザビームを被加工物(W)に向けるように設けられている。空間光変調器は、レーザ発振器と照射部との間のレーザビームの光路(BL)に設けられている。制御部は、レーザビームの波面を計測する波面計(47)による波面計測結果に基づいて、空間光変調器の動作を制御するように設けられている。照射部は、入射したレーザビームの一部であって被加工物に向かわない漏れ光(BM)を発生するように構成されている。波面計は、漏れ光の波面を計測するように設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(W)にレーザビーム(B)を照射することで前記被加工物に対してレーザ加工を行うように構成された、レーザ加工装置(1)であって、
前記レーザビームを出力する、レーザ発振器(3)と、
前記レーザ発振器から出力された前記レーザビームを前記被加工物に向けるように設けられた、照射部(405)と、
前記レーザ発振器と前記照射部との間の前記レーザビームの光路(BL)に設けられた、空間光変調器(403)と、
前記レーザビームの波面を計測する波面計(407)による波面計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御するように設けられた、制御部(5)と、
を備え、
前記照射部は、入射した前記レーザビームの一部であって前記被加工物に向かわない漏れ光(BM)を発生するように構成され、
前記波面計は、前記漏れ光の波面を計測するように設けられた、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記波面計は、前記被加工物と共役関係となるように設けられた、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、ビームプロファイラ(49)を用いた前記レーザビームの強度特性の計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記空間光変調器の動作制御状態と前記波面計による波面計測結果とに基づいて、経年劣化をモニタする、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記被加工物への前記レーザビームの照射方向と交差する面内方向における複数の異なる位置に対して同時に前記レーザビームを照射可能に構成された、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザビームの照射により、前記被加工物としての半導体(602)の表面(621)から所定深さに改質層(623)を形成するように構成された、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
被加工物(W)にレーザビーム(B)を照射することで前記被加工物に対してレーザ加工を行うように構成されたレーザ加工装置(1)の調整方法であって、
前記レーザ加工装置は、
前記レーザビームを出力する、レーザ発振器(3)と、
前記レーザ発振器から出力された前記レーザビームを前記被加工物に向けるように設けられた、照射部(405)と、
前記レーザ発振器と前記照射部との間の前記レーザビームの光路(BL)に設けられた、空間光変調器(403)と、
を備え、
前記照射部に入射した前記レーザビームの一部であって前記被加工物に向かわない漏れ光(BM)の波面を、波面計(407)で計測し、
前記波面計による波面計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する、
レーザ加工装置の調整方法。
【請求項8】
前記波面計を、前記被加工物と共役関係となるように設ける、
請求項7に記載のレーザ加工装置の調整方法。
【請求項9】
ビームプロファイラ(409)を用いた前記レーザビームの強度特性の計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する、
請求項7に記載のレーザ加工装置の調整方法。
【請求項10】
前記空間光変調器の動作制御状態と前記波面計による波面計測結果とに基づいて、経年劣化をモニタする、
請求項7に記載のレーザ加工装置の調整方法。
【請求項11】
前記レーザ加工装置は、前記被加工物への前記レーザビームの照射方向と交差する面内方向における複数の異なる位置に対して同時に前記レーザビームを照射可能に構成された、
請求項7に記載のレーザ加工装置の調整方法。
【請求項12】
前記レーザ加工装置は、前記レーザビームの照射により、前記被加工物としての半導体(602)の表面(621)から所定深さに改質層(623)を形成するように構成された、
請求項7に記載のレーザ加工装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にレーザビームを照射することで被加工物に対してレーザ加工を行うように構成されたレーザ加工装置、および、かかるレーザ加工装置の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高エネルギのレーザビームを用いたレーザ加工は、半導体のインゴットからウェハを生成するレーザスライス加工や、ウェハを分割してチップ単位に個片化するレーザダイシング等、様々な用途で用いられる。この種のレーザ加工においては、レーザビームをファイバにより伝送しようとするとレーザビームによりファイバ自体が熱加工されてしまう等の問題が生じ得るため、ミラーやレンズ等の光学要素を用いてレーザビームを空間伝送する構成のレーザ加工装置が採用されている。しかしながら、このような空間伝送のレーザ加工装置においては、従来、被加工物に対するレーザビームの照射状態が所望の状態となるように装置を調整するために、多大な労力および時間を要するという問題があった。この点、特許文献1は、レーザ光軸の調整を容易に行うことができるようにするための技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のレーザ加工装置において、調整作業をよりいっそう短期化あるいは簡便化しつつ、高品質な加工を可能とすることが求められている。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
レーザ加工装置(1)は、被加工物(W)にレーザビーム(B)を照射することで前記被加工物に対してレーザ加工を行うように構成されている。
請求項1に記載のレーザ加工装置は、
前記レーザビームを出力する、レーザ発振器(3)と、
前記レーザ発振器から出力された前記レーザビームを前記被加工物に向けるように設けられた、照射部(405)と、
前記レーザ発振器と前記照射部との間の前記レーザビームの光路(BL)に設けられた、空間光変調器(403)と、
前記レーザビームの波面を計測する波面計(407)による波面計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御するように設けられた、制御部(5)と、
を備え、
前記照射部は、入射した前記レーザビームの一部であって前記被加工物に向かわない漏れ光(BM)を発生するように構成され、
前記波面計は、前記漏れ光の波面を計測するように設けられる。
請求項7に記載の方法は、被加工物(W)にレーザビーム(B)を照射することで前記被加工物に対してレーザ加工を行うように構成されたレーザ加工装置(1)の調整方法であって、
前記レーザ加工装置は、
前記レーザビームを出力する、レーザ発振器(3)と、
前記レーザ発振器から出力された前記レーザビームを前記被加工物に向けるように設けられた、照射部(405)と、
前記レーザ発振器と前記照射部との間の前記レーザビームの光路(BL)に設けられた、空間光変調器(403)と、
を備え、
前記照射部に入射した前記レーザビームの一部であって前記被加工物に向かわない漏れ光(BM)の波面を、波面計(407)で計測し、
前記波面計による波面計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する。
【0006】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。但し、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものにすぎない。よって、本発明は、かかる参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図1に示された波面計を用いた波面収差の解析結果の一例を示す棒グラフである。
【
図3】
図1に示された波面計を用いた波面収差の解析結果の他の一例を示す棒グラフである。
【
図4】
図1に示されたレーザ加工装置の調整方法の一具体例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示されたレーザ加工装置の調整方法の他の一具体例を示す概念図である。
【
図6】本発明の他の一実施形態に係るレーザ加工装置の概略的な構成を示す図である。
【
図7】
図6に示されたレーザ加工装置の調整方法の一具体例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明に係るレーザ加工装置を用いた半導体ウェハ製造方法の概要を示す概念図である。
【
図9】本発明に係るレーザ加工装置を用いた半導体ウェハ製造方法の概要を示す概念図である。
【
図10】本発明に係るレーザ加工装置を用いた半導体ウェハ製造方法の概要を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後にまとめて説明する。また、各図面の記載、および、これに対応して以下に説明する装置構成やその機能あるいは動作に関する記載は、本発明の内容を簡潔に説明するために模式化あるいは簡略化されたものであって、これによって本発明の内容は何ら限定されるものではない。このため、各図面の記載と、実際に製造販売される具体的な装置構成とは、必ずしも一致するとは限らないということは、云うまでもない。すなわち、出願人が本願の出願経過により明示的に限定しない限りにおいて、本発明は、各図面の記載、および、これに対応して以下に説明する装置構成やその機能あるいは動作に関する記載によって限定的に解釈されてはならないことは、云うまでもない。
【0009】
(第一実施形態:構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置1の概略的な構成を示す。なお、
図1は、レーザ加工装置1におけるレーザビームBの光路BLに沿った構成の概要を示すための概念図である。このため、
図1において、各構成要素同士の図中の位置関係については、光路BLにおけるレーザビームBの進行順序に関する位置関係以外の特段の技術的な意味はないものとする。すなわち、例えば、
図1における図中上下方向は、重力作用方向または水平方向と平行であるとは限らない。
【0010】
レーザ加工装置1は、被加工物WにレーザビームBを照射することで、被加工物Wに対してレーザ加工を行うように構成されている。具体的には、
図1に示されているように、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、加工ステージ2と、レーザ発振器3と、光学系4と、制御部5とを備えている。
【0011】
加工ステージ2は、レーザ加工中に被加工物Wを保持するように構成されている。レーザ光源とも称され得るレーザ発振器3は、レーザビームBを出力すなわち発射するように構成されている。光学系4は、レンズやミラー等の光学要素を少なくとも備えていて、レーザ発振器3から出力されたレーザビームBを被加工物Wに導くように構成されている。なお、「光学要素」は「光学素子」とも称され得る。制御部5は、加工ステージ2に支持された被加工物WとレーザビームBとの相対移動や、レーザ発振器3におけるレーザビームBの出力を含む、レーザ加工装置1の動作の全体を制御するように設けられている。具体的には、制御部5は、少なくともプロセッサとメモリとを備えた、いわゆるマイクロコンピュータとしての構成を有していて、メモリからプログラムを読み出して実行することで各種動作を実行可能に構成されている。「メモリ」は、ROM、磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ、等の、非遷移的実体的記憶媒体である。プロセッサおよびメモリは、それぞれ、少なくとも1つ設けられている。
【0012】
光学系4は、中間光学要素部401と、反射ミラー402と、空間光変調器403と、第一テレスコープ光学系404と、照射部405と、対物レンズ406と、波面計407と、第二テレスコープ光学系408と、ビームプロファイラ409とを備えている。中間光学要素部401は、レーザ発振器3から被加工物Wに向かうレーザビームBの光路BLにおける、レーザ発振器3と反射ミラー402との間の位置に設けられている。中間光学要素部401は、少なくとも1個の光学要素を備えている。具体的には、中間光学要素部401には、例えば、デフォーマブルミラーやアキシコンレンズやビームエキスパンダ等が設けられ得る。反射ミラー402は、いわゆる折り返しミラーであって、中間光学要素部401を通過したレーザビームBを全反射して空間光変調器403に向けるように設けられている。
【0013】
空間光変調器403は、光路BLにおけるレーザ発振器3と照射部405との間の位置、より詳細には反射ミラー402と第一テレスコープ光学系404との間の位置に設けられている。空間光変調器403は、二次元配列された複数の画素を有する反射型空間光変調器であって、かかる複数の画素にホログラムパターンを表示することにより画素毎に独立してレーザビームBの位相を変調可能に構成されている。具体的には、本実施形態においては、空間光変調器403は、光変調層として液晶層を有する、いわゆるLCOS-SLMとしての構成を有している。LCOS-SLMはLiquid Crystal on Silicon-Spatial Light Modulatorの略である。ホログラムパターンはCGHパターンあるいは位相変調パターンとも称され得る。CGHはComputer-Generated Hologramの略である。
【0014】
第一テレスコープ光学系404は、光路BLにおける空間光変調器403と照射部405との間の位置に設けられている。第一テレスコープ光学系404は、空間光変調器403と照射部405との間で伝送されるレーザビームBの特性を調整して、対物レンズ406における瞳位置にてレーザビームBを所望の状態で入射させるように構成されている。照射部405は、レーザ発振器3から出力されたレーザビームBを被加工物Wに向けるように設けられている。具体的には、照射部405は、第一テレスコープ光学系404を通過したレーザビームBの進路方向を反射により変更して被加工物Wに向けるミラーとしての機能を有している。また、照射部405は、入射したレーザビームBの一部(例えば数%程度)であって被加工物Wに向かわない漏れ光である測定光BMを発生するように構成されている。すなわち、本実施形態においては、照射部405は、いわゆるビームサンプラとしての構成を有している。対物レンズ406は、光路BLにおける照射部405と被加工物Wとの間の位置に設けられている。
【0015】
波面計407は、照射部405にて発生した透過光である測定光BMの波面を計測するように設けられている。具体的には、波面計407は、いわゆるシャックハルトマン型波面センサとしての構成を有している。そして、制御部5は、波面計407による波面計測結果に基づいて、空間光変調器403の動作を制御するように設けられている。本実施形態においては、波面計407は、被加工物Wと共役関係となるように設けられている。具体的には、照射部405と波面計407との間には、第二テレスコープ光学系408が設けられている。第二テレスコープ光学系408は、被加工物Wと波面計407とが共役関係となるように、一対のレンズにおける焦点距離や間隔等の設計値が設定されている。
【0016】
ビームプロファイラ409は、レーザビームBにおけるビーム形状や二次元的な強度分布をモニタ可能に段取りされた状態で設けられている。ビーム形状や二次元的な強度分布を、以下「ビームプロファイル」と称する。「段取り」とは、被加工物Wに照射されるレーザビームBにおけるビームプロファイルを計測できるように、高精度に位置決めされることをいうものとする。具体的には、ビームプロファイラ409は、光学系4を支持する不図示のベース上の規定位置に、本願の出願人の先願に係る特開2022-167534号公報に記載されているような方法で高精度に位置決めされるようになっている。本実施形態においては、ビームプロファイラ409は、測定光BMにおけるビームプロファイルを計測するように、測定光BMの進行経路に設けられている。
【0017】
(第一実施形態:効果)
以下、上記の通りの構成を有するレーザ加工装置1の構成により奏される効果について、かかるレーザ加工装置1の調整方法とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0018】
まず、レーザ加工装置1の調整方法について説明する。最初に、光学系4を構成する各光学要素を、不図示のベース上の規定位置に組み付ける。続いて、特開2022-167534号公報に記載されているような方法で、レーザビームBの光軸調整を行う。光軸調整は、光学系4を構成する各光学要素を電動調整可能なステージ(例えばピエゾステージ)を用いて支持することで、制御部5の制御下で自動的に行うことが可能である。
【0019】
ここで、発明者は、レーザ加工装置1における加工精度等の加工品質が、光軸調整状態のみならず、対物レンズ406の瞳位置における波面状態にも影響を受けるという事実を見出した。具体的には、例えば、光軸が乱れることで、光路BL内の各光学要素に対してレーザビームBが適切に入射しなかった場合、波面が大きく崩れる。但し、光軸調整を行っても、各光学要素にて収差が発生し得る。よって、例えば、中間光学要素部401や反射ミラー402等の各光学要素における、複数の調整パラメータの或る一つを微小量ずらしても、レーザビームBの真円度にほとんど差が確認できない一方で加工品質には大きな差が生じる場合がある。しかしながら、このような場合であっても、波面計測結果には有意な差が生じ得る。
【0020】
そこで、制御部5は、波面計407を用いた波面計測結果に基づいて、空間光変調器403の動作を制御する。具体的には、制御部5は、波面マップをゼルニケ解析し、その結果に基づいて、各ゼルニケ係数が小さくなるような補正ホログラムパターンを算出する。そして、制御部5は、算出した補正ホログラムパターンを、空間光変調器403における光変調層に表示させる。
図2は、補正ホログラムパターンによる補正前のレーザビームBの波面状態の一例を示す。
図3は、補正ホログラムパターンによる補正後のレーザビームBの波面状態の一例を示す。
図2や
図3において、縦軸は波面収差を示すゼルニケ係数を示し、横軸はゼルニケモードの項番すなわちOSA/ANSIインデックスを示す。すなわち、制御部5は、ゼルニケ係数の棒グラフが
図3に示されているような「フラット」な状態となるように、空間光変調器403における補正ホログラムパターンの表示を制御する。
【0021】
図4のフローチャートは、制御部5による上記の通りのレーザビームBの調整制御動作の一例を示す。図示されたフローチャートにおいて、「S」は「ステップ」を略記したものである。制御部5は、メモリからプログラムを読み出して起動することで、
図4のフローチャートに示されているステップ101~ステップ107の処理を順に実行する。
【0022】
具体的には、まず、ステップ101にて、制御部5は、空間光変調器403における光変調層にキャリブレーションパターンを表示させる。キャリブレーションパターンは、空間光変調器403が単なる反射機能を奏するようにするためのホログラムパターンであって、空間光変調器403の機差を補償するためのものである。かかるキャリブレーションパターンは、調整制御動作に先立って取得されていて、メモリにあらかじめ格納されている。ステップ102にて、制御部5は、キャリブレーションパターン表示中のレーザビームBの波面を、波面計407により計測する。かかる波面は、被加工物Wにおける加工位置(すなわち対物レンズ406の瞳位置)と共役な位置での波面である。ステップ103にて、制御部5は、ステップ102にて計測した波面をゼルニケ変換して、
図2に示されているような、収差補正前のレーザビームBの波面収差におけるゼルニケモードの各項番でのゼルニケ係数を取得する。
【0023】
ステップ104にて、制御部5は、収差を打ち消すための補正ホログラムパターンを、取得したゼルニケモードに基づいて生成して、空間光変調器403における光変調層に表示する。具体的には、制御部5は、ゼルニケ係数が所定の閾値を超えるゼルニケモードに相当する位相マップを生成し、かかる位相マップが複数存在する場合はこれらを足し合わせる。そして、制御部5は、位相マップを反転して位相を2πで折り返すことで、補正ホログラムパターンを生成する。かかる補正ホログラムパターンの生成方法については、本願の出願時点で既に公知あるいは周知となっているため、これ以上の詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0024】
ステップ105にて、制御部5は、補正ホログラムパターン表示中のレーザビームBの波面を、波面計407により計測する。ステップ106にて、制御部5は、ステップ105にて計測した波面をゼルニケ変換して、収差補正後のレーザビームBの波面収差におけるゼルニケモードの各項番でのゼルニケ係数を取得する。ステップ107にて、制御部5は、収差補正後のレーザビームBの波面収差が、
図3に示されているような所望の「フラット」な状態となったか否かを判定する。かかる判定は、例えば、ストレール比が充分高いか(すなわち所定閾値以上か)否かによっても行われ得る。補正が不充分な場合(すなわちステップ107=NO)、制御部5は、処理をステップ104に戻し、補正ホログラムパターンを再度生成して表示した後、ステップ105~ステップ107の処理を再度実行する。そして、補正が充分となった場合(すなわちステップ107=YES)、制御部5は、調整制御動作を終了する。
【0025】
本実施形態は、レーザビームBの波面をモニタリングしつつ、空間光変調器403を用いて補正を行うことで、レーザビームBの特性を調整する。このため、レーザビームBの調整は、被加工物Wあるいはそのダミーに対する試験的なレーザ加工を繰り返し行わなくても実施することができる。したがって、本実施形態によれば、調整作業をよりいっそう短期化あるいは簡便化しつつ、高品質(例えば高精度)な加工を行うことが可能となる。
【0026】
本実施形態は、照射部405に入射したレーザビームBのうちの漏れ光を測定光BMとして、その波面を波面計407で計測している。このため、波面計測は、被加工物Wに向かうレーザビームBの光路BLの外で行われる。よって、波面計407は、実際の被加工物Wに対するレーザ加工の最中であっても、レーザ加工装置1から取り外す必要がない。また、波面計測は、実際の被加工物Wに対するレーザ加工の最中に、リアルタイムで行うことが可能である。したがって、本実施形態によれば、レーザ加工装置1の稼働を止めたり落としたりすることなく、波面状態を良好にフィードバック制御することが可能となる。
【0027】
空間光変調器403における補正ホログラムパターンと、波面計407にて取得した波面情報との間には、相関がある。このため、両者の差分に基づいて、レーザ加工装置1における経年劣化をモニタすることが可能である。すなわち、制御部5は、空間光変調器403の動作制御状態と波面計407による波面計測結果とに基づいて、経年劣化をモニタすることが可能である。そして、かかるモニタ結果に基づいて、経年劣化による波面のズレの補正を行うことが可能となる。但し、ホログラムパターンと波面情報との間で、分解能が異なり得る。よって、両者の分解能の違いを考慮して、一方または双方に平均化やフィルタリング等の処理を行うことがあり得る。また、両者の差分が大きくなりすぎて、ホログラムパターンによる補正によっては良好な波面状態が実現困難となった場合は、メンテナンス通知等の異常報知を実行することが可能である。
【0028】
本実施形態は、ビームプロファイラ409によるビームプロファイルの計測も、漏れ光である測定光BMによって行っている。よって、ビームプロファイラ409も、実際の被加工物Wに対するレーザ加工の最中にレーザ加工装置1から取り外す必要がなく、レーザ加工の最中にリアルタイムでビームプロファイルの計測を行うことが可能である。
【0029】
(空間光変調器によるビーム整形例)
周知の通り、空間光変調器403は、レーザビームBの位相や強度の特性を、二次元的に変調することが可能である。よって、ホログラムパターンを用いてレーザビームBを整形して複数に分岐することで、被加工物Wにおける多点同時加工が可能となる。すなわち、この場合、レーザ加工装置1は、被加工物WへのレーザビームBの照射方向と交差する面内方向における複数の異なる位置に対して同時にレーザビームBを照射可能に構成されている。この場合、制御部5は、レーザビームBの分岐すなわちパターニング用のホログラムパターンと収差補正のための補正ホログラムパターンとを合成した、合成ホログラムパターンを生成して、空間光変調器403における光変調層に表示する。なお、この場合、上記のステップ105における、補正ホログラムパターン生成のためのゼルニケ変換に供される波面データとしては、レーザビームBの整形のための波面制御成分を含まないものが用いられる。
【0030】
図5は、レーザビームBを第一スポットSP1~第四スポットSP4の合計4つのビームスポットに分岐した例を示す。本具体例においては、第一スポットSP1~第四スポットSP4は、矩形状に配置されているものとする。図中、各スポットの強度を、斜線ハッチングの濃さで示す。また、
図5における(a)に示されているように、本具体例においては、第一スポットSP1~第四スポットSP4は、同一強度であることが望まれているものとする。
【0031】
ここで、同(b)に示されているように、実際には、第一スポットSP1と第二スポットSP2と第四スポットSP4とがほぼ同一の強度である一方、第三スポットSP3の強度がこれらよりも低い状態が生じた場合を想定する。このような場合、制御部5は、ビームプロファイラ409による計測結果から、かかる状態が生じていることを検知することが可能である。すると、制御部5は、同(c)に示されているように第三スポットSP3の強度を上げるようなホログラムパターンを生成する。これにより、同(d)に示されているように、第一スポットSP1~第四スポットSP4における強度を均一化することが可能となる。
【0032】
なお、上記の具体例においては、第一スポットSP1~第四スポットSP4は、同一強度であることが望まれているものとしたが、本発明は、かかる態様には限定されない。すなわち、第一スポットSP1~第四スポットSP4に所定の強度分布を与えたものの、これらのうちのいずれかの強度が所定強度から外れた場合にも、同様の処理が可能である。また、第一スポットSP1~第四スポットSP4におけるレーザ強度のバラツキの補正について例示したが、これに代えて、あるいは、これとともに、スポット形状のバラツキの補正を行うことも可能である。このように、本実施形態によれば、ビームプロファイルのリアルタイムな計測結果をレーザ加工にフィードバックすることが可能となる。
【0033】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明においては、上記第一実施形態との相違点を主として説明する。また、上記第一実施形態と本実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一の符号が付されている。したがって、以下の本実施形態の説明において、上記第一実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0034】
図6を参照すると、本実施形態においては、ビームプロファイラ409は、加工ステージ2側に設けられることで、対物レンズ406を通過したレーザビームBのビームプロファイルを計測するようになっている。この場合、加工ステージ2側には、
図1に示された被加工物Wに代えて、拡大光学系410が設けられる。拡大光学系410は、対物レンズ406によって集光されたレーザビームBを拡大してビームプロファイラ409における計測に供するように構成されている。なお、かかる拡大光学系410は、加工ステージ2に固定されなくてもよいし、固定されてもよい。そして、制御部5は、波面計407による波面計測結果に加えて、さらに、ビームプロファイラ409を用いたレーザビームBの強度特性の計測結果に基づいて、空間光変調器403の動作を制御するようになっている。
【0035】
図7は、空間光変調器403によるビーム整形を行いつつ、収差とビームプロファイルとを補正する例を示す。なお、「ビーム整形」は、
図5に示されているような多スポット形成のみならず、単一スポットにおけるビームプロファイルの整形(例えばリング形状化等)をも含む。ここで、
図7におけるステップ101~ステップ103の処理は、
図4の場合と同様である。よって、以下の、
図7に示されたフローチャートにおける各処理の説明においては、ステップ101~ステップ103については説明を省略し、ステップ104以降について説明する。
【0036】
ステップ104にて、制御部5は、収差を打ち消すための補正ホログラムパターンを、取得したゼルニケモードに基づいて生成する。そして、制御部5は、かかる補正ホログラムパターンとビーム整形のためのホログラムパターンとを合成した合成ホログラムパターンを生成して、空間光変調器403における光変調層に表示する。ステップ105にて、制御部5は、合成ホログラムパターン表示中のレーザビームBの波面を、波面計407により計測する。ステップ106にて、制御部5は、ステップ105にて計測した波面データからビーム整形のための波面制御成分を減算したものをゼルニケ変換して、収差補正後のレーザビームBの波面収差におけるゼルニケモードの各項番でのゼルニケ係数を取得する。
【0037】
ステップ107にて、制御部5は、収差補正後のレーザビームBの波面収差が、
図3に示されているような所望の「フラット」な状態となったか否かを判定する。補正が不充分な場合(すなわちステップ107=NO)、制御部5は、処理をステップ104に戻し、補正ホログラムパターンを再度生成して表示した後、ステップ105~ステップ107の処理を再度実行する。そして、補正が充分となった場合(すなわちステップ107=YES)、制御部5は、処理をステップ108に進行する。
【0038】
ステップ108にて、制御部5は、ビームプロファイル、すなわち、長短径比や強度分布形状を判定する。なお、ステップ108の処理に際し、必要に応じて、焦点位置調整が適宜行われ得る。長短径比や強度分布形状が所望の状態ではない場合(すなわちステップ108=NO)、制御部5は、処理をステップ104に戻し、補正ホログラムパターンを修正することで合成ホログラムパターンを再度生成して表示した後、ステップ105~ステップ107の処理を再度実行する。一方、ビームプロファイルが所望の状態である場合(すなわちステップ107=YES)、制御部5は、調整制御動作を終了する。
【0039】
(半導体ウェハ製造の概要)
図8~
図10は、本発明の良好な適用対象としての、レーザビームBの照射により半導体ウェハ601を半導体インゴット602から切り出す、いわゆるレーザスライスの概要を示す。以下、SiCウェハである半導体ウェハ601のレーザスライスによる製造方法の概要について説明する。
【0040】
以下の説明を簡略化するため、便宜上、
図8~
図10に示した通りに、右手系XYZ座標を設定する。かかる右手系XYZ座標において、Z軸は、半導体ウェハ601の厚さ方向、あるいは、半導体インゴット602の高さ方向と平行となるように規定している。半導体インゴット602の高さ方向は、半導体インゴット602の略円柱形状における中心軸LCと平行な方向である。また、X軸およびY軸は、半導体ウェハ601の主面や半導体インゴット602の上下端面と略平行であるものとする。「主面」は、半導体ウェハ601のような板状物における板厚方向と直交する表面であって、「上面」や「下面」や「底面」や「板面」とも称され得る。半導体ウェハ601の主面や半導体インゴット602の上下端面に沿った方向、すなわち、Z軸方向と交差する任意の方向を、以下の説明において「面内方向」と称することがある。かかる「面内方向」は、被加工物Wを半導体インゴット602とした場合、上記の「被加工物WへのレーザビームBの照射方向と交差する面内方向」と整合する。典型的には、半導体ウェハ601の主面や半導体インゴット602の上下端面は、Z軸と略直交する、ほぼ水平な面である。このため、典型的には、「面内方向」は、Z軸と直交する任意の方向、すなわち、XY平面と平行な任意の方向である。また、面内方向と直交する方向を、以下「軸方向」と称することがある。
【0041】
半導体ウェハ601は、厚さ方向と略直交する一対の主面である、ウェハ表面611およびウェハ裏面612を有している。同様に、半導体インゴット602は、高さ方向と略直交する一対の端面である、インゴット頂面621およびインゴット底面622を有している。本製造方法は、レーザ照射により、インゴット頂面621から所定深さに剥離層623を形成し、インゴット頂面621と剥離層623との間の層状のウェハ前駆体624を剥離層623にて半導体インゴット602から剥離することで半導体ウェハ601を得る、というものである。剥離により生じた剥離面625は、研削や研磨により平坦化される。
【0042】
図9および
図10は、半導体インゴット602にレーザビームBを照射して剥離層623を形成する工程の概要を示す。かかる工程においては、レーザビームBを、半導体インゴット602に対して面内方向に相対移動させつつ、半導体インゴット602の表面であるインゴット頂面621に照射する。ここで、レーザビームBは、半導体インゴット602に対する所定程度の透過性を有する。このため、レーザビームBの集光点SPを、インゴット頂面621から所定深さの位置に形成することができる。よって、レーザビームBの照射により、被加工物Wとしての半導体インゴット602の表面であるインゴット頂面621から所定深さに、レーザビームBの照射によりSiCが改質された改質領域626を含む剥離層623が形成される。具体的には、剥離層623は、改質領域626と、この改質領域626から延びるクラックとによって形成される。このような、改質領域626によって形成された剥離層623は、「改質層」とも称され得る。
【0043】
レーザビームBの集光点SPは、面内方向における一方向である走査方向Dsに走査される。これにより、改質領域626が、半導体インゴット602の走査方向Dsにおける幅の全体にわたって形成される。そして、かかる集光点SPの走査が、面内方向にける他の一方向であって走査方向Dsと直交するラインフィード方向Dfにインデックス送りされつつ多数回繰り返されて、レーザビームBがインゴット頂面621のほぼ全面に照射されることで、剥離層623が形成される。ここで、
図9に示されているように、レーザビームBの集光点SPを、ラインフィード方向Dfにおける異なる位置にて複数個同時に形成することで、剥離層623の形成工程が効率化され得る。なお、
図9および
図10は、複数の集光点SPが、走査方向Dsおよびラインフィード方向Dfに対して傾斜した方向に一列に配置されつつ走査される例を示している。
【0044】
しかしながら、集光点SPのインゴット頂面621からの深さに誤差や変動やバラツキが生じると、改質領域626の深さすなわち軸方向位置が変動する。これにより、剥離層623すなわち剥離面625の凹凸が大きくなり、剥離後の研削や研磨の加工代が大きくなって材料の歩留まりが悪化することで生産性が低下する。そこで、波面制御を用いたビーム整形および収差補正により、複数の集光点SPの各々における強度等の特性を均一化することが好適である。これにより、レーザスライスにより半導体インゴット602から半導体ウェハ601を得るウェハ製造技術において、従来よりも生産性をよりいっそう向上することが可能となる。
【0045】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0046】
本発明は、上記実施形態の記載に限定されない。すなわち、例えば、レーザ加工装置1におけるレーザビームBの光路BLの形状、具体的には、ミラーによる折り返しの有無や回数や進路変更方向についても、特段の限定はない。よって、例えば、レーザビームBの光路BLにおける、中間光学要素部401~照射部405の間の部分と、照射部405~対物レンズ406の間の部分とは、同一平面内にはなくてもよい。典型的には、例えば、前者については光学系4を支持する不図示のベースにおける当該光学系4を支持する支持面と平行となり、後者については当該支持面と直交する、という場合があり得る。また、レーザ加工装置1の適用対象は、レーザスライスに限定されない。すなわち、本発明は、レーザスライスのみならず、レーザダイシングにも良好に適用され得る。レーザビームBの波長についても、特段の限定はない。よって、本発明は、例えば、レーザアブレーションによる精密な穴あけや除去加工にも良好に適用され得る。加工ステージ2に対する被加工物Wの固定方法についても、特段の限定はなく、エア吸着、静電吸着、両面テープ固定、接着、等の任意の方法を採用することが可能である。
【0047】
被加工物Wと、かかる被加工物WにレーザビームBを照射する照射部405および対物レンズ406との相対移動は、前者が固定で後者が可動であってもよいし、その逆であってもよいし、両者が可動であってもよい。光路BLに沿った光学要素の構成や配置個数や配置態様についても、特段の限定はない。具体的には、例えば、空間光変調器403は、LCOS-SLMに限定されず、他の構造を有するものであってもよい。また、第一テレスコープ光学系404は、省略され得る。さらに、照射部405は、ビームスプリッタであってもよい。あるいは、照射部405は、ガルバノミラーであってもよい。照射部405と対物レンズ406とは、同一筐体に収容されつつ支持されることでユニット化されていてもよい。さらに、上記実施形態では、波面データをゼルニケ多項式として取得したが、これに限定されない。例えば、波面データをザイデルの5収差やルジャンドル多項式等として取得してもよい。
【0048】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。変形例も、上記の例示に限定されない。すなわち、例えば、複数の実施形態の各々における全部または一部が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。同様に、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【0049】
(観点)
上記の通りの、実施形態および変形例に係る構成および動作の説明から明らかなように、本明細書による開示は、少なくとも、以下の観点を含む。
[観点1]
被加工物(W)にレーザビーム(B)を照射することで前記被加工物に対してレーザ加工を行うように構成された、レーザ加工装置(1)であって、
前記レーザビームを出力する、レーザ発振器(3)と、
前記レーザ発振器から出力された前記レーザビームを前記被加工物に向けるように設けられた、照射部(405)と、
前記レーザ発振器と前記照射部との間の前記レーザビームの光路(BL)に設けられた、空間光変調器(403)と、
前記レーザビームの波面を計測する波面計(407)による波面計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御するように設けられた、制御部(5)と、
を備え、
前記照射部は、入射した前記レーザビームの一部であって前記被加工物に向かわない漏れ光(BM)を発生するように構成され、
前記波面計は、前記漏れ光の波面を計測するように設けられた、
レーザ加工装置。
[観点2]
前記波面計は、前記被加工物と共役関係となるように設けられた、
観点1に記載のレーザ加工装置。
[観点3]
前記制御部は、さらに、ビームプロファイラ(49)を用いた前記レーザビームの強度特性の計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する、
観点1または2に記載のレーザ加工装置。
[観点4]
前記制御部は、さらに、前記空間光変調器の動作制御状態と前記波面計による波面計測結果とに基づいて、経年劣化をモニタする、
観点1~3のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
[観点5]
前記被加工物への前記レーザビームの照射方向と交差する面内方向における複数の異なる位置に対して同時に前記レーザビームを照射可能に構成された、
観点1~4のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
[観点6]
前記レーザビームの照射により、前記被加工物としての半導体(602)の表面(621)から所定深さに改質層(623)を形成するように構成された、
観点1~5のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
[観点7]
被加工物(W)にレーザビーム(B)を照射することで前記被加工物に対してレーザ加工を行うように構成されたレーザ加工装置(1)の調整方法であって、
前記レーザ加工装置は、
前記レーザビームを出力する、レーザ発振器(3)と、
前記レーザ発振器から出力された前記レーザビームを前記被加工物に向けるように設けられた、照射部(405)と、
前記レーザ発振器と前記照射部との間の前記レーザビームの光路(BL)に設けられた、空間光変調器(403)と、
を備え、
前記照射部に入射した前記レーザビームの一部であって前記被加工物に向かわない漏れ光(BM)の波面を、波面計(407)で計測し、
前記波面計による波面計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する、
レーザ加工装置の調整方法。
[観点8]
前記波面計を、前記被加工物と共役関係となるように設ける、
観点7に記載のレーザ加工装置の調整方法。
[観点9]
ビームプロファイラ(409)を用いた前記レーザビームの強度特性の計測結果に基づいて、前記空間光変調器の動作を制御する、
観点7または8に記載のレーザ加工装置の調整方法。
[観点10]
前記空間光変調器の動作制御状態と前記波面計による波面計測結果とに基づいて、経年劣化をモニタする、
観点7~9のいずれか1つに記載のレーザ加工装置の調整方法。
[観点11]
前記レーザ加工装置は、前記被加工物への前記レーザビームの照射方向と交差する面内方向における複数の異なる位置に対して同時に前記レーザビームを照射可能に構成された、
観点7~10のいずれか1つに記載のレーザ加工装置の調整方法。
[観点12]
前記レーザ加工装置は、前記レーザビームの照射により、前記被加工物としての半導体(602)の表面(621)から所定深さに改質層(623)を形成するように構成された、
観点7~11のいずれか1つに記載のレーザ加工装置の調整方法。
【符号の説明】
【0050】
1 レーザ加工装置
3 レーザ発振器
403 空間光変調器
405 照射部
407 波面計
409 ビームプロファイラ
5 制御部
B レーザビーム
BL 光路
W 被加工物