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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164615
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】W/O/W型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20241120BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241120BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/87
A61K8/73
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080226
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】592106155
【氏名又は名称】ジェイオーコスメティックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089484
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 靖郎
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 隆太
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅和
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC582
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD261
4C083AD642
4C083CC05
4C083CC36
4C083DD34
4C083EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】経時安定性の良好なW/O/W型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを含むW/O型エマルションを、水溶性高分子を含む外水相中に分散してなるW/O/W型乳化化粧料である。好ましい水溶性高分子は、カルボマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその塩を構成単位として含む水溶性高分子、疎水変性ポリエーテルウレタンおよび疎水変性アルキルセルロースである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
W/O型エマルションを外水相中に分散してなるW/O/W型乳化化粧料であって、前記W/O型エマルションがトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを含み、前記外水相が水溶性高分子を含むことを特徴とするW/O/W型乳化化粧料。
【請求項2】

水溶性高分子が、カルボマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその塩を構成単位として含む水溶性高分子、疎水変性ポリエーテルウレタンおよび疎水変性アルキルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のW/O/W型乳化化粧料。
【請求項3】
W/O型エマルションが、pHが中性領域において水に難溶性の成分の水溶液を液滴として含むものである請求項1または2に記載のW/O/W型乳化化粧料。
【請求項4】
W/O型エマルションが、2種以上の異なるW/O型エマルションである請求項1または2に記載のW/O/W型乳化化粧料。
【請求項5】
実質的に界面活性剤フリーである請求項1または2に記載のW/O/W型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はW/O型エマルションを外水相中に分散してなるW/O/W型の乳化化粧料に関する。さらに詳しくは、経時安定性の良好なW/O/W型の乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳化化粧料として水中油型(O/W型)および油中水型(W/O型)の製品が汎用されているが、水中油型と油中水型の複合エマルションであるW/O/W型乳化化粧料は、最外相が水相であることからみずみずしい使用感触をもつことに加え、水相を内水相と外水相に分離することが可能であることから、例えば、同一の水相に配合すると互いの接触により不安定になる成分を内水相と外水相に分けて配合できる、pHが中性領域にあることが求められる外水相には溶解しにくい成分を、内水相のpHを酸性またはアルカリ性領域にしてその中に溶解して配合することができる、などの利点を有している。しかしながら、W/O/W型乳化化粧料は、概して経時安定性に劣っており、実用に耐え得るレベルの安定なW/O/W型複合エマルションを得ることは難しいのが現状である。
【0003】
かかるW/O/W型乳化化粧料に関して、たとえば、特許文献1には、HLB7以下の乳化剤と電解質を含むW/O型エマルションを外水相中に分散してなるW/O/W型乳化化粧料が開示されており(請求項1参照)、このW/O/W型乳化化粧料は使用感に優れるとともに良好な経時安定性を有する旨が記載されている(段落0001参照)。この発明においては、W/O型エマルション中にHLB7以下の乳化剤を含むことが必須であり、かかる乳化剤としては多価アルコールのポリヒドロキシステアリン酸エステルであるポリヒドロキシステアリルアルキレン化グリコール(たとえば、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール)が好ましく用いられる旨記載されており(段落0034参照)、特許文献1のすべての実施例においてジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールが配合されている。しかし、本発明者らの実験によれば、W/O型エマルションの調製に際してジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールを使用しても、必ずしも十分に安定なW/O/W型乳化化粧料が得られないことが判明した(後記の比較例1および4参照)。
【0004】
一方、特許文献2には、非イオン性界面活性剤、揮発性シリコーン、精製水及びトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを含有する油中水型乳化化粧料が開示されており(請求項1参照)、このW/O型乳化化粧料は保湿性および保存安定性に優れることが開示されている(段落0001参照)。特許文献2には、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを配合する目的を明示する記載は見当たらないが、実施例1~4と比較例1~4とを比較すると、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを配合することによりW/O型乳化化粧料の保湿安定性と保存安定性が顕著に改善されることが示されている(段落0028参照)ので、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルは、保湿安定性と保存安定性を改善するために配合されているものと推察される。そして、この発明においてはW/O型エマルションの調製に当たって非イオン性界面活性剤が用いられており、非イオン性界面活性剤の不存在下にトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを油相に配合したときに安定なW/O型エマルションが得られるかどうかについては何も開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-275029号公報
【特許文献2】特開2008-174514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景技術の下に完成したものであり、その目的は、W/O/W型乳化化粧料の弱点である経時安定性を改良したW/O/W型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、W/O型エマルションを外水相中に分散してなるW/O/W型乳化化粧料において、W/O型エマルションの乳化剤としてトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを油相中に含有させ、かつ、外水相中に水溶性高分子を含有させると、外水相中に存在するW/O型エマルションからなる液滴の分散状態を安定に保つことができ、その結果として内水相と外水相の分離が良好になり、経時安定性に優れたW/O/W型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、W/O型エマルションを外水相中に分散してなるW/O/W型乳化化粧料であって、前記W/O型エマルションがトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを含み、前記外水相が水溶性高分子を含むW/O/W型乳化化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のW/O/W型乳化化粧料は、従来のW/O/W型乳化化粧料の欠点であった経時安定性に劣るという点が大きく改善されている。また、内水相と外水相の分離が良好であることから、内水相と外水相のそれぞれに配合される活性成分同士の接触を防ぎ、双方の成分の接触による系の不安定化を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のW/O/W型乳化化粧料はW/O/Wエ型マルションで形成されており、連続相である外水相中にW/O型エマルションの液滴が分散した構造を有している。W/Oエマルションの液滴は、油相中に水滴が分散している構造をなすものであり、W/Oエマルション中の水滴は内水相と呼ばれる。本発明において、W/O/W型乳化化粧料は、外水相中に単一のW/O型エマルションを分散させたものであっても、2種類以上の異なるW/O型エマルションを同時に外水相に分散したものでも良く、また、W/O型エマルションと油滴が同時に外水相に分散した[(W/O)+O]/W型エマルションであっても良い。
【0011】
(トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル)
本発明のW/O/W型乳化化粧料は、必須成分としてトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル(以下において、成分(A)と称することがある)を油相中に含有する。成分(A)を含有することにより、安定なW/O型エマルションを調製することができ、また、このW/O型エマルションを外水相に分散させ、W/O/W型エマルションとしたときでも、内水相と外水相が分離された状態を安定に保つことができる。
【0012】
本発明における成分(A)のトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルは、ジペンタエリスリトールの6個の水酸基の内3個の水酸基がポリヒドロキシステアリン酸のカルボン酸基とエステル結合しているものである。トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルは、通常、エモリエント成分である抱水性油剤として化粧料中に配合されるものである。
【0013】
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの市販品としては、日清オイリオ社製サラコスWO-6を挙げることができる。
【0014】
本発明の化粧料において、成分(A)の配合量は、W/O型エマルションに対して、0.1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.2~10質量%である。
【0015】
(水溶性高分子)
本発明のW/O/W型乳化化粧料は、必須成分として水溶性高分子(以下において、「成分(B)」と称することがある)を外水相中に含有する。成分(B)を含有することにより、外水相中でのW/O型エマルション液滴の合一を防ぎ、経時的に安定なW/O/W型乳化化粧料とすることができる。
【0016】
成分(B)の具体例としては、カルボマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその塩を構成単位として含む水溶性高分子、疎水変性ポリエーテルウレタンおよび疎水変性アルキルセルロース等を挙げることができる。
【0017】
カルボマーは、カルボキシビニルポリマーと称されることがあり、架橋型のアクリル酸の共重合体である。市販品の例としては、Lubrizol社のカーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981、住友精化社のAQUPEC HV-501E、AQUPEC HV-505E、富士フィルム和光純薬社のハイビスワコー103、ハイビスワコー104、ハイビスワコー105等を挙げることができる。
【0018】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アルキル基を有するカルボキシビニルポリマーであり、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルの共重合体またはその塩である。アルキル基の炭素数は、8以上30以下が好ましい。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの例としては、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー等を挙げることができる。市販品の例としては、Lubrizol社のカーボポール1342、カーボポール1382、NOVEON社のペミュレンTR-1、ペミュレンTR-2等をあげることができる。
【0019】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその塩を構成単位として含む水溶性高分子は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその塩を構成単位として含むコポリマー又はクロスポリマーである。なお、用語「2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸」は、「アクリロイルジメチルタウリン」と同義である。具体例として、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンNa/VP)クロスポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等が挙げられる。市販品の例としては、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーであるSNF社製FLOCARE PSD-30、また、このポリマーを含む分散物であるSEPPIC社製SIMULGEL-EG、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを含む分散物であるSIMULGEL-NS、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーであるSEPPIC社のSEPINOV EMT10等が挙げられる。
【0020】
疎水変性ポリエーテルウレタンは、ウレタン結合を有する会合性高分子で、例えば、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリウレタン-59等を挙げることができる。市販品の例としては、ADEKA社製アデカノールGT-700、アデカノールGT-930等を挙げることができる。
【0021】
疎水変性アルキルセルロースは、水溶性セルロースエーテル誘導体に長鎖アルキル基を導入した構造を有し、例えば、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを挙げることができる。市販品の例としては、大同化成工業社製サンジェロース90L、90M、90H、60L、60M、60H等を挙げることができる。
【0022】
成分(B)は、化粧料中に0.01~10質量%含有させることが好ましく、より好ましくは、0.1~8質量%である。成分(B)の含有量が過度に少ない場合は、W/O/W型エマルションの安定性が低下しがちであり、逆に、過度に多い場合は、粘度が上昇し、べたついた感触となる。
【0023】
本発明のW/O/W型化粧料において、W/O型エマルションの含有量は、化粧料全体に対し、0.05~60質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1~50質量%、特に好ましくは0.5~40質量%である。W/O型エマルションの含有量が過度に少ない場合には、内水相に活性成分等を多く含むことができず、過度に多い場合はW/O/W型エマルションの安定性が低下するとともに、べたついた感触となる。
【0024】
W/O型エマルションにおける内水相の量は、W/O型エマルションに対し、5~75質量%であることが好ましく、より好ましくは、10~70質量%、特に好ましくは10~60質量%である。内水相の量がこの範囲にあることにより、W/O/Wエマルションの安定性が良好になる。
【0025】
本発明のW/O/W型乳化化粧料の内水相中には水溶性有効成分を含有することができる。水溶性有効成分の例としては、種々のビタミン類、植物抽出物、抗酸化成分、美白剤等が挙げられる。本発明のW/O/W型乳化化粧料は、内水相と外水相の分離が確実に行えることから、外水相のPH領域と内水相のPH領域に差を設けることができる。この特性を利用することにより、たとえば、中性のpH領域では難溶性であるが、中性以外のPH領域では水溶性の有効成分を、内水相のpHを中性領域以外のpHとすることにより溶解した状態で含有させ、化粧量全体としては中性の化粧料を調製することが可能である。
【0026】
なお、本発明においては、20℃でpHが5以上8.5未満の水への溶解度が、0.5g/100g以下であり、pHを5未満または、8.5以上とすることによって溶解度が増加する有効成分を難溶性有効成分と定義する。
【0027】
難溶性有効成分の例としては、保湿成分であるチロシン、ニキビ防止成分であるサリチル酸、抗酸化成分であるフェルラ酸等を挙げることができるが、これらに限られない。
【0028】
本発明のW/O/W型乳化化粧料は、難溶性有効成分を含むことが好ましく、難溶性有効成分の含有量は、化粧料全体に対し0.0001~20質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.001~10質量%である。
【0029】
本発明のW/O/W型乳化化粧料が難溶性有効成分を含む場合、内水相のpHは5未満または8.5以上であることが好ましく、その場合、本発明のW/O/W型乳化化粧料全体のpHは、5以上8.5未満であることが好ましい。このような構成にすることにより、pHが中性のときに難溶性の有効成分をより多く含有させ、且つ、肌に安全に適用することができる。
【0030】
本発明のW/O/W型乳化化粧料には、本発明の効果を妨げない範囲で界面活性剤を配合することができるが、安全性の観点から、界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましく、含有する場合でも界面活性剤の含有量は1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5質量%以下である。
【0031】
本発明のW/O/W型乳化化粧料には、前記成分(A)および成分(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧料や医薬部外品等の製剤に使用される成分、例えば油分、保湿剤、金属イオン封鎖剤、天然及び合成高分子、水溶性及び油溶性高分子、紫外線吸収剤、美白剤、各種抽出液、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等の成分を含有するものであってもよい。
【0032】
本発明のW/O/W型乳化化粧料は、常法により製造することができるが、通常、成分(A)を含有する油相に内水相を加え、W/O型エマルションを生成させ、これを予め成分(B)を溶解した外水相中に分散させることによって製造される。また、異なる組成のW/O型エマルションを2種以上調製しておき、これらを外水相に分散させ、複数種のW/O型エマルション液滴を含有するW/O/W型乳化化粧料とすることもできる。また、W/O型エマルションを外水相に替えてO/W型エマルションに分散させることにより[(W/O)+O]/Wの構成を持つ複合エマルションとすることもできる。
【0033】
本発明のW/O/W型乳化化粧料の形状はとくに限定されず、通常の化粧料の形態を広く採用することができる。形態の具体例としては、例えば、ローション状(液状)、ジェル状、乳液状、懸濁液状、クリーム状等が挙げられる。
【実施例0034】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合量は、特に断りのない限り全量に対する質量%である。
【0035】
以下の実施例および比較例におけるW/O/W型乳化化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
(3日後の乳化状態)
化粧料を調製後、3日後に光学顕微鏡を用い、100倍の倍率で乳化滴を観察し、下記の基準で4段階評価を行った。下記基準のAは、W/O型エマルションからなる30μm未満の微小な液滴が均一に分散している状態であり、W/O/W型乳化化粧料が安定な状態にあることを示している。一方、下記基準のDは、W/O型エマルションからなる液滴同士が合一した部分と乳化滴が存在しない部分に分かれており、W/O/W型乳化化粧料が不安定な状態にあることを示している。
【0036】
(評価基準)
A: 直径が1μm以上30μm未満のW/O型エマルションからなる液滴が均一に分散している。
B: 直径が30μm以上50μm未満のW/O型エマルションからなる液滴が散見されるが、液滴は均一に分散している。
C: 直径が50μm以上のW/O型エマルションからなる液滴が散見される。
D: W/O型エマルションからなる液滴が合一した部分と液滴がない部分に分かれている。
【0037】
(pH)
pHメーターを用いて、内水相については内水相の各成分を混合した後、乳化する前に、化粧料についてはW/O/W型化粧料を調製した後に測定した。
(結晶の有無)
化粧料を調製後、3日後に手の甲に塗付し、異物の有無を確認し、下記の基準で2段階評価を行った。
【0038】
( 評価基準)
A: 異物感がなく滑らかに塗布できる。
D: 塗布時にざらざらとした異物感がある。
【0039】
(製造手順)
実施例1、2、および比較例1~4の製造手順は以下のとおりである。
(1)表1または2に記載されている内水相および油相の各成分をそれぞれ均一に混合して内水相用混合物、油相用混合物を調製した後、油相用混合物に内水相用混合物を撹拌しながら徐々に添加しW/O型エマルションを得る。
(2)表1または2に記載されている外水相の各成分を均一に混合して外水相用混合物を調製した後、該外水相用混合物に上記のW/O型エマルションを撹拌しながら徐々に添加し、W/O/W型エマルションを得る。
【0040】
実施例3の製造手順は以下のとおりである。
(1)表3に記載されている第1内水相および第1油相の各成分をそれぞれ均一に混合して第1内水相用混合物および第1油相用混合物を調製した後、第1油相用混合物に第1内水相用混合物を撹拌しながら徐々に添加し第1W/O型エマルションを得る。
(2)表3に記載されている第2内水相および第2油相の各成分をそれぞれ均一に混合して第2内水相用混合物および第2油相用混合物を調製した後、第2油相用混合物に第2内水相用混合物を撹拌しながら徐々に添加し第2W/O型エマルションを得る。
(3)表3に記載されている外水相の各成分を均一に混合して外水相用混合物を調製した後、得られた混合物に第1W/O型エマルションを撹拌しながら徐々に添加し、次いでに第2W/O型エマルションを撹拌しながら徐々に添加して、2種類のW/O型エマルションが分散したW/O/W型エマルションを得る。
【0041】
実施例1、比較例1~3
(W/O/W型美白化粧料)
表1に示す処方のW/O/W型美白化粧料を上記の製造手順に従って調製し、上記の方法により評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1のW/O/W型美白クリームは、3日後の顕微鏡観察においても5μm程度の均一に分散した乳化滴が観察された。また、倍率を400倍としたとき、油滴中に複数存在する水滴が観察された。これに対し、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルに替えて、W/O乳化剤として一般的に用いられている市販原料を使用した比較例1~3のW/O/W型美白クリームは、W/O型エマルション滴の合一が見られた。ちなみに、比較例1で用いたジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30は、特許文献1において好ましい乳化剤として推奨されているジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールの一種である。
【0044】
実施例2、比較例4
(W/O/W型チロシン含有クリーム)
表2に示す処方のW/O/W型チロシン含有クリームを上記の製造手順に従って調製しは水に難溶性であるが、アルカリ性領域では水に溶解しやすいので、この処方においてチロシンは内水相中に溶解している。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例2のW/O/W型チロシン含有クリームは、3日後の顕微鏡観察においても5μm程度の均一に分散した乳化滴が観察され、内水相と外水相は明確に分離されていた。また、滑らかな塗り心地であり、チロシンの結晶は析出していなかった。これに対し、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルに替えて、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30を使用した比較例4のW/O/W型チロシン含有クリームは、W/O型エマルション滴の合一が見られ、チロシン結晶の析出によると考えられるざらざら感があった。内水相と外水相の接触により内水相のpHが下がり、チロシンが析出したものと推察される。
【0047】
実施例3
(W/O/W型抗アクネクリーム)
表3に示す処方のW/O/W型チロシン含有クリームを上記の製造手順に従って調製し、上記の方法により評価を行った。その結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例3のW/O/W型抗アクネクリームは、ニキビ防止の有効成分であるアスコルビルグルコシドおよびサリチル酸をそれぞれ最適なpH(溶解しやすいpH)で別々の内水相に溶解したものである。3日後の顕微鏡観察においても5μm程度の均一に分散した乳化滴が観察された。また、滑らかな塗り心地であり、サリチル酸の結晶析出はないものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、経時安定性の良好なW/O/W型乳化化粧料が提供される。