(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164616
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241120BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61B6/00 350D
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080227
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】野辺 昌史
(72)【発明者】
【氏名】西高 慎也
(72)【発明者】
【氏名】沓名 康成
(72)【発明者】
【氏名】田代 順一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知美
(72)【発明者】
【氏名】柳田 陽介
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA21
4C093FF13
4C093FF17
4C093FF42
4C093FF45
(57)【要約】
【課題】患者に対する病状説明を支援すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、抽出部と、画像データ生成部と、膨張部と、画像生成部とを具備する。取得部は、患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得する。抽出部は、前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出する。画像データ生成部は、前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成する。膨張部は、前記2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張する。画像生成部は、前記膨張された画像領域を含む前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得する取得部と、
前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成する画像データ生成部と、
前記2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張する膨張部と、
前記膨張された画像領域を含む前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成する画像生成部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記抽出部は、前記患者の血管におけるプラークを含む前記3次元医用画像データから、前記プラークに相当する前記画像領域を抽出し、
前記画像データ生成部は、前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、前記血管の長軸断面に相当する第1の2次元線画像データを生成し、
前記膨張部は、前記第1の2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張し、
前記画像生成部は、前記膨張された画像領域を含む前記第1の2次元線画像データに基づいて、前記2次元線画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記画像データ生成部は、前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、前記血管の短軸断面に相当する第2の2次元線画像データを更に生成し、
前記膨張部は、前記第2の2次元線画像データにおける前記抽出された画像領域の大きさに応じて、前記第1の2次元線画像データにおける前記抽出された画像領域を膨張する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記抽出部は、前記患者の骨における骨折線を含む前記3次元医用画像データから、前記骨折線に相当する前記画像領域を抽出し、
前記画像データ生成部は、前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、前記骨の所定の断面に相当する第3の2次元線画像データを生成し、
前記膨張部は、前記第3の2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張し、
前記画像生成部は、前記膨張された画像領域を含む前記第3の2次元線画像データに基づいて、前記2次元線画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記膨張部は、ユーザが設定した膨張率に応じて、前記抽出された画像領域を膨張する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記3次元医用画像データに設定された関心領域又はアノテーションに関する第1位置情報を更に取得し、
前記画像生成部は、前記2次元線画像において前記第1位置情報に相当する第2位置情報を特定し、前記特定した第2位置情報が所定の態様により表現された前記2次元線画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得する取得部と、
前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出する抽出部と、
前記3次元医用画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張する膨張部と、
前記膨張された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成する画像データ生成部と、
前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成する画像生成部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項8】
患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得することと、
前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出することと、
前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成することと、
前記2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張することと、
前記膨張された画像領域を含む前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成することと、
を具備する医用画像処理方法。
【請求項9】
患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得することと、
前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出することと、
前記3次元医用画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張することと、
前記膨張された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成することと、
前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成することと、
を具備する医用画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得する取得機能と、
前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出する抽出機能と、
前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成する画像データ生成機能と、
前記2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張する膨張機能と、
前記膨張された画像領域を含む前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成する画像生成機能と、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得する取得機能と、
前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出する抽出機能と、
前記3次元医用画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張する膨張機能と、
前記膨張された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成する画像データ生成機能と、
前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成する画像生成機能と、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、患者の病状を視覚的に表現するために、当該患者のシェーマ又は医用画像(モダリティ画像)を使用することがある。例えば、医師は患者のシェーマ又は医用画像を診療録に貼付し、この診療録を当該患者に提示しながら病状等を説明する。
【0003】
しかしながら、医師が患者のシェーマを手描きすることは、時間及び手間を要する。代わりに、医師がテンプレート化されたシェーマを使用する場合、当該シェーマは個々の患者に特有の形態を表現できない。一方、医用画像は過剰な情報を含むので、患者は当該医用画像中のどの部分に注目すべきかを判断しがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、患者に対する病状説明を支援することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、抽出部と、画像データ生成部と、膨張部と、画像生成部とを具備する。取得部は、患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データを取得する。抽出部は、前記3次元医用画像データから前記病変部分に相当する画像領域を抽出する。画像データ生成部は、前記抽出された画像領域を含む前記3次元医用画像データを用いて、2次元線画像データを生成する。膨張部は、前記2次元線画像データにおいて、前記抽出された画像領域を膨張する。画像生成部は、前記膨張された画像領域を含む前記2次元線画像データに基づいて、2次元線画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る医用画像処理システムの構成例を示すブロック図。
【
図2】本実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示すブロック図。
【
図3】本実施形態に係る操作端末の構成例を示すブロック図。
【
図4】本実施形態に係る医用画像処理装置の動作例を示すフローチャート。
【
図5】本実施形態に係る病変領域の膨張の第1例を示す図。
【
図6】本実施形態に係る病変領域の膨張の第2例を示す図。
【
図7】本実施形態に係る病変領域の膨張の第3例を示す図。
【
図9】変形例に係る医用画像処理装置の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る医用画像処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うとして、重複する説明を適宜、省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る医用画像処理システム100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理システム100は、患者の医用画像データを処理するシステムである。医用画像処理システム100は、各構成として医用画像処理装置1、複数の操作端末2、医用画像生成装置3及び医用画像記憶装置4を備える。各構成は、共通の信号通信路であるバス(BUS)を介して、互いに通信可能に接続される。
【0010】
医用画像処理装置1は、患者の医用画像データを処理する装置である。医用画像処理装置1は、医用画像処理システム100におけるサーバとして機能する。医用画像処理装置1は、高速な情報処理を実行し得るワークステーションでもよい。医用画像処理装置1は、医用画像記憶装置4から送信された医用画像データを処理し、処理した医用画像データを操作端末2又は医用画像記憶装置4に送信する。
【0011】
操作端末2は、医師等のユーザにより操作される端末である。操作端末2は、医用画像処理システム100におけるクライアントとして機能する。操作端末2は、デスクトップPC、ノートPC、スマートフォン、タブレット端末又はウェアラブル端末でもよい。
【0012】
医用画像生成装置3は、患者の医用画像データを生成する装置である。医用画像生成装置3は、患者を撮像する医用画像診断装置(例:X線診断装置、X線CT装置、MRI装置、超音波診断装置、核医学検査装置)でもよい。医用画像生成装置3は、生成した医用画像データを医用画像記憶装置4に送信する。
【0013】
医用画像記憶装置4は、各種の医用画像データを記憶する装置である。医用画像記憶装置4は、記憶媒体(例:磁気的記憶媒体、電磁的記憶媒体、光学的記憶媒体、半導体メモリ)でもよいし、記憶媒体との間で情報を読み書きする駆動装置でもよい。医用画像記憶装置4は、医用画像処理装置1、操作端末2又は医用画像生成装置3との間で、医用画像データを通信する。
【0014】
例えば、医用画像記憶装置4は、2次元又は3次元の医用画像データを記憶する。医用画像データは、X線投影データ、X線CTデータ、磁気共鳴データ、超音波データ又は核医学データでもよい。
【0015】
図2は、本実施形態に係る医用画像処理装置1の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置1は、各構成として処理回路11、記憶装置12及び通信装置13を備える。各構成は、共通の信号通信路であるバス(BUS)を介して、互いに通信可能に接続される。
【0016】
処理回路11は、医用画像処理装置1の全体の動作を制御する回路である。処理回路11は、少なくとも1つのプロセッサを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例:単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array))などの回路を意味する。プロセッサがCPUである場合、CPUは記憶装置12に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各機能を実現する。プロセッサがASICである場合、各機能がASICの回路内に論理回路として直接、組み込まれる。プロセッサは、単一の回路として構成されてもよいし、独立した複数の回路を互いに組み合わせて構成されてもよい。処理回路11は、各機能(取得機能111、抽出機能112、画像データ生成機能113、膨張機能114、画像生成機能115、システム制御機能116)を実現する。
【0017】
取得機能111は、各種のデータ又は情報を取得する機能である。例えば、取得機能111は、患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データD1を取得する。取得機能111は、3次元医用画像データD1に設定された関心領域又はアノテーションに関する第1位置情報P1を更に取得してもよい。取得機能111は、取得部の一例である。
【0018】
抽出機能112は、各種のデータ又は情報を抽出する機能である。例えば、抽出機能112は、取得機能111により取得された3次元医用画像データD1から病変部分に相当する画像領域(以下「病変領域」ともいう。)Aを抽出する。第一に、抽出機能112は、患者の血管におけるプラークを含む3次元医用画像データD1から、当該プラークに相当する画像領域A(プラーク領域)を抽出してもよい。第二に、抽出機能112は、患者の骨における骨折線を含む3次元医用画像データD1から、当該骨折線に相当する画像領域A(骨折線領域)を抽出してもよい。抽出機能112は、抽出部の一例である。
【0019】
画像データ生成機能113は、各種の画像データを生成する機能である。例えば、画像データ生成機能113は、抽出機能112により抽出された画像領域Aを含む3次元医用画像データD1を用いて、2次元線画像データD2を生成する。第一に、画像データ生成機能113は、血管の長軸断面に相当する2次元線画像データD2を生成してもよい。第二に、画像データ生成機能113は、血管の短軸断面に相当する2次元線画像データD2を生成してもよい。第三に、画像データ生成機能113は、骨の所定の断面に相当する2次元線画像データD2を生成してもよい。画像データ生成機能113は、画像データ生成部の一例である。
【0020】
膨張機能114は、各種の画像領域を膨張する機能である。例えば、膨張機能114は、画像データ生成機能113により生成された2次元線画像データD2において、画像領域Aを膨張する。第一に、膨張機能114は、血管の長軸断面に相当する2次元線画像データD2において、画像領域A(プラーク領域)を膨張してもよい。特に、膨張機能114は、血管の短軸断面に相当する2次元線画像データD2における画像領域Aの大きさに応じて、血管の長軸断面に相当する2次元線画像データD2における画像領域Aを膨張してもよい。第二に、膨張機能114は、骨の所定の断面に相当する2次元線画像データD2において、画像領域A(骨折線領域)を膨張してもよい。第三に、膨張機能114は、ユーザが設定した膨張率に応じて、画像領域Aを膨張してもよい。膨張機能114は、膨張部の一例である。
【0021】
画像生成機能115は、各種の画像を生成する機能である。例えば、画像生成機能115は、膨張機能114により膨張された画像領域Aを含む2次元線画像データD2に基づいて、2次元線画像Gを生成する。第一に、画像生成機能115は、膨張されたプラーク領域を含む2次元線画像データD2に基づいて、2次元線画像Gを生成してもよい。第二に、画像生成機能115は、膨張された骨折線領域を含む2次元線画像データD2に基づいて、2次元線画像Gを生成してもよい。第三に、画像生成機能115は、2次元線画像Gにおいて、取得機能111により取得された第1位置情報P1に相当する第2位置情報P2を特定してもよい。さらに、画像生成機能115は、特定した第2位置情報P2が所定の態様により表現された2次元線画像Gを生成してもよい。画像生成機能115は、画像生成部の一例である。
【0022】
システム制御機能116は、処理回路11が行う各種の動作を制御する機能である。例えば、システム制御機能116は、処理回路11が各機能(取得機能111、抽出機能112、画像データ生成機能113、膨張機能114、画像生成機能115)を実現するためのオペレーティングシステム(OS)を提供する。システム制御機能116は、システム制御部の一例である。
【0023】
記憶装置12は、各種のデータ又は情報を記憶する装置である。記憶装置12は、プロセッサにより読取可能な記憶媒体(例:磁気的記憶媒体、電磁的記憶媒体、光学的記憶媒体、半導体メモリ)でもよいし、記憶媒体との間でデータ又は情報を読み書きする駆動装置でもよい。記憶装置12は、処理回路11に各機能(取得機能111、抽出機能112、画像データ生成機能113、膨張機能114、画像生成機能115、システム制御機能116)を実現させる各プログラムを記憶する。記憶装置12は、記憶部の一例である。
【0024】
通信装置13は、医用画像処理システム100に含まれる各構成との間で、各種のデータ又は情報を通信する装置である。例えば、通信装置13は、操作端末2又は医用画像記憶装置4との間で、各種のデータ又は情報を通信する。通信装置13は、通信部の一例である。
【0025】
図3は、本実施形態に係る操作端末2の構成例を示すブロック図である。操作端末2は、各構成として処理回路21、記憶装置22、入力装置23、表示装置24及び通信装置25を備える。各構成は、共通の信号通信路であるバス(BUS)を介して、互いに通信可能に接続される。
【0026】
処理回路21は、操作端末2の全体の動作を制御する回路である。操作端末2の処理回路21は、医用画像処理装置1の処理回路11と同様なハードウェア構成を有する。処理回路21は、各機能(通信機能211、表示制御機能212、システム制御機能213)を実現する。
【0027】
通信機能211は、各種のデータ又は情報を通信する機能である。例えば、通信機能211は、医用画像処理装置1又は医用画像記憶装置4との間で、各種のデータ又は情報を通信する。通信機能211は、通信部の一例である。
【0028】
表示制御機能212は、各種の装置に各種のデータ又は情報を表示する機能である。例えば、表示制御機能212は、通信機能211により取得された各種のデータ又は情報を表示装置24に表示する。表示制御機能212は、表示制御部の一例である。
【0029】
システム制御機能213は、処理回路21が行う各種の動作を制御する機能である。例えば、システム制御機能213は、処理回路21が各機能(通信機能211、表示制御機能212)を実現するためのオペレーティングシステム(OS)を提供する。システム制御機能213は、システム制御部の一例である。
【0030】
記憶装置22は、各種のデータ又は情報を記憶する装置である。操作端末2の記憶装置22は、医用画像処理装置1の記憶装置12と同様なハードウェア構成を有する。記憶装置22は、処理回路21に各機能(通信機能211、表示制御機能212、システム制御機能213)を実現させる各プログラムを記憶する。記憶装置22は、記憶部の一例である。
【0031】
入力装置23は、ユーザから各種の入力操作を受け付ける装置である。入力装置23は、ユーザから受け付けた各種の入力操作を電気信号に変換し、この電気信号を処理回路21に出力する。入力装置23は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、操作パネル又はタッチパネルでもよい。入力装置23は、入力部の一例である。
【0032】
表示装置24は、各種のデータ又は情報を表示する装置である。表示装置24は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ又はLEDディスプレイでもよい。表示装置24は、入力装置23としても機能するタッチパネル式ディスプレイでもよい。表示装置24は、表示部の一例である。
【0033】
通信装置25は、医用画像処理システム100に含まれる各構成との間で、各種のデータ又は情報を通信する装置である。例えば、通信装置25は、医用画像処理装置1又は医用画像記憶装置4との間で各種のデータ又は情報を通信する。通信装置25は、通信部の一例である。
【0034】
図4は、本実施形態に係る医用画像処理装置1の動作例を示すフローチャートである。本動作例によれば、医用画像処理装置1は、2次元線画像データD2における病変領域Aを膨張することで、病変領域Aの視認性を向上させる。
【0035】
(ステップS1)まず、医用画像処理装置1は、3次元医用画像データD1を取得する。具体的には、医用画像処理装置1は取得機能111により、患者の組織における病変部分を含む3次元医用画像データD1を取得する。例えば、取得機能111は、医用画像記憶装置4にアクセスすることで、3次元医用画像データD1を取得する。3次元医用画像データD1は、縦、横及び高さの3次元位置情報を有するボリュームデータでもよい。ボリュームデータは、それぞれに3次元位置情報と、属性値とが与えられた複数のボクセルを含む。
【0036】
(ステップS2)次に、医用画像処理装置1は、病変領域Aを抽出する。具体的には、医用画像処理装置1は抽出機能112により、ステップS1において取得された3次元医用画像データD1から、病変部分に相当する画像領域(病変領域)Aを抽出する。例えば、抽出機能112は、ボリュームデータに含まれる全てのボクセルのうち、所定範囲の属性値を有する複数のボクセルを、病変領域Aとして抽出する。抽出機能112は、病変領域Aに限らず、所定の解剖学的構造に相当する画像領域を抽出してもよい。画像領域の抽出には、既知の手法が適用されてもよい。
【0037】
なお、抽出機能112は、ユーザが選択した解析アプリケーションの種類に応じて、3次元医用画像データD1から病変領域Aを抽出してもよい。第一に、ユーザが冠動脈用の解析アプリケーションを選択した場合、抽出機能112は、ボリュームデータから冠動脈領域と、プラーク領域(病変領域Aの一例)とを抽出する。第二に、ユーザが脳動脈瘤用の解析アプリケーションを選択した場合、抽出機能112は、ボリュームデータから母血管領域と、動脈瘤領域(病変領域Aの一例)とを抽出する。第三に、ユーザが骨解析用の解析アプリケーションを選択した場合、抽出機能112は、ボリュームデータから骨領域と、骨折線領域(病変領域Aの一例)とを抽出する。
【0038】
(ステップS3A)続いて、医用画像処理装置1は、2次元線画像データD2を生成する。具体的には、医用画像処理装置1は画像データ生成機能113により、ステップS2において病変領域Aが抽出された3次元医用画像データD1を用いて、2次元線画像データD2を生成する。例えば、画像データ生成機能113は、ボリュームデータをトゥーンレンダリング等することで、2次元線画像データD2を生成する。すなわち、画像データ生成機能113は、ボリュームデータから陰影を除去し、かつ輪郭線(エッジ)を抽出した後、このボリュームデータを所定の投影面に投影することで、2次元線画像データD2を生成する。
【0039】
なお、画像データ生成機能113は、ボリュームデータを前処理し、前処理したボリュームデータをトゥーンレンダリング等してもよい。例えば、画像データ生成機能113は、前処理としてボリュームデータを平滑化(例:オープニング、クロージング)してもよい。平滑化により、後続のトゥーンレンダリングにおいて不要な輪郭線が抽出されることによるノイズが低減される。
【0040】
(ステップS4A)続いて、医用画像処理装置1は、病変領域Aを膨張する。具体的には、医用画像処理装置1は膨張機能114により、ステップS3Aにおいて生成された2次元線画像データD2において、病変領域Aを膨張する(
図5、
図6及び
図7参照)。
【0041】
(ステップS5A)最後に、医用画像処理装置1は、2次元線画像Gを生成する。具体的には、医用画像処理装置1は画像生成機能115により、ステップS4Aにおいて膨張された病変領域Aを含む2次元線画像データD2に基づいて、2次元線画像Gを生成する。このとき、画像生成機能115は、病変領域Aに対して所定のパラメータ(例:色値、不透明度)を与えた後、この病変領域Aをレンダリングしてもよい。画像生成機能115は、生成した2次元線画像Gを操作端末2に送信してもよい。操作端末2は、送信された2次元線画像Gを表示装置24に表示してもよい。医師又は患者は、表示装置24に表示された2次元線画像Gを観察してもよい。ステップS5Aの後、医用画像処理装置1は一連の処理を終了する。
【0042】
なお、医用画像処理装置1は、複数の画像領域に対して同時に画像処理を行ってもよいし、複数の画像領域のそれぞれに対して順番に画像処理を行ってもよい。さらに、医用画像処理装置1は、順番に画像処理が行われた複数の画像領域を互いに重畳してもよい。
【0043】
図5は、本実施形態に係る病変領域Aの膨張の第1例を示す図である。本例は、膨張される前の病変領域Aに基づく2次元線画像Gと、膨張された後の病変領域Aに基づく2次元線画像Gとを示す。
【0044】
図5(A)は、患者の血管511の長軸断面に相当する2次元線画像510A及び510Bを示す。この長軸断面は、円筒形を成す血管511の長軸方向に沿う断面である。2次元線画像510A及び510Bは、血管511の内部にプラーク512が存在することを示す。2次元線画像510Aにおいて、プラーク512は芯線513を超えない。一方、2次元線画像510Bにおいて、プラーク512は芯線513を超えるように膨張される。
【0045】
図5(B)は、患者の冠動脈521の所定の断面に相当する2次元線画像520A及び520Bを示す。冠動脈521は、複数の血管511を含む。複数の血管511のそれぞれにおけるプラーク512に対して、
図5(A)に示す膨張処理が行われる。膨張処理前の2次元線画像520Aにおいては、冠動脈521におけるプラーク512が視認されにくい。一方、膨張処理後の2次元線画像520Bにおいては、冠動脈521におけるプラーク512が容易に視認される。膨張された複数のプラーク512の位置は、複数の円522により示される。
【0046】
図6は、本実施形態に係る病変領域Aの膨張の第2例を示す図である。2次元線画像610Aは、患者の血管611の長軸断面を示す。2次元線画像610Bは、患者の血管611の短軸断面を示す。この短軸断面は、円筒形を成す血管611の長軸方向に対して垂直な短軸方向に沿う断面である。2次元線画像610A及び610Bは、血管611の内部にプラーク612が存在することを示す。
【0047】
医用画像処理装置1は膨張機能114により、2次元線画像610A及び610Bのそれぞれにおけるプラーク612の大きさ(面積)を算出する。例えば、膨張機能114は、血管611の内部の画像領域(すなわち、血管壁の内側の領域)に対してプラーク612が占める画像領域の割合を、血管611の狭窄率として算出する。これにより、血管611の狭窄率は、2次元線画像610Aについては「50%」、2次元線画像610Bについては「75%」と算出される。
【0048】
膨張機能114は、2次元線画像610Bにおける血管611の狭窄率「75%」に応じて、2次元線画像610Aにおけるプラーク612を膨張する。例えば、膨張機能114は、2次元線画像610Aにおける血管611の狭窄率が「75%」になるように、プラーク612を膨張することで、2次元線画像610Cが得られる。
【0049】
一般に、3次元医用画像データD1における病変領域Aが2次元の投影面に投影された場合、2次元線画像Gにおける病変領域Aが過小になり得る。そこで、医用画像処理装置1は、短軸断面における血管611の狭窄率に応じて、長軸断面における血管611の狭窄率が実際よりも増大するように、長軸断面におけるプラーク612を膨張する。これにより、医用画像処理装置1は、2次元線画像Gにおいて病変領域Aが過小になる事態を回避し、病変領域Aの視認性を向上できる。
【0050】
図7は、本実施形態に係る病変領域Aの膨張の第3例を示す図である。2次元線画像710A及び710Bは、患者の骨711の長軸断面を示す。2次元線画像710A及び710Bは、骨711の表面に骨折線712が存在することを示す。特に、2次元線画像710Aにおいて骨折線712は、不明瞭に描画される。
【0051】
医用画像処理装置1は膨張機能114により、2次元線画像710Aにおける骨折線712を膨張する(すなわち、太くする)。膨張処理前の2次元線画像710Aにおいて、骨折線712が視認されにくい。一方、膨張処理後の2次元線画像710Bにおいては、骨折線712が容易に視認される。
【0052】
なお、膨張機能114は、骨折線712を膨張する代わりに、骨折線712の色を変更してもよいし、骨折線712を挟んで対向する2つの骨711を互いに離間してもよい。これにより、骨711における骨折線712又は骨折部分が容易に視認される。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、医用画像処理装置1は、患者の3次元医用画像データD1から病変領域Aを抽出し、抽出した病変領域Aが膨張される等により誇張された2次元線画像Gを生成する。したがって、医用画像処理装置1は、医師が患者のシェーマを手描きする時間及び手間を省略できる。さらに、医用画像処理装置1は、個々の患者に特有の形態を表現した2次元線画像Gを生成できる。患者は、2次元線画像Gを観察することで、2次元線画像G中のどの部分に病変領域Aが存在するかを容易に判断できる。
【0054】
(変形例)
以下、本実施形態に係る医用画像処理装置1の変形例について説明する。第一に、医用画像処理装置1は、ユーザが設定した膨張率に応じて、病変領域Aを膨張してもよい。例えば、ユーザは入力装置23を用いて、膨張率を数値として入力する。あるいは、ユーザは表示装置24に表示されたスライダーバー等のGUI(Graphical User Interface)を操作することで、膨張率を直感的に入力してもよい。これにより、医用画像処理装置1は、ユーザの嗜好に応じて病変領域Aが膨張された2次元線画像Gを生成できる。
【0055】
第二に、医用画像処理装置1は、ユーザにより3次元医用画像データD1に設定された関心領域又はアノテーションを、2次元線画像Gにおいて表現してもよい。本処理を実現するため、医用画像処理装置1は、3次元医用画像データD1に設定された関心領域又はアノテーションに関する第1位置情報P1を取得する。次に、医用画像処理装置1は、2次元線画像Gにおいて第1位置情報P1に相当する第2位置情報P2を特定する。最後に、医用画像処理装置1は、特定した第2位置情報P2が所定の態様(例:線、領域)により表現された2次元線画像Gを生成する。ユーザは、関心領域又はアノテーションが表現された2次元線画像Gを用いて、患者の病状等をより正確に判断できる。
【0056】
第三に、医用画像処理装置1は、ユーザからの指示に応じて、2次元線画像Gを含む読影レポートを生成してもよい。例えば、ユーザは表示装置24に表示された解析アプリケーションウィンドウ(不図示)において、「読影レポートの作成」に係るGUIボタンを選択する。この選択に応じて、医用画像処理装置1は、2次元線画像Gを含む読影レポートを自動的に生成する。これにより、医用画像処理装置1は、ユーザが読影レポートを手動で作成する時間及び手間を省略できる。
【0057】
図8は、変形例に係る病変領域Aの置換の例を示す図である。
図8に示す2次元線画像510Aは、
図5に示す2次元線画像510Aと同一である。本例によれば、2次元線画像510Aにおけるプラーク512がマーク515に置換されることで、2次元線画像510Cが得られる。2次元線画像510Cは、プラーク512をマーク515により記号的に表現することで、血管511における狭窄部分が容易に視認される。
【0058】
なお、医用画像処理装置1は膨張機能114により、2次元線画像510Aにおけるプラーク512の大きさ(面積)を算出してもよい。例えば、膨張機能114は、血管511の内部の画像領域(すなわち、血管壁の内側の領域)に対してプラーク512が占める画像領域の割合を、血管511の狭窄率として算出する。膨張機能114は、血管511の狭窄率が閾値以上である場合、プラーク512をマーク515により置換してもよい。
【0059】
図9は、変形例に係る医用画像処理装置1の動作例を示すフローチャートである。本動作例によれば、医用画像処理装置1は、3次元医用画像データD1における病変領域Aを膨張することで、病変領域Aの視認性を向上させる。
【0060】
(ステップS1)まず、医用画像処理装置1は、3次元医用画像データD1を取得する。
図9のステップS1は、
図4のステップS1と同一である。
【0061】
(ステップS2)次に、医用画像処理装置1は、病変領域Aを抽出する。
図9のステップS2は、
図4のステップS2と同一である。
【0062】
(ステップS3B)続いて、医用画像処理装置1は、病変領域Aを膨張する。具体的には、医用画像処理装置1は膨張機能114により、ステップS1において取得された3次元医用画像データD1において、ステップS2において抽出された病変領域Aを膨張する。この病変領域Aの膨張には、既知の手法が適用されてもよい。
【0063】
(ステップS4B)続いて、医用画像処理装置1は、2次元線画像データD2を生成する。具体的には、医用画像処理装置1は画像データ生成機能113により、ステップS3Bにおいて膨張された病変領域Aを含む3次元医用画像データD1を用いて、2次元線画像データD2を生成する。例えば、画像データ生成機能113は、ボリュームデータをトゥーンレンダリング等することで、2次元線画像データD2を生成する。
【0064】
(ステップS5B)最後に、医用画像処理装置1は、2次元線画像Gを生成する。具体的には、医用画像処理装置1は画像生成機能115により、ステップS4Bにおいて生成された2次元線画像データD2に基づいて、2次元線画像Gを生成する。ステップS5Bの後、医用画像処理装置1は一連の処理を終了する。
【0065】
以上説明した変形例によれば、医用画像処理装置1は、患者の3次元医用画像データD1から病変領域Aを抽出し、抽出した病変領域Aが膨張される等により誇張された2次元線画像Gを生成する。すなわち、変形例に係る医用画像処理装置1によれば、本実施形態に係る医用画像処理装置1と同様な効果が得られる。
【0066】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、患者に対する病状説明を支援することができる。
【0067】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 医用画像処理装置
2 操作端末
3 医用画像生成装置
4 医用画像記憶装置
11,21 処理回路
12,22 記憶装置
13,25 通信装置
23 入力装置
24 表示装置
100 医用画像処理システム
111 取得機能
112 抽出機能
113 画像データ生成機能
114 膨張機能
115 画像生成機能
116,213 システム制御機能
211 通信機能
212 表示制御機能
510A,510B,510C,520A,520B,610A,610B,610C,710A,710B 2次元線画像
511,611 血管
512,612 プラーク
513 芯線
515 マーク
521 冠動脈
522 円
711 骨
712 骨折線