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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164618
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】位置情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080229
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 知己
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保馬
(72)【発明者】
【氏名】石川 潤
(72)【発明者】
【氏名】高宮 和貴
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC07
5J062CC18
5J062DD22
5J062FF01
5J062GG02
(57)【要約】
【課題】効率よく、かつ高い精度で自装置の位置を推定すること。
【解決手段】位置情報処理装置は、3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、検出方向ごとに受信する第1受信部と、検出方向ごとに、第1受信部で受信した第1信号に基づいて、各送信装置の優先度を算出し、優先度に基づいて検出方向ごとに送信装置を選択する選択部と、選択部で選択された送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定する位置推定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信する第1受信部と、
前記検出方向ごとに、前記第1受信部で受信した第1信号に基づいて、各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択する選択部と、
前記選択部で選択された送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定する位置推定部と、
を備える位置情報処理装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記第1受信部により前記第1信号が検出された場合の検出方向の数を送信装置ごとに算出し、前記検出方向の数が少ない送信装置ほど高い値となるように前記優先度を算出し、前記検出方向ごとに前記優先度が相対的に高い送信装置を選択する、
請求項1に記載の位置情報処理装置。
【請求項3】
無指向性アンテナを用いて、送信装置から送信された当該送信装置の位置情報を少なくとも含む第2信号を受信する第2受信部をさらに備え、
前記選択部は、前記第2信号の信号強度に対する前記第1信号の信号強度の比、または前記第1信号の信号強度と前記第2信号の信号強度との差に基づいて前記優先度を算出し、前記検出方向ごとに前記優先度が相対的に高い送信装置を選択する、
請求項1に記載の位置情報処理装置。
【請求項4】
前記検出方向それぞれに対応する送信指向性を設定可能なアンテナを用いて、送信装置の送信電力を上げるための制御信号を送信する送信部をさらに備え、
前記選択部は、前記第1受信部で受信された、一の検出方向に対応する送信装置の数が所定数未満である場合に、前記送信指向性を前記一の検出方向に設定させて、前記制御信号を前記送信部に送信させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の位置情報処理装置。
【請求項5】
3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信するステップと、
前記検出方向ごとに、前記第1信号に基づいて各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択するステップと、
選択された前記送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定するステップと、
を位置情報処理装置が備えるコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自装置の周辺に存在する他装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自車両が周辺車両の位置情報を取得し、取得した周辺車両の位置情報に基づいて、自車両の位置を推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-141073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、適切な周辺車両(周辺装置)から効率よく回答信号を受信することは十分には考慮されていない。例えば、複数の周辺装置から位置情報を受信したとしても、自装置からみてそれらの周辺装置がほぼ同じ方向に位置するような場合、自装置の位置を精度よく推定できない可能性がある。また、特許文献1の構成では例えば、自装置からみて周辺装置がほぼ同じ方向に位置するような場合に、自装置の位置の推定にあまり役立たないにも関わらず、回答信号の生成処理、回答信号の受信処理、自装置の位置を推定する処理などを行うため、自装置および周辺装置に無駄な処理負荷が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、自装置および周辺装置に無駄な処理負荷を発生させることなく、かつ高い精度で自装置の位置を推定することのできる位置情報処理装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置情報処理装置は、3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信する第1受信部と、前記検出方向ごとに、前記第1受信部で受信した第1信号に基づいて、各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択する選択部と、前記選択部で選択された送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定する位置推定部と、を備える。
【0007】
本発明のプログラムは、3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信するステップと、前記検出方向ごとに、前記第1信号に基づいて各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択するステップと、選択された前記送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定するステップと、を位置情報処理装置が備えるコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自装置及および周辺装置に無駄な処理負荷を発生させることなく、かつ高い精度で自装置の位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る位置情報処理システムを説明するための図である。
図2図2は、第1実施形態に係る端末装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る第1検出方向の送信装置を検出する処理を示すシーケンス図である。
図5図5は、第1実施形態に係る第1検出方向の通信範囲を説明するための図である。
図6図6は、第1実施形態に係る第2検出方向の送信装置を検出する処理を示すシーケンス図である。
図7図7は、第1実施形態に係る第2検出方向の通信範囲を説明するための図である。
図8図8は、第1実施形態に係る第3検出方向の送信装置を検出する処理を示すシーケンス図である。
図9図9は、第1実施形態に係る第3検出方向の通信範囲を説明するための図である。
図10図10は、第1実施形態に係る端末装置の処理内容を示すフローチャートである。
図11図11は、第1実施形態に代表装置を選択する処理を示すフローチャートである。
図12図12は、第1実施形態に係る送信装置の処理内容を示すフローチャートである。
図13図13は、第1実施形態に係る代表装置の抽出結果を説明するための図である。
図14図14は、第1実施形態に係る第1位置推定方法を説明するための図である。
図15図15は、第1実施形態に係る第2位置推定方法を説明するための図である。
図16図16は、第1実施形態に係る第3位置推定方法を説明するための図である。
図17図17は、第1実施形態に係る位置推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図18図18は、第2実施形態に係る端末装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
<第1実施形態>
(位置情報処理システム)
図1を用いて、第1実施形態に係る位置情報処理システムについて説明する。図1は、第1実施形態に係る位置情報処理システムを説明するための図である。
【0012】
図1に示すように、位置情報処理システム1000は、端末装置1と、送信装置2-1と、送信装置2-2と、送信装置2-3と、送信装置2-4と、送信装置2-5と、送信装置2-6と、を含む。送信装置2-1から送信装置2-6は、端末装置1の通信エリアR内に位置している。送信装置2-1から送信装置2-6は、端末装置1の周辺装置と呼ばれることもある。送信装置2-1から送信装置2-6を区別する必要のない場合には、送信装置2と総称することもある。
【0013】
位置情報処理システム1000において、例えば端末装置1が自ら測位できない状態となった場合、端末装置1は、送信装置2-1から送信装置2-6のそれぞれから位置情報を取得する。端末装置1は、送信装置2-1から送信装置2-6のそれぞれから取得した位置情報に基づいて、自装置(自局)の位置を推定することができる。なお、送信装置2の数は、基本的には3つ以上であるが、2つであっても、ある程度の精度で自装置の位置を推定することは可能である。すなわち、送信装置2は2つ以上の任意の数であってよい。
【0014】
(端末装置)
図2を用いて、第1実施形態に係る端末装置の構成例について説明する。図2は、第1実施形態に係る端末装置の構成例を示すブロック図である。
【0015】
図2に示すように、端末装置1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部10と、アンテナ20と、記憶部30と、操作部40と、表示部50と、音声入力部60と、音声出力部70と、制御部80と、を含む。端末装置1は、例えば、業務用無線機、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、PC等であるが、これらに限定されない。端末装置1は、位置情報処理装置の一種である。
【0016】
GNSS受信部10は、GNSS衛星からのGNSS信号(位置データ)を受信するGNSS受信器等で構成される。GNSS受信部10は、受信した信号に基づいて特定した位置データ(位置情報)を制御部80の位置情報管理部90に出力する。ただし、端末装置1はGNSS受信部10を備えなくてもよい。つまり、端末装置1は自装置の位置を測定する機能を持たなくてもよい。
【0017】
アンテナ20は、指向性アンテナ21と、無指向性アンテナ22と、を備える。
【0018】
指向性アンテナ21は、端末装置1の位置情報を推定する際に使用するアンテナである。本実施形態における指向性アンテナ21は、ある特定の方向(1つの方向)に対して送信指向性および受信指向性をもつ。また、指向性アンテナ21は、少なくとも3つの方向に向きを設定する機構を備えている。例えば、モーターやギア等で構成される機構(回転機構)を用いて指向性アンテナ21の向きを設定すればよい。ただし、指向性アンテナ21の指向性の向きを電気的(電子的)に設定してもよく、機構的(機械的)に指向性アンテナ21に向きを変えることには限定されない。無指向性アンテナ22は、端末装置1が通常の通信で使用するアンテナである。通常の通信には、音声通信および映像通信などが含まれる。
【0019】
記憶部30は、各種のデータやプログラム(ソフトウェア)を記憶(格納)する。記憶部30は、例えば、端末装置1において、各送信装置2から受信した送信装置2のID(識別子)、位置情報、応答メッセージ受信時の電波強度、指向性アンテナの方向などの情報を紐付けて(関連付けて)保存する。記憶部30は、半導体メモリ等で構成されており、端末装置1の電源を切っても必要なデータが保持されるように、少なくとも一部が不揮発性メモリによって構成されている。
【0020】
操作部40は、例えば、ユーザの操作を受け付けるためのキーやボタンを備える。操作部40は、例えば、タッチパネルを備えていてもよい。
【0021】
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)またはLED(Light Emitting Diode)等を備えている。表示部50は、各種の情報を表示する。表示部50は、端末装置1が映像通信(ビデオ通話)を行う場合には、その映像を表示する。なお、操作部40としてタッチパネル等を用いて、操作部40と表示部50とを一体的に構成してもよい。つまり、操作部40のキーやボタンは、必ずしも物理的な入力デバイスでなくてもよく、表示部50に表示されるキーやボタン(仮想的な入力デバイス)であってもよい。
【0022】
音声入力部60は、例えば、マイクで構成されている。音声入力部60は、音声通話や映像通話の際に端末装置1のユーザの音声を収音する。また、制御部80は、音声入力部60が収音したユーザの音声を音声認識した結果(音声コマンド)に基づいて、端末装置1を制御してもよい。例えば、制御部80は、音声コマンドにより、後述する端末装置1の位置推定処理を開始してもよい。
【0023】
音声出力部70は、例えば、スピーカ、イヤホン等で構成されている。音声出力部70は、音声通話や映像通話の際に通話音声を出力する。音声出力部70は、通話の着信音や各種の報知音や警報音などを出力してもよい。ただし、音声入力部60および音声出力部70を省略することも可能である。
【0024】
制御部80は、端末装置1を統括的に制御する。制御部80は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置で構成されている。
【0025】
制御部80は、位置情報管理部90と、アンテナ制御部100と、無線通信部110と、送信電力制御部120と、選択部130と、位置推定処理部140と、タイマ管理部150と、を含む。
【0026】
位置情報管理部90は、GNSS受信部10から取得した位置データを管理する。位置情報管理部90は、端末装置1の位置情報(緯度、経度など)を取得するため、位置情報取得部と呼ばれることもある。なお、本実施形態に係る処理においては、GNSS受信部10および位置情報管理部90が搭載されていない状態、あるいはそれらが故障している状態、あるいは正常な測位ができない状態(障害物等によりGNSSの電波が受信できない等)を想定している。
【0027】
アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21と、無指向性アンテナ22との切り替えを制御する。アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の向き(方向)を制御する。上述したように、指向性アンテナ21は少なくとも3つの方向に向きを設定可能な機構を備えている。アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の向きを順次3つの方向に設定することにより、指向性アンテナ21を3つの方向それぞれに指向性をもつアンテナとして機能させる。
【0028】
無線通信部110は、自装置の位置推定時において、各送信装置2への位置データ要求メッセージ(位置情報要求メッセージ)の送信や、その応答メッセージの受信を制御する。無線通信部110は、他の端末装置1と音声通話やデータ交換を行う場合、つまり通常時の無線通信全般を制御する。本実施形態に係る端末装置1は、音声、テキスト、映像などの各種のデータを通信できるものとするが、データの種別は特に限定されない。
【0029】
無線通信部110は、データを送信する送信部111と、データを受信する第1受信部112および第2受信部113とを含む。第1受信部112は、指向性アンテナ21を用いて、信号を受信する。第2受信部113は、無指向性アンテナ22を用いて、信号を受信する。本実施形態において、指向性アンテナ21は、1つの方向に指向性をもっており、指向性アンテナ21の向き、つまり指向性を順次3つの方向に設定する。このため、指向性アンテナ21は、3つの検出方向それぞれに対応する3つの受信指向性を設定可能なアンテナとして機能する。すなわち、第1受信部112は、3つの検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて信号を受信する。換言すれば、第1受信部112は、3つの検出方向それぞれに対応する受信指向性をもつ(有する)アンテナを用いて信号を受信する。
【0030】
送信部111は、アンテナ制御部100によって決定された指向性アンテナ21あるいは無指向性アンテナ22を用いて信号を送信する。
【0031】
具体的には、通常時において、第2受信部113は無指向性アンテナ22を用いて信号を受信し、送信部111は無指向性アンテナ22を用いて信号を送信する。一方、後述するように、自装置の位置の推定時においては、第1受信部112は指向性アンテナ21を用いて信号を受信し、送信部111は指向性アンテナ21を用いて信号を送信する。
【0032】
より具体的には、通常時においては、無指向性アンテナ22と第2受信部113とを用いて信号を受信し、送信部111は無指向性アンテナ22を用いて信号を送信する。一方、後述するように、自装置の位置推定時において、指向性アンテナ21と第1受信部112を用いて信号を受信し、送信部111は指向性アンテナ21を用いて信号を送信する。上述したように、指向性アンテナ21は3つの方向それぞれに対応する3つの送信指向性を設定可能であるため、送信部111は、3つの方向それぞれに対応する送信指向性を設定可能なアンテナを用いて信号を送信する。
【0033】
無線通信部110が使用可能な無線は、業務用無線、4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)等の携帯電話回線、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線などである。無線通信部110は、例えば、業務用無線と近距離無線など複数種類の無線を同時にあるいは切り替えて使用可能であってもよい。
【0034】
送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージを各送信装置2に送信する際の送信電力を制御する。
【0035】
選択部130は、自装置の位置の推定処理に用いる送信装置2を選択する。具体的には、選択部130は、指向性アンテナ21で設定した各指向性の方向に対して1台ずつ代表となる送信装置2を特定(選択)する。代表となる送信装置2は、代表装置とも呼ばれる。
【0036】
位置推定処理部140は、選択部130で特定した送信装置2の位置情報や受信電波強度の情報から端末装置1の位置(自端末の位置、自装置の位置)を推定する。
【0037】
タイマ管理部150は、自装置の位置の推定時においては、位置データ要求メッセージの応答メッセージの待ち時間を制御する。
【0038】
上述したとおり、制御部80は、位置情報管理部90と、アンテナ制御部100と、無線通信部110と、送信電力制御部120と、選択部130と、位置推定処理部140と、タイマ管理部150と、を含む。なお、これらの機能分担は、あくまでも一例であり、容易に変更可能である。例えば、選択部130と、位置推定処理部140とを一体的に構成してもよい。また例えば、アンテナ制御部100と、無線通信部110とを一体的に構成してもよい。また、制御部80と、無線通信部110とを別々に構成してもよい。
【0039】
(送信装置)
図3を用いて、第1実施形態に係る送信装置の構成例について説明する。図3は、第1実施形態に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、送信装置2は、GNSS受信部10Aと、アンテナ20Aと、記憶部30Aと、操作部40Aと、表示部50Aと、音声入力部60Aと、音声出力部70Aと、制御部80Aと、を含む。記憶部30Aは、端末装置1の記憶部30と同様に、半導体メモリ等で構成されており、送信装置2の電源を切っても必要なデータが保持されるように、少なくとも一部が不揮発性メモリによって構成されている。操作部40A、表示部50A、音声入力部60A、音声出力部70Aは、それぞれ端末装置の操作部40、表示部50、音声入力部60、音声出力部70と同様のデバイスで構成されている。
【0041】
送信装置2は、端末装置1と同じ装置であってもよいし、異なる装置であってもよい。例えば、端末装置1がスマートフォンであって、送信装置2が車載機器であってよい。送信装置2は、移動可能な装置であってもよいし、特定の場所の固定されている装置であってもよい。送信装置2は、例えば、各種のモバイル機器、ウェアラブル機器、IoT(Interneto of Things)機器であってもよい。送信装置2は、操作部40Aと、表示部50Aと、音声入力部60Aと、音声出力部70Aとが省略されていてもよい。
【0042】
GNSS受信部10Aは、端末装置1のGNSS受信部10と同様に、GNSS衛星からのGNSS信号(位置データ)を受信するGNSS受信器等で構成される。GNSS受信部10Aは、受信した信号に基づいて特定した位置データ(位置情報)を制御部80Aの位置情報管理部90Aに出力する。アンテナ20Aは、後述する位置データ要求メッセージを受信する際、および送信装置2の位置情報を送信する際に使用されるアンテナである。アンテナ20Aは、指向性のアンテナであってもよいし、無指向性のアンテナであってもよい。
【0043】
制御部80Aは、位置情報管理部90Aと、無線通信部110Aと、送信電力制御部120Aと、タイマ管理部150Aと、を含む。制御部80Aは、アンテナ制御部100と、選択部130と、位置推定処理部140と、を含まない点で、図2に示す制御部80と異なっている。
【0044】
位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから取得した位置データ(位置情報)を管理する。位置情報管理部90Aは、送信装置2の位置情報(緯度、経度など)を取得するため、位置情報取得部と呼ばれることもある。なお、送信装置2の位置情報に高度や送信装置2の移動情報(移動速度、移動方向など)が含まれていてもよい。本実施形態に係る処理においては、GNSS受信部10Aおよび位置情報管理部90Aが正常に機能しており、位置情報管理部90Aが送信装置2の位置を取得出来る状態にあることを前提としている。
【0045】
無線通信部110Aは、送信部111Aと、受信部114Aと、を備える。送信部111Aは、アンテナ20Aを用いて信号を送信する。受信部114Aは、アンテナ20Aを用いて信号を受信する。
【0046】
送信電力制御部120Aは、送信装置2の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する際の送信電力を制御する。
【0047】
タイマ管理部150Aは、端末装置1から受信した位置データ要求メッセージに対する応答メッセージの送信遅延時間を制御する。タイマ管理部150Aが備えるタイマを「応答メッセージ送信遅延タイマ」あるいは「応答遅延タイマ」と呼ぶこともある。
【0048】
[送信装置の検出方法]
(第1検出方向における検出方法)
図4図5とを用いて、第1実施形態に係る第1検出方向における送信装置の検出方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る第1検出方向の送信装置を検出する処理を示すシーケンス図である。図5は、第1実施形態に係る第1検出方向の通信範囲を説明するための図である。
【0049】
図4に示すように、端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21を活性化する(ステップS10)。具体的には、端末装置1のアンテナ制御部100は、使用するアンテナを指向性アンテナ21に切り替える。
【0050】
端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第1検出方向に設定する(ステップS20)。具体的には、図5に示すように、端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第1検出方向V1に設定する。図5に示す例では、第1検出方向V1に対応する第1通信エリアR1には、送信装置2-1と、送信装置2-2と、送信装置2-3と、送信装置2-6とが位置している。
【0051】
端末装置1の送信部111は、第1検出方向V1に向かって位置データ要求メッセージを送信する(ステップS30)。第1検出方向V1に向かって送信された位置データ要求メッセージは、第1通信エリアR1に位置している送信装置2が受信することができる。図5に示す例では、送信装置2-1と、送信装置2-2と、送信装置2-3と、送信装置2-6とが位置データ要求メッセージを受信する。送信装置2-4と、送信装置2-5とは、位置データ要求メッセージを受信することができない。
【0052】
送信装置2-1と、送信装置2-2と、送信装置2-3と、送信装置2-6とのそれぞれのタイマ管理部150Aは、乱数等を用いてランダムに待機時間を設定し、応答遅延タイマを起動する(ステップS40a、S40b、S40c、S40d)。これにより、各送信装置2が応答メッセージを送信するタイミングが同時になることを防止できる。ただし、後述するように、応答遅延タイマの起動を省略して次のステップに処理を進めてもよい。
【0053】
送信装置2-1の位置情報管理部90Aは、応答遅延タイマで設定された時間が経過したのち、GNSS受信部10Aから送信装置2-1の位置情報を取得する(ステップS50a)。同様に、送信装置2-2の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-2の位置情報を取得する(ステップS50b)。同様に、送信装置2-3の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-3の位置情報を取得する(ステップS50c)。同様に、送信装置2-6の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-6の位置情報を取得する(ステップS50d)。
【0054】
送信装置2-1の送信部111Aは、送信装置2-1の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS60a)。送信装置2-2の送信部111Aは、送信装置2-2の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS60b)。送信装置2-3の送信部111Aは、送信装置2-3の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS60c)。送信装置2-6の送信部111Aは、送信装置2-6の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS60d)。
【0055】
端末装置1の第1受信部112は、指向性アンテナ21で受信した応答メッセージを記憶部30に記憶させる(ステップS70)。ここで、例えば、送信装置2-3は、第1通信エリアR1の境界付近に位置しているので、端末装置1の第1受信部112は、送信装置2-3が送信した応答メッセージを受信できないこともある。端末装置1の第1受信部112で受信する応答メッセージは、「第1信号」あるいは「第1通知信号」あるいは「第1通知情報」と呼ばれることもある。そして、第1検出方向の検出処理を終了する。
【0056】
(第2検出方向における検出方法)
図6図7とを用いて、第1実施形態に係る第2検出方向における送信装置の検出方法について説明する。図6は、第1実施形態に係る第2検出方向の送信装置を検出する処理を示すシーケンス図である。図7は、第1実施形態に係る第2検出方向の通信範囲を説明するための図である。
【0057】
第2検出方向の送信装置を検出する処理は、第1検出方向の送信装置を検出する処理の終了後に続けて実行される処理である。
【0058】
端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第2方向に設定する(ステップS80)。具体的には、図7に示すように、端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第2検出方向V2に設定する。図7に示す例では、第2検出方向V2に対応する第2通信エリアR2には、送信装置2-3と、送信装置2-4と、送信装置2-5とが位置している。
【0059】
端末装置1の送信部111は、第2検出方向V2に向かって位置データ要求メッセージを送信する(ステップS90)。第2検出方向V2に向かって送信された位置データ要求メッセージは、第2通信エリアR2に位置している送信装置2が受信することができる。図7に示す例では、送信装置2-3と、送信装置2-4と、送信装置2-5とが位置データ要求メッセージを受信する。送信装置2-1と、送信装置2-2と、送信装置2-6とは、位置データ要求メッセージを受信することができない。
【0060】
送信装置2-3と、送信装置2-4と、送信装置2-5とのそれぞれのタイマ管理部150Aは、それぞれランダムに待機時間を設定し、応答遅延タイマを起動する(ステップS100a、S100b、S100c)。
【0061】
送信装置2-3の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-3の位置情報を取得する(ステップS110a)。送信装置2-4の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-4の位置情報を取得する(ステップS110b)。送信装置2-5の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-5の位置情報を取得する(ステップS110c)。
【0062】
送信装置2-3の送信部111Aは、送信装置2-3の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS120a)。送信装置2-4の送信部111Aは、送信装置2-4の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS120b)。送信装置2-5の送信部111Aは、送信装置2-5の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS120c)。
【0063】
端末装置1の第1受信部112は、指向性アンテナ21で受信した応答メッセージを記憶部30に記憶させる(ステップS130)。そして、第2検出方向の検出処理を終了する。
【0064】
(第3検出方向における検出方法)
図8図9とを用いて、第1実施形態に係る第3検出方向における送信装置の検出方法について説明する。図8は、第1実施形態に係る第3検出方向の送信装置を検出する処理を示すシーケンス図である。図9は、第1実施形態に係る第3検出方向の通信範囲を説明するための図である。
【0065】
第3検出方向の送信装置を検出する処理は、第2検出方向の送信装置を検出する処理の終了後に続けて実行される処理である。
【0066】
端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第3方向に設定する(ステップS140)。具体的には、図9に示すように、端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第3検出方向V3に設定する。図9に示す例では、第3検出方向V3に対応する第3通信エリアR3には、送信装置2-2と、送信装置2-5と、送信装置2-6とが位置している。
【0067】
端末装置1の送信部111は、第3検出方向V3に向かって位置データ要求メッセージを送信する(ステップS150)。第3検出方向V3に向かって送信された位置データ要求メッセージは、第3通信エリアR3に位置している送信装置2が受信することができる。図9に示す例では、送信装置2-2と、送信装置2-5と、送信装置2-6とが位置データ要求メッセージを受信する。送信装置2-1と、送信装置2-3と、送信装置2-4とは、位置データ要求メッセージを受信することができない。
【0068】
送信装置2-2と、送信装置2-5と、送信装置2-6とのそれぞれのタイマ管理部150Aは、それぞれランダムに待機時間を設定し、応答遅延タイマを起動する(ステップS160a、S160b、S160c)。
【0069】
送信装置2-2の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-2の位置情報を取得する(ステップS170a)。送信装置2-5の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-5の位置情報を取得する(ステップS170b)。送信装置2-6の位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aから送信装置2-6の位置情報を取得する(ステップS170c)。
【0070】
送信装置2-2の送信部111Aは、送信装置2-2の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS180a)。送信装置2-5の送信部111Aは、送信装置2-5の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS180b)。送信装置2-6の送信部111Aは、送信装置2-6の位置情報を含む応答メッセージを端末装置1に送信する(ステップS180c)。
【0071】
端末装置1の第1受信部112は、指向性アンテナ21で受信した応答メッセージを記憶部30に記憶させる(ステップS190)。ここで、例えば、送信装置2-2は、第3通信エリアR3の境界付近に位置しているので、端末装置1の第1受信部112は、送信装置2-2が送信した応答メッセージを受信できないこともある。
【0072】
端末装置1のアンテナ制御部100は、指向性アンテナ21を非活性化する(ステップS200)。
【0073】
端末装置1の選択部130は、第1検出方向V1、第2検出方向V2、および第3検出方向V3の各々の方向の代表装置を特定する(ステップS210)。代表装置を特定する処理の詳細は、後述する。
【0074】
端末装置1の位置推定処理部140は、選択部130で特定した代表装置の位置情報や受信電波強度の情報に基づいて自装置(端末装置1)の位置を推定する(ステップS220)。位置を推定する処理の詳細は、後述する。そして、図8の処理を終了する。
【0075】
(端末装置の処理内容)
図10を用いて、第1実施形態に係る端末装置1の処理内容について説明する。図10は、第1実施形態に係る端末装置1の処理内容を示すフローチャートである。
【0076】
制御部80は、自装置の位置の推定が必要であるか否かを判定する(ステップS300)。自装置の位置の推定が必要であると判定された場合(ステップS300;Yes)、ステップS310に進む。例えば、端末装置1にGNSS受信部10および位置情報管理部90が搭載されていない場合、あるいはそれらが正常に機能していない場合に、Yesと判定される。自装置の位置の推定が必要であると判定されない場合(ステップS300;No)、制御部80は、ステップS300の処理に留まる。
【0077】
ステップS300でYesと判定された場合、アンテナ制御部100は、無指向性アンテナ22の使用を止める(非活性化する)(ステップS310)。そして、ステップS320に進む。
【0078】
アンテナ制御部100は、使用するアンテナを指向性アンテナ21に切り替える(活性化する)(ステップS320)。ステップS330に進む。
【0079】
アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を特定の方向に設定する(ステップS330)。具体的には、アンテナ制御部100は、ステップS330を1回目に実行する際には第1検出方向V1(図5参照)に設定する。アンテナ制御部100は、ステップS330を2回目に実行する際には第2検出方向V2(図7参照)に設定する。アンテナ制御部100は、ステップS330を3回目に実行する際には第3検出方向V3(図9参照)に設定する。ここでは、1回目なので、アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第1検出方向V1に設定する。そして、ステップS340に進む。
【0080】
送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージを送信する送信電力を初期値に設定する(ステップS340)。具体的には、送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージを送信する送信電力の初期値として、自装置が使用可能な送信電力の範囲の中で、比較的低い(小さな)電力値を設定する。そして、ステップS350に進む。
【0081】
選択部130は、位置データ要求メッセージに設定するパラメータである「応答メッセージ送信電力制御指示」を「指示なし」に設定する(ステップS350)。「指示なし」の場合、送信装置2が応答メッセージを送信する際に、初期値(デフォルト値)の送信電力が用いられる。そして、ステップS360に進む。
【0082】
送信部111は、全ての送信装置2を受信対象に設定して位置データ要求メッセージを送信する(ステップS360)。なお、送信部111は、受信する装置を特定しない無線プロトコルを用いてもよい。位置データ要求メッセージは、ステップS330で設定された特定の方向に指向性をもつ指向性アンテナ21を用いて送信される。つまり、位置データ要求メッセージは、所定の検出方向に対応する送信指向性をもつアンテナを用いて送信される。このため、指向性アンテナ21が指向性をもつ方向に存在する送信装置2が位置データ要求メッセージを受信する可能性が高くなる。そして、ステップS370に進む。
【0083】
なお、位置データ要求メッセージは以下の(1)から(3)に示す送信電力指示の情報を含む。位置データ要求メッセージは、送信装置2の送信電力を制御する機能をもつため、「制御指示」あるいは「制御信号」あるいは「制御情報」と呼ばれることもある。なお、端末装置1は、位置データ要求メッセージとは別に、送信装置2を制御するための制御信号を送信してもよい。
<送信電力制御指示>
(1)応答メッセージ送信電力制御指示(制御指示):「指示あり」/「指示なし」
(2)制御指示有りの場合:電力を上げる/下げる指示
(3)制御指示有りの場合:電力上げ下げの変化量
【0084】
タイマ管理部150は、応答メッセージ待ちタイマを起動する(ステップS370)。タイマの待ち時間は任意であるが、タイマ管理部150は、例えば5秒等に設定すればよい。そして、ステップS380に進む。
【0085】
タイマ管理部150は、応答メッセージ待ちタイマが満了したか否かを確認する(ステップS380)。つまり、タイマ管理部150は、位置データ要求メッセージを送信した後、所定時間が経過したか否かを判定する。応答メッセージ待ちタイマが満了している場合(ステップS380;Yes)、ステップS420に進む。応答メッセージ待ちタイマが満了していない場合(ステップS380;No)、ステップS390に進む。
【0086】
ステップS380でNoと判定された場合、第1受信部112は、応答メッセージ(第1信号)を受信したか否かを判定する(ステップS390)。つまり、本実施形態において、応答メッセージ(第1信号)は、ステップS330で設定された特定の方向に受信指向性をもつ指向性アンテナ21を用いて受信される。このため、指向性アンテナ21の受信指向性の方向に存在する送信装置から送信された応答メッセージを受信する可能性が高くなる。応答メッセージを受信したと判定された場合(ステップS390;Yes)、ステップS400に進む。応答メッセージを受信したと判定されない場合(ステップS390;No)、ステップS380に戻り、制御部80は、同様の制御を繰り返す。
【0087】
ステップS390でYesと判定された場合、選択部130は、第1受信部112で受信された応答メッセージを解析する(ステップS400)。そして、ステップS410に進む。
【0088】
選択部130は、解析した応答メッセージを記憶部30に記憶させる(ステップS410)。具体的には、選択部130は、以下の(1)から(7)等の情報を紐付けて(関連付けて)記憶部30に記憶させる。
(1)指向性アンテナ21の方向
(2)応答メッセージを送信した送信装置2の識別子
(3)応答メッセージの位置情報
(4)応答メッセージの受信電波強度(受信信号強度)
(5)送信装置2が応答メッセージを送信する際の送信電力情報
(6)送信装置2が位置データ要求メッセージを受信した際の受信電波強度(受信信号強度)
(7)応答メッセージを受信した日時(受信日時)
【0089】
なお、選択部130は、応答メッセージに送信装置2において設定した位置情報の精度を示す情報(GNSS信号の受信状況や位置特定に要した時間など)が含まれている場合には、その情報も記憶部30に記憶させる。その後、ステップS380に戻り、制御部80は、同様の制御を繰り返す。つまり、応答メッセージ待ちタイマが満了するまでの間、第1受信部112は、さらに他の送信装置2からの応答メッセージを受信したか否かを確認する。そして、選択部130は、第1受信部112が応答メッセージを受信した場合、その応答メッセージの内容を記憶部30に記憶させる。
【0090】
ステップS380でYesと判定された場合、選択部130は、受信した応答メッセージの数が所定値(第1所定値)未満であるか否かを判定する(ステップS420)。第1所定値(第1所定数)は、例えば「1」あるいは「3」などとしてもよい。すなわち、第1所定値は「1」以上の数を用いればよい。第1所定値を大きな値に設定すると、位置推定のための適切な送信装置2を選択できる可能性が高くなるが、一方で、位置推定に要する時間が長くなる可能性も高くなる。また、過去に受信した応答メッセージの数に応じて第1所定値を設定してもよい。例えば、現在から遡った所定時間(例えば、60分)以内に受信した応答メッセージの数が多いほど、第1所定値を大きな値に設定してもよい。また更に、選択部130は、ステップS410で記憶部30に記憶したデータを参照し、ステップS330で設定した指向性アンテナ21の方向(検出方向)ごとに、過去の所定時間内に受信した応答メッセージの数を算出し、その数に基づいて該当する方向の第1所定値を設定してもよい。例えば、検出方向ごとに過去の所定時間内に受信した応答メッセージの数を算出し、その数が多いほどその検出方向で用いる第1所定値を大きな値に設定してもよい。また、過去に実行したチャネルスキャン(空きチャネルの探索)結果に応じて、第1所定値を設定してもよい。例えば、チャネルスキャン結果において空きチャネルが少ない場合には、周囲に他の送信装置2が存在する可能性が高いため、空きチャネルの数が少ないほど、第1所定値を大きな値に設定してもよい。受信した応答メッセージの数が第1所定値未満であると判定された場合(ステップS420;Yes)、ステップS430に進む。例えば、所定値を「1」として場合、応答メッセージの数が「0」である場合に、ステップS430に進む。受信した応答メッセージの数が第1所定値未満であると判定されない場合(ステップS420;No)、ステップS450に進む。
【0091】
ステップS420でYesと判定された場合、送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージの送信電力を段階的に上げる(ステップS430)。つまり、位置データ要求メッセージが送信装置2に届いていない可能性があるため、送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージの送信電力を1段階上げる。そして、ステップS440に進む。
【0092】
選択部130は、位置データ要求メッセージに設定するパラメータ「応答メッセージ送信電力制御指示」を「指示あり」に設定し、段階的に応答メッセージの送信電力を上げるように送信装置2に対して指示する(ステップS440)。つまり、送信装置2が応答メッセージを送信していたとしても、端末装置1に応答メッセージが届いていない可能性があるため、選択部130は、応答メッセージの送信電力を1段階に上げるように指示する。その後、ステップS360に戻り、送信部111は、位置データ要求メッセージを再送信する。すなわち、送信部111は、ステップS330で設定された特定の方向に送信指向性をもつ指向性アンテナ21を用いて、送信装置2の送信電力を制御する機能をもつ位置データ要求メッセージ(制御信号)を送信する。なお、ステップS420でYesと判定された場合、位置データ要求メッセージの送信電力と応答メッセージの送信電力の両方を上げる処理を行っているが、いずれか一方を省略してもよい。
【0093】
ステップS420でNoと判定された場合、選択部130は、全方向の処理が完了したか否かを確認する(ステップS450)。つまり、選択部130は、3つの方向の処理が完了したか否かを判定する。全方向の処理が完了したと判定された場合(ステップS450;Yes)、ステップS460に進む。全方向の処理が完了したと判定されない場合(ステップS450;No)、ステップS330に戻る。
【0094】
ステップS450でNoと判定された場合、アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の方向を第2検出方向V2(図7参照)あるいは第3検出方向V3(図9参照)に切り替え、上述した処理を繰り返す。
【0095】
ステップS450でYesと判定された場合、アンテナ制御部100は、指向性アンテナ21の使用を止める(非活性化する)(ステップS460)。そして、ステップS470に進む。
【0096】
アンテナ制御部100は、使用するアンテナを無指向性アンテナ22に切り替える(活性化する)(ステップS470)。そして、ステップS480に進む。
【0097】
送信電力制御部120は、通常の送信電力に戻す(ステップS480)。そして、ステップS490にすすむ。
【0098】
選択部130は、各検出方向に対して代表となる送信装置2(代表装置)を1台ずつ特定(選択)する(ステップS490)。具体的には、選択部130は、応答メッセージの受信電波強度などの情報に基づいて、代表装置を特定する。代表装置を特定する処理の詳細は後述する。そして、ステップS500に進む。
【0099】
位置推定処理部140は、複数台の代表装置の位置情報と、受信電波強度の情報を使用して、端末装置1(自装置)の位置を推定する(ステップS500)。端末装置1の位置を推定する処理の詳細は後述する。以上が図10のフローチャートの説明である。なお、図10では省略しているが、端末装置1が受信した応答メッセージの数が所定値(第2所定値)以上である場合に、送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージの送信電力および応答メッセージの送信電力のうちの少なくとも一方を下げる処理を行ってもよい。例えば、ステップS420でNoと判定された場合に、ステップS421(不図示)に進み、ステップS421において選択部130は、受信した応答メッセージの数が所定値(第2所定値)以上であるか否かを判定する。ここで第2所定値は第1所定値よりも大きな値である。ステップS421でYesの場合は、ステップS422(不図示)において、送信電力制御部120は、位置データ要求メッセージの送信電力を段階的に下げた後、ステップS423(不図示)において、選択部130は、位置データ要求メッセージに設定するパラメータ「応答メッセージ送信電力制御指示」を「指示あり」に設定し、段階的に応答メッセージの送信電力を下げるように送信装置2に対して指示する。ステップS423からはステップS360に戻る。また、ステップS421でNoの場合は、ステップS450に進む。このような処理を行うことにより、既に受信した応答メッセージが無駄にはなるが、端末装置1との距離が比較的近い送信装置2を代表装置として選び易くなるため、自装置の位置の推定精度が向上する場合がある。
【0100】
(代表装置選択処理)
次に、選択部130が図10に示すステップS490において、代表装置を選択する処理の詳細を説明する。選択部130は、以下の第1方法から第8方法のうちの少なくも1つを用いて代表装置を選択する。
【0101】
(第1方法)
第1方法では、選択部130は、各検出方向で応答メッセージの受信電波強度の最も高い送信装置2を代表装置として選択する。なお、受信電波強度は、受信信号強度あるいは信号強度と呼ばれることもある。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、応答メッセージ(第1信号)を受信した際の信号強度が高いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択してもよい。これは、受信信号強度が高い方が、通信エラー等が発生しにくくデータの信頼性が高いことと、受信信号強度の高い送信装置2の方が近くに位置する可能性が高く、近い送信装置2の位置情報を用いた方が、自装置の推定位置の誤差が小さくなるという知見に基づく処理である。
【0102】
(第2方法)
第2方法では、選択部130は、応答メッセージの受信信号強度および送信装置2の送信電力の情報をもとに送信装置2との距離を計算し、各検出方向で最も距離の近い送信装置2を代表装置として選択する。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、送信装置2との距離が近いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択してもよい。これは、距離が近い送信装置2の方の位置情報を用いた方が、自装置の推定位置の誤差が小さくなるという知見に基づく処理である。
【0103】
(第3方法)
第3方法では、選択部130は、各検出方向で応答メッセージを受信した順番(タイミング)が最も早い送信装置2を代表装置して選択する。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、応答メッセージ(第1信号)を受信したタイミングが早いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択してもよい。これは、応答メッセージを早く送信した送信装置2ほど自装置の位置情報をスムーズに取得できた(GNSS信号が安定して受信できている等の)可能性が高いという知見に基づく処理である。なお、第3方法を用いる場合は、各送信装置2は応答遅延タイマの起動を行わず、応答遅延タイマを用いた処理を省略する。すなわち、後述するように、図12に示すステップS720およびステップS730を省略する。
【0104】
(第4方法)
第4方法では、選択部130は、各検出方向で位置情報の精度が最も高い送信装置2を代表装置として選択する。この場合は後述するように、送信装置2が位置情報の精度(GNSS信号が安定して受信できているか、位置情報の特定に要した時間等)を応答メッセージに入れるようにする。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、応答メッセージ(第1信号)に含まれる位置情報の精度が高いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択してもよい。
【0105】
(第5方法)
第5方法では、選択部130は、各検出方向で過去に(直近で)推定した端末装置1の位置と最も近い位置情報をもつ送信装置2を代表装置として選択する。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、過去に(直近で)推定した端末装置1の位置と、応答メッセージ含まれる位置情報との距離を算出し、その距離が近いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択してもよい。あるいは、端末装置1がGNSS受信部10を搭載しており、そのGNSS受信部10が過去に使用できていたが、現在は使用できない状況(一時的にGNSS信号が受信できない、突然故障した等)において、選択部130は、過去に推定した位置の代わりに、過去に測定(実測)した位置を用いて、代表装置を選択してもよい。つまり、選択部130は、検出方向ごとに、過去に(直近で)測定した自装置の位置と、応答メッセージ含まれる位置情報との距離を算出し、その距離が近いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を選択してもよい。
【0106】
(第6方法)
第6方法では、選択部130は、各検出方向で、応答メッセージの送信電力が小さい割に、受信信号強度の高い送信装置2を優先的に代表装置として選択する。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、受信電波強度が所定値以上の中で、送信電力が最も小さな送信装置2を選べばよい。これは、その条件を満たす送信装置2は、距離が近い、もしくは指向性アンテナ21の受信感度の高い方向(各方向の正面)に位置する可能性が高いので、三角測量に適しているという知見に基づく処理である。また、選択部130は、端末装置1において応答メッセージを受信した際の信号強度が高いほど値が高くなり、かつ送信装置2が応答メッセージを送信した際の送信電力が低いほど値が高くなる優先度を算出してもよい。例えば、選択部130は、(受信信号強度÷送信電力)を用いて優先度を算出してもよい。そして、選択部130は、検出方向ごとに優先度の最も高い送信装置2を代表装置として選択すればよい。
【0107】
(第7方法)
第7方法では、選択部130は、各検出方向で、端末装置1が同じ送信電力で送信した位置データ要求メッセージに対して、それを送信装置2で受信した際の信号強度(応答メッセージに含まれる受信信号強度)が高い送信装置2を優先的に代表装置として選択する。例えば、選択部130は、検出方向ごとに、応答メッセージ含まれる受信信号強度が高いほど高い値となる優先度(あるいは優先順位)を算出し、優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択してもよい。これは、その条件を満たす送信装置2は、距離が近い、もしくは指向性アンテナ21の受信感度の高い方向(各方向の正面)に位置する可能性が高いので、三角測量に適しているという知見に基づく処理である。
【0108】
(第8方法)
第8方法では、選択部130は、2つ以上の検出方向(例えば、第1検出方向V1と第2検出方向V2)から検出された送信装置2をなるべく除外して(優先度を下げて)代表装置を選択する。これは、2つの検出方向から検出された送信装置2は、それらの検出方向の境界線付近にいる可能性が高いので、三角測量にあまり適していないという知見に基づく処理である。すなわち、三角測量においては、端末装置1からみて複数の送信装置2の角度が近くなると、端末装置1の推定位置の誤差が大きくなる可能性があるため、なるべく各方向の正面に位置する送信装置2(境界線近くにない端末)を代表装置として選択することが好ましいという知見に基づく処理である。
【0109】
図11は、第1実施形態に係る代表装置を選択する1つの処理を示すフローチャートである。図11は、上述の第8方法の詳細を示すフローチャートである。
【0110】
選択部130は、検出方向ごとに応答メッセージを受信した送信装置に対して優先度(指標、スコア)Pijを算出する(ステップS600)。ここで、iは方向、jは送信装置2を示す。例えば、第1検出方向V1(i=1)に関して、5台の送信装置2-j(j=1~5)の応答メッセージを受信した場合P1j(j=1~5)が算出される。優先度としては、上記の第1方法~第7方法で説明したいずれかの優先度を用いればよい。また優先度として、順位(優先順位)を用いてもよい。例えば、上記の第3方法において、選択部130は、5台の送信装置2から応答メッセージを受信した場合、最初に受信した送信装置2の優先度を「5」、2番目に受信した送信装置2の優先度を「4」、最後に受信した送信装置2の優先度を「1」としてもよい。また例えば、選択部130は、受信時刻が早い順あるいは受信電波強度が高い順に順位をつけ、1位の優先度を「10」、2位の優先度を「5」、3位の優先度を「3」、4位の優先度を「2」などとしてもよい。すなわち、順位に基づく数値を優先度としてもよい。そして、ステップS610に進む。
【0111】
選択部130は、送信装置2ごとに、応答メッセージ(電波)が検出された方向の数Djを算出する(ステップS610)。例えば、送信装置2-jが第1検出方向V1のみから検出された場合はDj=1、第1検出方向V1と第2検出方向V2とから検出された場合はDj=2となる。そして、ステップS620に進む。
【0112】
選択部130は、応答メッセージ(電波)の検出方向の数を用いて、以下の式(1)に従って優先度を補正する(ステップS620)。ここで、Sijは補正後の優先度(指標、スコア)であり、αは正の値の所定の重み係数である。例えば、α=2とすればよい。つまり、選択部130は、電波が2つ以上の方向から検出された送信装置2の優先度を下げる。そして、ステップS630に進む。
Sij = Pij - α×(Dj-1)・・・式(1)
【0113】
選択部130は、検出方向ごとに補正後の優先度Sijの最も高い送信装置2を選択する(ステップS630)。例えば、選択部130は、第1検出方向V1に対しては、S1j(j=1~5)の中から最も高い値の送信装置2を選択する。そして、ステップS640に進む。ただし、応答メッセージを全く受信できない検出方向がある場合には、その検出方向の代表装置を「なし」とする。
【0114】
選択部130は、複数の検出方向で同じ送信装置2が選択されたか否かを判定する(ステップS640)。複数の検出方向で同じ送信装置2が選択されたと判定された場合(ステップS640;Yes)、ステップS650に進む。例えば、第1検出方向V1と第2検出方向V2において同じ送信装置2-jの優先度が最も高い場合、Yesと判定される。複数の検出方向で同じ送信装置2が選択されたと判定されない場合(ステップS640;No)、ステップS660に進む。
【0115】
ステップS640でYesと判定された場合、選択部130は、選択された送信装置2を一部変更して代表装置とする(ステップS650)。例えば、ステップS630において送信装置2-Aが第1検出方向V1と第2検出方向V2で選択された場合、選択部130は、第1検出方向V1については送信装置2-Aを代表装置にする。なお、ここでは便宜的に、任意の1つの送信装置2を示す符号として、2-A、2-B、2-Cなどを用いる。第2検出方向V2については、選択部130は、補正後の優先度が2番目に高い送信装置2-Bを代表装置にする。また仮に送信装置2-Bが第3検出方向V3で選択されている場合には、選択部130は、優先度が3番目に高い送信装置2-Cを第2検出方向V2の代表装置にする。あるいは選択部130は、第2検出方向V2について、補正後の優先度が2番目に高い送信装置2-Bを代表装置にし、第3検出方向V3について、送信装置2-Bの代わりに補正後の優先度が2番目に高い送信装置2-Dを代表装置としてもよい。すなわち、ステップS630において複数の方向で同一の送信装置2が選択された場合、1つの検出方向については、選択された送信装置2を代表装置とし、残りの検出方向については、補正後の優先度が2番目以降の送信装置2から重複しないように代表装置を選べばよい。換言すれば、検出方向ごとに、優先度が最も高い送信装置2に限らず、優先度が相対的に高い(比較的高い)送信装置2を代表装置として選択すればよい。これにより、選択部130は、方向ごとに異なる代表装置を選択することができる。ただし、応答メッセージを受信できた送信装置2の数が少ない場合(例えば2つである場合)において、同じ送信装置2を複数の検出方向の代表装置にしてもよい。また、1つの検出方向においてのみ応答メッセージを受信し、残りの2つの検出方向において応答メッセージを受信できなかった場合、応答メッセージを受信した1つの検出方向について、2つ以上の代表装置を選択してもよい。後述するように、このような場合であっても、ある程度の精度で自装置の位置を推定することが可能である。
【0116】
ステップS640でNoと判定された場合、選択部130は、ステップS630で選択された送信装置2を代表装置とする(ステップS660)。この場合は、検出方向ごとに優先度が最も高い送信装置2を代表装置として選択することになる。そして、図11の処理を終了する。なお上述の説明では、便宜的に「補正後の優先度」という用語を用いたが、これはもちろん「優先度」の一種であり、「補正後の優先度」を含めて「優先度」と呼ぶことができる。例えば、ステップS600において、第1の優先度(あるいは第1の優先順位)を算出し、ステップS620において、第1の優先度を用いて第2の優先度(あるいは第2の優先順位)を算出するようにしてもよい。
【0117】
なお、選択部130は、第1方法~第8方法を2つ以上組み合わせて代表装置を選択してもよい。例えば、選択部130は、第1方法と第7方法とを組み合わせてもよい。具体的には、選択部130は、以下の式(2)に従って、優先度(指標、スコア)Pijを算出し、方向iごとに優先度Pijの最も高い送信装置2を選択して代表装置にしてもよい。ここでRjは、端末装置1が送信装置2-jから応答メッセージを受信した際の受信信号強度である。Qjは、端末装置1が所定の送信電力で送信した位置データ要求メッセージを送信装置2-jが受信した際の送信装置2-jにおける受信信号強度である。β1とβ2はそれぞれ正の定数(重み係数)である。
Pij=β1×Rj+β2×Qj・・・式(2)
【0118】
すなわち、式(2)によれば、端末装置1が応答メッセージを受信した際の受信信号強度が高いほど高い値となり、かつ送信装置2が位置データ要求メッセージを受信した際の信号強度が高いほど高い値となる優先度Pijが得られる。そして、選択部130は、検出方向ごとに優先度Pijの最も高い送信装置2を選んで代表装置とすればよい。また、選択部130は、ステップS650と同様に、検出方向ごとに代表装置が異なるように選択する処理を行ってもよい。
【0119】
図10のフローチャートに示す第1実施形態の処理によれば、受信した応答メッセージの数を確認しながら、位置データ要求メッセージの送信電力を段階的に上げるため、必要な数(3つ以上)の送信装置2から応答メッセージを受信できる可能性を高めることができる。このため、第1実施形態は、自装置の位置を精度よく推定することが可能になる。
【0120】
また、第1実施形態によれば、検出方向ごとに受信した応答メッセージの数を確認しながら、位置データ要求メッセージの送信電力を制御するため、必要以上に多くの送信装置2が応答メッセージを送信することを防止できる。このため、送信装置2および自装置が無駄な処理を行って負荷が増えることを防止できる。
【0121】
また、第1実施形態によれば、検出方向ごとに受信した応答メッセージの数を確認しながら、送信装置2の応答メッセージの送信電力を制御するため、必要な数(3つ以上)の送信装置2から応答メッセージを受信できる可能性を高めることができる。このため、第1実施形態は、自装置の位置を精度よく推定することが可能になる。
【0122】
(送信装置の処理内容)
図12を用いて、第1実施形態に係る送信装置2の処理内容について説明する。図12は、第1実施形態に係る送信装置2の処理内容を示すフローチャートである。
【0123】
無線通信部110Aは、位置データ要求メッセージを受信したか否かを判定する(ステップS700)。位置データ要求メッセージを受信したと判定された場合(ステップS700;Yes)、ステップS710に進む。位置データ要求メッセージを受信したと判定されない場合(ステップS700;No)、無線通信部110Aは、ステップS700に留まって処理を繰り返す。
【0124】
ステップS700でYesと判定された場合、無線通信部110Aは、位置データ要求メッセージの信号強度を記憶部30Aに記憶させる(ステップS710)。そして、ステップS720に進む。
【0125】
タイマ管理部150Aは、応答メッセージ送信遅延タイマを起動する(ステップS720)。ここでは、複数の送信装置2からの応答メッセージが衝突しないように、送信装置2ごとに、乱数等を用いてランダムな送信遅延時間を設定する。そして、ステップS730に進む。
【0126】
タイマ管理部150Aは、応答メッセージ送信遅延タイマが満了したか否かを確認する(ステップS730)。応答メッセージ送信遅延タイマが満了したと判定された場合(ステップS730;Yes)、ステップS740に進む。応答メッセージ送信遅延タイマが満了したと判定されない場合(ステップS730;No)、ステップS730に留まる。
【0127】
ステップS730でYesと判定された場合、位置情報管理部90Aは、GNSS受信部10Aで受信した信号をもとに特定された自装置の位置情報を取得する(ステップS740)。そして、ステップS750に進む。
【0128】
なお、図12において、ステップS720およびステップS730の処理を省略してもよい。その場合は、ステップS710からステップS740に進めばよい。特に、上述した代表装置を選択する第3方法を用いる場合は、ステップS720およびステップS730を省略する。送信装置2の処理能力、位置データ要求メッセージを受信した時点の処理の負荷量、ステップS740の処理に要する時間(GNSS信号を受信して位置を特定するのに要する時間)などは、送信装置2ごとに異なるので、ステップS720およびステップS730を省略しても、応答メッセージを送信するタイミングは送信装置2ごとに異なる可能性が高い。このため、ステップS720およびステップS730を省略してもよい。また、端末装置1が応答メッセージを正常に受信できない場合には、送信装置2から端末装置1に応答メッセージを再送する処理を行ってもよい。例えば、端末装置1が応答メッセージを正常に受信した場合に、その旨を示す応答(肯定応答、ACK)を送信装置2に返すこととし、送信装置2は、ACKを受信できない場合に、応答メッセージを再送する。このような処理を行った上で、ステップS720およびステップS730を省略してもよい。
【0129】
制御部80Aは、応答メッセージを作成し、応答メッセージにステップS740で取得した自装置の位置情報を設定する(ステップS750)。制御部80Aは、位置情報の精度を示す情報を応答メッセージに含めてもよい。例えば、制御部80Aは、GNSS受信部10Aで受信したGNSS信号の電波強度が低い(小さい)場合には、位置情報の精度が低い可能性があるため、GNSS信号の受信強度を位置情報の精度を示す情報として用いてもよい。また、位置情報管理部90Aが自装置の位置の特定に要した時間が長い場合には、位置情報の精度が低い可能性があるため、制御部80Aは、GNSS信号の受信強度を位置情報の精度を示す情報として用いてもよい。その他にも、制御部80Aは、過去の位置情報との変動幅等を用いて、位置情報の精度を示す情報を作成してもよい。
【0130】
制御部80Aは、ステップS710で記憶した位置データ要求メッセージの受信強度を記憶部30Aから読み出して、応答メッセージに設定する(ステップS760)。そして、ステップS770に進む。
【0131】
制御部80Aは、位置データ要求メッセージに応答メッセージ送信電力制御指示が含まれているか否かを判定する(ステップS770)。位置データ要求メッセージに応答メッセージ送信電力制御指示が含まれていると判定された場合(ステップS770;Yes)、ステップS780に進む。位置データ要求メッセージに応答メッセージ送信電力制御指示が含まれていると判定されない場合(ステップS770;No)、ステップS790に進む。
【0132】
ステップS770でYesと判定された場合、送信電力制御部120Aは、応答メッセージ送信電力制御指示に従って送信電力を設定する(ステップS780)。具体的には、送信電力制御部120Aは、応答メッセージ送信電力制御指示が示す電力の変化量に従って、送信電力を上げたり、下げたりする。そして、ステップS800に進む。
【0133】
ステップS770でNoと判定された場合、送信電力制御部120Aは、通常の送信電力に設定する(ステップS790)。そして、ステップS800に進む。
【0134】
制御部80Aは、ステップS780もしくはステップS790で設定した送信電力に関する送信電力情報を応答メッセージに設定する(ステップS800)。そして、ステップS810に進む。
【0135】
無線通信部110A(送信部111A)は、ステップS780もしくはステップS790で設定した送信電力で、応答メッセージを端末装置1に対して送信する(ステップS810)。そして、ステップS820に進む。なお、応答メッセージは、以下の(1)~(4)などの情報を含む。
(1)送信装置の識別子
(2)位置情報(緯度・経度など)
(3)位置データ要求メッセージの受信強度
(4)応答メッセージの送信電力情報
【0136】
送信電力制御部120Aは、通常の送信電力に設定する(ステップS820)。そして、図12の処理を終了する。
【0137】
(代表装置の抽出結果)
図13は、第1実施形態に係る代表装置の抽出結果を説明するための図である。第1検出方向V1の第1通信エリアR1の代表として、送信装置2-1が選択されている。第2検出方向V2の第2通信エリアR2の代表として、送信装置2-3が選択されている。第3検出方向V3の第3通信エリアR3の代表として、送信装置2-5が選択されている。この場合、端末装置1は、送信装置2-1、送信装置2-3、および送信装置2-5の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定する。
【0138】
次に、端末装置1が各代表装置から取得した位置情報をもとに、自装置の位置を推定する方法について説明する。端末装置1の位置推定処理部140は、以下で説明する、第1位置推定方法~第3位置推定方法のいずれかの方法を用いて、自装置の位置を推定すればよい。
【0139】
(第1位置推定方法)
図14は、第1実施形態に係る第1位置推定方法を説明するための図である。点P1は、送信装置2-1の位置情報を示す。点P2は、送信装置2-3の位置情報を示す。点P3は、送信装置2-5の位置情報を示す。この場合、位置推定処理部140は、点P1、点P2、および点P3の重心G1を自装置(端末装置1)の位置として推定する。第1位置推定方法は、自装置と代表装置との距離を算出する必要がないため、処理量が少ないというメリットがある。なお、特定の検出方向で応答メッセージが受信できなかった等の理由により、代表装置を2つしか選択できなかった場合には、2つの代表装置の位置座標の中点を自装置の位置として推定してよい。すなわち、代表装置は3つあることが望ましいが、2つであっても、ある程度の精度で自装置の位置を推定することは可能である。
【0140】
(第2位置推定方法)
図15は、第1実施形態に係る第2位置推定方法を説明するための図である。第2位置推定方法では、代表装置の位置情報を中心とし、代表装置から受信した応答メッセージの受信強度および応答メッセージの送信電力情報をもとに算出(推定)した距離を半径とする円を設定する。受信強度が大きい程、端末装置1から見て代表装置は近くに存在することになるので円の半径は小さくなる。
【0141】
円C1は、送信装置2-1の位置情報を中心とし、送信装置2-1までの推定距離r1を半径とする円である。円C2は、送信装置2-3の位置情報を中心とし、送信装置2-3までの推定距離r2を半径とする円である。円C3は、送信装置2-5の位置情報を中心とし、送信装置2-5までの推定距離r3を半径とする円である。
【0142】
点P11は、円C1と、円C2との交点を示す。点P12は、円C2と、円C3との交点を示す。点P13は、円C1と、円C3との交点を示す。理想的には、C1とC2とC3は1点で交わるが、各々の位置情報と推定距離に誤差がある場合が多いため、図15に示すように1点で交わらない場合がある。
【0143】
第2位置推定方法では、位置推定処理部140は、点P11、点P12、および点P13の重心G2を自装置(端末装置1)の位置として推定する。第2位置推定方法は、受信電波強度をもとに自装置と代表装置との距離を算出し、3つの距離を用いて自装置の位置を推定するため、より精度の高い推定が可能である。なお、代表装置を2つしか選択できなかった場合には、2つの円の交点をもとに自装置の位置を推定する。まず、2つの円が1点で交わる場合には、その交点を自装置の位置とする。次に、2つの円が2点で交わる場合(例えば、図15における円C1と円C2)は、その2点を結ぶ直線上の中点を自装置の位置とする。また、2つの円が交わらない場合は、2つの円が1点で交わるように各々の円の半径を同じ割合で大きくし、その交点を自装置の位置とする。例えば、2つの円の半径を各々10%ずつ大きくすると1点で交わる場合には、そのように半径を変更した上で、その交点を自装置の位置とすればよい。このように、代表装置が2つであっても、ある程度の精度で自装置の位置を推定することは可能である。
【0144】
(第3位置推定方法)
図16は、第1実施形態に係る第3位置推定方法を説明するための図である。図16に示す例では、点Pcは自装置(端末装置1)の位置を示し、その周囲に送信装置2-1、送信装置2-3、送信装置2-5が位置している。ただし、点Pcが示す自装置の実際の位置は不明(未確定)である。送信装置2-1の位置情報は、(経度E1、緯度N1)である。送信装置2-3の位置情報は、(経度E2、緯度N2)である。送信装置2-5の位置情報は、(経度E3、緯度N3)である。
【0145】
位置推定処理部140は、応答メッセージを受信した際の受信電波強度と、代表装置が応答メッセージを送信した際の送信電力とをもとに、自装置と各代表装置との間の距離を算出(推定)する。図16においては、自装置と送信装置2-1との距離がr11、自装置と送信装置2-3との距離がr12、自装置と送信装置2-3との距離がr13で示されている。また、送信装置2-1の位置を中心として距離r11を半径とする円C11、送信装置2-3の位置を中心として距離r12を半径とする円C12、送信装置2-5の位置を中心として距離r13を半径とする円C13が示されている。図16においては、円C11と、円C12と、円C13とが1点で交わるのが理想的である。その場合は、3つの円の交点が自装置の位置となる。しかしながら、実際には位置情報や算出された距離の誤差があるため、必ずしも、1点で交わるとは限らない。また、図16に示すように、円と円との交点が存在しない場合もある。
【0146】
図17を用いて、第1実施形態に係る位置推定方法の1つの処理の流れを説明する。図17は、第1実施形態に係る位置推定方法の1つの処理の流れを示すフローチャートである。図17は、第3位置推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0147】
位置推定処理部140は、以下の処理で用いる変数LMを初期化する(ステップS900)。例えば、位置推定処理部140は、変数LMの初期値として、端末装置1と代表装置との間の想定される最大距離に対して、十分大きな値を設定しておけばよい。そして、ステップS910に進む。
【0148】
位置推定処理部140は、代表装置の位置に基づく所定領域を設定し、所定領域内に、乱数等を用いてランダムに点Pt(候補点)を生成する(ステップS910)。所定領域としては、例えば図16に示すように、3つの代表装置により形成される三角形の領域を用いればよいが、これに限定されるものではない。例えば、これよりも広い範囲を所定領域としてもよい。そして、ステップS920に進む。
【0149】
位置推定処理部140は、生成した点Ptから、各代表装置の位置を中心とし、各代表装置までの距離を半径とする3つの円までの最短距離それぞれ算出する(ステップS920)。具体的には、位置推定処理部140は、図16に示すように、点Ptから円C11までの最短距離L1、円C12までの最短距離L2、円C13までの最短距離L3を算出する。そして、ステップS930に進む。
【0150】
位置推定処理部140は、点Ptから各円までの最短距離の合計値LAを算出する(ステップS930)。つまり、位置推定処理部140は、LA=L1+L2+L3、を算出する。そして、ステップS940に進む。
【0151】
位置推定処理部140は、新たに算出したLAがLM(これまでに算出したLAの中の最小値)よりも小さいか否かを判定する(ステップS940)。つまり、位置推定処理部140は、「LA<LM」であるか否かを判定する。新たに算出したLAがLMよりも小さいと判定された場合(ステップS940;Yes)、ステップS950に進む。新たに算出したLAがLMよりも小さいと判定されない場合(ステップS940;No)、ステップS960に進む。
【0152】
ステップS940でYesと判定された場合、位置推定処理部140は、変数LMの値をLAに更新(LMをLAで上書き)し、変数LMと点Ptの位置情報(経度、緯度)を記憶部30に保存する(ステップS950)。すなわち、記憶部30には、それまでの処理における、LAの最小値とそれに対応する点Ptの位置情報が保存される。そして、ステップS960に進む。
【0153】
位置推定処理部140は、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS960)。具体的には、位置推定処理部140は、記憶部30に記憶されたLMが所定値(例えば、3m)未満となった場合、またはステップS910の処理回数が所定回数(例えば、1000回)以上となった場合に終了条件を満たすと判定する。終了条件を満たすと判定された場合(ステップS960;Yes)、ステップS970に進む。終了条件を満たすと判定されない場合(ステップS960;No)、位置推定処理部140は、ステップS910に戻って処理を繰り返す。
【0154】
ステップS960でYesと判定された場合、位置推定処理部140は、記憶部30に保存された点Ptの位置情報を自装置の位置として推定する(ステップS970)。そして、図17の処理を終了する。
【0155】
第3位置推定方法によれば、自装置と代表装置との距離の計算誤差が大きく、2つの円の交点が存在しないような場合であっても、自装置の位置を精度よく推定することができる。
【0156】
なお、上述の説明では、指向性アンテナ21の指向性を3つの検出方向(第1検出方向V1~第3検出方向V3)に設定し、3つの代表装置を選出したが、本発明はこれに限定される訳ではない。例えば、指向性アンテナ21の指向性を4つの検出方向に設定し、4つの代表装置を選出してもよい。すなわち、3つ以上の検出方向それぞれに対応する指向性(受信指向性および送信指向性)を設定可能なアンテナを用いて、検出方向ごとに応答メッセージ(第1信号)を受信し、3つ以上の代表装置を選択してもよい。
【0157】
また、上述の説明では、検出方向ごとに指向性アンテナ21の向きを設定するとしたが、必ずしも機械的(機構的)にアンテナの向きを設定することに限定されない。例えば、電気的(電子的)にアンテナの指向性を設定(変更)可能なアンテナアレイ等を用いて、アンテナの指向性(受信指向性および送信指向性)を制御してもよい。また、1つのアンテナ(ある一時点のアンテナ)の指向性は1方向であるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、1方向に指向性をもつアンテナを3本用いて、各々の指向性が120度ずつ異なる方向を向くように3本のアンテナを配置し、1つのアンテナ群(1つの仮想アンテナ)を構成してもよい。このようなアンテナ群は3つの検出方向それぞれに対応する3つの指向性をもつことになり、アンテナの向きを機構的に変える必要はない。また端末装置1は、このようなアンテナ群は、もちろん「アンテナ」の一種であり、3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナである。また、3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性をもつ(有する)アンテナであるといえる。このようなアンテナ群を構成する3つのアンテナの信号をそれぞれ処理する3つの受信部と3つの送信部を備えていてもよい。このような構成にすれば、アンテナの向きを変更する時間が不要になる他、3つの検出方向(V1~V3)に対して、位置データ要求メッセージの送信を同時に行ったり、応答メッセージの受信を同時に行うことも可能になるため、自装置の位置推定に要する時間を短縮することができる。
【0158】
また、上述の説明では、自装置が送信装置2に対して位置データ要求メッセージを送信し、送信装置2はその応答として応答メッセージを送信する構成としたが、それに限定されるものではない。例えば、送信装置2は、位置データ要求メッセージを受信することなく、所定のタイミングで(例えば、30秒ごとに)自装置の位置情報を少なくとも含む通知メッセージ(通知情報)を応答メッセージの代わりに周囲に送信してもよい。すなわち、端末装置1が位置データ要求メッセージを送信することを省略してもよい。端末装置1は、このような通知メッセージをもとに、自装置の位置を推定することが可能である。
【0159】
また上述の説明では、端末装置1は検出方向ごとに、優先度(補正後の優先度を含む)が相対的に高い送信装置2を1つ選択して代表装置としたが、これに限定されるものではない。例えば、端末装置1は、検出方向ごとに優先度が相対的に高い送信装置2を2つ以上選択して代表装置としてもよい。すなわち、検出方向ごとに複数の代表装置を選出し、その位置情報を用いて、自装置の位置を推定してもよい。このような処理を行うことにより、端末装置1の処理量は増えるが、自装置の位置の推定精度が向上する場合がある。
【0160】
また、上述した端末装置1は、所定の方向に位置する送信装置2の位置情報を受信する機能を備えていればよく、音声通話や映像通話を行う機能を必ずしも備えていなくてよい。また、端末装置1はユーザが携帯可能な小型のものであっても、車載機器等の大型のものであってもよく、その形状や大きさは問わない。送信装置2についても同様であり、大きさや形状は問わない。
【0161】
また、端末装置1は、移動可能なものであっても、位置が固定したものであってもよい。同様に送信装置2は、移動可能なものであっても、位置が固定したものであってもよい。例えば、基本的には位置が固定されたIoT機器(端末装置1に相当)において、GNSS受信部10が故障した際に、周辺に存在する他のIoT機器(送信装置2に相当)から位置情報を取得して、実施形態で説明した処理を行ってもよい。
【0162】
第1実施形態によれば、自装置の位置を精度よく推定するために適した送信装置を代表装置として特定することができる。具体的には、第1実施形態は、自装置からみて適切な方向に位置する送信装置を代表装置として選出することができる。また、第1実施形態は、必要以上に多くの送信装置の位置情報を利用することなく、自装置の位置を推定できるため、自装置および送信装置の処理を軽減することができる。
【0163】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。第1実施形態では、指向性アンテナ21を用いて、特定の方向からの応答メッセージを受信し、各々の方向について代表装置を選択した。第2実施形態では、指向性アンテナ21と無指向性アンテナ22との両方を用いて応答メッセージを受信し、2種類のアンテナで受信した信号の情報を用いて、代表装置を選択する。本実施形態において、無指向性アンテナ22を用いて受信した応答メッセージを「第2信号」と呼ぶこともある。
【0164】
(端末装置の処理)
図18を用いて、第2実施形態に係る端末装置の処理の流れについて説明する。図18は、第2実施形態に係る端末装置の処理の流れを示すフローチャートである。第2実施形態に係る端末装置1は、第1実施形態に係る端末装置1と同様に、図2に示す構成を備えている。
【0165】
ステップS1000の処理は、図10に示すステップS300の処理と同様なので、説明を省略する。ステップS1010~ステップS1070の処理は、それぞれ、図10に示すステップS320~ステップS380の処理と同様なので、説明を省略する。ステップS1110~ステップS1150の処理は、それぞれ、図10に示すステップS420~ステップS460の処理と同様なので、説明を省略する。ステップS1160の処理は、図10に示すステップS480の処理と同様なので、説明を省略する。
【0166】
ステップS1070でNoと判定された場合、第1受信部112および第2受信部113は、応答メッセージを受信したか否かを判定する(ステップS1080)。すなわち無線通信部110は、第1信号および第2信号を受信したか否かを判定する。ステップS1080の処理は、図10に示すステップS390に対応する処理である。第2実施形態では、応答メッセージは、ステップS1020で設定された特定の方向に指向性をもつ指向性アンテナ21と、無指向性アンテナ22の両方を用いて、つまり2種類のアンテナを用いて受信される。応答メッセージを受信したと判定された場合(ステップS1080;Yes)、ステップS1090に進む。応答メッセージを受信したと判定されない場合(ステップS1080;No)、ステップS1070に戻り、制御部80は、同様の制御を繰り返す。
【0167】
ステップS1070でYesと判定された場合、選択部130は、2種類のアンテナで受信された各々の応答メッセージを解析する(ステップS1090)。ステップS1090の処理は、図10に示すステップS400に対応する処理である。指向性アンテナ21は、ステップS1020で設定された方向(その中心方向)に最も高い受信感度をもつため、第1受信部112で受信した信号は、その方向に位置する送信装置2から送信された応答メッセージの受信電波強度が高くなる。一方、第2受信部113で受信した信号は、ステップS1020で設定された方向(その中心方向)に位置する送信装置2から送信された応答メッセージであっても、受信電波強度が相対的に高くならない可能性がある。例えば、ステップS1020で設定された方向に位置する送信装置2から送信された応答メッセージは、ステップS1020で設定された方向以外の方向に位置し、かつ自装置から比較的近くに位置する送信装置から送信された応答メッセージに比べて、第2受信部113で受信した受信電波強度が低くなる可能性がある。そして、ステップS1100に進む。
【0168】
選択部130は、解析した応答メッセージを記憶部30に記憶する(ステップS1100)。ステップS1100の処理は、図10に示すステップS410に対応する処理である。選択部130は、第1実施形態と同様に、第1受信部112で受信した応答メッセージの情報を全て記憶部30に記憶させる。それに加えて、選択部130は、第1受信部112で受信した応答メッセージと同じ応答メッセージを第2受信部113で受信している場合には、第2受信部113の受信電波強度(受信信号強度)を関連付けて記憶部30に記憶させる。そして、ステップS1070に戻る。
【0169】
ステップS1160を実行した後、選択部130は、各検出方向に対して1台ずつ代表となる装置(代表装置)を特定(選択)する(ステップS1170)。具体的には、選択部130は、ステップS1100において記憶部30に記憶されたデータを参照し、方向i(i=1~3)に関して、応答メッセージを受信した送信装置2-jごとに、以下の式(3)または式(4)に従って優先度(指標)Pijを算出する。例えば、第1検出方向V1(i=1)に関して、5台の送信装置2-j(j=1~5)の応答メッセージを受信した場合P1j(j=1~5)が算出される。
Pij=Ej-Fj・・・式(3)
Pij=Ej/Fj・・・式(4)
【0170】
式(3)および式(4)において、Ejは、第1受信部112で送信装置2-jからの応答メッセージを受信した際の受信信号強度、つまり第1信号の信号強度である。Fjは、第2受信部113で送信装置2-jからの応答メッセージを受信した際の受信信号強度、つまり第2信号の信号強度である。つまり、式(3)によれば、指向性アンテナ21で受信した信号強度から無指向性アンテナ22で受信した信号強度を減算した値(差分値)が大きい送信装置2-jほど、方向iにおける優先度Pijが大きく(高く)なる。また、式(4)によれば、指向性アンテナ21で受信した信号強度を無指向性アンテナ22で受信した信号強度で除算した値、すなわち無指向性アンテナ22で受信した信号強度に対する指向性アンテナ21で受信した信号強度の比(比率)が大きい送信装置2-jほど、方向iにおける優先度Pijが大きく(高く)なる。換言すれば、第2信号の信号強度に対する第1信号の信号強度の比が高いほど、優先度が高くなる。また第1信号の信号強度から第2信号の信号強度を減算した値が大きいほど、優先度が高くなる。これらは、無指向性アンテナで受信した信号強度を基準として、指向性アンテナで受信した信号強度が相対的に高い送信装置は、指向性アンテナの指向性の中心方向に位置する可能性が高いという知見に基づく処理である。
【0171】
第2実施形態では、方向iごとに優先度Pijが最も高い送信装置を代表装置として選択する。これにより、第2実施形態は、指向性アンテナの指向性の中心方向(つまり検出方向V1~V3)に位置する可能性が高い送信装置、換言すれば、自装置の位置の推定に適した送信装置を適切に選択することができる。なお、複数の方向(例えば、第1検出方向V1と第2検出方向V2)で同一の送信装置の優先度が最も高くなった場合には、いずれかの方向については優先度が2番目以降の送信装置を選択して代表装置とすればよい。
【0172】
第2実施形態によれば、指向性アンテナで受信した信号強度と、無指向性アンテナで受信した信号強度とをもとに、代表装置を選択するため、自装置の位置推定に適した方向に位置する代表装置を精度よく選択することができる。また、このように選択された代表装置の情報を用いるため、自装置の位置を少ない処理量で効率よく、かつ高い精度で推定することができる。
【0173】
[付記1]
3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信する第1受信部と、
前記検出方向ごとに、前記第1受信部で受信した第1信号に基づいて、各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択する選択部と、
前記選択部で選択された送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定する位置推定部と、
を備える位置情報処理装置。
[付記2]
前記選択部は、前記検出方向ごとに前記優先度が相対的に高い送信装置を選択する、
付記1に記載の位置情報処理装置。
[付記3]
前記選択部は、前記第1受信部により前記第1信号が検出された場合の検出方向の数を送信装置ごとに算出し、前記検出方向の数が少ない送信装置ほど高い値となるように前記優先度を算出し、前記検出方向ごとに前記優先度が相対的に高い送信装置を選択する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記4]
前記選択部は、前記第1信号の信号強度が高い送信装置ほど高い値となるように前記優先度を算出する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記5]
前記選択部は、前記第1信号に基づいて算出された送信装置と自装置との距離が小さいほど高い値となるように前記優先度を算出する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記6]
前記選択部は、前記第1信号を受信した順番が早いほど高い値となるように前記優先度を算出する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記7]
前記選択部は、前記第1信号に含まれる位置情報の精度が高いほど高い値となるように前記優先度を算出する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記8]
前記選択部は、過去に前記位置推定部で推定された位置と前記第1信号に含まれる位置情報との距離が近いほど高い値となるように前記優先度を算出する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記9]
無指向性アンテナを用いて、送信装置から送信された当該送信装置の位置情報を少なくとも含む第2信号を受信する第2受信部をさらに備え、
前記選択部は、前記第2信号の信号強度に対する前記第1信号の信号強度の比、または前記第1信号の信号強度と前記第2信号の信号強度との差に基づいて前記優先度を算出する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記10]
前記検出方向それぞれに対応する送信指向性を設定可能なアンテナを用いて、送信装置の送信電力を上げるための制御信号を送信する送信部をさらに備え、
前記選択部は、前記第1受信部で受信された、一の検出方向に対応する送信装置の数が所定数未満である場合に、前記送信指向性を前記一の検出方向に設定させて、前記制御信号を前記送信部に送信させる、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記11]
前記選択部は、前記第1信号の信号強度および前記第1信号に含まれる送信装置の送信電力の情報をもとに、自装置と前記選択された送信装置との距離を算出し、
前記位置推定部は、前記選択された送信装置の位置を頂点とする多角形領域を形成し、前記多角形領域内に複数の候補点を生成し、各々の候補点から、前記選択された送信装置の位置を中心とし前記距離を半径とする各々の円までの距離の総和を算出し、前記総和が最も小さい候補点を自装置の位置と推定する、
付記1または2に記載の位置情報処理装置。
[付記12]
位置情報処理装置が実行する位置情報処理方法であって、
3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信するステップと、
前記検出方向ごとに、前記第1信号に基づいて各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択するステップと、
選択された前記送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定するステップと、
を含む、位置情報処理方法。
[付記13]
3つ以上の検出方向それぞれに対応する受信指向性を設定可能なアンテナを用いて、複数の送信装置から送信され、送信装置それぞれの位置情報を含む第1信号を、前記検出方向ごとに受信するステップと、
前記検出方向ごとに、前記第1信号に基づいて各送信装置の優先度を算出し、前記優先度に基づいて前記検出方向ごとに送信装置を選択するステップと、
選択された前記送信装置の位置情報に基づいて、自装置の位置を推定するステップと、
を位置情報処理装置が備えるコンピュータに実行させる、プログラム。
【0174】
図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。なお、この分散・統合による構成は動的に行われてもよい。
【0175】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0176】
1 端末装置
2 送信装置
10,10A GNSS受信部
20,20A アンテナ
21 指向性アンテナ
22 無指向性アンテナ
30,30A 記憶部
40,40A 操作部
50,50A 表示部
60,60A 音声入力部
70,70A 音声出力部
80,80A 制御部
90,90A 位置情報管理部
100 アンテナ制御部
110,110A 無線通信部
111,111A 送信部
112 第1受信部
113 第2受信部
114A 受信部
120,120A 送信電力制御部
130 選択部
140 位置推定処理部
150,150A タイマ管理部
図1
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