(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164622
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】受篭、及びグリーストラップ
(51)【国際特許分類】
E03F 5/16 20060101AFI20241120BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20241120BHJP
【FI】
E03F5/16
C02F1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080239
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】501482732
【氏名又は名称】下田エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】横堀 洋一
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲也
【テーマコード(参考)】
2D063
4D051
【Fターム(参考)】
2D063DB08
4D051AA01
4D051AB02
4D051BA08
4D051BA09
4D051DD02
(57)【要約】
【課題】脂分の浮上分離の状態を安定して維持させて下水道に流す排水への脂分の混入を防ぐ。
【解決手段】排水を受け入れる排水流入部と、排水から油脂を浮上分離して留める分離部を有するグリーストラップの排水流入部に配置され排水から固形物を捕捉する受篭を、 上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁と、底壁を有する箱型形状とし、底壁には、排水穴を形成せず、上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁の少なくとも一つに複数の排水穴を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水から固形物を捕捉する受篭であって、
上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁と、底壁を有する箱型形状をしており、底壁には、排水穴が形成されておらず、上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁の少なくとも一つに複数の排水穴が形成されている受篭。
【請求項2】
前記複数の排水穴は、受篭の上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁の対向する二つの壁に形成されている
請求項1に記載の受篭。
【請求項3】
排水から油脂を分離して排出するグリーストラップであって、
排水を受け入れる排水流入部と、排水から油脂を浮上分離して留める分離部を有し、
前記排水流入部に請求項1又は請求項2に記載の受篭が配置されているグリーストラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房の床面に配置され、排水から油脂等を分離除去するグリーストラップ(阻集器)、及び受篭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厨房の床面に配置され、排水から油脂等を分離除去して下水道への油等の流出を防ぐグリーストラップが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたグリーストラップは、分離槽において脂分を浮上分離して取り除いているが、排水路から排水が勢いよく流入された場合などには、分離槽内の排水が乱れたり、またトラップにおいてサイフォン現象が発生したりすることにより、脂分を浮上分離させた状態を安定して維持することができずに、下水道に流す排水に脂分が混入する可能性があった。
【0005】
本発明は、排水路から流入される排水の勢いを抑えてグリーストラップ内での排水の乱れや、サイフォン現象の発生を抑制し、脂分の浮上分離の状態を安定して維持させて下水道に流す排水への脂分の混入を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、排水から固形物を捕捉する受篭であって、上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁と、底壁を有する箱型形状をしており、底壁には、排水穴が形成されておらず、上流側壁と、下流側壁と、左右の側壁の少なくとも一つに複数の排水穴が形成されている受篭、及び受篭を備えたグリーストラップである。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の受篭、及びグリーストラップによれば、グリーストラップ等から排出される排水への脂分等の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態のグリーストラップの使用状態を側方から見た図である。
【
図2】(a)は一実施形態のグリーストラップを下流側から見た図であり、(b)はトラップ装置のカバー部材の斜視図である。
【
図3】一実施形態のグリーストラップにおける排水の流れを説明するための図であり、(a)はグリーストラップを側方から見た図であり、(b)はグリーストラップの平面図である。
【
図4】一実施形態の受篭の図であり、(a)は斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図であり、(d)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態のグリーストラップ(阻集器)について、図面を参考にして、説明する。
グリーストラップ1は、
図1に示すように、例えば、厨房の床面に埋設され、床面に設けられた排水路Aからの排水を受け入れて、排水から油脂や固形物などを除去した後、下水道Bへ排出するための装置である。
なお、以下の説明において、グリーストラップ1の排水路A側を上流側といい、下水道B側を下流側という。
【0010】
厨房の床面は、床部のコンクリートCの一部が省かれて取り付けスペースが設けられており、取り付けスペースにグリーストラップ1が配置されるとともに、グリーストラップ1の上方位置には蓋D,Dが配置されている。
ユーザーは、蓋Dを開けることにより、グリーストラップ1の上方を露出させ、排水から分離した油脂や固形物を取り除くなどのメンテナンスを行うことができる。
【0011】
-グリーストラップの構成-
本実施形態のグリーストラップ1は、
図1に示すように、本体槽11と、仕切り板12と、受篭13と、トラップ装置14と、カバー部材15を備えている。
【0012】
グリーストラップ1を構成する本体槽11は、ステンレス等の金属材料からなり、
図1,
図2(a)に示すように、上流側に位置する上流側壁11aと、下流側に位置する下流側壁11bと、左右の側壁11c,11cと、底壁11dを有する全体として矩形箱形の部材であり、下流側壁11bの下方部分に下水道Bに連絡する排水管B1が取り付けられている。
【0013】
本体槽11は、上流側壁11a、下流側壁11b、及び、左右の側壁11c,11cの上端にそれぞれフランジ部fが設けられており、フランジ部fを取り付けスペースの外周に存在する床部のコンクリートCの上面に載置させて配置されている。
【0014】
グリーストラップ1を構成する仕切り板12は、ステンレス等の金属材料からなり、
図1に示すように、上方に把手12aを有する板状部材であり、本体槽11の上下流方向で上流側壁11aから1/3程度の位置に、上流側と下流側に仕切るように取り付けられている。
グリーストラップ1は、仕切り板12の上流側に排水路Aからの排水が流入される排水流入部1aが形成され、仕切り板12の下流側に排水から油脂等を分離して留める分離部1bが形成されている。
【0015】
仕切り板12は、
図1,
図2(a)に示すように、本体槽11の左右の側壁11c,11cの内周面に設けられた仕切り板ガイド12b,12bによって上方向に取り外し自在に取り付けられている。
本体槽11に取り付けられた仕切り板12は、排水流入部1aと分離部1bを上方領域において分離するとともに、下方領域において連通している。
【0016】
グリーストラップ1を構成する受篭13は、ステンレス等の金属材料からなり、
図1に示すように、篭部131と、把手132を有しており、排水流入部1a内に位置決めされて配置され、排水路Aから流入された排水を受け止め、排水に含まれる食材クズなどの固形物を捕捉する。
【0017】
グリーストラップ1を構成するトラップ装置14は、例えばポリ塩化ビニル等の樹脂材料からなり、
図1,
図2(a)に示すように、所定高さ位置に越流孔141aを有する排水筒141と、排水筒141の越流孔141aが隠れるように排水筒141の上部に取り付けられた椀部材142を有する椀トラップを用いることができ、分離部1bの下流側位置に配置されて、排水筒141の下端が排水管B1に接続されている。
【0018】
グリーストラップ1を構成するカバー部材15は、ステンレス等の金属材料からなり、
図1,
図2に示すように、上流側壁部15aと、左右の側壁部15c,15cを有し、本体槽11の深さ寸法と同程度の高さ寸法を有する横断面略U字状の部材であり、左右の側壁部15c,15cの下流側下端位置が欠如されて排水導入口15d,15dが形成されている。
【0019】
カバー部材15は、左右の側壁部15c,15cの下流側端部を本体槽11の下流側壁11bに当接もしくは近接させて、トラップ装置14を覆うように配置されており、トラップ装置14へ向かう排水を主に下流側下端位置に形成された排水導入口15d,15dから導入し、分離部1b内で浮上分離した油脂等がトラップ装置14の排水筒141の越流孔141aを越えて排水されることを抑制している。
カバー部材15は、上方に把手15e,15fが設けられており、メンテナンス時に本体槽11から取り外すことができる。
以上、グリーストラップの全体の構成について説明した。
【0020】
-排水の流れ、及び油脂の除去-
次に、グリーストラップにおける排水の流れ、及び油脂の除去について説明する。
排水路Aから侵入した処理すべき排水は、
図3(a)に示すように、グリーストラップ1の排水流入部1aに流入され(矢印w1)、排水流入部1aに配置された受篭13によって排水内の食材クズ等の固形物が捕捉されたのち、受篭13の排水穴から流出する。
【0021】
受篭13の排水穴から流出した排水は、
図3(a)(b)に示すように、排水流入部1aの下方に流れて仕切り板12の下を潜って分離部1bに進入し(矢印w2)、排水に含まれる油脂が比重差によって水面に浮上して水と分離される。排水から分離された油脂は、分離部1bの水面付近に溜め置かれる。
また、受篭13を通過した比較的小さな固形物は、重力沈降して汚泥として本体槽11の底面に堆積し、排水から分離される。
【0022】
油脂及び固形物が取り除かれた排水は、
図2(a),
図3(a)(b)に示すように、トラップ装置14を覆うカバー部材15の側壁部15c,15cの下流側下方に形成された排水導入口15d,15dからカバー部材15内に導入される(矢印w3)。
カバー部材15内に導入された排水は、トラップ装置14の排水筒141の越流孔141aを越え(矢印w4)、排水筒141及び排水管B1を介して下水道Bへと排水される。
以上、グリーストラップにおける排水の流れ、及び油脂の除去について説明した。
【0023】
-受篭-
以上、本実施形態のグリーストラップ1について説明したが、グリーストラップ1の排水流入部1aに排水路Aから多量の排水が急激に流入されることによって、本体槽11内の排水に乱流が生じたり、サイフォン現象が生じたりして、一部の油脂等が排水とともに下水道に流出される危険性がある。
【0024】
本実施形態のグリーストラップ1は、排水流入部1aに配置された受篭13の構成を工夫することで、本体槽11内における乱流やトラップ装置におけるサイフォン現象の発生を抑制し、油脂等が排水とともに下水道に排出されることを抑制している。
以下、本実施形態の受篭13について、さらに説明する。
【0025】
本実施形態の受篭13は、
図4に示すように、上流側壁131a、下流側壁131b、左、右の側壁131c,131c、及び、底壁131dを有する箱型形状をしており、左、右の側壁131c,131cに把手132,132が取付けられている。
なお、本実施形態の受篭13は、
図3ないし
図5に示すように、上流側壁131a、下流側壁131b、及び、左、右の側壁131c,131cの上端が外周側に屈曲してフランジ部が設けられており、下流側壁131bのフランジ部に切り欠き131eが設けられている。受篭13は、下流側壁131bのフランジ部に設けられた切り欠き131eが本体槽11(仕切り板ガイド等)に設けられた凸部12cに嵌ることで位置決めされる。
【0026】
本実施形態の受篭13は、上流側壁131a及び下流側壁131bのみに複数のパンチング加工がなされており、底壁131dには、パンチング加工がなされていない。
すなわち、受篭13は、上流側壁131a及び下流側壁131bのみに複数の排水穴13aを有しており、底壁131dに排水穴13aを有していない。
なお、本実施形態の受篭13は、上流側壁131a及び下流側壁131bの全面に排水穴13aが設けられている。
【0027】
したがって、排水路Aからグリーストラップ1の排水流入部1aに流入した排水は、排水流入部1aに配置された受篭13の底壁131dに衝突して勢いが抑えられ、上流側壁131a及び下流側壁131bに設けられた排水穴13aから流出される。
排水穴13aから流出された排水は、さらに本体槽11の上流側壁11aもしくは仕切り板12に衝突して勢いが抑えられ、排水流入部1aの下方領域に緩やかに流れ、仕切り板12の下を潜って分離部1bに進入する。
【0028】
-本実施形態のグリーストラップの効果-
本実施形態のグリーストラップは、排水流入部1aに配置される受篭13が上流側壁131a及び下流側壁131bのみに排水穴13aが形成されており、底壁131dに排水穴13aが形成されていないので、排水路Aから流入される排水の勢いが底壁131dに衝突して抑えられ、側壁に設けた排水穴13aから穏やかに分離部1b内に排出させることができるので、分離部1b内に留まる排水に乱流を発生させたり、サイフォン現象を発生させたりすることが抑制され、油脂や汚泥が排水されることを防ぐことができる。
【0029】
-他の実施形態-
本実施形態の受篭13は、上流側壁131a及び下流側壁131bのみに排水穴13aが形成されているが、受篭13に形成される排水穴13aは、受篭13の底壁131dに形成されていなければ、上流側壁131a、下流側壁131b及び左右の側壁111cの何れの側壁に設けられていてもよい。
例えば、排水穴13aは、左右の側壁131cのみに形成されていてもよく、上流側壁131a、下流側壁131b及び左右の側壁131cの全てに設けられていてもよく、いずれか一つの側壁に設けられていてもよい。
【0030】
本実施形態のグリーストラップ1に排水を流入する排水路Aは、グリーストラップ1の排水流入部1aの上流側から排水を流入しているが、排水流入部1aの左右側方から排水が流入されるものであってもよい。
そのような場合には、受篭13は、
図5に示すように、把手132が上流側壁131a及び下流側壁131bに設けられていてもよく、受篭13の把手132の取り付け位置及び形状は、何ら限定されるものではない。
【0031】
また、例えば、グリーストラップ1の排水流入部1aの上流側から排水を流入する場合には、受篭13の排水穴13aを左右の側壁131cのみに形成し、グリーストラップ1の排水流入部1aの左右側方から排水を流入する場合には、受篭13の排水穴13aを上流側壁131a及び下流側壁131bのみに形成して、排水が衝突する方向の側壁には排水穴13aを設けないようにしてもよい。
【0032】
受篭13の側壁に設けられる排水穴13aは、側壁の全面に設けられていなくてもよく、例えば側壁の上方部分のみに設けるなど、側壁の一部分に設けられるものであってもよい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、矛盾が生じない範囲において、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1:グリーストラップ,1a:排水流入部,1b:分離部,13:受篭,13a:排水穴,131:篭部,131a:上流側壁,131b:下流側壁,131c:側壁,131d:底壁