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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164628
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】逐次比較型A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/12 20060101AFI20241120BHJP
   H03M 1/46 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H03M1/12 C
H03M1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080249
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 尚弘
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA02
5J022CF01
5J022CF02
5J022CF04
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減しつつ、変換精度を改善した逐次比較型A/Dコンバータを提供する。
【解決手段】SAR-ADC100は、容量型DAC110と、容量型DAC110に基準電圧Vrを供給するバッファアンプ200と、を備える。バッファアンプ200は、動作電流IDDが相対的に大きい第1状態と、相対的に小さい第2状態が、逐次比較型A/Dコンバータの動作クロックCKLと同期した制御信号CNTにもとづいて切り替え可能に構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逐次比較型A/Dコンバータであって、
容量型D/Aコンバータと、
前記容量型D/Aコンバータに基準電圧を供給するバッファアンプと、
を備え、
前記バッファアンプは、動作電流が相対的に大きい第1状態と相対的に小さい第2状態が、前記逐次比較型A/Dコンバータの動作クロックと同期した制御信号にもとづいて切り替え可能に構成されている、逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項2】
前記バッファアンプは、
可変電流源と、
差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力を受ける利得段と、
前記可変電流源の出力電流を折り返し、前記差動増幅器および前記利得段に供給する第1カレントミラー回路と、
を含む、請求項1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項3】
前記可変電流源は、
基準電流を生成する基準電流源と、
前記基準電流源と接続された入力ノードと、前記第1カレントミラー回路の入力ノードと接続された第1出力ノードと、第2出力ノードと、を有する第2カレントミラー回路と、
前記第2カレントミラー回路の前記第2出力ノードと前記第1カレントミラー回路の前記入力ノードの間に設けられ、前記制御信号に応じてオン、オフが切り替え可能なスイッチと、
を含む、請求項2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項4】
前記可変電流源は、
前記第2カレントミラー回路の前記第2出力ノードと前記第1カレントミラー回路の前記入力ノードの間に、前記スイッチと直列に接続されたローパスフィルタをさらに含む、請求項3に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項5】
前記第1カレントミラー回路は、カスコードカレントミラー回路である、請求項3または4に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【請求項6】
前記逐次比較型A/Dコンバータの構成要素は、ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から4のいずれかに記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逐次比較型A/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
中分解能~高分解能(たとえば8ビット以上)のA/Dコンバータ(ADC:Analog Digital Converter)として、逐次比較型(SAR:Successive Approximation Register)が使用される。SAR-ADCは、入力電圧をサンプルホールドし、それを1回目のしきい値電圧と比較する。そして比較結果に応じて、2回目のしきい値電圧を決定し、再び比較を行う。この動作を繰り返すことにより、バイナリ探索によって、アナログ電圧がデジタル信号に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-64873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SAR-ADCでは、しきい値電圧を生成するために、容量型D/Aコンバータ(CDAC)が利用される。CDACは、複数のキャパシタと、複数のキャパシタを基準電圧Vrによって個別に充電するスイッチ群を備える。基準電圧は、バッファ回路から供給される。
【0005】
ここで、スイッチ群の切り替えによって、バッファ回路が生成する基準電圧が変動する。基準電圧の変動は、CDACの変換精度、ひいてはSAR-ADCの変換精度の低下を招く。基準電圧の変動を短時間で収束させるためには、バッファ回路の能力(スルーレート)を高める必要があるが、そのためにはバッファ回路の動作電流を増やさなければならず、SAR-ADCの消費電力が増加する。
【0006】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、消費電力を低減しつつ、変換精度を改善した逐次比較型A/Dコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様の逐次比較型A/Dコンバータは、容量型D/Aコンバータと、容量型D/Aコンバータに基準電圧を供給するバッファアンプと、を備える。バッファアンプは、動作電流が相対的に大きい第1状態と相対的に小さい第2状態が、逐次比較型A/Dコンバータの動作クロックと同期した制御信号にもとづいて切り替え可能に構成されている。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、消費電力を削減しつつ、変換精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、比較技術に係るSAR-ADCの回路図である。
図2図2は、図1のSAR-ADCの動作波形図である。
図3図3は、実施形態に係るSAR-ADCの回路図である。
図4図4は、図3のSAR-ADCの動作の一例を示す波形図である。
図5図5は、図3のSAR-ADCの動作の別の一例を示す波形図である。
図6図6は、一実施例に係るバッファアンプの回路図である。
図7図7は、一実施例に係るバッファアンプの回路図である。
図8図8は、一実施例に係るバッファアンプの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係る逐次比較型A/Dコンバータは、容量型D/Aコンバータと、容量型D/Aコンバータに基準電圧を供給するバッファアンプと、を備える。バッファアンプは、動作電流が相対的に大きい第1状態と相対的に小さい第2状態が、逐次比較型A/Dコンバータの動作クロックと同期した制御信号にもとづいて切り替え可能に構成されている。
【0013】
バッファアンプに高い能力が必要とされるのは、容量型D/Aコンバータのスイッチ群がスイッチングした直後において、基準電圧が変動する区間であり、基準電圧が静定した後の区間は、高い能力は必要とされない。そこで、バッファアンプに高い能力が必要とされない区間においては、バッファアンプの動作電流を低減することにより、消費電力を削減しつつ、変換精度を改善できる。
【0014】
一実施形態において、バッファアンプは、可変電流源と、差動増幅器と、差動増幅器の出力を受ける利得段と、可変電流源の出力電流を折り返し、差動増幅器および利得段に供給する第1カレントミラー回路と、を含んでもよい。この構成によれば、第2状態において、可変電流源の出力電流を減少させることで、差動増幅器と利得段の両方の電流量を減少させることができ、ひいてはバッファアンプの動作電流を減少させることができる。
【0015】
一実施形態において、可変電流源は、基準電流を生成する基準電流源と、基準電流源と接続された入力ノードと、第1カレントミラー回路の入力ノードと接続された第1出力ノードと、第2出力ノードと、を有する第2カレントミラー回路と、第2カレントミラー回路の第2出力ノードと第1カレントミラー回路の入力ノードの間に設けられ、制御信号に応じてオン、オフが切り替え可能なスイッチと、を含んでもよい。スイッチがオンの状態では、第2カレントミラー回路の第1出力ノードに流れる電流と、第2出力ノードに流れる電流の合計電流が、第1カレントミラー回路に供給される。スイッチがオフの状態では、第2カレントミラー回路の第1出力ノードに流れる電流だけが第1カレントミラー回路に供給される。このように、スイッチの状態に応じて、可変電流源の出力電流を2つの電流量で切り換えることができる。
【0016】
一実施形態において、可変電流源は、第2カレントミラー回路の第2出力ノードと第1カレントミラー回路の入力ノードの間に、スイッチと直列に接続されたローパスフィルタをさらに含んでもよい。ローパスフィルタを挿入することにより、スイッチの切り替えによって可変電流源の出力電流に重畳されるノイズを除去できる。
【0017】
一実施形態において、第1カレントミラー回路は、カスコードカレントミラー回路であってもよい。
【0018】
一実施形態において、逐次比較型A/Dコンバータは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0019】
(実施形態)
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0020】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
実施形態に係る逐次比較型A/Dコンバータ(SAR-ADC)について説明する前に、その一般的な構成と、SAR-ADCにおいて発生する問題を説明する。
【0022】
図1は、比較技術に係るSAR-ADC100Rの回路図である。SAR-ADC100Rは、一つの半導体基板に一体集積化される。SAR-ADC100Rは、A/Dコンバータの専用のチップであってもよいし、他の機能を有するIC(Integrated Circuit)に集積化されてもよい。あるいは、SAR-ADC100Rは、デジタル部とアナログ部が別々のチップで構成されてもよい。
【0023】
SAR-ADC100Rは、容量型DAC110、コンパレータ120、コントローラ130、バッファアンプ140を備える。容量型DAC110は、入力電圧VINをサンプリングする。そして容量型DAC110は、制御コードCODEkに応じたしきい値電圧VTHkを生成する。kは、逐次比較処理のサイクルを示す。コンパレータ120は、容量型DAC110の状態にもとづいて、入力電圧VINとしきい値電圧VTHkの大小関係を示す比較信号compを発生する。たとえば比較信号compは、入力信号VINがしきい値電圧VTHkより大きいときにH(ハイ)、小さいときにL(ロー)である。コントローラ130は、コンパレータ120の出力compにもとづいて、次のサイクルk+1の制御コードCODEk+1を決定する。SAR-ADC100Rはこの動作を繰り返す。
【0024】
容量型DAC110には、バッファアンプ140から、目標レベルVREFに安定化された基準電圧Vrが供給されている。容量型DAC110は、複数のキャパシタCのアレイと、複数のキャパシタCと接続される複数のスイッチSWを含む。各スイッチSWjの状態は、クロック信号CLKと同期して、制御コードCODEにもとづいて制御される。スイッチSWjの状態によって、基準電圧Vrおよび接地電圧(0V、もしくは他の電圧)の一方がキャパシタCjに印加される。
【0025】
図2は、図1のSAR-ADC100Rの動作波形図である。ここではクロック信号CLKの1周期Tが、1回の逐次比較動作(サイクル)に対応しており、クロック信号CLKのポジティブエッジのタイミングtで、容量型DAC110の内部のスイッチSWjが、0V側に接続された状態φ1から、基準電圧Vr側に接続された状態φ2に切り替わる。クロック信号CLKのネガティブエッジのタイミングtでデータサンプリングが行われる。
【0026】
タイミングtにおいてスイッチSWjの状態が変化すると、基準電圧Vrが、目標レベルVREFから変動する。バッファアンプ140が、その出力である基準電圧Vrを目標レベルVREFに安定化するのに要する時間(セトリング時間TSET)は、バッファアンプ140の能力によって決まる。セトリング時間TSETは、次のサイクルにおけるD/A変換に影響を与えない程度に短い必要があり、そのためには、バッファアンプ140の動作電流を高くしなければならない。これが比較技術に係るSAR-ADC100Rにおける問題である。
【0027】
続いて、実施形態に係るSAR-ADC100について説明する。
【0028】
図3は、実施形態に係るSAR-ADC100の回路図である。SAR-ADC100は、容量型DAC110、コンパレータ120、コントローラ130およびバッファアンプ200を備える。
【0029】
容量型DAC110、コンパレータ120、コントローラ130については、比較技術と同様である。SAR-ADC100は、図1のバッファアンプ140に代えて、バッファアンプ200を備える。
【0030】
バッファアンプ200には、コントローラ130からの制御信号CNTが入力されている。この制御信号CNTは、クロック信号CLKと同期した信号である。バッファアンプ200は、動作電流IDDが相対的に大きい第1状態と相対的に小さい第2状態が、制御信号CNTにもとづいて切り替え可能に構成されている。
【0031】
以上が実施形態に係るSAR-ADC100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0032】
図4は、図3のSAR-ADC100の動作の一例を示す波形図である。この例において、クロック信号CLKの1周期TCLKが、1回の逐次比較サイクル(変換周期T)に対応する。
【0033】
制御信号CNTは、クロック信号CLKを遅延させた信号となっている。たとえば、コントローラ130は、クロック信号CLKを、その周期TCLKの1/4倍の時間TCLK/4(つまり、T/4)、遅延させることにより制御信号CNTを生成してもよい。制御信号CNTがローの区間、バッファアンプ200の動作電流IDDは相対的に大きい電流量Iとなり、制御信号CNTがハイの区間、バッファアンプ200の動作電流IDDは相対的に小さい電流量Iとなる。
【0034】
つまり、ノイズが発生するタイミングtよりも、T/4より前の時刻tに、バッファアンプ200の動作電流IDDが大きくなり、能力が高められる。したがって、時刻tに発生する基準電圧Vrの変動を短時間で収束させることができる。そして、時刻t0からT/4より後の時刻tに、バッファアンプ200の動作電流IDDが小さくなる。SAR-ADC100はこの動作を繰り返す。
【0035】
以上がSAR-ADC100の動作である。バッファアンプ200に高い能力が必要とされるのは、容量型D/Aコンバータのスイッチ群がスイッチングした直後において、基準電圧Vrが変動する区間であり、基準電圧Vrが静定した後の区間は、高い能力は必要とされない。そこで、バッファアンプに高い能力が必要とされない区間においては、バッファアンプの動作電流を低減することにより、消費電力を削減しつつ、変換精度を改善できる。
【0036】
たとえば、I=800μA、I=130μAであるとする。比較技術では、常時、800μAの動作電流IDDがバッファアンプ140に流れることとなる。
【0037】
これに対して、本実施形態では、動作電流IDDの平均値(実効値)IDD(AVE)は、I=800μAとI=130μAの平均である465μAとなる。したがって、比較技術に比べて約42%の電流を削減することができる。
【0038】
図4の例では、制御信号CNTのハイとローの時間比率が、1:1であったが、ハイとローの時間比率を変化させれば、さらに電流削減の効果が高めることができる。
【0039】
図5は、図3のSAR-ADC100の動作の別の一例を示す波形図である。図5の例は、ハイとローの時間比率を3:1としたものである。この例において、クロック信号CLKの2周期(2TCLK)が、1変換周期Tに相当する。
【0040】
制御信号CNTは、1変換周期Tのうち、容量型DAC110においてスイッチSWが遷移する時刻tを含む区間t~tにおいてローとされる。この区間t~tの長さは、クロック信号CLKの1/2周期(TCLK/2)となっている。
【0041】
図5の制御例におけるバッファアンプ200の実効的な動作電流IDD(AVE)は、
DD(AVE)=800μA×1/4+130μA×3/4=297.5μA
となる。したがって、比較技術に比べて約64%の電流を削減することができる。
【0042】
続いてバッファアンプ200の構成例を説明する。
【0043】
図6は、一実施例に係るバッファアンプ200の回路図である。バッファアンプ200は、差動増幅器210、利得段220、可変電流源230、第1カレントミラー回路CM1を含む。
【0044】
差動増幅器210は、PMOSトランジスタMP11,MP12からなる差動対212と、負荷回路214を含む。負荷回路214はカレントミラー回路であってもよいし、抵抗負荷であってもよい。
【0045】
可変電流源230は、制御信号CNTに応じて2段階で変化する電流Iを生成する。
【0046】
第1カレントミラー回路CM1は、入力ノードIN、第1出力ノードOUT1、第2出力ノードOUT2を有する。入力ノードINには、可変電流源230が接続される。第1出力ノードOUT1には、差動増幅器210が接続され、第2出力ノードOUT2には利得段220が接続される。
【0047】
第1カレントミラー回路CM1は、電流Iを第1定数倍したテイル電流源ITAILを第1出力ノードOUT1から出力し、差動増幅器210に供給する。また第1カレントミラー回路CM1は、電流Iを第2定数倍したバイアス電流IOUTを第2出力ノードOUT2から出力し、利得段220に供給する。この例では、テイル電流ITAILとバイアス電流IOUTの合計を動作電流IDDと把握することができる。
【0048】
図7は、一実施例に係るバッファアンプ200の回路図である。可変電流源230は、基準電流源232、第2カレントミラー回路CM2、スイッチSW2、ローパスフィルタ234を含む。
【0049】
基準電流源232は基準電流IREFを生成する。第2カレントミラー回路CM2は、入力ノードIN、第1出力ノードOUT1、第2出力ノードOUT2を有する。第2カレントミラー回路CM2の入力ノードINには、基準電流源232が接続される。第2カレントミラー回路CM2の第1出力ノードOUT1は、第1カレントミラー回路CM1の入力ノードINと接続される。第2カレントミラー回路CM2の第2出力ノードOUT2は、スイッチSW2を介して第1カレントミラー回路CM1の入力ノードINと接続される。第2カレントミラー回路CM2の第2出力ノードOUT2と第1カレントミラー回路CM1の入力ノードINの間には、スイッチSW2と直列に接続されたローパスフィルタ234が挿入される。スイッチSW2のオン、オフは、制御信号CNTによって制御される。
【0050】
スイッチSW2がオンの状態では、第2カレントミラー回路CM2の第1出力ノードOUT1に流れる電流Iと、第2出力ノードOUT2に流れる電流Iの合計電流I+Iが、第1カレントミラー回路CM1に供給される。
【0051】
スイッチSW2がオフの状態では、第2カレントミラー回路CM2の第1出力ノードOUT1に流れる電流Iだけが第1カレントミラー回路CM1に供給される。このように、スイッチSW2の状態に応じて、可変電流源230の出力電流Iを2つの電流量I+I、Iで切り換えることができる。
【0052】
図8は、一実施例に係るバッファアンプ200の回路図である。差動増幅器210の負荷回路214は、NMOSトランジスタMN11,MN12を含むカレントミラー回路である。
【0053】
第1カレントミラー回路CM1は、カスコードカレントミラー回路であり、抵抗R21、PMOSトランジスタMP21~MP26を含む。
【0054】
第2カレントミラー回路CM2は、NMOSトランジスタM31,M32,M33を含む。
【0055】
スイッチSW2は、CMOSスイッチを構成するトランジスタMP41,MN41と、インバータINV1を含む。
【0056】
ローパスフィルタ234は、RCフィルタであり、キャパシタC51と抵抗R51を含む。
【0057】
上述した実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
【0058】
図6図8のバッファアンプ200は、差動増幅器210と利得段220の電流の両方を変化させたが、本開示はそれに限定されない。バッファアンプ200全体の消費電力に関しては、利得段220の方が支配的であるから、利得段220の電流量のみを変化させてもよい。
【0059】
またバッファアンプ200の構成は特に限定されず、差動増幅器、利得段(増幅段)、出力段の3段で構成されてもよい。
【0060】
バッファアンプ200は、天地を反転して、トランジスタのP型とN型を置換した構成としてもよい。
【0061】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示または本発明の範囲に含まれることは当業者に理解されるところである。
【0062】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0063】
(項目1)
逐次比較型A/Dコンバータであって、
容量型D/Aコンバータと、
前記容量型D/Aコンバータに基準電圧を供給するバッファアンプと、
を備え、
前記バッファアンプは、動作電流が相対的に大きい第1状態と相対的に小さい第2状態が、前記逐次比較型A/Dコンバータの動作クロックと同期した制御信号にもとづいて切り替え可能に構成されている、逐次比較型A/Dコンバータ。
【0064】
(項目2)
前記バッファアンプは、
可変電流源と、
差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力を受ける利得段と、
前記可変電流源の出力電流を折り返し、前記差動増幅器および前記利得段に供給する第1カレントミラー回路と、
を含む、項目1に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0065】
(項目3)
前記可変電流源は、
基準電流を生成する基準電流源と、
前記基準電流源と接続された入力ノードと、前記第1カレントミラー回路の入力ノードと接続された第1出力ノードと、第2出力ノードと、を有する第2カレントミラー回路と、
前記第2カレントミラー回路の前記第2出力ノードと前記第1カレントミラー回路の前記入力ノードの間に設けられ、前記制御信号に応じてオン、オフが切り替え可能なスイッチと、
を含む、項目2に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0066】
(項目4)
前記可変電流源は、
前記第2カレントミラー回路の前記第2出力ノードと前記第1カレントミラー回路の前記入力ノードの間に、前記スイッチと直列に接続されたローパスフィルタをさらに含む、項目3に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0067】
(項目5)
前記第1カレントミラー回路は、カスコードカレントミラー回路である、項目3または4に記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【0068】
(項目6)
前記逐次比較型A/Dコンバータの構成要素は、ひとつの半導体基板に一体集積化される、項目1から5のいずれかに記載の逐次比較型A/Dコンバータ。
【符号の説明】
【0069】
100 SAR-ADC
110 容量型DAC
120 コンパレータ
130 コントローラ
140,200 バッファアンプ
210 差動増幅器
212 差動対
214 負荷回路
220 利得段
230 可変電流源
232 基準電流源
CM2 第2カレントミラー回路
SW2 スイッチ
234 ローパスフィルタ
CM1 第1カレントミラー回路
CM2 第2カレントミラー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8