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特開2024-164636帯電装置、プロセスカートリッジ、および、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164636
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】帯電装置、プロセスカートリッジ、および、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G03G15/02 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080262
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹目 大樹
(72)【発明者】
【氏名】笛井 直喜
(72)【発明者】
【氏名】秋月 智雄
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200GA16
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA56
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB43
2H200HB45
2H200HB47
2H200HB48
2H200LB02
2H200LB09
2H200LB13
2H200LB33
2H200LB35
2H200LB37
2H200LC04
2H200MA01
2H200MA02
2H200MA03
2H200MA08
2H200MA20
2H200MB01
2H200MC01
2H200MC02
2H200MC06
2H200MC15
2H200NA02
(57)【要約】
【課題】簡素な構成により帯電ローラの汚れを抑制し、良好な帯電を行うことができる帯電装置を提供。
【解決手段】像担持体を帯電させる帯電部材と、帯電部材に押圧され、帯電部材の回転に伴って帯電部材の表面に摺擦されるクリーニング部材を有する帯電装置であって、クリーニング部材は、少なくとも、粗し粒子を含有しており帯電部材に当接する第1の層を含み、第1の層は帯電部材の表面よりもマルテンス硬さが高く、粗し粒子は、帯電部材の前記表面に付着するトナーにおける最もモース硬度の高い成分と同等以上のモース硬度を有する帯電装置を用いる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に押圧され、前記帯電部材の回転に伴って前記帯電部材の表面に摺擦されるクリーニング部材と、
を有する帯電装置であって、
前記クリーニング部材は、少なくとも、粗し粒子を含有しており前記帯電部材に当接する第1の層を含み、
前記第1の層は前記帯電部材の前記表面よりもマルテンス硬さが高く、
前記粗し粒子は、前記帯電部材の前記表面に付着するトナーにおける最もモース硬度の高い成分と同等以上のモース硬度を有する
ことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記クリーニング部材は、前記第1の層と、前記第1の層を支持する可撓性を有する第2の層と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記第2の層に、接着剤により前記粗し部材が塗布されることにより、前記第1の層が形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記帯電部材の前記表面に付着する前記トナーの成分は、前記トナーの外添剤を含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記粗し粒子は、モース硬度が6以上の材質である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項6】
前記粗し粒子は、モース硬度が7以上の材質である
ことを特徴とする請求項5に記載の帯電装置。
【請求項7】
前記粗し粒子は、新モース硬度が7以上の材質である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項8】
前記粗し粒子は、新モース硬度が8以上の材質である
ことを特徴とする請求項7に記載の帯電装置。
【請求項9】
前記クリーニング部材の前記第1の層の表面粗さRaは、0.18μm以上、2.41μm以下である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項10】
前記粗し粒子の粒度は、0.3μm以上、12μm以下である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項11】
像担持体と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
像担持体と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の帯電装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置、プロセスカートリッジ、および、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、感光ドラムおよび感光ドラムに作用するプロセス手段を一体的にカートリッジ化して、このカートリッジを画像形成装置に着脱可能とするプロセスカートリッジ方式が採用されている。同様に現像装置をカートリッジ化したものも実用化されている。このプロセスカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをユーザ自身で行うことができるので、格段に操作性を向上させることができた。
【0003】
感光ドラムを一様に帯電させる手段としては、導電性ゴムローラ(以下帯電ローラと称す)を感光ドラムに当接回転させる方法(所謂、接触帯電方式)が一般に知られている。このような帯電ローラによる感光ドラムの帯電方法はコロナ放電による帯電方法に比べ、オゾンの発生が少ないという利点がある。一方、感光ドラム上には転写残トナーをクリーニング手段によって清掃した後にもごく微量のトナー、あるいはトナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等が存在している。接触帯電方式においては、それらクリーニング手段によって清掃されなかった感光ドラム上の残留物が帯電ローラに付着してしまう場合がある。この場合、感光ドラムを所望の電位に帯電することができなくなる帯電不良が発生する場合があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、帯電ローラのクリーニング部材としてクリーニングローラを用いた構成が開示されている。また、特許文献2には、帯電ローラのクリーニング部材として、ポリイミドフィルム等からなるクリーニングシートを用いた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-297690号公報
【特許文献2】特許第4856974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のクリーニングローラを用いた構成においては、クリーニング部材の高コスト化と共に、クリーニング部材を回転可能にするための支持部材等が必要であり、帯電装置の大型化に繋がってしまう。
【0007】
特許文献2のクリーニングシートを用いた構成は、装置の簡素化、小型化を達成することができる。一方で、クリーニング後の感光ドラム上に残留したトナー、あるいはトナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の付着物が多い場合において帯電ローラの汚れを抑制する効果が不十分である場合があった。また、昨今、画像形成装置やプロセスカートリッジの高寿命化に伴い、軽微なクリーニング不良であっても長期的に帯電ローラを汚染することによって画像不良が発生する場合があった。
【0008】
本発明は以上のような点を鑑みてなされたものであり、簡素な構成により帯電ローラの汚れを抑制することができる帯電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に押圧され、前記帯電部材の回転に伴って前記帯電部材の表面に摺擦されるクリーニング部材と、
を有する帯電装置であって、
前記クリーニング部材は、少なくとも、粗し粒子を含有しており前記帯電部材に当接する第1の層を含み、
前記第1の層は前記帯電部材の前記表面よりもマルテンス硬さが高く、
前記粗し粒子は、前記帯電部材の前記表面に付着するトナーにおける最もモース硬度の高い成分と同等以上のモース硬度を有する
ことを特徴とする帯電装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成により帯電ローラの汚れを抑制することができる帯電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の画像形成装置全体の概略図である。
図2】実施例1の画像形成装置の制御概略ブロック図である。
図3】実施例1のプロセスカートリッジの概略図である。
図4】実施例1の感光ドラムニットと現像ユニットの概略図である。
図5】実施例1のシート部材の概略図である。
図6】実施例1におけるシート部材の取り付け方法を示した概略図である。
図7】実施例1におけるシート部材の帯電ローラへの押し当て方法を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の説明で一度説明した部材についての材質、形状などは、特に改めて記載しない限り、後の説明においても初めの説明と同様のものである。特に図示あるいは記述をしない構成や工程には、当該技術分野の周知技術または公知技術を適用することが可能である。また、重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
<実施例1>
本実施例では、帯電ローラのクリーニングシート部材として、シート部材の表層に塗布する粒子の硬さを、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さと同等以上にすることによって、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制する方法について説明する。以下、本発明に係る一実施例として、帯電装置およびこれを用いるプロセスカートリッジ、画像形成装置について図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
[画像形成装置の全体構成]
本実施例に係る画像形成装置120の全体構成について、図1を参照して概略説明する。図1は画像形成装置120の一形態であるモノクロレーザープリンターの全体構成説明図である。
【0015】
画像形成装置本体90の下部には、紙等の記録材Pを収納した給紙カセット7が配置されている。記録材Pの搬送経路に沿って順に、給紙ローラ8、搬送ローラ対9、トップセンサ10、転写前ガイド11、転写ローラ12、搬送ガイド13、定着装置14、排紙ロ
ーラ15、排紙トレイ16、が配置されている。また、転写ローラ12と感光ドラム1が当接するようにプロセスカートリッジ50が配置されている。
【0016】
感光ドラム1は画像形成装置本体90によって回転自在に支持されており、駆動モータ180によって矢印R1方向に周速度250mm/secのプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電装置としての帯電ローラ2、露光装置3、現像ユニット20、クリーニング装置5が配置されている。
【0017】
[画像形成動作]
次に、前述構成の画像形成装置120による画像形成動作を説明する。図2は、画像形成装置120の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。本実施例では、画像形成装置120の装置本体90に設けられた制御手段としての制御部140(制御回路)が、画像形成装置120の各部の動作を統括的に制御する。制御部140は、演算制御手段としてのCPU141、記憶手段としてのROM142、RAM143などを有して構成される。ROM142には、CPU141が実行するプログラムや各種データが格納される。RAM143は、CPU141の作業用のメモリとして使われる。制御部140には、前述の帯電電源150、現像電源160、転写電源170、駆動モータ180、露光装置3などが接続されている。
【0018】
駆動モータ180によって矢印R1方向に回転駆動された感光ドラム1は、帯電装置としての帯電ローラ2によって所定の極性、および所定の電位に一様に帯電される。本実施例で使用する感光ドラム1は、外径φ24mmの負帯電性の有機(OPC:Organic Photoconductor)感光体である。また帯電ローラ2は、接触DC帯電方式を採用し、所定の圧力で感光ドラム1と接触し、帯電ニップを形成する。印加する直流電圧は、感光ドラム1表面と帯電ローラ2に印加される帯電バイアスとの電位差が放電開始電圧以上となるような値に設定されており、具体的には帯電バイアスとして-1100Vの直流電圧を印加している。このとき、感光ドラム1面を帯電電位(暗部電位)Vd=-550Vに一様に接触帯電させている。
【0019】
帯電後の感光ドラム1の表面に対し、レーザースキャナ等の露光装置3によって画像情報に基づいたレーザー光Lによる画像露光がなされると、露光部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。本実施例では、感光ドラム1の一様帯電処理面をレーザー光Lで全面露光した場合の電位であるVl=-100Vになるように、レーザー出力が調整されている。続いて、現像ユニット20によって感光ドラム1上に形成された静電潜像に現像剤を供給する。本件では、現像剤は負極性の磁性トナーを用いる。現像部材に電圧を印加する電圧印加手段としての現像電源160から現像バイアス(Vdc)-300Vが印加された、現像部材としての現像ローラ21により現像することができる。
【0020】
記録材Pは、給紙カセット7に収納されており、給紙ローラ8によって1枚ずつ給紙され、搬送ローラ対9によって搬送され、転写前ガイド11によってガイドされながら、感光ドラム1と転写ローラ12とで形成された転写ニップ部へと搬送される。転写ローラ12の芯金12aにトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが転写電源170から印加され、感光ドラム1上のトナー像が記録材P上の所定の位置に転写される。本実施例で使用する転写ローラ12は、ローラ外径φ14mm、芯金径φ5mm、弾性層の厚み4.5mm、硬度30°(アスカーC硬度)である。芯金にはSUS、弾性層にはNBRとエピクロルヒドリンとの混合ゴム材を使用している。
【0021】
転写部によって表面に未定着トナー像を担持した記録材Pは、搬送ガイド13に沿って定着装置14に搬送される。この定着装置14は、加圧ローラ14aと、ヒータ14bを内蔵する定着ローラ14cと、からなり、通過する記録材Pに熱及び圧力を印加して未定
着トナー像を定着させる。トナー像定着後の記録材Pは、排紙ローラ15によって装置本体90上面の排紙トレイ16上に排出される。一方、感光ドラム1上の、記録材Pに転写されないで表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置5により廃トナー容器6に回収される。以上の動作を繰り返すことで、次々と画像形成を行うことができる。
【0022】
[プロセスカートリッジの構成]
次に、本実施例におけるプロセスカートリッジ50について、図3および図4を参照して詳細に説明する。図3はプロセスカートリッジ全体を示している。図4(a)は感光ドラムユニット4の詳細を示している。図4(b)は現像ユニット20の詳細を示している。図3に示すように、プロセスカートリッジ50は、感光ドラム1と、帯電装置としての帯電ローラ2およびクリーニング装置5を備えた感光ドラムユニット4と、感光ドラム1上の静電潜像を現像する現像ローラ21を有する現像ユニット20と、を含んでいる。
【0023】
図4(a)に示すように、感光ドラムユニット4は、感光ドラム1の周上には、感光ドラム1の表面を一様に帯電させるための帯電ローラ2と、感光ドラム上に残ったトナーを除去するためのクリーニング装置5と、が配置されている。
【0024】
帯電ローラ2は、φ6の芯金2aに、厚さ約2mmのNBRゴムからなる導電性弾性層と、その上に厚さ約5μmのアクリル樹脂からなる離型層を形成したものである。なお、表面層の膜厚は、帯電部材断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。帯電ローラ2の高抵抗層としては、ウレタンゴムのほかに、アクリル樹脂、ナイロン樹脂及びフッ素樹脂などを用いてもかまわない。帯電ローラ2は感光ドラム1に対してほぼ並行に配列される。芯金の両端部を導電性の支持部材(不図示)により回転自在に支持させて、更にその支持部材をばね部材(不図示)により感光ドラム1の方向に移動付勢してある。これにより、帯電ローラ2は感光ドラム1に対して所定の押圧力で圧接されて帯電ニップ部を形成し、感光ドラム1の回転駆動に伴い従動回転する。
【0025】
画像形成装置本体90は、帯電ローラ2に帯電バイアスを印加する電圧印加手段としての帯電電源150を備える。本実施例ではこの帯電電源150から芯金2aに直流電圧を印加する。尚、本実施例においては、帯電ローラ2は感光ドラム1に対して従動回転するが、帯電ローラ2を駆動回転させる手段を用いてもよい。その場合においては、帯電ローラ2と感光ドラム1を異なる回転速度で回転させることにより周速差をつけても良い。
【0026】
本実施例におけるクリーニング装置5は、SUS製の支持部材5bの先端にゴムブレード5aを備えた、所謂ブレードクリーニングの構成をとる。クリーニング装置5によって感光ドラム1表面から除去された残留トナーは、廃トナー容器6に格納される。この時、クリーニング装置5によって除去されずに感光ドラム1上に残留した微量なトナーや、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等が帯電ローラ2に付着する場合があった。このため本実施例では、感光ドラムユニット4が、帯電ローラ2表面の付着物を除去する目的でシート部材60が備えられている。
【0027】
図4(b)に示すように、現像ユニット20には、感光ドラム1と接触して矢印Y方向に回転する現像ローラ21と、現像ローラ21と接触して矢印Z方向に回転するトナー供給ローラ23と、現像ブレード24と、トナーが収容されたトナー容器22と、が配置されている。さらにトナー容器22内には収容されたトナーを撹拌するとともにトナー供給ローラ23に搬送するためのトナー搬送手段25が設けられている。
【0028】
現像時、トナー搬送手段25によって収納されたトナーがトナー供給ローラ23へ搬送
されると、矢印Z方向に回転するトナー供給ローラ23が、そのトナーを矢印Y方向に回転する現像ローラ21との摺擦によって現像ローラ21に供給し、現像ローラ21上に担持させる。現像ローラ21上に担持されたトナーは、現像ローラ21の回転にともない現像ブレード24との接触部に至り、現像ブレード24がトナーに対して電荷を付与するとともに、所定の厚さのトナー薄層に形成する。そして、現像ローラ21上に形成されたトナー薄層は感光ドラム1と現像ローラ21とが接触する現像部に搬送され、その現像部において、現像電源160から現像ローラ21に印加した直流現像バイアスにより、感光ドラム1の表面に形成されている静電潜像に応じて現像をする。
【0029】
現像に寄与せずに現像ローラ21の表面に残留したトナーは、現像ローラ21の回転にともないトナー容器22内に戻され、トナー供給ローラ23との摺擦部で現像ローラ21から剥離、回収されるように構成されている。回収されたトナーは、トナー搬送手段25により残りのトナーと撹拌混合される。感光ドラム1と現像ローラ21が接触して現像を行う接触現像方式においては、感光ドラム1は剛体とし、これに使用する現像ローラ21は弾性体を有するローラとすることが好ましい。この弾性体としては、ソリッドゴム単層やトナーへの帯電付与性を考慮してソリッドゴム層上に樹脂コーティングを施したもの等が用いられる。また、トナー供給ローラ23は芯金部とスポンジ等の発泡部材からなる弾性ローラである。
【0030】
[トナー]
トナーの結着樹脂としては、スチレン-アクリル、スチレン-メタクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられる。トナーの着色剤としてはカーボンブラックや、マグネタイト、マグヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、その他、公知の顔料や染料を用いることができる。
【0031】
また、トナーには適切な粉体特性を付与する目的で必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。例えば、帯電制御剤、ケーキング防止剤、定着装置における定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体である。例えば、帯電制御剤としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ハイドロタルサイト類化合物、ジターシャリーブチルサリチル酸アルミ錯体等が挙げられる。離型剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き炭化水素系ワックス等が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子、ポリフッ化ビニリデン微粒子等が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム微粒子、炭化ケイ素微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子等が挙げられる。
【0032】
本実施例における外添剤としては、トナー100質量部に対して、シリカ1.5質量部、ハイドロタルサイト類化合物0.1質量部、チタン酸ストロンチウム0.1質量部を添加したものを用いた。
【0033】
[帯電ローラの付着物]
前述したように、感光ドラム1に残留したトナーはクリーニング装置5によって清掃され除去される。しかしながら、清掃後の感光ドラム1においてもごく微量のトナー、あるいはトナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等が存在している。このような、清掃後の残留物の一部は帯電ローラ2に付着し、堆積していく。本実施例において、帯電ローラ2に堆積した付着物を分析すると、帯電制御剤であるシリカや、外添剤であるハイドロタルサイト、チタン酸ストロンチウムが静電的に付着している場合や、それら帯電制御剤や外添剤がトナーの樹脂成分と混ざり合いながら物理的に固着している場合がある。
【0034】
[従来のクリーニングシート部材]
従来、帯電ローラ2のクリーニング部材として用いられるシート部材について説明する
。先行文献2によれば、帯電ローラ2、ポリイミドシート、シリカの仕事関数が「シート部材>シリカ>帯電ローラ」の関係を満足することで、シリカに対してポリイミドシートが負極性側、帯電ローラが正極性側に帯電しやすい構成となることから、シリカがポリイミドシートとは反発し、帯電ローラ2に引き付けられることで、縦スジ状の帯電不良の発生を抑えることができる。
【0035】
しかしながら、従来のシート部材では帯電制御剤や外添剤等による画像不良の発生を抑制できない場合があった。これは、シリカ以外の付着物について仕事関数を所望の関係にできていないことや、付着物の付着量が大きい場合に、感光ドラム1と帯電ローラ2との当接圧によって物理的に押し固められることにより、帯電ローラ2に付着物が堆積してしまうことが原因であると考えられる。このように、帯電ローラ2に帯電制御剤や外添剤等が堆積した場合には、感光ドラム1を所望の電位に帯電することが出来なくなり、画像品質が著しく低下する。
【0036】
また、前述したように、帯電制御剤や外添剤がトナーの樹脂成分と混ざり合うことで、付着物の付着力が大きくなる場合においても、帯電ローラ2から感光ドラム1へ静電的に移行させることが困難になる。この場合においても同様に、感光ドラム1を所望の電位に帯電することが出来なくなり、画像品質が著しく低下する。
【0037】
[本実施例のクリーニングシート部材]
本実施例のクリーニングシート部材は、前述のようなポリイミドシートでは帯電ローラに付着物が堆積してしまうような条件下においても、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制することができるクリーニングシートである。発明者らは鋭意検討により、シート部材の表層に塗布する粒子の硬さをトナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さと同等以上にすることで、材料の仕事関数にとらわれることなく、固着した付着物を解す効果や、帯電ローラ2上の付着物を均一に分散させる効果が得られること、また、それにより帯電不良起因の画像不良の発生を抑制することができることを見出した。
【0038】
以下、クリーニングシート部材の詳細について説明する。本実施例のシート部材60として、表層に一定の粗さを持ち、且つ、表層に硬い材質を用いることを特徴とするシート部材60について説明する。本実施例におけるシート部材60の表層とは、少なくとも帯電ローラ2と接触面を形成する側の面の表面に形成されている層を含む。
【0039】
まず、シート部材60の表層に硬い材質を用いることを特徴とする点について詳細に説明する。帯電制御剤や外添剤として用いられる材質の多くは、従来のシート部材60として用いられるポリイミドやポリフェニレンサルファイド(PPS)等の材質よりも十分に硬い。例えば、一般的な硬さの指標であるモース硬度では、無機物であるシリカ(二酸化ケイ素)やチタン酸ストロンチウムのモース硬度は5~6なのに対して、有機物であるポリイミドやPPS等の結晶性プラスチックは柔らかく、モース硬度は1~2である。よって、帯電ローラ2の付着物がシート部材60よりも硬いため、前述した固着した付着物を解す効果や、帯電ローラ2上の付着物を均一に分散させる効果が得られなかった。
【0040】
そこで、本実施例のシート部材60では、シート部材の表層に硬い材質を用いる。この時、シート部材60は基層(第2の層)と表層(第1の層)とを持ち、基層には従来のシート部材のように可撓性を持った材質(モース硬度:1)を用いて、表層に硬い材質(モース硬度:7)を用いる。このように、基層に可撓性を持った材質を用いることで帯電ローラ2へのシート部材60の押し付け圧を制御し易くなる。例えば、単層で硬い材質を用いたシート部材60を用いても良いが、その場合には帯電ローラ2への押し付け圧を制御するために、シート部材60の厚みを非常に薄くすることが必要となる。その場合、非常に薄く形成されたシート部材60が第1の層となるが、非常に硬質な薄膜シートとなって
しまうことから、加工性が難しく、割れやすいなど、入手性と使いこなしの面が非常に困難となってしまう。本実施例においては、シート部材60の基層にポリエチレンテレフタラート(PET)を用いて、基層の厚さは25~150μmとした。シート部材60の厚みはこの限りではなく、選択する材質によって変えることができ、シート部材60を帯電ローラ2へ所望の接触圧で押し付けることができれば良い。
【0041】
続いて、本実施例のシート部材60における表層についてさらに詳細に説明する。前述したように、シート部材60は帯電ローラ2へ押し当てることを考慮して、可撓性を有することが好ましい。そのため、表層には硬い材質を用いつつ、シート部材60としての可撓性を維持する必要がある。そこで、本実施例のシート部材60としては、基層であるPET層の上に表層として硬い材質の粒子を塗布する。この時、表層に塗布する粒子硬さとしては、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さと同等以上であることが好ましい。つまりは、帯電制御剤や外添剤等として、一般的に広く用いられるシリカはモース硬度5、チタンは5~5.5、チタン酸ストロンチウム等の一般的なモース硬度は6であるため、シート部材60の表層に塗布する粒子のモース硬度としては6以上であることが好ましい。また、シリカ(二酸化ケイ素)の一般的な新モース硬度(修正モース硬度)は7、チタン酸ストロンチウム等の新モース硬度は6であるため、シート部材60の表層に塗布する粒子の新モース硬度としては7以上であることが好ましい。例えば、シート部材60の表層に塗布する粒子としては、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド等を用いることができる。
【0042】
さらに、シート部材60の表面粗さについて詳細に説明する。前述した、シート部材60における帯電ローラ2との接触面に一定の粗さを有することにより、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制することができる。具体的に、シート部材60の表面粗さとしては、算術平均粗さRaが0.18μm以上、2.41μm以下であることが好ましい。ここで、表面粗さが小さ過ぎると固着した付着物を解す効果が得られない。一方、表面粗さが大き過ぎる場合においては、固着した付着物を解す度合いのバラつきが大きくなってしまうことから、付着物を均一に分散できなくなくなる。そこで本実施例では、固着した付着物を解す効果と、帯電ローラ2上の付着物を均一に分散させる効果を両立させるために、表面粗さを上記の範囲としている。
【0043】
図5に本実施例のシート部材60の断面図を示して説明する。シート部材60は可撓性を持つ基層61の上に、高分子系接着剤等の接着剤62によって粒子63が均一に塗布されてなる表層64を設けた構成である。これにより、シート部材60としての可撓性を持たせたまま、シート部材60の表層64における帯電ローラ2との接触面Sに硬い材質を配置することができる。さらには、シート部材60の表層64に塗布する粒子の粒度によって、シート部材60の表面粗さ(接触面Sの粗さ)を調整することが可能である。このとき、塗布する粒子の粒度に限りはないが、所望の表面粗さRaを安定的に得るためには、粒度が0.3μm以上12.0μm以下のものを用いることが好ましい。
【0044】
[シート部材の帯電ローラへの押し当て方法]
次に、シート部材60の帯電ローラ2への押し当て方法について図6および図7を参照して説明する。シート部材60は、帯電ローラ2の弾性層部分の回転軸線に沿った長さ寸法と、ほぼ同じ長さ寸法を有する。そしてその長手上辺部分をシート部材貼り付け台70に両面テープで波打ちの無いように貼り付けて支持させてある。そのシート部材貼り付け台70を、クリーニング装置5のクリーニングブレードの支持部材5bに対して固定支持させてある。シート部材60は、帯電ローラ2の回転方向R2に対して、順方向に腹あたりとなるように適度な押圧力を持って当接させている。帯電ローラ2とシート部材60との当接部において両者間に部分的にも隙間の無いように配置される。これにより、シート
部材60は回転する帯電ローラ2を摺擦して帯電ローラ2に付着した付着物をほぐしながら均一に分散させる。
【0045】
図7に示すように、シート部材60において、自由長n、当接長m、侵入量Δを規定した。自由長nはシート部材60におけるシート部材貼り付け台70に貼り付け支持されていない部分である。当接長mは自由長nにおけるシート部材貼り付け台70の端部から帯電ローラ2との接点までの距離である。侵入量Δは、上記接点を基準として、シート部材60が延伸する方向と垂直な方向において、帯電ローラ2が当接していない場合にシート部材60が存在している点と、帯電ローラ2の当接により変形したシート部材が存在している点との距離である。本実施例では、自由長nを6~10mm、帯電ローラ2との当接長mが4~8mm、侵入量Δを1~2mmとした。尚、これらの値は装置構成やサイズ、材料や所望の性能に応じて適宜決定されるべきものである。
【0046】
[シート部材の表層硬さと帯電ローラの表層硬さ]
本実施例におけるシート部材60の表層の硬さは、帯電ローラ2の表層の硬さよりも硬い。シート部材60の表層の硬さと帯電ローラ2の表層の硬さについては、ISO14577に基づき、微小硬度計(商品名:ピコデンターHM500、ヘルムート フィッシャー社製)を用いて、マルテンス硬さHM(N/m)を測定した。マルテンス硬さで比較する理由は、モース硬度はどちらも1となり、硬さの差が数値に現れない指標になってしまうためである。マルテンス硬さHMは、試験加重を負荷した状態で測定する。マルテンス硬さHMは、試験加重を増加させていき、できれば既定の加重に達した後の、加重・くぼみ深さによって得られる値から求める。具体的には以下である。
【0047】
マルテンス硬さHMは、負荷した試験力(F)とくぼみの表面積A(h)との商として、式(1)により定義される。くぼみ表面積A(h)は圧子押し込み深さ(h)から算出する。圧子は、四角錘型ダイヤモンド製のビッカース圧子を使用する。
HM=F/As(h)=F/(26.43×h) ・・・(1)
装置は、最大押し込み深さh:2μm、最大試験荷重Fmax:100mN、試験時間:30sと設定し、試験時の温度/湿度:23℃/50%RHで測定を行った。
【0048】
以上の測定方法で算出されるマルテンス硬さHMは、シート部材60の表層64のHMが200N/mm程度であるのに対して、帯電ローラ2の表層のHMが1.0N/mm程度と、シート部材60の方が十分に硬い。シート部材60の表層64に塗布する粒子として用いられる一例である酸化ジルコニウムはマルテンス硬さHMが3000N/mm程度、酸化アルミニウムはマルテンス硬さHMが9000N/mm程度であり、これらはモース硬度でも示される通り、帯電ローラ2の表層やシート部材60よりも十分に硬い。
【0049】
[評価実験1]
本実施例の作用効果を確認するため、評価実験1、評価実験2、および、評価実験3を行
った。まず、評価実験1として、シート部材60の表面粗さRaの効果について確認した評価結果を説明する。評価実験1においては、シート部材60として、ラッピングフィルムシート(3M社製)を用いた。このラッピングフィルムシートは、基層と表層からなり、基層に厚さ75μmのポリエチレンテレフタラート(PET)を用いて、表層には酸化アルミニウム粒子が分子系接着剤等で均一に塗布されている。尚、酸化アルミニウムの一般的なモース硬度は9、新モース硬度は12である。ここでは、表層に塗布された酸化アルミニウム粒子の粒度が異なる下記のシート1~10の10種類のラッピングフィルムシートを用意した。
【0050】
表1に示すように、本実施例のシート部材60として、シート1~7の7種類のシート
を用意した。シート1~7は、シートの表層にそれぞれ、0.3μm(#10000)、1.0μm(#8000)、2.0μm(#6000)、3.0μm(#4000)、5μm(#3000)、9μm(#2000)、12μm(#1200)の粒度の酸化アルミニウム粒子が塗布されたものである。また、比較例としてのシート8・9・10の3種類のシートを用意した。シート8・9はそれぞれ、表層に、15μm(#1000)、30μm(#600)の粒度の酸化アルミニウム粒子が塗布されたものである。シート10は、シート1を加工したものである。具体的には、シート1を2枚準備し、酸化アルミニウム粒子の塗布面をお互いに合わせるようにして、互いを擦り合わせ続けたシートである。
【0051】
また、シート1~10の表面粗さについては、表面粗さ測定機(商品名:サーフコーダ、小坂研究所社製)を用いて算術平均粗さRa(μm、JIS B0601)を測定した。測定条件は、評価長さ4mm、カットオフ値0.8mm、送り速さ0.1mm/sとした。表1に、シート1~9それぞれの粒度と、表面粗さRaの測定結果を示す。
【表1】
【0052】
表1に示したように、表層に塗布した粒子の粒度と、シート部材60の表面粗さRaは必ずしも相関があるわけではない。例えば、シート5とシート6を比較すると、表層に塗布した粒子の粒度はシート6の方が大きいが、シート表層のRaはシート5の方が大きい。このような現象は、シート部材の表面粗さRaが、粒子63が接着剤62から突出した量によって決定されるために起こり得る。
【0053】
次に、評価条件について詳細を説明する。プリントする用紙として、A4サイズの坪量80g/mのRed Label(Canon社製)を用いた。また、プロセスカートリッジとして、印字率4%のプリントが5500枚行えるものを用意した。シート1~7の各シート部材60を装着したプロセスカートリッジをそれぞれ用意し、比較評価を行った。
【0054】
比較評価として、プロセスカートリッジの寿命末期において、帯電不良起因による画像不良の発生有無を確認した。まず、4mm幅の横線を96mm間隔で配置した画像を5000枚プリントし、プロセスカートリッジを寿命末期の状態とした。続いて、各シート部材60による帯電ローラ2への帯電制御剤や外添剤等の付着抑制効果を確認するため、画
像評価を行った。画像評価としてハーフトーン画像を10枚プリントし、帯電不良起因による画像不良発生の有無を確認した。画像評価は、500枚のプリントごとに行った。評価実験1の結果を表2に示す。
【表2】
【0055】
表2に示したように、本実施例であるシート1~7を装着したプロセスカートリッジにおいては、帯電不良起因の画像不良が発生せず、良好な画像が得られた。一方、比較例であるシート8・9・10を装着したプロセスカートリッジにおいては、それぞれ、4500枚、3000枚、3000枚で帯電不良起因の画像不良が発生した。この時、帯電ローラ2の表面を確認すると、本実施例であるシート1~7を装着したプロセスカートリッジにおいては、付着物の堆積が抑制されていた。一方で、比較例であるシート8・9・10を装着したプロセスカートリッジにおいては、スジ状に付着物の堆積が見られた。
【0056】
評価実験を行った帯電ローラ2やシートの観察結果や本発明に至る検討結果から、シート8・9のように、表面粗さRaが大き過ぎる場合においては、固着した付着物を解することはできているものの、付着物を解する度合いにバラつきが大きくなってしまうことから、付着物を均一に分散できなくなくなってしまっているものと考えられる。一方、シート10のように、表面粗さRaが小さ過ぎる場合においては、そもそも固着した付着物を解す効果が得られていなかった。また、本実施例に係るシート1~7の表面粗Raさの範囲においては、固着した付着物を解す効果と、付着物を均一に分散する効果とを併せ持つことができたと考えられる。評価実験においては、シート1~7の表面粗さの範囲においては有意な効果の際が見られなかった。以上のことから、シート部材60の表面粗さとしてはRaが0.18μm以上2.41μm以下であることが好ましい。
【0057】
[評価実験2]
続いて、評価実験2について説明する。評価実験2では、シート部材60の表層材料の硬さによる効果について確認した。評価実験2においては、本実施例のシート部材60として、下記のシートC・D・E・Fの4種を用意した。また、比較例のシート部材として、下記のシートA・Bの2種を用意した。シートAのみポリイミドからなる単層シートであり、シート厚みを75μmとし、表層に所定の粗さを持たせた。シートB・C・D・E・Fは基層と表層からなり、基層に厚さ75μmのポリエチレンテレフタラート(PET)を用いて、表層には各粒子が分子系接着剤等で均一に塗布されている。シートA・E・
Fについては、市販品を用い、シートB・C・Dについては、以下の方法で作成した。具体的には、結合材樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂を、溶媒としてはメチルエチルケトンを用い、塗布粒子と混合・脱泡処理し、基材上にバーコーティングすることで、シートを得た。尚、各シート部材の表面粗さはRaが0.18μm以上2.41μm以下となるようにしている。基材として、ポリエチレンテレフタラートのほか、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂、ナイロンなどを用いることができる。結合剤樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂のほか、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂などを用いることができる。また、溶媒としては、メチルエチルケトンのほか、例えば、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを使用することができる。また、コーティング方法としては、バーコーティングのほか、例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティングなどを用いることができる。
【0058】
<シートA>(比較例)
材質:ポリイミド(表層材質のモース硬度:1、新モース硬度:1)
表層Ra:0.52μm
(UBE株式会社製、商品名:ユーピレックス)
【0059】
<シートB>(比較例)
塗布粒子:炭酸カルシウム(表層材質である塗布粒子のモース硬度:3、新モース硬度:3)
粒度:1.0μm
表層Ra:0.55μm
【0060】
<シートC>
塗布粒子:酸化ジルコニウム(表層材質である塗布粒子のモース硬度:7、新モース硬度:7)
粒度:1.0μm
表層Ra:0.50μm
【0061】
<シートD>
塗布粒子:酸化クロム(表層材質である塗布粒子のモース硬度:6、新モース硬度:7)粒度:1.0μm
表層Ra:0.41μm
【0062】
<シートE>
塗布粒子:酸化アルミニウム(表層材質である塗布粒子のモース硬度:9、新モース硬度:12)
粒度:1μm
表層Ra:0.33μm
(3M社製、商品名:ラッピングフィルム#8000)
【0063】
<シートF>
塗布粒子:炭化ケイ素(表層材質である塗布粒子のモース硬度:9、新モース硬度:13)
粒度:1μm
表層Ra:0.21μm
(三共理科化学社製、商品名:ラッピングフィルム#8000)
【0064】
次に、評価条件について詳細を説明する。プリントする用紙として、A4サイズの坪量80g/mのRed Label(Canon社製)を用いた。また、プロセスカートリッジとして、印字率4%のプリントが5500枚行えるものを用意した。プロセスカートリッジに用いるトナーは2種類準備した。一つ目は、本実施例におけるトナーである、外添剤として、トナー100質量部に対して、シリカ1.5質量部、ハイドロタルサイト類化合物0.1質量部、チタン酸ストロンチウム0.1質量部を添加したものを用いた(トナー1とする)。二つ目は外添剤として、トナー100質量部に対して、シリカ1.8質量部、ハイドロタルサイト類化合物0.1質量部を添加したものを用いた(トナー2とする)。
【0065】
シートA・B・C・D・E・Fの各シート部材60を装着し、さらにトナー1とトナー2を用いたプロセスカートリッジをそれぞれ用意し、比較評価を行った。比較評価として、プロセスカートリッジの寿命末期において、帯電不良起因による画像不良の発生有無を確認した。まず、4mm幅の横線を96mm間隔で配置した画像を5000枚プリントし、プロセスカートリッジを寿命末期の状態とした。続いて、各シート部材60による帯電ローラ2への帯電制御剤や外添剤等の付着抑制効果を確認するため、画像評価を行った。画像評価としてハーフトーン画像を10枚プリントし、帯電不良起因による画像不良発生の有無を確認した。
【0066】
評価実験の結果を表3に示す。表3には帯電不良起因の画像不良発生の有無と共に、各シート部材60に用いている表層材質の一般的なモース硬度及び、新モース硬度を示している。
【表3】
【0067】
表3に示したように、本実施例のシートC・D・E・Fを装着したプロセスカートリッジにおいては、帯電不良起因の画像不良が発生せず、良好な画像が得られた。一方、比較例1のシートA・Bを装着したプロセスカートリッジにおいては、帯電不良起因の画像不良が発生した。この時、帯電ローラ2の表面を確認すると、シートA・Bを装着したプロセスカートリッジにおいては付着物の堆積が多くみられ、シートC・D・E・Fにおいては付着物の堆積が抑制されていた。ただし、トナー1を用いたカートリッジにおけるシートDの構成については、軽微に付着物が堆積していた。また、評価実験後のシート部材60の帯電ローラ2との接触面を確認すると、シートA・Bについては表層の摩耗が見られ、シートC・D・E・Fにおいては表層の摩耗が見られなかった。
【0068】
シートA・Bについて表層の摩耗が見られた要因としては、シート部材の表層に塗布する粒子の硬さよりも、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さのほうが硬いことから、帯電ローラ2の表面の付着物によってシートの表層が削られてしまったものと
考えられる。また、トナー1を用いたカートリッジにおけるシートDの構成において、軽微に付着物が堆積していた理由としては、トナー1のほうが用いている外添により硬いものが入っている(チタン酸ストロンチウム:モース硬度6)ことから、帯電ローラ2に固着した付着物を解す効果が得づらくなったことによるものと考えられる。
【0069】
以上のことから、シート部材60の表層に塗布する粒子の硬さを、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さと同等以上にすることによって、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制することができる。このとき、シート部材60の表面粗さRaは0.18μm以上2.41μm以下が好ましい。
【0070】
<実施例2>
本実施例においては、実施例1で説明したプロセスカートリッジのよりも長寿命になった場合等、シート部材60の耐久性がより必要になる条件において、帯電ローラのクリーニングシート部材として、シート部材の表層に塗布する粒子の硬さを、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さよりも硬くすることによって、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制する方法について説明する。画像形成装置の構成に関しては実施例1と同様である。よって異なる部分以外の重複する説明は省略する。
【0071】
プロセスカートリッジの寿命が長くなった場合等、シート部材60の耐久性がより必要になる条件において、シート部材60の表層材料の硬さによる効果について確認した。以下、評価実験3について説明する。
【0072】
[評価実験3]
評価実験3では、前述した評価実験2で用いたシートC・D・E・Fと同様の4種類のシート部材を用意した。本実施例のシート部材60としてシートE・Fを、比較例としてはシートC・Dを用意した。
プリントする用紙として、A4サイズの坪量80g/mのRed Label(Canon社製)を用いた。また、プロセスカートリッジとして、印字率4%のプリントが10500枚行えるものを用意した。シートC・D・E・Fの各シート部材60を装着したプロセスカートリッジをそれぞれ用意し、比較評価を行った。用いたトナーは、実施例1におけるトナー1である。
【0073】
比較評価として、プロセスカートリッジの寿命末期において、帯電不良起因による画像不良の発生有無を確認した。まず、4mm幅の横線を96mm間隔で配置した画像を10000枚プリントし、プロセスカートリッジを寿命末期の状態とした。続いて、各シート部材60による帯電ローラ2への帯電制御剤や外添剤等の付着抑制効果を確認するため、画像評価を行った。画像評価としてハーフトーン画像を10枚プリントし、帯電不良起因による画像不良発生の有無を確認した。
【0074】
評価実験の結果を表4に示す。表4には帯電不良起因の画像不良発生の有無と共に、各シート部材60に用いている表層材質の一般的なモース硬度及び、新モース硬度を示している。
【表4】
【0075】
表4に示したように、本実施例のシートE・Fを装着したプロセスカートリッジにおいては、帯電不良起因の画像不良が発生せず、良好な画像が得られた。一方、比較例3のシートC・Dを装着したプロセスカートリッジにおいては、帯電不良起因の画像不良が発生した。この時、帯電ローラ2の表面を確認すると、シートC・Dを装着したプロセスカートリッジにおいては付着物の堆積が多くみられ、シートE・Fにおいては付着物の堆積が抑制されていた。また、評価実験後のシート部材60の帯電ローラ2との接触面を確認すると、シートC・Dについては表層の摩耗が見られ、シートE・Fにおいては表層の摩耗が見られなかった。これは、実施例1に比べてより長い期間使用することから、シートの耐摩耗性がさらに必要となったことによるものである。すなわち、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さよりも同等以上にすることによって、帯電ローラ2に固着した付着物を解す効果は得られるものの、硬さが近いと使用期間によっては摩耗劣化しまうことによるものと考えられる。
【0076】
以上のように、プロセスカートリッジの寿命が長くなった場合等、シート部材60の耐久性がより必要になる条件において、シート部材60の表層に塗布する粒子の硬さを、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さよりも硬くすることによって、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制することができる。このとき、表層材質の一般的なモース硬度としては7以上、新モース硬度としては8以上であることが好ましい。
【0077】
以上のように、本実施例によれば、帯電ローラ2のクリーニングシート部材として、シート部材60の表層に塗布する粒子の硬さを、トナーに含まれる帯電制御剤や外添剤等の材質の硬さ以上にすることによって、帯電不良起因の画像不良の発生を抑制することができる。これにより、画像不良のない良好な画像を得ることができる。このとき、シート部材60の表面粗さRaは0.18μm以上2.41μm以下が好ましい。また、表層材質の一般的なモース硬度としては6以上、新モース硬度としては7以上であることが好ましい。さらには、プロセスカートリッジの寿命が長くなった場合等、シート部材60の耐久性がより必要になる条件においては、表層材質の一般的なモース硬度としては7以上、新モース硬度としては8以上であることが好ましい。
【0078】
以上説明したように、表層材質のモース硬度と表面粗さについて好適な範囲で使用可能であるが、プロセスカートリッジの仕様(用いるトナー、寿命、帯電ローラなど)に応じて、適切な範囲内のモース硬度と表面粗さをバランスよく使用することが好ましい。
【0079】
[その他]
以上説明したシート部材60を備える帯電ローラ2は、画像形成装置本体90に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて説明を行ったが、本発明はその限りではない。感光ドラムユニット4と現像ユニット20が独立に画像形成装置本体90に着脱可能なプロセスカートリッジにおいても同様の作用効果がある。また、プロセスカートリッジが画像形成装置と一体となった、トナー補給式の画像形成装置においても同様の効果が得られる。
【0080】
以上説明した画像形成装置120は、モノクロの構成について説明してきた。しかし本発明の構成はこれに限定されず、複数色(例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)の4色を重ねて印字するカラー画像形成装置に適用しても同様の作用効果がある。その場合、画像の記録材への転写方式として、中間転写ベルトなどの中間転写体を用いてもよい。
【0081】
[構成1]
像担持体を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に押圧され、前記帯電部材の回転に伴って前記帯電部材の表面に摺擦されるクリーニング部材と、
を有する帯電装置であって、
前記クリーニング部材は、少なくとも、粗し粒子を含有しており前記帯電部材に当接する第1の層を含み、
前記第1の層は前記帯電部材の前記表面よりもマルテンス硬さが高く、
前記粗し粒子は、前記帯電部材の前記表面に付着するトナーにおける最もモース硬度の高い成分と同等以上のモース硬度を有する
ことを特徴とする帯電装置。
[構成2]
前記クリーニング部材は、前記第1の層と、前記第1の層を支持する可撓性を有する第2の層と、を有する
ことを特徴とする構成1に記載の帯電装置。
[構成3]
前記第2の層に、接着剤により前記粗し部材が塗布されることにより、前記第1の層が形成される
ことを特徴とする構成2に記載の帯電装置。
[構成4]
前記帯電部材の前記表面に付着する前記トナーの成分は、前記トナーの外添剤を含む
ことを特徴とする構成1から3のいずれか1項に記載の帯電装置。
[構成5]
前記粗し粒子は、モース硬度が6以上の材質である
ことを特徴とする構成1から4のいずれか1項に記載の帯電装置。
[構成6]
前記粗し粒子は、モース硬度が7以上の材質である
ことを特徴とする構成5に記載の帯電装置。
[構成7]
前記粗し粒子は、新モース硬度が7以上の材質である
ことを特徴とする構成1から6のいずれか1項に記載の帯電装置。
[構成8]
前記粗し粒子は、新モース硬度が8以上の材質である
ことを特徴とする構成7に記載の帯電装置。
[構成9]
前記クリーニング部材の前記第1の層の表面粗さRaは、0.18μm以上、2.41μm以下である
ことを特徴とする構成1から8のいずれか1項に記載の帯電装置。
[構成10]
前記粗し粒子の粒度は、0.3μm以上、12μm以下である
ことを特徴とする構成1から9のいずれか1項に記載の帯電装置。
[構成11]
像担持体と、
構成1から10のいずれか1項に記載の帯電装置と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
[構成12]
像担持体と、
構成1から10のいずれか1項に記載の帯電装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0082】
1:感光ドラム、2:帯電ローラ、60:シート部材、61:シート部材の基層、62:シート部材の基層と粒子を接着する接着剤、63:シート部材の粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7