(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164646
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】粉体改質剤、複合粉体およびその製造方法、ならびに化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241120BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20241120BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20241120BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20241120BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241120BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20241120BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20241120BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20241120BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20241120BHJP
C09C 1/24 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/19
A61Q1/00
C09C3/08
C09C3/10
C09C1/28
C09C1/36
C09C1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080282
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000227272
【氏名又は名称】日澱化學株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391034891
【氏名又は名称】鈴木油脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 義史
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】金沢 真由美
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
(72)【発明者】
【氏名】上田 稔
(72)【発明者】
【氏名】柳 達也
【テーマコード(参考)】
4C083
4J037
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB152
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB362
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC552
4C083AC792
4C083AC842
4C083AC852
4C083AC862
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD572
4C083BB25
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
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4C083CC12
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4C083CC14
4C083CC19
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083FF01
4J037AA15
4J037AA18
4J037AA22
4J037AA26
4J037CB09
4J037CB26
4J037CC02
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4J037EE16
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4J037EE33
4J037EE43
4J037EE46
4J037EE48
4J037FF15
(57)【要約】
【課題】粉体に、より優れた感触特性および撥水性を付与することができる粉体改質剤を提供すること。
【解決手段】アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を含み、前記金属塩の金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される、粉体改質剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を含み、前記金属塩の金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される、粉体改質剤。
【請求項2】
前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩は、アルケニルコハク酸の一方のカルボキシル基が糖質の水酸基とエステル結合を形成し、かつ他方のカルボキシル基が金属塩を形成している化合物である、請求項1に記載の粉体改質剤。
【請求項3】
前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩の糖質は、100~26000の分子量を有する、請求項1に記載の粉体改質剤。
【請求項4】
粉体および請求項1に記載の粉体改質剤を含む、複合粉体。
【請求項5】
前記粉体の少なくとも一部が前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩で被覆されている、請求項4に記載の複合粉体。
【請求項6】
前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩は前記粉体の表面の少なくとも一部に析出している、請求項4に記載の複合粉体。
【請求項7】
前記粉体は、シリカ、タルク、セリサイト、マイカ、酸化チタン、黄酸化鉄、茶酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、澱粉からなる群から選択される、請求項4に記載の複合粉体。
【請求項8】
請求項4~7のいずれかに記載の複合粉体を製造する方法であって、以下の工程を含む、複合粉体の製造方法:
糖質の水溶液に、アルカリ条件下で、前記糖質100質量部に対して、1~100質量部のアルケニルコハク酸無水物を添加して撹拌することによりアルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を作製する工程(1);
粉体の分散液中で、前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩(ただし、金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される)にする工程(2);ならびに
粉体を得る工程(3)。
【請求項9】
前記工程(2)において、
前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の水溶液を、前記粉体の分散液に添加した後、金属塩(ただし、金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される)の水溶液をさらに添加して撹拌する、請求項8に記載の複合粉体の製造方法。
【請求項10】
前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の使用量は、前記粉体100質量部に対して、0.1~50質量部である、請求項8に記載の複合粉体の製造方法。
【請求項11】
請求項4~7のいずれかに記載の複合粉体を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体改質剤、複合粉体およびその製造方法、ならびに化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、アイシャドウ、頬紅などのメイクアップ化粧料や、UVケア製品などの日焼け止め料、乳液、クリームなどの基礎化粧料などに配合される粉体表面に、特定の目的で、粉体改質剤を被覆することが知られている。特定の目的として、例えば、撥水性を向上させて化粧崩れを防止する目的、および粉体の伸び特性等の感触特性を良くする目的等が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、撥水性を向上させるために、シリコーン化合物またはフッ素化合物を粉体表面に被覆する技術が開示されている。しかしながら、このような技術において、シリコーン化合物またはフッ素化合物等の粉体改質剤で粉体表面が被覆された化粧料用粉体は、撥水性が付与されることにより、化粧崩れを防止し、化粧持続性を向上させるという点では優れているものの、以下の点で問題があった:
粉体改質剤が生体への親和性が悪いことにより、化粧料用粉体の肌への密着性が悪かった。
【0004】
そこで、N-アシルアミノ酸金属塩(金属はアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛またはチタン等を示す)を用いる技術が開示されている。例えば、特許文献3では、粉体表面をN-アシルアミノ酸金属塩で被覆する。また例えば、特許文献4では、粉体表面をN-アシルアミノ酸金属塩で被覆した後、有機チタネートなどで複合化処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-119741号公報
【特許文献2】特開2001-2524号公報
【特許文献3】特開平3-200879号公報
【特許文献4】特開2007-23017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の粉体改質剤で被覆された粉体は、伸び特性、滑らか特性、肌密着性および塗布均一性等の感触特性ならびに撥水性のうち、いずれかの特性が十分ではなかった。
例えば、特許文献3の技術においては、優れた肌密着性および滑らか特性を付与できるものの、肌の上でムラが生じるなどの塗布均一性に課題があった。
特許文献4の技術においては、塗布均一性が向上するものの、摩擦感を軽減することができるが、2次的な複合化処理を要するため、工程数や製造コストの面において改良の余地があった。
【0007】
本発明は、粉体に、より優れた感触特性および撥水性を付与することができる粉体改質剤を提供することを目的とする。本発明は特に、粉体に、1次的に表面処理するだけで、より優れた感触特性および撥水性を付与することができる粉体改質剤を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、より優れた感触特性および撥水性を有する複合粉体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、より優れた感触特性および撥水性を有する化粧料を提供することを目的とする。
【0010】
本明細書中、感触特性は粉体改質剤で表面処理された粉体(以下、「複合粉体」ということがある)に対して、その塗布時および塗布後にヒトが感じる感触に関する特性のことであり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性および塗布均一性を包含する。
伸び特性は、複合粉体の塗布時において、当該複合粉体を伸び良く塗布できる特性のことである。
滑らか特性は、複合粉体の塗布時において、より低減された摩擦感にて、当該複合粉体を滑らかに塗布できる特性のことである。
肌密着性は、複合粉体の塗布後において、塗布された複合粉体が肌によく密着し、肌から離れ難い特性のことである。
塗布均一性は、複合粉体の塗布後において、複合粉体がムラなく均一に塗布され易い特性のことである。
撥水性は、複合粉体の水または水分に対する撥水性のことである。
発汗時の化粧崩れは、上記した特性のうち、肌密着性および撥水性に基づく現象であり、例えば、肌密着性および撥水性に優れた複合粉体は、発汗時において、化粧崩れし難い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者等は、粉体改質剤として特定の化合物を用いることにより、粉体を1次的に表面処理するだけで、2次的な複合化処理を行うことなしに、本発明の課題が解決されることを見出した。2次的な複合化処理とは、特定の表面処理(1次的表面処理)を行った後、さらに行う表面処理のことである。
【0012】
本発明は、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を含む、粉体改質剤に関する。
【0013】
本発明はまた、粉体および上記の粉体改質剤を含む、複合粉体に関する。
【0014】
本発明はまた、上記の複合粉体を製造する方法であって、以下の工程を含む、複合粉体の製造方法に関する:
アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を作製する工程(1);
粉体の分散液中で、前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩(ただし、金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される)にする工程(2);ならびに
粉体を得る工程(3)。
【0015】
本発明はまた、上記の複合粉体を含む、化粧料に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粉体改質剤は、粉体に対して、より優れた感触特性および撥水性を付与することができる。
本発明の複合粉体および化粧料は、より優れた感触特性および撥水性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[複合粉体]
本発明の複合粉体は、粉体と粉体改質剤を複合的に含む粉体(または粉体と粉体改質剤とが一体化された粉体)という意味であり、簡潔には、粉体改質剤で表面処理された粉体のことである。本発明の複合粉体は、詳しくは、粉体および粉体表面の少なくとも一部を被覆する粉体改質剤を含む。
【0018】
粉体は、化粧料用途を含むあらゆる用途で使用される粉体であってもよく、例えば、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のうち少なくとも1つの特性が要求される用途で使用される粉体であってもよい。粉体は、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性の全ての特性が要求される、化粧料用途で使用される粉体であることが好ましい。本発明の粉体改質剤は、化粧料用途で有用な伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性に、より優れているためである。
【0019】
化粧料用途で使用される粉体として、例えば、無機粉体、有機粉体、有色顔料、パール顔料等が挙げられる。
【0020】
無機粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、合成マイカ、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ(特に球状シリカ)、銅、ステンレス等が挙げられる。シリカは多孔質シリカであってもよい。
【0021】
有機粉体としては、例えば、ポリアミドパウダー(例えばナイロン-12やナイロン-6などのナイロンパウダー)、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、シリコンエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、シリコン樹脂、微結晶繊維粉体、ラウロイルリジン、澱粉粒子等が挙げられる。澱粉粒子は、その由来に基づき、コーンスターチ、米澱粉、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、小豆澱粉、エンドウ澱粉、緑豆澱粉等が挙げられる。
【0022】
澱粉は、加工澱粉であってもよいし、または天然澱粉であってもよい。加工澱粉は、澱粉本来の物理的性状(例えば高粘性、冷却時のゲル化性等)を改善する目的で、天然の原料から入手した澱粉粒子に、酵素的又は化学的に加工を加えたものである。澱粉に対する酵素的又は化学的加工は、一種の加工処理がなされていても、または、複数の酵素的又は化学的加工処理を組み合わせてなされていてもよい。本発明で用いることのできる加工澱粉としては、特に限定されず、例えば、酢酸デンプン、酸化デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、エステル化デンプン、グラフト重合デンプン、カチオンデンプン、加水分解デンプン、加水分解水添デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸化デンプン等が挙げられる。また、加工澱粉は、金属塩の形態を有していてもよく、例えば、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等の加工澱粉に金属塩を付加した加工澱粉誘導体であってよい。天然澱粉は、天然の原料から入手された澱粉であって、酵素的にも化学的にも加工されていない澱粉のことである。特に粉体としての澱粉は通常、26000超の分子量を有している。
【0023】
有色顔料としては、例えば、茶酸化鉄、ベンガラ、水酸化鉄、チタン酸鉄等の無機赤色顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料;マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料;水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料;紺青、群青等の無機青色系顔料;タール系色素(顔料)(赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、黄色401号、青色404号、橙色203号、橙色204号等)、タール系色素(染料)(赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色226号、赤色227号、赤色23.0号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、青色1号、青色2号、青色201号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色206号、橙色207号等)をレーキ化したもの、天然色素(カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等)をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が挙げられる。合成樹脂粉体は、詳しくは、合成樹脂中に有色顔料が分散された粉体のことである。上記した有色顔料のうち、合成樹脂粉体以外の有色顔料は通常、無機粉体に分類される。合成樹脂粉体は通常、有機粉体に分類される。
【0024】
パール顔料としては、例えば、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、板状アルミナ等が挙げられる。パール顔料は通常、無機粉体に分類される。
【0025】
粉体は、上記した無機粉体同士や無機・有機粉体など異種の粉体を複合化、カプセル化、および/または被覆処理した粉体であってもよい。
【0026】
粉体は、後述する粉体改質剤による処理を妨げない範囲で各種の表面処理がなされていてもよい。表面処理は、例えば、撥水性処理であっても、または親水性処理であってもよい。表面処理と、後述する粉体改質剤による処理の順序は問わず、どちらを先に行ってもよい。例えば、当該表面処理の後で、後述する粉体改質剤により処理を行ってもよいし、または後述する粉体改質剤による処理の後で当該表面処理を行ってもよい。
【0027】
粉体は、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは無機粉体、有機粉体またはこれらの混合物であり、より好ましくはシリカ(特に球状シリカ)、タルク、セリサイト、マイカ、酸化チタン、黄酸化鉄、茶酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、澱粉(例えば、エンドウ澱粉、タピオカ澱粉)またはこれらの混合物であり、さらに好ましくはシリカ(特に球状シリカまたは多孔質シリカ)、タルク、セリサイト、マイカ、またはこれらの混合物であり、特に好ましくはシリカ、十分に好ましくは球状シリカである。
【0028】
粉体の平均粒径は特に限定されず、通常、1nm~10000μmであり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは1nm~1000μm、より好ましくは1nm~500μm、さらに好ましくは1nm~100μmである。
【0029】
粉体の平均粒径は平均一次粒径のことであり、例えば、任意の100個の粉体粒子の最大長を測定し、それらの平均値を求めることにより測定することができる。
【0030】
粉体改質剤はアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を含む。アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩は、詳しくは、一般式(1)に示すように、アルケニルコハク酸の一方のカルボキシル基が糖質Xの水酸基とエステル結合を形成し、かつ他方のカルボキシル基が金属Mと塩を形成している化合物である。
【0031】
【0032】
式(1)中、Xは糖質の残基を示す。
Mは金属を示し、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される。金属は、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくはアルミニウムである。
Rはアルケニルを示し、1つの二重結合を有する、炭素原子数2~16の1価不飽和脂肪族炭化水素基である。アルケニル基の炭素原子数は、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは4~14、より好ましくは6~12である。特に好ましいアルケニル基は炭素数原子数8のオクテニル基であり、例えば、「-CH2CH=CH-(CH2)4-CH3」で表される基であってもよい。
【0033】
アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を構成する糖質の分子量は26000以下であり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは100~26000、より好ましくは200~25000、さらに好ましくは300~10000、特に好ましくは300~8000、十分に好ましくは300~5000、より十分に好ましくは500~2000であり、最も好ましくは800~1500である。糖質の分子量が大きすぎると、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性の少なくとも1つの特性が低下する。
【0034】
分子量は重量平均分子量であってもよく、例えば、以下の方法により測定することができる。なお、糖質が2種以上の混合物である場合、糖質混合物の重量平均分子量が上記範囲内であればよい。
重量平均分子量の測定方法:
以下の測定条件のもと、高速液体クロマトグラフ(株式会社日立ハイテク製、Chromaster、以降HPLCと略す)にて重量平均分子量を測定した。
HPLCでの測定条件:
測定カラム:Asahipak GS-710(径7.6×長さ500mm)(昭和電工株式会社製)
測定温度:50℃
移動相:50mM NaNO3水溶液
流速:1.0mL/分
検出器:示差屈折検出器
標準物質:既知の分子量をもつプルラン(106~103)、マルトース(分子量:342)およびグルコース(分子量:180))
【0035】
糖質は分子中または分子を構成する単位中、少なくとも1つの水酸基を有するものである。糖質の種類は、特に限定されず、例えば、単糖類、二糖類および多糖類からなる群から選択される1種または2種以上であってもよい。単糖類として、例えば、アルドペントース(リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなど)、アルドヘキソース(グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、タロース、ガラクトース、イドース、グロースなど)、ケントペントース(リブロース、キシルロースなど)、ケントヘキソース(フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトースなど)等が挙げられる。二糖類として、例えば、トレハロース、スクロース、ラクツロース、マルトース、セロビオース等が挙げられる。多糖類として、例えば、デキストリン、オリゴ糖(マルトデキストリン類、イソマルトデキストリン類、セロオリゴ糖類、ガラクトオリゴ糖類、マンノオリゴ糖類など)等が挙げられる。デキストリンは澱粉を酸や酵素などで加水分解および/または転移反応などを行い作製されたものを指す。デキストリンを作製するための澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、もち米澱粉などが挙げられる。その他糖類として例えば、アミノ糖(グルコサミン、ガラクトサミン(コンドロサミン)、マンノサミン、グロサミン、カノサミンなど)、酸性糖(グルクロン酸、グルロン酸、ガラクチュロン酸、マンヌュロン酸など)、糖アルコール(グリセリン、エリトリット、リビット、アラビット、マンニット、ソルビット(グルシット)、ズルシット、ボレミットなど)、還元澱粉糖化物(還元水飴)、還元麦芽水飴などが挙げられる。糖質は、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは二糖類、多糖類またはこれらの混合物であり、より好ましくはトレハロース、デキストリンまたはこれらの混合物である。
【0036】
例えば、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウムは、オクテニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩のアルカリ金属をアルミニウムで置換した化合物である。また例えば、オクテニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩は、アルカリ条件下で、糖質にオクテニルコハク酸無水物を反応させた化合物である。
【0037】
粉体改質剤は、上記したアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩から選択される2種以上を含んでもよい。例えば、粉体改質剤は、一般式(1)におけるX、MおよびRから選択される少なくとも1つが異なる2種以上のアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を含んでもよい。
【0038】
粉体改質剤は、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩以外に、あらゆる粉体改質剤を含んでもよい。本発明において、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩は粉体改質剤として使用され、例えば、粉体改質剤におけるアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩の含有量は通常、50質量%以上であり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、十分に好ましくは100質量%である。粉体改質剤におけるアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩の含有量が100質量%であることは、粉体改質剤がアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩のみを含むということである。
【0039】
複合粉体における粉体改質剤(特にアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩)の含有量は特に限定されず、例えば、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性といった、目的とする効果に応じて異なっていてもよい。
例えば、複合粉体における粉体改質剤の含有量は特に限定されず、通常は粉体100質量部に対して、0.01~100質量部である。
【0040】
粉体改質剤の含有量は以下の方法により測定することができる。
複合粉体を有機溶媒中、十分に撹拌することにより、粉体改質剤を溶解し、粉体を得る。複合体粉体と粉体との質量差を、粉体質量で除することにより、粉体改質剤の含有量を測定することができる。例えば、粉体がシリカであり、かつ粉体改質剤がオクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウムである場合、粉体改質剤を溶解する有機溶媒として、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0041】
複合粉体における粉体改質剤(特にアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩)の含有量は、原子吸光による金属の含有量が後述の範囲内となるような含有量であってもよい。ここで、金属の含有量とは、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を構成する金属の含有量のことである。複合粉体における原子吸光による金属の含有量は通常、10~100000ppmであり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは100~10000ppm、より好ましくは500~10000ppm、さらに好ましくは1000~5000ppm、特に好ましくは1000~3000ppmである。
【0042】
原子吸光による金属の含有量は以下の方法により測定することができる。
複合粉体試料約1gを精評し、灰化した後、灰化物の水溶液を原子吸光分析装置(例えばiCE3000(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製))に供することにより、金属の含有量を測定することができる。
【0043】
[複合粉体の製造方法]
本発明の複合粉体は、粉体を、上記した粉体改質剤で表面処理することにより製造することができる。例えば、本発明の複合粉体は、詳しくは、以下の工程を含む方法により、製造することができる:
アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を作製する工程(1);
粉体の分散液中で、アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩(ただし、金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のいずれかである)にする工程(2);ならびに
粉体を得る工程(3)。
【0044】
工程(1)においては、糖質の水溶液に、アルカリ条件下で、アルケニルコハク酸無水物を添加して撹拌する。詳しくは、糖質を水に溶解させ、アルカリ条件下で、アルケニルコハク酸無水物を添加して反応させる。これにより、糖質の水酸基と、開環したアルケニルコハク酸の一方のカルボキシル基とによりエステル結合を形成させつつ、アルケニルコハク酸の他方のカルボキシル基をアルカリ金属塩(-COOM’(式中、M’はアルカリ金属))として、アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を作製する。
【0045】
アルケニルコハク酸無水物の添加量は、通常、糖質100質量部に対して、1~100質量部であり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは5~80質量部、より好ましくは20~70質量部、さらに好ましくは40~70質量部、特に好ましくは45~65質量部である。
【0046】
糖質の水溶液における加水量は特に限定されず、通常、糖質100質量部に対して、10~1000質量部であり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは20~800質量部、より好ましくは50~500質量部、さらに好ましくは50~300質量部、特に好ましくは80~200質量部である。
【0047】
アルカリ条件は、例えば、pH7~10、特にpH7.5~8.0の条件であってもよい。そのようなアルカリ条件とするためのアルカリ触媒としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩;リン酸三ナトリウム等のリン酸塩;ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムメトキサイド等のアルカリ金属のアルコキサイド;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、第2級ブチルアミン、第3級ブチルアミン、アミルアミン、第2級アミルアミン、第3級アミルアミン、へキシルアミン等のアルキル基を有するモノ、ジもしくはトリアルキルアミン;トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン等のアルコール基を有するモノ、ジもしくはトリエタノールアミン等を使用できる。
【0048】
工程(2)においては、アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の水溶液を、粉体の分散液に添加した後、アルミニウム塩などの可溶性金属塩の水溶液をさらに添加して撹拌する。詳しくは、粉体を水やアルコール溶液に分散させ、撹拌下でアルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の水溶液を加える。次に、撹拌下で可溶性金属塩の水溶液を滴下することでアルケニルコハク酸糖質エステル金属塩が形成され、粉体表面の少なくとも一部に析出し吸着される。その結果、粉体とアルケニルコハク酸糖質エステルアルミニウム塩との複合粉体となる。
【0049】
アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の使用量(または添加量)は通常、粉体100質量部に対して、0.1~50質量部であり、伸び特性、滑らか特性、肌密着性、塗布均一性および撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは2~10質量部、特に好ましくは3~8質量部である。アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の使用量は、アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩が水溶液の形態で使用される場合、当該水溶液に含まれるアルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の量を示している。
【0050】
可溶性金属塩は、アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の水溶液と粉体の分散液との混合液に可溶な金属塩のことであり、例えば、アルミニウム塩として、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硝酸アルミニウム、カルシウム塩として、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、過塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、マグネシウム塩として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、亜鉛塩として塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛等であってもよい。
【0051】
可溶性金属塩の水溶液を滴下する際、必要に応じてpHコントロールを行うことが好ましい。詳しくは、pHを、例えば、3~7、特にpH3.5~5.5の条件であってもよい。可溶性金属塩の水溶液は1~30%濃度で、アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩に対して、可溶性金属塩の量が0.1~2.0当量の範囲であることが好ましい。
【0052】
工程(3)においては、例えば乾燥を行い、粉体を得る。本工程においては、得られた複合粉体に洗浄溶媒を加え、減圧ろ過などの方法により洗浄し、余剰の水溶性の金属塩(例えば可溶性金属塩)などを除去してもよい。その後、乾燥により洗浄溶媒を除去してもよい。乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、天日干しや通風乾燥に加えて、ドラムドライヤー、エクストルーダー、噴霧乾燥機、凍結乾燥機、棚段式乾燥機、ベルト乾燥機、流動床乾燥機、マイクロウェーブ乾燥機などが挙げられる。また、乾燥温度は、特に限定されないが、例えば20℃~300℃が挙げられる。
【0053】
このようにして得られた複合粉体は、まだ凝集が激しい場合があるので、次の工程として粉砕を実施してもよい。粉砕方法としては、特に限定されないが、例えば、ハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、カッターミルなどが挙げられる。粉砕は乾燥前または乾燥後に行ってもよい。また、粉砕後に篩をかけることにより粒度の調整を行ってもよい。
【0054】
[化粧料]
化粧料は、本発明の複合粉体を含む。化粧料における複合粉体の含有量は特に限定されず、例えば、化粧料全量の0.1~100質量%、特に1~100質量%であってもよい。
【0055】
化粧料は、本発明の複合粉体以外に、化粧料で使用される各種の素材成分を含有することができる。このような素材成分として、例えば、顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等が挙げられる。
【0056】
本発明の化粧料は、特に限定されず、あらゆる化粧料用途であってもよい。本発明の化粧料は特に、ファンデーション、頬紅、白粉、フェースパウダー、口紅、アイシャドウ、アイブロー、マスカラ、ネイルカラー、ボディパウダーなどのメイクアップ化粧料;UVケア製品などの日焼け止め料;乳液、クリームなどの基礎化粧料;デオドランド料などに好適である。
【0057】
本発明の化粧料は、あらゆる形態を有していてもよく、例えば、パウダー状、乳液状、クリーム状、スティック状、スプレー、多層分離型などいずれの剤型を有していてもよい。
【0058】
本発明の要旨は、以下の通りである。
<1> アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩を含み、前記金属塩の金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される、粉体改質剤。
<2> 前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩は、アルケニルコハク酸の一方のカルボキシル基が糖質の水酸基とエステル結合を形成し、かつ他方のカルボキシル基が金属塩を形成している化合物である、<1>に記載の粉体改質剤。
<3> 前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩の糖質は、100~26000の分子量を有する、<1>または<2>に記載の粉体改質剤。
<4> 粉体および<1>~<3>のいずれかに記載の粉体改質剤を含む、複合粉体。
<5> 前記粉体の少なくとも一部が前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩で被覆されている、<4>に記載の複合粉体。
<6> 前記アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩は前記粉体の表面の少なくとも一部に析出している、<4>または<5>に記載の複合粉体。
<7> 前記粉体は、シリカ、タルク、セリサイト、マイカ、酸化チタン、黄酸化鉄、茶酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、澱粉からなる群から選択される、<4>~<6>のいずれかに記載の複合粉体。
<8> <4>~<7>のいずれかに記載の複合粉体を製造する方法であって、以下の工程を含む、複合粉体の製造方法:
糖質の水溶液に、アルカリ条件下で、前記糖質100質量部に対して、1~100質量部のアルケニルコハク酸無水物を添加して撹拌することによりアルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を作製する工程(1);
粉体の分散液中で、前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩を、アルケニルコハク酸糖質エステル金属塩(ただし、金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛からなる群から選択される)にする工程(2);ならびに
粉体を得る工程(3)。
<9> 前記工程(2)において、
前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の水溶液を、前記粉体の分散液に添加した後、金属塩(ただし、金属はアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群から選択される)の水溶液をさらに添加して撹拌する、<8>に記載の複合粉体の製造方法。
<10> 前記アルケニルコハク酸糖質エステルアルカリ金属塩の使用量は、前記粉体100質量部に対して、0.1~50質量部である、<8>または<9>に記載の複合粉体の製造方法。
<11> <4>~<7>のいずれかに記載の複合粉体を含む、化粧料。
【実施例0059】
<実験例1>
[材料]
材料として、以下の糖質および粉体を用いた。
【0060】
【0061】
【0062】
[実施例1]
工程(1):オクテニルコハク酸糖質エステルナトリウムの作製
糖質としてデキストリン(平均分子量1000)150gを45℃の脱イオン水150gに加えてスリーワンモーター及びプロペラを用いて均一に撹拌した。次いで、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えてpH7.8を維持しながら、オクテニルコハク酸無水物を75g投入し、その後、pHが変動しなくなるまで撹拌し、オクテニルコハク酸糖質エステルナトリウムを得た。工程(1)において、糖質100質量部に対する加水量は100質量部であった。オクテニルコハク酸無水物(OSA)の使用量は、糖質100質量部に対して、50質量部であった。
【0063】
工程(2):オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウムの作製
球状シリカ150gを30℃の水300gに加えてスリーワンモーター及びプロペラを用いて均一に撹拌した。そこに、50質量%のオクテニルコハク酸糖質エステルナトリウム水溶液15gを投入し、さらに撹拌した。次いで、3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えてpH4.0を維持しながら、硫酸アルミニウム十八水和物が4.5g溶解した水溶液18gを撹拌下に徐々に添加し、30分撹拌を続けて反応させた。次に3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.3に調整した。工程(2)において、オクテニルコハク酸糖質エステルナトリウム(OSA糖質Na)の添加量は、粉体100質量部に対して、5質量部であった。
【0064】
工程(3):洗浄および乾燥
次いで、ろ過、水洗をした後、通風乾燥させた。この複合処理品を粉砕し、さらに篩を通して、複合粉体を得た。
【0065】
結合オクテニルコハク酸基含有量:
得られたオクテニルコハク酸糖質エステルナトリウムの結合オクテニルコハク酸基含有量は、第9版食品添加物公定書 D 成分規格・保存基準各条「オクテニルコハク酸デンプンナトリウム」の純度試験における「(1)残存オクテニルコハク酸」、および「(2)オクテニルコハク酸基」に記載の方法で、残存オクテニルコハク酸の含有量と総オクテニルコハク酸の含有量を測定し、総オクテニルコハク酸の含有量から残存オクテニルコハク酸の含有量を差し引くことでオクテニルコハク酸基の含有量を求めることができる。
【0066】
[実施例2~22]
粉体および糖質の種類、工程(1)における加水量およびアルケニルコハク酸無水物の使用量、ならびに工程(2)におけるアルケニルコハク酸糖質エステルナトリウムの添加量を、表3に示すように変更したこと以外、実施例1と同様の方法により、工程(1)~(3)を実施し、複合粉体を得た。
【0067】
[実施例23]
工程(2)における硫酸アルミニウム十八水和物を塩化カルシウム二水和物に変更したこと以外、実施例1と同様の方法により、工程(1)~(3)を実施し、複合粉体を得た。
【0068】
[実施例24]
工程(2)における硫酸アルミニウム十八水和物を塩化マグネシウム六水和物に変更したこと以外、実施例1と同様の方法により、工程(1)~(3)を実施し、複合粉体を得た。
【0069】
[比較例1~5]
工程(1)~(3)を実施することなく、表4に示す粉体をそのまま使用した。
【0070】
[比較例6]
メチコン複合処理球状シリカの製造
球状シリカ(鈴木油脂工業社製のゴッドボールG-6C)95gをミキサーに仕込み、メチコン(信越化学社製 KF99P)5gとイソプロピルアルコール5gの溶液を添加し、均一になるまで撹拌した。その後、120℃で12時間、熱風乾燥をした後、篩を通し、メチコン複合処理多孔質シリカを得た。
【0071】
[比較例7]
メチコン複合処理タルクの製造
球状シリカの代わりにタルク(浅田製粉社製のタルクJA-46R)を用いたほかは比較例6と同様の方法にてメチコン複合処理タルクを得た。
【0072】
[比較例8]
メチコン複合処理セリサイトの製造
球状シリカの代わりにセリサイト(三信鉱工社製のセリサイト FSE)を用いたほかは比較例6と同様の方法にてメチコン複合処理セリサイトを得た。
【0073】
[比較例9]
メチコン複合処理マイカの製造
球状シリカの代わりにマイカ(ヤマグチマイカ社製のY-2300)を用いたほかは比較例6と同様の方法にてメチコン複合処理マイカを得た。
【0074】
[比較例10]
ステアロイルグルタミン酸アルミニウム複合処理球状シリカの製造
40~45℃の水200gにステアロイルグルタミン酸ナトリウム塩(味の素社製のアミホープ)4.0gを加えてスリーワンモーター及びプロペラを用いて溶解させた。そこに球状シリカ(鈴木油脂工業社製のゴッドボールG-6C)100gを投入し均一に撹拌した。次いで、3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えてpH6.0を維持しながら、硫酸アルミニウム十八水和物が3.0g溶解した水溶液12gを撹拌下に徐々に添加し、30分撹拌を続けて反応させ、ろ過、水洗をした後、100℃で通風乾燥させた。この複合処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通してステアロイルグルタミン酸アルミニウム複合処理球状シリカを得た。
【0075】
[比較例11]
ステアロイルグルタミン酸アルミニウム複合処理エンドウ澱粉の製造
40~45℃の水225gにステアロイルグルタミン酸ナトリウム塩(味の素社製のアミホープ)4.5gを加えてスリーワンモーター及びプロペラを用いて溶解させた。そこにエンドウ澱粉150gを投入し均一に撹拌した。次いで、3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えてpH6.0を維持しながら、硫酸アルミニウム十八水和物が4.5g溶解した水溶液18gを撹拌下に徐々に添加し、30分撹拌を続けて反応させ、ろ過、水洗をした後、50℃で通風乾燥させた。この複合処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通してステアロイルグルタミン酸アルミニウム複合処理エンドウ澱粉を得た。
【0076】
[比較例12]
エンドウ澱粉にオクテニルコハク酸無水物を直接処理した。
詳しくは、エンドウ澱粉150gを30℃の脱イオン水180gに加えてスリーワンモーター及びプロペラを用いて均一に撹拌した。次いで、3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えてpH7.8を維持しながら、オクテニルコハク酸無水物を4.5g投入し、その後、pHが変動しなくなるまで撹拌し、オクテニルコハク酸エンドウ澱粉ナトリウムを得た。
【0077】
[比較例13]
オクテニルコハク酸糖質ナトリウムをアルミニウム塩等の金属塩に変換することなく、複合粉体を得た。
詳しくは、工程(2)における硫酸アルミニウム十八水和物を添加せず、工程(3)における水洗を実施しなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、工程(1)~(3)を実施した。その結果、オクテニルコハク酸糖質ナトリウムをアルミニウム塩に変換しない粉体を得た。
【0078】
複合粉体を後述する方法で評価し、評価結果を以下の表に示した。
【0079】
【0080】
【0081】
[評価]
(試験例1)複合粉体の感触特性
実施例及び比較例の各粉体について、熟練した10名のパネラーによる官能評価を実施した。
詳しくは、粉体をパネラーの前腕内側部に塗布した。より詳しくは、粉体(0.1g)をパフ(直径5cm×厚み1cm)の上にのせ、当該粉体をパフと前腕内側部との間で挟持した状態で、パフをスライドさせることにより、粉体を塗布した。そして、塗布時の「伸び特性」および「滑らか特性」ならびに塗布後の「肌密着性」および「塗布均一性」の4つの項目について、評価項目ごとに以下の評価基準に従って評価した。
【0082】
(評価基準)
1点は「評価が悪い」、5点は「評価が優れる」として、1点、2点、3点、4点または5点のいずれかの点数をつけ、全パネラーの合計点を算出した。各項目の合計点に基づいて、感触特性の総合評価を行った。感触特性の詳しい評価結果を表5~表7に示した。
【0083】
・伸び特性
パフのスライド時における粉体の伸びを評価した。
5点:粉体は極めてよく伸びる(最良);
4点:粉体はよく伸びるものの、極めてよく伸びるというほどではない(優良);
3点:粉体は十分に伸びるものの、よく伸びるというほどではない(良);
2点:粉体は伸びるものの、十分に伸びるというほどではない(普通);
1点:粉体は伸びない(悪い)。
【0084】
・滑らか特性
パフのスライド時におけるパフ動作の滑らかさを評価した。
5点:塗布時のパフ動作は極めて滑らかである(最良);
4点:塗布時のパフ動作はかなり滑らかであるもの、極めて滑らかというほどではない(優良);
3点:塗布時のパフ動作は十分滑らかであるものの、かなり滑らかというほどではない(良);
2点:塗布時のパフ動作は滑らかであるものの、十分滑らかというほどではない(普通);
1点:塗布時のパフ動作は滑らかではない(悪い)。
【0085】
・肌密着性
パフのスライド後において塗布された粉体の肌への密着性を評価した。
5点:粉体の肌への密着性は極めて良い(最良);
4点:粉体の肌への密着性はかなり良いものの、極めて良いというほどではない(優良);
3点:粉体の肌への密着性は十分良いものの、かなり良いというほどではない(良);
2点:粉体の肌への密着性は良いものの、十分良いというほどではない(普通);
1点:粉体の肌への密着性は悪い(悪い)。
【0086】
・塗布均一性
パフのスライド後において塗布された粉体の肌上での均一性を評価した。
5点:粉体は肌上で極めて均一に塗布された(最良);
4点:粉体は肌上でかなり均一に塗布されたものの、極めて均一というほどではない(優良);
3点:粉体は肌上で十分均一に塗布されたものの、かなり均一というほどではない(良);
2点:粉体は肌上で均一に塗布されたものの、十分均一というほどではない(普通);
1点:粉体は肌上で均一に塗布されなかった(悪い)。
【0087】
・総合評価
◎:4つの項目の合計点のうち、最低の合計点が45点以上であった(最良);
○:4つの項目の合計点のうち、最低の合計点が40点以上45点未満であった(優良);
△:4つの項目の合計点のうち、最低の合計点が30点以上40点未満であった(合格;実用上問題なし);
×:4つの項目の合計点のうち、最低の合計点が30点未満であった(不合格;実用上問題あり)。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
(試験例2)撥水性試験
100ccビーカーに30℃のイオン交換水を50g加え、複合粉体を0.1g投入し、スターラーで400rpm、5分間撹拌した後の水の濁り度合いについて、評価を行った。詳しくは、熟練した10名のパネラーにより下記の評価基準で採点した。全パネラーの合計点を算出し、40点以上は「優良(◎)」、30点以上・40点未満は「良好(○)」、30点未満は「不良(×)」とし、結果を表8Aおよび表8Bに示した。
【0092】
(評価基準)
5点:粉が全て水面に浮き、濁りなし;
4点:粉が水面に浮いているが、水が僅かに濁る;
3点:粉が水面に浮いているが、水がやや濁る;
2点:一部の粉が水面に浮いているが、大半は水中に移行する;
1点:粉が全て水中に入る。
【0093】
【0094】
【0095】
シリコーン処理およびN-アシルアミノ酸金属塩処理は、従来より、撥水性に優れる粉体改質剤として知られている。本発明の粉体改質剤は、従来の粉体改質剤と同等の撥水性を示した。
【0096】
[複合化の確認]
実施例の複合粉体が、粉体と粉体改質剤とが複合化されたものであることを確認するために、実施例1、9および17の複合粉体について、以下の方法によりアルミニウム含有量の定量を行った。球状シリカ、エンドウ澱粉のアルミニウム含有量と比較してそれらの複合粉体(実施例1、9および17)のアルミニウム含有量は有意に増加したことから、粉体と粉体改質剤とが複合化されていることを確認した。
【0097】
[複合粉体中のアルミニウムの定量]
白金るつぼに複合粉体試料約1gを精評し、500~600℃に設定した電気炉にて灰化した。得られた灰化物に特級塩酸2mLを加え、サンドバス上で蒸発乾固した後、特級塩酸0.5mLとイオン交換水を適量加えて加熱溶解した。加熱溶解物を濾紙を用いて濾過し、イオン交換水で25mLに定容し、試料溶液とした。
特級塩酸2.5mLをイオン交換水で25mLに定溶したものを試料ブランクとして、下記の条件にて測定した。
使用機器:(原子吸光分析装置 iCE3000(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
波長:309.3nm
フレーム:亜酸化窒素ーアセチレン
フューエル流量:4.3L/min
バーナー高さ:10.9
フィット:0.999以上
ランプ電流:100
スリット:0.5
計測モード:吸光(D2ライン)
【0098】
【0099】
<実験例2>
(応用例1)プレストケーキファンデーション
プレストケーキファンデーションの処方例を表10に示した。なお、表10中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。白色無機顔料として酸化チタンを用いた。有色無機顔料として黄酸化鉄、ベンガラ、茶酸化鉄の混合物を用いた。
プレストケーキファンデーションは以下の手順で製造した。
表10中、(A)成分を混合しておき、続いて(B)成分を加えてさらに均一に混合し、篩に通して粒度を揃えた後、金皿に充填して圧縮成型した。
【0100】
【0101】
処方1-1のファンデーションは肌上で滑らかにムラなく、伸び広がって適度な密着性もあり、かつ化粧もちに優れていたが、処方1-2は、肌上での伸び、ムラ、広がり、密着性および化粧もちについて劣った。プレストケーキファンデーションにおいて、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は、感触特性について、優れた効果を発揮することを確認した。しかも処方1-1のファンデーションは、処方1-2のファンデーションよりも、発汗時の化粧もちにより優れていた。
【0102】
(応用例2)水中油型化粧下地
水中油型化粧下地の処方例を表11に示した。なお、表11中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
成分Aを80℃にて均一に溶解または分散した。
成分Bを80℃にて均一に溶解または分散した。
成分B混合物に成分A混合物を添加し、乳化、冷却し、水中油型化粧下地を得た。
【0103】
【0104】
処方2-1の水中油型化粧下地は肌上で滑らかに伸び広がりかつ乳化安定性にも優れていたが、処方2-2は、伸び広がりおよび乳化安定性について劣った。水中油型化粧下地において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0105】
(応用例3)油中水型日焼け止め料
油中水型化粧下地の処方例を表12に示した。なお、表12中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
1:成分Bを加温溶解した後、成分Aを添加しローラーにて均一に分散して分散体を得た。
2:成分Cと分散体を均一に混合し、混合物aを得た。
3:成分Dのみを混合溶解させて混合物bを得た後、混合物bを混合物aへ添加し乳化し、乳化物を得た。
4:乳化物に成分Eを添加し均一に混合し、油中水型日焼け止め料を得た。
【0106】
【0107】
処方3-1の油中水型日焼け止め料は肌上で滑らかに伸び広がりかつ耐水性に優れていたが、処方3-2は、伸び広がりおよび耐水性について劣った。油中水型日焼け止め料において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0108】
(応用例4)粉末状白粉
粉末状白粉の処方例を表13に示した。なお、表13中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
1:成分Aをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で均一に分散し、分散体aを得た。
2:成分Bを均一に混合溶解し、混合物を得た。
3:分散体aをヘンシェルミキサーにて撹拌しながら、混合物を添加し、均一分散して分散体bを得た。
4:分散体bをパルベライザーにて粉砕し、粉末状白粉を得た。
【0109】
【0110】
処方4-1の粉末状白粉は肌上で滑らかに伸び広がって適度な密着性もあり、化粧もちに優れていたが、処方4-2は、伸び広がりや密着性、化粧もちについて劣った。粉末状白粉において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0111】
(応用例5)固形頬紅
固形頬紅の処方例を表14に示した。なお、表14中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
1:成分Aをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で均一に分散し、分散体aを得た。
2:成分Bを均一に混合溶解し、混合物を得た。
3:分散体aをヘンシェルミキサーにて撹拌しながら、混合物及び成分Cを添加し、均一分散し、分散体bを得た。
4:分散体bをパルベライザーにて粉砕し、粉砕物を得た。
5:粉砕物を金皿に充填し、圧縮成型し、固形頬紅を得た。
【0112】
【0113】
処方5-1の固形頬紅は肌上で滑らかに伸び広がって適度な密着性もあり、化粧もちに優れていたが、処方5-2は、伸び広がりや密着性、化粧もちについて劣った。固形頬紅において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0114】
(応用例6)固形アイシャドウ
固形アイシャドウの処方例を表15に示した。なお、表15中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
1:成分Aをヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で均一に分散し、分散体aを得た。
2:成分Bを90℃で均一に混合溶解し、混合物を得た。
3:分散体aをヘンシェルミキサーにて撹拌しながら、混合物及び成分Cを添加し、均一分散し、分散体bを得た。
4:分散体bをパルベライザーにて粉砕し、粉砕物を得た。
5:粉砕物を金皿に充填し、圧縮成型し、固形アイシャドウを得た。
【0115】
【0116】
処方6-1の固形アイシャドウは肌上で滑らかに伸び広がって適度な密着性もあり、化粧もちに優れていたが、処方6-2は、伸び広がりや密着性、化粧もちについて劣った。固形アイシャドウにおいて、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0117】
(応用例7)口紅
口紅の処方例を表16に示した。なお、表16中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
成分Aを110℃~120℃に加熱溶解した後、成分Bを加え均一に混合し、成型用の型に流しこみ、冷却固化して口紅を製造した。
【0118】
【0119】
処方7-1の口紅は滑らかな感触で耐水性に優れていたが、処方7-2は、感触および耐水性ともに劣った。口紅において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0120】
(応用例8)パウダースプレー
パウダースプレーの処方例を表17に示した。なお、表17中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
下記全成分を混合したものをエアゾール容器に入れ、バルブを装着し、噴射剤を充填した。
【0121】
【0122】
処方8-1のパウダースプレーは滑らかな伸び広がりがあり適度な密着性を有していたが、処方8-2は、伸び広がりおよび密着性について劣った。パウダースプレーにおいて、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0123】
(応用例9)乳液
乳液の処方例を表18に示した。なお、表18中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
成分Aを均一に混合・溶解した。
加温した成分Bにホモジェナイザーで油層成分を撹拌しながら水層成分を少しずつ加え乳化し冷却後、乳液を得た。
【0124】
【0125】
処方9-1の乳液は滑らかな伸び広がりがあり乳化安定性にも優れていたが、処方9-2は、伸び広がりおよび乳化安定性について劣った。乳液において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。
【0126】
(応用例10)化粧水
化粧水の処方例を表19に示した。なお、表19中の数値は各成分の含有量(質量%)を示しており、それらの合計値は100質量%である。
製法は以下の手順で行った。
下記全成分を混合溶解し、製品とした。
【0127】
【0128】
処方10-1の化粧水は滑らかに伸び広がり、感触も良好があったが、処方10-2は、伸び広がりおよび感触について劣った。化粧水において、オクテニルコハク酸糖質エステルアルミニウム複合処理粉体は優れた効果を発揮することを確認した。