(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164648
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】シニア人材マッチング支援装置及びシニア人材マッチング支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241120BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080285
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 壮平
(72)【発明者】
【氏名】迫川 浩一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】高齢者の心身の健全性を客観的に評価し、採用企業が望む高齢者の採用を精度良好かつ効率的なものとする。
【解決手段】シニア人材マッチング支援装置100において、求人企業における高齢者の雇用ニーズの情報125を格納する記憶装置101と、端末200より、高齢者の観測結果を取得し、観測結果に基づき行動の頻度、実行時間、場所等の観点の値を特定し、雇用ニーズの情報が示す配点テーブルに対し、観点それぞれの値を照合して高齢者における当該観点の評価点を特定、合計し、高齢者と雇用ニーズとのマッチングレベルを特定する演算装置104を含む構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
求人企業における高齢者の雇用ニーズの情報を格納する記憶装置と、
所定の端末より、高齢者の行動に関する観測結果を取得する処理と、前記観測結果に基づき、前記高齢者による、所定行動の頻度、実行時間、場所、手段、及び所在地からの移動範囲の少なくともいずれかの観点の値を特定する処理と、前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度を踏まえた配点テーブルに対し、前記高齢者に関して特定した前記観点それぞれの値を照合することで、当該高齢者における当該観点の評価点を特定する処理と、前記高齢者に関する前記観測結果における前記観点それぞれの前記評価点を合計し、当該高齢者と前記求人企業における雇用ニーズとのマッチングレベルを特定する処理を実行する演算装置と、
を備えることを特徴とするシニア人材マッチング支援装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記求人企業における雇用ニーズに関して、各高齢者のうち前記マッチングレベルが所定基準を満たす者を、当該求人企業における雇用ニーズに適合する者として特定する処理をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のシニア人材マッチング支援装置。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度の分布と前記観点の総数とを踏まえた、前記観点ごとの重み値を算定する処理と、当該重み値に前記観点の総数を乗じることで、当該観点での最高評価点を決定する処理と、各高齢者の前記観測結果のうち前記観点の値の分布に基づき、当該観点の値の最高値に前記最高評価点を紐付け、前記観点の値の前記最高値から最低値に至るまで、前記分布に応じて、前記最高評価点から所定の最低評価点まで順次紐付けることで、前記配点テーブルを生成する処理をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項2に記載のシニア人材マッチング支援装置。
【請求項4】
前記演算装置は、
前記配点テーブルを、前記求人企業ごと、業種ごと、及び職種ごとの少なくともいずれかに関して生成するものである、
ことを特徴とする請求項3に記載のシニア人材マッチング支援装置。
【請求項5】
情報処理装置が、
求人企業における高齢者の雇用ニーズの情報を格納する記憶装置を備えて、
所定の端末より、高齢者の行動に関する観測結果を取得する処理と、前記観測結果に基づき、前記高齢者による、所定行動の頻度、実行時間、場所、手段、及び所在地からの移動範囲の少なくともいずれかの観点の値を特定する処理と、前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度を踏まえた配点テーブルに対し、前記高齢者に関して特定した前記観点それぞれの値を照合することで、当該高齢者における当該観点の評価点を特定する処理と、前記高齢者に関する前記観測結果における前記観点それぞれの前記評価点を合計し、当該高齢者と前記求人企業における雇用ニーズとのマッチングレベルを特定する処理、
を実行することを特徴とするシニア人材マッチング支援方法。
【請求項6】
前記情報処理装置が、
前記求人企業における雇用ニーズに関して、各高齢者のうち前記マッチングレベルが所定基準を満たす者を、当該求人企業における雇用ニーズに適合する者として特定する処理をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項5に記載のシニア人材マッチング支援装置。
【請求項7】
前記情報処理装置が、
前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度の分布と前記観点の総数とを踏まえた、前記観点ごとの重み値を算定する処理と、当該重み値に前記観点の総数を乗じることで、当該観点での最高評価点を決定する処理と、各高齢者の前記観測結果のうち前記観点の値の分布に基づき、当該観点の値の最高値に前記最高評価点を紐付け、前記観点の値の前記最高値から最低値に至るまで、前記分布に応じて、前記最高評価点から所定の最低評価点まで順次紐付けることで、前記配点テーブルを生成する処理をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載のシニア人材マッチング支援装置。
【請求項8】
前記情報処理装置が、
前記配点テーブルを、前記求人企業ごと、業種ごと、及び職種ごとの少なくともいずれかに関して生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載のシニア人材マッチング支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シニア人材マッチング支援装置及びシニア人材マッチング支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化や人口流出などに伴い、多くの地域で人手不足が深刻化している。こうした状況に対し、若年層の移住促進制度や定年後の継続雇用制度など制度面の整備に加え、高齢者雇用についての積極的な検討も進められている。
なお、人材採用に関連する従来技術としては、例えば、求人者側と求職者側の双方のニーズを効果的にマッチングさせることができる技術(特許文献1参照)などが提案されている。
【0003】
この技術は、ユーザの可搬型端末装置と、前記可搬型端末装置に求人情報を提供する求人情報事業者の管理サーバとを備える求人情報提供システムであって、前記可搬型端末装置は、前記管理サーバと通信する通信部と、位置情報を取得し前記管理サーバに通知する位置取得部と、前記管理サーバから求人情報を取得し、前記ユーザに提示する求人情報提示部と、を備え、前記管理サーバは、前記可搬型端末装置と通信する通信部と、前記可搬型端末装置から通知された前記位置情報を取得し、前記ユーザの活動拠点を算出する活動拠点算出部と、前記活動拠点から一定範囲内の求人案件を活動エリア内求人情報として前記可搬型端末装置に通知する活動エリア求職処理部と、を備え、前記可搬型端末装置の前記求人情報提示部は、前記管理サーバから取得した前記活動エリア内求人情報を提示することを特徴とする求人情報提供システムにかかるものである。
【0004】
また他にも、ユーザの属性や行動パターンに応じた適切なコンテンツを提供したいといった要望に応える技術(特許文献2参照)なども提案されている。
【0005】
この技術は、ユーザを評価する評価基準である複数の指標に対応するスコアを取得する取得部と、前記取得部によって取得された各指標に対応する前記スコアの組み合わせに応じて前記ユーザに提供するコンテンツを決定する決定部と、を備えたことを特徴とする決定装置にかかるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-149064号公報
【特許文献2】特開2020-64575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、現役世代の雇用とは異なり、高齢者の雇用に際しては考慮すべき特有の観点が存在する。採用側の企業にとっては、応募者の経験、スキルの有無や業務との親和性等の観点は当然として、健康面や体力、気力に問題がないという観点での考慮も重要となってくる。
こうした特有の観点は、高齢者採用において非常に重要で、当該高齢者を雇用した場合の業務効率や勤続期間等を大きく左右するポイントとなる。しかしながら、当該観点を精度よく客観的に評価するためのデータや分析手法等は提案されていない。
【0008】
したがって、企業側の採用担当者は、採用面接時のインタビューや応募書類の記載内容を、自らの経験や勘に基づき主観的に評価し、その結果で採用可否を決定するしかなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、高齢者の心身の健全性を客観的に評価し、採用企業が望む高齢者の採用を精度良好かつ効率的なものとする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明のシニア人材マッチング支援装置は、求人企業における高齢者の雇用ニーズの情報を格納する記憶装置と、所定の端末より、高齢者の行動に関する観測結果を取得する処理と、前記観測結果に基づき、前記高齢者による、所定行動の頻度、実行時間、場所、手段、及び所在地からの移動範囲の少なくともいずれかの観点の値を特定する処理と、前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度を踏まえた配点テーブルに対し、前記高齢者に関して特定した前記観点それぞれの値を照合することで、当該高齢者における当該観点の評価点を特定する処理と、前記高齢者に関する前記観測結果における前記観点それぞれの前記評価点を合計し、当該高齢者と前記求人企業における雇用ニーズとのマッチングレベルを特定する処理を実行する演算装置と、を備えることを特徴とする。
また、本発明のシニア人材マッチング支援方法は、情報処理装置が、求人企業における高齢者の雇用ニーズの情報を格納する記憶装置を備えて、所定の端末より、高齢者の行動に関する観測結果を取得する処理と、前記観測結果に基づき、前記高齢者による、所定行動の頻度、実行時間、場所、手段、及び所在地からの移動範囲の少なくともいずれかの観点の値を特定する処理と、前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度を踏まえた配点テーブルに対し、前記高齢者に関して特定した前記観点それぞれの値を照合することで、当該高齢者における当該観点の評価点を特定する処理と、前記高齢者に関する前記観測結果における前記観点それぞれの前記評価点を合計し、当該高齢者と前記求人企業における雇用ニーズとのマッチングレベルを特定する処理、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高齢者の心身の健全性を客観的に評価し、採用企業が望む高齢者の採用を精度良好かつ効率的なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のシニア人材マッチング支援装置を含むネットワーク構成図である。
【
図2】本実施形態におけるシニア人材マッチング支援のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における高齢者端末のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4A】本実施形態における雇用ニーズDBの構成例を示す図である。
【
図4B】本実施形態における配点テーブルの構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態における観測結果DBの構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態におけるシニア人材マッチング支援方法のフロー例を示す図である。
【
図7】本実施形態におけるシニア人材マッチング支援方法のフロー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ネットワーク構成>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態のシニア人材マッチング支援装置100を含むネットワーク構成図である。
図1に示すシニア人材マッチング支援装置100は、高齢者の心身の健全性を客観的に評価し、採用企業が望む高齢者の採用を精度良好かつ効率的なものとするコンピュータである。
【0014】
本実施形態のシニア人材マッチング支援装置100は、
図1で示すように、インターネットなどの適宜なネットワーク1を介して、高齢者端末200、求人企業システム300、及び金融機関システム400と通信可能に接続されている。よって、これらを総称してシニア人材マッチング支援システム10としてもよい。
【0015】
本実施形態のシニア人材マッチング支援装置100は、(潜在的な意味も含む)求職者である高齢者と、当該高齢者が住まう地域にて人材を採用したい求人企業との間にあって、当該高齢者が口座を保有する地域金融機関等と協働し、人材マッチングサービスないし当該サービスの支援サービスの提供装置と言える。
【0016】
勿論、シニア人材マッチング支援装置100の運営者として限定は無いため、上述の地域金融機関や求人企業が、シニア人材マッチング支援装置100を運用するか、既存システムに組み込むなどといった実装、運用形態も想定しうる。
【0017】
一方、高齢者端末200は、上述の求人企業における求人に応募する可能性のある高齢者が操作する端末である。この高齢者端末200は、シニア人材マッチング支援装置100が提供するマッチングサービスを利用するための端末であって、具体的には、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどを想定できる。
【0018】
なお、高齢者端末200は、高齢者の行動を観測するセンサユニットを備えるか、或いはネットワーク経由で連携しており、当該高齢者の行動に関する観測結果を当該センサユニットから取得可能な端末でもある。高齢者端末200の具体的な構成については後述する。
【0019】
また、求人企業システム300は、高齢者雇用を検討し、実際にその雇用ニーズについての情報をシニア人材マッチング支援装置100に提供・登録するシステムとなる。
【0020】
求人企業システム300がシニア人材マッチング支援装置100に提供した雇用ニーズの情報は、雇用ニーズDB125に格納される。
【0021】
また、金融機関システム400は、上述の高齢者が所在する地域の地域金融機関のシステムである。この金融機関システム400は、地域金融機関の顧客である高齢者の属性情報や、当該高齢者が保有する銀行口座の情報などを、シニア人材マッチング支援装置100に提供する機能を有する。これにより提供された情報は、シニア人材マッチング支援装置100の観測結果DB126における、当該高齢者の属性情報の1つとして格納されることとなる。
<ハードウェア構成>
また、本実施形態のシニア人材マッチング支援装置100のハードウェア構成は、
図2に以下の如くとなる。
【0022】
すなわちシニア人材マッチング支援装置100は、記憶装置101、メモリ103、演算装置104、および通信装置105、を備える。
【0023】
このうち記憶装置101は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される。
【0024】
また、メモリ103は、RAM(Random Access Memory)など揮発性記憶素子で構成される。
【0025】
また、演算装置104は、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU(Central processing Unit)である。
【0026】
また、通信装置105は、ネットワーク1と接続して高齢者端末200や求人企業システム300、金融機関システム400らとの通信処理を担うネットワークインターフェイスカード等を想定する。
【0027】
なお、シニア人材マッチング支援装置100は、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付けるキーボードやマウスなどの入力装置、処理データの表示を行うディスプレイ等の出力装置を更に備えるとすれば好適である。
【0028】
また、上述の記憶装置101内には、本実施形態のシニア人材マッチング支援装置として必要な機能を実装する為のプログラム102に加えて、雇用ニーズDB125、及び観測結果DB126が少なくとも記憶されている。ただし、これらデータベースについての詳細は後述する。
【0029】
また
図3に、本実施形態における高齢者端末200のハードウェア構成例を示す。本実施形態の高齢者端末200は、記憶装置201、メモリ203、演算装置204、入出力装置205、通信装置206、及びセンサユニット207を備える。
【0030】
このうち記憶装置201は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される。
【0031】
また、メモリ203は、RAM(Random Access Memory)など揮発性記憶素子で構成される。
【0032】
また、演算装置204は、記憶装置201に保持されるプログラム202をメモリ203に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU(Central processing Unit)である。
【0033】
また、入出力装置205は、ユーザたる高齢者からの入力動作を受け付け、また処理データの表示を行うタッチパネル等である。
【0034】
また、通信装置206は、ネットワーク1と接続してシニア人材マッチング支援装置100や求人企業システム300、金融機関システム400らとの通信処理を担うネットワークインターフェイスカード等を想定する。
【0035】
また、センサユニット207は、種々のものを採用しうるが、例えば、高齢者の位置や移動速度をリアルタイムに観測するGPS(Global Positioning System)ユニット、歩数を計測する歩数計、などを想定する。さらに、高齢者の健康データ(例:血圧、心拍数、発汗量、血糖値、体温)の計測装置を採用するとしてもよい。
【0036】
また、上述の記憶装置201内には、本実施形態の高齢者端末200として必要な機能を実装する為のプログラム202に加えて、センサユニット207で観測した観測結果215が少なくとも記憶されている。この観測結果215は、後述する観測結果DB126のレコードに格納されることとなる。
<データ構造例>
続いて、本実施形態のシニア人材マッチング支援装置100が用いる各種情報について説明する。
図4Aに、本実施形態における雇用ニーズDB125の一例を示す。
【0037】
本実施形態における雇用ニーズDB125は、求人企業システム300から寄せられた雇用ニーズの情報を格納したデータベースである。
【0038】
この雇用ニーズDB125は、例えば、求人企業を一意に特定する企業IDをキーとして、当該求人企業が高齢者雇用を確保したい業種や職種といった募集ジャンル、当該求人における評価項目、当該評価項目の重要度(ランクとそれに応じた指数)、ウエイト、及びといったデータを紐付けたレコードの集合体となっている。
【0039】
なお、こうした雇用ニーズDB125における、各募集ジャンルにおける評価項目に関して、その観測値の分布とこれに応じた評価点といったデータを規定したレコードの集合体を配点テーブル1251(
図4B参照)と称するものとする。この配点テーブル1251の具体的な構成等については後述する。
【0040】
上述のレコードに含まれる値のうち、評価項目の重要度であるランクは、重要、やや重要、普通、あまり重要でない、重要でない、の5段階のランクがある。
【0041】
またその指数は、重要:5、やや重要:4、普通:3、あまり重要でない:2、重要でない:1、といった対応付けになっている。
【0042】
また、ウエイトは、各評価項目の指数の合計値に占める、各評価項目の指数の割合を算定したものである。
【0043】
例えば、ある募集ジャンルに関して、5つの評価項目が設定されていて、そのうち評価項目「外出数」の指数が「2」、また、5つの評価項目の指数の合計値が、「16」であったとすると、(2/16)×100=12.5、の少数点を切り上げた「13」をウエイトとして算定する。
【0044】
また
図5に、本実施形態における観測結果DB126の一例を示す。本実施形態における観測結果DB126は、高齢者それぞれに関して観測され、高齢者端末200から寄せられた観測値や、或いは、金融機関システム400から提供された顧客としての高齢者の属性情報を格納したデータベースである。
【0045】
本実施形態における観測結果DB126は、例えば、高齢者を一意に特定するユーザIDをキーとして、当該高齢者に関して高齢者端末200から得られた観測結果、及び当該高齢者の属性情報、といったデータを紐付けたレコードの集合体となっている。
【0046】
このうち、観測結果には、観測日時、高齢者の位置、歩数、血圧、心拍数、発汗量、血糖値、体温、などといった値が含まれうるものとする。
【0047】
また、属性情報には、高齢者の性別、年齢、居住地、関係する地域金融機関、といった値が含まれうるものとする。
<フロー例:配点テーブル生成>
以下、本実施形態におけるシニア人材マッチング支援方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明するシニア人材マッチング支援方法に対応する各種動作は、シニア人材マッチング支援装置100がメモリ等に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0048】
図6は、本実施形態におけるシニア人材マッチング支援方法のフロー例を示す図であり、具体的には、配点テーブル生成の処理を示すフロー図である。
【0049】
この場合、シニア人材マッチング支援装置100は、求人企業システム300から雇用ニーズの情報を受信し、これを雇用ニーズDB125に格納する(s1)。
【0050】
この雇用ニーズの情報は、
図4の雇用ニーズDB125のレコードについて示したとおり、求人企業システム300を運用する求人企業の識別情報(企業ID)、当該求人企業が高齢者雇用を確保したい業種や職種といった募集ジャンル、当該求人における評価項目、当該評価項目の重要度(ランクとそれに応じた指数)の各値を少なくとも含んでいる。一方、ウエイトについての指定は、当該情報に含まれていない。
【0051】
そこで、シニア人材マッチング支援装置100は、上述のs1で得た雇用ニーズの情報から、募集ジャンルごとに、評価項目とその重要度(ランク及び指数)の各値を抽出する(s2)。
【0052】
なお、評価項目の重要度であるランクは、重要、やや重要、普通、あまり重要でない、重要でない、の5段階のランクいずれかが設定されている。また、その指数は、重要:5、やや重要:4、普通:3、あまり重要でない:2、重要でない:1、といった対応付けがなされているものとする。
【0053】
続いて、シニア人材マッチング支援装置100は、評価項目(観点)ごとの重要度の分布と評価項目の総数とを踏まえて、評価項目ごとの重み値すなわちウエイトを算定する(s3)。
【0054】
この場合、シニア人材マッチング支援装置100は、各評価項目の指数の合計値に占める、各評価項目の指数の割合を、ウエイトとして算定する。
【0055】
例えば、募集ジャンル「接客、レジなどの仕事」に関して、5つの評価項目が設定されていて、そのうち評価項目「外出数」の指数が「2」、また、5つの評価項目の指数の合計値が、2+2+5+3+4=「16」であったとすると、(2/16)×100=12.5、の少数点切り上げ値である「13」をウエイトとして算定する。
【0056】
続いて、シニア人材マッチング支援装置100は、s3までで得たウエイトに、評価項目の総数(上述の例であれば、5)を乗じることで、当該評価項目での最高評価点を決定する(s4)。
【0057】
例えば、上述の評価項目「外出数」のウエイトが「13」、また、5つの評価項目の総数が「5」であったとすると、13×5=65を最高評価点(配点)として算定する。
【0058】
続いて、シニア人材マッチング支援装置100は、高齢者端末200から受信済みの、各高齢者の観測結果を観測結果DB126にて参照し、それらのうち上述のs4までの処理対象としている評価項目の値の分布に基づき、当該評価項目の値の最高値に最高評価点を紐付け、当該評価項目の値の最高値から最低値に至るまで、当該分布に応じて、最高評価点から所定の最低評価点まで順次紐付けることで、配点テーブル1251(
図4B)を完成させる(s5)。
【0059】
例えば、観測結果DB126に格納している、各高齢者のレコードのうち、上述の評価項目「外出数」の値を含むものを参照した時、その値の分布が、最高値:10、最低値:1であったとする。この場合、最高値から最低値に至る場合、10→9、9→8、8→7、7→6、6→5、5→4、4→3、3→2、2→1、の9段階が存在しうる。
【0060】
そこで、最高評価点「65」を9で除算することで、最高評価点「63」を9段階の分布とする場合の、1段階あたり7.2を評価点の刻みとする(実際には、これを少数点切り上げた「7」を採用)。
【0061】
ここでシニア人材マッチング支援装置100は、「外出数」の最高値「10」に最高評価点は「65」を紐付けた以後、外出数「9」に「58」を紐付け、外出数「8」に「51」を紐付け、外出数「7」に「44」を紐付け、外出数「6」に「37」を紐付け、外出数「5」に「30」を紐付け、外出数「4」に「23」を紐付け、外出数「3」に「16」を紐付け、外出数「2」に「9」を紐付け、外出数「1」に「2」を紐付ける。よって、最低評価点は「2」となる。
【0062】
なお、上述の配点テーブルの生成は、求人企業ごと、業種ごと、及び職種ごとの少なくともいずれかに関して実行するものとする。
<フロー例:マッチング>
続いて、求人企業における雇用ニーズを踏まえた、高齢者の特定、仲介の処理について説明する。
図7は、本実施形態におけるシニア人材マッチング支援方法のフロー例を示す図であり、具体的には、求人企業と高齢者とのマッチング処理について示すフロー図である。
【0063】
この場合、シニア人材マッチング支援装置100は、高齢者端末200から高齢者の行動に関する観測結果を取得する(s10)。同様に、シニア人材マッチング支援装置100は、金融機関システム400から、当該高齢者の属性情報を取得する(s11)。
【0064】
なお、上述の観測結果及び属性情報は、観測結果DB126に関して説明したレコードとなる。
【0065】
続いて、シニア人材マッチング支援装置100は、s10及びs11で得た観測結果や属性情報に基づき、当該高齢者による、所定行動の頻度、実行時間、場所、手段、及び所在地からの移動範囲の少なくともいずれかの観点すなわち評価項目の値を特定する(s12)。
【0066】
例えば、評価項目「外出数」に関しては、観測結果が示す、当該高齢者の居住地(属性情報の1つ)とは異なる位置(観測結果の1つ)に移動した回数を、一週間や一ヶ月といった一定期間について集計する。
【0067】
同様に、評価項目「外出時間」に関しては、観測結果が示す、当該高齢者の居住地(属性情報の1つ)から上述の位置(観測結果の1つ)に移動し滞在した時間を、一週間や一ヶ月といった一定期間について集計する。
【0068】
また、評価項目「滞在地の種類」に関しては、観測結果が示す、当該高齢者の居住地(属性情報の1つ)とは異なる上述の位置(観測結果の1つ)に存在する所定の施設(例:ショッピングセンター)の出現回数を、一週間や一ヶ月といった一定期間について集計する。
【0069】
また、評価項目「移動手段」に関しては、観測結果が示す、当該高齢者の居住地(属性情報の1つ)から上述の位置(観測結果の1つ)に移動した際の移動速度に基づき判定できる移動手段のうち、例えば自動車による移動手段の出現回数を、一週間や一ヶ月といった一定期間について集計する。
【0070】
また、評価項目「活動範囲」に関しては、観測結果が示す、当該高齢者の居住地(属性情報の1つ)から当該居住地以外の位置(観測結果の1つ)までの移動機会のうち、居住地から所定の距離範囲で移動した回数を、一週間や一ヶ月といった一定期間について集計する。
【0071】
続いて、シニア人材マッチング支援装置100は、雇用ニーズDB125における、所定の求人企業における評価項目ごとの配点テーブルに対し、s12までで高齢者に関して特定した評価項目それぞれの値を照合し、当該高齢者における当該評価項目の評価点を特定する(s13)。
【0072】
例えば、ある高齢者の直近一ヶ月の「外出数」が「3」であった時、これを、ある求人企業における雇用ニーズに対応した配点テーブルに照合すると、評価点「16」を特定できる。
【0073】
シニア人材マッチング支援装置100は、上述の高齢者に関する観測結果における評価項目それぞれの評価点を合計し、当該高齢者と上述の求人企業における雇用ニーズとのマッチングレベルを特定する(s14)。
【0074】
ある高齢者に関して、「外出数」についての評価点「16」、「外出時間」についての評価点「15」、「滞在地」についての評価点「5」、「移動手段」についての評価点「60」、「活動範囲」についての評価点「35」であったとすれば、その合計値すなわちマッチングレベルは、16+15+5+60+35=131、となる。
【0075】
続いて、シニア人材マッチング支援装置100は、上述の求人企業における雇用ニーズに関して、各高齢者のうちマッチングレベルが所定基準(例:130以上)を満たす者を、当該求人企業における雇用ニーズに適合する者として特定する(s15)。
【0076】
また、シニア人材マッチング支援装置100は、s15で特定した高齢者の情報(
図8参照)を、上述の求人企業システム300に通知し(s16)、処理を終了する。
【0077】
この場合、求人企業においては、当該求人企業システム300を通じて得た高齢者の情報を閲覧、確認し、自社の雇用ニーズとの親和性等について検討して、採用活動を進めていくこととなる。勿論、こうした検討に際しては、当該求人企業に特有の雇用ニーズに特化して適合する高齢者を検討対象とすることとなるため、無駄な検討作業のための各種コストは大幅に削減することが可能となる。当然ながら、求人企業と高齢者の双方において望ましい求人と求職が実現しやすく、当該求人企業や高齢者らが所在する地域全体での、活性化なども図られるものとなる。
【0078】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0079】
こうした本実施形態によれば、高齢者雇用を望む企業等と、そのニーズにマッチした高齢者人材とを効率よくマッチングさせることが可能となり、このことは、各地の高齢者において、就労機会の増加、就労やボランティアなど社会参加による健康増進といった有意な効果の発現を見込める。また、当該企業等においては、貴重な労働力の確保を通じて業の維持、進展を図り、地域活性化にも貢献しうることが期待できる。さらに、当該高齢者等が居住する自治体では、高齢者のフレイル・要介護リスク抑制による、医療費・介護保険給付費の抑制を図る効果も期待される。
【0080】
すなわち、高齢者の心身の健全性を客観的に評価し、採用企業が望む高齢者の採用を精度良好かつ効率的なものとできる。
【0081】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態のシニア人材マッチング支援装置において、前記演算装置は、前記求人企業における雇用ニーズに関して、各高齢者のうち前記マッチングレベルが所定基準を満たす者を、当該求人企業における雇用ニーズに適合する者として特定する処理をさらに実行するものである、としてもよい。
【0082】
これによれば、求人企業における高齢者雇用のニーズに対して、より的確にマッチした高齢者を特定し、これを当該企業等に効率的につなげることが可能となる。
【0083】
また本実施形態のシニア人材マッチング支援装置において、前記演算装置は、前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度の分布と前記観点の総数とを踏まえた、前記観点ごとの重み値を算定する処理と、当該重み値に前記観点の総数を乗じることで、当該観点での最高評価点を決定する処理と、各高齢者の前記観測結果のうち前記観点の値の分布に基づき、当該観点の値の最高値に前記最高評価点を紐付け、前記観点の値の前記最高値から最低値に至るまで、前記分布に応じて、前記最高評価点から所定の最低評価点まで順次紐付けることで、前記配点テーブルを生成する処理をさらに実行するものである、としてもよい。
【0084】
これによれば、求人企業ごとの個別ニーズに応じた観点での評価ルール、基準を効率的かつ的確に生成し、これに基づく当該求人企業と高齢者との間のマッチングを、精緻に行うことが可能となる。
【0085】
また本実施形態のシニア人材マッチング支援装置において、前記演算装置は、前記配点テーブルを、前記求人企業ごと、業種ごと、及び職種ごとの少なくともいずれかに関して生成するものである、としてもよい。
【0086】
これによれば、求人企業における雇用ニーズを、さらに細かな粒度でモデル化し、これに基づく適宜な高齢者の的確な特定、紹介が可能となる。
【0087】
また本実施形態のシニア人材マッチング支援方法において、前記情報処理装置が、前記求人企業における雇用ニーズに関して、各高齢者のうち前記マッチングレベルが所定基準を満たす者を、当該求人企業における雇用ニーズに適合する者として特定する処理をさらに実行する、としてもよい。
【0088】
また本実施形態のシニア人材マッチング支援方法において、前記情報処理装置が、前記雇用ニーズの情報が示す、前記求人企業における前記観点ごとの重要度の分布と前記観点の総数とを踏まえた、前記観点ごとの重み値を算定する処理と、当該重み値に前記観点の総数を乗じることで、当該観点での最高評価点を決定する処理と、各高齢者の前記観測結果のうち前記観点の値の分布に基づき、当該観点の値の最高値に前記最高評価点を紐付け、前記観点の値の前記最高値から最低値に至るまで、前記分布に応じて、前記最高評価点から所定の最低評価点まで順次紐付けることで、前記配点テーブルを生成する処理をさらに実行する、としてもよい。
【0089】
また本実施形態のシニア人材マッチング支援方法において、前記情報処理装置が、前記配点テーブルを、前記求人企業ごと、業種ごと、及び職種ごとの少なくともいずれかに関して生成する、としてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 ネットワーク
10 シニア人材マッチング支援システム
100 シニア人材マッチング支援装置
101 記憶装置
102 プログラム
103 メモリ
104 演算装置
105 通信装置
125 雇用ニーズDB
1251 配点テーブル
126 観測結果DB
200 高齢者端末
201 記憶装置
202 プログラム
203 メモリ
204 演算装置
205 入出力装置
206 通信装置
207 センサユニット
215 観測結果
300 求人企業システム
400 金融機関システム