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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164653
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】縦延伸装置及び縦延伸方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/06 20060101AFI20241120BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20241120BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B29C55/06
F25B30/02 Z
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080296
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 亮
(72)【発明者】
【氏名】菅原 貴弘
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AK01
4F210AK02
4F210AK13
4F210AM23
4F210AR06
4F210QA03
4F210QC02
4F210QD34
4F210QD44
4F210QM02
4F210QM03
4F210QM11
4F210QM13
4F210QM15
(57)【要約】
【課題】エネルギーの利用効率を高め、省エネルギー化を実現することが可能な縦延伸装置及び縦延伸方法を提供する
【解決手段】一実施の形態の縦延伸装置1は、作動媒体を循環させ、作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプ5を有する。ヒートポンプ5は、作動媒体を膨張させる膨張弁と、膨張弁で膨張された作動媒体と、冷却ロール4から熱を吸収した熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、熱交換器で熱交換された作動媒体を圧縮する圧縮機と、圧縮機によって圧縮された作動媒体と、加熱ロール2に熱を放出した熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを縦方向に延伸するための複数のロールと、
作動媒体を循環させ、前記作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプと、を有する縦延伸装置であって、
前記複数のロールは、前記ヒートポンプにより温度を上昇させる加熱ロールと、前記ヒートポンプにより温度を低下させる冷却ロールとを有し、
前記ヒートポンプは、
前記作動媒体を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁で膨張された前記作動媒体を、前記冷却ロールから熱を吸収した第1熱媒体と熱交換を行う第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で熱交換された前記作動媒体を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機によって圧縮された前記作動媒体と、前記加熱ロールに熱を放出した第2熱媒体と熱交換を行う第2熱交換器と、を備える、縦延伸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の縦延伸装置において、
前記加熱ロール及び前記冷却ロールをそれぞれ複数有し、
前記ヒートポンプは、前記冷却ロールに対応する複数の前記第1熱交換器を有し、かつ、前記加熱ロールに対応する複数の前記第2熱交換器を有する、縦延伸装置。
【請求項3】
請求項1に記載の縦延伸装置において、
前記縦延伸装置が、予熱領域、延伸領域及び冷却領域を有し、
前記加熱ロールが前記予熱領域に設けられ、かつ、前記冷却ロールが前記冷却領域に設けられている、縦延伸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の縦延伸装置において、
前記ヒートポンプが、前記冷却ロールの温度を20~40℃の範囲に、かつ、前記加熱ロールの温度を70~90℃の範囲に、それぞれ調整する制御部を有する、縦延伸装置。
【請求項5】
(a)樹脂シートを、複数のロールが設けられている縦延伸装置に供給する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記樹脂シートを前記縦延伸装置により縦方向に延伸する工程と、を有し、
前記複数のロールは、作動媒体を循環させ、前記作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプにより温度を上昇させる加熱ロールと、前記ヒートポンプにより温度を低下させる冷却ロールとを有し、
前記ヒートポンプを制御して、前記加熱ロール及び前記冷却ロールの温度を調整する温調制御を行う、縦延伸方法。
【請求項6】
請求項5に記載の縦延伸方法において、
前記ヒートポンプは、前記作動媒体を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で膨張された前記作動媒体を、前記冷却ロールから熱を吸収した第1熱媒体と熱交換を行う第1熱交換器と、前記第1熱交換器で熱交換された前記作動媒体を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された前記作動媒体と、前記加熱ロールに熱を放出した第2熱媒体と熱交換を行う第2熱交換器と、を備える、縦延伸方法。
【請求項7】
請求項6に記載の縦延伸方法において、
前記加熱ロール及び前記冷却ロールをそれぞれ複数有し、
前記ヒートポンプは、前記冷却ロールに対応する複数の前記第1熱交換器を有し、かつ、前記加熱ロールに対応する複数の前記第2熱交換器を有する、縦延伸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦延伸装置及び縦延伸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縦延伸方法は、樹脂シートの製造方法に用いられる。樹脂シートの製造方法としては、押出機により原料を溶融し、得られた溶融樹脂を押出成形用ダイ(Tダイ)からシート形状に押出すことにより製造する方法が知られている。樹脂シートは、さらに必要に応じて、所望の厚さ、形状等にするために、縦方向(進行方向)に延伸する縦延伸装置と、樹脂シートを横方向(幅方向)に延伸する横延伸機により延伸される(例えば、特許文献1(特開2021-54030号公報)参照)。
【0003】
ここで用いられる縦延伸装置は、樹脂シートを、予熱領域、延伸領域及び冷却領域の各領域を経由させることで延伸し、上記各領域には、樹脂シートの温度を上昇させる加熱ロールと樹脂シートの温度を低下させる冷却ロールの複数のロールが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-54030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、加熱ロールと冷却ロールは、それぞれ独立に温度管理がなされており、熱エネルギーが効率的に使用されているとは言えない。そのため、エネルギーの利用効率を高め、省エネルギー化を図ることができる縦延伸装置及び縦延伸方法が望まれている。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、縦延伸装置は、樹脂シートを縦方向に延伸するための複数のロールと、作動媒体を循環させ、作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプと、を有する。ここで、複数のロールは、ヒートポンプにより温度を上昇させる加熱ロールと、ヒートポンプにより温度を低下させる冷却ロールとを有し、ヒートポンプは、膨張弁と、冷却ロールから熱を吸収した熱媒体と熱交換を行う熱交換器と、圧縮機と、加熱ロールに熱を放出した熱媒体と熱交換を行う熱交換器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、エネルギーの利用効率を高め、省エネルギー化が実現することが可能な縦延伸装置及び縦延伸方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る縦延伸装置を用いる、押出成形システムの構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係る縦延伸装置の構成を示す模式図である。
図3】実施の形態1に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係るヒートポンプによる温調制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
図6】実施の形態2の変形例1に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
図7】実施の形態2の変形例2に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の機能を有する部材などには同一の符号を付す。また、一度説明した部材などについては、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0010】
[実施の形態1]
<押出成形システム>
本実施の形態に係る縦延伸装置について説明する前に、まずは、縦延伸装置を備えた、押出成形システムの概略構成について説明する。図1には、縦延伸装置を備えた、樹脂フィルムの製造システムの一構成例を示す模式図を示した。
【0011】
ここで、S1は二軸混練押出機、S2はTダイ、S3は原反冷却装置(CAST装置)、S4は縦延伸装置(MD延伸装置)、S5は横延伸装置(TD延伸装置)、S6は巻取り装置である。
【0012】
例えば、図1の二軸混練押出機S1の原料供給部Taに樹脂材料(ペレット)を添加し、混合しながら輸送(搬送)し、混練物(溶融樹脂)をTダイS2のスリットから押し出しつつ、原反冷却装置S3で冷却することで、樹脂シートを形成する。
【0013】
次いで、上記樹脂シートを縦延伸装置(MD延伸装置)S4により縦方向に引き延ばし、さらに、横延伸装置(TD延伸装置)S5により横方向に引き延ばす。引き延ばした後、熱固定を行い、延伸時の内部応力を緩和して、巻取り装置S6により、横延伸装置(TD延伸装置)S5から搬送された薄膜を巻き取る。
【0014】
上記のように、樹脂シートはMD及びTDに引き延ばされる。ここで、MD(Machine Direction)は、樹脂シートの搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)は、樹脂シートの搬送方向と交差する方向である。
【0015】
そこで、以下の説明では、MDを「搬送方向」又は「縦方向」と呼び、TDを「横方向」と呼ぶ場合がある。MDとTDとは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。
【0016】
このような製造システムにより、樹脂フィルムを製造することができる。すなわち、縦延伸装置(MD延伸装置)S4は、樹脂材料から樹脂フィルムを製造するためのシステムを構成する装置の1つとして用いられる。
【0017】
<縦延伸装置の構成>
本実施の形態に係る縦延伸装置は、上記説明した縦延伸装置(MD延伸装置)S4として使用することができる。すなわち、二軸混練押出機S1で樹脂シートが成形され、この得られた樹脂シートを縦方向(MD)に延伸する装置である。本実施の形態に係る縦延伸装置について、以下、その一構成例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る縦延伸装置1の構成を示す模式図である。縦延伸装置1は、加熱ロール2、加熱ロール3及び冷却ロール4を含む複数のロールと、ヒートポンプ5と、を有している。
【0019】
加熱ロール2は、ヒートポンプ5により温度を上昇させる(加熱される)ロールであり、ヒートポンプ5から熱エネルギーが放出されるロールと言うこともできる。この加熱ロール2は、縦延伸装置1の予熱領域PHRに配置される。
【0020】
この加熱ロール2により、縦延伸を行うための準備として、原反冷却装置S3から供給される樹脂シート100の温度を徐々に上昇させることができる。
【0021】
加熱ロール3は、ヒートポンプ5により温度を上昇させる(加熱される)ロールであり、ヒートポンプ5から熱エネルギーが放出されるロールと言うこともできる。この加熱ロール3は、縦延伸装置1の延伸領域SRに配置される。
【0022】
この加熱ロール3により、樹脂シート100の縦延伸を行う。樹脂シート100を延伸可能な温度にまで上昇させた状態で、前段に設けられた加熱ロール3よりも後段に設けられた加熱ロール3の回転速度を速くすることで、樹脂シート100を縦方向(進行方向)に延伸させることができる。ここで、加熱ロール2と加熱ロール3は、いずれもヒートポンプにより加熱される加熱ロールではあるが、加熱ロール3の温度は加熱ロール2よりも高い温度に設定される。
【0023】
冷却ロール4は、ヒートポンプ5により温度を低下させる(冷却される)ロールであり、ヒートポンプ5に熱エネルギーを吸収されるロールと言うこともできる。この冷却ロール4は、縦延伸装置1の冷却領域CRに配置される。
【0024】
この冷却ロール4により、延伸領域SRで延伸された樹脂シート100を冷却し、樹脂を固化させて縦延伸させた樹脂シートを得ることができる。ここで十分に冷却された樹脂シートは、次いで、横延伸装置S5へ送出される。
【0025】
縦延伸装置1は、上記のように、樹脂シート100の供給方向に沿って、予熱領域PHR、延伸領域SR、冷却領域CRがこの順番に設けられている。したがって、加熱ロール2、加熱ロール3、冷却ロール4もこの順番に設けられている。
【0026】
このとき、各領域では、1以上のロールを設ければよく、図2では、3つの加熱ロール2(2a,2b,2c)、4つの加熱ロール3(3a,3b,3c,3d)及び3つの冷却ロール4(4a,4b,4c)を設けた場合を例示している。各領域に複数のロールを設けることで、樹脂シートの温度調整を段階的に行うことができ、樹脂シートの縦延伸の操作を安定して行うことができる。
【0027】
ヒートポンプ5は、作動媒体を循環させ、作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させる装置である。ヒートポンプ5は、例えば、加熱ロール2及び冷却ロール4と流路を介して繋がっている。より特定的には、ヒートポンプ5と冷却ロール4とは、熱媒体の流路である流路51を介して繋がっている。同様に、ヒートポンプ5と加熱ロール3とは、他の一つの熱媒体の流路である流路52を介して繋がっている。ヒートポンプ5については、以下に改めて説明する。
【0028】
<<ヒートポンプの構成>>
図3は、ヒートポンプ5の構成を示す模式図である。ヒートポンプ5は、作動媒体Wが循環する環状流路50を有している。作動媒体Wには、環境負荷が少ない自然冷媒(二酸化炭素)が用いられている。もっとも、作動媒体Wは特定の流体に限定されない。例えば、空気、水、アンモニア、炭化水素なども作動媒体Wとして用いることができる。
【0029】
環状流路50上には、熱交換器61,62と、圧縮機63と、膨張弁64と、が設けられている。ヒートポンプ5は、少なくとも圧縮機63及び膨張弁64を制御する制御部65をさらに有している。
【0030】
熱交換器61は、熱媒体H1の流路51を介して冷却ロール4と繋がっている。熱交換器62は、熱媒体H2の流路52を介して加熱ロール2と繋がっている。
【0031】
熱媒体H1,H2には水が用いられている。もっとも、熱媒体H1,H2は特定の流体に限定されない。例えば、油、エチレングリコール等も熱媒体H1,H2として用いることができる。
【0032】
なお、環状流路50及び流路51,52は、パイプ、ホース等の管部材によって形成されている。また、環状流路50及び流路51,52には、バッファ部、蛇行部などが必要に応じて設けられる。
【0033】
<<ヒートポンプの動作>>
環状流路50を流れる作動媒体Wは、熱交換器61、圧縮機63、熱交換器62、膨張弁64を循環する。
【0034】
流路51を流れる熱媒体H1は、熱交換器61と冷却ロール4との間を往復し、冷却ロール4から熱を吸収する。例えば、熱媒体H1は、流路51を通って熱交換器61から冷却ロール4に移動する。冷却ロール4に移動した熱媒体H1は、冷却ロール4の内部又は周囲に設けられている冷却管を通過する間に周囲の熱を吸収する。この結果、冷却ロール4が冷却される。冷却管を通過した熱媒体H1は、流路51を通って熱交換器61に移動する(戻る)。
【0035】
流路52を流れる熱媒体H2は、熱交換器62と加熱ロール2との間を往復し、加熱ロール2に熱を放出する。例えば、熱媒体H2は、流路52を通って熱交換器62から加熱ロール2に移動する。加熱ロール2に移動した熱媒体H2は、加熱ロール2の内部又は周囲に設けられている加熱管を通過する間に周囲に熱を放出する。この結果、加熱ロール2が加熱される。加熱管を通過した熱媒体H2は、流路52を通って熱交換器62に移動する(戻る)。
【0036】
熱交換器61は、作動媒体Wと熱媒体H1との熱交換を行う。別の見方をすると、熱媒体H1が冷却ロール4から吸収した熱が熱交換器61内で作動媒体Wへ移動する。すると、熱媒体H1の温度は低下し、作動媒体Wの温度及び圧力は上昇する。
【0037】
言い換えれば、熱媒体H1は熱交換器61内で放熱し、作動媒体Wは熱交換器61内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は気化(蒸発)する。つまり、熱交換器61は、熱媒体H1との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を気化させる蒸発器である。
【0038】
放熱によって温度が低下した熱媒体H1は、冷却ロール4に移動して再び熱を吸収する。一方、吸熱によって温度及び圧力が上昇した作動媒体Wは、圧縮機63に流入する。
【0039】
圧縮機63は、流入した作動媒体Wを圧縮する。圧縮機63から流出した高温高圧の作動媒体Wは、熱交換器62に流入する。
【0040】
熱交換器62は、作動媒体Wと熱媒体H2との熱交換を行う。別の見方をすると、圧縮機63によって圧縮された作動媒体Wの熱が熱交換器62内で熱媒体H2へ移動する。すると、作動媒体Wの温度及び圧力は低下し、熱媒体H2の温度は上昇する。
【0041】
言い換えれば、作動媒体Wは熱交換器62内で放熱し、熱媒体H2は熱交換器62内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は液化(凝縮)する。つまり、熱交換器62は、熱媒体H2との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を液化させる凝縮器である。
【0042】
吸熱によって温度が上昇した熱媒体H2は、加熱ロール2に移動して再び熱を放出する。一方、放熱によって温度及び圧力が低下した作動媒体Wは、膨張弁64に流入する。
【0043】
膨張弁64は、流入した作動媒体Wを膨張させ、温度及び圧力を低下させる。膨張弁64から流出した低温低圧の作動媒体Wは、熱交換器61に流入し、熱媒体H1から再び熱を吸収する。
【0044】
ヒートポンプ5では、上記のような熱交換サイクルが繰り返され、作動媒体Wと熱媒体H1,H2との間で熱が移動する。この結果、熱媒体H1によって冷却ロール4が冷却され、冷却ロール4の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。また、熱媒体H2によって加熱ロール2が冷却され、加熱ロール2の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。
【0045】
ここで、複数個の加熱ロール2の温度を調整する場合には、流路52を分岐させてそれぞれの加熱ロール2に熱媒体H2を移動させるようにすればよく、複数個の冷却ロール4の温度を調整する場合には、流路51を分岐させてそれぞれの冷却ロール4に熱媒体H1を移動させるようにすればよい。
【0046】
また、制御部65は、ヒートポンプ5の熱交換器61,62で、熱媒体H1,H2が、それぞれ設定温度又は設定温度範囲内となるように温調制御を行う。より特定的には、この制御部65は、圧縮機63による作動媒体Wの圧縮及び膨張弁64による作動媒体Wの膨張の度合いを制御して、上記のように動作を制御し、熱媒体H1,H2の温度を制御する。
【0047】
<縦延伸方法>
次に、本実施の形態に係る縦延伸方法について説明する。以下、上記縦延伸装置1を用いる場合を例に、図2及び図3を参照しながら、本実施の形態に係る縦延伸方法を説明する。
【0048】
本実施の形態に係る縦延伸方法は、まず、縦延伸を行う対象となる樹脂シート100を、複数のロールが設けられている縦延伸装置1に供給する((a)工程)。
【0049】
樹脂シート100は、例えば、押出成形システムの原反冷却装置S3から得られた樹脂シートである。この樹脂シート100を、縦延伸装置1に供給し、上記説明した予熱領域PHR、延伸領域SR、冷却領域CRに順番に移送される。
【0050】
次いで、(a)工程の後、該樹脂シート100を縦延伸装置1により縦方向に延伸する((b)工程)。
【0051】
この工程では、まず、樹脂シート100は、予熱領域PHRに導入され、この領域に設けられた加熱ロール2により加熱(予熱)される。この加熱ロール2により、縦延伸を行うための準備として、樹脂シート100の温度を徐々に上昇させる。
【0052】
加熱ロール2により加熱(予熱)された樹脂シートは、次いで、延伸領域SRに導入され、加熱ロール3により加熱されつつ、縦延伸が行われる。加熱ロール3は、樹脂シート100を延伸可能な温度にまで上昇させた状態で、前段に設けられた加熱ロール3よりも後段に設けられた加熱ロール3の回転速度を速くするように動作させる。このような動作を行うことで、樹脂シート100は縦方向(進行方向)に延伸される。
【0053】
そして、延伸領域SRで延伸された樹脂シート100は、次いで、冷却領域CRに導入され、冷却ロール4により冷却されて、固化する。冷却ロール4により、延伸領域SRで延伸された樹脂シート100を縦延伸された状態で固化でき、縦延伸された樹脂シートが得られる。この冷却ロール4は、縦延伸された樹脂シート100を冷却するロールと言うこともできる。ここで十分に冷却された樹脂シートは、次いで、横延伸装置S5へ送出される。
【0054】
そして、本実施の形態に係る縦延伸装置1では、ヒートポンプ5により、例えば、加熱ロール2及び冷却ロール4の温度を設定温度又は設定温度範囲内に調整する温調制御を含む制御方法が実施される。温調制御が行われると、ヒートポンプ5の冷却能力又は加熱能力が調節され、加熱ロール2及び冷却ロール4の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。
【0055】
この設定温度は適宜設定でき、例えば、冷却ロール4の温度を20~40℃の範囲内の温度に維持し、加熱ロール2の温度を冷却ロール4の温度よりも高い70~90℃の範囲内の温度に維持するように、温調制御を行うことができる。
【0056】
図4は、ヒートポンプ5の制御部65による温調制御の手順の一例を示すフローチャートである。温調制御が開始されると、ステップS10~S15を含む加熱ロール温調制御及びステップS20~S25を含む冷却ロール温調制御、の少なくとも一つが実行される。
【0057】
<<加熱ロール温調制御>>
ステップS10が実行されると、加熱ロール2の温度監視が開始される。温度監視は、加熱ロール2の内部又は周囲に設けられている温度センサの検出結果に基づいて行われる。
【0058】
ステップS10に続くステップS11では、加熱ロール2の温度が設定温度範囲内であるか否かが判定される。例えば、加熱ロール2の温度が70~90℃の範囲であるか否かが判定される。ステップS11で加熱ロール2の温度が設定温度範囲内であると判定されると、ステップS10に戻って温度監視が継続される。
【0059】
一方、ステップS11で加熱ロール2の温度が設定温度範囲の下限値を下回っていると判定されると、ステップS12が実行され、ヒートポンプ5の運転が開始される。より特定的には、ヒートポンプ5の制御部65は、圧縮機63及び膨張弁64を作動させて、加熱ロール2を加熱する。
【0060】
ステップS12に続くステップS13では、加熱ロール2の温度が設定温度範囲内であるか否かが再び判定される。ステップS13で加熱ロール2の温度が設定温度範囲内であると判定されると、ステップS10に戻って温度監視が継続される。
【0061】
一方、ステップS13で加熱ロール2の温度が設定温度範囲の下限値を下回っていると判定されると、ステップS14が実行され、ヒートポンプ5の加熱能力が増強される。より特定的には、制御部65は、加熱ロール2に対するヒートポンプ5の加熱能力が増強されるように、圧縮機63及び膨張弁64を制御する。
【0062】
ステップS14に続くステップS15では、加熱ロール2の温度が設定温度範囲内であるか否かが再び判定される。ステップS15で加熱ロール2の温度が設定温度範囲内であると判定されると、ステップS10に戻って温度監視が継続される。
【0063】
一方、ステップS15で加熱ロール2の温度が設定温度範囲の下限値を下回っていると判定されると、ステップS14に戻り、加熱ロール2に対するヒートポンプ5の加熱能力がさらに増強される。
【0064】
なお、ステップS13又はステップS15からステップS10に戻る前に、ヒートポンプ5の運転を停止させたり、ヒートポンプ5の加熱能力を低下させたりしてもよい。
【0065】
<<冷却ロール温調制御>>
ステップS20が実行されると、冷却ロール4の温度監視が開始される。温度監視は、冷却ロール4の内部又は周囲に設けられている温度センサの検出結果に基づいて行われる。
【0066】
ステップS20に続くステップS21では、冷却ロール4の温度が設定温度を下回っているか否かが判定される。例えば、冷却ロール4の温度が20~40℃の範囲であるか否かが判定される。ステップS21で冷却ロール4の温度が設定温度を下回っていると判定されると、ステップS20に戻って温度監視が継続される。
【0067】
一方、ステップS21で冷却ロール4の温度が設定温度を上回っていると判定されると、ステップS22が実行され、ヒートポンプ5の運転が開始される。より特定的には、ヒートポンプ5の制御部65は、圧縮機63及び膨張弁64を作動させて、冷却ロール4を冷却する。
【0068】
ステップS22に続くステップS23では、冷却ロール4の温度が設定温度を下回っているか否かが再び判定される。ステップS23で冷却ロール4の温度が設定温度を下回っていると判定されると、ステップS20に戻って温度監視が継続される。
【0069】
一方、ステップS23で冷却ロール4の温度が設定温度を上回っていると判定されると、ステップS24が実行され、ヒートポンプ5の冷却能力が増強される。より特定的には、制御部65は、冷却ロール4に対するヒートポンプ5の冷却能力が増強されるように、圧縮機63及び膨張弁64を制御する。
【0070】
ステップS24に続くステップS25では、冷却ロール4の温度が設定温度を下回っているか否かが再び判定される。ステップS25で冷却ロール4の温度が設定温度を下回っていると判定されると、ステップS20に戻って温度監視が継続される。
【0071】
一方、ステップS25で冷却ロール4の温度が設定温度を上回っていると判定されると、ステップS24に戻り、冷却ロール4に対するヒートポンプ5の冷却能力がさらに増強される。
【0072】
なお、ステップS23又はステップS25からステップS20に戻る前に、ヒートポンプ5の運転を停止させたり、ヒートポンプ5の冷却能力を低下させたりしてもよい。
【0073】
上記のように、本実施の形態に係る縦延伸装置1では、加熱ロール2の加熱と冷却ロール4の冷却とがヒートポンプ5による熱交換を利用して行われている。つまり、縦延伸装置1では、熱エネルギーが効率良く利用されており、省エネルギー化が実現されている。別の見方をすると、縦延伸装置1は、加熱ロール2及び冷却ロール4をそれぞれ個別に温度管理している他の縦延伸装置に比べて、エネルギーの利用効率が高い。
【0074】
ここで、例えば、加熱ロール及び冷却ロールに関する設定温度又は設定温度範囲は、適宜変更することができる。作動媒体Wと熱媒体H1,H2とは、同一の流体であってもよく、異なる流体であってもよい。また、一つの熱媒体と他の一つの熱媒体とが異なっていてもよい。
【0075】
この温調制御の一つの変形例としては、流路51,52の少なくとも一つに、熱媒体の流量を制御可能なバルブが設けられる。流路51,52に設けられたバルブは、温度センサによって検出される加熱対象又は冷却対象の温度に応じて開閉されたり、開度が変更されたりする。例えば、この変形例では、冷却ロール4の温度が閾値を上回ると、流路51に設けられたバルブが開かれ、閾値を下回るとバルブが閉じられる。
【0076】
また、流路51,52に設けられたバルブは、ヒートポンプ5の冷却能力及び加熱能力の調節のためにも利用され得る。例えば、この変形例では、図4に示されているステップS24で、流路51に設けられているバルブの開度が変更される。
【0077】
上記のようなバルブの制御は、ヒートポンプ5の制御部65によって行われてもよく、制御部65とは別の他の制御部によって行われてもよい。
【0078】
[実施の形態2]
<縦延伸装置の構成>
本実施の形態に係る縦延伸装置は、実施の形態1と同様に、上記説明した縦延伸装置(MD延伸装置)S4として使用することができる。すなわち、二軸混練押出機S1で樹脂シートが成形され、この得られた樹脂シートを縦方向(MD)に延伸する装置である。また、本実施の形態に係る縦延伸装置は、加熱ロール2、加熱ロール3及び冷却ロール4を含む複数のロールと、ヒートポンプ5と、を有する点で、実施の形態1と同様の構成を有している。ここで、加熱ロール2、加熱ロール3及び冷却ロール4は、実施の形態1と同一の構成であるため説明を省略し、以下、ヒートポンプ5について説明する。
【0079】
<<ヒートポンプの構成>>
図5は、本実施の形態に係るヒートポンプ5の構成を示す模式図である。ヒートポンプ5は、作動媒体Wが循環する環状流路50を有している。作動媒体Wには、環境負荷が少ない自然冷媒(二酸化炭素)が用いられている。もっとも、作動媒体Wは特定の流体に限定されない。例えば、空気、水、アンモニア、炭化水素なども作動媒体Wとして用いることができる。
【0080】
環状流路50上には、熱交換器61,62と、圧縮機63と、膨張弁64と、が設けられている。ヒートポンプ5は、少なくとも圧縮機63及び膨張弁64を制御する制御部65をさらに有している。
【0081】
本実施の形態では、複数の冷却ロール4(4a~4c)に対応して複数個の熱交換器61(61a~61c)が設けられ、複数の加熱ロール2(2a~2c)に対応して複数個の熱交換器62(62a~62c)が設けられており、さらに、各熱交換器の間には、圧縮機63又は膨張弁64が設けられている点が、実施の形態1とは異なっている。なお、これら各部材の基本的な動作は実施の形態1で説明した動作と同一である。また、加熱ロール2及び冷却ロール4はそれぞれ3個の場合を例示しているが、それぞれ独立に、2個又は4個以上とすることもできる。
【0082】
ここで、熱交換器61aは、熱媒体H1の流路51aを介して冷却ロール4aと繋がっている。熱交換器61bは、熱媒体H1の流路51bを介して冷却ロール4bと繋がっている。熱交換器61cは、熱媒体H1の流路51cを介して冷却ロール4cと繋がっている。熱交換器62aは、熱媒体H2の流路52aを介して加熱ロール2aと繋がっている。熱交換器62bは、熱媒体H2の流路52bを介して加熱ロール2bと繋がっている。熱交換器62cは、熱媒体H2の流路52cを介して加熱ロール2cと繋がっている。
【0083】
熱媒体H1,H2には水が用いられている。もっとも、熱媒体H1,H2は特定の流体に限定されない。例えば、油、エチレングリコール等も熱媒体H1,H2として用いることができる。
【0084】
なお、環状流路50、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)は、パイプ、ホース等の管部材によって形成されている。また、環状流路50、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)には、バッファ部、蛇行部などが必要に応じて設けられる。
【0085】
<<ヒートポンプの動作>>
環状流路50を流れる作動媒体Wは、熱交換器62a、熱交換器61a、熱交換器62b、熱交換器61b、熱交換器62c、熱交換器61cを循環し、各熱交換器の間には、圧縮機63又は膨張弁64が設けられている。
【0086】
流路51(51a~51c)を流れる熱媒体H1は、それぞれ熱交換器61(61a~61c)と冷却ロール4(4a~4c)との間を往復し、冷却ロール4から熱を吸収する。例えば、熱媒体H1は、流路51(51a~51c)を通って熱交換器61(61a~61c)から冷却ロール4(4a~4c)に移動する。冷却ロール4(4a~4c)に移動した熱媒体H1は、冷却ロール4(4a~4c)の内部又は周囲に設けられている冷却管を通過する間に周囲の熱を吸収する。この結果、冷却ロール4(4a~4c)が冷却される。冷却管を通過した熱媒体H1は、流路51(51a~51c)を通って熱交換器61(61a~61c)に移動する(戻る)。
【0087】
流路52(52a~52c)を流れる熱媒体H2は、それぞれ熱交換器62(62a~62c)と加熱ロール2(2a~2c)との間を往復し、加熱ロール2(2a~2c)に熱を放出する。例えば、熱媒体H2は、流路52(52a~52c)を通って熱交換器62(62a~62c)から加熱ロール2(2a~2c)に移動する。加熱ロール2(2a~2c)に移動した熱媒体H2は、加熱ロール2(2a~2c)の内部又は周囲に設けられている加熱管を通過する間に周囲に熱を放出する。この結果、加熱ロール2(2a~2c)が加熱される。加熱管を通過した熱媒体H2は、流路52(52a~52c)を通って熱交換器62(62a~62c)に移動する(戻る)。
【0088】
熱交換器61(61a~61c)は、作動媒体Wと熱媒体H1との熱交換を行う。別の見方をすると、熱媒体H1が冷却ロール4(4a~4c)から吸収した熱が熱交換器61(61a~61c)内で作動媒体Wへ移動する。すると、熱媒体H1の温度は低下し、作動媒体Wの温度及び圧力は上昇する。
【0089】
言い換えれば、熱媒体H1は熱交換器61(61a~61c)内で放熱し、作動媒体Wは熱交換器61(61a~61c)内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は気化(蒸発)する。つまり、熱交換器61(61a~61c)は、熱媒体H1との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を気化させる蒸発器である。
【0090】
放熱によって温度が低下した熱媒体H1は、冷却ロール4(4a~4c)に移動して再び熱を吸収する。一方、吸熱によって温度及び圧力が上昇した作動媒体Wは、圧縮機63に流入する。
【0091】
圧縮機63は、流入した作動媒体Wを圧縮する。圧縮機63から流出した高温高圧の作動媒体Wは、熱交換器62(62a~62c)に流入する。
【0092】
熱交換器62(62a~62c)は、作動媒体Wと熱媒体H2との熱交換を行う。別の見方をすると、圧縮機63によって圧縮された作動媒体Wの熱が熱交換器62(62a~62c)内で熱媒体H2へ移動する。すると、作動媒体Wの温度及び圧力は低下し、熱媒体H2の温度は上昇する。
【0093】
言い換えれば、作動媒体Wは熱交換器62(62a~62c)内で放熱し、熱媒体H2は熱交換器62(62a~62c)内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は液化(凝縮)する。つまり、熱交換器62(62a~62c)は、熱媒体H2との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を液化させる凝縮器である。
【0094】
吸熱によって温度が上昇した熱媒体H2は、加熱ロール2(2a~2c)に移動して再び熱を放出する。一方、放熱によって温度及び圧力が低下した作動媒体Wは、膨張弁64に流入する。
【0095】
膨張弁64は、流入した作動媒体Wを膨張させ、温度及び圧力を低下させる。膨張弁64から流出した低温低圧の作動媒体Wは、熱交換器61(61a~61c)に流入し、熱媒体H1から再び熱を吸収する。
【0096】
本実施の形態に係るヒートポンプ5では、上記のような熱交換サイクルが繰り返され、作動媒体Wと熱媒体H1,H2との間で熱が移動する。この結果、熱媒体H1によって冷却ロール4(4a~4c)が冷却され、冷却ロール4(4a~4c)の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。また、熱媒体H2によって加熱ロール2(2a~2c)が冷却され、加熱ロール2(2a~2c)の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。
【0097】
また、制御部65は、ヒートポンプ5の熱交換器61(61a~61c)、62(62a~62c)で、熱媒体H1及び熱媒体H2が、それぞれ所望の温度となるように温調制御を行う。より特定的には、この制御部65は、圧縮機63による作動媒体Wの圧縮及び膨張弁64による作動媒体Wの膨張の度合いを制御して、上記のように動作を制御し、熱媒体H1及び熱媒体H2の温度を制御する。
【0098】
<縦延伸方法>
次に、本実施の形態に係る縦延伸方法について説明する。以下、上記縦延伸装置1を用いる場合を例に、図2及び図5を参照しながら、本実施の形態に係る縦延伸方法を説明する。
【0099】
本実施の形態に係る縦延伸方法は、基本的には、実施の形態1で説明した縦延伸方法と同一の操作により行われる。すなわち、まず、縦延伸を行う対象となる樹脂シート100を、複数のロールが設けられている縦延伸装置1に供給する((a)工程)。次いで、(a)工程の後、該樹脂シート100を縦延伸装置1により縦方向に延伸する((b)工程)。
【0100】
ここで、本実施の形態では、ヒートポンプ5として図5に示した構成のヒートポンプを用いる点が実施の形態1とは異なるため、以下、この点を中心に説明する。
【0101】
このヒートポンプ5では、作動媒体Wが、熱交換器62a、膨張弁64、熱交換器61a、圧縮機63、熱交換器62b、膨張弁64、熱交換器61b、圧縮機63、熱交換器62c、膨張弁64、熱交換器61c、圧縮機63、の順番に経由して環状流路50内を循環される。そして、環状流路50を1回循環させる間に、加熱と冷却のサイクルが実施され、このサイクルを3回実施できるようになっている。なお、このサイクルは、その温調制御の対象となるロールの数によって、2サイクルとすることもでき、4サイクル以上とすることもできる。
【0102】
上記説明したように、加熱ロール2(2a~2c)及び冷却ロール4(4a~4c)に対し、各ロールに対応して熱交換器61(61a~61c)、熱交換器62(62a~62c)が設けられており、これらを個別に制御できる。すなわち、加熱ロール2(2a~2c)の中でも異なる温度設定を行うことができ、冷却ロール4(4a~4c)の中でも異なる温度設定を行うことができる。このように、ロール毎に温調制御が可能となっているため、樹脂シートの延伸を安定して実施することができる。
【0103】
加熱ロール温調制御は、複数個の加熱ロール2(2a~2c)のそれぞれのロールに対して行うようにし、冷却ロール温調制御は、複数個の冷却ロール4(4a~4c)のそれぞれのロールに対して行うようにすればよい。これらの温調制御は、制御部65により、圧縮機63及び膨張弁64を制御することにより、各熱交換器における熱媒体H1,H2の温度を制御する。各熱交換器における温調制御は、実施の形態1で説明したものと同一のステップにより実施できる。
【0104】
図5には、作動媒体Wの温度の制御例として、具体的な温度を示している。ここでは、膨張弁64から熱交換器61(61a~61c)に流入する作動媒体Wの温度を25℃、熱交換器61(61a~61c)から圧縮機63に供給する作動媒体Wの温度を40℃、圧縮機63から熱交換器62(62a~62c)に流入する作動媒体Wの温度を70℃、熱交換器62(62a~62c)から膨張弁64に供給する作動媒体Wの温度を40~45℃、の例を示している。ただし、これは一例であり、本実施の形態がこの温度に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0105】
[変形例1]
<縦延伸装置の構成>
本変形例に係る縦延伸装置は、実施の形態2の縦延伸装置に対して、ヒートポンプ5の構成が異なっている例であり、図6に示したように、ここで用いられるヒートポンプ5は、熱交換器61(61a~61c)と加熱ロール2(2a~2c)との間に、さらに加熱温度調整部71(71a~71c)が追加して設けられている。この加熱温度調整部71(71a~71c)以外の構成は同一であるため、以下、この点を中心に説明する。
本変形例で用いられる加熱温度調整部71(71a~71c)について、以下、説明する。
【0106】
図6に示したように、温度調整部71(71a~71c)は、熱交換器62(62a~62c)と加熱ロール2(2a~2c)の間に設けられている。すなわち、熱交換器62(62a~62c)と流路52(52a~52c)で接続されており、加熱ロール2(2a~2c)と流路72(72a~72c)で接続されている。流路52(52a~52c)は、上記説明したように熱媒体H2が循環する流路であり、流路72(72a~72c)は、熱媒体H3が循環する流路である。
【0107】
ここで、加熱温度調整部71(71a~71c)は、熱媒体H3が熱媒体H2の熱を吸収し、熱媒体H3が加熱される作用を奏し、この熱媒体H3を、流路72(72a~72c)を循環させることで、加熱ロール2(2a~2c)の温度を上昇(加熱)させる。なお、この加熱温度調整部71(71a~71c)は、単なる熱交換ではなく、この加熱温度調整部71(71a~71c)内部で、熱媒体H3が目的の温度となるまで、熱媒体H2の熱を吸収する構成となっている。そのため、加熱ロール2(2a~2c)に対して、より高温まで加熱することができる。
【0108】
ここで用いられる熱媒体H3は、上記説明した熱媒体H1,H2と同様の熱媒体を用いることができるが、より高温に加熱する構成であるため、熱媒体H2よりも高温で動作可能な熱媒体を用いることが好ましい。
【0109】
<縦延伸方法>
次に、本変形例に係る縦延伸方法について説明する。本変形例に係る縦延伸方法は、基本的には、実施の形態2で説明した縦延伸方法と同一の操作により行われる。ここで、本変形例では、上記のように、ヒートポンプ5として図6に示した構成のヒートポンプを用いる点が実施の形態2とは異なる。そのため、以下、この点を中心に説明する。
【0110】
環状流路50に設けられている熱交換器61(61a~61c)、熱交換器62(62a~62c)、圧縮機63及び膨張弁64の動作、作用は実施の形態2と同一である。一方、本変形例では、熱交換器62(62a~62c)は、流路52(52a~52c)を介して加熱温度調整部71(71a~71c)と接続され、この加熱温度調整部71(71a~71c)は、流路72(72a~72c)を介して加熱ロール2(2a~2c)と接続されている。
【0111】
そのため、流路52(52a~52c)を流通する熱媒体H2は、加熱ロール2(2a~2c)ではなく、熱媒体H3に熱を放出する。逆に言えば、熱媒体H3は、熱媒体H2の熱を吸収する。
【0112】
ここで、加熱温度調整部71(71a~71c)内部で、熱媒体H3が目的の温度となるまで、熱媒体H2の熱を吸収する構成となっている。そして、所望の温度にまで加熱された熱媒体H3は、流路72aを循環し、加熱ロール2aの温度を上昇(加熱)させる。そのため、加熱ロール2(2a~2c)に対して、より高温まで加熱することができる。また、加熱温度調整部71(71a~71c)は、それぞれ独立して加熱温度を設定できるようになっている。
【0113】
このような構成とした場合、熱媒体H3をより高温に加熱できるため、例えば、加熱ロール3の温調制御に使用することもできる。
【0114】
[変形例2]
<縦延伸装置の構成>
本変形例に係る縦延伸装置は、実施の形態2の縦延伸装置に対して、ヒートポンプ5の構成が異なっている例であり、図7に示したように、ここで用いられるヒートポンプ5は、さらに、流路51(51a~51c)と流路52(52a~52c)とを接続する流路81~86が設けられており、この流路81~86は、それぞれ、その流路を流通する熱媒体の流量を調整する流量調整バルブV1~V6を備えている。また、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)には、その内部を流通する熱媒体H1,H2の温度を測定できる温度センサTS1~TS6が設けられている。なお、ここで流路81~86は実線で簡易的に表している。
【0115】
流路81は、流路51cを流れる熱媒体H1を流路52aへと移動できるようになっており、流路82は、流路52aを流れる熱媒体H2を流路51cへと移動できるようになっている。流路81には流量調整バルブV1が、流路82には流量調整バルブV2が設けられている。
【0116】
流路83は、流路51aを流れる熱媒体H1を流路52cへと移動できるようになっており、流路84は、流路52cを流れる熱媒体H2を流路51aへと移動できるようになっている。流路83には流量調整バルブV3が、流路84には流量調整バルブV4が設けられている。
【0117】
流路85は、流路51bを流れる熱媒体H1を流路52bへと移動できるようになっており、流路86は、流路52bを流れる熱媒体H2を流路51bへと移動できるようになっている。流路85には流量調整バルブV5が、流路86には流量調整バルブV6が設けられている。
【0118】
流量調整バルブV1~V6は、流路81~86における熱媒体の移動量を調整するバルブである。
【0119】
すなわち、上記した構成により、熱媒体H1と熱媒体H2とを相互に入れ替えることができる。これにより、温度の高い熱媒体が流れる流路52から温度の低い熱媒体が流れる流路51へと熱媒体を移動させたり、温度の低い熱媒体が流れる流路51から温度の高い熱媒体が流れる流路52へと熱媒体を移動させたりできる。この熱媒体の移動によって、流路51及び流路52を流通する熱媒体の温度を調整できる。
【0120】
なお、本変形例では、上記したように熱媒体H1と熱媒体H2とが、相互に混合されることになるため、同じ種類の熱媒体を用いる。
【0121】
また、温度センサTS1~TS6は、上記の通り、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)に設けられ、その内部を流通する熱媒体H1,H2の温度を測定できる温度センサである。この温度センサTS1~TS6により、熱媒体H1,H2の温度が設定温度を外れた場合、流路81~86を通じて温度の異なる熱媒体を混合するように動作させることで、熱媒体の温度を制御することができる。
【0122】
なお、本変形例では、高温の熱媒体H2と低温の熱媒体H1とを混合することができるようにすればよく、それぞれ接続する配管51と52の組合せは、上記組み合わせに限られず、適宜変更することができる。
【0123】
<縦延伸方法>
次に、本変形例に係る縦延伸方法について説明する。本変形例に係る縦延伸方法は、基本的には、実施の形態2で説明した縦延伸方法と同一の操作により行われる。ここで、本変形例では、ヒートポンプ5として図7に示した構成のヒートポンプを用いる点が実施の形態2とは異なるため、以下、この点を中心に説明する。
【0124】
環状流路50に設けられている熱交換器61(61a~61c)、熱交換器62(62a~62c)、圧縮機63及び膨張弁64の動作、作用は実施の形態2と同一である。一方、本変形例では、さらに、流路81~86、流量調整バルブV1~V6及び温度センサTS1~TS6が設けられている。
【0125】
通常の動作においては、流量調整バルブV1~V6は閉められており、熱媒体の流通はしない。そのため、このときのヒートポンプの動作は実施の形態2と同一となる。ここで、例えば、温度センサTS1で、熱媒体H2の温度が設定温度よりも高くなったことが検知された場合、本変形例では、流量調整バルブV1を開け、熱媒体H1を流路51cから流路81を介して流路52aに移送する。このようにすることで、高温の熱媒体H2に低温の熱媒体H1が混合され、流路52aを流通する熱媒体の温度を低下させて、設定温度内に入るように調整される。
【0126】
なお、この熱媒体の移送に伴い、流路51aと流路51cとの流量が変動するため、同時に流量調整バルブV2を開け、熱媒体H2を流路52aから流路82を介して流路51cに移送することが好ましい。このとき、流路51cの熱媒体の温度は高められることになるが、熱媒体H1の温度が設定温度範囲を満たすようにする。
【0127】
また、逆に、温度センサTS2で、熱媒体H1の温度が設定温度よりも低くなったことが検知された場合、本変形例では、流量調整バルブV2を開け、熱媒体H2を流路52aから流路82を介して流路51cに移送する。このようにすることで、低温の熱媒体H1に高温の熱媒体H2が混合され、流路51cを流通する熱媒体の温度を上昇させて、設定温度範囲内に入るように調整される。
【0128】
なお、この熱媒体H1,H2の移送に伴い、流路51cと流路51aとの流量が変動するため、同時に流量調整バルブV1を開け、熱媒体H1を流路51cから流路81を介して流路52aに移送することが好ましい。このとき、流路52aの熱媒体の温度は下げられることになるが、熱媒体H2の温度が設定温度範囲を満たすようにする。
【0129】
上記動作は、流路51aと流路52cを接続する流路83,84、流路52bと流路51bを接続する流路85,86でも、同様に行うことができる。
【0130】
なお、上記説明の繰り返しになるが、本変形例では、高温の熱媒体H2と低温の熱媒体H1とを混合することができるようにすればよく、それぞれ接続する配管51と52の組合せは、上記組み合わせに限られず、適宜変更することができる。
【0131】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0132】
1…縦延伸装置、2…加熱ロール、3…加熱ロール、4…冷却ロール、5…ヒートポンプ、50…環状流路、51,52…流路、61,62…熱交換器、63…圧縮機、64…膨張弁、65…制御部、100…樹脂シート、CR…冷却領域、H1,H2…熱媒体、PHR…予熱領域、SR…延伸領域、W…作動媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7