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特開2024-164654押出成形機及び押出成形機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164654
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】押出成形機及び押出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/275 20190101AFI20241120BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20241120BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20241120BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20241120BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B29C48/275
B29C48/88
B29C48/80
F25B30/02 Z
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080297
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 亮
(72)【発明者】
【氏名】菅原 貴弘
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AK01
4F207AK02
4F207AK13
4F207AM23
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK43
4F207KK64
4F207KL84
4F207KM14
4F207KM16
(57)【要約】
【課題】エネルギーの利用効率を高め、省エネルギー化が実現することが可能な押出成形機及び押出成形機の制御方法を提供する
【解決手段】一実施の形態の押出成形機1は、作動媒体を循環させ、作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプ5を有する。ヒートポンプ5は、作動媒体を膨張させる膨張弁と、膨張弁で膨張された作動媒体と、シリンダ21から熱を吸収した熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、熱交換器で熱交換された作動媒体を圧縮する圧縮機と、圧縮機によって圧縮された作動媒体と、ロール4に熱を放出した熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を加熱して溶融させるシリンダと、前記シリンダの内部で回転し、前記成形材料を混練するスクリュと、前記成形材料をシート状に押出すダイと、を備える押出装置と、
前記押出装置の後段に設けられ、前記ダイから得られる樹脂シートを経由させるロールと、
作動媒体を循環させ、前記作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプと、を有する押出成形機であって、
前記ヒートポンプは、
前記作動媒体を膨張させる膨張弁と、
前記膨張弁で膨張された前記作動媒体と、前記シリンダから熱を吸収した第1熱媒体との熱交換を行う第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で熱交換された前記作動媒体を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機によって圧縮された前記作動媒体と、前記ロールに熱を放出した第2熱媒体との熱交換を行う第2熱交換器と、を備える、押出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の押出成形機において、
前記第1熱交換器と熱交換を行い冷却された前記第1熱媒体を、前記シリンダに供給する供給配管と、
前記シリンダに供給され、前記シリンダの熱を吸収して気化した前記第1熱媒体を回収するバッファタンクと、
前記バッファタンクに収容された前記第1熱媒体を、前記第1熱交換器に循環させる循環配管と、を有する、押出成形機。
【請求項3】
請求項1に記載の押出成形機において、
前記ロールは、前記ダイから押出された前記樹脂シートを冷却するためのキャストロールである、押出成形機。
【請求項4】
請求項1に記載の押出成形機において、
前記ロールは、前記樹脂シートを成形する成形装置が有する加熱ロール又は前記樹脂シートを延伸する延伸装置が有する予熱ロールである、押出成形機。
【請求項5】
請求項1に記載の押出成形機において、
前記第2熱媒体は、第3熱媒体を循環させる熱媒循環装置を介して、前記ロールに間接的に熱を放出する構成を有する、押出成形機。
【請求項6】
請求項1に記載の押出成形機において、
前記ヒートポンプは、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器の少なくともいずれかを複数有するヒートポンプである、押出成形機。
【請求項7】
シリンダ、スクリュ及びダイを備える押出装置と、前記押出装置の後段に設けられたロールと、作動媒体を循環させ、前記作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプと、を有する押出成形機の制御方法であって、
前記ヒートポンプを制御して、前記シリンダ及び前記ロールの温度を調整する温調制御を行う、押出成形機の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の押出成形機の制御方法において、
前記ヒートポンプは、前記作動媒体を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で膨張された前記作動媒体を、前記シリンダから熱を吸収した第1熱媒体と熱交換を行う第1熱交換器と、前記第1熱交換機で熱交換された前記作動媒体を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された前記作動媒体と、前記ロールに熱を放出した第2熱媒体と熱交換を行う第2熱交換器と、を備える、押出成形機の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の押出成形機の制御方法において、
前記第2熱媒体は、第3熱媒体を循環させる熱媒循環装置を介して、前記ロールに間接的に熱を放出する、押出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形機及び押出成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形機は、例えば、樹脂シートの製造方法に用いられる。この樹脂シートの製造方法としては、内部にスクリュを備えたシリンダを有する押出装置により原料を溶融し、得られた溶融樹脂を押出成形用ダイ(Tダイ)からシート形状に押出すことにより製造する方法が知られている(例えば、特許文献1(特開平11-320657号公報)参照)。
【0003】
すなわち、ここで用いられる押出成形機は、原料樹脂を高温に加熱して溶融樹脂とするシリンダを備える押出装置と、溶融樹脂をシート形状に吐出するTダイと、吐出されたシート形状の溶融樹脂を冷却して固化させるロール(キャストロール)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-320657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、シリンダはその温度が設定温度を超えて高くなった場合、その温度を下げるために冷却水が供給され、一方、キャストロール等では、高温の樹脂シートの温度を低下させるための温度管理がなされている。なお、キャストロール等では冷却対象のシート状の樹脂が高温であるため、常温を基準とすれば、加熱する温度(例えば、30~100℃程度)に管理されている。
【0006】
すなわち、押出成形機内において、一方で冷却が行われ、他方で加熱が行われ、それぞれ独立して管理されており、熱エネルギーが効率的に使用されているとは言えない。そのため、エネルギーの利用効率を高め、省エネルギー化を図ることができる押出成形機及び押出成形機の温調制御方法が望まれている。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、押出成形機は、成形材料を加熱して溶融させるシリンダと、シリンダの内部で回転し、成形材料を混練するスクリュと、成形材料をシート状に押出すダイと、を備える押出装置と、押出装置の後段に設けられ、ダイから得られる樹脂シートを経由させるロールと、作動媒体を循環させ、作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させるヒートポンプと、を有する。ここで、ヒートポンプは、膨張弁と、シリンダから熱を吸収した熱媒体と熱交換を行う熱交換器と、圧縮機と、ロールに熱を放出した熱媒体と熱交換を行う熱交換器と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、エネルギーの利用効率を高め、省エネルギー化を実現することが可能な押出成形機及び押出成形機の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る押出成形機を用いる、押出成形システムの構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係る押出成形機の構成を示す模式図である。
図3】実施の形態1に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係るシリンダの温調制御を実施するための一構成例を示す模式図である。
図5】実施の形態1に係るヒートポンプによる温調制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
図7】実施の形態3に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
図8】変形例1に係るヒートポンプの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の機能を有する部材などには同一の符号を付す。また、一度説明した部材などについては、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
[実施の形態1]
<押出成形システム>
本実施の形態に係る押出成形機について説明する前に、まずは、押出成形機を備えた、押出成形システムの概略構成について説明する。図1は、押出成形機を備えた、樹脂フィルムの製造システムの一構成例を示す模式図である。
【0012】
ここで、S1は押出装置(例えば、二軸混練押出装置)、S2はダイ(金型)、S3は原反冷却装置(CAST装置)、S4は縦延伸装置(MD延伸装置)、S5は横延伸装置(TD延伸装置)、S6は巻取り装置である。
【0013】
例えば、図1の押出装置S1の原料供給部Taに樹脂材料(ペレット)を投入し、スクリュで混練しながら輸送(搬送)して、混練物(溶融樹脂)をダイS2のスリットから押し出しつつ、原反冷却装置S3で冷却することで、樹脂シートを形成する。
【0014】
次いで、上記樹脂シートを縦延伸装置(MD延伸装置)S4により縦方向に引き延ばし、さらに、横延伸装置(TD延伸装置)S5により横方向に引き延ばす。引き延ばした後、熱固定を行い、延伸時の内部応力を緩和して、巻取り装置S6により、横延伸装置(TD延伸装置)S5から搬送された薄膜を巻き取る。
【0015】
上記のように、樹脂シートはMD及びTDに引き延ばされる。ここで、MD(Machine Direction)は、樹脂シートの搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)は、樹脂シートの搬送方向と交差する方向である。
【0016】
そこで、以下の説明では、MDを「搬送方向」又は「縦方向」と呼び、TDを「横方向」と呼ぶ場合がある。MDとTDとは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。
【0017】
このような製造システムにより、樹脂フィルムを製造することができる。すなわち、押出装置S1、ダイS2及び原反冷却装置S3は、それぞれ、樹脂材料から樹脂フィルムを製造するためのシステムを構成する装置として用いられる。
【0018】
<押出成形機の構成>
本実施の形態に係る押出成形機は、例えば、上記説明した押出装置S1、ダイS2及び原反冷却装置S3として使用することができる。すなわち、これら一連の装置で樹脂シートを成形できる。本実施の形態に係る押出成形機について、以下、その一構成例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る押出成形機1の構成を示す模式図である。押出成形機1は、押出装置2、ダイ3、ロール4及びヒートポンプ5を有している。
【0020】
押出装置2は、原料供給部21aから樹脂材料(ペレット)を投入し、シリンダ21内で、この樹脂材料を高温に加熱して溶融し、シリンダ21内部で混練しながら輸送(搬送)する装置である。スクリュ22は回転駆動機構23に接続されている。この回転駆動機構23によりスクリュ22を回転させて、シリンダ21内を樹脂材料が混練しながら搬送されるようになっている。ここで、図1では、スクリュ22はシリンダ21内部に設けられているため、破線にて透過的に示している。このようにシリンダ21内を輸送(搬送)された混練物(溶融樹脂)は、ダイ3に供給される。
【0021】
なお、この押出装置2のシリンダ21は、例えば、複数のシリンダブロックが連結されて構成されるが、上記したように樹脂材料を溶融するために段階的に加熱できるようになっている。また、各シリンダブロックは所定の温度となるように管理されるが、シリンダ21内での樹脂材料のせん断等により設定温度範囲よりも高くなる場合があるため、冷却水によりシリンダ21の温度を低下させて設定温度範囲内となるように温調制御される構成を備える。
【0022】
本実施の形態では、この温調制御に、ヒートポンプ5を利用する。すなわち、ヒートポンプ5はシリンダ21を冷却するように用いられる。逆に言えば、このシリンダ21は、ヒートポンプ5により熱エネルギーを吸収される部材である。
【0023】
ダイ3は、シリンダ21から供給された混練物(溶融樹脂)を、押出口であるスリットから押出して、シート状の溶融樹脂とする装置であり、Tダイとも称される。ダイ3から押出されたシート状の溶融樹脂は、次いで、原反冷却装置4に供給される。
【0024】
原反冷却装置4は、上記ダイ3から得られたシート状の溶融樹脂を冷却する装置であり、例えば、ロール4(キャストロール)との接触により溶融樹脂を冷却、固化するものである。なお、このロール4は、例えば、200℃以上となるような高温のシート状の溶融樹脂を冷却する部材であり、その温度は、例えば、30~100℃のような範囲に保持される。すなわち、このロール4は、常温を基準とすれば加熱されるロールである。図2では、ロール4として、ロール4a,4bを有し、2つのロールを温調制御する場合を例示している。
【0025】
なお、温調制御するロールとしては、ここではキャストロールを例示しているが、これに限られない。すなわち、押出成形システムに備えられ、樹脂シート100を経由させるとともに加熱制御されるロールであれば、いずれのロールにも適用できる。
【0026】
本実施の形態では、この温調制御に、ヒートポンプ5を利用する。すなわち、ヒートポンプ5はロール4を加熱するように用いられる。逆に言えば、ロール4は、ヒートポンプ5により熱エネルギーを放出される部材である。
【0027】
このロール4により、得られた樹脂シート100は、縦延伸装置S4等の後段の装置に送出され、処理される。
【0028】
ヒートポンプ5は、作動媒体を循環させ、作動媒体と複数の熱媒体との間で熱を移動させる装置である。ヒートポンプ5は、例えば、シリンダ21及びロール4と流路を介して繋がっている。より特定的には、ヒートポンプ5とロール4とは、熱媒体の流路である流路51を介して繋がっている。同様に、ヒートポンプ5とシリンダ21とは、他の一つの熱媒体の流路である流路52を介して繋がっている。ヒートポンプ5については、以下に改めて説明する。
【0029】
<<ヒートポンプの構成>>
図3は、ヒートポンプ5の構成を示す模式図である。ヒートポンプ5は、作動媒体Wが循環する環状流路50を有している。作動媒体Wには、環境負荷が少ない自然冷媒(二酸化炭素)が用いられている。もっとも、作動媒体Wは特定の流体に限定されない。例えば、空気、水、アンモニア、炭化水素なども作動媒体Wとして用いることができる。
【0030】
環状流路50上には、熱交換器61,62と、圧縮機63と、膨張弁64と、が設けられている。ヒートポンプ5は、少なくとも圧縮機63及び膨張弁64を制御する制御部65をさらに有している。
【0031】
熱交換器61は、熱媒体H1の流路51を介してシリンダ21と繋がっている。熱交換器62は、熱媒体H2の流路52を介してロール4と繋がっている。
【0032】
熱媒体H1,H2には水が用いられている。もっとも、熱媒体H1,H2は特定の流体に限定されない。例えば、油、エチレングリコール等も熱媒体H1,H2として用いることができる。
【0033】
なお、環状流路50及び流路51,52は、パイプ、ホース等の管部材によって形成されている。また、環状流路50及び流路51,52には、バッファ部、蛇行部などが必要に応じて設けられる。
【0034】
<<ヒートポンプの動作>>
環状流路50を流れる作動媒体Wは、熱交換器61、圧縮機63、熱交換器62、膨張弁64を循環する。
【0035】
流路51を流れる熱媒体H1は、熱交換器61とシリンダ21との間を往復し、シリンダ21から熱を吸収する。例えば、熱媒体H1は、流路51を通って熱交換器61からシリンダ21に移動する。シリンダ21に移動した熱媒体H1は、シリンダ21の内部又は周囲に設けられている冷却管を通過する間に周囲から熱を吸収する。この結果、シリンダ21が冷却される。熱を吸収した熱媒体H1は、流路51を通って熱交換器61に移動する(戻る)。なお、このシリンダ21と流路51との具体的な構成については後述する。
【0036】
流路52を流れる熱媒体H2は、熱交換器62とロール4との間を往復し、ロール4に熱を放出する。例えば、熱媒体H2は、流路52を通って熱交換器62からロール4に移動する。ロール4に移動した熱媒体H2は、ロール4の内部又は周囲に設けられている加熱管を通過する間に周囲に熱を放出する。この結果、ロール4が加熱される。加熱管を通過した熱媒体H2は、流路52を通って熱交換器62に移動する(戻る)。
【0037】
熱交換器61は、作動媒体Wと熱媒体H1との熱交換を行う。別の見方をすると、熱媒体H1がシリンダ21から吸収した熱が熱交換器61内で作動媒体Wへ移動する。すると、熱媒体H1の温度は低下し、作動媒体Wの温度及び圧力は上昇する。
【0038】
言い換えれば、熱媒体H1は熱交換器61内で放熱し、作動媒体Wは熱交換器61内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は気化(蒸発)する。つまり、熱交換器61は、熱媒体H1との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を気化させる蒸発器である。
【0039】
放熱によって温度が低下した熱媒体H1は、シリンダ21に移動して再び熱を吸収する。一方、吸熱によって温度及び圧力が上昇した作動媒体Wは、圧縮機63に流入する。
【0040】
圧縮機63は、流入した作動媒体Wを圧縮する。圧縮機63から流出した高温高圧の作動媒体Wは、熱交換器62に流入する。
【0041】
熱交換器62は、作動媒体Wと熱媒体H2との熱交換を行う。別の見方をすると、圧縮機63によって圧縮された作動媒体Wの熱が熱交換器62内で熱媒体H2へ移動する。すると、作動媒体Wの温度及び圧力は低下し、熱媒体H2の温度は上昇する。
【0042】
言い換えれば、作動媒体Wは熱交換器62内で放熱し、熱媒体H2は熱交換器62内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は液化(凝縮)する。つまり、熱交換器62は、熱媒体H2との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を液化させる凝縮器である。
【0043】
吸熱によって温度が上昇した熱媒体H2は、ロール4に移動して再び熱を放出する。一方、放熱によって温度及び圧力が低下した作動媒体Wは、膨張弁64に流入する。
【0044】
膨張弁64は、流入した作動媒体Wを膨張させ、温度及び圧力を低下させる。膨張弁64から流出した低温低圧の作動媒体Wは、熱交換器61に流入し、熱媒体H1から再び熱を吸収する。
【0045】
ヒートポンプ5では、上記のような熱交換サイクルが繰り返され、作動媒体Wと熱媒体H1,H2との間で熱が移動する。この結果、熱媒体H1によってシリンダ21が冷却され、シリンダ21の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。また、熱媒体H2によってロール4が加熱され、ロール4の温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。
【0046】
ここで、複数個のロール4の温度を調整する場合には、流路52を分岐させてそれぞれのロール4に熱媒体H2を移動させるようにすればよい。
【0047】
また、制御部65は、ヒートポンプ5の熱交換器61,62で、熱媒体H1,H2が、それぞれ設定温度又は設定温度範囲内となるように温調制御を行う。より特定的には、この制御部65は、圧縮機63による作動媒体Wの圧縮及び膨張弁64による作動媒体Wの膨張の度合いを制御して、上記のように動作を制御し、熱媒体H1,H2の温度を制御する。
【0048】
<<シリンダの温調機構>>
また、熱媒体H1によりシリンダ21の温調制御を実施するための装置構成について、以下、図4を参照しながら説明する。
【0049】
シリンダ21の温調制御は、上記したように、熱媒体H1が流通する流路51により行われる。本実施の形態では、より具体的には、熱交換器61で熱エネルギーを放出した熱媒体H1は、シリンダ21を冷却する冷却媒体として、供給配管511を流通してシリンダ21に移送される。シリンダ21には、供給配管511から、シリンダ21を構成するシリンダブロック毎に複数の供給配管に分岐しており、この分岐した配管には、熱媒体H1の流通を制御するバルブVが設けられている。熱媒体H1を流通させてシリンダ21を冷却するか否かは、このバルブVの開閉で行われる。また、バルブVは独立して動作可能となっており、シリンダ21のどの箇所(どのシリンダブロック)を冷却対象とするかによってその開閉が判断される。この開閉の判断は、例えば、シリンダ21を構成する複数のシリンダブロックのそれぞれに、温度センサを設けておき、設定温度範囲を超えた場合、バルブVを開けるようにすればよい。
【0050】
シリンダ21の冷却により、上記熱媒体H1は気化して蒸気となる。この蒸気は、回収配管512を通じてバッファタンク513に送られる。バッファタンク513は、この気化した熱媒体H1を貯留することができるタンクである。バッファタンク513に貯留された熱媒体H1は、上記供給配管511に設けられたバルブVの開閉と連動して、ポンプ等により循環配管514を流通して熱交換器61に移動する(戻る)。
【0051】
熱交換器61に移動した熱媒体H1は、熱交換器61によりその熱エネルギーが作動媒体Wに吸収され、熱媒体H1は液化し、再度シリンダ21の冷却水として循環利用される。
【0052】
以上のような構成とすることで、シリンダを冷却して蒸気となった冷却水をそのまま廃棄することなく、蒸気となった冷却水が有する熱エネルギーを有効に利用でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0053】
なお、バッファタンク513内の温度をモニタリングして、ヒートポンプ5の圧縮機63と膨張弁64の開度を自動的に制御する機構を有してもよい。
【0054】
<押出成形機の制御方法>
次に、本実施の形態に係る押出成形機の制御方法(温調制御)について説明する。以下、上記押出成形機1を用いる場合を例に、図2図5を参照しながら、本実施の形態に係る押出成形機の制御方法を説明する。
【0055】
押出成形機1では、シリンダ21及びロール4の温度を設定温度や設定温度範囲内に調整する温調制御を含む制御方法が実施される。温調制御が行われると、ヒートポンプ5の冷却能力や加熱能力が調節され、シリンダ21及びロール4の温度が設定温度や設定温度範囲内に維持される。
【0056】
この温調制御が行われると、例えば、ロール4の温度は30~100℃程度に維持される。また、シリンダ21には、そのシリンダ21の設定温度範囲を外れて高い温度となった際に冷却水が供給され、設定温度範囲内となるように温調制御される。
【0057】
この設定温度は適宜設定でき、例えば、シリンダ21に供給される冷却水の温度を20℃以下の温度に維持し、ロール4の温度を冷却水の温度よりも高い30~100℃の範囲内の温度に維持するように、温調制御を行うことができる。なお、上記温度は、熱媒体H1,H2として水を使用した場合を想定しているが、使用する熱媒体に応じて設定する温度範囲を適宜変更することができる。
【0058】
図5は、ヒートポンプ5の制御部65による温調制御の手順の一例を示すフローチャートである。温調制御が開始されると、ステップS10~S15を含むシリンダ温調制御及びステップS20~S25を含むロール温調制御、の少なくとも一つが実行される。
【0059】
<<シリンダ温調制御>>
ステップS10が実行されると、シリンダ21の温度監視が開始される。温度監視は、シリンダ21の内部又は周囲に設けられている温度センサの検出結果に基づいて行われる。
【0060】
ステップS10に続くステップS11では、シリンダ21の温度が設定温度を下回っているか否かが判定される。例えば、シリンダ21の温度は60~300℃の範囲で使用される可能性があり、そのうちシリンダ温度の設定温度を基準に任意の温度範囲内にあるか否かが判定される。ステップS11でシリンダ21の温度が設定温度を下回っていると判定されると、ステップS10に戻って温度監視が継続される。
【0061】
一方、ステップS11でシリンダ21の温度が設定温度を上回っていると判定されると、ステップS12が実行され、ヒートポンプ5の運転が開始される。より特定的には、ヒートポンプ5の制御部65は、圧縮機63及び膨張弁64を作動させて、シリンダ21を冷却する。
【0062】
このとき、シリンダ21の冷却は、供給配管511に設けられたバルブVを開けることで、冷却水である熱媒体H1をシリンダ21に設けられた冷却管を流通させる。バルブVは複数設けられており、冷却対象となるシリンダブロックに対するバルブVを開けて、主として、設定温度範囲を超えたシリンダブロックを冷却するようにする。
【0063】
シリンダ21を冷却した熱媒体H1は、シリンダ21からの熱により気化され、その気化した蒸気は回収配管512を流通して、バッファタンク513に貯留される。バッファタンク513に貯留された熱媒体H1は、ヒートポンプ5の動作を継続している間は循環配管514を流通して熱交換機61にポンプ等により循環して供給される。一方、ヒートポンプ5の稼働を停止した場合、バルブVは閉められ、バッファタンク513から熱交換機61への熱媒体H1の移動も停止される。
【0064】
ステップS12に続くステップS13では、シリンダ21の温度が設定温度を下回っているか否かが再び判定される。ステップS13でシリンダ21の温度が設定温度を下回っていると判定されると、ステップS10に戻って温度監視が継続される。
【0065】
一方、ステップS13でシリンダ21の温度が設定温度を上回っていると判定されると、ステップS14が実行され、ヒートポンプ5の冷却能力が増強される。より特定的には、制御部65は、シリンダ21に対するヒートポンプ5の冷却能力が増強されるように、圧縮機63及び膨張弁64を制御する。
【0066】
ステップS14に続くステップS15では、シリンダ21の温度が設定温度を下回っているか否かが再び判定される。ステップS25でシリンダ21の温度が設定温度を下回っていると判定されると、ステップS10に戻って温度監視が継続される。
【0067】
一方、ステップS15でシリンダ21の温度が設定温度を上回っていると判定されると、ステップS14に戻り、シリンダ21に対するヒートポンプ5の冷却能力がさらに増強される。
【0068】
なお、ステップS13又はステップS15からステップS10に戻る前に、ヒートポンプ5の運転を停止させたり、ヒートポンプ5の冷却能力を低下させたりしてもよい。
【0069】
<<ロール温調制御>>
ステップS20が実行されると、ロール4の温度監視が開始される。温度監視は、ロール4の内部又は周囲に設けられている温度センサの検出結果に基づいて行われる。
【0070】
ステップS20に続くステップS21では、ロール4の温度が設定温度範囲内であるか否かが判定される。例えば、ロール4の温度は10~60℃の範囲で使用する可能性があり、そのうちロール4の温度の設定温度を基準に任意の温度範囲内にあるか否かが判定される。ステップS21でロール4の温度が設定温度範囲内であると判定されると、ステップS20に戻って温度監視が継続される。
【0071】
一方、ステップS21でロール4の温度が設定温度範囲の下限値を下回っていると判定されると、ステップS22が実行され、ヒートポンプ5の運転が開始される。より特定的には、ヒートポンプ5の制御部65は、圧縮機63及び膨張弁64を作動させて、ロール4を加熱する。
【0072】
ステップS22に続くステップS23では、ロール4の温度が設定温度範囲内であるか否かが再び判定される。ステップS23でロール4の温度が設定温度範囲内であると判定されると、ステップS20に戻って温度監視が継続される。
【0073】
一方、ステップS23でロール4の温度が設定温度範囲の下限値を下回っていると判定されると、ステップS24が実行され、ヒートポンプ5の加熱能力が増強される。より特定的には、制御部65は、ロール4に対するヒートポンプ5の加熱能力が増強されるように、圧縮機63及び膨張弁64を制御する。
【0074】
ステップS24に続くステップS25では、ロール4の温度が設定温度範囲内であるか否かが再び判定される。ステップS25でロール4の温度が設定温度範囲内であると判定されると、ステップS20に戻って温度監視が継続される。
【0075】
一方、ステップS25でロール4の温度が設定温度範囲の下限値を下回っていると判定されると、ステップS24に戻り、ロール4に対するヒートポンプ5の加熱能力がさらに増強される。
【0076】
なお、ステップS23又はステップS25からステップS20に戻る前に、ヒートポンプ5の運転を停止させたり、ヒートポンプ5の加熱能力を低下させたりしてもよい。
【0077】
上記のように、本実施の形態に係る押出成形機1では、シリンダ21の冷却とロール4の加熱とがヒートポンプ5による熱交換を利用して行われている。つまり、押出成形機1では、熱エネルギーが効率良く利用されており、省エネルギー化が実現されている。別の見方をすると、押出成形機1は、シリンダ21及びロール4をそれぞれ個別に温度管理している他の押出成形機に比べて、エネルギーの利用効率が高い。
【0078】
ここで、例えば、シリンダ21及びロール4に関する設定温度又は設定温度範囲は、適宜変更することができる。作動媒体Wと熱媒体H1,H2とは、同一の流体であってもよく、異なる流体であってもよい。また、一つの熱媒体と他の一つの熱媒体とが異なっていてもよい。
【0079】
なお、上記説明では、加熱対象としてロール4を記載しているが、このロール4は、キャストロールに限られず、シート成形装置に設けられるロールや延伸装置に設けられるロールとしてもよい。さらに、ロール以外に加熱する部材、例えば、押出装置2の原料供給部21a下のシリンダやダイ3、等に対して適用し、加熱補助を行うようにしてもよい。
【0080】
[実施の形態2]
<押出成形機の構成>
本実施の形態に係る押出成形機は、実施の形態1と同様に、上記説明した押出成形システム内の押出成形機として使用することができる。また、本実施の形態に係る押出成形機は、押出装置2と、ダイ3と、ロール4と、ヒートポンプ5と、を有する点で、実施の形態1と同様の構成を有している。
【0081】
本実施の形態に係る押出成形機は、実施の形態1の押出成形機に対して、ヒートポンプ5の構成が異なっている例であり、押出装置2、ダイ3及びロール4は、実施の形態1と同一の構成であるため説明を省略し、以下、ヒートポンプ5について説明する。
【0082】
図6に示したように、ここで用いられるヒートポンプ5は、熱交換器62とロール4との間に、さらに加熱温度調整部71が追加して設けられている。この加熱温度調整部71以外の構成は同一であるため、以下、この点を中心に説明する。
【0083】
上記のように、加熱温度調整部71は、熱交換器62とロール4の間に設けられている。すなわち、この加熱温度調整部71は、熱交換器62と流路52で接続されており、ロール4と流路72で接続されている。流路52は、上記説明したように熱媒体H2が循環する流路であり、流路72は、熱媒体H3が循環する流路である。
【0084】
ここで、加熱温度調整部71は、熱媒体H3が熱媒体H2の熱を吸収し、熱媒体H3が加熱される作用を奏し、この熱媒体H3を、流路72を循環させることで、ロール4の温度を上昇(加熱)させる。なお、この加熱温度調整部71は、単なる熱交換ではなく、この加熱温度調整部71内部で、熱媒体H3が目的の温度となるまで、熱媒体H2の熱を吸収する構成となっている。そのため、ロール4に対して、より高温まで加熱することができる。
【0085】
ここで用いられる熱媒体H3は、上記説明した熱媒体H1,H2と同様の熱媒体を用いることができるが、より高温に加熱する構成であるため、熱媒体H2よりも高温で動作可能な熱媒体を用いることが好ましい。
【0086】
<押出成形機の制御方法>
次に、本実施の形態に係る押出成形機の制御方法について説明する。本実施の形態に係る押出成形機の制御方法は、基本的には、実施の形態1で説明した押出成形機の制御方法と同一の操作により行われる。ここで、本実施の形態では、上記のように、ヒートポンプ5として図6に示した構成のヒートポンプを用いる点が実施の形態1とは異なる。
【0087】
環状流路50に設けられている熱交換器61、熱交換器62、圧縮機63及び膨張弁64の動作、作用は実施の形態1と同一である。一方、本実施の形態では、熱交換器62は、流路52を介して加熱温度調整部71と接続され、この加熱温度調整部71は、流路72を介してロール4と接続されている。
【0088】
そのため、流路52を流通する熱媒体H2は、ロール4ではなく、熱媒体H3に熱を放出する。逆に言えば、熱媒体H3は、熱媒体H2の熱エネルギーを吸収する。
【0089】
ここで、加熱温度調整部71内部で、熱媒体H3が目的の温度となるまで、熱媒体H2の熱を吸収する構成となっている。そして、所望の温度にまで加熱された熱媒体H3は、流路72aを循環し、ロール4の温度を上昇(加熱)させる。そのため、ロール4に対して、より高温まで加熱することができる。
【0090】
このような構成とした場合、熱媒体H3をより高温に加熱できるため、例えば、100℃以上のような高温加熱を要するロールやその他の加熱部材の温調制御に使用することもできる。
【0091】
[実施の形態3]
<押出成形機の構成>
本実施の形態に係る押出成形機は、実施の形態1と同様に、上記説明した押出成形システム内の押出成形機として使用することができる。また、本実施の形態に係る押出成形機は、押出装置2と、ダイ3と、ロール4と、ヒートポンプ5と、を有する点で、実施の形態1と同様の構成を有している。ここで、押出装置2、ダイ3及びロール4は、実施の形態1と同一の構成であるため説明を省略し、以下、ヒートポンプ5について説明する。
【0092】
<<ヒートポンプの構成>>
図7は、本実施の形態に係るヒートポンプ5の構成を示す模式図である。ヒートポンプ5は、作動媒体Wが循環する環状流路50を有している。作動媒体Wには、環境負荷が少ない自然冷媒(二酸化炭素)が用いられている。もっとも、作動媒体Wは特定の流体に限定されない。例えば、空気、水、アンモニア、炭化水素なども作動媒体Wとして用いることができる。
【0093】
環状流路50上には、熱交換器61,62と、圧縮機63と、膨張弁64と、が設けられている。ヒートポンプ5は、少なくとも圧縮機63及び膨張弁64を制御する制御部65をさらに有している。
【0094】
本実施の形態では、シリンダ21とその他の冷却対象となるロール41a,41bに対応して複数個の熱交換器61(61a~61c)が設けられ、加熱対象となる複数のロール4(4a,4b,4c)に対応して複数個の熱交換器62(62a~62c)が設けられており、さらに、各熱交換器の間には、圧縮機63又は膨張弁64が設けられている点が、実施の形態1とは異なっている。なお、これら各部材の基本的な動作は実施の形態1で説明した動作と同一である。また、冷却対象物(シリンダ21とロール41)を3個、加熱対象物(ロール4)を3個有する場合を例示しているが、それぞれ独立に、2個又は4個以上とすることもできる。
【0095】
ここで、熱交換器61aは、熱媒体H1の流路51aを介してシリンダ21と繋がっている。熱交換器61bは、熱媒体H1の流路51bを介してロール41aと繋がっている。熱交換器61cは、熱媒体H1の流路51cを介してロール41bと繋がっている。熱交換器62aは、熱媒体H2の流路52aを介してロール4aと繋がっている。熱交換器62bは、熱媒体H2の流路52bを介してロール4bと繋がっている。熱交換器62cは、熱媒体H2の流路52cを介してロール4cと繋がっている。
【0096】
熱媒体H1,H2には水が用いられている。もっとも、熱媒体H1,H2は特定の流体に限定されない。例えば、油、エチレングリコール等も熱媒体H1,H2として用いることができる。
【0097】
なお、環状流路50、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)は、パイプ、ホース等の管部材によって形成されている。また、環状流路50、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)には、バッファ部、蛇行部などが必要に応じて設けられる。
【0098】
<<ヒートポンプの動作>>
環状流路50を流れる作動媒体Wは、熱交換器62a、熱交換器61a、熱交換器62b、熱交換器61b、熱交換器62c、熱交換器61cを循環し、各熱交換器の間には、圧縮機63又は膨張弁64が設けられている。
【0099】
流路51(51a~51c)を流れる熱媒体H1は、それぞれ熱交換器61(61a~61c)とシリンダ21及びロール41a,41bとの間を往復し、シリンダ21及びロール41a,41bから熱を吸収する。例えば、熱媒体H1は、流路51(51a~51c)を通って熱交換器61(61a~61c)からシリンダ21及びロール41a,41bに移動する。シリンダ21及びロール41a,41bに移動した熱媒体H1は、その内部又は周囲に設けられている冷却管を通過する間に周囲の熱を吸収する。この結果、シリンダ21及びロール41a,41bが冷却される。冷却管を通過した熱媒体H1は、流路51(51a~51c)を通って熱交換器61(61a~61c)に移動する(戻る)。
【0100】
流路52(52a~52c)を流れる熱媒体H2は、それぞれ熱交換器62(62a~62c)とロール4(4a~4c)との間を往復し、ロール4(4a~4c)に熱を放出する。例えば、熱媒体H2は、流路52(52a~52c)を通って熱交換器62(62a~62c)からロール4(4a~4c)に移動する。ロール4(4a~4c)に移動した熱媒体H2は、ロール4(4a~4c)の内部又は周囲に設けられている加熱管を通過する間に周囲に熱を放出する。この結果、ロール4(4a~4c)が加熱される。加熱管を通過した熱媒体H2は、流路52(52a~52c)を通って熱交換器62(62a~62c)に移動する(戻る)。
【0101】
熱交換器61(61a~61c)は、作動媒体Wと熱媒体H1との熱交換を行う。別の見方をすると、熱媒体H1がシリンダ21及びロール41a,41bから吸収した熱が熱交換器61(61a~61c)内で作動媒体Wへ移動する。すると、熱媒体H1の温度は低下し、作動媒体Wの温度及び圧力は上昇する。
【0102】
言い換えれば、熱媒体H1は熱交換器61(61a~61c)内で放熱し、作動媒体Wは熱交換器61(61a~61c)内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は気化(蒸発)する。つまり、熱交換器61(61a~61c)は、熱媒体H1との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を気化させる蒸発器である。
【0103】
放熱によって温度が低下した熱媒体H1は、シリンダ21及びロール41a,41bに移動して再び熱を吸収する。一方、吸熱によって温度及び圧力が上昇した作動媒体Wは、圧縮機63に流入する。
【0104】
圧縮機63は、流入した作動媒体Wを圧縮する。圧縮機63から流出した高温高圧の作動媒体Wは、熱交換器62(62a~62c)に流入する。
【0105】
熱交換器62(62a~62c)は、作動媒体Wと熱媒体H2との熱交換を行う。別の見方をすると、圧縮機63によって圧縮された作動媒体Wの熱が熱交換器62(62a~62c)内で熱媒体H2へ移動する。すると、作動媒体Wの温度及び圧力は低下し、熱媒体H2の温度は上昇する。
【0106】
言い換えれば、作動媒体Wは熱交換器62(62a~62c)内で放熱し、熱媒体H2は熱交換器62(62a~62c)内で吸熱する。この結果、作動媒体Wの少なくとも一部は液化(凝縮)する。つまり、熱交換器62(62a~62c)は、熱媒体H2との熱交換によって作動媒体Wの少なくとも一部を液化させる凝縮器である。
【0107】
吸熱によって温度が上昇した熱媒体H2は、ロール4(4a~4c)に移動して再び熱を放出する。一方、放熱によって温度及び圧力が低下した作動媒体Wは、膨張弁64に流入する。
【0108】
膨張弁64は、流入した作動媒体Wを膨張させ、温度及び圧力を低下させる。膨張弁64から流出した低温低圧の作動媒体Wは、熱交換器61(61a~61c)に流入し、熱媒体H1から再び熱を吸収する。
【0109】
本実施の形態に係るヒートポンプ5では、上記のような熱交換サイクルが繰り返され、作動媒体Wと熱媒体H1,H2との間で熱が移動する。この結果、熱媒体H1によってシリンダ21及びロール41a,41bが冷却され、それらの温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。また、熱媒体H2によってロール4(4a~4c)が冷却され、それらの温度が設定温度又は設定温度範囲内に維持される。
【0110】
また、制御部65は、ヒートポンプ5の熱交換器61(61a~61c)、62(62a~62c)で、熱媒体H1及び熱媒体H2が、それぞれ所望の温度となるように温調制御を行う。より特定的には、この制御部65は、圧縮機63による作動媒体Wの圧縮及び膨張弁64による作動媒体Wの膨張の度合いを制御して、上記のように動作を制御し、熱媒体H1及び熱媒体H2の温度を制御する。
【0111】
<押出成形機の制御方法>
次に、本実施の形態に係る押出成形機の制御方法について説明する。以下、上記押出成形機1を用いる場合を例に、図2及び図7を参照しながら、本実施の形態に係る押出成形機の制御方法を説明する。
【0112】
本実施の形態に係る押出成形機の制御方法は、基本的には、実施の形態1で説明した押出成形機の制御方法と同一の操作により行われる。ここで、本実施の形態では、ヒートポンプ5として図7に示した構成のヒートポンプを用いる点が実施の形態1とは異なるため、以下、この点を中心に説明する。
【0113】
このヒートポンプ5では、作動媒体Wが、熱交換器62a、膨張弁64、熱交換器61a、圧縮機63、熱交換器62b、膨張弁64、熱交換器61b、圧縮機63、熱交換器62c、膨張弁64、熱交換器61c、圧縮機63、の順番に経由して環状流路50内を循環される。そして、環状流路50を1回循環させる間に、加熱と冷却のサイクルが実施され、このサイクルを3回実施できるようになっている。なお、このサイクルは、その温調制御の対象となるロールの数によって、2サイクルとすることもでき、4サイクル以上とすることもできる。
【0114】
上記説明したように、シリンダ21、ロール41a,41b及びロール4(4a~4c)に対し、各冷却対象物及び各加熱対象物に対応して熱交換器61(61a~61c)、熱交換器62(62a~62c)が設けられており、これらを個別に制御できる。すなわち、シリンダ21、ロール41a,41bの中でも異なる温度設定を行うことができ、ロール4(4a~4c)の中でも異なる温度設定を行うことができる。このように、対象毎に温調制御が可能となっているため、押出成形機における温調制御を安定して実施することができる。
【0115】
加熱温調制御は、複数個のロール4a,4b及びロール4cのそれぞれのロールに対して行うようにし、冷却温調制御は、シリンダ21及びロール41a,41bのそれぞれに対して行うようにすればよい。これらの温調制御は、制御部65により、圧縮機63及び膨張弁64を制御することにより、各熱交換器における熱媒体H1,H2の温度を制御する。各熱交換器における温調制御は、実施の形態1で説明したものと同一のステップにより実施できる。
【0116】
[変形例1]
<押出成形機の構成>
本変形例に係る押出成形機は、実施の形態3の押出成形機に対して、ヒートポンプ5の構成が異なっている例であり、図8に示したように、ここで用いられるヒートポンプ5は、さらに、流路51(51a~51c)と流路52(52a~52c)とを接続する流路81~86が設けられており、この流路81~86は、それぞれ、その流路を流通する熱媒体の流量を調整する流量調整バルブV1~V6を備えている。また、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)には、その内部を流通する熱媒体H1,H2の温度を測定できる温度センサTS1~TS6が設けられている。なお、ここで流路81~86は実線で簡易的に表している。
【0117】
流路81は、流路51cを流れる熱媒体H1を流路52aへと移動できるようになっており、流路82は、流路52aを流れる熱媒体H2を流路51cへと移動できるようになっている。流路81には流量調整バルブV1が、流路82には流量調整バルブV2が設けられている。
【0118】
流路83は、流路51aを流れる熱媒体H1を流路52cへと移動できるようになっており、流路84は、流路52cを流れる熱媒体H2を流路51aへと移動できるようになっている。流路83には流量調整バルブV3が、流路84には流量調整バルブV4が設けられている。
【0119】
流路85は、流路51bを流れる熱媒体H1を流路52bへと移動できるようになっており、流路86は、流路52bを流れる熱媒体H2を流路51bへと移動できるようになっている。流路85には流量調整バルブV5が、流路86には流量調整バルブV6が設けられている。
【0120】
流量調整バルブV1~V6は、流路81~86における熱媒体の移動量を調整するバルブである。
【0121】
すなわち、上記した構成により、熱媒体H1と熱媒体H2とを相互に入れ替えることができる。これにより、温度の高い熱媒体が流れる流路52から温度の低い熱媒体が流れる流路51へと熱媒体を移動させたり、温度の低い熱媒体が流れる流路51から温度の高い熱媒体が流れる流路52へと熱媒体を移動させたりできる。この熱媒体の移動によって、流路51及び流路52を流通する熱媒体の温度を調整できる。
【0122】
なお、本変形例では、上記したように熱媒体H1と熱媒体H2とが、相互に混合されることになるため、同じ種類の熱媒体を用いる。
【0123】
また、温度センサTS1~TS6は、上記の通り、流路51(51a~51c)及び流路52(52a~52c)に設けられ、その内部を流通する熱媒体H1,H2の温度を測定できる温度センサである。この温度センサTS1~TS6により、熱媒体H1,H2の温度が設定温度を外れた場合、流路81~86を通じて温度の異なる熱媒体を混合するように動作させることで、熱媒体の温度を制御することができる。
【0124】
なお、本変形例では、高温の熱媒体H2と低温の熱媒体H1とを混合することができるようにすればよく、それぞれ接続する流路51と52の組合せは、上記組み合わせに限られず、適宜変更することができる。
【0125】
<押出成形機の制御方法>
次に、本変形例に係る押出成形機の制御方法について説明する。本変形例に係る押出成形機の制御方法は、基本的には、実施の形態3で説明した押出成形機の制御方法と同一の操作により行われる。ここで、本変形例では、ヒートポンプ5として図8に示した構成のヒートポンプを用いる点が実施の形態3とは異なるため、以下、この点を中心に説明する。
【0126】
環状流路50に設けられている熱交換器61(61a~61c)、熱交換器62(62a~62c)、圧縮機63及び膨張弁64の動作、作用は実施の形態3と同一である。一方、本変形例では、さらに、流路81~86、流量調整バルブV1~V6及び温度センサTS1~TS6が設けられている。
【0127】
初期の動作においては、流量調整バルブV1~V6は閉められており、熱媒体の流通はしない。そのため、このときのヒートポンプの動作は実施の形態3と同一となる。ここで、例えば、温度センサTS1で、熱媒体H2の温度が設定温度よりも高くなったことが検知された場合、本変形例では、流量調整バルブV1を開け、熱媒体H1を流路51cから流路81を介して流路52aに移送する。このようにすることで、高温の熱媒体H2に低温の熱媒体H1が混合され、流路52aを流通する熱媒体の温度を低下させて、設定温度内に入るように調整される。
【0128】
なお、この熱媒体の移送に伴い、流路51aと流路51cとの流量が変動するため、同時に流量調整バルブV2を開け、熱媒体H2を流路52aから流路82を介して流路51cに移送することが好ましい。このとき、流路51cの熱媒体の温度は高められることになるが、熱媒体H1の温度が設定温度範囲を満たすようにする。
【0129】
また、逆に、温度センサTS2で、熱媒体H1の温度が設定温度よりも低くなったことが検知された場合、本変形例では、流量調整バルブV2を開け、熱媒体H2を流路52aから流路82を介して流路51cに移送する。このようにすることで、低温の熱媒体H1に高温の熱媒体H2が混合され、流路51cを流通する熱媒体の温度を上昇させて、設定温度範囲内に入るように調整される。
【0130】
なお、この熱媒体H1,H2の移送に伴い、流路51cと流路51aとの流量が変動するため、同時に流量調整バルブV1を開け、熱媒体H1を流路51cから流路81を介して流路52aに移送することが好ましい。このとき、流路52aの熱媒体の温度は下げられることになるが、熱媒体H2の温度が設定温度範囲を満たすようにする。
【0131】
上記動作は、流路51aと流路52cを接続する流路83,84、流路52bと流路51bを接続する流路85,86でも、同様に行うことができる。
【0132】
なお、上記説明の繰り返しになるが、本変形例では、高温の熱媒体H2と低温の熱媒体H1とを混合することができるようにすればよく、それぞれ接続する流路51と52の組合せは、上記組み合わせに限られず、適宜変更することができる。
【0133】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0134】
1…押出成形機、2…押出装置、3…ダイ、4…ロール、5…ヒートポンプ、21…シリンダ、22…スクリュ、23…回転駆動機構、50…環状流路、51,52…流路、61,62…熱交換器、63…圧縮機、64…膨張弁、65…制御部、100…樹脂シート、511…供給配管、512…回収配管、513…バッファタンク、514…循環配管、H1,H2…熱媒体、V…バルブ、W…作動媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8