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特開2024-164668燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164668
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241120BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241120BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080324
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 忠彦
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H127AA06
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127CC07
(57)【要約】
【課題】冷却剤が燃料電池から抜き取られた停止状態からスムーズに且つ効率的に運転を再開させる。
【解決手段】一実施の形態によれば、燃料電池システムSは、多孔質体からなる2つのセパレータを含む単セル11を複数積層させたセルスタック12を有する燃料電池10と、冷却剤を貯留する冷却剤タンク20と、冷却剤を燃料電池10に供給するための配管系統部30とを備える。2つのセパレータのうちのいずれかは、反応ガス流路を有するとともに、冷却剤の冷却剤流路105Bを有する。そして、配管系統部30は、冷却剤の流通の駆動力を発生させる駆動部32を備え、駆動部32から吐出される冷却剤が、燃料電池10の冷却剤流路105B、冷却剤タンク20及び駆動部32の順で循環する第1の状態と、駆動部32から吐出される冷却剤が、冷却剤タンク20、燃料電池10の冷却剤流路105B及び駆動部32の順で循環する第2の状態とを切換える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された多孔質体からなる2つのセパレータとを含む単セルを複数積層させたセルスタックを備え、前記単セルにおける前記2つのセパレータのうちのいずれかが、前記膜電極接合体側に反応ガスを流通させる反応ガス流路を有するとともに、前記膜電極接合体側とは反対の側に冷却剤を流通させる冷却剤流路を有する燃料電池と、
前記冷却剤を貯留する冷却剤タンクと、
前記燃料電池と前記冷却剤タンクとの間に介在する配管材と、前記配管材に設けられ、前記冷却剤タンクに貯留される前記冷却剤を、前記冷却剤流路の入口に流入させ且つ前記冷却剤流路の出口から流出させる駆動力を発生させる駆動部とを含む配管系統部と、を備え、
前記配管系統部は、前記駆動部から吐出される前記冷却剤が、前記冷却剤流路、前記冷却剤タンク及び前記駆動部の順で循環する第1の状態と、前記駆動部から吐出される前記冷却剤が、前記冷却剤タンク、前記冷却剤流路及び前記駆動部の順で循環する第2の状態と、を切換可能に構成されている、燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池が、前記冷却剤タンクよりも上方に配置されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池が、前記冷却剤タンクと上下方向で重なるように配置されている、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記冷却剤タンクは、大気に開放している、請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された多孔質体からなる2つのセパレータとを含む単セルを複数積層させたセルスタックを備え、前記単セルにおける前記2つのセパレータのうちのいずれかが、前記膜電極接合体側に反応ガスを流通させる反応ガス流路を有するとともに前記膜電極接合体側とは反対の側に冷却剤を流通させる冷却剤流路を有する燃料電池と、
前記冷却剤を貯留する冷却剤タンクと、
前記燃料電池と前記冷却剤タンクとの間に介在する配管材と、前記配管材に設けられ、前記冷却剤タンクに貯留される前記冷却剤を、前記冷却剤流路の入口に流入させ且つ前記冷却剤流路の出口から流出させる駆動力を発生させる駆動部とを含む配管系統部と、
を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記燃料電池から前記冷却剤を抜き取る抜き取り工程と、
前記駆動部から吐出される前記冷却剤を、前記冷却剤流路、前記冷却剤タンク及び前記駆動部の順で循環させる第1循環工程と、
前記駆動部から吐出される前記冷却剤を、前記冷却剤タンク、前記冷却剤流路及び前記駆動部の順で循環させる第2循環工程と、を備える、燃料電池システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池を備える燃料電池システムが普及しつつある。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、一般に、複数の燃料電池単セル(以下、単セル)を直列に接続することで構成されている。固体高分子形用の単セルは、通常、電解質膜及び電解質膜を挟み込む2つの触媒層を含む膜電極接合体と、膜電極接合体における2つの触媒層のそれぞれに重ねられる2つのガス拡散層と、2つのガス拡散層のそれぞれに重ねられる2つのセパレータと、を有する。セパレータには、反応ガスを流通させるための流路が設けられる。
【0004】
上述のような固体高分子形燃料電池においては、セパレータの流路を流れる反応ガスが、ガス拡散層で拡散されつつガス拡散層を透過し、触媒層に供給される。流路は、例えば溝により構成される。ガス拡散層は一般に多孔質体からなり、これにより、ガス拡散層は、酸素分子又は水素分子を含む反応ガスを拡散させつつ透過させることができる。
【0005】
上記2つの触媒層のうちの一方は、アノード電極と呼ばれ、他方は、カソード電極と呼ばれることがある。アノード電極は、水素ガスを供給されることにより、電気化学反応を発生させる。カソード電極は、酸化剤ガスを供給されることにより、電気化学反応を発生させる。2つのセパレータのうちの水素ガスを流通させるための流路を有するセパレータは、アノード極セパレータと呼ばれることがある。酸化剤ガスを流通させるための流路を有するセパレータは、カソード極セパレータと呼ばれることがある。このようなアノード極セパレータ及びカソード極セパレータのうちのいずれかには、電気化学反応で発生した反応熱を除去するための冷却水の流路が設けられることがある。この場合、一般にセパレータの片面に反応ガスの流路を設け、反対の面に冷却水の流路を設ける。
【0006】
固体高分子形燃料電池は、複数の単セルを積層し、直列に接続することで出力電圧を上げることができる。一般には、数十枚から数百枚の単セルが積層される。このような単セルの積層体は、一般にセルスタックと呼ばれる。セルスタックは、通常、単セルの積層体の両側に集電板を配置し、集電板を両側から締め付け板で締め付けることで構成される。
【0007】
ところで、固体高分子形燃料電池では、セパレータが多孔質体から形成されることがある。この際、セパレータの片面に反応ガスの流路を設け、反対の面に冷却水の流路を設ける単セルを使用する場合には、一般に、運転時において反応ガスが冷却水の流路に流れないように且つ冷却水が反応ガスの流路に流れないようにするための対策が行われる。そして、これを実現する手法としては、例えば冷却水の圧力が水素ガスの圧力よりも所定量だけ低くなるように圧力を調整する手法が知られている。
【0008】
上述の圧力調整手法では、水素ガスと冷却水の圧力差が、例えばセパレータを構成する多孔質体の細孔にある冷却水の毛管力によって生ずる圧力よりも小さい範囲に制御される。これにより、水素ガスが冷却水の流路側へ流れること、及び、冷却水が水素ガスの流路側へ流れることが適正に抑制される。また、片面を酸化剤ガスが流れ、反対の面を冷却水が流れるセパレータにおいても、上述と同じく、酸化剤ガスの圧力よりも冷却水の圧力を低くすることで、酸化剤ガスが冷却水の流路側へ流れること、及び、冷却水が酸化剤ガスの流路側へ流れることが適正に抑制され得る。
【0009】
また、セパレータが多孔質体から形成される固体高分子形燃料電池の停止操作では、内部の余剰な反応ガスを除去するために、反応ガスの供給を停止しつつ、内部を冷却水で封じ切る(充填する)手法が取られることがある。この際、冷却水を貯留したタンクが固体高分子形燃料電池の上方に配置される場合には、動力を使用せずに、固体高分子形燃料電池の内部を冷却水で封じ切ることができるため、例えば省エネルギーの観点で有利となる。このように固体高分子形燃料電池の内部が冷却水で封じ切られた状態では、各単セルにおける2つのセパレータ内及びこれらに設けられた反応ガス用の溝にも、冷却水が満たされる。
【0010】
上述のように冷却水が充填された停止状態から発電を開始する際には、通常、まず、冷却水を流通させる。これにより、セパレータにおける冷却水の流路を流れる冷却水は、負圧(大気圧に対して)となる。このように冷却水が負圧になる場合には、セパレータの反応ガスの流路に充填された冷却水は、冷却水の流路側に移動し、除去される。
【0011】
固体高分子形燃料電池が使用される環境が氷点下にならない場合には、停止時に、固体高分子形燃料電池を冷却水で封じ切る状態のままとしてもよい。一方で、想定される使用環境が氷点下になる場合には、内部に充填された冷却水が停止時に凍結し、発電運転の再開に支障が生じることがある。そのため、使用環境を考慮し、運転停止時に、固体高分子形燃料電池の内部の冷却水を全て抜き取る場合もある。
【0012】
しかしながら、上述のように冷却水を貯留したタンクが固体高分子形燃料電池の上方に配置される場合には、固体高分子形燃料電池から冷却水をすべて抜き取るのが困難である。具体的には、ポンプ等により水を吸い上げる際に、セパレータの溝内の水を全て上方に吸い上げることは、配管内を負圧にしただけでは困難である。例えば、ポンプと燃料電池とを接続する配管の内径よりも小さい水滴が生じた場合には、当該水滴を上方に移動させてタンクまで導くのは困難である。
【0013】
以上に説明した観点から、冷却水のタンクが固体高分子形燃料電池の上方に配置される場合には、固体高分子形燃料電池の内部を冷却水で封じ切る際には有益である一方、水抜きを行う際には、必ずしも有益とは言えない。すなわち、固体高分子形燃料電池とタンクとの位置関係によっては、所望の動作を実施できない又はスムーズに実施できない状況が生じ得る。
【0014】
また、水抜き後に、発電運転を再開させる際には、通常、固体高分子形燃料電池の内部が冷却水で充填されるように冷却水を流通させた後に、反応ガスの供給が開始される。そして、望ましくは、反応ガスの圧力が冷却水の圧力よりも大きくなるように圧力調整が行われる。このような水抜き後の運転再開も、例えば固体高分子形燃料電池とタンクとの位置関係に起因して、スムーズに行い難くなることもあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第7183435号
【特許文献2】特開2006-59734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、冷却水等の冷却剤が燃料電池から抜き取られた停止状態からスムーズに且つ効率的に運転を再開できる燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一実施の形態に係る燃料電池システムは、膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された多孔質体からなる2つのセパレータとを含む単セルを複数積層させたセルスタックを備え、前記単セルにおける前記2つのセパレータのうちのいずれかが、前記膜電極接合体側に反応ガスを流通させる反応ガス流路を有するとともに、前記膜電極接合体側とは反対の側に冷却剤を流通させる冷却剤流路を有する燃料電池と、前記冷却剤を貯留する冷却剤タンクと、前記燃料電池と前記冷却剤タンクとの間に介在する配管材と、前記配管材に設けられ、前記冷却剤タンクに貯留される前記冷却剤を、前記冷却剤流路の入口に流入させ且つ前記冷却剤流路の出口から流出させる駆動力を発生させる駆動部とを含む配管系統部と、を備える。前記配管系統部は、前記駆動部から吐出される前記冷却剤が、前記冷却剤流路、前記冷却剤タンク及び前記駆動部の順で循環する第1の状態と、前記駆動部から吐出される前記冷却剤が、前記冷却剤タンク、前記冷却剤流路及び前記駆動部の順で循環する第2の状態と、を切換可能に構成されている。
【0018】
一実施の形態に係る燃料電池システムの運転方法は、膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両側に配置された多孔質体からなる2つのセパレータとを含む単セルを複数積層させたセルスタックを備え、前記単セルにおける前記2つのセパレータのうちのいずれかが、前記膜電極接合体側に反応ガスを流通させる反応ガス流路を有するとともに前記膜電極接合体側とは反対の側に冷却剤を流通させる冷却剤流路を有する燃料電池と、前記冷却剤を貯留する冷却剤タンクと、前記燃料電池と前記冷却剤タンクとの間に介在する配管材と、前記配管材に設けられ、前記冷却剤タンクに貯留される前記冷却剤を、前記冷却剤流路の入口に流入させ且つ前記冷却剤流路の出口から流出させる駆動力を発生させる駆動部とを含む配管系統部と、を備える燃料電池システムの運転方法である。当該方法は、前記燃料電池から前記冷却剤を抜き取る抜き取り工程と、前記駆動部から吐出される前記冷却剤を、前記冷却剤流路、前記冷却剤タンク及び前記駆動部の順で循環させる第1循環工程と、前記駆動部から吐出される前記冷却剤を、前記冷却剤タンク、前記冷却剤流路及び前記駆動部の順で循環させる第2循環工程と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷却水等の冷却剤が燃料電池から抜き取られた停止状態からスムーズに且つ効率的に運転を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施の形態に係る燃料電池システムを概略的に示す図である。
図2図1に示す燃料電池システムにおける燃料電池を構成する単セルの縦断面図である。
図3図1に示す燃料電池システムにおける冷却剤の抜き取り操作を説明する図である。
図4図1に示す燃料電池システムにおける起動操作を説明する図である。
図5図1に示す燃料電池システムにおける起動操作を説明する図である。
図6】一変形例に係る燃料電池システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しつつ一実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、一実施の形態に係る燃料電池システムSを概略的に示す。燃料電池システムSは、燃料電池10と、冷却剤タンク20と、配管系統部30と、コントローラ40と、を備えている。
【0023】
燃料電池10は、単セル11を複数積層させたセルスタック12を有する。図2は、単セル11の縦断面図である。単セル11は、膜電極接合体101と、第1ガス拡散層102と、アノードセパレータ103と、第2ガス拡散層104と、カソードセパレータ105と、を備えている。燃料電池10は、本実施の形態では固体高分子形燃料電池である。
【0024】
複数の単セル11が積層される際には、隣り合う2つの単セル11のうちの一方のアノードセパレータ103が他方のカソードセパレータ105に接するように、各単セル11が積層される。
【0025】
第1ガス拡散層102及びアノードセパレータ103は、この順で膜電極接合体101の一方の面に重ねられる。第2ガス拡散層104及びカソードセパレータ105は、この順で膜電極接合体101の上記一方の面とは反対の他方の面に重ねられる。電気化学セル1を構成する各部材が重なる方向を、以下の説明において厚さ方向と呼ぶ場合がある。
【0026】
膜電極接合体101は、隔膜101Mと、隔膜101Mを挟む一対の電極101A,101Cと、有する。隔膜101Mは、例えば固体高分子膜(イオン交換膜)や、固体電解質膜(電解質膜)などのプロトン伝導性を有するイオン濾過膜である。
【0027】
一対の電極101A,101Cは、隔膜101Mの一方の面に接合されるアノード電極101Aと、隔膜101Mの上記一方の面とは反対の他方の面に接合されるカソード電極101Cと、で構成されている。アノード電極101A及びカソード電極101Cは、いわゆる触媒層を構成する部分である。
【0028】
第1ガス拡散層102はアノード電極101Aに重ねられ、アノード電極101Aに接している。第1ガス拡散層102は、ガス透過性及び導電性を有する部材であり、例えば多孔質体で形成される。アノードセパレータ103は第1ガス拡散層102を介してアノード電極101Aに重ねられ、第1ガス拡散層102に接している。
【0029】
アノードセパレータ103は導電性を有する多孔質体から形成されている。アノードセパレータ103は、導電性を有する金属、カーボン又はセラミックス等の多孔質体から形成されてもよい。
【0030】
アノードセパレータ103は、膜電極接合体101側に、反応ガスとしてのアノードガスを流通させる複数のアノードガス流路103Aを有する。アノードガス流路103Aは、アノードセパレータ103における膜電極接合体101側を向く面からへこむ溝により構成されている。複数のアノードガス流路103Aは、互いに平行に延びる。ただし、アノードガス流路103Aの形態は特に限られない。
【0031】
図1に示すように、各アノードガス流路103Aの入口(図示せず)にはアノードガス供給管111が接続され、各アノードガス流路103Aの出口(図示せず)にはアノードガス排出管112が接続される。アノードガス供給管111は、図示しないアノードガス供給源に接続する。アノードガス供給源から供給されるアノードガスは、アノードガス供給管111からアノードガス流路103Aの入口に流入し、アノードガス流路103Aを通過して、アノードガス流路103Aの出口からアノードガス排出管112に排出される。この際、アノードガスは第1ガス拡散層102によって拡散された状態でアノード電極101Aに供給される。アノードガスとしては、水素ガスを含む燃料ガスが用いられる。
【0032】
図2に戻り、第2ガス拡散層104はカソード電極101Cに重ねられ、カソード電極101Cに接している。第2ガス拡散層104は、ガス透過性及び導電性を有する部材であり、例えば多孔質体で形成される。そして、カソードセパレータ105は第2ガス拡散層104を介してカソード電極101Cに重ねられ、第2ガス拡散層104に接している。
【0033】
カソードセパレータ105も導電性を有する多孔質体から形成されている。カソードセパレータ105は、導電性を有する金属、カーボン又はセラミックス等の多孔質体から形成されてもよい。
【0034】
カソードセパレータ105は、膜電極接合体101側に、反応ガスとしてのカソードガスを流通させるカソードガス流路105Aを有するとともに、膜電極接合体101側とは反対の側に冷却剤を流通させる冷却剤流路105Bを有する。カソードガス流路105Aは、カソードセパレータ105における膜電極接合体101側を向く面からへこむ溝により構成されている。複数のカソードガス流路105Aは、アノードガス流路103Aが延びる方向と直交する方向に互いに平行に延びる。冷却剤流路105Bは、カソードセパレータ105における膜電極接合体101側を向く面とは反対の面からへこむ溝により構成されている。冷却剤流路105Bは、カソードガス流路105Aが延びる方向と直交する方向に互いに平行に延びる。ただし、カソードガス流路105A及び冷却剤流路105Bの形態は特に限られない。
【0035】
図1に示すように、カソードガス流路105Aの入口(図示せず)にはカソードガス供給管113が接続され、各カソードガス流路105Aの出口(図示せず)にはカソードガス排出管114が接続される。カソードガス供給管113は、図示しないカソードガス供給源に接続する。カソードガス供給源から供給されるカソードガスは、カソードガス供給管113からカソードガス流路105Aの入口に流入し、カソードガス流路105Aを通過して、カソードガス流路105Aの出口からカソードガス排出管114に排出される。この際、カソードガスは第2ガス拡散層104によって拡散された状態でカソード電極101Cに供給される。カソードガスとしては、酸素ガスを含む酸化剤ガスが用いられる。
【0036】
なお、本実施の形態では、膜電極接合体101の両側に配置される2つのセパレータのうちのカソードセパレータ105に、カソードガス流路105Aと、冷却剤流路105Bとが設けられる。これに代えて、アノードセパレータ103に、アノードガス流路103Aと、冷却剤流路とを設け、カソードセパレータ105にカソードガス流路105Aのみを設けてもよい。
【0037】
冷却剤タンク20は冷却剤を貯留する容器である。カソードセパレータ105における冷却剤流路105Bは、冷却剤タンク20に貯留される冷却剤を供給されて流通させ、冷却剤流路105Bから流出する冷却剤は、冷却剤タンク20に戻る。膜電極接合体101では、アノードガス及びカソードガスが供給された際に電気化学反応による反応熱が生じる。冷却剤は、反応熱を吸収するために冷却剤流路105Bを通流する。本実施の形態では、冷却剤として水が用いられる。ただし、冷却剤は不凍液等でも良く、特に限られない。
【0038】
本実施の形態では、燃料電池10が、図1の向きに示すように冷却剤タンク20よりも上下方向(鉛直方向)で上方に配置される。詳しくは、燃料電池10は、冷却剤タンク20と上下方向で重なるように配置されている。また、冷却剤タンク20は、大気に開放している。したがって、冷却剤タンク20に貯留された冷却剤の液面は大気圧を受ける。そして、冷却剤タンク20に貯留された冷却剤の圧力も大気圧となる。なお、冷却剤タンク20における気相の圧力、すなわち冷却剤タンク20内の冷却剤の液面が受ける圧力は、大気圧よりも大きい圧力に設定されてもよい。
【0039】
配管系統部30は、燃料電池10と冷却剤タンク20との間に介在する配管材31と、配管材31に設けられた駆動部32及び複数の三方弁33~36と、を備えている。配管系統部30は、冷却剤タンク20に貯留される冷却剤を冷却剤流路105Bで流通させた後、冷却剤タンク20に戻すための流路を構成している。
【0040】
燃料電池10は、冷却剤流路105Bの入口106及び出口107を有する。冷却剤タンク20は、第1入口21、第2入口22、第1出口23、及び第2出口24を有する。配管材31は、冷却剤タンク20の第1出口23と冷却剤流路105Bの入口106とを接続するための第1配管材311、及び、冷却剤流路105Bの出口107と冷却剤タンク20の第1入口21とを接続するために第2配管材312を含む。図1においては、第1配管材311及び第2配管材312の範囲を明示すべく、第1配管材311及び第2配管材312がそれぞれ二点鎖線により囲まれている。
【0041】
駆動部32は第2配管材312に設けられている。駆動部32は、例えばポンプから構成され、冷却剤を配管材31で流通させ且つ冷却剤流路105Bを通過させるための駆動力を発生させる。駆動部32として用いるポンプは湿式のポンプであり、非容量型のポンプでもよいし、容量型のポンプでもよい。
【0042】
また配管材31は、第2配管材312における駆動部32の下流側の部分と、第1配管材311の中間部分とを接続するための第3配管材313をさらに含む。また、配管材31は、第2配管材312における駆動部32の上流側の部分と、冷却剤タンク20の第2入口22とを接続するための第4配管材314を含む。また、配管材31は、冷却剤タンク20の第2出口24と、第2配管材312における駆動部32の上流側であって、第3配管材313が接続する位置の下流側の部分とを接続するための第5配管材315をさらに含む。
【0043】
複数の三方弁33~36は、第1三方弁33と、第2三方弁34と、第3三方弁35と、第4三方弁36とを含む。各三方弁33~36は2位置切換弁であり、第1ポートP1、第2ポートP2及び第3ポートP3を有し、第1ポートP1と第2ポートP2とが流体的に接続する状態と、第1ポートP1と第3ポートP3とが流体的に接続状態と、を切り換える。
【0044】
第1三方弁33は、第1配管材311に設けられている。第1三方弁33における第1ポートP1と第2ポートP2との間の部分は、第1配管材311とともに一連の流路を形成している。第2三方弁34、第3三方弁35及び第4三方弁36は、第2配管材312の下流側に向けてこの順で並ぶように第2配管材312に設けられている。第2三方弁34、第3三方弁35及び第4三方弁36における各第1ポートP1と第2ポートP2との間の部分は、第2配管材312とともに一連の流路を形成している。詳しくは、第2三方弁34及び第3三方弁35は駆動部32の上流側に設けられ、第4三方弁36は、駆動部32の下流側に設けられている。
【0045】
上述した第3配管材313は、第1三方弁33の第3ポートP3と、第4三方弁36の第3ポートP3とに接続されている。これにより、第3配管材313は、第2配管材312における駆動部32の下流側の部分と、第1配管材311の中間部分とを接続する。
【0046】
また、第4配管材314は、第2三方弁34の第3ポートP3に接続される。これにより、第4配管材314は、第2配管材312における駆動部32の上流側の部分と、冷却剤タンク20の第2入口22とを接続する。また、第5配管材315は、第3三方弁35の第3ポートP3に接続される。これにより、第5配管材315は、冷却剤タンク20の第2出口24と、第2配管材312における駆動部32の上流側であって、第3配管材313が接続する位置の下流側の部分とを接続する。
【0047】
配管系統部30は、三方弁33~36を切り換えることにより、燃料電池10に供給される冷却剤の流通経路を切り換えることができる。具体的には、配管系統部30は、各三方弁33~36の全てを第1ポートP1と第2ポートP2とが流体的に接続する状態とすることで、駆動部32から吐出される冷却剤が、冷却剤タンク20、燃料電池10の冷却剤流路105B及び駆動部32の順で循環する状態を形成できる。また、配管系統部30は、各三方弁33~36の全てを第1ポートP1と第3ポートP3とが流体的に接続する状態とすることで、駆動部32から吐出される冷却剤が、燃料電池10の冷却剤流路105B、冷却剤タンク20及び駆動部32の順で循環する状態を形成できる。
【0048】
後者の状態、すなわち、駆動部32から吐出される冷却剤が、燃料電池10の冷却剤流路105B、冷却剤タンク20及び駆動部32の順で循環する状態は、起動時に使用される状態であり、以下では「第1の状態」と呼ぶ。一方で、前者の状態、すなわち、駆動部32から吐出される冷却剤が、冷却剤タンク20、燃料電池10の冷却剤流路105B及び駆動部32の順で循環する状態は、起動時において第1の状態から切り替えられる状態であって、通常の運転で使用される状態であり、以下では「第2の状態」と呼ぶ。また、配管系統部30は、第1の状態及び第2の状態とは異なる流通経路も形成できる。なお、配管系統部30の構成は、少なくとも第1の状態及び第2の状態を切り換えて形成可能であれば、特に限られない。
【0049】
コントローラ40は、各三方弁33~36に電気的に接続され、各三方弁33~36の切換状態を制御する。例えば上述の第1の状態及び第2の状態の切換は、コントローラ40の指示に応じて行われる。コントローラ40は、CPU、ROM等を含むコンピュータで構成されてもよい。また、コントローラ40は、その他のプロセッサや、電気回路等で構成されてもよい。
【0050】
次に、本実施の形態に係る燃料電池システムSで行われる操作の一例を説明する。
【0051】
上述したように、通常の運転(発電時)においては、冷却剤は「第2の状態」で流通される。この際、アノードガスがアノードガス供給管111からアノードガス流路103Aに供給され、カソードガスがカソードガス供給管113に供給される。
【0052】
通常の運転から停止させる際には、まず、アノードガス及びカソードガスの供給が停止される。この際、この例では、冷却剤の第2の状態での流通は継続される。ここで第2の状態では、冷却剤の圧力は、駆動部32の吐出位置、冷却剤タンク20内、冷却剤流路105B内、駆動部32の流入位置の順で小さくなっていく。したがって、冷却剤流路105Bに流入する冷却水は、冷却剤タンク20における圧力(気相の圧力、この例では大気圧)に対して負圧となる状態で冷却剤流路105Bに流入する。この場合、アノードガス及びカソードガスの供給が停止されていることで、アノードセパレータ103のアノードガス流路103A及びカソードセパレータ105のカソードガス流路105Aは大気圧下に置換されている。そのため、アノードガス流路103A及びカソードガス流路105Aに冷却剤が存在する場合には、冷却剤が大気圧に対して負圧となる冷却剤流路105B側に流れ、除去される。
【0053】
その後、本実施の形態では、冷却剤の流通も停止され、燃料電池10内及び配管材31内の冷却剤が抜き取られる(いわゆる、水抜き操作(抜き取り工程)が行われる)。この際、燃料電池10は冷却剤タンク20の上方に配置されていることで、図3の矢印αに示すように、燃料電池10内及び配管材31内の冷却剤を自重を利用して抜き取ることができる。なお、一例として、図3では、第1三方弁33の第1ポートP1と第2ポートP2とが接続された状態とされ、第2三方弁34の第1ポートP1と第3ポートP3とが接続された状態とされる。これにより、本実施の形態では、燃料電池10内の冷却剤がスムーズに冷却剤タンク20に流入され得る。
なお、冷却剤の抜き取りを行う場合、例えば第2配管材312における第2三方弁34の上流側で燃料電池10の出口107の直近に空気を切換可能に導入可能な弁を設け、当該弁から空気を取り入れ、取り入れた空気により冷却水を下方に誘導させることにより、よりスムーズに冷却剤が冷却剤タンク20に流入され得る。
また、第2の状態で冷却剤を流通させる三方弁33~36の状態で、冷却剤の抜き取りが行われてもよい。この場合も上記の構成のように、燃料電池10の出口107の直近に空気を切換可能に導入可能な弁を設けることにより、よりスムーズに冷却剤が冷却剤タンク20に流入され得る。
【0054】
なお、冷却剤の抜き取りを行う際には、例えば窒素ガス等の不活性ガスによるパージが行われてもよい。また、上述のように第2配管材312における第2三方弁34の上流側に空気を切換可能に導入可能な弁を設けた場合、この弁からカソードガスとしての酸化剤ガスがパージ用に導入されてもよい。以上のように燃料電池10内及び配管材31内の冷却剤が抜き取られることにより、燃料電池10内及び配管材31内に残存した冷却剤の停止時の凍結を抑制できる。
【0055】
運転を再開する際には、図4に示すように、冷却剤が「第1の状態」で流通される(第1循環工程)。すなわち、配管系統部30は、駆動部32から吐出される冷却剤を、燃料電池10の冷却剤流路105B(図2参照)、冷却剤タンク20及び駆動部32の順で循環させる。図4において、流通経路は太線で示されている。第1の状態においては、冷却剤の圧力は、駆動部32の吐出位置、冷却剤流路105B内、冷却剤タンク20内、駆動部32の流入位置の順で小さくなっていく。したがって、冷却剤流路105Bに流入する冷却水は、冷却剤タンク20における圧力(気相の圧力、この例では大気圧)に対して正圧となる状態で、冷却剤流路105Bに流入する。この第1の状態では、第2の状態の場合よりも大きい圧力で冷却剤を冷却剤流路105B内に供給できるため、所望の量の冷却剤を効率的に燃料電池10内及び配管材31内に充填できる。
【0056】
特に本実施の形態では、燃料電池10が冷却剤タンク20よりも上方に位置することで、冷却剤が燃料電池10内及び配管材31内から抜き取られた状態から燃料電池10まで冷却剤を到達させる際に、比較的大きい圧力エネルギーが求められる。これに対して、第1の状態においては、駆動部32から吐出される冷却剤の圧力が大気圧よりも正圧となることで、駆動部32の駆動力を変更することなく又は抑えつつ、冷却剤が適正に燃料電池10に供給され得る。
【0057】
その後、図5に示すように、冷却剤の流通状態が、第1の状態から第2の状態に切り換えられる(第2循環工程)。すなわち、冷却剤流路105Bに流入する冷却水は、冷却剤タンク20における圧力(気相の圧力、この例では大気圧)に対して負圧となる状態で、冷却剤流路105Bに流入する。図5において、流通経路は太線で示されている。そして、アノードガス流路103A及びカソードガス流路105Aに冷却剤が存在する場合には、冷却剤が大気圧に対して負圧となる冷却剤流路105B側に流れ、除去される。
【0058】
その後、アノードガス及びカソードガスの供給が開始され、通常の運転状態(発電運転)に移行する。この際、アノードガス流路103Aを流通するアノードガスの圧力及びカソードガス流路105Aを流通するカソードガスの圧力は、冷却剤の圧力よりも所定量だけ大きくなるように調整される。これにより、本実施の形態では、アノードガスが冷却剤流路105B側へ流れること及びその逆に流れること、並びに、カソードガスが冷却剤流路105Bに流れること及びその逆に流れることが抑制され得る。
【0059】
以上に説明したように本実施の形態に係る燃料電池システムSでは、駆動部32から吐出される冷却剤が、燃料電池10の冷却剤流路105B、冷却剤タンク20及び駆動部32の順で循環する第1の状態と、駆動部32から吐出される冷却剤が、冷却剤タンク20、燃料電池10の冷却剤流路105B及び駆動部32の順で循環する第2の状態と、を切り換えることができる。第1の状態では、冷却剤の圧力は、駆動部32の吐出位置、冷却剤流路105B内、冷却剤タンク20内、駆動部32の流入位置の順で小さくなっていく。したがって、冷却剤流路105Bに流入する冷却水は、冷却剤タンク20における圧力に対して正圧となる状態で、冷却剤流路105Bに流入する。一方で、第2の状態では、冷却剤の圧力は、駆動部32の吐出位置、冷却剤タンク20内、冷却剤流路105B内、駆動部32の流入位置の順で小さくなっていく。したがって、冷却剤流路105Bに流入する冷却水は、冷却剤タンク20における圧力に対して負圧となる状態で、冷却剤流路105Bに流入する。
【0060】
すなわち、燃料電池システムSでは、第1の状態において冷却剤流路105Bに供給する冷却剤の圧力を、第2の状態で供給する場合よりも高くできる。これにより、燃料電池10内に冷却剤を速やかに充填することが可能となる。具体的には、燃料電池10内の冷却剤を抜き取った後に冷却剤を充填する際に、冷却剤を速やかに充填することが可能となる。一方で、第2の状態では、第1の状態で冷却剤流路105Bに供給されていた冷却剤の圧力を低下させることができる。これにより、第2の状態においては、第1の状態で例えば冷却剤流路105B側から反応ガス流路(103A,105A)側に流入した冷却剤を冷却剤流路105B側に流入させて、除去できる。そして、その後、反応ガス流路(103A,105A)に反応ガスが供給された際に、反応ガスの圧力の増加を抑制しつつ、反応ガスと冷却剤との間に圧力差をつけ易くなる。これにより、望ましい運転状態に効率的に且つスムーズに移行できる。
【0061】
したがって、本実施の形態に係る燃料電池システムSによれば、冷却剤が燃料電池10から抜き取られた停止状態からスムーズに且つ効率的に運転を再開できる。
【0062】
また、本実施の形態では燃料電池10が冷却剤タンク20よりも上方に配置されている。この構成では、燃料電池10内の冷却剤を自重により冷却剤タンク20側に移動させることができるため、冷却剤の抜き取りを容易に且つ効率的に行うことができる。また、燃料電池10は冷却剤タンク20と上下方向で重なるように配置されていることで、冷却剤の抜き取りを容易に且つ効率的に行うことを可能としつつ、燃料電池システムSの占有範囲を抑制できる。
【0063】
そして、以上のように燃料電池10が冷却剤タンク20よりも上方に配置される場合には、冷却剤が燃料電池10内及び配管材31内から抜き取られた状態から燃料電池10まで冷却剤を到達させる際に、比較的大きい圧力エネルギーが求められる。これに対して、本実施の形態では、第1の状態において駆動部32から吐出される冷却剤の圧力が大気圧よりも正圧となる。これにより、駆動部32の駆動力を変更することなく又は抑えつつ、冷却剤を適正に燃料電池10に適正に供給され得るため、構造を複雑にすることなく適正に運転を再開できる。
【0064】
次に、変形例について説明する。図6は変形例にかかる燃料電池システムS’を示す。変形例における上述の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図6に示す変形例では、第1配管材311に圧力調節手段としての流量調節弁38が設けられている。流量調節弁38は、開度調節により、アノードガス流路103Aを流通するアノードガスの圧力又はカソードガス流路105Aを流通するカソードガスの圧力と、冷却剤の圧力との圧力差を調節できる。なお、流量調節弁38に代えてオリフィスが用いられてもよい。ただし、第1の状態での冷却剤の流通では冷却剤流路105Bを流通する冷却剤の圧力低下は望まれない。この点を考慮すると、流量調節弁38の使用が有益である。一方で、オリフィスを用いる場合には、コストメリットが得られる。
【0066】
また、燃料電池10にパージガス供給管200が接続されている。パージガス供給管200は、冷却剤流路105B及び/又は配管材31に接続されている。このようなパージガス供給管200により冷却剤をパージする場合には、例えば運転を停止させる際に、燃料電池10内及び配管材31内の冷却剤を確実に除去できる。
【0067】
以上、一実施の形態及びその変形例を説明したが、上記実施の形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施の形態及びその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。その他の変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
S,S’…燃料電池システム、10…燃料電池、11…単セル、12…セルスタック、101…膜電極接合体、101M…隔膜、101A…アノード電極、101C…カソード電極、102…第1ガス拡散層、103…アノードセパレータ、103A…アノードガス流路、104…第2ガス拡散層、105…カソードセパレータ、105A…カソードガス流路、105B…冷却剤流路、111…アノードガス供給管、112…アノードガス排出管、113…カソードガス供給管、114…カソードガス排出管、20…冷却剤タンク、30…配管系統部、31…配管材、311…第1配管材、312…第2配管材、313…第3配管材、314…第4配管材、315…第5配管材、32…駆動部、33…第1三方弁、34…第2三方弁、35…第3三方弁、36…第4三方弁、38…流量調節弁、40…コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6