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特開2024-164669物品の乾燥度を推定する推定装置、乾燥システム、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-物品の乾燥度を推定する推定装置、乾燥システム、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164669
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】物品の乾燥度を推定する推定装置、乾燥システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/04 20060101AFI20241120BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01N22/04 Z
G01N22/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080325
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 将克
(57)【要約】
【課題】環境の変化を考慮して物品の乾燥度を正確に推定すること。
【解決手段】測定装置は、マルチキャリア信号である無線信号が放射される位置から見て乾燥度を測定する対象の物品を挟む位置において、放射された無線信号の第1の検出を行い、無線信号が放射される位置から、物品を挟まない見通し位置に配置され、放射された無線信号の第2の検出を行い、無線信号に含まれる複数のキャリアのそれぞれについての、第1の検出において検出された第1の位相と第2の検出において検出された第2の位相との位相差を特定し、複数のキャリアのそれぞれにおいて特定された位相差に基づいて、物品の乾燥度を推定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア信号である無線信号を放射する放射手段から見て乾燥度を測定する対象の物品を挟む位置において、前記放射手段から放射された前記無線信号の第1の検出を行う第1の検出手段と、
前記放射手段から見て前記物品を挟まない見通し位置において、前記放射手段から放射された前記無線信号の第2の検出を行う第2の検出手段と、
前記無線信号に含まれる複数のキャリアのそれぞれについての、前記第1の検出において検出された第1の位相と前記第2の検出において検出された第2の位相との位相差を特定する特定手段と、
前記複数のキャリアのそれぞれにおいて特定された複数の前記位相差に基づいて、前記物品の乾燥度を推定する推定手段と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記無線信号は、IEEE802.11規格に準拠して生成された直交周波数分割多重(OFDM)信号である、ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記特定手段は、前記無線信号に含まれる複数のキャリアのそれぞれについての、前記第1の検出において検出された第1の振幅と前記第2の検出において検出された第2の振幅との振幅差をさらに特定し、
前記推定手段は、特定された前記振幅差および前記位相差に基づいて、前記物品の乾燥度を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記放射手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記物品は洗濯物である、ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測定装置と、
当該測定装置によって推定された前記洗濯物の乾燥度に基づいて乾燥器具を制御する制御装置と、
を含んだ乾燥システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記乾燥器具の、風量、風向、風の温度、除湿能力の少なくともいずれかを制御する、ことを特徴とする請求項6に記載の乾燥システム。
【請求項8】
物品の乾燥度を測定する測定装置によって実行される制御方法であって、
マルチキャリア信号である無線信号を放射する放射手段から見て乾燥度を測定する対象の物品を挟む位置において、前記放射手段から放射された前記無線信号の第1の検出を行うことと、
前記放射手段から見て前記物品を挟まない見通し位置において、前記放射手段から放射された前記無線信号の第2の検出を行うことと、
前記無線信号に含まれる複数のキャリアのそれぞれについての、前記第1の検出において検出された第1の位相と前記第2の検出において検出された第2の位相との位相差を特定することと、
前記複数のキャリアのそれぞれにおいて特定された複数の前記位相差に基づいて、前記物品の乾燥度を推定することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から5のいずれか1項に記載の測定装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の乾燥度の推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
布などの洗濯物の乾燥度を測定する技術が知られている。特許文献1には、接触型のセンサを使用して、洗濯物の表裏にそれぞれ設けられた電極間のインピーダンスを観測することにより、洗濯物の乾き具合を確認する技術が記載されている。また、特許文献2には、電磁波を物品に照射して、その電磁波の位相や振幅の変化に応じて物品の水分量を特定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-173142号公報
【特許文献2】特開2015-161597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、乾燥度を測定するために使用者が電極で洗濯物を挟む必要があるため煩雑である。特許文献2に記載の技術は、非常に狭い空間において電磁波の照射が行われるものであり、洗濯物が干されるような広い空間において十分な精度での水分量の測定ができないことが想定される。洗濯物は、例えば、一定の広さを有し、洗濯物の乾燥機能を有する浴室に干されることが想定される。ここで、浴室は、入浴後には非常に湿度が高い環境にあり、また、季節の変化によって温度などの環境も変化しうる。このため、特許文献2に記載の発明では、十分な測定品質を担保することができないことが想定される。
【0005】
本発明は、環境の変化を考慮して物品の乾燥度を正確に推定するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による測定装置は、マルチキャリア信号である無線信号を放射する放射手段から見て乾燥度を測定する対象の物品を挟む位置において、前記放射手段から放射された前記無線信号の第1の検出を行う第1の検出手段と、前記放射手段から見て前記物品を挟まない見通し位置において、前記放射手段から放射された前記無線信号の第2の検出を行う第2の検出手段と、前記無線信号に含まれる複数のキャリアのそれぞれについての、前記第1の検出において検出された第1の位相と前記第2の検出において検出された第2の位相との位相差を特定する特定手段と、前記複数のキャリアのそれぞれにおいて特定された複数の前記位相差に基づいて、前記物品の乾燥度を推定する推定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境の変化を考慮して物品の乾燥度を正確に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】乾燥システムの構成例を示す図である。
図2】無線信号の位相差と洗濯物の乾燥度との関係の例を説明する図である。
図3】洗濯物の乾燥度を推定するための学習済みモデルを取得するための機械学習を説明する図である。
図4】学習済みモデルを用いた洗濯物の乾燥度の推定を説明する図である。
図5】推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
図6】推定装置の機能構成例を示す図である。
図7】推定装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る乾燥システムの構成を示す。乾燥システムは、例えば、乾燥器具141を用いて、洗濯物111を乾燥させるためのシステムである。乾燥システムは、例えば、送信器101と、測定装置121と、制御装置131と、乾燥器具141とを含む。
【0011】
送信器101は、アンテナ102を用いて、無線信号を放射する。送信器101から放射された無線信号は、測定装置121に備えられたアンテナ122及びアンテナ123において受信(検出)される。なお、アンテナ122は、電波が送出されるアンテナ102の位置から見て、洗濯物111を挟む位置に配置される。また、アンテナ123は、アンテナ102の位置から見て、洗濯物111を挟まない見通し位置に配置される。すなわち、送信器101から放射された無線信号は、洗濯物111を例えば貫通して伝搬し、アンテナ122の位置において検出される。また、送信器101から放射された無線信号は、洗濯物111に干渉せずに、直接、アンテナ123の位置において検出される。なお、アンテナ122及びアンテナ123の位置は、例えば、それぞれアンテナ102からの距離が等しくなるように決定されうる。このような位置にアンテナが配置されることにより、アンテナ102から送出された無線信号がアンテナ122及びアンテナ123において同じタイミングで受信されるようにすることができる。なお、これは一例であり、アンテナ122及びアンテナ123は任意の位置に配置されてもよい。なお、図1では、送信器101が1つのアンテナ102を有し、測定装置121が2つのアンテナ122及びアンテナ123を有する例を示しているが、これらより多くのアンテナが用意されてもよい。ただし、測定装置121が有する複数のアンテナのうち、少なくとも1つのアンテナが、送信器101が有するアンテナとの間で見通しが確保される位置に配置されるものとする。なお、送信器101が複数のアンテナを有する場合、その複数のアンテナのそれぞれに対して、少なくとも1つの見通し位置に配置される測定装置121に備えられたアンテナが存在するようにアンテナが配置される。なお、送信器101が複数のアンテナを有する場合に、その複数のアンテナにそれぞれ対応する見通し位置に配置される測定装置121側のアンテナは、別個に用意されうる。すなわち、送信器101の第1の送信アンテナから見通し位置に配置される第1の受信アンテナと、送信器101の第2の送信アンテナから見通し位置に配置される(第1の送信アンテナからは見通しではない位置に配置されうる)第2の受信アンテナとが別個に用意されうる。ただし、これは一例に過ぎず、測定装置121側の1つの受信アンテナが、送信器101の複数の送信アンテナのそれぞれの位置から見通しを確保することができる位置に配置されてもよい。なお、Multi-Input Multi-Output(MIMO)技術を用いることにより、複数の送信アンテナから送信されて複数の受信アンテナで受信された信号を分離することができる。なお、複数の送信器101が用いられてもよい。
【0012】
測定装置121は、アンテナ122及びアンテナ123において検出された無線信号に対する受信処理を実行する受信器124を含む。受信器124は、例えば、アンテナ122及びアンテナ123のそれぞれにおいて受信された無線信号の位相を特定する。また、受信器124は、例えば、アンテナ122及びアンテナ123のそれぞれにおいて受信された無線信号の振幅を特定してもよい。なお、無線信号の位相や振幅は、例えば、周知のチャネル推定技術を用いて特定されうる。一例において、無線信号は、IEEE802.11規格に準拠して生成された直交周波数分割多重(OFDM)信号であり、その規格での通信を行う際に使用されるチャネル推定技術を用いて、各アンテナにおける無線信号の位相値や振幅値が特定されうる。なお、IEEEは、Institute of Electrical and Electronics Engineersの頭字語である。
【0013】
アンテナ122及びアンテナ123においてそれぞれ検出される無線信号は、それぞれ、洗濯物111を貫通して到達した無線信号および洗濯物111に干渉せずに到達した無線信号となる。ここで、洗濯物111を貫通する無線信号は、その洗濯物111の乾燥度に応じて、その位相値や振幅値が変動することが想定される。このため、本実施形態では、洗濯物111の乾燥度を、アンテナ122において検出された無線信号の位相値(及び必要に応じて振幅値)に基づいて推定する。なお、例えば乾燥システムが配置される空間の状況が変化することが想定され、その場合、無線信号の位相値や振幅値も変化することが予想される。例えば、乾燥システムが浴室に設置された場合、浴室内の湿度や気温が、入浴直後か否か、及び、気候などに応じて大きく環境が変更することが想定され、その環境の変化に応じて、アンテナ122において検出される無線信号の位相値や振幅値が変動してしまいうる。このため、本実施形態では、アンテナ123において検出される、洗濯物111に干渉せずに直接到達した無線信号の位相値や振幅値を参照値として、アンテナ122において検出された無線信号の位相値や振幅値との差分値を用いて、洗濯物111の乾燥度を推定するようにする。アンテナ123において受信された無線信号の位相値や振幅値を参照値として用いることにより、乾燥システムが配置された環境による無線信号の特性変化を考慮して、洗濯物111の乾燥度を推定することができる。これにより、環境の変化を考慮して、洗濯物111の乾燥度を正確に推定することが可能となる。
【0014】
処理装置125は、受信器124によって特定された、アンテナ122及びアンテナ123において検出された無線信号の位相値や振幅値を入力として、洗濯物111の乾燥度を推定する処理を実行する。なお、以下では、位相値を例として説明するが、位相値に代えて振幅値が用いられてもよいし、位相値と振幅値の両方が用いられてもよい。例えば、処理装置125は、アンテナ122において検出された無線信号の位相値と、アンテナ123において検出された無線信号の位相値との位相差を、受信器124から取得する。この位相差は、アンテナ122において検出された無線信号の位相値からアンテナ123において検出された無線信号の位相値を減じることによって、乾燥システムの環境に起因する位相値の変化の影響が低減された値となっていることが期待される。そして、処理装置125は、その位相差を用いて、洗濯物111の乾燥度を推定する。
【0015】
ここで、無線信号は例えばシングルキャリア信号であってもよく、この場合、各アンテナにおける位相値の1つのサンプル値に基づいて、1つの位相差の値が処理装置125へ入力されうる。また、所定時間にわたって複数回取得された位相値の複数のサンプル値が、処理装置125へ入力されてもよい。また、無線信号は、マルチキャリア信号(例えばIEEE802.11規格に準拠して生成されるOFDM信号)であってもよい。この場合、各アンテナに対して、複数のサブキャリアのそれぞれにおける位相値を取得することができる。すなわち、1つの無線信号がN個のサブキャリアによって構成される場合、受信器124は、その無線信号から、N個以下のサブキャリアのそれぞれについての位相値を取得することができる。例えば、IEEE802.11規格におけるセンシングの対象とするサブキャリアを決定するパラメータNgに基づいたサブキャリア数のサブキャリアごとの位相値が取得される。複数のサブキャリアが用いられる場合、周波数方向において、複数の位相値のサンプルを取得し、周波数領域における位相差の分布を特定することができる。時間領域や周波数領域における複数の位相値を取得するようにして、サンプル数を増やすことで、洗濯物111の乾燥度の推定精度を向上させることができる。
【0016】
図2(A)及び図2(B)に、洗濯物111の乾燥度ごとの周波数方向における位相差の分布の例を示している。なお、図2(A)及び図2(B)において、「乾燥度」は0%が洗濯物111を洗濯した直後の状態を示しており、100%が、洗濯物111が完全に乾燥した状態を示す。図2(A)及び図2(B)に示すように、洗濯物111の乾燥度が変化すると、位相差の分布が変化する。このように位相差の分布が乾燥度ごとに異なるため、処理装置125は、その位相差の分布によって、洗濯物111の乾燥度を推定することができる。
【0017】
なお、無線信号の位相差に基づく洗濯物111の乾燥度の推定は、例えば機械学習によって得られた学習済みモデルに、位相差の情報を入力することによって行われる。図3(A)は、このような機械学習を説明する図である。図3(A)では、上述のようにして得られた1つ以上の位相差の値を含んだ位相差情報302を入力データとし、その位相差の値が得られた際の実際の乾燥度の値301を教師データとした機械学習303が行われる状態を示している。乾燥度の値301は、例えば、接触センサによって測定された、実測の洗濯物111の乾燥度である。機械学習303では、例えば、洗濯物111が様々な乾燥状態にある際に取得された位相差情報302が学習モデルに入力されることにより乾燥度の推定値が出力される。そして、その推定値と実際の乾燥度の値301との差分が学習モデルにフィードバックされて、学習モデルが更新される。学習モデルから出力された推定値と実際の乾燥度301の値が概ね一致するようになったことに応じて機械学習303が終了し、学習済みモデル304が出力される。機械学習303は、例えば、乾燥システムの出荷前に行われ、学習済みモデル304は、事前に処理装置125において保持されうる。また、処理装置125は、例えば定期的に又は所定の操作が行われた場合に、機械学習303を再度実行して学習済みモデル304を更新してもよい。なお、このような更新が行われる場合、教師モデルを得るために、洗濯物111の乾燥度の値301を測定するセンサが用意される必要があることに留意されたい。図4(A)は、図3(A)のようにして得られた学習済みモデル304を用いた乾燥度の推定の例を示している。図4(A)に示すように、処理装置125は、上述のようにして得られた1つ以上の位相差の値を含んだ位相差情報401を、学習済みモデル304に入力することにより、その位相差に対応する乾燥度の推定値402を取得する。
【0018】
なお、上述の例では、位相差情報が入力データとして用いられる場合の例について示しているが、位相差が特定される前の、アンテナ122で検出された無線信号の位相値とアンテナ123で検出された無線信号の位相値との組み合わせを入力データとして機械学習が行われるようにしてもよい。例えば、図3(B)のように、アンテナ122で検出された無線信号の第1の位相値312とアンテナ123で検出された無線信号の第2の位相値313を入力データとして用いて、また、図3(A)の場合と同様の乾燥度311を教師データとして、機械学習314が行われうる。機械学習314は、図3(A)の場合と同様にして行われる。そして、処理装置125は、このような機械学習314によって得られた学習済みモデル315を保持しておく。そして、処理装置125は、図4(B)に示すように、アンテナ122で検出された無線信号の第1の位相値411とアンテナ123で検出された無線信号の第2の位相値412を学習済みモデル315に入力することにより、その位相差に対応する乾燥度の推定値413を取得する。これによれば、処理装置125は、位相差ではなく、測定された2系統の位相値をそのまま入力データとして使用することにより、洗濯物111の乾燥度を推定することができる。
【0019】
測定装置121は、上述のようにして、アンテナ122及びアンテナ123において検出された無線信号の位相値に基づいて、洗濯物111の乾燥度を推定する。その推定結果は、例えば、制御装置131へ提供される。そして、制御装置131は、例えば、洗濯物111を効率的に乾燥させるために乾燥器具141を制御する。制御装置131は、例えば、乾燥器具141の風量、風向、風の温度、及び除湿力の少なくともいずれかを制御する。例えば、制御装置131は、洗濯物111の乾燥度が低い(乾燥していない)状態において、その洗濯物111に強い風が当たるように、風量と風向の少なくともいずれかを制御する。また、制御装置131は、洗濯物111の乾燥度が高い状態において、その洗濯物111に当たる風が弱くなるように、風量と風向の少なくともいずれかを制御してもよい。また、制御装置131は、洗濯物111の乾燥度が低い状態では風の温度を上昇させることにより、洗濯物111の早期乾燥を促しうる。また、制御装置131は、洗濯物111の乾燥度が低い状態において、除湿力を向上させて、乾燥システムが配置されている空間の湿度を下げることにより、洗濯物111の早期乾燥を促しうる。このように、洗濯物111の乾燥度が推定されることにより、洗濯物111を効率的に乾燥するように乾燥器具141を制御することが可能となる。
【0020】
なお、図1では、洗濯物111を乾燥させる乾燥システムの例を示しているが、本実施形態はこれに限られない。例えば、送信器101と測定装置121とを用いて、洗濯物111の位置に存在する物品の乾燥度(水分量)を推定する任意のシステムに、本実施形態に係る手法を適用することができる。すなわち、物品の水分量を測定する任意のシステムに対して、本実施形態に係る手法を適用することができる。この場合、制御装置131や乾燥器具141は省略されてもよい。
【0021】
(装置構成)
図5に、測定装置121のハードウェア構成の例を示す。測定装置121は、一例において、プロセッサ501、ROM502、RAM503、記憶装置504、及び通信回路505を含んで構成される。プロセッサ501は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM502は、測定装置121が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM503は、プロセッサ501がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置504は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路505は、少なくとも、送信器101が放射し、アンテナ122及びアンテナ123によって検出された無線信号の位相を特定することが可能となるような回路を含んで構成される。例えば、送信器101が、IEEE802.11規格に準拠した無線信号を送出する場合、通信回路505は、IEEE802.11規格に準拠した受信回路を含んで構成される。なお、IEEE802.11規格は一例であり、他の無線通信規格に準拠した無線信号が使用されてもよい。例えば、マルチキャリア信号が使用される場合、通信回路505は、複数のサブキャリアのそれぞれにおける位相値を特定するように構成されうる。また、シングルキャリア信号が使用される場合、通信回路505は、そのシングルキャリアの無線信号についての1つの位相値又は所定時間内の複数のサンプルに関する複数の位相値を取得するように構成されうる。なお、通信回路505は、マルチキャリア信号の場合にも、複数のサブキャリアのそれぞれについて、所定時間内の複数のサンプルに関する複数の位相値を取得するように構成されてもよい。すなわち、周波数方向及び時間方向の両方において、複数の位相値のサンプルが取得されてもよい。また、測定装置121は、制御装置131などの外部の装置との間の通信を行うための通信回路505を別個に有しうる。
【0022】
図6は、測定装置121の機能構成例を示す図である。測定装置121は、その機能構成として、例えば、無線信号検出部601、位相差特定部602、振幅差特定部603、及び乾燥度推定部604を有する。無線信号検出部601は、アンテナ122及びアンテナ123を用いて、送信器101から放射された無線信号を検出する。位相差特定部602は、無線信号検出部601によって検出された、アンテナ122を介して検出された無線信号の第1の位相値と、アンテナ123を介して検出された無線信号の第2の位相値との位相差を特定する。振幅差特定部603は、無線信号検出部601によって検出された、アンテナ122を介して検出された無線信号の第1の振幅値と、アンテナ123を介して検出された無線信号の第2の振幅値との振幅差を特定する。乾燥度推定部604は、位相差特定部602と振幅差特定部603との少なくともいずれかにおいて特定された、位相差と振幅差との少なくともいずれかに基づいて、洗濯物111の乾燥度を推定する。なお、位相差や振幅差は、必ずしも特定されなくてもよく、例えば、図3(B)や図4(B)に関連して説明したように、乾燥度推定部604は、第1の位相値及び第2の位相値、又は第1の振幅値及び第2の振幅値に基づいて、乾燥度を推定してもよい。
【0023】
なお、測定装置121は、送信器101を含んで構成されてもよい。すなわち、送信器101と測定装置121が一体化した装置が、物品の乾燥度(水分量)を推定する装置として実装されてもよい。
【0024】
(処理の流れ)
続いて、図7を用いて、測定装置121によって実行される処理の流れを概説する。測定装置121は、まず、送信器101のアンテナ102から見て洗濯物111を挟んだ位置に配置されたアンテナ122を介して、送信器101から放射された無線信号の第1の検出を実行する(S701)。また、測定装置121は、送信器101のアンテナ102から見て洗濯物111を挟まない見通し位置に配置されたアンテナ123を介して、送信器101から放射された無線信号の第2の検出を実行する(S702)。そして、測定装置121は、第1の検出で取得された無線信号と第2の検出で取得された無線信号の、位相差と振幅差との少なくともいずれかを特定する(S703)。測定装置121は、S703において取得された1つ以上の位相値/振幅値に基づいて、洗濯物111の乾燥度を推定する(S704)。
【0025】
以上のように、本実施形態では、測定装置121が、送信器101のアンテナ102から見て洗濯物111を挟んだ位置に配置されたアンテナ122において検出された無線信号のみならず、アンテナ102から見通し位置に存在するアンテナ123において検出された無線信号に基づいて、洗濯物111の乾燥度を推定する。これによれば、乾燥システムが配置される環境の乾燥度の推定への影響を抑制し、高精度な推定を実行することが可能となる。
【0026】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7