(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164672
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20241120BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080331
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚利
(72)【発明者】
【氏名】入山 浩
(72)【発明者】
【氏名】黒須 悠輔
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087MA12
2H087MA18
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087SA43
2H087SA47
2H087SA50
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA71
2H087SA72
2H087SA76
2H087SB06
2H087SB07
2H087SB12
2H087SB16
2H087SB23
2H087SB25
2H087SB34
2H087SB41
2H087SB44
(57)【要約】
【課題】広画角、高ズーム比、高い光学性能を有する小型軽量のズームレンズを提供する。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、ズーミングのためには不動の正の屈折力を有する第1レンズ群LVと、ズーミングのためにそれぞれ移動する3つ以上のレンズ群を含む中間群Mと、ズーミングのためには不動の正の屈折力を有する後レンズ群LRとを有する。中間群は、広角端から望遠端へのズーミングにおいて像側へ単調に移動する単一のレンズ群または2つ以上の部分レンズ群からなり、全体として負の屈折力を有する第1負レンズ群LVと、中間群において最も像側から物体側へ順に連続して配置され、それぞれズーミングにおいて移動する正の屈折力を有する正レンズ群LPおよび負の屈折力を有する第2負レンズ群LNとを有する。1.00≦f1/fR≦2.00、-5.00≦βPw≦-1.00なる条件を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、ズーミングのためには不動の正の屈折力を有する第1レンズ群と、ズーミングのためにそれぞれ移動する3つ以上のレンズ群を含む中間群と、ズーミングのためには不動の正の屈折力を有する後レンズ群とを有するズームレンズであって、
ズーミングにおいて隣り合うレンズ群の間隔が変化し、
前記中間群は、
広角端から望遠端へのズーミングにおいて像側へ単調に移動する単一のレンズ群または2つ以上の部分レンズ群からなり、全体として負の屈折力を有する第1負レンズ群と、
前記中間群において最も像側から物体側へ順に連続して配置され、それぞれズーミングにおいて移動する正の屈折力を有する正レンズ群および負の屈折力を有する第2負レンズ群とを有し、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記後レンズ群の焦点距離をfR、前記正レンズ群の広角端における横倍率をβPwとするとき、
1.00≦f1/fR≦2.00
-5.00≦βPw≦-1.00
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記正レンズ群の望遠端における横倍率をβPtとするとき、
1.01≦βPt/βPw≦1.20
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記正レンズ群の焦点距離をfPとするとき、
0.30≦fP/fR≦1.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第2負レンズ群の焦点距離をfNとするとき、
-3.00≦fN/fR≦-0.50
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記正レンズ群の焦点距離をfP、前記第2負レンズ群の焦点距離をfNとするとき、
-1.00≦fP/fN≦-0.20
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第1負レンズ群の広角端における焦点距離をfV、前記第正レンズ群の焦点距離をfPとするとき、
-4.00≦fP/fV≦-1.50
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第1負レンズ群の広角端における焦点距離をfV、前記第2負レンズ群の焦点距離をfNとするとき、
2.00≦fN/fV≦10.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第2負レンズ群の広角端における横倍率をβNwとするとき、
0.20≦βNw≦0.80
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第1負レンズ群の広角端における横倍率をβVwとするとき、
-0.35≦βVw≦-0.15
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記正レンズ群に含まれる1つ以上の正レンズのd線における屈折率の平均値をNdpとするとき、
1.60≦NdPp≦1.90
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記正レンズ群に含まれる1つ以上の負レンズのd線を基準とするアッベ数の平均値をΝdnとするとき、
16.0≦ΝdPn≦30.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第2負レンズ群の広角端における横倍率をβNw、前記ズームレンズの広角端から望遠端へのズーム倍率をZ、ズーム倍率がZ0.25となるズーム位置をZa、前記正レンズ群のズーム位置Zaにおける横倍率をβPz、前記第2負レンズ群のズーム位置Zaにおける横倍率をβNzとするとき、
1.20≦βPz/βPw×βNz/βNw≦1.60
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項13】
前記正レンズ群の最も物体側に正レンズが配置されており、
該最も物体側の正レンズの焦点距離をfPG1、前記正レンズ群の焦点距離をfPとするとき、
0.90≦fPG1/fP≦1.80
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項14】
前記中間群において、
前記第1負レンズ群は、3つの負レンズと、2つの正レンズからなり、
前記第2負レンズ群は、1つの負レンズと、1つの正レンズからなり、
前記正レンズ群は、2つの正レンズと、1つの負レンズとからなることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項15】
前記中間群において、
前記第1負レンズ群は、前記部分レンズ群としての第1部分レンズ群と第2部分レンズ群からなり、
前記第1部分レンズ群は、1つの負レンズからなり、
前記第2部分レンズ群は、2つの負レンズと、2つの正レンズからなり、
前記第2負レンズ群は、2つの負レンズと、1つの正レンズからなり、
前記正レンズ群は、2つの正レンズと、1つの負レンズからなることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のズームレンズと、
前記ズームレンズを通して被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に用いられるズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビカメラ、映画用カメラ、デジタルスチルカメラおよびビデオカメラ等の撮像装置に用いられるズームレンズは、小型軽量であり、広画角、高ズーム比および高い光学性能を有することが求められる。また、4Kや8K等の高解像度に対応した撮像素子の使用に伴い、形成する光学像の中心から周辺まで解像力が高くて色収差が少ないことも求められる。
【0003】
広画角で高ズーム比のズームレンズとして、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群と、ズーミングのために移動する負の屈折力の第2レンズ群とを配置したポジティブリード型のズームレンズが知られている。特許文献1および特許文献2には、物体側から像順へ順に、ズーミングのためには移動しない正の屈折力の第1レンズ群と、ズームのために移動する複数の移動レンズ群と、ズームのためには移動しない正の屈折力の後レンズ群からなるズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-215586号公報
【特許文献2】特開2019-39945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2は広角端での半画角が35°程度で、ズーム比が20倍程度のズームレンズを開示している。しかしながら、ズームレンズの更なる広画角化や高ズーム比化のためには、第1レンズ群の大型化や第2レンズ群の移動量の増加によって光学性能や小型化の面で不利となり得る。
本発明は、広画角、高ズーム比および高い光学性能を有する小型軽量のズームレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、ズーミングのためには不動の正の屈折力を有する第1レンズ群と、ズーミングのためにそれぞれ移動する3つ以上のレンズ群を含む中間群と、ズーミングのためには不動の正の屈折力を有する後レンズ群とを有する。ズーミングにおいて隣り合うレンズ群の間隔が変化する。中間群は、広角端から望遠端へのズーミングにおいて像側へ単調に移動する単一のレンズ群または2つ以上の部分レンズ群からなり、全体として負の屈折力を有する第1負レンズ群と、中間群において最も像側から物体側へ順に連続して配置され、それぞれズーミングにおいて移動する正の屈折力を有する正レンズ群および負の屈折力を有する第2負レンズ群とを有する。第1レンズ群の焦点距離をf1、後レンズ群の焦点距離をfR、正レンズ群の広角端における横倍率をβPwとするとき、
1.00≦f1/fR≦2.00
-5.00≦βPw≦-1.00
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記ズームレンズを通して撮像を行う撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、広画角、高ズーム比および高い光学性能を有する小型軽量のズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。具体的な実施例1~6の説明に先立って、各実施例に共通する事項について、実施例1のズームレンズを示す
図1を用いて説明する。
図1は、実施例1のズームレンズの広角端かつ無限遠合焦での構成を示している。
【0010】
ズームレンズにおいて、レンズ群は、広角端と望遠端との間でのズーミング(変倍)に際して一体で移動する1または複数のレンズのまとまりである。すなわち、ズーミングに際して隣り合うレンズ群間の間隔が変化する。レンズ群は、開口絞りを含んでもよい。また、広角端と望遠端はそれぞれ、ズーミングに際して移動するレンズ群が光軸上を機構上または制御上、移動可能な範囲の両端に位置したときの最大画角(最短焦点距離)と最小画角(最大焦点距離)のズーム状態を示す。
【0011】
各実施例のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、第1レンズ群L1と、3つ以上のレンズ群を含む中間群Mと、開口絞りSPと、後レンズ群(リレーレンズ群)LRとを有する。
【0012】
第1レンズ群L1は、ズーミングのためには不動であり(移動せず)、正の屈折力を有する。
【0013】
中間群Mは、負の屈折力を有する第1負レンズ群LVと、中間群Mにおいて最も像側から物体側へ順に連続して配置された、正の屈折力を有する正レンズ群LPおよび負の屈折力を有する第2負レンズ群LNとを有する。第1負レンズ群LVは、広角端から望遠端へのズーミングに際して像側へ単調に移動する。第2負レンズ群LNは、ズーミングに際して物体側に凸形状の軌跡を描くように非単調に移動する。正レンズ群LPは、広角端から望遠端へのズーミングに際して物体側に凸形状の軌跡を描くように移動した後に像側に凸形状の軌跡を描くように非単調に移動する。なお、中間群Mは、他のレンズ群を含んでもよい。また第1負レンズ群LVは、単一のレンズ群として構成されてもよいし、2つ以上の部分レンズ群により構成されてもよい(実施例2参照)。
【0014】
開口絞りSPは、ズーミングに際しては不動である。後レンズ群LRは、ズーミングのためには不動であり、正の屈折力を有する。
【0015】
Iは像面である。像面Iには、撮像素子の撮像面(受光面)や銀塩フィルムのフィルム面(感光面)が配置される。
【0016】
ズームレンズと像面Iとの間には、プリズムや光学フィルタ等のガラスブロックPが配置されている。ただし、ガラスブロックPを設けなくてもよい。
【0017】
また、遠距離物体から近距離物体へのフォーカシング(焦点調節)のためには、第1レンズ群L1の全体または一部が移動する。
【0018】
各実施例(後述する各数値例)のズームレンズにおいて、第1レンズ群L1の焦点距離をf1、後レンズ群LRの焦点距離をfR、中間群Mに含まれる正レンズ群LPの広角端における横倍率をβPwとする。このとき、ズームレンズは、
1.00≦f1/fR≦2.00 (1)
-5.00≦βPw≦-1.00 (2)
なる条件を満足する。
【0019】
第2負レンズ群LNと正レンズ群LPは、広角端からズーム位置Zaへのズーミングに際して物体側へ移動する。このとき、第1負レンズ群LVが同じズーム位置Zaでより物体側に位置することで、ズームレンズの入射瞳位置をより物体側へ位置させることができる。これにより、第1レンズ群L1が過度に大型化するのを回避している。なお、ズーム位置Zaは、広角端から望遠端へのズーム倍率をZとしたとき、ズーム倍率がZ0.25となる位置である。
【0020】
式(1)の条件は、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。f1/fRが式(1)の上限を上回ると、第1レンズ群L1の焦点距離が長くなりすぎて、第1負レンズ群LVの広角端での横倍率が小さくなりすぎる。この結果、広角端から望遠端へのズーミングにおいて第1負レンズ群LVの移動量が大きくなり、ズームレンズの入射瞳が広角端において過度に像側に位置する。したがって、第1レンズ群L1の径が大きくなり、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。f1/fRが式(1)の下限を下回ると、第1レンズ群L1の焦点距離が短くなりすぎて、望遠端における第1レンズ群L1の拡大倍率が大きくなる。この結果、望遠端における諸収差が増加するため、好ましくない。
【0021】
式(2)も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。βPwが式(2)の上限を上回ると、望遠側での像点補正において正レンズ群LPの移動量が大きくなりすぎる。この結果、ズーミングおいて正レンズ群LPが移動するために必要な空間が大きくなり、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。βPwが式(2)の下限を下回ると、広角端からズーム位置Zaへのズーミングにおいて正レンズ群LPの移動に伴う倍率変化が小さくなりすぎる。この結果、ズームレンズの入射瞳が広角端において過度に像側に位置し、第1レンズ群L1の径が増加することでズームレンズが大型化するため、好ましくない。
【0022】
また、各実施例のズームレンズは、以下の式(3)~(14)の条件のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
【0023】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる正レンズ群LPの広角端における横倍率をβPw、正レンズ群LPの望遠端における横倍率βPtとするとき、
1.01≦βPt/βPw≦1.20 (3)
なる条件を満足するのが好ましい。
【0024】
式(3)の条件も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。βPt/βPwが式(3)の上限を上回ると、広角端から望遠端へのズームにおいて、正レンズ群LPの移動量が大きくなりすぎてズームレンズが大型化するため、好ましくない。βPt/βPwが式(3)の下限を下回ると、広角端から望遠端へのズーミングにて第1負レンズ群LVのズーム比が大きくなりすぎて第1負レンズ群LVの移動量が大きくなったり、第1負レンズ群LVの横倍率が大きくなりすぎて広角端で必要な第1レンズ群L1の径が増加したりする。この結果、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。
【0025】
各本実施例のズームレンズは、後レンズ群LRの焦点距離をfR、中間群Mに含まれる正レンズ群LPの焦点距離をfPとするとき、
0.30≦fP/fR≦1.00 (4)
なる条件を満足するのが好ましい。式(4)の条件も広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。fP/fRが式(4)の上限を上回ると、正レンズ群LPの屈折力が弱くなりすぎてズームレンズが大型化するため、好ましくない。fP/fRが式(4)の下限を下回ると、正レンズ群LPの屈折力が強くなりすぎて、ズーミングにおける諸収差の変動が大きくなるため、好ましくない。
【0026】
各実施例のズームレンズは、後レンズ群LRの焦点距離をfR、中間群Mに含まれる第2負レンズ群LNの焦点距離をfNとするとき、
-3.00≦fN/fR≦-0.50 (5)
なる条件を満足するのが好ましい。式(5)の条件も広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。fN/fRが式(5)の上限を上回ると、第2負レンズ群LNの屈折力が弱くなりすぎて、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。fN/fRが式(5)の下限を下回ると、第2負レンズ群LNの屈折力が強くなりすぎて、ズーミングにおける諸収差の変動が大きくなるため、好ましくない。
【0027】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる正レンズ群LPの焦点距離をfP、第2負レンズ群LNの焦点距離をfNとするとき、
-1.00≦fP/fN≦-0.20 (6)
なる条件を満足するのが好ましい。式(6)の条件は、正レンズ群LPと第2負レンズ群LNの焦点距離の関係を規定する。式(6)の条件を満足することで、ズーミングに際しての正レンズ群LPと第2負レンズ群LNの移動量が大きくなりすぎない又は諸収差の変動が大きくなりすぎないという効果が得られる。
【0028】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる第1負レンズ群LVの広角端における焦点距離をfV、正レンズ群LPの焦点距離をfPとするとき、
-4.00≦fP/fV≦-1.50 (7)
なる条件を満足するのが好ましい。第1負レンズ群LVと正レンズ群LPの焦点距離の関係を規定する。式(7)の条件を満足することで、ズーミングに際しての第1負レンズ群LVと正レンズ群LPの移動量が大きくなりすぎない又は諸収差の変動が大きくなりすぎないという効果が得られる。
【0029】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる第1負レンズ群LVの広角端における焦点距離をfV、第2負レンズ群LNの焦点距離をfNとするとき、
2.00≦fN/fV≦10.00 (8)
なる条件を満足するのが好ましい。式(8)の条件は、第1負レンズ群LVと第2負レンズ群LNの焦点距離の関係を規定している。式(8)の条件を満足することで、ズーミングに際しての第1負レンズ群LVと第2負レンズ群LNの移動量が大きくなりすぎない又は諸収差の変動が大きくなりすぎないという効果が得られる。
【0030】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる第2負レンズ群LNの広角端における横倍率をβNwとするとき、
0.20≦βNw≦0.80 (9)
なる条件を満足するのが好ましい。式(9)の条件も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。βNwが式(9)の上限を上回ると、望遠側での像点補正において第2負レンズ群LNの移動量が大きくなりすぎて、ズーミングおいて第2負レンズ群LNが移動するために必要な空間が大きくなり、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。βNwが式(9)の下限を下回ると、広角端からズーム位置Zaへのズーミングにおいて第1負レンズ群LNの移動に伴う倍率変化が小さくなりすぎて、ズームレンズの入射瞳が広角端において過度に像側に位置する。この結果、第1レンズ群L1の径が増加して、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。
【0031】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる第1負レンズ群LVの広角端における横倍率をβVwとするとき、
-0.35≦βVw≦-0.15 (10)
なる条件を満足するのが好ましい。式(10)の条件も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。βVwが式(10)の上限を上回ると、ズーミングおいて第1負レンズ群LVの移動量が大きくなりすぎて、第1負レンズ群LVが移動するために必要な空間が大きくなり、ズームレンズが大型化するため、好ましくない。βVwが式(10)の下限を下回ると、望遠側での第1負レンズ群LVの像点位置の変化が大きくなりすぎて、第2負レンズ群LNと正レンズ群LPの移動量が大きくなりすぎる。この結果、ズームレンズが大型化したりズーミングにおける諸収差の変動が大きくなりすぎたりするため、好ましくない。
【0032】
各実施例のズームレンズは、中間群Mの正レンズ群LPに含まれる1つ以上の正レンズのd線における屈折率の平均値をNdPpとするとき、
1.60≦NdPp≦1.90 (11)
なる条件を満足するのが好ましい。式(11)も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。NdPpが式(11)の下限を下回ると、ズーミングにおける諸収差の変動が大きくなりすぎるため、好ましくない。NdPpが式(11)の上限を上回ると、材料の分散が大きくなることで、ズーミングにおける色収差の変動が大きくなりすぎるため、好ましくない。
【0033】
各実施例のズームレンズは、中間群Mの正レンズ群LPに含まれる1つ以上の負レンズのd線を基準とするアッベ数の平均値をVdPnとするとき、
16.0≦νdPn≦30.0 (12)
なる条件を満足するのが好ましい。
【0034】
d線を基準とするアッベ数νdは、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)およびC線(波長656.3nm)における屈折率をそれぞれ、NF、NdおよびNCとするとき、νd=(Nd-1)/(NF-NC)により定義される。
【0035】
式(12)も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。νdPnが式(12)の上限を上回ると、ズーミングにおける色収差の変動が大きくなりすぎるため、好ましくない。また、正レンズ群LP内の負レンズの曲率が小さくなりすぎることで、負レンズの体積が大きくなり、正レンズ群LPが大型化する。この結果、ズーミングに際して正レンズ群LPを移動させる機構が大型化するため、好ましくない。νdPnが式(12)の下限を下回ると、可視域を透過する負レンズの光学材料を得ることが困難となるため、好ましくない。
【0036】
各実施例のズームレンズにおいて、中間群Mに含まれる正レンズ群LPの広角端における横倍率をβPw、第2負レンズ群LNの広角端における横倍率をβNwとする。また、正レンズ群LPのズーム位置Zaにおける横倍率をβPz、第2負レンズ群LNのズーム位置Zaにおける横倍率をβNzとする。このとき、各実施例のズームレンズは、
1.20≦βPz/βPw×βNz/βNw≦1.60 (13)
なる条件を満足するのが好ましい。式(13)も、広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。式(13)の値が該式の上限を上回ると、ズーム位置Zaにおける第2負レンズ群LNおよび正レンズ群LPが物体側に位置しすぎて、ズーム位置Zaでの諸収差が大きくなりすぎるため、好ましくない。式(13)の値が該式の下限を下回ると、ズームレンズの入射瞳が過度に像側に位置することになり、第1レンズ群L1が大型化するため、好ましくない。
【0037】
各実施例のズームレンズは、中間群Mに含まれる正レンズ群LPのうち最も物体側に配置された正レンズG1の焦点距離をfPG1、正レンズ群LPの焦点距離をfPとするとき、
0.90≦fPG1/fP≦1.80 (14)
なる条件を満足するのが好ましい。式(14)も広画角、高ズーム比、小型軽量および高い光学性能に関して有利なズームレンズを得るための条件を示している。fPG1/fPが式(14)の条件を満足しないと、ズーミングにおける諸収差の変動が大きくなりすぎるため、好ましくない。
【0038】
なお、式(1)~(14)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0039】
1.10≦f1/fR≦1.90 (1a)
-4.50≦βPw≦-1.80 (2a)
1.03≦βPt/βPw≦1.15 (3a)
0.50≦fP/fR≦0.90 (4a)
-2.00≦fN/fR≦-1.00 (5a)
-0.80≦fP/fN≦-0.30 (6a)
-3.00≦fP/fV≦-2.00 (7a)
3.00≦fN/fV≦8.00 (8a)
0.30≦βNw≦0.55 (9a)
-0.30≦βNw≦-0.20 (10a)
1.65≦NdPp≦1.85 (11a)
16.0≦νdPn≦27.0 (12a)
1.30≦βPz/βPw×βNz/βNw≦1.50 (13a)
1.10≦fPG1/fP≦1.60 (14a)
また、式(1)~(14)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0040】
1.15≦f1/fR≦1.85 (1b)
-4.20≦βPw≦-2.00 (2b)
1.035≦βPt/βPw≦1.135 (3b)
0.55≦fP/fR≦0.85 (4b)
-1.70≦fN/fR≦-1.00 (5b)
-0.75≦fP/fN≦-0.40 (6b)
-3.00≦fP/fV≦-2.20 (7b)
3.10≦fN/fV≦6.5 (8b)
0.33≦βNw≦0.50 (9b)
-0.28≦βNw≦-0.20 (10b)
1.67≦NdPp≦1.82 (11b)
17.0≦νdPn≦25.0 (12b)
1.33≦βPz/βPw×βNz/βNw≦1.46 (13b)
1.10≦fPG1/fP≦1.50 (14b)
以下、実施例1~6のズームレンズを具体的に説明する。また、実施例6の後には、実施例1~6のそれぞれに対応する数値例1~6を示す。各数値例において、面番号iは、物体側から数えた光学面の順番を示している。
【実施例0041】
図1に示す実施例1(数値例1)のズームレンズにおいて、第1レンズ群L1は、第1面から第12面を有し、1つの負レンズと、5つの正レンズからなる。中間群LMは、第13面から第28面を有する。第13面から第20面を有する第1負レンズ群LVは、物体側の面が非球面となっている1つの負レンズと、2つの負レンズと、2つの正レンズからなる。第21面から第23面を有する第2負レンズ群LNは、1つの負レンズと、1つの正レンズからなる。第24面から第28面を有する正レンズ群LPは、像側の面が非球面となっている1つの正レンズと、1つの負レンズと、1つの正レンズからなる。開口絞りSPは、第29面である。後レンズ群LRは、第30面から第42面を有し、3つの負レンズと、5つの正レンズからなる。
【0042】
数値例1において、rは第i面の曲率半径(mm)、dは第i面と第(i+1)面間のレンズ厚または空気間隔(mm)、nd6およびNdは、フラウンホーファー線のd線における1気圧での絶対屈折率を示している。νdは第i面と第(i+1)面間の光学材料のd線を基準とするアッベ数であり、前述した通りに定義される。半画角ω(°)は、ズームレンズが使用される撮像装置の撮像素子の対角サイズを2Yとし、広角端でのズームレンズの焦点距離をfwとして、
ω=arctan(Y/fw)
なる式で表される。最大像高(mm)は、対角サイズ2Y(例えば11.00mm)の半分Y(例えば5.50mm)に相当する。BFはバックフォーカス(mm)であり、ズームレンズの最終面(最も像側のレンズ面)から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものとする。レンズ全長(mm)は、ズームレンズの最前面(最も物体側のレンズ面)から最終面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた長さである。
【0043】
面番号に付された「*」は、その面が非球面形状を有する面であることを意味する。非球面形状は、Xを光軸方向での面頂点からの変位量、Hを光軸に直交する方向における光軸からの高さ、光の進行方向を正とし、Rを近軸曲率半径、Kを円錐定数、A3~A16を非球面係数とするとき、以下の式で表される。なお、「e±Z」は「×10±Z」を意味する。以上の数値例の説明は、後述する他の数値例でも同じである。
【0044】
【0045】
図2は、数値例1のズームレンズの無限遠合焦状態における(a)広角端、(b)ズーム位置Za、(c)中間ズーム位置および(d)望遠端での縦収差(球面収差、非点収差、歪曲および色収差)を示している。球面収差図は、実線、二点鎖線、一点鎖線および破線によりそれぞれ、d線(波長587.6nm)、g線(波長435.8nm)、C線(波長656.3nm)およびF線(波長486.1nm)における球面収差を示している。非点収差図は、破線および実線によりそれぞれ、メリディオナル像面およびサジタル像面での非点収差を示している。歪曲収差図は、e線における歪曲収差を示している。色収差図は、実線、二点鎖線、一点鎖線および破線によりそれぞれ、e線、g線、C線およびF線における倍率色収差を示している。Fnoは、Fナンバーを、ωは半画角(°)を表す。なお、球面収差図の横軸のフルスケールは±0.400mmであり、非点収差図の横軸のフルスケールも±0.400mmである。歪曲収差図の横軸のフルスケールは±10.000%である。色収差図の横軸のフルスケールは±0.100mmである。以上の収差図の説明は、後述する他の数値例でも同じである。
【0046】
数値例1における式(1)~(14)の値を表1にまとめて示す。また、数値例1における式(1)~(14)に含まれる変数の値を表2にまとめて示す。数値例1のズームレンズは、式(1)~(14)の条件をすべて満足し、広画角、高ズーム比および高い光学性能を有する小型軽量のズームレンズである。