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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164677
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】作業機械の回転角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20241120BHJP
   G01B 21/22 20060101ALI20241120BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20241120BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01B11/26 Z
G01B21/22
G01D5/347 A
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080338
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】513121513
【氏名又は名称】角 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】角 和樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝佳
【テーマコード(参考)】
2D003
2F065
2F069
2F103
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003BA02
2D003BA03
2D003BA04
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB05
2F065AA06
2F065AA39
2F065BB15
2F065BB16
2F065CC11
2F065DD03
2F065FF11
2F065FF41
2F065GG04
2F065HH04
2F065MM04
2F065QQ25
2F069AA06
2F069AA83
2F069BB40
2F069DD19
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG09
2F069HH09
2F069JJ17
2F103BA37
2F103CA03
2F103DA13
2F103EA05
2F103EA12
2F103EB02
(57)【要約】
【課題】土砂等の影響を受けにくく、本体部に対する移動部の回転角度をより正確に検出できる作業機械の回転角度検出装置を提供すること。
【解決手段】回転角度検出装置30は、上部回転体と共に基準軸回りに回転可能であり、測定対象物までの距離を測定する距離測定センサ32と、下部回転体と共に基準軸回りに回転可能であり、距離測定センサ32と離間して設けられ、基準軸回りに1回転する間に距離測定センサ32との間の距離が連続又は不連続に変化する測定対象物としての側面部131を有する反射体31と、反射体31が基準軸回りに1回転する間の距離測定センサ32から側面部131までの距離と前記上部回転体に対する前記下部回転体の基準軸回りの回転角度とを対応付けたデータを記憶する記憶部34と、距離測定センサ32で測定された距離と前記記憶部34に記憶されたデータとに基づいて、前記下部回転体の回転角度を取得する制御部35とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軸回りに回転可能な上部回転体を有する本体部と、前記上部回転体に対して基準軸回りに回転可能に連結された下部回転体を有する移動部とを備え、前記本体部と前記移動部とが無限回転可能な作業機械の回転角度検出装置であって、
前記本体部に設けられ、前記上部回転体と共に基準軸回りに回転可能であり、測定対象物までの距離を測定する距離測定センサと、
前記下部回転体と共に基準軸回りに回転可能であり、前記距離測定センサと対向するように離間して設けられ、基準軸回りに1回転する間に前記距離測定センサとの間の距離が連続又は不連続に変化する測定対象物としての側面部を有する反射体と、
前記反射体が基準軸回りに1回転する間の前記距離測定センサから前記側面部までの距離と前記上部回転体に対する前記下部回転体の基準軸回りの回転角度とを対応付けたデータを記憶する記憶部と、
前記距離測定センサで測定された前記側面部までの距離と、前記記憶部に記憶されたデータとに基づいて、前記距離に対応付けられた前記上部回転体に対する前記下部回転体の基準軸回りの回転角度を取得する制御部と、
を備える作業機械の回転角度検出装置。
【請求項2】
前記側面部は、基準軸回りに1回転する間に曲率が一定の割合で変化するクロソイド曲線形状を有する、
請求項1に記載の作業機械の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記反射体は、前記下部回転体の外周部分に設けられる、
請求項1又は2に記載の作業機械の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記距離測定センサは、レーザ距離センサである、
請求項1又は2に記載の作業機械の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記本体部の位置及び正面方向を検出するための位置情報を取得する位置情報取得装置を備える、
請求項1又は2に記載の作業機械の回転角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バックホウ、パワーショベル等の作業機械を遠隔操作したり、自動運転したりするための技術が開発されている。例えば、GPSの位置情報に基づいて作業機械の位置や姿勢を検出するシステムが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-296683号公報
【特許文献2】特開平10-88624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックホウやパワーショベル等の作業機械は、本体部と移動部とが無限回転可能に連結されている。この種の作業機械は、移動部にGPS受信機を設けるスペースがほとんどなく、無限回転のために電源ケーブルの配線も難しい。そのため、GPS受信機は、本体部に設けられる。作業機械の本体部の位置及び正面方向は、本体部で受信するGPSの位置情報により検出できる。しかし、移動部は、本体部と異なる方向にも回転するため、本体部で受信するGPSの位置情報から、本体部に対する移動部の回転角度(旋回位置)を把握することはできない。作業機械を遠隔操作や自動運転で走行させる場合、本体部に対する移動部の回転角度が分からないと、作業機械を目的位置に誘導することが難しい。
【0005】
作業機械の本体部と移動部にロータリーセンサ、光学式エンコーダ等の回転角度センサを設けることにより、本体部に対する移動部の回転角度を検出できる。しかし、既存の作業機械のほとんどは、後付けで回転角度センサを設けることが難しい。既存の作業機械に後付けで回転角度センサと同じ機能を設ける場合、例えば、移動部の下部回転体の外周にベルトを装着し、そのベルトの回転をエンコーダで検出する構成が考えられる。しかし、作業機械の作業中にベルトとエンコーダとの間に土砂や泥(以下、「土砂等」ともいう)が詰まったり、土砂等の詰まりによりベルトやエンコーダの位置がずれたりして、回転角度の検出精度が低下することが懸念される。
【0006】
本開示の目的は、土砂等の影響を受けにくく、本体部に対する移動部の回転角度をより正確に検出できる作業機械の回転角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る作業機械の回転角度検出装置は、基準軸回りに回転可能な上部回転体を有する本体部と、前記上部回転体に対して基準軸回りに回転可能に連結された下部回転体を有する移動部とを備え、前記本体部と前記移動部とが無限回転可能な作業機械の回転角度検出装置であって、前記本体部に設けられ、前記上部回転体と共に基準軸回りに回転可能であり、測定対象物までの距離を測定する距離測定センサと、前記下部回転体と共に基準軸回りに回転可能であり、前記距離測定センサと対向するように離間して設けられ、基準軸回りに1回転する間に前記距離測定センサとの間の距離が連続又は不連続に変化する測定対象物としての側面部を有する反射体と、前記反射体が基準軸回りに1回転する間の前記距離測定センサから前記側面部までの距離と前記上部回転体に対する前記下部回転体の基準軸回りの回転角度とを対応付けたデータを記憶する記憶部と、前記距離測定センサで測定された前記側面部までの距離と、前記記憶部に記憶されたデータとに基づいて、前記距離に対応付けられた前記上部回転体に対する前記下部回転体の基準軸回りの回転角度を取得する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る作業機械の回転角度検出装置によれば、土砂等の影響を受けにくく、本体部に対する移動部の回転角度をより正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回転角度検出装置30を備える作業機械1の側面図である。
図2】作業機械1の平面視における概念図である。
図3】回転角度検出装置30の構成を示すブロック図である。
図4】反射体31の構成例を示す図である。
図5】記憶部34に記憶される距離Dsと回転角度θとを対応付けたデータの一例を示す図である。
図6】(A)~(D)は、移動部20の回転角度θを説明する概念図である。
図7】(A)~(D)は、距離測定センサ32と反射体31との間の距離の変化を説明する概念図である。
図8】回転角度検出装置30で実行される回転角度検出処理の手順を示すフローチャートである。
図9】反射体31の側面部131のクロソイド曲線形状を多角形で構成した場合の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様に係る作業機械の回転角度検出装置の実施形態について説明する。本明細書に添付した図面は、いずれも模式図又は概念図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
【0011】
本明細書等においては、図1及び図2に示す作業機械1の前後方向をX(X1-X2)方向、左右方向をY(Y1-Y2)方向、上下方向となる高さ方向をZ(Z1-Z2)方向として説明する。なお、作業機械1は、様々な方向に進行可能であるが、実施形態では、図1に示すキャビン11の正面方向(操縦者から見て正面方向)を前方向X1として説明する。キャビン11を記載していない図においては、キャビン11の正面方向を矢印マークで示す。また、本明細書においては、「方向」を適宜に「側」ともいう。
【0012】
図1は、回転角度検出装置30を備える作業機械1の側面図である。図2は、作業機械1の平面視における概念図である。図2では、本体部10及び移動部20の各部を適宜に簡略化又は省略している。図3は、回転角度検出装置30の構成を示すブロック図である。図4は、記憶部34に記憶される距離Dsと回転角度θとを対応付けたデータの一例を示す図である。
【0013】
図1に示す作業機械1は、例えば、バックホウ、パワーショベル等の建設現場で使用される重機である。後述するように、作業機械1は、回転角度検出装置30を設けることを想定していない既存の作業機械である。作業機械1は、操縦者が搭乗することにより手動運転できるが、本実施形態では、作業機械1に操縦者が搭乗することなく遠隔操作や自動運転される場合について説明する。作業機械1は、本体部10、移動部20及び回転角度検出装置30(図3参照)を備える。
【0014】
本体部10は、作業アーム12(後述)を動作させるための装置を有する筐体であり、移動部20の上側Z1に配置される。本体部10は、キャビン11、作業アーム12、機構部13、本体ベース14、上部回転体15等を備える。キャビン11は、手動運転時に操縦者が搭乗する筐体である。キャビン11には、左右の動輪(後述)の回転を独立して制御する走行レバーのほか、走行レバーを遠隔操作するための遠隔操縦装置(いずれも不図示)等が設けられる。また、キャビン11には、回転角度検出装置30の記憶部34、制御部35、通信部36(後述)を一体化したコントロールボックス130が設けられる。
【0015】
作業アーム12は、本体部10に基端側が支持される構造体である。作業アーム12は、アーム本体、油圧シリンダ、油圧ホース、バケット等(符号を省略)を有する。機構部13は、移動部20や作業アーム12に油圧動力を供給する油圧装置のほか、作業アーム12と釣り合いを取るためのカウンタウエイト等(いずれも不図示)を備える。キャビン11、作業アーム12、機構部13は、本体ベース14の上に設けられる。本体ベース14は、上述したキャビン11等を支持する構造体である。本体部10は、本体ベース14の下側Z2に上部回転体15を備える。上部回転体15は、本体部10と共に回転する部材であり、基準軸OA(後述)回りに回転可能に構成されている。図1及び図2に示すように、本体部10は、本体ベース14の下側Z2において、上部回転体15と離間した位置に距離測定センサ32を備える。また、図1及び図2に示すように、本体部10は、一対のGPS受信機33を備える。距離測定センサ32、GPS受信機33については、後述する。
【0016】
移動部20は、本体部10を移動させるための機構を備える構造体である。移動部20は、本体部10の下側Z2に設けられる。図1に示すように、移動部20は、クローラ21、走行ベース22、下部回転体25等を備える。クローラ21は、左右独立して制御される走行装置である。図2に示すように、クローラ21は、作業機械1の左右方向Yの両側にそれぞれ設けられる。図1に示すように、クローラ21は、動輪23、走行ベルト24を備える。動輪23は、機構部13から供給される油圧動力により駆動される車輪である。一対の動輪23は、前後方向Xの両端にそれぞれ設けられる。走行ベルト24は、動輪23により駆動される無端状のベルト部材である。走行ベルト24は、一対の動輪23の間に架け渡されている。左右一対のクローラ21は、走行ベース22に支持されている。
【0017】
走行ベース22は、クローラ21、下部回転体25(後述)を支持する構造体である。下部回転体25は、上部回転体15に対して基準軸OA回りに回転可能に連結された部材である。下部回転体25及び前述の上部回転体15は、鉄鋼材料(例えば、鋳鉄、炭素鋼等)により構成されている。基準軸OAは、上部回転体15と下部回転体25の共通の回転中心となる軸である。「基準軸OA回りに回転可能」とは、基準軸OAを中心に時計回り、反時計回りに回転可能なことをいう。本体部10と移動部20は、上部回転体15と下部回転体25において、互いに独立して無限回転可能に構成されている。図2において、「CL1」は、本体部10の基準軸OAを通る中心線である。同じく「CL2」は、移動部20の基準軸OAを通る中心線である。図2に示す作業機械1において、本体部10の中心線CL1と、移動部20の中心線CL2は、重なり合った状態となる。
【0018】
図1及び図2に示すように、下部回転体25の外周部分には、反射体31が装着されている。反射体31は、下部回転体25と共に基準軸OA回りに回転可能な部材である。反射体31は、距離測定センサ32と対向するように離間して設けられている。反射体31は、下部回転体25の外周部分に後付けで装着できる。すなわち、反射体31は、回転角度検出装置30を設けることを想定していない既存の作業機械1に装着できる。反射体31(側面部131)については、後述する。
【0019】
図3に示すように、回転角度検出装置30は、反射体31、距離測定センサ32、GPS受信機33、記憶部34、制御部35及び通信部36を備える。前述したように、反射体31は、移動部20の下部回転体25に設けられる(図2参照)。距離測定センサ32、GPS受信機33は、本体部10に設けられる(図1参照)。また、記憶部34、制御部35及び通信部36は、図1に示すように、コントロールボックス130に一体化され、本体部10のキャビン11に設けられる。
【0020】
図2に示すように、反射体31は、側面部131を有する。側面部131は、反射体31が基準軸OA回りに1回転する間に、距離測定センサ32との間の距離が連続的に変化する。本実施形態の反射体31において、側面部131は、基準軸OA回りに1回転する間に曲率が一定の割合で変化するクロソイド曲線形状を有する。すなわち、側面部131は、基準軸OA回りに1回転する間に、距離測定センサ32との間の距離が連続的に変化し、距離測定センサ32との間の距離が異なる位置で同じになることはない。
【0021】
反射体31の側面部131は、距離測定センサ32(後述)の測定方式により、光反射率を高くしてもよいし、高くしなくてもよい。反射体31の側面部131の光反射率を高くする場合、例えば、側面部131に反射テープを装着することにより光反射率を高くできる。反射体31に適用可能な反射テープ又は反射テープの基材として、例えば、レトロリフレクティブシート、メタライズドポリエステルフィルム、光学フィルム、アルミニウム箔、ポリ塩化ビニル(PVC)シート等が挙げられる。また、反射体31の側面部131の光反射率を高くしない場合、反射体31の外表面に黒色等の塗料を塗布してもよいし、側面部131を構成する部材(例えば、後述の金属板)の生地色のままとしてもよい。
【0022】
ここで、本実施形態における反射体31の構成について説明する。図4は、反射体31の構成を示す図である。図4に示す反射体31は、マグネットベルト331、サポート材332及び反射部333を備える。マグネットベルト331は、ゴム、樹脂等に粉末状の磁性材料(フェライト等)を混入させた帯状の部材である。マグネットベルト331は、磁力を有するため、そのまま下部回転体25に装着できる。マグネットベルト331の磁力は、作業機械1の動作中に、下部回転体25から外れたり、位置がずれたりしない程度に設定される。なお、マグネットベルト331の代わりに、磁性材料を含まないゴム又は樹脂のベルトを用いてもよい。その場合、ベルトを下部回転体25に接着剤等により取り付けることができる。
【0023】
サポート材332は、反射部333を支持する部材である。サポート材332は、マグネットベルト331上に、間隔を空けて配置されている。サポート材332は、マグネットベルト331上に配置される位置により高さが異なる。図4に示す起点131aから時計回りで徐々に高さが小さくなるように形成されている。各サポート材332の高さは、反射体31を下部回転体25に装着した状態で、頂部を結ぶ仮想線がクロソイド曲線形状なるように設定される。サポート材332としては、例えば、ゴム、樹脂等を用いることができる。各サポート材332は、例えば、接着剤によりマグネットベルト331に取り付けることができる。反射部333は、反射体31の側面部131を構成する細長い帯状の部材である。反射部333としては、例えば、金属板、樹脂板等を用いることができる。反射部333は、例えば、接着剤によりサポート材332に取り付けることができる。前述したように、側面部131の光反射率を高くする場合、反射部333の外周表面に前述の反射テープ等を貼り付けてもよい。また、側面部131の光反射率を高くしない場合、反射体31の外表面に黒色等の塗料を塗布してもよいし、側面部131を構成する部材の生地色のままとしてもよい。
【0024】
上記のように構成された反射体31は、下部回転体25への取り付け部分(マグネットベルト331)に磁力を有するため、接着剤等を用いることなしに、下部回転体25に取り付けることができる。なお、下部回転体25に取り付けた反射体31の位置が適切でない場合、反射体31(マグネットベルト331)を下部回転体25から簡単に引き剥がすことができる。そのため、反射体31の位置を修正して、下部回転体25に再度取り付ける作業を容易に行うことができる。また、下部回転体25に反射体31を取り付けた状態において、反射体31と距離測定センサ32との間は離間しており、作業機械1の動作中に接触することがない。そのため、マグネットベルト331の磁力を適切に設定することにより、作業機械1の動作中に、反射体31が下部回転体25から外れたり、位置がずれたりすることを抑制できる。
【0025】
図3に戻り、距離測定センサ32は、反射体31の側面部(測定対象物)131までの距離を測定する光学測定装置である。本実施形態の距離測定センサは、レーザ距離センサである。距離測定センサで測定された側面部131までの距離(以下、「距離Ds」ともいう)は、制御部35に送信される。
【0026】
GPS受信機33は、GPS衛星から送信される電波(衛星信号)を受信し、3次元位相等の計算方法により位置情報を取得する機器(位置情報取得装置)である。一対のGPS受信機33で取得されたそれぞれの位置情報は、制御部35に送信される。図2に示すように、一対のGPS受信機33は、本体部10の中心線CL1を間に挟んで所定位置に等間隔で配置されている。本体部10(キャビン11)と一対のGPS受信機33との位置関係は固定されているため、制御部35(後述)において、2つのGPS受信機33のそれぞれの位置で取得された位置情報に基づいて、中心線CL1を基準とする本体部10の正面方向を算出できる。
【0027】
なお、位置情報を取得するための位置情報取得装置は、上述したGPS受信機に限定されない。位置情報取得装置として、例えば、固定LiDAR(光学式レーダ)、無線ビーコン、測量機器(トータルステーション)等を用いることができる。特に、作業機械1を屋内(工場、倉庫等の建物内)で使用する場合、GPSの電波が届きにくく、位置情報の取得が難しい。そのため、位置情報取得装置として、GPSの電波に依存しない固定LiDAR等を用いることにより、本体部10の位置情報をより適切に取得できる。
【0028】
記憶部34は、図4に示すように、反射体31が基準軸OA回りに1回転する間の距離測定センサ32から側面部131までの距離Dと、上部回転体15(本体部10)に対する下部回転体25(移動部20)の基準軸OA回りの回転角度θとを対応付けたデータを記憶する記憶装置である。なお、図4に示す距離Dと回転角度θの数値は一例であり、図4に記載した数値に限定されない。例えば、距離Dの範囲は、距離測定センサ32の精度にもよるが、100~200mm程度であってもよい。
【0029】
図3に戻り、通信部36は、遠隔操作や自動運転のシステム装置(不図示)との間で無線通信によりデータの送受信を行う通信インターフェースである。
制御部35は、距離測定センサ32から取得した距離Ds、記憶部34に記載されたデータ、GPS受信機33から取得した位置情報等に基づいて、後述する回転角度検出装置30の動作を制御する制御ユニットであり、CPU(中央処理装置)、メモリ等を含むマイクロプロセッサにより構成される。なお、制御部35の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェアのみで実現されてもよい。
【0030】
制御部35は、距離測定センサ32から取得した距離Dsと、記憶部34に記憶されたデータ(図4参照)とに基づいて、本体部10に対する移動部20の基準軸OA回りの回転角度θ(以下、「移動部20の回転角度θ」ともいう)を取得する。具体的には、制御部35は、記憶部34に記憶されたデータの中から、距離Dsに対応する距離Dを検索し、その距離Dに対応付けられた回転角度θを取得する。なお、距離測定センサ32から取得した距離Dsが1.0mm未満の数値を含む場合、端数処理により距離Dsの近似値を求めてもよい。例えば、測定された距離Dsが51.3mmであれば、小数点以下の数値を四捨五入して得た51.0mmを距離Dsとしてもよい。
【0031】
制御部35は、GPS受信機で受信した位置情報に基づいて、作業機械1の位置及び正面方向を算出する。また、制御部35は、算出した作業機械1(本体部10)の正面方向と本体部10に対する移動部20の回転角度θとに基づいて、移動部20の向き(中心線CL2の向き)を算出する。制御部35は、本体部10に対する移動部20の回転角度θ、作業機械1の位置及び正面方向に関する情報、移動部20の向きに関する情報を、通信部36を介して遠隔操作や自動運転のシステム装置(不図示)に送信する。遠隔操作のシステム装置において、上記情報に基づいて作業機械1の位置、姿勢(本体部10及び移動部20の向き)等をモニタ上にグラフィック表示することにより、遠隔操作のオペレータは、作業機械1の進行方向や本体部10及び移動部20の回転角度等をリアルタイムに把握できる。また、自動運転のシステム装置において、上記情報に基づいて作業機械1の進行方向や本体部10及び移動部20の回転角度等を制御することにより、作業機械1を目的位置により正確に誘導できる。
【0032】
次に、本体部10に対して移動部20が基準軸OA回りに回転したときの距離測定センサ32と反射体31(側面部131)との間の距離の変化について説明する。図6(A)~(D)は、移動部20の回転角度θを説明する概念図である。図6(A)~(D)は、本体部10に対して移動部20が反時計回りに回転した様子を90°毎に示している。図7(A)~(D)は、距離測定センサ32と反射体31との間の距離の変化を説明する概念図である。図7(A)~(D)は、図6(A)~(D)に対応する図であって、本体部10に対して移動部20が反時計回りに回転したときの様子を示している。すなわち、図7(A)~(D)は、上部回転体15に対して反射体31(下部回転体25)が反時計回りに回転したときの距離測定センサ32との間の距離の変化を90°毎に示している。以下の説明においては、図7(A)に示すように、反射体31の側面部131の起点131aが距離測定センサ32の測定面(中心)32aと対向する位置を基準位置とする。
【0033】
図6(A)に示すように、作業機械1において、本体部10の中心線CL1と移動部20の中心線CL2とが重なり合っている場合、すなわち、本体部10に対して移動部20が回転していない場合、図7(A)に示すように、反射体31の起点131aは、距離測定センサ32の測定面32aと対向する位置(基準位置)にある。基準位置において、距離測定センサ32との間の距離Ds(Ds0)は最小となる。制御部35は、距離測定センサ32で取得された距離Ds0(本例では50mm)と、記憶部34に記憶されたデータ(図4参照)とに基づいて、反射体31の回転角度θ(0°)を取得する。
【0034】
図6(B)に示すように、作業機械1において、本体部10に対して移動部20が反時計方向に90°回転した場合、図7(B)に示すように、反射体31と距離測定センサ32との間の距離Ds(Ds1)は、回転角度0°のときの距離Ds0より長くなる。制御部35は、距離測定センサ32で取得された距離Ds1(本例では62.5mm)と、記憶部34に記憶されたデータとに基づいて、反射体31の回転角度θ(90°)を取得する。
【0035】
図6(C)に示すように、作業機械1において、本体部10に対して移動部20が反時計方向に180°回転した場合、図7(C)に示すように、反射体31と距離測定センサ32との間の距離Ds(Ds2)は、回転角度90°のときの距離Ds1より長くなる。制御部35は、距離測定センサ32で取得された距離Ds2(本例では75.0mm)と、記憶部34に記憶されたデータとに基づいて、反射体31の回転角度θ(180°)を取得する。
【0036】
図6(D)に示すように、作業機械1において、本体部10に対して移動部20が反時計方向に270°回転した場合、図7(D)に示すように、反射体31と距離測定センサ32との間の距離Ds(Ds3)は、回転角度180°のときの距離Ds2より長くなる。制御部35は、距離測定センサ32で取得された距離Ds3(本例では87.5mm)と、記憶部34に記憶されたデータとに基づいて、反射体31の回転角度θ(270°)を取得する。
【0037】
図6(D)に示す状態から、移動部20が反時計方向に更に90°回転した場合、すなわち、本体部10に対して移動部20が反時計方向に360°回転した場合、再び図7(A)に示すように、反射体31の起点131aは、距離測定センサ32の測定面32aと対向する基準位置に戻る。これにより、距離測定センサ32との間の距離Ds(Ds0)は再び最小となるため、制御部35は、距離測定センサ32で取得された距離Ds0(本例では50mm)と、記憶部34に記憶されたデータとに基づいて、反射体31の回転角度θ(0°)を取得する。
【0038】
なお、図6(A)~(D)及び図7(A)~(D)では、本体部10に対して移動部20が反時計回りに回転する場合の例を示しているが、本体部10に対して移動部20が時計回りに回転した場合も同様であり、距離測定センサ32との間の距離Dsに応じて移動部20の回転角度θを検出できる。また、本体部10に対する移動部20の回転角度は、0°(360°)、90°、180°、270°を例として挙げたが、これに限らず、どのような回転角度であってもよい。
【0039】
次に、上述した回転角度検出装置30で実行される回転角度検出の処理内容について、図8を参照しながら説明する。図8は、回転角度検出装置30で実行される回転角度検出処理の手順を示すフローチャートである。図8に示す回転角度検出処理は、作業機械1の稼働中において、例えば、数十ms~100ms程度の間隔で繰り返し実行される。
【0040】
図8に示すステップS101において、制御部35は、距離測定センサ32から距離Dsを取得する。
ステップS102において、制御部35は、記憶部34に記憶されているデータ(図4参照)の中から、測定された距離Dsに対応する距離Dを検索する。なお、前述したように、距離Dsが1.0mm未満の数値を含む場合、端数処理により距離Dsの近似値を求めてもよい。
【0041】
ステップS103において、制御部35は、検索した距離Dと、記憶部34に記憶されているデータとに基づいて、本体部10に対する移動部20の基準軸OA回りの回転角度θを取得する。
ステップS104において、制御部35は、取得した回転角度θを含むデータを、通信部36を介して遠隔操作や自動運転のシステム装置に送信する。ステップS104において、データの送信が終了すると、本フローチャートの処理は終了する(ステップS101へリターンする)。なお、図8に示すフローチャートの処理は一例であり、他の処理が含まれてもよい。
【0042】
上述した本実施形態の回転角度検出装置30によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
回転角度検出装置30は、上部回転体15と共に回転可能な距離測定センサ32と、距離測定センサ32とは離間して設けられ、下部回転体25と共に回転可能であり、1回転する間に距離測定センサ32との距離が変化する側面部131を有する反射体31と、を備える。本構成によれば、距離測定センサ32と反射体31との間は離間しているため、両者の間に土砂等が詰まりにくく、土砂等の付着による位置ずれも生じにくい。したがって、本実施形態の回転角度検出装置30は、下部回転体の外周に装着したベルトの回転をエンコーダで検出する構成に比べて土砂等の影響を受けにくく、検出精度の低下を抑制できる。
【0043】
また、回転角度検出装置30は、距離測定センサ32との間の距離と移動部20の回転角度とを対応付けたデータを記憶する記憶部34と、距離測定センサ32で測定された距離と記憶部34に記憶されているデータとに基づいて、距離に対応付けられた移動部20の回転角度を取得する制御部35と、を備える。本構成によれば、距離測定センサ32で測定された反射体31までの距離と移動部20の回転角度とを対応付けたデータを用いて移動部20の回転角度を取得するため、エンコーダのように回転による位置の変化を電気信号に変換して移動部の回転角度を算出する方式に比べて、土砂等の付着や振動による誤差の発生を抑制できる。したがって、本実施形態の回転角度検出装置30によれば、土砂等の影響を受けにくく、本体部10に対する移動部20の回転角度をより正確に検出できる。
【0044】
回転角度検出装置30において、反射体31の側面部131は、基準軸OA回りに1回転する間に曲率が一定の割合で変化するクロソイド曲線形状を有する。本構成によれば、本体部10に対して移動部20が基準軸OA回りに360°回転する間、反射体31と距離測定センサ32との間の距離は連続的に変化し、1回転中に同じ距離が測定されることはない。そのため、本体部10に対する移動部20の回転角度θを、より正確に検出できる。
【0045】
回転角度検出装置30において、反射体31は、下部回転体25の外周部分に設けられるため、既存の作業機械に後付けで装着することが容易であり、振動による位置ずれも生じにくい。
回転角度検出装置30において、距離測定センサ32は、レーザ距離センサであるため、反射体31(側面部131)との間の距離を、より正確に測定できある。また、距離測定センサ32は、上部回転体15(本体部10)に設けられるため、電力の供給も容易となる。
【0046】
回転角度検出装置30は、GPS受信機33を備えるため、GPS受信機で受信した位置情報に基づいて、作業機械1の位置及び正面方向を算出することにより、本体部10に対する移動部20の回転角度θだけでなく、作業機械1の位置及び正面方向に関する情報を遠隔操作や自動運転のシステム装置(不図示)に送信できる。これにより、遠隔操作のシステム装置においては、上記情報に基づいて作業機械1の位置、姿勢(本体部10及び移動部20の向き)等をモニタ上にグラフィック表示することにより、遠隔操作のオペレータは、作業機械1の進行方向や本体部10及び移動部20の回転角度等をリアルタイムに把握できる。また、自動運転のシステム装置においては、上記情報に基づいて作業機械1の進行方向や本体部10及び移動部20の回転角度等を制御することにより、作業機械1を目的位置により正確に誘導できる。
【0047】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本開示から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0048】
(変形形態)
実施形態では、回転角度検出装置30の記憶部34、制御部35及び通信部36をコントロールボックス130に一体化して、本体部10のキャビン11に設ける例について説明したが、これに限定されない。記憶部34、制御部35及び通信部36の少なくとも1つ又はすべてを、遠隔操作や自動運転のシステム装置に設けてもよい。記憶部34、制御部35及び通信部36を作業機械1と離間した位置に設けた場合、無線通信によりデータの送受信を行うことができる。
【0049】
実施形態では、距離測定センサ32としてレーザ距離センサを用いた例について説明したが、距離測定センサ32は、反射体31(側面部131)との間の距離を測定できれば、どのような方式のセンサを用いてもよい。例えば、距離測定センサ32として超音波センサ、LEDセンサ、赤外線センサ、深度センサ(TOF)、磁力センサ等を用いてもよい。距離測定センサ32として使用可能なセンサは、作業機械1の用途や使用環境等により選択すればよい。
【0050】
実施形態では、反射体31の側面部131をクロソイド曲線形状とした例について説明したが、これに限定されない。側面部131は、基準軸OA回りに1回転する間に、距離測定センサ32との間の距離が連続又は不連続に変化する形状であれば、どのような形状であってもよい。図9は、反射体31の側面部131のクロソイド曲線形状を多角形で構成した場合の概念図である。図9に示すように、側面部131のクロソイド曲線形状を、複数の直線部分131bからなる多角形とすることにより、基準軸OA回りに1回転する間に、距離測定センサ32との間の距離が不連続に変化する形状とすることができる。なお、このような多角形の構成は、クロソイド曲線に限らず、例えば、渦巻き曲線等にも適用できる。
【0051】
実施形態では、作業機械の例として、バックホウ、パワーショベル等の自走式の重機を例として説明したが、これに限定されない。作業機械は、例えば、レール、ベルトコンベア等の移動体に下部が固定された状態で移動し、上部のみが回転する構造を有するものであってもよい。また、作業機械は、建設現場での作業に限らず、各種の現場において「監視」、「撮影」、「物品の搬送」等を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 作業機械
10 本体部
15 上部回転体
20 移動部
25 下部回転体
30 回転角度検出装置
31 反射体
131 側面部
32 距離測定センサ
33 GPS受信機
34 記憶部
35 制御部
36 通信部
131 側面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9