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特開2024-164684風速補正装置、風速補正システムおよび運行管理システム、風速補正方法並びに風速補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164684
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】風速補正装置、風速補正システムおよび運行管理システム、風速補正方法並びに風速補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20241120BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61L25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080347
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】磯西 市路
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB11
5H161BB20
5H161FF01
5H161FF07
5H161MM01
5H161MM12
5H161NN01
(57)【要約】
【課題】風向風速計で観測された風向に応じた風速値を風向風速計の設置位置を通過する車両が受ける車両の種別を考慮した風速値に補正することができる風速補正装置を得ること。
【解決手段】風速補正装置は、風向風速観測データ受信部52と、通過列車情報受信部51と、風速補正部58と、を備える。風向風速観測データ受信部52は、鉄道の線路100沿いに設置される風向風速計30によって観測される風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する。通過列車情報受信部51は、線路100を通過する車両110の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する。風速補正部58は、風向と、風速観測値を補正する補正量と、を車両110の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち車両種別情報に対応する補正量情報および風向観測値に基づいて、風速観測値を補正した風速補正値を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
を備えることを特徴とする風速補正装置。
【請求項2】
前記補正量情報は、前記車両種別情報、前記車両種別情報に対応する車両の重量および形状を含む車両詳細情報と、前記風向風速計の設置位置を含む周辺領域の地図情報および構造物についてのサイズを含む情報である構造物情報を含む周辺領域情報と、に基づいて前記車両の種別ごとに生成された情報であることを特徴とする請求項1に記載の風速補正装置。
【請求項3】
前記車両詳細情報および前記周辺領域情報に基づいて、各風向における前記風向風速計の設置位置での、風速に対する前記車両が受ける風速の比率である補正量をシミュレーションによって算出し、前記車両の種別ごとに前記補正量情報を生成する補正量情報生成部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の風速補正装置。
【請求項4】
前記通過列車情報は、前記車両の走行速度情報をさらに含み、
前記風向観測値および前記風速観測値から前記車両の走行速度情報に基づいた風向および風速である風向合成値および風速合成値を算出する風向風速合成部をさらに備え、
前記風速補正部は、前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向合成値に基づいて、前記風速合成値を補正した前記風速補正値を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の風速補正装置。
【請求項5】
前記風向観測値と、前記風速補正値とを含む風向風速補正データから、前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを用いて、前記風向風速補正データから前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を出力する異常判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の風速補正装置。
【請求項6】
前記異常判定部は、
前記風向観測値と、前記風速補正値と、を取得するデータ取得部と、
前記風向観測値と、前記風速補正値とから、前記風向観測値および前記風速補正値を含む前記風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部で取得した前記風向観測値および前記風速補正値から前記風向風速補正データの通常値からのずれの有無を出力する推論部と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の風速補正装置。
【請求項7】
前記異常判定部は、
前記風向観測値および前記風速補正値を取得するデータ取得部と、
前記風向観測値および前記風速補正値から運転規制内容を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部から入力された前記風向観測値および前記風速補正値から前記運転規制内容を出力する推論部と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の風速補正装置。
【請求項8】
前記風向観測値および前記風速補正値を有する風向風速補正データを含む学習用データを用いて、前記風向風速補正データから前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを生成する学習部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の風速補正装置。
【請求項9】
前記学習部は、
前記風向観測値と、前記風速補正値と、を含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記風向観測値と、前記風速補正値とから前記風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の風速補正装置。
【請求項10】
前記学習部は、
前記風向観測値および前記風速補正値と、運転規制の内容を含む運転規制内容データと、を含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記風向観測値および前記風速補正値から運転規制内容を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の風速補正装置。
【請求項11】
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計で観測される風の風速を補正量情報を用いて補正する風速補正装置と、前記補正量情報を生成する補正量情報生成装置と、を備える風速補正システムであって、
前記補正量情報生成装置は、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報、前記車両種別情報に対応する車両の重量および形状を含む車両詳細情報に基づいて、各風向における前記風向風速計の設置位置での、風速に対する前記車両が受ける風速の比率である補正量をシミュレーションによって算出して前記車両の種別ごとに前記風向と前記補正量とを関連付けた複数の前記補正量情報を生成する補正量情報生成部と、
前記補正量情報を前記風速補正装置に送信する補正量情報送信部と、
を有し、
前記風速補正装置は、
前記風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
前記複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
を有することを特徴とする風速補正システム。
【請求項12】
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計で観測される風の風速を補正する風速補正装置と、前記風速補正装置で補正された風速および前記風向風速計で観測された風向から得られる風向情報とを蓄積する風向風速データ蓄積装置と、を備える風速補正システムであって、
前記風速補正装置は、
前記風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
前記風向観測値および前記風速補正値を有する風向風速補正データを送信する風向風速データ送信部と、
を有し、
前記風向風速データ蓄積装置は、
前記風向風速補正データを受信する風向風速データ受信部と、
前記風向風速補正データから、前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを用いて、前記風向風速補正データから前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を出力する異常判定部と、
を有することを特徴とする風速補正システム。
【請求項13】
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計で観測される風の風速を補正する風速補正装置と、前記風速補正装置で補正された風速および前記風向風速計で観測された風向から得られる風向情報を用いて車両の運行を管理する運行管理装置と、を備える運行管理システムであって、
前記風速補正装置は、
前記風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
前記風向観測値および前記風速補正値を有する風向風速補正データを送信する風向風速データ送信部と、
を備え、
前記運行管理装置は、前記風向風速補正データに基づいて前記車両の運行を管理することを特徴とする運行管理システム。
【請求項14】
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを補正する風速補正装置での風速補正方法であって、
前記風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信工程と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信工程と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正工程と、
を含むことを特徴とする風速補正方法。
【請求項15】
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信ステップと、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信ステップと、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正ステップと、
をコンピュータに実行させる風速補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線路沿いに設置される風向風速計から車両が受ける風速を補正する風速補正装置、風速補正システムおよび運行管理システム、風速補正方法並びに風速補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
強風の中で鉄道の車両を運行する場合、風向によって車両が転覆したり、脱線したりする可能性がある。このため、線路沿いに風向風速計を設置し、風向風速計の観測値に応じて車両の運行管理を行う鉄道の風速監視システムが採用されている。特許文献1には、車両の風向角別の転覆限界風速に基づいて車両走行への風による影響を数値化した風向別の換算係数を算出し、風向風速計によって観測された風向角に対応する換算係数を風向風速計によって観測された風速に乗じて算出した評価風速に基づいて、鉄道の運行を規制する運転規制システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-159259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、線路を走行する車両の種別が複数存在する場合には、車両の転覆限界風速は、車両の各種別について求められた風向角別の転覆限界風速分布の最低値によって規定される。つまり、各風向角について、複数の車両の種別の中で最も転覆限界風速が小さいものが、車両の転覆限界風速とされる。そして、各風向角の転覆限界風速を用いて、風向風速計の設置位置を通過するすべての車両に共通した各風向角の換算係数が決定される。風向風速計で観測された風向角に対応する換算係数を観測された風速に乗じることで評価風速が算出される。このように算出された評価風速は、風向風速計が設置されている位置を通過する車両の種別に関係なく同じである。このため、算出された評価風速は、ある種別の車両にとっては、運転規制のかかる風速であっても、別の種別の車両にとっては、運転規制をかけるほどの風速ではない場合がある。この場合には、上記別の種別の車両にとっては、過剰な運転規制となり、却って列車の運行管理の効率が悪くなってしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、風向風速計で観測された風向に応じた風速値を風向風速計の設置位置を通過する車両が受ける車両の種別を考慮した風速値に補正することができる風速補正装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る風速補正装置は、風向風速観測データ受信部と、通過列車情報受信部と、風速補正部と、を備える。風向風速観測データ受信部は、鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する。通過列車情報受信部は、線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する。風速補正部は、風向と、風速観測値を補正する補正量と、を車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち車両種別情報に対応する補正量情報および風向観測値に基づいて、風速観測値を補正した風速補正値を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、風向風速計で観測された風向に応じた風速値を風向風速計の設置位置を通過する車両が受ける車両の種別を考慮した風速値に補正することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る風速補正装置を備える列車制御管理システムの構成の一例を模式的に示す図
図2】補正量テーブルの一例を示す図
図3】風向風速合成情報の算出方法を説明するための図
図4】実施の形態1に係る補正量テーブル生成方法の手順の一例を示すフローチャート
図5】実施の形態1に係る風速補正方法の手順の一例を示すフローチャート
図6】実施の形態1に係る列車制御管理システムにおける風速補正方法を説明するための図
図7】実施の形態1に係る列車制御管理システムにおける風速補正方法を説明するための図
図8】実施の形態1に係る列車制御管理システムにおける風速補正方法を説明するための図
図9】従来の技術における風速補正方法を説明するための図
図10】実施の形態2に係る列車制御管理システムの構成の一例を模式的に示す図
図11】風向風速データ蓄積装置の学習部の構成の一例を模式的に示す図
図12】学習部の学習方法の処理手順の一例を示すフローチャート
図13】風向風速データ蓄積装置の異常判定部の構成の一例を模式的に示す図
図14】異常判定部の異常判定方法の処理手順の一例を示すフローチャート
図15】風向風速データ蓄積装置の学習部の構成の一例を示す図
図16】モデル生成部が使用するニューラルネットワークの一例を模式的に示す図
図17】学習部による学習方法の処理手順の一例を示すフローチャート
図18】風向風速データ蓄積装置の異常判定部の構成の一例を模式的に示す図
図19】異常判定部の異常判定方法の処理手順の一例を示すフローチャート
図20】実施の形態1に係る風速補正装置を実現するコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態に係る風速補正装置、風速補正システムおよび運行管理システム、風速補正方法並びに風速補正プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る風速補正装置を備える列車制御管理システムの構成の一例を模式的に示す図である。列車制御管理システム1は、周辺領域情報提供装置10と、補正量テーブル生成装置20と、風向風速計30と、運行管理装置40と、風速補正装置50と、情報伝送装置70と、を備える。補正量テーブル生成装置20と、風向風速計30と、運行管理装置40と、風速補正装置50と、情報伝送装置70と、は、ネットワークなどの通信線を介して互いに接続される。
【0011】
周辺領域情報提供装置10は、風向風速計30の設置位置周辺の周辺領域の地形および構造物に関する情報である周辺領域情報を提供する装置である。周辺領域情報は、周辺領域の地図情報および構造物についてのサイズを含む情報である構造物情報を含む。地図情報は、周辺領域の構造物の配置状態と、標高と、を有する情報である。地図情報は、周辺領域の構造物の配置状態と標高とを含む地図データであってもよいし、航空写真および標高を示すデータである標高データであってもよい。構造物情報は、地図情報に示される周辺領域に含まれる構造物についての高さ、幅および奥行きを含むサイズ情報を含む。また、構造物情報は、構造物の形状についての情報である形状情報をさらに含んでいてもよい。
【0012】
補正量テーブル生成装置20は、風向風速計30で観測された風速の値を風向風速計30の設置位置を通過する車両110が受ける風速値に補正する補正量を観測された風向の値ごとに求めた補正量テーブルを、車両110の種別ごとに生成する装置である。以下では、風向風速計30で観測された風速の値は風速観測値と称され、風向風速計30で観測された風向の値は風向観測値と称される。補正量テーブルは、補正量情報に対応し、補正量テーブル生成装置20は、補正量情報生成装置に対応する。補正量テーブル生成装置20は、周辺領域情報受信部21と、周辺領域情報記憶部22と、車両詳細情報受信部23と、車両詳細情報記憶部24と、差異判定部25と、補正量テーブル生成部26と、補正量テーブル送信部27と、を備える。
【0013】
周辺領域情報受信部21は、周辺領域情報提供装置10からの周辺領域情報を受信する。周辺領域情報受信部21は、補正量テーブル生成装置20で補正量テーブルを生成する各風向風速計30の設置位置についての周辺領域情報を受信する。
【0014】
周辺領域情報記憶部22は、周辺領域情報提供装置10から受信した周辺領域情報を記憶する。後述するように、この例では、受信した周辺領域情報が最新の補正量テーブルの生成に使用した周辺領域情報と差異がある場合に、補正量テーブルを再生成するので、周辺領域情報記憶部22は、最新の補正量テーブルの生成に使用した周辺領域情報を少なくとも記憶していればよい。周辺領域情報記憶部22は、風向風速計30の設置位置ごとに周辺領域情報を記憶する。
【0015】
車両詳細情報受信部23は、運行管理装置40から送信される、補正量テーブルの算出対象である風向風速計30の設置位置を通過する車両110についての情報である車両詳細情報を受信する。車両詳細情報は、車両110の種別を示す車両種別情報、車両種別情報に示される車両110の重量、車両種別情報に示される車両110の形状等を含む。車両110の種別は、車両110の型式の違いによって分類されるほか、同じ車両110の型式でも編成両数の違いによっても分類される。つまり、型式および編成両数の組み合わせによって車両110の種別が決定される。
【0016】
車両詳細情報記憶部24は、運行管理装置40から受信した車両詳細情報を記憶する。周辺領域情報記憶部22と同様に、車両詳細情報記憶部24は、最新の補正量テーブルの生成に使用した車両詳細情報を少なくとも記憶していればよい。車両詳細情報記憶部24は、風向風速計30の設置位置ごとに車両詳細情報を記憶する。
【0017】
差異判定部25は、周辺領域情報記憶部22に記憶されている周辺領域情報および車両詳細情報記憶部24に記憶されている車両詳細情報と、周辺領域情報提供装置10から受信した周辺領域情報および運行管理装置40から受信した車両詳細情報と、から補正量テーブルの生成が必要かを判定する。具体的には、差異判定部25は、周辺領域情報提供装置10から受信し、保持している周辺領域情報が、周辺領域情報記憶部22に記憶されている周辺領域情報と差異がある場合、または運行管理装置40から受信し、保持している車両詳細情報が、車両詳細情報記憶部24に記憶されている車両詳細情報と差異がある場合に、補正量テーブルの生成を補正量テーブル生成部26に指示する。なお、初めて補正量テーブルを生成する場合には、周辺領域情報記憶部22には周辺領域情報が記憶されておらず、車両詳細情報記憶部24には車両詳細情報が記憶されていないが、この場合は記憶されていない状態と比較することとなる。このため、周辺領域情報提供装置10から初めて周辺領域情報を受信した場合または運行管理装置40から初めて車両詳細情報を受信した場合には、補正量テーブルの生成を補正量テーブル生成部26に指示することとなる。
【0018】
補正量テーブル生成部26は、差異判定部25から補正量テーブルの生成の指示を受けると、周辺領域情報提供装置10から受信した周辺領域情報と運行管理装置40から受信した車両詳細情報とに基づいてシミュレーションを用いて解析を行い、補正量テーブルを生成する。補正量テーブル生成部26は、一例では、車両110の重量および形状と、周辺領域の地図情報および構造物情報と、に基づいて、各風向における風向風速計30の設置位置での風速に対する車両110が受ける風速の比率である補正量をシミュレーションする。車両110は、一例では、風向風速計30の設置位置付近の線路100を通過する車両110である。補正量テーブル生成部26は、このシミュレーション処理を車両110の種別ごとに行うことで、車両110の種別ごとの補正量テーブルを生成する。また、補正量テーブル生成部26は、風向風速計30が複数存在する場合には、複数の風向風速計30のそれぞれについて補正量テーブルを生成する。この場合には、風向風速計30ごとに補正量テーブルが対応付けられることになる。このように、補正量テーブルは、風向と、風速観測値を線路100を走行する車両110が受ける風の風速に補正する補正量と、を車両110の種別ごとに関連付けた情報である。
【0019】
補正量テーブルは、車両110の種別ごとに生成されればよい。このため、補正量テーブル生成部26は、周辺領域情報と車両詳細情報とに基づいて補正量をシミュレーションしていたが、少なくとも車両詳細情報に基づいて補正量をシミュレーションすればよい。ただし、上記した例のように、車両詳細情報に加えて周辺領域情報を用いてシミュレーションを行うことによって、風向風速計30の設置位置を通過する車両110が受ける風速値の算出精度が向上する。また、構造物情報として、構造物のサイズ情報だけではなく、形状情報を用いてシミュレーションを行うことによって、風向風速計30の設置位置を通過する車両110が受ける風速値の算出精度が向上する。補正量テーブル生成部26は、補正量情報生成部に対応する。
【0020】
また、この例では、差異判定部25を備えることによって、車両詳細情報または周辺領域情報が更新されるたびに自動的に補正量テーブルを生成または再生成する場合を示したが、ユーザからの指示にしたがって補正量テーブルを生成または再生成してもよい。
【0021】
風向風速計30の風速観測値と風向風速計30の設置位置を通過する車両110が受ける風速値とは乖離している場合がある。このため、風速観測値を車両110が受ける風速値に補正した風速補正値に基づいて車両110に対する運転規制を検討することが望ましい。そこで、実施の形態1では、補正量テーブル生成部26は、風速観測値を車両110が受ける風速値となるように補正する補正量を風向ごとに算出してテーブル化する。
【0022】
図2は、補正量テーブルの一例を示す図である。図2では、風向風速計30の設置位置を通過する車両種別情報が、車両種別情報A、車両種別情報Bおよび車両種別情報Cの3種類である場合を示している。図2に示されるように、補正量テーブル260は、車両110の種別、すなわち車両種別情報ごとに生成される。つまり、補正量テーブル260は、車両種別情報Aの補正量テーブル261Aと、車両種別情報Bの補正量テーブル261Bと、車両種別情報Cの補正量テーブル261Cと、を有する。各補正量テーブル261A,261B,261Cは、風向と、風向に対応する補正量と、を項目として有する。すなわち、各風向についての補正量が対応付けられている。風向は、後述するように車両110の速さを考慮した相対的な風向である。補正量は、風向風速計30での風速観測値を線路100を通過する車両110が受ける風速値に補正するための係数である。図2において、補正量テーブル260は、風向風速計30に対応して生成される広義の補正量テーブルであり、補正量テーブル261A,261B,261Cは、風向風速計30の位置の車両種別情報ごとに生成される狭義の補正量テーブルである。
【0023】
図1に戻り、補正量テーブル送信部27は、補正量テーブル生成部26によって補正量テーブルが生成されると、風速補正装置50に補正量テーブルを送信する。複数の風向風速計30がある場合には、補正量テーブルは、風向風速計30に対応付けられる。補正量テーブル送信部27は、補正量情報送信部に対応する。
【0024】
風向風速計30は、鉄道の線路100沿いに設置され、風向および風速を定められた周期で観測する機器である。一例では風向風速計30は、1秒おきに風向および風速を観測し、観測した結果である風向観測値および風速観測値を風速補正装置50へと送信する。以下では、風向観測値および風速観測値をまとめたものは、風向風速観測データと称されることがある。
【0025】
風向風速計30は、風向および風速を測定することができるものであれば、どのようなものを使用してもよい。一例では、プロペラの回転数で風速を測定し、風向風速センサの向きで風向を測定するプロペラ型風向風速計を用いることができる。
【0026】
運行管理装置40は、鉄道の各路線における車両110の運行を管理する装置である。ここでは、運行管理装置40は、補正量テーブル生成装置20に対しては、風向風速計30の設置位置を走行するすべての車両種別情報についての車両詳細情報を送信する。運行管理装置40は、風速補正装置50に対しては、風向風速計30を識別する情報と、風向風速計30の設置位置をこれから通過する車両110の車両種別情報および走行速度情報と、を含む通過列車情報を送信する。
【0027】
また、運行管理装置40は、風速補正装置50で補正された風速および風向風速計30で観測された風向を用いて車両110の運行を管理する。具体的には、運行管理装置40は、風向風速計30の設置位置をこれから通過する車両種別情報の車両110が受ける風の風向値および風速値を含む風向風速補正データを風速補正装置50から受信すると、これから通過する車両110の車両種別情報に応じた運転規制の条件を風向風速補正データが満たすかを判定する。運行管理装置40は、風向風速補正データが運転規制の条件を満たす場合には、条件に応じた徐行運転、運転停止等の運転規制指示をこれから通過する車両110に対して送信する。また、運行管理装置40は、風向風速補正データが運転規制の条件を満たさない場合には、これから通過する車両110に対して特に何もしない。つまり、運行管理装置40は、風向風速補正データに基づいて車両110の運行を管理する。なお、複数の風向風速計30が設置される場合には、風向風速補正データには、風向風速補正データの基となる風向風速計30を識別する情報が含まれる。これによって、運行管理装置40は、どの風向風速計30についての風向風速補正データであるかを識別することができる。
【0028】
風速補正装置50は、通過列車情報受信部51と、風向風速観測データ受信部52と、補正量テーブル受信部53と、補正量テーブル記憶部54と、車両方向情報記憶部55と、補正量テーブル選択部56と、風向風速合成部57と、風速補正部58と、風向風速データ送信部59と、を備える。
【0029】
通過列車情報受信部51は、運行管理装置40から通過列車情報を受信する。通過列車情報は、風向風速計30を識別する情報と、風向風速計30の設置位置付近の線路100をこれから通過する車両110の種別である車両種別情報と、を含む。この例では、通過列車情報は、これから通過する車両110の走行速度である走行速度情報も含む。
【0030】
風向風速観測データ受信部52は、風向風速計30によって観測される風向風速観測データを受信する。風向風速観測データは、風向観測値と風速観測値とを含む。
【0031】
補正量テーブル受信部53は、補正量テーブル生成装置20から補正量テーブルを受信する。
【0032】
補正量テーブル記憶部54は、補正量テーブル受信部53で受信した補正量テーブルを記憶する。補正量テーブルは、上記したように車両種別情報ごとに記憶される。通常、風速補正装置50は、複数の風向風速計30の設置位置における風向風速補正データを算出するので、補正量テーブルは、補正量テーブル記憶部54の中で風向風速計30を識別する情報と対応付けて記憶される。ただし、以下では、説明の簡略化のため、1つの風向風速計30についての車両種別情報ごとの補正量テーブルが補正量テーブル記憶部54に記憶される場合を例に挙げる。
【0033】
車両方向情報記憶部55は、風向風速計30の設置位置における線路100の延在方向である車両方向を記憶する。車両方向の基準の取り方は任意である。一例では、北向きを0°とし、時計回りを正方向として、車両方向の角度を表すことができる。
【0034】
補正量テーブル選択部56は、通過列車情報受信部51で受信した通過列車情報に含まれる車両種別情報の組み合わせに対応する補正量テーブルを補正量テーブル記憶部54から選択する。補正量テーブル選択部56は、選択中の補正量テーブルが更新された場合または通過列車情報が更新された場合に、補正量テーブルの選択を行う。
【0035】
風向風速合成部57は、風向風速観測データ受信部52から受信した風向観測値および風速観測値から車両110の走行速度情報に基づいた風向および風速である風向合成値および風速合成値を算出する。具体的には、風向風速合成部57は、風向観測値および風速観測値から車両110の走行速度情報に基づいた風向風速値を示す風向風速合成情報を算出し、風向風速合成情報から車両110に働く風の風向値である風向合成値と、車両110に働く風速値である風速合成値と、を算出する。図3は、風向風速合成情報の算出方法を説明するための図である。風向風速計30から得られる風は、ベクトルwで表される。ここでは、北向きを0°とした風向観測値がθ0であり、風速観測値がwである。車両110は、無風状態で走行している場合には、相対的に走行速度情報Vと同じ大きさで反対向きのベクトル-Vの風を受ける。このため、車両110が風の中を走行中には、ベクトルwとベクトル-Vとの和であるベクトルWの風を受けることになる。このベクトルWの風向はθ1であり、風速はWである。ここで、ベクトルwとベクトル-Vとの和であるベクトルWは、風向風速合成情報を表すベクトルとなる。風向風速合成情報を表すベクトルWの大きさWは風速合成値となり、向きθ1は風向合成値となる。
【0036】
このように、風向風速合成部57は、車両110の走行速度情報と風の速度とを合成して車両110に働く風の合成速度である風向風速合成情報を算出し、風向風速合成情報から車両110に働く合成後の風向値、すなわち基準位置からの角度を風向合成値として算出する。また、風向風速合成部57は、風向風速合成情報の大きさを車両110に働く合成後の風速値、すなわち風速合成値として算出する。風向合成値および風速合成値を含むデータは、風向風速合成データと称されることもある。風向風速合成部57は、風向風速合成データを風速補正部58に渡す。
【0037】
図1に戻り、風速補正部58は、風向と、風速観測値を補正する補正量と、を車両110の種別ごとに関連付けた複数の補正量テーブルのうち車両種別情報に対応する補正量テーブルおよび風向観測値に基づいて、風速観測値を補正した風速補正値を算出する。この例では、風向観測値として、風向合成値が使用され、風速観測値として、風速合成値が使用される。つまり、風速補正部58は、車両種別情報に対応する補正量テーブルおよび風向合成値に基づいて、風速合成値を補正した風速補正値を算出する。具体的には、風速補正部58は、風向風速合成部57で算出した風向合成値に対応する補正量を、補正量テーブル選択部56で選択された補正量テーブルから取得し、取得した補正量を風向風速合成部57で算出した風速合成値に乗じることで風速補正値を算出する。風速補正値は、風向風速計30の設置位置を通過する車両110が受ける風向に基づいた風速の値である。このように、風速補正部58は、風向風速計30の設置位置を通過する車両110の風速補正値を算出する。風速補正部58は、風向合成値と風速補正値とを含むデータを風向風速補正データとして、風向風速データ送信部59に渡す。
【0038】
風向風速データ送信部59は、風向風速補正データを運行管理装置40に送信する。
【0039】
風向風速合成部57、風速補正部58および風向風速データ送信部59での処理は、風向風速観測データ受信部52で風向風速データを受信するごとに実行される。一例では、風向風速計30の設置位置を車両110が通過する5分前に通過列車情報を風速補正装置50が受信したものとすると、その後に風向風速計30から風向風速データを受信するごとに、風向合成値および風速補正値を算出し、風向風速補正データを運行管理装置40に送信する。
【0040】
情報伝送装置70は、列車制御管理システム1内で各装置から送信される情報を宛先の装置へと伝送する装置である。情報伝送装置70は、補正量テーブル生成装置20、風向風速計30、運行管理装置40および風速補正装置50と通信線を介して接続されている。情報伝送装置70は、情報受信部71と、情報送信部72と、を備える。情報受信部71は、補正量テーブル生成装置20、風向風速計30、運行管理装置40および風速補正装置50のいずれかから情報を受信する。情報送信部72は、情報受信部71で受信した情報を、宛先である補正量テーブル生成装置20、風向風速計30、運行管理装置40および風速補正装置50のいずれかに送信する。情報伝送装置70は、必要に応じて設けられる。
【0041】
なお、ここでは、風向風速計30が1つの場合を例示したが複数ある場合にも同様の処理が行われる。この場合には、通過列車情報、風向風速データ、補正量テーブル、車両方向情報は、風向風速計30の設置位置に対応付けられたものが使用され、風向風速計30の設置位置ごとに処理が実施されることになる。
【0042】
次に、実施の形態1に係る列車制御管理システム1における動作について説明する。以下では、最初に補正量テーブルの生成方法について説明し、次に風速補正方法について説明する。
【0043】
図4は、実施の形態1に係る補正量テーブル生成方法の手順の一例を示すフローチャートである。図4に示される処理は、風速補正方法が実施される前に予め行われていることが望ましい。図4に示される補正量テーブル生成方法は、補正量テーブル生成装置20によって実行される。
【0044】
まず、差異判定部25は、周辺領域情報を保有しているかを判定する(ステップS11)。これは、周辺領域情報受信部21が周辺領域情報提供装置10から周辺領域情報を受信して保有した状態にあるかを判定するものである。
【0045】
周辺領域情報を保有している場合(ステップS11でYesの場合)には、差異判定部25は、保有している周辺領域情報と最新の補正量テーブルの生成に使用した周辺領域情報との間に差異があるかを判定する(ステップS12)。両者の間に差異がない場合(ステップS12でNoの場合)、またはステップS11で周辺領域情報を保有していない場合(ステップS11でNoの場合)には、差異判定部25は、車両詳細情報を保有しているかを判定する(ステップS13)。これは、車両詳細情報受信部23が運行管理装置40から車両詳細情報を受信して保有した状態にあるかを判定するものである。車両詳細情報を保有していない場合(ステップS13でNoの場合)には、処理がステップS11に戻る。
【0046】
車両詳細情報を保有している場合(ステップS13でYesの場合)には、差異判定部25は、保有している車両詳細情報と最新の補正量テーブルの生成に使用した車両詳細情報との間に差異があるかを判定する(ステップS14)。差異がない場合(ステップS14でNoの場合)には、処理がステップS11に戻る。
【0047】
ステップS12またはステップS14で差異がある場合(ステップS12またはステップS14でYesの場合)には、差異判定部25は、補正量テーブル生成部26に補正量テーブルの生成の指示を出す。補正量テーブル生成部26は、最新の周辺領域情報と最新の車両詳細情報とに基づいてシミュレーションを用いて解析を行い、補正量テーブルを生成する(ステップS15)。その後、処理がステップS11に戻る。このように、周辺領域情報または車両詳細情報が更新された場合に、補正量テーブルが生成されることになる。
【0048】
図5は、実施の形態1に係る風速補正方法の手順の一例を示すフローチャートである。図5に示される風速補正方法は、風速補正装置50によって実行される。
【0049】
まず、風向風速観測データ受信部52は、風向風速計30から風向風速観測データ、すなわち風向観測値および風速観測値を受信する(ステップS31)。風向風速合成部57は、風向風速計30の設置位置をこれから通過する車両110の走行速度情報を有しているかを判定する(ステップS32)。つまり、通過列車情報受信部51がこれから通過する車両110の走行速度情報を含む通過列車情報を受信しているかを判定する。
【0050】
これから通過する車両110の走行速度情報を有していない場合(ステップS32でNoの場合)には、風向風速データ送信部59は、風向風速計30から受信した風向観測値および風速観測値を運行管理装置40に送信する(ステップS33)。そして、処理がステップS31に戻る。
【0051】
これから通過する車両110の走行速度情報を保有している場合(ステップS32でYesの場合)には、風向風速合成部57は、これから通過する車両110の走行速度情報、車両方向情報、風向観測値および風速観測値から、これから通過する車両110が走行中に受ける風向風速合成データである風向合成値および風速合成値を算出する(ステップS34)。
【0052】
次いで、補正量テーブル選択部56は、補正量テーブルが補正量テーブル記憶部54に記憶されているかを判定する(ステップS35)。補正量テーブルが記憶されていない場合(ステップS35でNoの場合)には、風向風速データ送信部59は、風向合成値および風速合成値を運行管理装置40へと送信する(ステップS37)。そして、処理がステップS31に戻る。
【0053】
補正量テーブルが記憶されている場合(ステップS35でYesの場合)には、風速補正部58は、車両種別情報を保有しているかを判定する(ステップS36)。つまり、通過列車情報受信部51がこれから通過する車両110の車両種別情報を含む通過列車情報を受信しているかを判定する。車両種別情報を保有していない場合(ステップS36でNoの場合)には、ステップS37へと処理が移る。
【0054】
車両種別情報を保有している場合(ステップS36でYesの場合)には、補正量テーブル選択部56は、補正量テーブルまたは車両種別情報に前回から差異があるかを判定する(ステップS38)。補正量テーブルまたは車両種別情報に前回から差異がある場合(ステップS38でYesの場合)には、補正量テーブル選択部56は、車両種別情報に対応する補正量テーブルを補正量テーブル記憶部54から選択する(ステップS39)。
【0055】
その後または補正量テーブルまたは車両種別情報に前回から差異がない場合(ステップS38でNoの場合)には、風速補正部58は、選択されている補正量テーブルにおいて、風向合成値が風向となる場合の補正量を取得し(ステップS40)、取得した補正量を用いて風速合成値を補正した風速補正値を算出する(ステップS41)。その後、風向風速データ送信部59は、風速合成値と風速補正値とを有する風向風速補正データを運行管理装置40へと送信する(ステップS42)。その後処理がステップS31に戻る。
【0056】
図6から図8は、実施の形態1に係る列車制御管理システムにおける風速補正方法を説明するための図である。図6に示されるように、X地点の風向風速計30は、風速観測値が15.0m/sであり、風向観測値が10°である風向風速観測データを風速補正装置50に送信する(ステップS51)。また、指令所である運行管理装置40は、風向風速計30が設置されているX地点をこれから通過する車両110の車両種別情報がAであり、走行速度情報がVである通過列車情報を風速補正装置50に送信する(ステップS52)。
【0057】
風速補正装置50は、これから通過する車両110の走行速度情報Vと、風速観測値および風向観測値と、からこれから通過する車両110が受ける風の風向風速合成データを算出する(ステップS53)。つまり、走行中の車両110が受ける風についての風向風速合成情報を算出し、風向合成値および風速合成値を求める。ここでは、風向風速合成データの風速合成値は10.0m/sであり、風向合成値は20°であるものとする。
【0058】
図7に示されるように、風速補正装置50は、車両種別情報A,B,Cの補正量テーブル261A,261B,261Cを保持しているものとする。そして、風速補正装置50は、通過列車情報の車両種別情報Aに対応する補正量テーブル261Aを選択する(ステップS54)。また、風速補正装置50は、選択した車両種別情報Aの補正量テーブル261Aから風向が風向合成値の20°となる補正量1.07を取得し、風速合成値10.0m/sに取得した補正量1.07を乗算した10.7m/sを風速補正値として算出する(ステップS55)。
【0059】
そして、図8に示されるように、風速補正装置50は風速補正値10.7m/sと風向合成値20°とを風向風速補正データとして運行管理装置40に送信する(ステップS56)。運行管理装置40では、風向風速補正データを受信すると、車両種別情報Aの風向風速補正データが運転規制に該当するかを判定する(ステップS57)。この例では、車両種別情報Aの風向風速補正データが条件に該当しない場合が示されている。条件に該当しない場合には、特に何もなされない。一方、車両種別情報Aの風向風速補正データが条件に該当する場合には、運行管理装置40は、X地点付近を走行する車両種別情報Aの車両110に該当する運転規制を送信することになる。図8の例では、運転規制条件に徐行運転および運転停止の2種類がある場合が示されている。なお、風向風速補正データが両方の条件を満たす場合には、運転停止の運転規制が優先される。
【0060】
次に、従来の技術における風速補正方法について説明する。図9は、従来の技術における風速補正方法を説明するための図である。ここでも、車両種別情報はA,B,Cの3種類であるものとする。図9に示されるように、従来の技術では、それぞれの車両種別情報の風向における補正量を算出し、補正量テーブル262A,262B,262Cを生成する。特許文献1では、補正量は換算係数となる。そして、各風向について、3種類の車両種別情報A,B,Cの補正量のうち、最も補正量の大きい値を選択する。これは、風による車両110の転覆または脱線がすべての車両種別情報A,B,Cの車両110で生じないようにするためである。図9の例では、風向が10°の場合には、補正量が最も大きい車両種別情報Cの0.42が選択され、風向が20°の場合には、補正量が最も大きい車両種別情報Aの0.45が選択される。このようにして、すべての風向について選択した補正量によって、X地点の風向風速計30に対する全体補正量テーブル263が生成される(ステップS71)。
【0061】
特許文献1では、風向風速計30で観測された風向観測値および風速補正値の2つのデータを送信すると、データ量が増加するためデータの品質管理の負担が増してしまうため、風向観測値および風速観測値の2つのデータから、風向観測値に基づいた風速値である評価風速を算出し、この評価風速を1つのデータとして運行管理装置40に送信するものである。このため、補正量テーブル262A,262B,262Cの補正量は、風向風速計30の風速観測値を、風向に基づいて車両110が受ける風速である評価風速に変換するためのものであり、実施の形態1のように、風向風速計30と線路100との間の位置の違いによって風向風速計30の設置位置付近を通過する車両110が受ける風に補正するものではない。つまり、特許文献1に記載の方法で算出される補正量テーブル262A,262B,262Cは、風向風速計30で受ける風と、風向風速計30の設置位置付近の線路100を通過する車両110が受ける風と、の乖離を考慮したものではない。
【0062】
図9に示されるように、X地点の風向風速計30は、風速観測値が10.0m/sであり、風向観測値が20°である風向風速観測データを観測する(ステップS72)。風向風速計30に設けられている風速補正装置50Xは、全体補正量テーブル263から、風向が風向観測値である20°に対応する補正量0.45を取得し、取得した補正量を風速観測値に乗算した4.5m/sを評価風速として算出する(ステップS73)。そして、風速補正装置50Xは、評価風速4.5m/sを含む風向風速補正データを運行管理装置40に送信する(ステップS74)。
【0063】
このように、特許文献1では、運行管理装置40からはX地点を通過する車両110の通過列車情報が風速補正装置50Xに送信されない。つまり、風速補正装置50Xは、風向風速計30が設置されるX地点にどの種別の車両110がこれから通過するのかを把握していない。このため、どの車両110が通過したとしても、風による脱線または転覆が生じないように、すべての車両種別情報のうち最も補正量の大きいものを各風向について求めた全体補正量テーブル263を使用している。
【0064】
ここで、風向風速計30の設置位置を車両種別情報Bの車両110が通過する場合を例に挙げる。上記した例では、風速補正装置50Xは、運行管理装置40に評価風速4.5m/sを含む風向風速補正データを送信する。一方、車両種別情報Bの補正量テーブル262Bを参照すると、風向が20°の場合の補正量は0.39である。このため、評価風速は3.9m/sとなる。このように、特許文献1では、車両種別情報Bの車両110に対しては、補正が過剰となっている。例に挙げた風速では運転規制に該当しないので問題はないが、運転規制に該当する風速の場合には、ある車両種別情報については、脱線または転覆が生じない評価風速であるが、すべての車両種別情報の車両110について、運転規制が出されることになる。この場合、ある車両種別情報が風向風速計30の設置位置付近を通過する場合には、過剰な運転規制となり、運転効率が低下してしまう。これは、運行管理装置40から風速補正装置50Xに通過列車情報が通知されないことと、風速補正装置50Xがすべての車両種別情報A,B,Cで安全な運行ができるように生成された全体補正量テーブル263を有することと、によるものである。
【0065】
一方、実施の形態1では、風速補正装置50は、運行管理装置40から風向風速計30の設置地点をこれから通過する車両110の車両種別情報および走行速度情報を含む通過列車情報を取得し、車両種別情報ごとに生成した補正量テーブル261A,261B,261Cを用いて、これから通過する車両110が走行中に受ける風速補正値を算出するようにした。これによって、車両種別情報ごとに適切な運転規制を行うことが可能となり、路線全体としての運転効率を高めることが可能となる。
【0066】
なお、補正量テーブル261A,261B,261Cを算出するにあたり、車両詳細情報に車両種別情報に示される車両110の走行速度情報が含まれていてもよい。一例では、車両110の走行速度情報は、車両110の運行ダイヤ情報から算出される平均速度である。また他の例では、車両110の走行速度情報は、各車両種別情報に対して複数の定められた速度である。複数の定められた速度は、徐行運転時などの低速とされる第1速度、運行ダイヤ情報から算出される平均速度などの第2速度、第1速度と第2速度との間の第3速度などとすることができる。
【0067】
このように、車両110の走行速度情報を含む車両詳細情報を用いて補正量テーブル261A,261B,261Cを生成する場合には、風速補正装置50は、車両方向情報記憶部55と、風向風速合成部57と、を省略することができる。また、この場合には、風速補正部58は、補正量テーブル261A,261B,261Cから風向が風向風速計30からの風向観測値に対応する補正量を取得して、風速補正値を算出する。風向風速データ送信部59は、風向観測値と風速補正値とを含む風向風速データを運行管理装置40に送信する。この場合には、風速補正部58は、車両種別情報に対応する補正量テーブルおよび風向観測値に基づいて風速観測値を補正した風速補正値を算出する。
【0068】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る列車制御管理システムの構成の一例を模式的に示す図である。なお、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略し、実施の形態1とは異なる部分について説明する。実施の形態2に係る列車制御管理システム1Aは、実施の形態1の構成に加えて風向風速データ蓄積装置80をさらに備える。補正量テーブル生成装置20と、風向風速計30と、運行管理装置40と、風速補正装置50と、情報伝送装置70と、風向風速データ蓄積装置80と、は、ネットワークなどの通信線を介して互いに接続される。
【0069】
風向風速データ蓄積装置80は、風向風速データ受信部81と、風向風速データ記憶部82と、学習部83と、学習済モデル記憶部84と、異常判定部85と、アラーム情報送信部86と、を有する。
【0070】
風向風速データ受信部81は、風速補正装置50から送信される風向風速補正データを受信する。ここでは、風向風速データ受信部81は、風向風速補正データとして風向合成値と風速補正値とを受信するものとする。また、風向風速データ受信部81は、運行管理装置40から運転規制が出された場合の運転規制の内容を示す運転規制内容データと、運転規制に対応する風向風速計30の設置位置と、運転規制が出された日時と、を含む運転規制情報を受信してもよい。
【0071】
風向風速データ記憶部82は、風向風速データ受信部81で受信した風向風速補正データを記憶する。風向風速データ記憶部82は、風向風速補正データを記憶する際に、風向風速補正データの日時も保存することが望ましい。風向風速補正データの日時は、風向風速計30での風向観測値および風速観測値の観測日時でもよいし、風速補正装置50による風向合成値および風速補正値の送信日時でもよいし、風向風速データ受信部81による風向合成値および風速補正値の受信日時でもよい。さらに、風向風速計30は複数設けられることが一般的であるため、風向風速補正データは、風向風速計30に対応付けて記憶される。さらにまた、風向風速データ記憶部82は、運行管理装置40から運転規制情報を受信する場合には、運転規制情報も記憶する。
【0072】
学習部83は、風向観測値および風速補正値を有する風向風速補正データを含む学習用データを用いて、風向風速データから車両110の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを生成する。ここでは、風向観測値として、風向合成値が使用される。この例では、学習部83は、風向風速データ記憶部82に蓄積されている風向風速補正データを含む蓄積情報を用いて機械学習を行い、風向風速補正データから車両110の運行に影響を与える可能性が高い事象の発生を推論する学習済モデルを生成する。
【0073】
学習済モデル記憶部84は、学習部83によって生成された学習済モデルを記憶する。
【0074】
異常判定部85は、風向観測値と、風速補正値と、を含む風向風速補正データから、車両110の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを用いて、風向風速補正データから車両110の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を出力する。つまり、異常判定部85は、風向風速データ受信部81で受信した風向風速補正データを学習済モデルに入力して得られる結果から、車両110の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を判定する。異常判定部85は、車両110の運行に影響を与え得る事象が発生すると判定した場合には、車両110の運行に影響を与え得る事象の発生を示すアラーム情報を生成する。アラーム情報は、学習済モデルに風向風速データを入力して得られる出力に応じて内容を定めることができる。風向風速補正データが通常とは違う傾向であることを学習済モデルの出力が示す場合には、アラーム情報は、どのような事象が発生するのかを具体的に示すものではなく、単に注意を促す内容となる。また、学習済モデルの出力が風向風速補正データから事象の発生の可能性を示す場合には、アラーム情報は、どのような事象が発生するのかの具体的な内容を含むものとなる。
【0075】
アラーム情報送信部86は、異常判定部85によって生成されたアラーム情報を運行管理装置40に送信する。
【0076】
なお、風向風速データ蓄積装置80で行われる処理は、風速補正装置50で行われる処理に比べて時間を要するので、風向風速補正データを受信するたびに実行することは困難である場合が多い。このため、風向風速補正データの受信周期よりも長い周期で、一例では1分周期で車両110の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を判定する。
【0077】
実施の形態2では、風速補正装置50の風向風速データ送信部59は、風向風速補正データを運行管理装置40に送信するとともに、風向風速データ蓄積装置80にも送信する。
【0078】
運行管理装置40は、風速補正装置50から風向合成値および風速補正値を含む風向風速補正データを受信し、風向風速データ蓄積装置80からアラーム情報を受信する。運行管理装置40は、風向風速補正データのみを受信した場合には、風向風速補正データに基づいて運転規制が必要かを判定する。運行管理装置40は、アラーム情報のみを受信した場合には、アラーム情報に基づいて運転規制を実施する。運行管理装置40は、風向風速補正データおよびアラーム情報を受信した場合には、風向風速補正データに基づく運転規制と、アラーム情報に基づく運転規制と、を比較し、車両110をより安全に運行することができる運転規制を選択し、選択した運転規制を実施する。
【0079】
なお、風速補正装置50での風速補正方法は、実施の形態1の図5で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。ただし、ステップS42で、風速補正装置50の風向風速データ送信部59は、運行管理装置40と風向風速データ蓄積装置80とに、風向合成値および風速補正値を送信する点が異なる。
【0080】
ここで、風向風速データ記憶部82の学習部83による機械学習処理と異常判定部85による推論処理との例について説明する。以下では、風向風速データ蓄積装置80に、(1)風向合成値および風速補正値のみが記憶される場合と、(2)風向合成値および風速補正値と運転規制情報とが記憶される場合と、を例に挙げて説明する。
【0081】
(1)風向合成値および風速補正値のみが記憶される場合
<学習フェーズ>
図11は、風向風速データ蓄積装置の学習部の構成の一例を模式的に示す図である。学習部83は、データ取得部831aと、モデル生成部832aと、を備える。
【0082】
データ取得部831aは、風向観測値および風速補正値を含む学習用データを取得する。データ取得部831aは、風向合成値および風速補正値を学習用データとして風向風速データ記憶部82から取得する。データ取得部831aは、学習用データ取得部に対応する。
【0083】
モデル生成部832bは、学習用データを用いて、風向観測値と、風速補正値とから風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論するための学習済モデルを生成する。この例の場合には、風向観測値として、データ取得部831aから出力される風向合成値が使用される。すなわち、風向風速データ蓄積装置80の風向合成値および風速補正値から風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論する学習済モデルを生成する。ここで、学習用データは、風向合成値および風速補正値を互いに関連付けたデータである。
【0084】
一例では、学習済モデルは、車両110の運転規制がなされないときである正常時の風向合成値および風速補正値と、車両110の運転規制がなされるときである異常時の風向合成値および風速補正値と、を分類すなわちクラスタリングするためのモデルとして構成される。風向観測値および風速補正値に対応付けられた運転規制の内容を含む運転規制内容データを用いることで、クラスタリングされたものと運転規制の内容とを対応付けることが可能となる。
【0085】
モデル生成部832aが用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、教師なし学習であるK平均(K-means)法を適用した場合について説明する。K平均法は、クラスタリングとも称される。教師なし学習とは、結果であるラベルを含まない学習用データを学習部83に与えることで、これらの学習用データにある特徴を学習する手法をいう。
【0086】
モデル生成部832aは、一例では、K平均法によるグループ分け手法に従って、いわゆる教師なし学習により、風向風速補正データの通常値からのずれの有無を学習する。
【0087】
K平均法とは、非階層型クラスタリングのアルゴリズムであり、クラスタの平均を用い、与えられたクラスタ数をk個に分類する手法である。
【0088】
具体的に、K平均法は以下のような流れで処理される。まず、各データxiに対してランダムにクラスタを割り振る。次いで、割り振ったデータをもとに各クラスタの中心Vjを計算する。次いで、各xiと各Vjとの距離を求め、xiを最も近い中心のクラスタに割り当て直す。そして、上記の処理で全てのxiのクラスタの割り当てが変化しなかった場合、あるいは変化量が事前に設定した一定の閾値を下回った場合に、収束したと判断して処理を終了する。
【0089】
実施の形態2においては、データ取得部831aによって取得される風向合成値および風速補正値の組合せに基づいて作成される学習用データに従って、教師なし学習により、風向風速補正データの通常値からのずれの有無を学習する。
【0090】
モデル生成部832aは、以上のような学習を実行することで学習済モデルを生成し、出力する。
【0091】
次に、図12を用いて、学習部83が学習する処理について説明する。図12は、学習部の学習方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0092】
まず、データ取得部831aは、風向合成値および風速補正値を取得する(ステップS91)。なお、風向合成値および風速補正値を同時に取得するものとしたが、風向合成値および風速補正値を関連付けて入力できればよく、風向合成値および風速補正値のデータをそれぞれ別のタイミングで取得してもよい。
【0093】
次いで、モデル生成部832aは、データ取得部831aによって取得される風向合成値および風速補正値の組合せに基づいて作成される学習用データに従って、教師なし学習により、風向風速補正データの通常値からのずれの有無を学習し、学習済モデルを生成する(ステップS92)。
【0094】
その後、学習済モデル記憶部84は、モデル生成部832aが生成した学習済モデルを記憶する(ステップS93)。以上で、学習処理が終了する。
【0095】
<活用フェーズ>
図13は、風向風速データ蓄積装置の異常判定部の構成の一例を模式的に示す図である。異常判定部85は、推論装置に対応する。異常判定部85は、データ取得部851aと、推論部852aと、を備える。
【0096】
データ取得部851aは、風向観測値と、風速補正値と、を取得する。この例の場合には、データ取得部851aは、風向風速データ受信部81で受信した風向合成値および風速補正値を取得する。学習フェーズでは、風向合成値および風速補正値として、風向風速データ記憶部82に蓄積されている過去のデータが使用されるが、活用フェーズでは、風向合成値および風速補正値として、リアルタイムで風速補正装置50から受信するデータが使用される。つまり、活用フェーズで使用されるデータは、学習フェーズで使用されるデータよりも時間的に後のデータである。
【0097】
推論部852aは、風向観測値と、風速補正値とから、風向観測値および風速補正値を含む風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論するための学習済モデルを用いて、データ取得部851aで取得した風向観測値と風速補正値とから風向風速補正データの通常値からのずれの有無を出力する。つまり、推論部852aは、学習済モデル記憶部84に記憶された学習済モデルを利用して得られる風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論する。この例の場合には、風向観測値として、風向合成値が使用される。すなわち、この学習済モデルにデータ取得部851aで取得した風向合成値および風速補正値を入力することで、風向合成値および風速補正値がいずれのクラスタに属するかを推論し、推論結果を風向風速補正データの通常値からのずれの有無として出力することができる。
【0098】
一例では、推論部852aは、学習済モデルに入力された風向合成値および風速補正値が、風向風速補正データの通常値からずれていないこと、すなわち正常であることを示すクラスタに属しているか、それとも風向風速補正データの通常値からずれていること、すなわち異常であることを示すクラスタに属しているかを判定する。そして、風向風速データが正常であることを示すクラスタに属している場合には、推論部852aは、風向合成値および風速補正値は通常値からずれていないと推論する。一方、風向風速データが異常であることを示すクラスタに属している場合には、推論部852aは、風向合成値および風速補正値は通常値からずれていると推論する。
【0099】
なお、実施の形態2では、風向風速データ蓄積装置80のモデル生成部832aで学習した学習済モデルを用いて風向風速補正データの通常値からのずれの有無を出力するものとして説明したが、他の風向風速データ蓄積装置80等の外部から学習済モデルを取得し、この学習済モデルに基づいて風向風速補正データの通常値からのずれの有無を出力するようにしてもよい。
【0100】
このようにして、推論部852aは風向合成値および風速補正値に基づいて得られた風向風速補正データの通常値からのずれの有無を判定し、風向風速補正データの通常値からのずれがある場合には、風向風速補正データが通常値からずれていることを示すアラーム情報を生成する。推論部852aは、アラーム情報をアラーム情報送信部86に対して出力する。また、推論部852aは、風向風速補正データの通常値からのずれの有無をディスプレイ等に出力してもよい。
【0101】
次に、図14を用いて、異常判定部85を使って風向風速補正データの通常値からのずれの有無を得る推論処理を説明する。図14は、異常判定部の異常判定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0102】
まず、データ取得部851aは、風向風速データ受信部81から風向合成値および風速補正値を取得する(ステップS111)。
【0103】
次いで、推論部852aは、学習済モデル記憶部84に記憶された学習済モデルに風向合成値および風速補正値を入力し、風向風速補正データの通常値からのずれの有無を得る(ステップS112)。得られた風向風速補正データの通常値からのずれの有無は、推論の結果となる。
【0104】
その後、推論部852aは、風向風速補正データの通常値からのずれが有るかを判定する(ステップS113)。風向風速補正データの通常値からのずれが有る場合(ステップS113でYesの場合)には、推論部852aは、得られた推論の結果が前回の推論の結果から差異があるかを判定する(ステップS114)。前回の推論の結果から差異がある場合(ステップS114でYesの場合)には、推論部852aは、風向風速補正データが通常値からずれていることを示すアラーム情報を生成する(ステップS115)。アラーム情報には、アラーム情報の対象となる風向風速計30を識別する情報も含まれている。
【0105】
そして、アラーム情報送信部86は、アラーム情報を運行管理装置40に送信する(ステップS116)。運行管理装置40は、受信した風向風速補正データの通常値からのずれが有ることを示すアラーム情報を用いて、対応する風向風速計30をこれから通過する車両110に対する運転規制を実施する。これにより、風向風速計30の設置位置をこれから通過する車両110が、通常とは異なる風によって脱線、転覆等の影響を受けることを抑制することができる。その後、処理がステップS111に戻る。
【0106】
ステップS114で前回の推論の結果から差異がない場合(ステップS114でNoの場合)、またはステップS113で風向風速補正データの通常値からのずれがない場合(ステップS113でNoの場合)には、処理がステップS111に戻る。ステップS114で前回の推論の結果から差異がない場合には、既に同じ内容でアラーム情報が送信されているので、重複した送信を抑制するために、アラーム情報の送信は行われない。
【0107】
なお、学習部83に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもでき、他の公知の方法でもよい。
【0108】
また、教師なし学習を実現する場合、上記のようなK平均法による非階層型クラスタリングに限らず、クラスタリング可能な他の公知の方法を用いることもできる。一例では、最短距離法等の階層型クラスタリングであってもよい。
【0109】
この例において、学習部83および異常判定部85は、一例では、ネットワークを介して風向風速データ蓄積装置80に接続され、この風向風速データ蓄積装置80とは別個の装置であってもよい。また、学習部83および異常判定部85は、図10に示されるように風向風速データ蓄積装置80に内蔵されていてもよい。さらに、学習部83および異常判定部85は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0110】
また、モデル生成部832aは、複数の風向風速データ蓄積装置80に対して作成される学習用データに従って、風向風速補正データの通常値からのずれの有無を学習するようにしてもよい。なお、モデル生成部832aは、同一のエリアで使用される複数の風向風速データ蓄積装置80から学習用データを取得してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数の風向風速データ蓄積装置80から収集される学習用データを利用して風向風速補正データの通常値からのずれの有無を学習してもよい。また、学習用データを収集する風向風速データ蓄積装置80を途中で対象に追加したり、対象から除去したりすることも可能である。さらに、ある風向風速データ蓄積装置80に関して風向風速補正データの通常値からのずれの有無を学習した学習部83を、これとは別の風向風速データ蓄積装置80に適用し、当該別の風向風速データ蓄積装置80に関して風向風速補正データの通常値からのずれの有無を再学習して更新するようにしてもよい。
【0111】
(2)風向合成値および風速補正値と運転規制情報とが記憶される場合
<学習フェーズ>
この場合には、運行管理装置40は、車両110の運転規制を実施すると、運転規制の内容を示す運転規制内容データと、運転規制の対象となる位置に対応する風向風速計30を示す情報と、日時データと、を含む運転規制情報を風向風速データ蓄積装置80に送信している。つまり、風向風速データ受信部81は、運行管理装置40から運転規制情報を受信し、風向風速データ記憶部82に運転規制情報を蓄積している。風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、は一例では日時データを用いて対応付けすることができる。
【0112】
図15は、風向風速データ蓄積装置の学習部の構成の一例を示す図である。学習部83は、データ取得部831bと、モデル生成部832bと、を備える。
【0113】
データ取得部831bは、風向観測値および風速補正値と、運転規制の内容を含む運転規制内容データと、を含む学習用データを取得する。この例の場合には、データ取得部831bは、風向風速データ記憶部82から風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、を学習用データとして取得する。データ取得部831bは、学習用データ取得部に対応する。
【0114】
モデル生成部832aは、学習用データを用いて、風向観測値および風速補正値から運転規制内容を推論するための学習済モデルを生成する。この例では、風向観測値として、データ取得部831bから出力される風向合成値が使用される。すなわち、風向風速データ蓄積装置80の風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、から最適な運転規制内容を推論する学習済モデルを生成する。ここで、学習用データは、風向合成値および風速補正値と運転規制内容データとを互いに関連付けたデータである。
【0115】
一例では、運転規制が出された時刻から定められた時間だけ遡った風向合成値および風速補正値のデータ群と、正解データである上記時刻に出された運転規制内容データと、の組を学習用データとする。定められた時間は、一例では1時間とすることができる。なお、運転規制内容情報は、運転規制内容が出されたときに風向風速データ蓄積装置80で受信されるので、運転規制内容情報がない時刻における風向合成値および風速補正値に対応付けられる正解データは、運転規制なしとされるものとする。
【0116】
学習部83および異常判定部85は、風向風速データ蓄積装置80の運転規制内容を学習するために使用される。このような学習部83および異常判定部85は、図10に示されるように、風向風速データ蓄積装置80に内蔵されていてもよい。他の例では、学習部83および異常判定部85は、ネットワークを介して風向風速データ蓄積装置80に接続され、この風向風速データ蓄積装置80とは別個の装置であってもよい。さらに、学習部83および異常判定部85は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0117】
モデル生成部832bが用いる学習アルゴリズムは、いわゆる教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、ニューラルネットワークを適用した場合について説明する。
【0118】
モデル生成部832bは、一例では、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、運転規制内容を学習する。ここで、教師あり学習とは、入力とラベルである結果とのデータの組を学習部83に与えることで、それらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
【0119】
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる隠れ層である中間層、および複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層でもよいし、2層以上でもよい。
【0120】
図16は、モデル生成部が使用するニューラルネットワークの一例を模式的に示す図である。図16に例示されるような3層のニューラルネットワークであれば、複数の入力が入力層X1-X3に入力されると、これらの値にw11-w16で示される重みを掛けて中間層Y1-Y2に入力される。重みw11-w16は、個々に区別しない場合には、重みw1と称される。また、中間層Y1-Y2の結果にさらにw21-w26で示される重みを掛けて出力層Z1-Z3に出力される。重みw21-w26は、個々に区別しない場合には、重みw2と称される。出力層Z1-Z3の出力結果は、重みw1,w2の値によって変わる。
【0121】
この例において、ニューラルネットワークは、データ取得部831bによって取得される風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、の組合せに基づいて作成される学習用データに従って、教師あり学習により、運転規制内容を学習する。
【0122】
すなわち、ニューラルネットワークは、入力層に風向合成値および風速補正値を入力して出力層から出力された結果が、運転規制内容データに近づくように重みw1,w2を調整することで学習する。
【0123】
モデル生成部832bは、以上のような学習を実行することで学習済モデルを生成し、出力する。
【0124】
次に、図17を用いて、学習部83が学習する処理について説明する。図17は、学習部による学習方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0125】
まず、データ取得部831bは、風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、を取得する(ステップS131)。なお、風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、を同時に取得するものとしたが、風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、を関連づけて入力できればよく、風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、をそれぞれ別のタイミングで取得してもよい。また一例では、風向合成値および風速補正値は、運転規制が出された時刻から定められた時間だけ遡った風向合成値および風速補正値のデータ群とすることができる。
【0126】
次いで、モデル生成部832bは、データ取得部831bによって取得される風向合成値および風速補正値と、運転規制内容データと、の組合せに基づいて作成される学習用データに従って、教師あり学習により運転規制内容を学習し、学習済モデルを生成する(ステップS132)。
【0127】
その後、学習済モデル記憶部84は、モデル生成部832bが生成した学習済モデルを記憶する(ステップS133)。以上で、学習処理が終了する。
【0128】
<活用フェーズ>
図18は、風向風速データ蓄積装置の異常判定部の構成の一例を模式的に示す図である。異常判定部85は、データ取得部851bと、推論部852bと、を備える。
【0129】
データ取得部851bは、風向観測値および風速補正値を取得する。この例の場合には、データ取得部851bは、風向合成値および風速補正値を取得する。ここでは、データ取得部851bは、風向風速データ受信部81で受信した風向合成値および風速補正値と、この風向合成値および風速補正値を受信した時刻から定められた時間だけ遡った範囲の風向風速データ記憶部82から取得した風向合成値および風速補正値と、を取得する。学習フェーズでは、風向合成値および風速補正値として、風向風速データ記憶部82に蓄積されている過去のデータが使用されるが、活用フェーズでは、風向合成値および風速補正値として、風速補正装置50から受信するデータが使用される。つまり、活用フェーズで使用されるデータは、学習フェーズで使用されるデータよりも時間的に後のデータである。
【0130】
推論部852bは、風向観測値および風速補正値から運転規制内容を推論するための学習済モデルを用いて、データ取得部851bから入力された風向観測値および風速補正値から運転規制内容を出力する。つまり、推論部852bは、学習済モデルを利用して得られる運転規制内容を推論する。この例の場合には、風向観測値として、風向合成値が使用される。すなわち、この学習済モデルにデータ取得部851bで取得した風向合成値および風速補正値を入力することで、風向合成値および風速補正値から推論される運転規制内容を出力することができる。運転規制内容としては、一例では、規制なし、徐行運転、運転停止とすることができる。
【0131】
なお、この例では、風向風速データ蓄積装置80のモデル生成部832bで学習した学習済モデルを用いて運転規制内容を出力するものとして説明したが、他の風向風速データ蓄積装置80等の外部から学習済モデルを取得し、この学習済モデルに基づいて運転規制内容を出力するようにしてもよい。
【0132】
次に、図19を用いて、異常判定部85を使って運転規制内容を得るための処理を説明する。図19は、異常判定部の異常判定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0133】
まず、データ取得部851bは、風向合成値および風速補正値を取得する(ステップS151)。
【0134】
次いで、推論部852bは、学習済モデル記憶部84に記憶された学習済モデルに風向合成値および風速補正値を入力し、運転規制内容を得る(ステップS152)。得られた運転規制内容は、推論の結果となる。
【0135】
その後、推論部852bは、運転規制内容が徐行運転または運転停止であるかを判定する(ステップS153)。運転規制内容が徐行運転または運転停止である場合(ステップS153でYesの場合)には、推論部852bは、得られた運転規制内容が前回の推論の結果から差異があるかを判定する(ステップS154)。前回の推論の結果から差異がある場合(ステップS154でYesの場合)には、推論部852bは、得られた運転規制内容を含むアラーム情報を生成する(ステップS155)。アラーム情報には、アラーム情報の対象となる風向風速計30を識別する情報も含まれている。
【0136】
そして、アラーム情報送信部86は、アラーム情報を運行管理装置40に送信する(ステップS156)。運行管理装置40は、受信した運転規制内容を含むアラーム情報を用いて、対応する風向風速計30をこれから通過する車両110に対する運転規制を実施する。これにより、風向風速計30の設置位置をこれから通過する車両110が、強風によって脱線、転覆等の影響を受けることを抑制することができる。その後、処理がステップS151に戻る。
【0137】
ステップS154で前回の推論の結果から差異がない場合(ステップS154でNoの場合)、またはステップS153で運転規制内容が徐行運転および運転停止でない場合(ステップS153でNoの場合)には、処理がステップS151に戻る。
【0138】
なお、この例では、モデル生成部832bが用いる学習アルゴリズムに教師あり学習を適用した場合について説明したが、これに限られるものではない。学習アルゴリズムについては、教師あり学習以外にも、強化学習、教師なし学習、または半教師あり学習等を適用することも可能である。
【0139】
また、モデル生成部832bは、複数の風向風速データ蓄積装置80に対して作成される学習用データに従って、運転規制内容を学習するようにしてもよい。なお、モデル生成部832bは、同一のエリアで使用される複数の風向風速データ蓄積装置80から学習用データを取得してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数の風向風速データ蓄積装置80から収集される学習用データを利用して運転規制内容を学習してもよい。また、学習用データを収集する風向風速データ蓄積装置80を途中で対象に追加したり、対象から除去したりすることも可能である。さらに、ある風向風速データ蓄積装置80に関して運転規制内容を学習した学習部83を、これとは別の風向風速データ蓄積装置80に適用し、当該別の風向風速データ蓄積装置80に関して運転規制内容を再学習して更新するようにしてもよい。
【0140】
また、モデル生成部832bに用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習を用いることもでき、他の公知の方法、一例では、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
【0141】
さらに、この例において、風向風速データ受信部81で受信した風向合成値および風速補正値と、この風向合成値および風速補正値を受信した時刻から定められた時間だけ遡った範囲の風向風速データ記憶部82から取得した風向合成値および風速補正値と、を入力データとしていたが、これらの風向合成値および風速補正値の分布の傾向を入力データとして用いてもよい。風向合成値および風速補正値の分布の傾向として、定められた範囲のデータ群を統計処理したもの、あるいは近似処理したものを使用することができる。
【0142】
また、上記した説明では、ある時刻から定められた時間だけ遡った期間における風向合成値および風速補正値と、正解データであるある時刻の運転規制内容データと、を学習用データとして運転規制内容を学習する学習済モデルを生成していた。このほかにも、風向風速データ蓄積装置80に蓄積されたデータを用いて、種々の学習処理を行うことができる。一例では、ある期間における風向合成値および風速補正値の傾向と、ある期間が経過した後のある時刻での強風とされる風速、一例では20m/s以上の風が吹く確率である強風発生確率、あるいはある時刻で吹く風の風速と、の関係を学習させるようにしてもよい。この場合には、車両110が風向風速計30の設置位置を通過する時刻における強風発生確率または風速が運行管理装置40に通知され、強風発生確率または風速の推論値に基づいた運転規制の判断が行われる。
【0143】
実施の形態2では、風速補正装置50で補正された風向合成値および風速補正値を風向風速データ蓄積装置80に蓄積し、蓄積された風向合成値および風速補正値を用いて、風が車両110に与える影響を推論する学習済モデルを生成する。そして、学習済モデルに、風速補正装置50から受信した風向合成値および風速補正値を入力して得られる結果を、運行管理装置40に送信し、運行管理装置40では、この内容に基づいた運転規制を判断するようにした。一例では、風向合成値および風速補正値が、運転規制が出されない通常の範囲から外れていることを検知して、運行管理装置40にアラーム情報を送信したり、ある時刻から定められた時間における風向合成値および風速補正値のデータから推定したある時刻における運転規制内容を含むラーム情報を運行管理装置40に送信したりする。これによって、リアルタイムで観測される風速だけではなく、過去の経験から推論される車両110に影響が出やすい風の発生を用いて、車両110の運転規制について判断することができる。
【0144】
図1および図10では、補正量テーブル生成装置20は、風速補正装置50とは別個に設けられる場合を示したが、風速補正装置50が補正量テーブル生成装置20の機能を有する構成としてもよい。
【0145】
また、図10では、風向風速データ蓄積装置80は、風速補正装置50とは別個に設けられる場合を示したが、風速補正装置50が風向風速データ蓄積装置80の機能を有する構成としてもよい。
【0146】
図1および図10では、風速補正装置50と補正量テーブル生成装置20とを含むシステムは、車両110の風速を補正することができる風速補正システムに対応する。つまり、列車制御管理システム1は、風向風速計30と運行管理装置40と風速補正システムとを備えるシステムであると考えることができ、列車制御管理システム1Aは、風向風速計30と運行管理装置40と風速補正システムと風向風速データ蓄積装置80とを備えるシステムであると考えることができる。
【0147】
同様に、図10では、風速補正装置50と風向風速データ蓄積装置80とを含むシステムは、車両110の風速を補正することができる風速補正システムに対応する。つまり、列車制御管理システム1Aは、補正量テーブル生成装置20と風向風速計30と運行管理装置40と風速補正システムとを備えるシステムであると考えることができる。
【0148】
また、図1および図10において風速補正装置50と運行管理装置40とを含むシステムは、車両110の風速を補正した風速補正値を用いて車両110の運行管理を行うことができる運行管理システムに対応する。つまり、列車制御管理システム1は、補正量テーブル生成装置20と風向風速計30と運行管理システムとを備えるシステムであると考えることができ、列車制御管理システム1Aは、補正量テーブル生成装置20と風向風速計30と運行管理システムと風向風速データ蓄積装置80とを備えるシステムであると考えることができる。
【0149】
また、図10において風速補正装置50と運行管理装置40と風向風速データ蓄積装置80とを含むシステムは、車両110の風速を補正した風速補正値を用いて車両110の運行管理を行うことができる運行管理システムに対応する。つまり、列車制御管理システム1Aは、補正量テーブル生成装置20と風向風速計30と運行管理システムとを備えるシステムであると考えることができる。
【0150】
次に、列車制御管理システム1,1Aで使用される補正量テーブル生成装置20、運行管理装置40、風速補正装置50および風向風速データ蓄積装置80のハードウェア構成について説明する。実施の形態1,2の風速補正装置50は、コンピュータシステム上で、風速補正装置50における処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが風速補正装置50として機能する。
【0151】
図20は、実施の形態1に係る風速補正装置を実現するコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。図20に示されるように、このコンピュータシステムは、制御部901と、入力部902と、記憶部903と、表示部904と、通信部905と、出力部906と、を備え、これらはシステムバス907を介して接続されている。
【0152】
図20において、制御部901は、一例では、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、実施の形態1,2の風速補正装置50における処理が記述されたプログラムを実行する。入力部902は、一例ではキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムのユーザが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部903は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部901が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータなどを記憶する。また、記憶部903は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部904は、ディスプレイ、液晶表示パネルなどで構成され、コンピュータシステムのユーザに対して各種画面を表示する。一例では、入力部902と表示部904とが一体的に形成されたタッチパネルで入力部902および表示部904が構成されていてもよい。通信部905は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部906は、プリンタ、スピーカなどである。なお、図20は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図20の例に限定されない。
【0153】
ここで、プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、プログラムが記憶部903にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部903から読み出されたプログラムが記憶部903の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部901は、記憶部903に格納されたプログラムに従って、実施の形態1,2の風速補正装置50としての処理を実行する。
【0154】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、風速補正装置50における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部905を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0155】
補正量テーブル生成装置20、運行管理装置40および風向風速データ蓄積装置80についても同様のハードウェア構成を有するコンピュータシステムによって実現されるため、説明を省略する。
【0156】
図1および図10に示した風速補正装置50の補正量テーブル選択部56、風向風速合成部57および風速補正部58は、図20に示した記憶部903に記憶されたプログラムが図20に示した制御部901により実行されることによって実現される。補正量テーブル選択部56、風向風速合成部57および風速補正部58の実現には、図20に示した記憶部903も用いられる。補正量テーブル記憶部54および車両方向情報記憶部55は、図20に示した記憶部903によって実現される。通過列車情報受信部51、風向風速観測データ受信部52、補正量テーブル受信部53および風向風速データ送信部59は、図20に示した通信部905によって実現される。
【0157】
図1および図10に示した補正量テーブル生成装置20の差異判定部25および補正量テーブル生成部26は、図20に示した記憶部903に記憶されたプログラムが図20に示した制御部901により実行されることによって実現される。差異判定部25および補正量テーブル生成部26の実現には、図20に示した記憶部903も用いられる。周辺領域情報記憶部22および車両詳細情報記憶部24は、図20に示した記憶部903によって実現される。周辺領域情報受信部21、車両詳細情報受信部23および補正量テーブル送信部27は、図20に示した通信部905によって実現される。
【0158】
図10に示した風向風速データ蓄積装置80の学習部83および異常判定部85は、図20に示した記憶部903に記憶されたプログラムが図20に示した制御部901により実行されることによって実現される。学習部83および異常判定部85の実現には、図20に示した記憶部903も用いられる。風向風速データ記憶部82および学習済モデル記憶部84は、図20に示した記憶部903によって実現される。風向風速データ受信部81およびアラーム情報送信部86は、図20に示した通信部905によって実現される。
【0159】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0160】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0161】
[付記1]
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
を備えることを特徴とする風速補正装置。
[付記2]
前記補正量情報は、前記車両種別情報、前記車両種別情報に対応する車両の重量および形状を含む車両詳細情報と、前記風向風速計の設置位置を含む周辺領域の地図情報および構造物についてのサイズを含む情報である構造物情報を含む周辺領域情報と、に基づいて前記車両の種別ごとに生成された情報であることを特徴とする付記1に記載の風速補正装置。
[付記3]
前記車両詳細情報および前記周辺領域情報に基づいて、各風向における前記風向風速計の設置位置での、風速に対する前記車両が受ける風速の比率である補正量をシミュレーションによって算出し、前記車両の種別ごとに前記補正量情報を生成する補正量情報生成部をさらに備えることを特徴とする付記2に記載の風速補正装置。
[付記4]
前記通過列車情報は、前記車両の走行速度情報をさらに含み、
前記風向観測値および前記風速観測値から前記車両の走行速度情報に基づいた風向および風速である風向合成値および風速合成値を算出する風向風速合成部をさらに備え、
前記風速補正部は、前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向合成値に基づいて、前記風速合成値を補正した前記風速補正値を算出することを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の風速補正装置。
[付記5]
前記風向観測値と、前記風速補正値とを含む風向風速補正データから、前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを用いて、前記風向風速補正データから前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を出力する異常判定部をさらに備えることを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の風速補正装置。
[付記6]
前記異常判定部は、
前記風向観測値と、前記風速補正値と、を取得するデータ取得部と、
前記風向観測値と、前記風速補正値とから、前記風向観測値および前記風速補正値を含む前記風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部で取得した前記風向観測値および前記風速補正値から前記風向風速補正データの通常値からのずれの有無を出力する推論部と、
を有することを特徴とする付記5に記載の風速補正装置。
[付記7]
前記異常判定部は、
前記風向観測値および前記風速補正値を取得するデータ取得部と、
前記風向観測値および前記風速補正値から運転規制内容を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部から入力された前記風向観測値および前記風速補正値から前記運転規制内容を出力する推論部と、
を有することを特徴とする付記5に記載の風速補正装置。
[付記8]
前記風向観測値および前記風速補正値を有する風向風速補正データを含む学習用データを用いて、前記風向風速補正データから前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを生成する学習部をさらに備えることを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の風速補正装置。
[付記9]
前記学習部は、
前記風向観測値と、前記風速補正値と、を含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記風向観測値と、前記風速補正値とから前記風向風速補正データの通常値からのずれの有無を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を有することを特徴とする付記8に記載の風速補正装置。
[付記10]
前記学習部は、
前記風向観測値および前記風速補正値と、運転規制の内容を含む運転規制内容データと、を含む学習用データを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記風向観測値および前記風速補正値から運転規制内容を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を有することを特徴とする付記8に記載の風速補正装置。
[付記11]
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計で観測される風の風速を補正量情報を用いて補正する風速補正装置と、前記補正量情報を生成する補正量情報生成装置と、を備える風速補正システムであって、
前記補正量情報生成装置は、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報、前記車両種別情報に対応する車両の重量および形状を含む車両詳細情報に基づいて、各風向における前記風向風速計の設置位置での、風速に対する前記車両が受ける風速の比率である補正量をシミュレーションによって算出して前記車両の種別ごとに前記風向と前記補正量とを関連付けた複数の前記補正量情報を生成する補正量情報生成部と、
前記補正量情報を前記風速補正装置に送信する補正量情報送信部と、
を有し、
前記風速補正装置は、
前記風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
前記複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
を有することを特徴とする風速補正システム。
[付記12]
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計で観測される風の風速を補正する風速補正装置と、前記風速補正装置で補正された風速および前記風向風速計で観測された風向から得られる風向情報とを蓄積する風向風速データ蓄積装置と、を備える風速補正システムであって、
前記風速補正装置は、
前記風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
前記風向観測値および前記風速補正値を有する風向風速補正データを送信する風向風速データ送信部と、
を有し、
前記風向風速データ蓄積装置は、
前記風向風速補正データを受信する風向風速データ受信部と、
前記風向風速補正データから、前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を推論するための学習済モデルを用いて、前記風向風速補正データから前記車両の運行に影響を与え得る事象の発生の有無を出力する異常判定部と、
を有することを特徴とする風速補正システム。
[付記13]
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計で観測される風の風速を補正する風速補正装置と、前記風速補正装置で補正された風速および前記風向風速計で観測された風向から得られる風向情報を用いて車両の運行を管理する運行管理装置と、を備える運行管理システムであって、
前記風速補正装置は、
前記風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信部と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信部と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正部と、
前記風向観測値および前記風速補正値を有する風向風速補正データを送信する風向風速データ送信部と、
を備え、
前記運行管理装置は、前記風向風速補正データに基づいて前記車両の運行を管理することを特徴とする運行管理システム。
[付記14]
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを補正する風速補正装置での風速補正方法であって、
前記風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信工程と、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信工程と、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正工程と、
を含むことを特徴とする風速補正方法。
[付記15]
鉄道の線路沿いに設置される風向風速計によって観測される風向値および風速値である風向観測値および風速観測値を含む風向風速観測データを受信する風向風速観測データ受信ステップと、
前記線路を通過する車両の種別である車両種別情報を含む通過列車情報を受信する通過列車情報受信ステップと、
風向と、前記風速観測値を補正する補正量と、を前記車両の種別ごとに関連付けた複数の補正量情報のうち前記車両種別情報に対応する前記補正量情報および前記風向観測値に基づいて、前記風速観測値を補正した風速補正値を算出する風速補正ステップと、
をコンピュータに実行させる風速補正プログラム。
【符号の説明】
【0162】
1,1A 列車制御管理システム、10 周辺領域情報提供装置、20 補正量テーブル生成装置、21 周辺領域情報受信部、22 周辺領域情報記憶部、23 車両詳細情報受信部、24 車両詳細情報記憶部、25 差異判定部、26 補正量テーブル生成部、27 補正量テーブル送信部、30 風向風速計、40 運行管理装置、50 風速補正装置、51 通過列車情報受信部、52 風向風速観測データ受信部、53 補正量テーブル受信部、54 補正量テーブル記憶部、55 車両方向情報記憶部、56 補正量テーブル選択部、57 風向風速合成部、58 風速補正部、59 風向風速データ送信部、70 情報伝送装置、71 情報受信部、72 情報送信部、80 風向風速データ蓄積装置、81 風向風速データ受信部、82 風向風速データ記憶部、83 学習部、84 学習済モデル記憶部、85 異常判定部、86 アラーム情報送信部、100 線路、110 車両、831a,831b,851a,851b データ取得部、832a,832b モデル生成部、852a,852b 推論部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20