IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イトーキの特許一覧

<>
  • 特開-椅子及び椅子セット 図1
  • 特開-椅子及び椅子セット 図2
  • 特開-椅子及び椅子セット 図3
  • 特開-椅子及び椅子セット 図4
  • 特開-椅子及び椅子セット 図5
  • 特開-椅子及び椅子セット 図6
  • 特開-椅子及び椅子セット 図7
  • 特開-椅子及び椅子セット 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164688
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】椅子及び椅子セット
(51)【国際特許分類】
   A47C 11/00 20060101AFI20241120BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20241120BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20241120BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A47C11/00
A47C7/62 A
A47C7/54 A
A47C7/02 Z
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080355
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】山下 徹也
(72)【発明者】
【氏名】緑川 由佳
【テーマコード(参考)】
3B084
3B095
【Fターム(参考)】
3B084JB02
3B084JC03
3B095AA09
3B095AC07
(57)【要約】
【課題】ソファタイプの椅子において、安楽機能や美感、物品収納機能に優れた構造を開示する。
【解決手段】椅子は座2と背もたれ3と棒脚4とを備えており、背もたれ3の下部には物品収納用の凹部6が左右全長に亙って形成されている。背もたれ3における身体支持部3bの下端は着座者の腰部を支持できる高さであり、身体支持部3bの前面は着座者を安定的に支持する上下高さを有している。椅子は、同種のもの又は異種のものを左右に連結可能であり、サイドパネル5を備えていない椅子1aを多連に連結すると、長椅子や簡易ベッドとしても使用できるが、各椅子の凹部6は一連に長く連続しているため、連結された状態で美感に優れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座、背もたれ、及び、前記座を支持する脚を有し、前記座と背もたれは、着座者が当たる側を張地で覆われたクッションで構成している、ソファタイプの椅子であって、
前記背もたれは、その下部を構成して物品を収納できる前向き開口の凹部が左右全幅に亙って形成された背もたれ下部と、前記背もたれ下部の上に位置した身体支持部と、を含み、座面が前記凹部まで入り込んでおり、
同種の他の椅子と左右方向に連結可能であり、
同種の他の椅子と左右方向に連結された際に、前記背もたれ下部の前記凹部が、前記他の椅子の前記背もたれ下部の前記凹部と連通するように構成される、
椅子。
【請求項2】
前記身体支持部は,その下端が着座者の腰部を支える高さになっていると共に、上下幅が前記背もたれ下部の上下幅よりも大きくなっている、
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座と背もたれとの左右側面は平行になっている、
請求項1に記載の椅子。
【請求項4】
前記凹部の上下幅は座面から8~15cmの高さに設定されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項5】
前記身体支持部の前面は、下から上に向けて後退するように側面視で傾斜又は湾曲している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項6】
前記脚は前記座の各コーナー部下面に配置した棒脚であり、
前記座の下面の左右両側部に、複数台を左右に連結するための連結部材を配置している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項7】
前記凹部にも張地を介してクッションが配置されており、前記身体支持部に張られた張地の下端部と前記凹部に張られた張地の状態部とが後ろ側に引かれて、背もたれの強度メンバーに固定又は係止されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項8】
座、背もたれ、及び、前記座を支持する脚を有し、前記座と背もたれは、着座者が当たる側を張地で覆われたクッションで構成している、ソファタイプの椅子であって、
前記背もたれは、その下部を構成して物品を収納できる前向き開口の凹部が左右全幅に亙って形成された背もたれ下部と、前記背もたれ下部の上に位置した身体支持部と、を含み、座面が前記凹部まで入り込んでおり、
同種の他の椅子と左右方向に連結可能であり、
同種の他の椅子と左右方向に連結された際に、前記背もたれ下部の前記凹部が、前記他の椅子の前記背もたれ下部の前記凹部と連通するように構成され、
左右側面のうち一方又は両方に、前記座の側面と背もたれの側面とに重なった状態で板状のサイドパネルが配置されており、
かつ、前記脚は前記座の各コーナー部下面に配置した棒脚である、
椅子。
【請求項9】
請求項6に記載した椅子のみの複数台、又は、請求項8に記載した椅子のみの複数台、若しくは、請求項6に記載した椅子と請求項8に記載した椅子との複数台が、座の下面に配置された連結部材を介して左右に連結されている、
椅子セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ソファタイプの椅子及び椅子セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソファタイプの椅子は、座と背もたれにクッションを張って座り心地を良くしており、待合室や応接室などで多用されている。ソファタイプの椅子には、一人掛けや複数人掛けがあり、また、肘掛けを備えているものと備えていないものとがある。
【0003】
一人掛けのソファを複数台左右に併設して簡易ベッドと成すことも行われているが、特許文献1には、背もたれの下部に凹部を形成し、簡易ベッドとして使用するにおいて身体を凹部に入り込ませることにより、ベッドとして広く使用できるようにした工夫が開示されている。他方、特許文献2に開示されているように、背もたれの下部に小物を収納できる凹部を形成することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-368013号公報
【特許文献2】特開2002-65394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既述のとおり、ソファタイプの椅子は待合室や応接室などで多用されているが、使用者がポーチやハンドバッグのような小物を所持している場合、特許文献1,2のように背もたれの下部に凹部が形成されていると、凹部に小物を収納できるため便利である。
【0006】
しかし、特許文献1の場合は、凹部は人が横になって身体を入り込ませる高さになっているため、凹部の高さはかなり高くならざるを得ず、すると、人が腰掛けて使用するにおいて、人の背中のかなり高い部分が背もたれに当たることになり、すると、背骨が支持された状態になって違和感(突き出し感じ)を感じるおそれがある。また、椅子を左右に並べただけでは、簡易ベッドや長椅子として使用するにおいて、隣り合った椅子がずれ動いてしまうことが懸念される。
【0007】
他方、特許文献2では、凹部の底面は座面よりも下方に位置しているため、封筒やペンなどの薄い物品や細い物品を収納したときに、席を離れるに際して凹部に目をやっても物品を見落としてしまうことが懸念される。
【0008】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、背もたれに凹部を設けることは特許文献1,2と共通しつつ、品質の向上を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の椅子は、基本構成として、
「座、背もたれ、及び、前記座を支持する脚を有し、前記座と背もたれは、着座者が当たる側を張地で覆われたクッションで構成している、ソファタイプの椅子であって、
前記背もたれは、その下部を構成して物品を収納できる前向き開口の凹部が左右全幅に亙って形成された背もたれ下部と、前記背もたれ下部の上に位置した身体支持部と」
を含んでいる。
【0010】
そして、上記基本構成に加えて、
「座面が前記凹部まで入り込んでおり、
同種の他の椅子と左右方向に連結できるように構成され、
同種の他の椅子と左右方向に連結された際に、前記背もたれ下部の前記凹部が、前記他の椅子の前記背もたれ下部の前記凹部と連なるように構成される」
という構成になっている。
【0011】
本願発明は様々に展開可能であり、その例を請求項2以下で特定している。このうち請求項2の発明は、請求項1において、
「前記身体支持部は,その下端が着座者の腰部を支える高さになっていると共に、上下幅が前記背もたれ下部の上下幅よりも大きくなっている」
という構成になっている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1において、
「前記座と背もたれとの左右側面は平行になっている」
という構成になっている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1において、
「前記凹部の上下幅は座面から8~15cmの高さに設定されている」
という構成になっている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1において、
「前記身体支持部の前面は、下から上に向けて後退するように側面視で傾斜又は湾曲している」
という構成になっている。
【0015】
請求項6の発明、請求項1において、
「前記脚は前記座の各コーナー部下面に配置した棒脚であり、
前記座の下面の左右両側部に、複数台を左右に連結するための連結部材を配置している」
という構成になっている。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1において、
「前記凹部にも張地を介してクッションが配置されており、前記身体支持部に張られた張地の下端部と前記凹部に張られた張地の状態部とが後ろ側に引かれて、背もたれの強度メンバーに固定又は係止されている」
という構成になっている。なお、張地(表皮材)は、天然又は人造のレザーや織地、編地などの様々なものを使用できる。
【0017】
請求項8の発明は独立した発明であり、
「請求項1の構成に加えて、左右側面のうち一方又は両方に、前記座の側面と背もたれの側面とに重なった状態で板状のサイドパネルが配置されており、
かつ、前記脚は前記座の各コーナー部下面に配置した棒脚である」
という構成になっている。
【0018】
本願発明は、複数台(複数脚)の椅子が連結された椅子セットも含んでいる。この椅子セットは、請求項9のとおり、
「請求項6に記載した椅子のみの複数台、又は、請求項8に記載した椅子のみの複数台、若しくは、請求項6に記載した椅子と請求項8に記載した椅子との複数台が、座の下面に配置された連結部材を介して左右に連結されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、椅子を左右に連結すると、各椅子の凹部は互いに連通して長い溝の形態を成す。このため、デザイン的に統一されて、見た目がよい。また、座面は凹部まで入り込んでおり、凹部の下面が座面で構成されている。従って、封筒類やペンなどの小さい物品を凹部に収納した場合、離席に際して凹部に目をやると、物品が小さくても必ず目に入る。従って、小物を見落とすことを防止できる。
【0020】
また、本願発明では、同種の椅子を左右に併設するに当たって、隣り合った椅子を連結できるため、簡易ベッドや長椅子として使用するに当たって、一体性が保持されて商品性を向上できる。
【0021】
請求項2の構成を採用すると、背もたれの身体支持部は着座者の腰部を支持し得る高さになっているため、背骨に対する突っ張り感を無くして、ランバーサポート機能により、人の背を違和感なく安定的に支持できる。更に、身体支持部の上下高さは凹部の上下高さよりも大きくなっているため、身体支持部による使用者の支持高さの範囲をできるだけ大きくして、人に対するサポート機能を向上できる。
【0022】
請求項3のように、座及び背もたれの左右側面を平行に形成すると、同種の椅子を左右に連結したときに、椅子の側面全体を密着させて美感を向上できる。
【0023】
請求項4のように、凹部の上下幅を座面から8~15cmの高さに設定すると、小物の収納機能を確保しつつランバーサポート機能を発揮することを確実化できて、好適である。
【0024】
ソファタイプの椅子は使用者が寛ぐことを主眼にしているため、使用者は上半身を後ろに反らして背もたれにもたれ掛かることが多い。そして、本願請求項5のように身体支持部の前面を側面視で傾斜又は湾曲させると、人が身体支持部にもたれたときに、人の背部を身体支持部に広い面で接触させることができて、身体へのフィット性に優れている。
【0025】
ソファタイプの椅子は一人掛けと複数人掛けとがあるが、一人掛けの椅子を独立して使用したり、複数の一人掛け椅子を左右に連結して使用したりすることがある。例えば、病院や診療所の待合室で外来患者用として使用するにおいて、感染症の流行などで患者同士の隔離が必要な場合は、1台(1脚)ずつを離して設置することによって感染リスクを軽減する一方、感染症などの問題がない場合は、複数台を連結してスペースを有効利用するといったことがある。
【0026】
そして、請求項6の発明では、脚は棒脚であるため、座の下方の空間は左右に開口しており、椅子同士を左右に連結するにおいて、座の下面に配置した連結部材を外向きに突出させることができるため、椅子同士の連結を容易に行える。また、座の下方にモップを挿入できるため、床掃除を行いやすい利点もある。
【0027】
凹部にもクッションを配置して張地で覆うと、椅子全体として質感を統一させて美感を向上できると共に、凹部に配置した物品を保護できる点でも有益である。そして、高い美感を確保するためには張地は凹部の内部でもピンと張った状態に保持しておく必要があるが、請求項7の構成を採用すると、上下の張地を後ろに引っ張ることができるため、身体支持部と凹部との両方で張地をピンと張った状態に保持することを容易に実現できる。
【0028】
請求項8のようにサイドパネルを設けると、サイドパネルを肘掛けとして使用できるため、安楽性を向上できる。また、人が離席するに際して、サイドパネルに手を付けて立ち上がることができるため、足腰の弱い人にとって特に有益である。
【0029】
請求項9では、単独での使用の他に長椅子(ベンチ) としても使用できるため、様々な態様を実現できる。すなわち、サイドパネルを備えていないものを複数台連結すると、簡易ベッドを作ることができるが、この場合、凹部が一連に連続しているため見栄えもよい。また、サイドパネル付きの椅子を使用すると、多連ボックス形になって複数人が気兼ねなく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)は第1実施形態の椅子の斜視図、(B)は第2実施形態の椅子の斜視図、(C)は第3実施形態の椅子の斜視図である。
図2】第4実施形態を示す図で、(A)は前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は下から見た斜視図である。
図3】は第1実施形態の椅子の正面図である。
図4】第1実施形態の一部破断側面である。
図5】(A)は図4の部分拡大図、(B)はサイドパネルを実線で表示した状態での図4のVB-VB視断面図である。
図6】(A)は第1実施形態の椅子の底面図、(B)は連結された状態を(A)のB-B視方向から見た断面図である。
図7】連結態様を示す正面図である。
図8】(A)は第5実施形態の側面図、(B)は第6実施形態の分離側面図、(C)は第7実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
(1).概要
図1(A)に示す第1実施形態の椅子1aは基本構成品であり、座2と背もたれ3と4本の棒脚4とを備えている。棒脚4は脚装置の一例であり、座2の四隅の下面に固定している。座2は平面視正四角形で、背もたれ3は背面視正四角形になっており、座2の側面と背もたれ3の側面とは同一面を成して連続している。
【0033】
図1(B)に示す第2実施形態の椅子1bは、第1実施形態の椅子1aを基本としてサイドパネル5を右側面に固定した態様であり、図1(C)に示す第3実施形態の椅子1cは、第1実施形態の椅子1aの左側面にサイドパネル5を固定した態様であり、図2に示す第4実施形態の椅子1dは、第1実施形態の椅子1aの左左右側面にサイドパネル5を固定した態様になっている。
【0034】
以下では、各実施形態の椅子を明示する必要がある場合は、符号1a~1dを使用し、各実施形態に共通した構成を説明する場合は、単に椅子として称して符号は付さないこととする。
【0035】
サイドパネル5は仕切りとしての機能と肘掛けとしての機能を備えており、上面は、後ろから前に向けて低くなるように緩く傾斜している。また、サイドパネル5の後端は背もたれ3の上端よりもある程度の寸法(10cm前後)だけ低くなっている一方、サイドパネル5の前端は座2の前端よりもある程度の寸法(7~8cm)だけ後ろに位置している。
【0036】
座2の上面(座面)は、後ろに向けて低くなるように緩く湾曲している。他方、背もたれ3の背面は上に行くに従って後ろにずれるように僅かの角度で後傾している。そして、背もたれ3は、前向きに開口した凹部6が左右全長に亙って形成された背もたれ下部3aと、背もたれ下部3aの上に一体に連続した身体支持部3bとからなっている。座2の上面(座面)は凹部6まで入り込んでいる。従って、凹部6の底面は、座面の後ろ向き延長面によって構成されている。凹部6には、ポーチなどの小物を収納できる。折り畳み傘のような細長い物品7も収納できる。
【0037】
身体支持部3bの上下両端は丸みを帯びているが、前面は上に行くに従って後退するように後傾状態で緩く湾曲している。背もたれ3の背面はフラットで後傾しているが、背面の後傾の程度よりも身体支持部3bの前面の後傾の程度が大きくなっている。このため、身体支持部3bは下から上に向けて厚さが小さくなっている。
【0038】
凹部6の上面は側面視で丸みを帯びているが、僅かながら奥に向けて低くなっており、奥部の高さH1はおおよそ11cm程度になっている。他方、図4において、身体支持部3bの高さH2は22cm程度であり、従って、身体支持部3bの高さH2は凹部6の高さH1の3倍程度の寸法になっている。身体支持部3bの下端の厚さT1は14~15cm強である一方、凹部6の深さLと背もたれ下部3aの厚さT2は7cm程度であり、従って、T2はT1の半分程度になっていて、凹部6の深さと背もたれ下部3aの厚さT2とは同じ程度の寸法になっている。もとより、これらの数値は単なる一例であり、必要に応じて任意に変更できる。小物の収容機能と身体の支え機能とを両立させる点からは、8~15cm程度が好適である。
【0039】
サイドパネル5を設ける場合、その後端面が背もたれ3の後面と同一面を成すように設定されている。他方、サイドパネル5の前面は、下方に行くに従って後退するように、側面視で僅かに前傾している。従って、サイドパネル5は、上下面が平行でないと共に前後面も平行でない不等辺台形に形成されている。
【0040】
(2).座部の詳細本実施形態の椅子は木製であり、図3,4に示すように、座2は、骨組み(強度メンバー)として、前後方向に長い左右2本の側枠8(図3(B)参照)と、左右の側枠8の間に配置された左右長手の3本の横枠9,10,11(図4参照)とを備えており、側枠8と横枠9,10,11とはダボなどで強固に連結されている。
横枠9,10,11の下面は側枠8の下面よりも高くなっており、前部横枠9の下面にフロント支持板12を固定し、フロント支持板12に前部の棒脚4がブラケット板13を介して固定されている一方、後部横枠11の下面にリア支持板14を固定し、リア支持板14に前部の棒脚4がブラケット板13を介して固定されている。ブラケット板13はビスによって支持板12,14に固定されている。支持板12,14は、側枠8にも固定されている。
【0041】
各棒脚4は、平面視で座2の対角方向に向かうように傾斜しており、棒脚4の下端には、鉛直姿勢のアジャスタボルト15(例えば図1参照)が下方からねじ込まれている。従って、棒脚4の軸心はアジャスタボルト15の軸心とは同心でなくて交差している。なお、アジャスタボルト15を使用せずに、棒脚4の下端を床に直接接地させたり、棒脚4の下端にゴム等の軟質接地部材を装着したりしてもよい。
【0042】
図4に示すように、側枠8及び横枠9,10,11より成る骨組みの上面には座部基板17が固定されており、座部基板17に、座部クッション18が重なっている。図では、座部クッション18は単層に表示しているが、複数層に構成することが好ましい。複数層に形成した場合は、座り心地を良くするために表層を柔らかい素材で構成するのが好ましい。また、座部クッションを複数層に構成すると、表層の縁部を前面や側面に巻き込んで張地で覆うことにより、ソファらしいふっくらとした外観を形成できて好適である。背部クッション30も同様である。座部クッション18を覆う座部張地の周縁は、側枠8の下面や支持板12,14の下面ななどにタッカーで固定されている。
【0043】
図5(B)に示すように、サイドパネル5は心材19の表裏両面にクッション20を張って張地(図示せず)で覆った構造になっており、座2に対しては、前後2カ所で固定されている。固定箇所では、心材19に埋設した鬼目ナット21に、側枠8に内部から挿通したボルト22をねじ込んでいる。従って、ボルト22は、座2の第3座部クッション18とサイドパネル5の張地及び内側クッション20とを貫通しており、ボルト22のねじ込みにより、座部クッション18の巻き込み部とサイドパネル5の内側クッション20とは薄く潰されている。背もたれ3に対するサイドパネル5の固定構造も同様である。
【0044】
図4図5(A)において、側枠8等に設けたボルト挿通穴を符号23で表示している。座2においては、ボルト挿通穴23は、前後の支持板12,14の間に位置している。このため、ボルト22はドライバ工具を使用して簡単に回転操作できる。
【0045】
(3).背もたれの詳細
図2(B)及び図3,4,5(A)に示すように、背もたれ3は、強度メンバーとして、上下長手の左右縦長フレーム25と、左右縦長フレーム25の間に配置された左右長手のステー(横桟部材)26~28とを備えており、左右縦フレーム25と各ステー26~28とをダボなどで強固に固定することにより、背部の骨組みを構成している。縦フレーム25の下部は座2の側枠8及び後部横枠11にダボやビスなどで固定されている。図示していないが、縦長フレーム25の下部に補強板を固定して、下段ステー28はを補強板で支持してもよい。更に、ステーの数や段数は任意に設定できる。
【0046】
3本のステー26~28のうち上段ステー26と中段ステー27とは身体支持部3bの箇所に位置しており、これら上段ステー26と中段ステー27及び縦長フレーム25の前面に上部基板29を固定して、上部基板29に、アッパ背部クッション30を配置している。既述のとおり、アッパ背部クッション30を複数層の積層品で構成することも可能であり、この場合は、上部と左右側部とを後ろに容易に巻き込むことができる。
【0047】
3本のステー26~28のうち下段ステー28は帯板状に形成されていて背もたれ下部3aの箇所に位置しており、下段ステー28及び縦長フレーム25の前面に下部基板31を固定して、下部基板31の前面にロア背部クッション32を配置している。既に触れたが、アッパ背部クッション30を積層構造に構成して、表層部を柔らかい素材で構成し、縦長フレーム25の外側面や上段ステー26の上面に巻き込むことが好ましい。
【0048】
図5(A)に示すように、身体支持部3bを構成するアッパ背部クッション30は背部上張地33で覆われている。背部上張地33の上端部は、上段ステー26の後面にタッカーなどで固定されている。背部上張地33の左右側部は縦長フレーム25後面にタッカーなどで固定されている。
【0049】
他方、背もたれ下部3aを構成するロア背部クッション32は、背部下張地34で覆われている。背部下張地34の下端部は下段ステー28の後面にタッカーなどで固定されて、背部下張地34の左右側部は縦長フレーム25の後面にタッカーなどで固定されている。そして、背部下張地34の上端部と背部上張地33の下端部とは、下段ステー28の後面にタッカー等で固定されている。この場合、背部下張地34と背部上張地33とは、下段ステー28に対して別々に固定してもよいし、重ね合わせた状態で共締めしてもよい。図5(A)に点線で示すように、背部上張地33の下端部は、中段ステー27の後面に固定することも可能である。
【0050】
背部の上張地33と下張地34とを1枚物で構成することも可能であるが、この場合は、張地をピンと張った状態に保持するために、凹部6の上部入り隅において紐などで張地を後ろに引かねばならず、このため引っ張り作業が厄介である。
【0051】
これに対して実施形態のように、背もたれ3の張地を上張地33と下張地34とに分離して、上張地33の下端部と下張地34の上端部を後ろに引いて中段ステー27等の部材に固定する構造を採用すると、それら上張地33と下張地34は単なるタッカー止めによってピンと張った状態に保持できる。従って、作業性と確実性とに優れている。
【0052】
また、座部張地と背部上張地33とは同一色のものを使用して、背部下張地34は異なる色を使用するといったことにより、凹部6を目立たせてデザイン性を向上させることも可能である。
【0053】
背もたれ3の背面には裏カバー35が配置されている。裏カバー35は、化粧紙が張られたベニヤ板等の化粧板で構成されており、タッカー止めや接着などで、上部ステー26と縦長フレーム25とリア支持板14の後面とに固定されている。
【0054】
なお、座2の後方部で背もたれ下部3aの下方部の箇所の側面は、座部張地の延長部で覆われている。この箇所にも、見た目を統一させるために、縦長フレーム25の外面に重なる補助クッション(図示せず)を配置するのが好ましい。図4,5(A)に示すように、縦長フレーム25の中途高さ部位には、サイドパネル5を取り付けるためのボルト挿通穴23が空いている。
【0055】
(4).連結構造
図4及び図6に示すように、中間横枠10の左右端部の下面と側枠8の内側面とに重なった状態で、前後長手の補助支持板38が固定されている。そして、図6に示すように、連結部材(連結金具)の一例として、一方の側枠8及び補助支持板38との下面に受け具39がビスで固定されて、他方の側枠8及び補助支持板38の下面に、棒状係止体40が水平旋回自在に装着されたブラケット41をビスで固定している。
【0056】
受け具39は前後一対の挟持爪42を有しており、挟持爪42は互いの間隔が広狭変化するように弾性変形可能である。他方、棒状係止体40の長手両側面には鋸歯上の凹凸部43が形成されている。棒状係止体40は、不使用時には内向きの姿勢に保持されており、使用時には外向きに突出した姿勢に旋回させて、隣り合った椅子の座2に固定された受け具39の挟持爪42に挿入・係止させる。
【0057】
すなわち、棒状係止体40を外向きに突出させた姿勢で、左右に隣り合った椅子を水平方向に相対動させて密着させると、棒状係止体40が挟持爪42を弾性変形させながら左右動して、棒状係止体40の凹凸部43が一対の挟持片42と噛み合う(係合する)。これにより、2つの椅子を左右に連結できる。連結の解除を行うときは、一方の椅子を持ち上げて、棒状係止体40と挟持片42との係合を解除する。
【0058】
図6では第1椅子1aに適用しているが、第2~第4椅子1b~1dにも適用できる。棒状係止体40はある程度の長さがあるため、左右にサイドパネル5が固定された第4椅子1d同士の連結も可能である。サイドパネル5を設ける場合、締結するボルト22の配置位置や個数は任意に設定できる。
【0059】
(5).まとめ
各実施形態は以上の構成であり、いずれの実施形態1a~1gでも、凹部6に小物を収納できるため、便利である。そして、本実施形態では、座2の上面が凹部6まで入り込んでいるため、封筒のような薄い物品やペンのような小さくて細い物品であっても必ず視認できるため、離席に際してそれらの物品を見落とすことはない。
【0060】
また、凹部6の高さは11cm程度であるため、身体支持部3bの下端部で着座者の腰部を支持することができる。このため、ランバーサポート機能を発揮して、使用者の身体を安定的に支持できる。また、身体支持部3bは、凹部6の2倍程度の高さがあると共に後傾状態に湾曲しているため、使用者が上半身を後ろに反らした状態でフィット性に優れており、従って、高い安楽機能を確保できる。
【0061】
図7に示すように、各実施形態の椅子は、同種のものや異種のものを左右に連結してベンチタイプの椅子セットに変更できる。この場合、図7(A)に示すように、第1実施形態の椅子1aのみを連結すると、例えば3台態度の連結によって簡易ベッドとして使用可能である。そして、この状態で各椅子1aの凹部6が一連に連続しているため、全体としての統一感が高くて見た目がよい。
【0062】
座2の上面には後ろに向けて低くなるように緩く湾曲しているため、椅子として使用する場合は、人の上半身はやや後ろに反り気味になって、安楽性を向上できる。他方、簡易ベッドとして使用する場合は、人の身体は背もたれ3の側に僅かに倒れ気味になるため、身体が手前にずれ落ちることを防止できる。実施形態のように椅子の後面を背面カバー35で覆うと、張地18,33,34の端部をタッカーなどで強度メンバーに簡単に固定しつ、椅子の背面を美粧できる利点がある。
【0063】
図7(B)では、第1~第3実施形態の椅子1a~1cを連結しているが、この場合も、各椅子の1a~1cの凹部6は一連に連続しているため、見た目がよい。なお、図7(B)の椅子セットは、子供用の簡易ベッドとして使用可能である。座2及び背もたれ3の横幅は55cm程度であるので、2台の第1実施形態の椅子1aと1台ずつの第2,3実施形態の椅子1b,1cを使用すると、成人用の簡易ベッドとしても使用できる。
【0064】
図示していないが、2台の第1実施形態の椅子1aと1台の第2又は第3実施形態の椅子1b,1cとを使用して、左右の一端部のみにサイドパネル5が配置された椅子セットを構成することも可能であり、この場合は、成人用の簡易ベッドとして、上半身と大腿部とを座面に寝かせて足先は床に付けるという使用の仕方もできる。
【0065】
図7(C)では、第2~4実施形態の椅子を1台ずつ連結して、1人ずつの使用エリアに区画された多連ボックスタイプの椅子セットを構成している。このように連結することにより、スペースを有効利用しつつ人は各椅子を気兼ねなく使用できる。図7では3連タイプの椅子セットしか表示していないが、各実施形態のものを独立して又は異種のものを組み合わせて、2連や4連以上の様々なパターンの椅子セットを形成できる。
【0066】
(6).他の実施形態
図8では、他の実施形態を示している。このうち(A)に示す第5実施形態の椅子1eは、背もたれ3に関して、身体支持部3bと背もたれ下部3aとを分離した構造として、積み重ねて連結している。連結手段としては、例えば、身体支持部3bの下端部と背もたれ下部3aの上端部とをボルトなどで固定して、背もたれ下部3aを座2の後部に固定できる。或いは、座2の後端部から起立した支柱や支持板に、身体支持部3bと背もたれ下部3aとをそれぞれ固定する、といったことも可能である。
【0067】
この実施形態のように、背もたれ3を身体支持部3bと背もたれ下部3aとに分離構成すると、それぞれの張地33,34は予め強度メンバーに固定しておけるため、組み立ての手間を軽減できる。
【0068】
図8(B)に示す第6実施形態の椅子1fでは、背もたれ3に複数本の下向きのロッド44を左右に分離して設ける一方、座2の後部には、ロッド44が嵌まる受け筒45を設けており、受け筒45に対するロッド44の差し込みによって、背もたれ3を座2に取り付けている。背もたれ3の強度メンバーは様々な構造を採用できる。例えば、型鋼などで構成された金属製フレームとすることもできるし、木製の基板とすることも可能である。この実施形態では、背もたれ下部3aを薄くできる(凹部6の深くでき)ため、凹部6の収容容積を大きくできる。
【0069】
図8(C)に示す第7実施形態の椅子1gでは、凹部6に上向き抉り部6aを形成している。このため、身体支持部3bの上下高さを小さくすることなく、凹部6の高さを高くできる。従って、ハンドバッグなども変形させることなく収容できる。本実施形態において、凹部6の左右両端を塞ぐことも可能である。
【0070】
第7実施形態において、 背もたれ3の強度メンバーは、金属製又は樹脂製、或いは上記したような木製基板としており、従って、背もたれ下部3aをできるだけ薄くして、凹部6の深さを深くしている。従って、凹部6の深さが深いことと相まって、凹部6の容積をできるだけ大きくできる。なお、図8の各実施形態は、連結機能を捨象して独立項とすることができる。
【0071】
本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、座に関しても強度メンバーをスチール製にすることができる。座及び背もたれとも、クッションは単層であってもよい。連結部材としては、例えば平板上の連結板を使用して、隣り合った椅子の座の下面に連結板を跨がった状態で配置、連結板を蝶ボルトなどで左右の椅子の座の下面に固定する、といったことも可能である。また、脚は棒脚には限らず、板状やブロック状であってもよい。四周を囲った枠状に形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1a~1g 椅子
2 座
3 背もたれ
4 棒脚
5 サイドパネル
6 凹部
7 物品(小物)
8 座の強度メンバーである側枠
9~11 座の強度メンバーである横枠
18 座のクッション
25 背もたれの強度メンバーである縦長フレーム
26~28 背もたれの強度メンバーであるステー
33,32 背部クッション
33 背部上張地
34 背部下張地
39 連結部材の一環を成す受け具
40 連結部材の一環を成す棒状係止体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8