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特開2024-16469ATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤
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  • 特開-ATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤 図1
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  • 特開-ATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016469
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240131BHJP
   A61K 36/76 20060101ALI20240131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240131BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/76
A61P43/00 107
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118619
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 友章
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD61
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083EE12
4C088AB12
4C088AC05
4C088AC06
4C088BA08
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZB22
4C088ZC52
(57)【要約】
【課題】新規なATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤を提供すること。
【解決手段】西洋ヤナギ抽出物を有効成分とするATP産生促進剤およびミトコンドリア活性化剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
西洋ヤナギ抽出物を有効成分として含有するATP産生促進剤。
【請求項2】
西洋ヤナギ抽出物を有効成分として含有するミトコンドリア活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは、細胞小器官の一つであり、電子伝達系において酸素を消費してATP(アデノシン三リン酸)を産生している。ATPは、生物が活動するためのエネルギーの貯蔵、放出を担う化合物であり、生体の機能維持に重要な役割を果たしている。また、機能の低下した細胞や老化した細胞は、ATP量が減少することが知られており、ATPの産生促進、また、ATPを産生するミトコンドリアの活性化は、細胞の機能向上、老化の防止・改善等のために重要である。
特許文献1には、酵母エキスを有効分とする筋肉細胞のATP産生促進剤、特許文献2には、エルゴチオネインを有効成分とするATP産生促進剤、特許文献3にはスフィンゴミエリンを有効成分とするミトコンドリア機能向上剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-10947号公報
【特許文献2】特開2003-231626号公報
【特許文献3】特開2011-157328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なATP産生促進剤、およびミトコンドリア活性化剤を提供することを課題とする。(以下、本発明のATP産生促進剤とミトコンドリア活性化剤とをまとめて、本発明の剤ともいう。)
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は、次のとおりである。
1.西洋ヤナギ抽出物を有効成分として含有するATP産生促進剤。
2.西洋ヤナギ抽出物を有効成分として含有するミトコンドリア活性化剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の剤により、ATPの産生を促進することができ、また、ミトコンドリアを活性化することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例におけるATP産生量測定の結果を示すグラフ。
図2】実施例における細胞増殖量測定の結果を示すグラフ。
図3】実施例におけるATP産生量/細胞増殖量の結果を示すグラフ。
図4】実施例におけるミトコンドリア活性測定の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、西洋ヤナギ抽出物を有効成分として含有するATP産生促進剤とミトコンドリア活性化剤とに関する。
【0009】
・西洋ヤナギ抽出物
西洋ヤナギ(Salix sp.)は、ヤナギ科ヤナギ属の植物である。西洋ヤナギは、鎮痛作用、解熱作用等を有するとして古代より利用されている薬用植物である。
西洋ヤナギの抽出部位は、特に制限されず、例えば、樹皮、葉、枝、幹、根等が挙げられ、好ましくは樹皮である。
【0010】
西洋ヤナギ抽出物を得るための抽出溶媒は、特に制限されず、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチルや蟻酸エチルなどのエステル類、ヘキサン、水等を使用することができ、各種の抽出溶媒を混合して用いることもできる。例えば、水とエタノールを含む含水エタノールによる抽出溶媒を用いることができる。
抽出方法は、特に制限されないが、二相溶媒分配法や分配高速クロマトグラフィー法を用いる方法が好ましい。抽出温度は、通常、0~100℃の範囲内であり、5~50℃であることが好ましい。抽出溶媒量は、被抽出物に対して1~100(w/w)倍、好ましくは5~10(w/w)倍である。また、抽出時にタンパク分解酵素を加えて加水分解を行ってもよい。
【0011】
抽出物は、公知の方法により、精製することができる。例えば、不溶物を濾過、遠心分離、デカンテ-ション等により除去した後、必要に応じて脱色、脱臭の目的で活性炭、活性白土、シリカゲル、活性アルミナ合成樹脂等の吸着剤や、溶剤分画、逆浸透膜、イオン交換体等によって分画、精製、濃縮することができる。
得られた抽出物は、抽出エキスのまま、あるいは、抽出エキスを減圧濃縮、スプレ-ドライまたは凍結乾燥等の方法で粉末化したものを使用することができる。
例えば、インデナジャパン株式会社から、西洋ヤナギの樹皮を含水エタノールで抽出したエキス乾燥品(セイヨウヤナギカンソウエキス15%)が市販されていて、これを使用することができる。
【0012】
本発明の剤は、西洋ヤナギ抽出物を有効成分として含有するものであり、西洋ヤナギ抽出物そのもの、または他の化合物と混合した組成物として、食品、飲料、サプリメント等の健康食品、医薬品、化粧品等として使用することができる。
食品としては、通常の食品の他、栄養補助食品、機能性食品、健康食品、特定保健用食品等とすることができる。飲料としては、例えば、清涼飲料、果実飲料、乳清飲料、アルコール飲料等に配合することができる。本発明の剤を飲食品や化粧料等に配合する場合、その配合量は、剤形、使用目的を考慮して適宜調整できるが、その配合率は、抽出物として、好ましくは0.0001質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.001質量%以上10質量%以下である。
【0013】
サプリメントや医薬品とする場合、形態としては、例えば、粉末、散剤、顆粒、錠剤、カプセル等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等が挙げられる。この際、担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチレンデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等を用いることができる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の添加剤を適宜添加することもできる。
【実施例0014】
(1)細胞培養
ヒト胎児腎細胞株HEK293細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium)で37℃、5%CO下で培養したものを使用した。
【0015】
(2)ATP産生量測定
HEK293細胞を2.5×10cells/mLの濃度になるようにDMEM培地で懸濁し、96ウエルホワイトプレート(Greiner)に100μLずつ播種し、37℃、5%CO下で培養した。培養24時間後に、5μM FCCP(abcam)と西洋ヤナギ抽出物(インデナジャパン株式会社、セイヨウヤナギカンソウエキス15%、10μg/mL)を添加した。なお、FCCP(カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)は、脱共役剤であり、FCCPの存在下では、ミトコンドリアの電子伝達系の反応は進行するが、ATPは合成されなくなる。
さらに24時間後、ATP産生量をCell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)にて測定した。また、西洋ヤナギ抽出物を添加しない以外は同様にしてコントロール、ATP産生亢進作用が認められるとして報告のあるインドール化合物のMaitochonic acid 5(ナミキ商事株式会社、5μM)を添加してポジティブコントロールとした。コントロールの結果を1.0として規格化したATP産生量を図1に示す。
【0016】
(3)細胞増殖測定
HEK293細胞を2.5×10cells/mLの濃度になるようにDMEM培地で懸濁し、96ウエルブラックプレート(Greiner)に100μLずつ播種し、37℃、5%CO下で培養した。培養24時間後に、5μM FCCP(abcam)及び西洋ヤナギ抽出物(インデナジャパン株式会社、セイヨウヤナギカンソウエキス15%、10μg/mL)を添加した。
さらに24時間後、細胞増殖能をCyQUANTTM Proliferation Assay Kit(invitrogen)にて測定した。また、西洋ヤナギ抽出物を添加しない以外は同様にしてコントロール、ATP産生亢進作用が認められるとして報告のあるインドール化合物のMaitochonic acid 5(ナミキ商事株式会社、5μM)を添加してポジティブコントロールとした。コントロールの結果を1.0として規格化した細胞増殖量と、ATP産生量/細胞増殖量の結果を、それぞれ図2、3に示す。
【0017】
(4)単離ミトコンドリア
培養したHEK293細胞をセルスクレーパーにより回収し、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を加えたホモジナイズ溶液(300mM Trehalose、25mM HEPES、1mM EGTA、1mM EDTA、10mM KCl、0.1% BSA)にて細胞抽出液を調製した。調製した細胞抽出液を1000×g、5分、4℃で遠心して上清を回収した。この操作を2回繰り返した。さらに回収した上清を12000×g、10分、4℃で遠心し沈殿をミトコンドリア画分として回収した。
回収したミトコンドリア画分をホモジナイズ溶液で調製し、BCA assay kit(Pierce)でタンパク質定量を行い調製した後、ミトコンドリア活性に使用するまで-80℃で保存した。
【0018】
(5)ミトコンドリア活性測定
単離ミトコンドリアをATP測定溶液(25mM Tris-HCl(pH7.4)、150mM KCl、2mM KHPO、0.1mM MgCl、0.1%BSA)にて10μg/mLに調製し、96well 白色プレート(Greiner)に10μL添加した。
その後、111nM ADP及び西洋ヤナギ抽出物(インデナジャパン株式会社、セイヨウヤナギカンソウエキス15%、含水エタノール抽出、10μg/mL)を添加して5分後、ミトコンドリア活性をCell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)にて測定した。西洋ヤナギ抽出物を添加しない以外は同様にしてコントロールとした。結果を図4に示す。
【0019】
(結果)
図1に示すように、西洋ヤナギ抽出物添加によりATP産生量が増加した。
ATPは、細胞内のミトコンドリアで産生されるため、細胞が増殖してミトコンドリアが増えるとATP産生量も増加する。そのため、細胞増殖能も調査したところ、図2、3に示すように、西洋ヤナギ抽出物を添加しても細胞の増殖に影響を及ぼさず、西洋ヤナギ抽出物添加によりATP産生促進作用が得られることが確認された。
さらに、図4に示すように、単離したミトコンドリアに対しても西洋ヤナギ抽出物を添加することにより、ATP産生量が増加した。このことから西洋ヤナギ抽出物はミトコンドリアにおけるATP合成能を増強し、ミトコンドリア活性促進作用を持つことが確認された。
以上のように、西洋ヤナギ抽出物はATP産生促進作用を有し、さらにミトコンドリア活性を促進できることが確認された。
図1
図2
図3
図4