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  • 特開-椅子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164690
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080357
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】宮前 太一
(72)【発明者】
【氏名】海福 恒太
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JC00
(57)【要約】
【課題】ホワイトボード等のパネルを装着可能な椅子に関して、美感や遣い勝手に優れた構造を開示する。
【解決手段】椅子は角形のスツールタイプであり、本体部1にその上面を2分するようパネル保持溝2が形成されている。本体部1の外面とパネル保持溝2の内面とはクッション8及び張地で覆われており、座り心地がよいと共に、パネル10の安定性も優れている。本体部1の底板4は上げ底になっており、四隅にキャスタ9を設けている。キャスタ9は殆ど視認できないため、スツールタイプにおいてシンプルな外観を実現してデザイン性を高めつつ、移動の自由性が確保されている。本体部1は角形であるため、着座者を安定的に支持できる。また、円形に比べて底面積が大きくなるため、パネル10の支持安定性も高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部を備え、この本体部は、一体に連続した外周面と、前記外周面の上端に連続した天面と、を備えており、前記天面は人が座る座面として機能する椅子であって、
前記本体部には、バネルを上から差し込まれることで支持するパネル保持溝が形成され、
前記パネル保持溝は、平面視で前記天面部を分断するように形成され、前記外周面の中途高さ部位まで延びている、
椅子。
【請求項2】
前記天面は、正方形に形成され
前記外周面は、4つの側面で構成されており、
前記パネル保持溝は、平面視で平行な2つの辺と平行に形成されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記パネル保持溝の下端は、前記外周面の中間高さよりも下方に位置している、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記本体部には、キャスタを有している、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項5】
前記キャスタは、前記外周面の下端より上に位置した上げ底面に設けられている、
請求項4に記載した椅子。
【請求項6】
前記本体部の外周面と天面とは張地で覆われている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項7】
前記本体部の天面とパネル保持溝とに、前記張地で覆われたクッションが配置されている、
請求項6に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、筆記用パネル(ホワイトボード)やプロジェクタ投射パネルのようなパネル(ボード、板)を装着できる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスや学校などにおいて、ホワイトボードは広く使用されている。ホワイトボードはスタンドタイプになってことが多く、キャスタ付きのフレーム構造体に取り付けていることが多いが、スタンドタイプでは、不使用時の保管に広いスペースを有する問題や、コストが嵩むという問題、或いは、押して移動させるため機動性が低いという問題がある。
【0003】
他方、本願出願人は、特許文献1において、ホワイトボードを装着できる椅子を開示した。この椅子を使用するとスタンドは不要であるため、コストを大幅に抑制できると共にホワイトボードの収納に要するスペースを大幅に低減できる。椅子もホワイトボードも人が手で持って移動できるため、機動性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1459362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、オフィスでは一人一人が個人専用のデスクを使用して作業をこなすワーキングスタイルが主流であったが、近年、創造性や知的生産性の視点からワーキングスタイルが大きく変化している。例えば、複数人が議論してアイデアを出し合うスタイルや、逆に、他人を排除して一人で思索や研究に集中するスタイルなどである。また、新型コロナに起因した在宅勤務の広がりから、オフィスがコミュニケーションの場としての意味合いも強くなっている。
【0006】
新たなワーキングスタイルにとって重要なことは、個々のワーカーが互いに触発しながら知的能力をフルに発揮させるということであり、そのためには、ワーカーの自発性を引き出す環境が必要である。また、引っ込み思案の人からもアイデアを引き出せるような環境も重要である。大学のような高等教育機関においても、従来の受け身の学習から自発的な学習スタイルへの転換が進んでおり、そこで、グールプワークやアクティブラーニングが推進されているが、このようなグールプワークやアクティブラーニングについても、その実を上げるような環境作りが必要であると云える。
【0007】
オフィスの職務は多種多様であるので、求められる環境も多種多様であるが、個々のワーカーが自主と強調とを調和させ得る環境が必要であるといえる。つまり、一人で集中できる環境や、グループを随時に形成できる環境、目的に応じてグループを離合集散させ得る環境、グループに簡単に参加したり脱退したりできる環境が重要であると云える。大学でのグールプワークやアクティブラーニングも同様であると云える。
【0008】
この点、特許文献1の椅子は、どこでもグループワークの環境を形成できるため、昨今のワーキングスタイルやラーニングスタイルに適合していると云える。本願発明は特許文献1を更に発展させて、美感や機能を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は特許文献1と同様に椅子を関するものであり、請求項1のとおり、
「本体部を備え、この本体部は、一体に連続した外周面と、前記外周面の上端に連続した天面と、を備えており、前記天面は人が座る座面として機能する椅子であって、
前記本体部には、バネルを上から差し込まれることで支持するパネル保持溝が形成され、
前記パネル保持溝は、平面視で前記天面部を分断するように形成され、前記外周面の中途高さ部位まで延びている」
という構成になっている。
【0010】
本願発明は、様々に展開できる。その例を請求項2以下で例示している。このうち請求項2の発明は、請求項1において、
「前記天面は、正方形に形成され
前記外周面は、4つの側面で構成されており、
前記パネル保持溝は、平面視で平行な2つの辺と平行に形成されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記パネル保持溝の下端は、前記外周面の中間高さよりも下方に位置している」
という構成になっている。
【0012】
請求項4の発明は請求項1又は2において、
「前記本体部には、キャスタを有している」
という構成になっている。
【0013】
請求項5の発明は請求項4の展開例であり、
「前記キャスタは、前記外周面の下端より上に位置した上げ底面に設けられている」
という構成になっている。
【0014】
請求項6の発明は請求項1又は2の展開例であり、
「前記本体部の外周面と天面とは張地で覆われている」
という構成になっている。
【0015】
請求項7の発明は請求項6の展開例であたり、
「前記本体部の天面とパネル保持溝とに、前記張地で覆われたクッションが配置されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、椅子は外周面が閉じたスツールタイプであるため、重厚感・高級感があってオフィスでも違和感なく使用できる。従って、各ワーカーが本願の椅子を持ち寄って随時に作業グループを形成したり、大学において学生が本願の椅子を持ち寄ってグループワークを行ったりすることを、自然に実現できる。これにより、オフィスでの知的生産性の向上や、大学でのグループワーク・アクティブラーニングによる学習効果向上に貢献できる。
【0017】
また、スツールタイプタイプであることから、パネル保持溝の内面を板材で構成することも容易であり、パネルの安定性を向上させることも容易である。従って、椅子に装着したパネルをホワイトボードやプロジェクタ用投射パネルとして使用するにおいて、ガタ付きをなくした状態で使用可能であるため、快適な作業空間・学習空間の実現に貢献できる。
【0018】
請求項2のように角形に形成すると、椅子として使用するにおいて身体の安定的に支持できて好適である。複数個を互いに密着させた状態で一列又は複数列並べて、簡易ベッドとして使用することも可能である。従って、使用態様のバリエーションを広げることができる。更に、円形に比べて底面積が大きくなるため、パネルの支持安定性を向上できる利点もある。
【0019】
パネル保持溝の深さを請求項3のように設定すると、パネルの安定性を向上できて好適である。
【0020】
請求項4のようにキャスタを設けると、椅子として使用するにおいて腰掛けたままで横移動できるため、自席の位置を調整したり、メンバーの増加や減少に応じて位置を変更したりすることを、一々立ち上がることなく迅速に行える。また、パネルはある程度の重量があるが、パネルを装着した状態で押して移動できるため、従来のスタンド式ホワイトボードと同様の感覚でパネルの位置の変更を軽快に行える。
【0021】
キャスタを設けるにおいて、請求項5のように、上げ底面にキャスタを設けると、本体部の下端と床との間の隙間をできるだけ小さくした状態でキャスタを配置できるため、キャスタの露出を無くすか又は大幅に抑制できる。従って、キャスタが存在しないかのような外観であるにもかかわらず自由に移動できる。このため、スツールタイプの椅子においてシンプルな外観を実現できデザイン性を高めつつ、移動の自由性を向上できる。
【0022】
請求項6のように本体部の外面(露出面)を張地で覆うと、様々な色や模様を適用できるためデザイン性を向上できると共に、椅子として使用するにおいて当たりを柔らかくすることができる。特に、請求項7のように天面にクッションを配置すると、椅子として使用するに際して身体への当たりを柔らかくできて好適である。また、請求項7のようにパネル保持溝にもクッションを配置すると、クッションによってパネルをガタ付きのない状態に押さえ保持できる利点や、パネル保持溝にパネルを差し込むときにパネル端面への衝撃を吸収してダメージを軽減することができる利点があり、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は上から見た斜視図、(B)は下から見た斜視図、(C)はパネルを装着した状態での(A)のC-C視断面図である。
図2】第1実施形態の使用例であり、(A)は1脚の椅子で1枚のパネルを支持した状態の斜視図、(B)は2脚の椅子で1枚の大型パネルを支持した状態の斜視図である。
図3】(A)は第2実施形態の斜視図、(B)は第3実施形態の斜視図、(C)は第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1).第1実施形態
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は木製の椅子に適用している。まず、図1~2に示す第1実施形態を説明する。本実施形態の椅子は、角形のスツールタイプの本体部1を有しており、本体部1に、天面を2分するパネル保持溝2が全高の3/4程度の深さまで形成されている。本体部1は、縦横の寸法と高さとが略同じで立方体状になっている。
【0025】
図1(C)に示すように、本体部1は、四周に配置された4枚の側板3と、側板3が載っている1枚の底板4と、パネル保持溝2を挟んだ両側に位置した一対の天板5と、パネル保持溝2を構成する一対の仕切り板6と、仕切り板6の下部が重なったスペーサ材7とを有しており、互いに重なりなった部材は、ダボ等の連結部材で固定されている。
【0026】
本体部1の外周面と天面とパネル保持溝2の内面とにはシート状のクッション8が張られて、クッション8はレザー等の張地で覆われている。なお、クッション8を天面とパネル保持溝2とにだけ配置して、外周面は張地のみで覆うことも可能である。
【0027】
底板4は、本体部1の下端面よりも高位置に配置されている。すなわち、底板4は上げ底になっている。そして、底板4の各コーナー部に、水平旋回自在な車輪を備えたキャスタ9が固定されている。底板4が上げ底であるため、キャスタ9は、車輪の半分程度しか本体部1の下方にはみ出ていない。このため、人が椅子を近くで見てもキャスタ9は目に入らずに、キャスタ9が存在していないかのような外観を呈している。
【0028】
なお、実施形態では、側板3が底板4の上面に載った状態でクッション8が底板4の下方にはみ出すことで上げ底になっているが、クッション8を底板4の下方で安定させるため、底板4の外周部に下向きの枠材を設けてもよい。或いは、底板4を側板3の下端部の内側面に固定して、側板4の下端を底板3の下方に突出させてもよい。また、パネル保持溝2を挟んで両側に位置した側板3のうち何れか一方に、人が手先を挿入できる引手穴を空けてもよい。この場合は、椅子を片手で提げて持ち運びできる。
【0029】
本実施形態の椅子は以上の構成であり、四角形であるため、円形に比べて人を安定的に腰掛けることできる。そして、天板5の上面にクッション8が張られているため、座り心地がよい。椅子が角形のスツールタイプであることと、表面がレザー等の張地で覆われていることにより、ソファのような外観を呈しており、シンプル性と高級感とを備えた優れたデザインになっている。従って、オフィスでグループワークを行うにおいて、違和感なく使用できる。大学などの教育・研究機関でグループワークを行う場合も同様である。
【0030】
椅子はキャスタ9を備えているため、人は椅子に腰掛けたままで自由に横移動できる。従って、自分の位置の特定や、メンバーの増減に伴う位置の変更などを素早く行える。従って、グループワークを円滑に遂行できる。
【0031】
図2(A)(B)に示すように、1脚の椅子に1枚のパネル10を装着したり、2脚の椅子に1枚のパネル10を装着したりすることができる。パネル10はホワイトボードであってもよいし、プロジェクタの画像投影板であってもよい。いずれにおいても、パネル保持溝2の内部にはクッション8が張られているため、パネル10を弾性的に押さえることができる。従って、パネル10を筆記用ボードとして使用する場合でも、パネル10をガタ付きのない状態に安定的に保持して、筆記を円滑に行える。パネル10を差し込んだときに衝撃は生じないため、パネル10及び椅子にダメージが発生することもない。
【0032】
筆記具としてチョークを使用すると粉が落下するが、張地として人造のレザーを使用すると、粉を綺麗に拭き取りできる利点がある。外周部とパネル保持溝2の張地には織地や編地を使用して、天面の張地にはレザーを使用するといったことも可能である。天面の張地のみを、粘着テープや面ファスナーによって着脱式に構成することも可能である。
【0033】
複数の椅子を水平方向に密着させて1列又は2列に配置して、簡易ベッドとして使用することも可能である。或いは、ベンチとして使用することも可能である。椅子は角形であるため、このような簡易ベッドやベンチとしての使用を容易に実現できる。椅子の群を3列配置して、中央の列の椅子の群はパネル保持溝2を一列に連続させて、連続したパネル保持溝2に横長のパネル10を挿入して仕切りと成し、パネル10を挟んだ両側のエリアを簡易ベッドやソファとして使用することも可能である。
【0034】
(2).他の実施形態
図3では、他の実施形態を表示している。このうち図3(A)に示す第2実施形態では、第1実施形態の構造を基本として、本体部1に2本のパネル保持溝2を十字状に形成している。この場合は、一方のパネル保持溝2と他方のパネル保持溝2との溝幅を異ならせている。従って、厚さが異なるパネル10に対応できる。2つのパネル保持溝2の深さを変えることも可能である。
【0035】
図3(B)に示す第3実施形態では、本体部1は円筒状に形成されている。この実施形態でも、天面と外周壁12とパネル保持溝2の内面とにはクッション8が張られており、また、底板4を上げ底に形成してキャスタ9を設けている。円形の他に、正六角形や正八角形のような正多角形も採用できる。楕円形や小判形に形成して、長円を二分すするようにパネル保持溝2を形成してもよい。一点鎖線で示すように、天板5や外周部に引手穴13を設けることも可能である。
【0036】
図3(C)に示す第4実施形態では、本体部1は角形又は円形若しくは他の形態になっている。底板は備えずに下向きに開口した形態と成しつつ、周壁14を下広がりに形成することにより、多数の椅子を積み重ね(スタッキング)可能と成している。パネル保持溝2は全高の半分以上の深さに形成している。本体部1の上部に、積み重ね高さを規定する一対のストッパー板15を配置しており、ストッパー板15と天板5とに、パネル保持溝2を規定する内側板16を固定している。
【0037】
この第4実施形態においても、天面や外周面、パネル保持溝2にクッション8と張地とを設けることが可能である。また、この実施形態でも、周壁14の下端にキャスタ9を取り付けることが可能である。第2実施形態と同様に、天板5などに引手穴13を設けることも可能である。
【0038】
本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、材質は木製には限らず、樹脂製やスチール製、発泡樹脂、ダンボール紙、或いは複合素材製とすることも可能である。また、本体部を四角形に形成した場合、パネル保持溝を対角線方向に延びる状態に形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 本体部
2 パネル保持溝
3 側板
4 底板
5 天板
6 仕切り板
8 クッション
9 キャスタ
10 パネル(ホワイトボード)
図1
図2
図3