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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164691
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】床下換気構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20241120BHJP
   E04F 17/04 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
E04B1/70 C
E04F17/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080359
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 元貴
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DD01
2E001FA21
2E001GA12
2E001HA33
2E001HD09
2E001NB01
(57)【要約】
【課題】床下空間の断熱性を維持することができる床下換気構造を得る。
【解決手段】床下換気構造10は、建物12の一階において、内壁材40と、内壁材40よりも屋内側にオフセットして設けられたふかし壁材42と、を備えたふかし壁38と、一階床材22を板厚方向に貫通して形成され室内空間56から床下空間26へ通風可能な床給気口46Aと、平面視でふかし壁材42と内壁材40との間に配置されると共に、一階床材22を板厚方向に貫通して形成され、床下空間26からふかし壁38の内部空間44へ通風可能な通気口48と、一階床材22よりも上方側において、内壁材40を板厚方向に貫通して形成された内壁排気口66と、外壁材36を板厚方向に貫通して形成された外壁排気口68と、内壁排気口66及び外壁排気口68を連結するダクト70と、を含んで構成され、ふかし壁38の内部空間44から屋外へ排気可能な排気部58と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の一階において、内壁材と、前記内壁材よりも屋内側にオフセットして設けられたふかし壁材と、を備えたふかし壁と、
前記建物の一階床材を板厚方向に貫通して形成され、室内空間から床下空間へ通風可能な床給気口と、
平面視で前記ふかし壁材と前記内壁材との間に配置されると共に、前記一階床材を板厚方向に貫通して形成され、前記床下空間から前記ふかし壁の内部空間へ通風可能な通気口と、
前記一階床材よりも上方側において、前記内壁材を板厚方向に貫通して形成された内壁排気口と、前記内壁材と対向する外壁材を板厚方向に貫通して形成された外壁排気口と、前記内壁排気口及び前記外壁排気口を連結するダクトと、を含んで構成され、前記ふかし壁の内部空間から屋外へ排気可能な排気部と、
を有する床下換気構造。
【請求項2】
前記排気部は、前記ふかし壁の内部空間から屋外へ空気を排出する換気扇を備えている、
請求項1に記載の床下換気構造。
【請求項3】
前記換気扇は、前記内壁材に取り付けられており、
前記ふかし壁材には、前記換気扇と対向する位置において、板厚方向に貫通した点検口が形成されている、
請求項2に記載の床下換気構造。
【請求項4】
前記通気口は、前記内壁排気口の下方に形成されている、
請求項1に記載の床下換気構造。
【請求項5】
前記床下空間は、前記建物の下部において一体の空間とされており、
前記外壁材は、前記建物の妻側に配置されており、
前記床給気口は、前記外壁材と桁方向に対向する他の外壁材の近傍に形成されている、
請求項1に記載の床下換気構造。
【請求項6】
前記床下空間は、前記建物の下部において一体の空間とされており、
前記床給気口は、前記ふかし壁が設けられた室とは異なる室に形成されている、
請求項1に記載の床下換気構造。
【請求項7】
前記床下空間において、外周基礎の立ち上がり部は、その全面又は略全面に亘って断熱材で覆われている、
請求項1に記載の床下換気構造。
【請求項8】
前記床下空間の側壁は、上端部から下端部に亘って断熱材で覆われている、
請求項7に記載の床下換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、床下を基礎断熱した気密性住宅において、湿度の高い床下空気を換気する換気システムが開示されている。この換気システムは、基礎に設けられた排気用送風機(換気扇)から床下を強制排気する、ダクトレス型の換気システムとされている。具体的には、排気用送風機から床下の空気が排気されることにより、床下の圧力が室内の圧力よりも小さくなり、床通気口(床給気口)から床下を通った空気が、排気用送風機から排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-232999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、排気用送風機が基礎に設けられているため、基礎に孔を開ける必要があり、床下空間の断熱性を維持する観点で課題を有している。
【0005】
本発明は上記問題を考慮し、床下空間の断熱性を維持することができる床下換気構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る床下換気構造は、建物の一階において、内壁材と、前記内壁材よりも屋内側にオフセットして設けられたふかし壁材と、を備えたふかし壁と、前記建物の一階床材を板厚方向に貫通して形成され、室内空間から床下空間へ通風可能な床給気口と、平面視で前記ふかし壁材と前記内壁材との間に配置されると共に、前記一階床材を板厚方向に貫通して形成され、前記床下空間から前記ふかし壁の内部空間へ通風可能な通気口と、前記一階床材よりも上方側において、前記内壁材を板厚方向に貫通して形成された内壁排気口と、前記内壁材と対向する外壁材を板厚方向に貫通して形成された外壁排気口と、前記内壁排気口及び前記外壁排気口を連結するダクトと、を含んで構成され、前記ふかし壁の内部空間から屋外へ排気可能な排気部と、を有している。
【0007】
第1の態様に記載の本発明によれば、一階床材に形成された床給気口を介して、室内空間の空気が床下空間に取り込まれる。また、床下空間の空気は、通気口を介して、ふかし壁の内部空間へ送られる。さらに、ふかし壁の内部空間の空気は、排気部を介して、屋外へ排出される。つまり、室内空間、床下空間、ふかし壁の内部空間、屋外の順に空気が流れることで、床下空間が換気される。ここで、排気部は、一階床材よりも上方側に設けられている。よって、建物の基礎に排気部が設けられている場合と比較して、床下空間の断熱性を維持することができる。
【0008】
第2の態様に係る床下換気構造は、第1の態様に記載された床下換気構造において、前記排気部は、前記ふかし壁の内部空間から屋外へ空気を排出する換気扇を備えている。
【0009】
第2の態様に記載の本発明によれば、換気扇によって、ふかし壁の内部空間の空気は、強制的に屋外へ排気される。そうすると、ふかし壁の内部空間の圧力が、床下空間及び室内空間の圧力よりも小さくなる。これにより、室内空間から床下空間、ふかし壁の内部空間の順に通って屋外へ排出される空気の流れが生じる。よって、効率よく床下空間を換気することができる。
【0010】
第3の態様に係る床下換気構造は、第2の態様に記載された床下換気構造において、前記換気扇は、前記内壁材に取り付けられており、前記ふかし壁材には、前記換気扇と対向する位置において、板厚方向に貫通した点検口が形成されている。
【0011】
第3の態様に記載の本発明によれば、ふかし壁に設けられた点検口を介して、作業者が換気扇の点検及びメンテナンスを行うことができる。よって、作業者は、一階の居室内にいたまま、容易に換気扇の点検及びメンテナンスを行うことができる。
【0012】
第4の態様に係る床下換気構造は、第1の態様に記載された床下換気構造において、前記通気口は、前記内壁排気口の下方に形成されている。
【0013】
第4の態様に記載の本発明によれば、通気口は排気部の内壁排気口の近くに形成されている。よって、ふかし壁の壁面に沿う方向の寸法を小さくすることができ、室内空間を広くとることができる。また、通気口を通った空気が最短ルートで排気部へ到達するため、換気効率を向上させることができる。
【0014】
第5の態様に係る床下換気構造は、第1の態様に記載された床下換気構造において、前記床下空間は、前記建物の下部において一体の空間とされており、前記外壁材は、前記建物の妻側に配置されており、前記床給気口は、前記外壁材と桁方向に対向する他の外壁材の近傍に形成されている。
【0015】
第5の態様に記載の本発明によれば、床給気口は、通気口及び排気部から離れている。よって、床給気口から床下空間に取り込まれた空気は、床下空間を広く通って通気口に到達する。これにより、床下空間を広く換気することができる。
【0016】
第6の態様に係る床下換気構造は、第1の態様に記載された床下換気構造において、前記床下空間は、前記建物の下部において一体の空間とされており、前記床給気口は、前記ふかし壁が設けられた室とは異なる室に形成されている。
【0017】
第6の態様に記載の本発明によれば、床給気口は、通気口及び排気部から離れている。よって、床給気口から床下空間に取り込まれた空気は、床下空間を広く通って通気口に到達する。これにより、床下空間を広く換気することができる。
【0018】
第7の態様に係る床下換気構造は、第1の態様に記載された床下換気構造において、前記床下空間において、外周基礎の立ち上がり部は、その全面又は略全面に亘って断熱材で覆われている。
【0019】
第7の態様に記載の本発明によれば、外周基礎の立ち上がり部の全面又は略全面を覆う断熱材によって、床下空間が断熱される。比較例として、外周基礎の立ち上がり部に排気部が設けられている場合、当該部分の断熱材を欠損させる必要がある。これに対して、本発明によれば、排気部は、一階床材よりも上方側に設けられており、立ち上がり部に設けられていない。よって、立ち上がり部に欠損のない連続した断熱材を配置させることができる。これにより、床下空間の断熱性がより一層向上される。
【0020】
第8の態様に係る床下換気構造は、第7の態様に記載された床下換気構造において、前記床下空間の側壁は、上端部から下端部に亘って断熱材で覆われている。
【0021】
第8の態様に記載の本発明によれば、外周基礎の立ち上がり部や土台など、床下空間の側壁を構成する構成部が連続して欠損のない断熱材で覆われている。よって、床下空間の断熱性がより一層向上される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、第1の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、床下空間の断熱性を維持することができるという優れた効果を有する。
【0023】
第2の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、床下空間を効率よく換気することができるという優れた効果を有する。
【0024】
第3の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、作業者が換気扇の点検及びメンテナンスを容易に行うことができるという優れた効果を有する。
【0025】
第4の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、室内の設計自由度を向上させつつ、床下の換気効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0026】
第5の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、床下空間を広く換気することができるという優れた効果を有する。
【0027】
第6の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、床下空間を広く換気することができるという優れた効果を有する。
【0028】
第7の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、床下空間の断熱性をより一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0029】
第8の態様に記載の本発明に係る床下換気構造は、床下空間の断熱性をさらに向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る床下換気構造を有する建物の床下周辺を示す縦断面図である。
図2】第1変形例に係る床下換気構造を有する建物の床下周辺を示す縦断面図である。
図3】第2変形例に係る床下換気構造を有する建物の床下周辺を示す縦断面図である。
図4】比較例に係る床下換気構造を有する建物の床下周辺を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1図4を用いて、本発明に係る床下換気構造の一実施形態について説明する。まず、建物12の床下14の周辺の構造について概説した後に、床下換気構造10について詳述する。
【0032】
〔建物12の床下14の周辺構造〕
図1には、平面視で略矩形状の建物12において、床下14及び妻側の壁部20を桁側から見た縦断面図が示されている。建物12は、地盤G内にコンクリート打設された建物基礎16と、建物基礎16の上に配置され、建物12を構造的に支える躯体フレーム18と、を備えている。躯体フレーム18には、壁部20及び一階の床材22(以後、「一階床材22」と称す。)が固定されている。建物12は、一例として、鉄骨製であり、複数の建物ユニットが互いに連結されたユニット式建物であるものとする。なお、建物は、鉄骨のユニット式に限らず、例えば木造であってもよく、ユニット式建物でなくてもよい。
【0033】
(建物基礎16)
建物基礎16は、筋金(図示省略)により補強された鉄筋コンクリート造とされ、平面視で建物12の外縁部に沿って設けられた外周基礎24と、外周基礎24により囲まれた床下空間26に独立して設けられた独立基礎(図示省略)とを含んで構成されている。外周基礎24は、一例として、地盤Gの内部に埋設されたフーチング28と、フーチング28から建物上方側へ立設された立ち上がり部30と、を含んで構成されており、いわゆる布基礎とされている。なお、布基礎に限らず、べた基礎の建物に本発明に係る床下換気構造が適用されてもよい。
【0034】
(躯体フレーム18)
躯体フレーム18は、下端部に土台32を備えている。土台32は、一例としてC形鋼で構成されており、外周基礎24の立ち上がり部30の上端部に沿って配置されている。土台32は、当該外周基礎24の上端部にアンカーボルト(図示省略)で固定されている。また、躯体フレーム18は、建物上下方向に延在する柱や、水平方向に延在する梁等を備えているが、土台32以外のこれらの構造体については図示を省略する。
【0035】
(壁部20)
壁部20は、建物12の妻側に配置されている。壁部20は、室34の建物外側に配置された外壁材36と、外壁材36の建物内側において、室34に設けられたふかし壁38と、を含んで構成されている。
【0036】
ふかし壁38は、外壁材36の建物内側に対向して配置された内壁材40と、内壁材40よりも屋内側にオフセットして設けられたふかし壁材42と、を含んで構成されている。これにより、ふかし壁38は、内壁材40とふかし壁材42との間に空間44を有している(以後、この空間44を「ふかし壁38の内部空間44」と称す。)。ふかし壁38は、室34にける外壁材36側の壁全体がふかされて構成されており、ふかし壁材42は、一階床材22から天井(図示省略)まで延在している。一例として、ふかし壁材42には、壁掛けのテレビ(図示省略)が取り付けられており、ふかし壁38の内部空間44に配線が隠されている。
【0037】
外壁材36及び内壁材40は、躯体フレーム18の柱(図示省略)にそれぞれ固定されている。外壁材36と内壁材40との間において、柱と柱との間には、壁断熱材(図示省略)が設けられている。壁断熱材は、一例としてグラスウールとされているが、これに限らず、他の種類の断熱材によって構成されていてもよい。
【0038】
(一階床材22)
躯体フレーム18における土台32の上側には、一階床材22が固定されている。一階床材22は、例えば、合板又はパーティクルボード等により構成されており、締結具(図示省略)によって土台32に固定されている。
【0039】
ここで、一階床材22は、室34から床下空間26に空気を取り込むための給気部46を備えている。また、一階床材22には、ふかし壁38の内部空間44、すなわち平面視でふかし壁材42と内壁材40との間の空間へ、床下空間26から空気を送り込むための通気口48が形成されている。給気部46及び通気口48の詳細については、後に説明する。
【0040】
(床下空間26)
床下空間26において、地盤Gの表面(以下、「地面S」と称す。)には、防湿フィルム(図示省略)が敷かれ、防湿フィルムの上に無筋の防湿コンクリート50が打設されている。防湿コンクリート50は、建物12の床下空間26における地面S全体を覆うように敷設されている。床下空間26は、一階床材22、外周基礎24の立ち上がり部30、土台32及び防湿コンクリート50で囲われており、建物12の下部において一体の空間とされている。なお、躯体フレーム18の土台32と、建物基礎16の立ち上がり部30のうち防湿コンクリート50よりも上方側の部分とが、本発明における「床下空間の側壁」に相当する。
【0041】
また床下空間26において、外周基礎24の立ち上がり部30の床下空間26側の面30Aは、基礎断熱材52に覆われている。基礎断熱材52は、例えば板状に形成されたポリスチレンフォーム等の発泡樹脂系の断熱材によって構成されている。さらに、土台32の建物内側には、躯体断熱材54が配置されている。躯体断熱材54には、一例としてグラスウールが用いられている。なお、基礎断熱材及び躯体断熱材は、上記に限らず、他の種類の断熱材によって構成されていてもよい。
【0042】
基礎断熱材52は、その下面52Aが防湿コンクリート50と当接するように配置されている。また、基礎断熱材52の上面52Bは、躯体断熱材54の下面54Aに当接している。つまり、床下空間26の側壁は、上端部から下端部に亘って、躯体断熱材54及び基礎断熱材52によって覆われている。換言すると、床下空間26の側壁は、欠損のない連続した断熱材で覆われている。
【0043】
〔床下換気構造10〕
以下、床下空間26を換気する床下換気構造10について詳述する。床下換気構造10は、室内空間56から床下空間26へ通風可能な給気部46と、床下空間26からふかし壁38の内部空間44へ通風可能な通気口48と、ふかし壁38の内部空間44から屋外へ排気可能な排気部58と、を含んで構成されている。
【0044】
(給気部46)
給気部46は、一階床材22において板厚方向に貫通された床給気口46Aと、床給気口46Aの上側に配設された床給気グリル46Bと、を含んで構成されている。床給気口46Aは、一例として平面視で妻方向を長手方向とした略矩形状に形成されている。
【0045】
床給気グリル46Bは、平面視で床給気口46Aよりも大きい略矩形の板状に形成されており、床給気口46Aの上側の周縁部に固定されている。床給気グリル46Bには、板厚方向に貫通された貫通孔が複数形成されている。これにより、床給気口46Aから物が落下するのを抑制しながら、室内空間56から床下空間26へ空気が通過することが可能になっている。
【0046】
ここで、給気部46は、外壁材36と桁方向に対向する他の外壁材(図示省略)の近傍に設けられており、平面視で建物12の角部62に設けられている。また、給気部46は、室34とは異なる室60に設けられている。つまり、上述した室内空間56は、室60の空間であり、給気部46は、室60の室内空間56から床下空間26へ空気を取り込み可能となっている。なお、床給気口及び床給気グリルの形状及び配置は、上記に限定されるものではない。また、給気部は、床給気グリルを備えていなくてもよい。
【0047】
(通気口48)
通気口48は、平面視でふかし壁材42と内壁材40との間に配置されると共に、一階床材22を板厚方向に貫通して形成されており、これにより、通気口48は、床下空間26からふかし壁38の内部空間44へ通風可能となっている。通気口48は、一例として、平面視で外壁材36に沿う方向(妻方向)を長手方向とした略矩形状に形成されている。通気口48は、平面視で給気部46が設けられた建物12の角部62と対角に位置する角部64に、すなわち給気部46から離れた位置に配置されている。なお、通気口の形状及び配置は、上記に限定されるものではない。
【0048】
(排気部58)
排気部58は、一階床材22よりも上方側において、壁部20の下端部に設けられている。排気部58は、内壁材40の下端部を板厚方向に貫通して形成された内壁排気口66と、外壁材36の下端部を板厚方向に貫通して形成された外壁排気口68と、内壁排気口66及び外壁排気口68を連結するダクト70と、を含んで構成されている。一例として、内壁排気口66及び外壁排気口68は、それぞれ同径の円形状に形成されており、略円筒状のダクト70が内壁排気口66及び外壁排気口68を連結している。前述した通気口48は、内壁排気口66の真下に形成されている。なお、内壁排気口66、外壁排気口68およびダクト70の形状は、上記に限定されるものではない。また、排気部は、壁部の下端部、すなわち低い位置に限定されず、高い位置に配置されていてもよい。
【0049】
排気部58はさらに、ふかし壁38の内部空間44の空気を屋外へ強制排気する換気扇72を備えている。換気扇72は、内壁材40の建物内側に取り付けられている。また、排気部58は、外壁材36の建物外側に、雨水等の侵入を防ぐ外部フード74を備えている。
【0050】
(点検口75)
ふかし壁材42には、換気扇72と対向する位置に、板厚方向に貫通した点検口75が形成されている。点検口75には、外枠76が固定されている。また、点検口75は、点検扉78によって開閉可能に構成されている。点検扉78は、外枠76よりも一回り小さな内枠80を備えている。内枠80には、ふかし壁材42と同じ壁材で構成された扉壁材82が嵌め込まれている。
【0051】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0052】
本実施形態に係る床下換気構造10によれば、室内空間56の空気は、一階床材22に形成された床給気口46Aを介して、床下空間26に取り込まれる。そして、床下空間26の空気は、通気口48を介して、ふかし壁38の内部空間44へ送られる。さらに、ふかし壁38の内部空間44の空気は、排気部58を介して、屋外へ排出される。つまり、室内空間56の空気が、床下空間26、ふかし壁38の内部空間44、屋外の順に流れることで、床下空間26が換気される。これにより、例えば竣工直後や夏場の湿気によって床下空間26にカビが発生するのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る床下換気構造10によれば、換気扇72によって、ふかし壁38の内部空間44の空気は、ダクト70を通って強制的に屋外へ排気される。そうすると、ふかし壁38の内部空間44の圧力は、床下空間26及び室内空間56の圧力よりも小さくなる。これにより、室内空間56から床下空間26、ふかし壁38の内部空間44の順に通って屋外へ排出される空気の流れが生じる。よって、床下空間26を効率よく換気することができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る床下換気構造10によれば、通気口48は排気部58の内壁排気口66の真下に形成されている。よって、ふかし壁38の壁面に沿う水平方向(本実施形態では妻方向)の寸法を最小限にすることができる。また、通気口48を通った空気が最短ルートで排気部58へ到達するため、換気効率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る床下換気構造10によれば、床給気口は、通気口から離れている。よって、床給気口から床下空間に取り込まれた空気は、床下空間を広く通って通気口に到達するため、床下空間を広く換気することができる。
【0056】
ここで、排気部58は、一階床材22よりも上方側に設けられている。
【0057】
図4には、比較例として、排気部212が床下に設けられた床下換気構造200を有する建物202の床下周辺が示されている。建物202は、内壁材240及び外壁材236を備えている。防湿コンクリート250は、上記実施形態に係る床下換気構造10の防湿コンクリート50に相当する。
【0058】
床下換気構造200は、一階床材204に設けられた給気部206と、一階床材204よりも下方側において、外周基礎208の立ち上がり部210に設けられた排気部212と、を含んで構成されている。給気部206は、床給気口206A及び床給気グリル206Bを含んで構成されており、上記実施形態に係る床下換気構造10の給気部46に相当する。
【0059】
排気部212は、外周基礎208の立ち上がり部210を貫通して形成された排気口214と、立ち上がり部210の内側(床下空間226側)に取り付けられた床下換気扇216と、立ち上がり部210の外側(屋外側)に取り付けられた外部フード218と、を含んで構成されている。
【0060】
立ち上がり部210の内側には、基礎断熱材220が設けられている。また、土台222の内側には、躯体断熱材224が設けられている。基礎断熱材220は、床下換気扇216が設けられている部分において欠損している。よって、床下空間226の断熱性が低下する虞がある。
【0061】
また、外周基礎208は、排気口214が形成された部分において強度が低下する虞がある。このため排気口214の周囲には、筋金(図示省略)が追加されている。よって、建築工程が増えて、建築費用が高くなる。
【0062】
さらに、洪水時など水位が排気部212の高さに及んだ場合、排気口214が水の侵入経路となり、床下空間226が浸水する虞がある。さらにまた、床下換気扇216の点検及びメンテナンスは、作業者が床下空間226に入って作業する必要があるため、容易ではない。
【0063】
これに対して、本実施形態に係る床下換気構造10の排気部58は、一階床材22よりも上方側に設けられている。つまり、床下14に排気部が設けられていないため、床下空間26の断熱性能を維持することができると共に、外周基礎24の強度を維持することができる。また、建物の建築後に、リフォームで床下換気構造10を導入する場合も、比較例に係る床下換気構造200よりも容易に導入することができる。さらに、ダクト70が比較例の排気口214よりも高い位置に設けられているため、床下空間26の浸水も防ぐことができる。
【0064】
また、本実施形態に係る床下換気構造10によれば、ふかし壁38に設けられた点検口75から、換気扇72の点検及びメンテナンスを行うことができる。よって、作業者は、一階の室34内にいたまま、容易に換気扇72の点検及びメンテナンスを行うことができる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る床下換気構造10によれば、床下空間26において、基礎断熱材52が外周基礎24の立ち上がり部30に欠損なく配置されており、土台32の建物内側が躯体断熱材54に覆われている。これにより、床下空間26の側壁が連続して断熱材で覆われている。よって、床下空間26の断熱性がより一層向上される。
【0066】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、換気扇72は、排気部58に設けられているものとして説明したが、これに限らない。例えば、換気扇は、給気部又は通気口に設けられていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、換気扇72は、内壁材40に取り付けられているものとして説明したが、これに限らない。例えば、換気扇は、外壁材に取り付けられていてもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態では、ふかし壁材42において換気扇72と対向する位置に点検口75が設けられているものとして説明したが、これに限らない。例えば、床下換気構造は、点検口を備えていなくてもよい。
【0069】
さらにまた、上記実施形態では、通気口48は、内壁排気口66の真下に形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、通気口48は、ふかし壁38の内部空間44において内壁排気口66から離れて形成されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、建物基礎16は、独立基礎を含んで構成されており、床下空間26は、建物12の下部において一体の空間とされているものとして説明したが、これに限らない。例えば、床下空間が基礎で区切られていたとしても、当該床下空間を区切る基礎に人通口や換気口等の開口部が形成されていることによって、床下空間が空間として一つに繋がっており、当該床下空間が一つの床下換気構造によって換気されてもよい。また、例えば、建物は互いに別の空間として区切られた複数の床下空間を有しており、各床下空間を換気する床下換気構造がそれぞれ設けられていてもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態では、床給気口46Aは、外壁材36と桁方向に対向する他の外壁材の近傍に形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、床給気口は、室と室との間に設けられた内壁材の近傍に形成されていてもよい。
【0072】
さらにまた、上記実施形態では、床給気口46Aは、ふかし壁38が設けられた室34とは異なる室60に形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、床給気口は、ふかし壁が設けられた室に形成されていてもよい。この場合、例えば、室内でふかし壁と対向する壁の近傍に給気口が設けられていれば、少なくとも室の下側に置いて、床下空間は広く換気される。
【0073】
また、上記実施形態では、床下空間26において、外周基礎24の立ち上がり部30は、基礎断熱材52に覆われているものとして説明したが、これに限らない。例えば、外周基礎が断熱材で覆われていなくてもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態では、床下空間26の側壁は、上端部から下端部に亘って基礎断熱材52及び躯体断熱材54に覆われているものとして説明したが、これに限らない。例えば、土台は、躯体断熱材で覆われていなくてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ふかし壁38は、室34において、外壁材36側の壁全体がふかされているものとして説明したが、これに限らず、壁の一部がふかされていてもよい。例えば、上階のキッチン、トイレ、洗面室、ランドリールーム等の水回りに関係する配管を通すためのパイプスペースが、本発明におけるふかし壁の内部空間として活用されてもよい。また、ふかし壁38は、一階床材22から天井(図示省略)まで延在しているものとして説明したが、これに限らない。例えば、図2に示される第1変形例や図3に示される第2変形例のように、ふかし壁は、天井まで延在していなくてもよい。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は実質的に同一の構成については、同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0076】
(第1変形例)
図2に示されるように、本変形例に係る床下換気構造84では、ふかし壁86は、室87において壁付けの板材88の下側に設けられており、このふかし壁86の内部空間90が、換気経路になっている。板材88は、一端部88Aが内壁材40に固定されており、内壁材40から室34内に向かって水平方向に延出されている。ふかし壁86は、板材88の外壁材36側の一端部88Aの下側において、板材88の下面から一階床材22まで上下方向に延在するふかし壁材92と、ふかし壁材92と対向する内壁材40の下部40Aと、を含んで構成されている。
【0077】
本変形例に係る床下換気構造84によれば、ふかし壁86は、板材88の下側に設けられており、室87において板材88の上側の空間を有効活用することができる。また、ふかし壁86のふかし壁材92は、板材88の外壁材36側の一端部88Aの下側に配置されている。よって、室87において板材88の下側の空間を有効活用することができる。例えば、板材88がデスクとして活用される場合、ふかし壁86は、デスクを利用する人の足元の奥側に設けられているため、デスクを利用する人の脚や椅子と干渉せずに済む。また、板材88がベンチとして活用される場合にも、ふかし壁86は、ベンチを利用する人の脚と干渉せずに済む。また、例えばトイレ内の洗面台として板材88が活用される場合、ふかし壁の内部に配管を通すことができる。その他、板材88は、寸法及び配置によって、テレビ台やディスプレイ棚等、あらゆる用途で活用され得る。なお、板材88は、ふかし壁材92よりも室34の内側まで長く延出されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、板材88は、ふかし壁86の厚みと略同一の奥行を有していてもよい。一例として、このようなふかし壁は、ベッドボード側で物を置く棚として活用することができる。
【0078】
(第2変形例)
図3に示されるように、本変形例に係る床下換気構造94では、ふかし壁96は、室97において扉98付きの収納部100の内部に設けられており、このふかし壁96の内部空間99が換気経路になっている。収納部100は、棚板104A及び棚板104Bを含む複数の棚板104と、扉98と、最下段の棚板104Bの下側に設けられたふかし壁96と、を含んで構成されている。ふかし壁96は、内壁材40の下部40Aと、ふかし壁材106と、を含んで構成されている。ふかし壁材106は、最下段の棚板104Bの外壁材36側の端部の下側に配置されている。
【0079】
本変形例に係る床下換気構造94によれば、ふかし壁96は収納部100内に設けられているため、室34の生活スペースに影響を与えない。また、収納部100は扉98によって内部が見えないようになっている。よって、ふかし壁38が室34から見えない位置に配置されており、点検口75も隠されるため、室34内の意匠性が向上される。
【0080】
なお、上記実施形態、第1変形例及び第2変形例では、ふかし壁38、86、96が何らかの用途で活用されるものとして説明したが、これに限らず、ふかし壁は、特に他の用途で活用されることなく床下換気構造のためだけに設けられていてもよい。この場合、ふかし壁は、換気扇、点検口及び通気口を設置可能な最小限の大きさであってもよい。逆に、ふかし壁の内部空間は、例えば階段下など、人が入れるくらい大きな空間であってもよい。
【0081】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0082】
(付記1)
建物の一階において、内壁材と、前記内壁材よりも屋内側にオフセットして設けられたふかし壁材と、を備えたふかし壁と、
前記建物の一階床材を板厚方向に貫通して形成され、室内空間から床下空間へ通風可能な床給気口と、
平面視で前記ふかし壁材と前記内壁材との間に配置されると共に、前記一階床材を板厚方向に貫通して形成され、前記床下空間から前記ふかし壁の内部空間へ通風可能な通気口と、
前記一階床材よりも上方側において、前記内壁材を板厚方向に貫通して形成された内壁排気口と、前記内壁材と対向する外壁材を板厚方向に貫通して形成された外壁排気口と、前記内壁排気口及び前記外壁排気口を連結するダクトと、を含んで構成され、前記ふかし壁の内部空間から屋外へ排気可能な排気部と、
を有する床下換気構造。
(付記2)
前記排気部は、前記ふかし壁の内部空間から屋外へ空気を排出する換気扇を備えている、
付記1に記載の床下換気構造。
(付記3)
前記換気扇は、前記内壁材に取り付けられており、
前記ふかし壁材には、前記換気扇と対向する位置において、板厚方向に貫通した点検口が形成されている、
付記2に記載の床下換気構造。
(付記4)
前記通気口は、前記内壁排気口の下方に形成されている、
付記1~付記3のいずれか一に記載の床下換気構造。
(付記5)
前記床下空間は、前記建物の下部において一体の空間とされており、
前記外壁材は、前記建物の妻側に配置されており、
前記床給気口は、前記外壁材と桁方向に対向する他の外壁材の近傍に形成されている、
付記1~付記4のいずれか一に記載の床下換気構造。
(付記6)
前記床下空間は、前記建物の下部において一体の空間とされており、
前記床給気口は、前記ふかし壁が設けられた室とは異なる室に形成されている、
付記1~付記5のいずれか一に記載の床下換気構造。
(付記7)
前記床下空間において、外周基礎の立ち上がり部は、その全面又は略全面に亘って断熱材で覆われている、
付記1~付記6のいずれか一に記載の床下換気構造。
(付記8)
前記床下空間の側壁は、上端部から下端部に亘って断熱材で覆われている、
付記1~付記7のいずれか一に記載の床下換気構造。
【符号の説明】
【0083】
10、84、94 床下換気構造
12 建物
22 一階床材
24 外周基礎
26 床下空間
30 立ち上がり部
34 ふかし壁が設けられた室
36 外壁材
38、86、96 ふかし壁
40 内壁材
42、92、106 ふかし壁材
44、90、99 ふかし壁の内部空間
46A 床給気口
48 通気口
52 基礎断熱材(断熱材)
54 躯体断熱材(断熱材)
56 室内空間
58 排気部
60、87、97 ふかし壁が設けられた室とは異なる室
66 内壁排気口
68 外壁排気口
70 ダクト
72 換気扇
74 点検口
図1
図2
図3
図4