(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164697
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】光電変換装置および機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20241120BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L31/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080367
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白髭 大貴
【テーマコード(参考)】
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
4M118AB03
4M118BA19
4M118CA03
4M118CA18
4M118CA22
4M118DD09
4M118FA06
4M118FA08
4M118FA27
4M118FA28
4M118GA02
4M118GD03
4M118GD04
4M118HA22
4M118HA25
5F149AA08
5F149BA04
5F149BA05
5F149BA17
5F149BB03
5F149DA05
5F149DA44
5F149EA04
5F149EA05
5F149EA11
5F149EA20
5F149JA12
5F149KA11
5F149KA20
5F149XB01
5F149XB38
(57)【要約】
【課題】APDの発光に起因するクロストークの抑制に有利な技術を提供する。
【解決手段】第1主面および第2主面を有する半導体層に複数の画素が配された光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、複数のアバランシェフォトダイオードを含み、各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードは、1つのマイクロレンズを共有し、前記複数の画素のうち互いに隣り合う画素の間には、前記第1主面から前記第2主面まで貫通する第1トレンチ構造が配され、各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードのうち互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードの間には、第2トレンチ構造が配され、前記第2トレンチ構造は、前記第1主面から前記第1主面と前記第2主面との間の位置まで配され、前記位置は、前記第2主面から離れている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を有する半導体層に複数の画素が配された光電変換装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、複数のアバランシェフォトダイオードを含み、
各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードは、1つのマイクロレンズを共有し、
前記複数の画素のうち互いに隣り合う画素の間には、前記第1主面から前記第2主面まで貫通する第1トレンチ構造が配され、
各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードのうち互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードの間には、第2トレンチ構造が配され、
前記第2トレンチ構造は、前記第1主面から前記第1主面と前記第2主面との間の位置まで配され、
前記位置は、前記第2主面から離れていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記複数のアバランシェフォトダイオードのそれぞれは、第1導電型の第1半導体領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体領域と、によって構成されるPN接合面を備え、
前記第1主面から前記位置までの距離が、前記第1主面から前記PN接合面までの距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードのうち一方のアバランシェフォトダイオードの前記PN接合面の中心から前記互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードの間に配された前記第2トレンチ構造までの距離をb、前記第1主面から前記PN接合面までの距離をd、前記一方のアバランシェフォトダイオードで発せられる光が前記一方のアバランシェフォトダイオードから前記第2トレンチ構造に入射する際の臨界角をAとしたときに、前記第2トレンチ構造の前記第1主面から前記位置までの距離Lが、
L>{(b2/cos2A)-b2}1/2+d
を満たすことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記複数のアバランシェフォトダイオードのそれぞれは、第1導電型の第1半導体領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体領域と、のPN接合面を備え、
前記第1主面から前記位置までの距離が、前記第1主面から前記PN接合面までの距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第1主面と前記第2半導体領域との間に前記第1半導体領域が配され、
前記第1半導体領域は、前記PN接合面を構成する第1領域と、前記第1領域と前記第1主面との間に配された前記第1領域よりも不純物濃度が高い第2領域と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第1主面から前記PN接合面までの距離が、前記第2主面から前記PN接合面までの距離よりも短いことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第2トレンチ構造に、誘電体または金属が埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1トレンチ構造に、誘電体または金属が埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項9】
各画素に前記複数のアバランシェフォトダイオードとして2つのアバランシェフォトダイオードが配されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項10】
各画素に前記複数のアバランシェフォトダイオードとして4つのアバランシェフォトダイオードが配され、
前記4つのアバランシェフォトダイオードは、前記第1主面に対する正射影において、2行2列に並ぶように配されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、それぞれの画素にマイクロレンズを共有する複数のフォトダイオードを配し、撮像機能に加えて被写体のデフォーカス量およびデフォーカス方向を検出する像面位相差オートフォーカス機能を備える光電変換装置が示されている。また、特許文献1には、画素間にトレンチ構造を設けることによって入射光のクロストークを抑制することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微弱な光を検出可能なアバランシェフォトダイオード(APD)を光電変換装置に用いることが考えられる。APDには、アバランシェ増倍を起こすために強い電界が掛かっているため、電界によって加速されエネルギを得た電荷によって、アバランシェ増倍が起きる領域が発光する場合がある。APDが発光することによって、画素間にクロストークが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、APDの発光に起因するクロストークの抑制に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る光電変換装置は、第1主面および第2主面を有する半導体層に複数の画素が配された光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、複数のアバランシェフォトダイオードを含み、各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードは、1つのマイクロレンズを共有し、前記複数の画素のうち互いに隣り合う画素の間には、前記第1主面から前記第2主面まで貫通する第1トレンチ構造が配され、各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードのうち互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードの間には、第2トレンチ構造が配され、前記第2トレンチ構造は、前記第1主面から前記第1主面と前記第2主面との間の位置まで配され、前記位置は、前記第2主面から離れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、APDの発光に起因するクロストークの抑制に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の光電変換装置の構成例を示す図。
【
図2】
図1の光電変換装置の画素アレイの構成例を示す図。
【
図3】
図1の光電変換装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す回路図。
【
図6】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す平面図。
【
図7】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図8】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図9】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図10】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図11】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図12】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図13】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す平面図。
【
図14】
図1の光電変換装置の画素の構成例を示す断面図。
【
図15】
図1の光電変換装置が組み込まれた光電変換システムの構成例を示す図。
【
図16】
図1の光電変換装置が組み込まれた移動体の構成例を示す図。
【
図17】
図1の光電変換装置が組み込まれた医療システムの構成例を示す図。
【
図18】
図1の光電変換装置が組み込まれたウェアラブルデバイスの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)が用いられる。それらの用語の使用は、図面を参照した実施形態の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0011】
以下の説明において、アバランシェフォトダイオード(APD)のアノードを固定電位とし、カソードから信号を取り出している。したがって、信号電荷と同じ極性の電荷を多数キャリアとする第1導電型の半導体領域は、N型の半導体領域であり、信号電荷とは異なる極性の電荷を多数キャリアとする第2導電型の半導体領域は、P型の半導体領域である。しかしながら、APDのカソードを固定電位とし、アノードから信号を取り出す場合であっても本開示は成立する。その場合、信号電荷と同じ極性の電荷を多数キャリアとする第1導電型の半導体領域は、P型の半導体領域であり、信号電荷とは異なる極性の電荷を多数キャリアとする第2導電型の半導体領域は、N型の半導体領域である。以下では、APDの一方のノードを固定電位とする場合について説明するが、両方のノードの電位が変動してもよい。
【0012】
本明細書において、単に「不純物濃度」という用語が使われた場合、逆導電型の不純物によって補償された分を差し引いた正味の不純物濃度を意味している。つまり、「不純物濃度」とは、NETドーピング濃度を指す。P型の添加不純物濃度がN型の添加不純物濃度より高い領域は、P型の半導体領域である。反対に、N型の添加不純物濃度がP型の添加不純物濃度より高い領域は、N型の半導体領域である。
【0013】
本明細書において、「平面視」とは、後述する半導体層の光入射面とは反対側の面に対して垂直な方向から視ることを指す。また、断面とは、半導体層の光入射面とは反対側の面と垂直な方向における面を指す。なお、微視的に見て半導体層の光入射面が粗面である場合は、巨視的に見たときの半導体層の光入射面を基準として平面視を定義する。
【0014】
後述する半導体層300は、主面351および主面352を有する。主面352は、主面351とは反対側の面であり、光が入射する光入射面である。本明細書において、深さ方向は、APDが配される半導体層300の主面351から主面352に向かう方向である。以下では、主面351を「表面」と呼ぶ場合があり、主面352を「裏面」と呼ぶ場合がある。半導体層300の所定の位置から、半導体層300の裏面(主面352)の方向に向かう方向を、「深い」と表現することもある。また、半導体層300の所定の位置から、半導体層300の表面(主面351)方向に向かう方向を、「浅い」と表現することがある。
【0015】
まず、
図1~
図5を用いて、以下に説明する各実施形態に共通する構成を説明する。
図1は、光電変換装置100の構成例を示す図である。光電変換装置100は、センサ基板11と回路基板21との2つの基板が積層され、かつ、電気的に接続されることによって構成されていてもよい。つまり、光電変換装置100は、積層型のデバイスであってもよい。センサ基板11には、後述するように、複数の画素101が配された半導体層300や配線構造体などが配されている。回路基板21には、後述するように、信号処理回路103などの回路を有する半導体層や配線構造体などが配されている。光電変換装置100は、回路基板21の半導体層、回路基板21の配線構造、センサ基板11の配線構造、センサ基板11の半導体層300の順に積層して構成されうる。光電変換装置100は、センサ基板11の半導体層300の主面352から光が入射し、センサ基板11の半導体層300の主面351に回路基板が配される、裏面照射型の光電変換装置でありうる。
【0016】
以下では、センサ基板11と回路基板21とは、ダイシングされたチップであるとして説明するが、チップに限定されるものではない。例えば、センサ基板11と回路基板21とは、ウェーハを積層した構成であってもよい。また、センサ基板11と回路基板21とは、ウェーハ状態で積層した後にダイシングされていてもよいし、ウェーハ状態からチップ化(個片化)した後に各チップを積層して接合してもよい。
【0017】
センサ基板11には、複数の画素101を備える画素領域12が配される。回路基板21には、画素領域12で検出された信号を処理する回路領域22が配される。
【0018】
図2は、センサ基板11の配置例を示す図である。APDを含む光電変換素子102を有する画素101が平面視で2次元アレイ状に配列され、画素領域12を形成する。画素101は、典型的には、画像を生成するための画素であるが、TOF(Time of Flight)に用いる場合には、必ずしも画像を生成しなくてもよい。すなわち、画素101は、光が到達した時刻と光量を測定するために構成されていてもよい。
【0019】
図3は、回路基板21の構成例を示す図である。回路基板21は、
図2に示される光電変換素子102で光電変換された電荷を処理する信号処理回路103、読出回路112、制御パルス生成回路115、水平走査回路111、信号線113、垂直走査回路110などを含む。
図2に示される画素101のそれぞれに対応するように、
図3に示される信号処理回路103が配されていてもよい。その場合に、画素101ごとに設けられた接続配線を介して、画素101(光電変換素子102)と信号処理回路103とが電気的に接続されていてもよい。
【0020】
垂直走査回路110は、制御パルス生成回路115から供給された制御パルスを受け、それぞれの画素101に制御パルスを供給する。垂直走査回路110にはシフトレジスタやアドレスデコーダといった論理回路が用いられうる。
【0021】
画素101から出力された信号は、信号処理回路103で処理される。信号処理回路103には、カウンタやメモリなどが設けられうる。メモリにはカウンタによってカウントされたカウント値がデジタル値として保持されうる。
【0022】
水平走査回路111は、デジタル信号が保持されたそれぞれの画素101に対応する信号処理回路103のメモリから信号を読み出すために、各列を順次選択する制御パルスを信号処理回路103に入力する。信号線113には、選択されている列について、垂直走査回路110により選択された画素101に対応する信号処理回路103から信号が出力される。 信号線113に出力された信号は、出力回路114を介して、光電変換装置100の外部の記録部または信号処理部に出力される。
【0023】
図2に示される画素領域12における画素101の配列は、2次元アレイ状に限られることはない。画素101は、1次元状に配されていてもよい。信号処理回路103の機能は、必ずしも全ての画素101(光電変換素子102)に1つずつ設けられる必要はなく、例えば、複数の画素101(光電変換素子102)によって1つの信号処理回路103が共有され、順次信号処理が行われてもよい。
【0024】
図2および
図3に示されるように、画素領域12に対する正射影において、画素領域12に重なる領域に、複数の信号処理回路103が配されうる。また、センサ基板11の端と画素領域12の端との間に重なるように、垂直走査回路110、水平走査回路111、読出回路112、出力回路114、制御パルス生成回路115などが配されうる。換言すると、センサ基板11は、画素領域12と画素領域12の周りに配された非画素領域とを有する。その場合に、非画素領域に重なる領域に、垂直走査回路110、水平走査回路111、読出回路112、出力回路114、制御パルス生成回路115が配されうる。
【0025】
図4は、1つの画素101(光電変換素子102)に注目した、等価回路を含むブロック図の一例である。
図4において、APD201を含む光電変換素子102は、センサ基板11に設けられており、その他の構成は、回路基板21に設けられている。
【0026】
APD201は、光電変換により入射光に応じた電荷対を生成する。APD201のアノードには、電位VLが供給される。APD201のカソードには、アノードに供給される電位VLよりも高い電位VHが供給される。アノードとカソードとには、APD201がアバランシェ増倍動作をするような逆バイアス電圧が供給される。そのような逆バイアス電圧を供給した状態にすることで、入射光によって生じた電荷がアバランシェ増倍を起こし、アバランシェ電流が発生する。
【0027】
APD201に逆バイアスの電圧が供給される場合において、アノードおよびカソードの電位差(電圧)が降伏電圧より大きい電位差で動作させるガイガーモードと、アノードおよびカソードの電位差が降伏電圧の近傍、または、降伏電圧以下の電位差で動作させるリニアモードがある。ガイガーモードで動作させるAPDを、単一光子アバランシェフォトダイオード(SPAD)と呼ぶ。例えば、電位VLは、-30V、電位VHは、1Vである。APD201は、リニアモードで動作させてもよいし、ガイガーモードで動作させてもよい。
【0028】
クエンチ素子202は、電位VHを供給する電源とAPD201との間に接続される。クエンチ素子202は、アバランシェ増倍による信号増倍時に負荷回路(クエンチ回路)として機能し、APD201に供給される電圧を抑制して、アバランシェ増倍を抑制する働きを持つ(クエンチ動作)。また、クエンチ素子202は、クエンチ動作で電圧降下した分の電流を流すことにより、APD201に供給する電圧を電圧(VH-VL)に戻す働きを持つ(リチャージ動作)。
【0029】
信号処理回路103は、波形整形回路210、カウンタ回路211、選択回路212を含みうる。本明細書において、信号処理回路103は、波形整形回路210、カウンタ回路211、選択回路212のいずれかを有していればよい。
【0030】
波形整形回路210は、光子検出時に得られるAPD201のカソードの電位変化を整形し、パルス信号を出力する。波形整形回路210として、例えば、インバータ回路が用いられる。
図4に示される構成では、波形整形回路210として1つのインバータを用いた例が示されている。しかしながら、これに限られることはなく、波形整形回路210として、複数のインバータを直列接続した回路が用いられてもよいし、波形整形効果がある他の回路が用いられてもよい。
【0031】
カウンタ回路211は、波形整形回路210から出力されたパルス信号をカウントし、カウント値を保持する。また、駆動線213を介して制御パルスpRESが供給された場合に、カウンタ回路211に保持された信号がリセットされる。
【0032】
選択回路212には、
図3に示される垂直走査回路110から、
図4に示される駆動線214を介して制御パルスpSELが供給され、カウンタ回路211と信号線113との電気的な接続、非接続を切り替える。選択回路212は、例えば、信号を出力するためのバッファ回路などを含む。
【0033】
クエンチ素子202とAPD201との間や、光電変換素子102と信号処理回路103との間にトランジスタなどのスイッチ素子を配し、電気的な接続が切り替え可能に構成されていてもよい。同様に、光電変換素子102に供給される電位VHまたは電位VLの供給が、トランジスタなどのスイッチそしを用いて電気的に切り替え可能になっていてもよい。
【0034】
本実施形態では、信号処理回路103にカウンタ回路211が配される構成を示した。しかしながら、これに限られることはなく、カウンタ回路211の代わりに時間・デジタル変換回路(TDC)およびメモリを用いて、光電変換装置100が、パルス検出タイミングを取得する構成としてもよい。その場合に、波形整形回路210から出力されたパルス信号の発生タイミングは、TDCによってデジタル信号に変換される。TDCには、パルス信号のタイミングの測定に、垂直走査回路110から駆動線を介して、制御パルスpREF(参照信号)が供給される。TDCは、制御パルスpREFを基準として、波形整形回路210を介してそれぞれの画素101から出力された信号の入力タイミングを相対的な時間としたときの信号をデジタル信号として取得する。
【0035】
図5(a)~5(c)は、APD201の動作と出力信号との関係を模式的に示した図である。
図5(a)は、
図4に示されるAPD201、クエンチ素子202、波形整形回路210を抜粋した図である。ここで、波形整形回路210の入力側をnodeA、出力側をnodeBとする。
図5(b)は、nodeAの波形変化を、
図5(c)は、nodeBの波形変化をそれぞれ示す。
【0036】
時刻t0から時刻t1において、APD201には、電位VH-電位VLの電位差(電圧)が印加されている。時刻t1において光子がAPD201に入射すると、APD201においてアバランシェ増倍が生じ、クエンチ素子202にアバランシェ増倍電流が流れ、nodeAの電位は降下する。電圧降下量がさらに大きくなり、APD201に印加される電位差が小さくなると、時刻t2に示されるようにAPD201のアバランシェ増倍が停止し、nodeAの電位レベルはある一定値以上降下しなくなる。その後、時刻t2から時刻t3の間において、nodeAには電位VLから電圧降下分を補う電流が流れ、時刻t3においてnodeAは元の電位レベルに静定する。このとき、nodeAにおいて出力波形がある閾値を越えた部分は、波形整形回路210で波形整形され、nodeBに信号として出力される。
【0037】
信号線113、読出回路112、出力回路114の配置は、
図3に示される構成に限定されるものではない。例えば、信号線113が行方向(
図3において横方向)に延びて配されており、読出回路112が、信号線113が延びる先に配されていてもよい。
【0038】
次いで、センサ基板11に配される画素101の構成について詳しく説明する。
図6は、画素領域12に配される複数の画素101のうち、1つの画素101の構成を示す平面図(正射影図)である。それぞれの画素101は、複数のAPD201を含む。
図6には、2つのAPD201を備える画素101が示されている。しかしながら、1つの画素101に配されるAPD201の数は2つに限られることはなく、1つの画素101に3つ以上のAPD201が配されていてもよい。そのような例として、4つのAPD201が配された画素101については後述する。
【0039】
図6では、平面視での位置関係を説明するために必要な各構造を図示している。そのため、必ずしも同一の平面に存在する構造のみを図示している訳ではない。また、
図6に示される画素101は、所謂、裏面照射型の画素である。半導体層300よりも表面側(主面351側)には配線層(配線構造体)などが配されている。画素101には、それぞれ1つ以上のアノード電極302とカソード電極301とが配されている。平面視においてカソード電極301に重なる位置に、第1導電型(例えば、N型)の半導体領域311が配されている。また、半導体領域311の周囲を取り囲むように、半導体領域311に接して第1導電型の半導体領域317が配されている。半導体領域317は、半導体領域311よりも不純物濃度が低い領域である。
【0040】
複数の画素101のうち互いに隣り合う画素101の間には、画素間を分離するトレンチ構造324が配されている。また、各画素101において、複数のAPD201のうち互いに隣り合うAPD201の間には、APD間を分離するトレンチ構造325が配されている。シリコンなどが用いられる半導体層300に設けられたトレンチ構造324、325には、誘電体または金属が埋め込まれていてもよい。トレンチ構造324、325に埋め込まれる材料として、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの誘電体、タングステンなどの金属が挙げられる。また、トレンチ構造324、325にポリシリコンが埋め込まれていてもよい。
【0041】
トレンチ構造324、325に隣接する領域には、第2導電型(例えば、P型)の半導体領域313が位置している。半導体領域313とアノード電極302とは接しており、アノード電極302から半導体領域313に電位が供給されている。
【0042】
それぞれの画素101の上には、マイクロレンズ323が配されている。各画素101において、複数のAPD201は、1つのマイクロレンズ323を共有する。したがって、それぞれのマイクロレンズ323が、それぞれの画素101の配置を画定するともいえる。
【0043】
以下、半導体層300に配される半導体領域の詳細を、
図7~
図9を参照しながら説明する。
図7は、
図6に示されるA-A’間、
図8は、B-B’間、
図9は、C-C’間のそれぞれ断面概略図である。
【0044】
図7には、半導体層300に加えて、半導体層300の主面352を覆うように配されるピニング膜321、平坦化層322、マイクロレンズ323が示されている。また、
図7には、半導体層300の主面351を覆うように配された絶縁体326、絶縁体に配される半導体層300に接続されるカソード電極301、カソード電極301に接続される配線パターンの一部が示されている。
図7では、各領域の位置関係をわかりやすく示すため、隣接するAPD201の一部についても図示されている。
図7以降の断面図についても同様である。
【0045】
図7に示されるように、APD201は、第1導電型の半導体領域311と第2導電型の半導体領域312とが配され、半導体領域311と半導体領域312とでPN接合を形成している。
図7に示されるように、PN接合が形成される面をPN接合面350と呼ぶ場合がある。半導体領域311と半導体領域312との間に所定の逆バイアス電圧を印加することによって、光が入射した際にアバランシェ増倍が起きる。半導体領域312と半導体層300の主面352との間の領域には、半導体領域312に接するように不純物濃度が低い半導体領域315(例えば、Pエピ層もしくはNエピ層である。)が配され、半導体領域311と半導体領域312との間に逆バイアスを印加することによって、空乏層が半導体層300の主面352の側へ広がる構成になっている。
【0046】
半導体領域317は、半導体領域311の端部が強電界になることで、半導体領域311の端部において低い電圧でブレークダウンが生じてしまうエッジブレークダウンを抑制するために配される。半導体領域317は、少なくとも一部が半導体領域311の端部に接するよう配されている。
【0047】
トレンチ構造324と半導体層300との界面や、トレンチ構造325と半導体層300との界面付近は、シリコンの未結合手であるダングリングボンドが多く存在しており、この欠陥準位を介して暗電流が発生する。この暗電流の発生を抑制するために、トレンチ構造324、325に接するように、第2導電型の半導体領域313が配されている。同様の理由から、第2導電型の半導体領域314が、半導体層300の主面352を構成するように配されている。また、ピニング膜321を半導体層300の主面352に接するように配することによって、半導体層300の主面352近傍に正孔が誘起され、暗電流が抑制される。ピニング膜321には、酸化ハフニウム、酸化ジルコン、酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化タンタルなどが用いられうる。
【0048】
図8に示されるように、1つの画素101において、2つのAPD201が1つのマイクロレンズ323を共有する構成になっている。1つのマイクロレンズ323を複数のAPD201で共有することによって、対物レンズのある領域を通過した光束をそれぞれのAPD201で捉え、マイクロレンズ323下のAPD201群の出力差からデフォーカス量とその方向を検出することができる。それによって、撮像と位相差検出との両立を可能にした像面位相差オートフォーカスが実現する。
【0049】
図9に示されるように、半導体層300の主面351の側には、カソード電極301とアノード電極302が配置されている。カソード電極301は、半導体領域311に電気的に接続されている。アノード電極302は、半導体領域313に電気的に接続されている。
図6、
図9に示される構成では、アノード電極302は、1つの画素101において1行2列(以下、1×2と示す場合がある。)に並ぶ2つのAPD201の四隅に配されている。しかしながら、これに限られることはなく、アノード電極302は、例えば、1つのAPD201の四隅に配されていてもよいし、複数のAPD201に対して1つのアノード電極302を配していてもよい。
【0050】
ここで、
図6~
図9を用いてマイクロレンズ323を複数のAPD201で共有する構造における課題と本構造の効果について説明する。まず、各画素101において、APD201間を分離するトレンチ構造325が存在することによって生じる入射光に起因するクロストークについて説明する。
【0051】
2つのAPD201が1つのマイクロレンズ323を共有して1つの画素101とする構成によって、上述したように、撮像と位相差検出との両立を可能にした像面位相差オートフォーカスが実現される。ここで、APD201間のトレンチ構造325が、半導体層300の主面352にまで達しているとする。複数のAPD201がマイクロレンズ323を共有する構成では、マイクロレンズ323によって入射した光は、APD201間のトレンチ構造325を含む領域に集光される。トレンチ構造325に入射光が集光されると、集光された光は、半導体層300の主面352近傍でトレンチ構造325によって拡散され、入射光は隣接する画素101間でクロストークしやすくなってしまう。
【0052】
次に、APD201で生じる発光に起因するクロストークについて説明する。APD201は、第1導電型の半導体領域311と第2導電型の半導体領域312とで急峻なPN接合を形成している。急峻なPN接合により生じる強電界によって信号電荷をアバランシェ増倍させることで、APD201は、わずかな信号電荷であっても検出できる。PN接合面350近傍のアバランシェ増倍領域では強電界がかかっており、この電界によって加速され、エネルギを得た電荷によって、APD201は、可視光から近赤外光波長の光を発することがある。APD201から発せられる光が隣接する画素101に侵入すると、発光クロストークとなりAPD201を用いた光電変換装置100の特有のノイズになる。
【0053】
そこで、本実施形態において、互いに隣り合う画素101に間に配されるトレンチ構造324は、半導体層300の主面351から主面352まで貫通している。一方、1つの画素101内において、互いに隣り合うAPD201の間に配されるトレンチ構造325は、半導体層300主面351から主面351と主面352との間の位置360まで配されている。この位置360は、半導体層300の主面352から離れている。トレンチ構造325は、半導体層300の主面352に達していないともいえる。
【0054】
トレンチ構造324とトレンチ構造325とは、どちらも半導体層300の主面351の一部を構成するように配されている。そのため、
図8、
図9に示されるように、半導体層300の主面351からPN接合面350までの距離が、主面352からPN接合面350までの距離よりも短い場合など、半導体層300の主面351に近いPN接合面350近傍のアバランシェ増倍領域付近で生じる発光が、隣接する画素101へクロストークし難くなる。また、1つの画素101内においても、APD201間のクロストークが抑制される。
【0055】
さらに、トレンチ構造325は、半導体層300の主面351から配されるものの主面352には到達しない深さに配される。入射光が集光される半導体層300の主面352にトレンチ構造325が配されていないため、主面352までトレンチ構造325が存在する場合に生じやすい入射光に起因するクロストークが抑制される。
【0056】
以上のように、本実施形態に示される構成では、PN接合面350近傍のアバランシェ増倍領域で生じる発光に起因するクロストークが抑制できる。さらに、半導体層300の主面352の側で生じる入射光に起因するクロストークも抑制可能である。結果として、ノイズが抑制された光電変換装置100が提供される。
【0057】
図10は、PN接合面350とトレンチ構造325の半導体層300の主面352側の終端の位置60との関係を説明する図である。PN接合面350は、上述のように、アバランシェ増倍を起こすために急峻なPN接合を形成する第1導電型の半導体領域311と第2導電型の半導体領域312との界面である。
図10に示されるように、半導体層300の主面351からトレンチ構造325の主面352側の終端の位置360までの距離d2が、主面351からPN接合面350までの距離d1よりも長くてもよい。1つの画素101におけるAPD201間を分離するトレンチ構造325は、半導体領域311と半導体領域312とが接する深さよりも裏面(主面352)側に形成されているともいえる。
【0058】
APD201には信号電荷をアバランシェ増倍させるための強電界領域が存在しており、この強電界によって加速されエネルギを得た電荷が、エネルギを失う過程で可視光から近赤外光波長の光を発する。
図10に示される構造において、半導体領域311と半導体領域312とのPN接合面350においてアバランシェ増倍を生じさせるため、PN接合面350の深さ付近で強電界に起因する発光が生じる。したがって、
図10に示されるように、半導体層300の主面351から半導体領域311と半導体領域312とのPN接合面350までの距離d1よりも、トレンチ構造325の半導体層300の主面351から位置360までの深さd2を大きくすることによって、より効果的に、APD201が発光することに起因するクロストークが抑制可能になる。
【0059】
PN接合面350とトレンチ構造325の半導体層300の主面352側の終端の位置60との関係は、
図10に示される例に限られることはない。
図11には、半導体層300の主面351からトレンチ構造325の主面352側の終端の位置360までの距離d2が、主面351からPN接合面350までの距離d1よりも短い場合の例が示されている。換言すると、1つの画素101におけるAPD201間を分離するトレンチ構造325は、第1導電型の半導体領域317と第2導電型の半導体領域312とが接するPN接合面350よりも、半導体層300の主面351の側に配されている。
【0060】
図10に示される構成では、第1導電型の半導体領域311と第2導電型の半導体領域312と界面がPN接合面350を構成している。一方で、
図11に示される構成では、第1導電型の半導体領域311と第2導電型の半導体領域312との間に、第1導電型の半導体領域317が配されている。それによって、半導体領域317と半導体領域312との界面がPN接合面350になっている。上述のように、半導体領域317は、半導体領域311よりも不純物濃度が低い領域である。したがって、第1導電型の半導体領域311および半導体領域317を1つの半導体領域と仮定する場合に、第1導電型の半導体領域は、PN接合面350を構成する第1領域(半導体領域317)と、第1領域(半導体領域317)と半導体層300の主面351との間に配された第1領域(半導体領域317)よりも不純物濃度が高い第2領域(半導体領域311)と、を含むともいえる。
【0061】
トレンチ構造324、325などが配されることによって、半導体層300の主面351に近い界面には多数のダングリングボンドが存在し、暗電流が生じやすい領域になっている。この領域で発生した電子は、電界にしたがって半導体領域311方向に移動する。この場合に、第1導電型の半導体領域311、317と第2導電型の半導体領域312とのPN接合によって作られるアバランシェ増倍領域を電子が通過するか否かによって、暗電流が増倍され信号としてカウントされるか否かが決まる。第1導電型の半導体領域311、317と第2導電型の半導体領域312とのPN接合面350、すなわち、アバランシェ増倍領域が、半導体層300の主面351から離れた深い位置に形成される。それによって、半導体層300の主面351側の界面で生じる暗電流がアバランシェ増倍領域を通過し難くなり、暗電流をカウントしてしまう確率を低くすることができる。
図11に示される構成においても、半導体層300の主面351からPN接合面350までの距離が、主面352からPN接合面350までの距離よりも短くてもよい。
【0062】
図11に示される構成のように、半導体層300の主面351から第1導電型の半導体領域317と第2導電型の半導体領域312とのPN接合面350までの距離d1よりも、主面351からのトレンチ構造325の深さを表す距離d2が小さくなっている。それによって、半導体層300とトレンチ構造325との界面で生じる暗電流が、アバランシェ増倍領域(PN接合面350)を通過する可能性が抑制され、カソードから排出される確率が高くなる。結果として、暗電流をカウントしてしまう確率をより低くすることができる。
図10に示される構成と
図11に示される構成とは、APD201の特性などに応じて、適当な構成を選択すればよい。
【0063】
図12は、トレンチ構造325の半導体層300の主面352側の終端の位置360の配置についての一例を説明する図である。トレンチ構造325は、APD201においてアバランシェ増倍領域付近からの発光をより全反射させやすい深さまで形成されていてもよい。
【0064】
図12に示される構成において、
図10に示される構成と同様に、半導体層300の主面351からトレンチ構造325の主面352側の終端の位置360までの距離が、主面351からPN接合面350までの距離よりも長くなっている。APD201において強電界によって生じる発光は、アバランシェ増倍領域付近で生じる。したがって、半導体領域311と半導体領域312とのPN接合面350付近において発光が生じる。アバランシェ増倍領域付近で発せられた光は、ある角度をもってトレンチ構造325に入射し、半導体層300とトレンチ構造325との界面で屈折、反射が生じる。
【0065】
その場合に、トレンチ構造325への入射角や、半導体層300とトレンチ構造325に埋め込まれた材料との屈折率差によって、隣り合うAPD201に侵入する光の量が変化する。トレンチ構造325への入射角が、光を全反射する角度である臨界角よりも大きくなると、APD201で発せられた光は、発光したAPD201内へ反射して、隣接するAPD201へ侵入し難くなる。したがって、この臨界角よりもトレンチ構造325を深く配することによって、トレンチ構造325による反射効果を大きくすることができる。
【0066】
図12に示されるように、互いに隣り合うAPD201のうち一方のAPD201のPN接合面350の中心から互いに隣り合うAPD201の間に配されたトレンチ構造325までの距離をbとする。また、半導体層300の主面351からPN接合面350までの距離をdとする。APD201で発せられる光が、APD201からトレンチ構造325に入射する際の臨界角をAとする。その場合に、トレンチ構造325の半導体層300の主面351から主面352側の終端である位置360までの距離Lが、
L>{(b
2/cos
2A)-b
2}
1/2+d
を満たしていてもよい。ここで、
図12に示されるaは、距離Lと距離dとの差分である。
【0067】
スネルの法則から半導体層300とトレンチ構造325との界面で全反射する角度である臨界角は、半導体層300とトレンチ構造325との界面を構成する2つの材料の屈折率によって決まる。この角度以上の入射角で光がトレンチ構造325へ入射した場合に、光は全反射するようになる。したがって、トレンチ構造325の半導体層300の主面351からの深さである距離Lを上式のように設定することによって、APD201の強電界に起因の発光をより全反射させやすくなり、隣接するAPD201へのクロストークが抑制される。
【0068】
例えば、半導体層300としてシリコンが用いられ、半導体層300と界面を形成するトレンチ構造325に酸化シリコンが埋め込まれた場合を考える。PN接合面350の中心からトレンチ構造325までの距離bが3μmの場合、トレンチ構造325の深さである距離Lは、1~2μm程度になる。トレンチ構造325の深さをこれよりも深くすることによって、アバランシェ増倍領域で発光した光をAPD201内に全反射させやすくなり、APD201の発光に起因するクロストークが抑制される。ここで、PN接合面350の中心とは、例えば、半導体層300の主面351に対する正射影において、PN接合面350の幾何学的重心位置であってもよい。
【0069】
次いで、
図13、
図14を用いて、1つの画素101に4つのAPD201が配される場合について説明する。
図13に示されるように、4つのAPD201は、半導体層300の主面351に対する正射影において、2行2列(2×2)に並ぶように配されている。
【0070】
図13、
図14に示される構成においても、互いに隣り合う画素101の間に配されるトレンチ構造324は、半導体層300の主面351から主面352まで貫通している。一方、1つの画素101内において、互いに隣り合うAPD201の間に配されるトレンチ構造325は、半導体層300主面351から主面351と主面352との間の位置360まで配され、位置360は、半導体層300の主面352から離れている。
【0071】
1つの画素101にマイクロレンズ323を共有する2×2の4つのAPD201が配される場合において、入射光は、マイクロレンズ323によって、
図13に示される縦方向と横方向との2つのトレンチ構造325が交わる領域近傍に集光される。それによって、トレンチ構造325が半導体層300の主面352にまで配されている場合に、入射光は、主面352の表面で拡散され、隣接する画素へ入射しクロストークの原因になりうる。1×2の2つのAPD201で1つの画素101を構成する場合と比較して、2×2の4つのAPD201で1つの画素101を構成する場合では、画素101中のより多くの領域にトレンチ構造325が存在するため、入射光の拡散はより強くなる。
【0072】
しかしながら、
図14に示されるように、1つの画素101内のAPD201間に配されるトレンチ構造325を半導体層300の主面352まで達するように形成しない。それによって、入射光のクロストークを抑制させることができる。また、1つの画素101に4つのAPD201を配する構成は、1つの画素101に2つのAPD201を配する構成よりも多くの方向について位相差検出が可能になり、より多くの被写体に対して高精度なオートフォーカスが可能となる。
【0073】
ここで、本実施形態の光電変換装置100の応用例について
図15~
図18を用いて説明する。
図15は、光電変換装置100が組み込まれた機器として、光電変換システム1400の概略構成を示すブロック図である。
【0074】
上述した本実施形態の光電変換装置100は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と光電変換装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図15には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図が例示されている。
【0075】
図15に例示される光電変換システム1400は、光電変換装置100、被写体の光学像を光電変換装置100の画素部104に結像させるレンズ1402、レンズ1402を通過する光量を可変にするための絞り1403、レンズ1402の保護のためのバリア1401を有する。レンズ1402および絞り1403は、光電変換装置100に光を集光する光学系である。光電変換装置100は、レンズ1402によって結像された光学像を電気信号に変換する。
【0076】
光電変換システム1400は、また、光電変換装置100よって出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1407を有する。信号処理部1407は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1407は、光電変換装置100が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、光電変換装置100とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、光電変換装置100と信号処理部1407とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0077】
光電変換システム1400は、さらに、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1410、外部コンピュータなどと通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1413を有する。さらに光電変換システム1400は、撮像データの記録または読み出しを行うための半導体メモリなどの記録媒体1412、記録媒体1412に記録または読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1411を有する。なお、記録媒体1412は、光電変換システム1400に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0078】
さらに光電変換システム1400は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1409、光電変換装置100と信号処理部1407とに各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1408を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システム1400は少なくとも光電変換装置100と、光電変換装置100から出力された出力信号を処理する信号処理部1407とを有すればよい。
【0079】
光電変換装置100は、撮像信号を信号処理部1407に出力する。信号処理部1407は、光電変換装置100から出力される信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。換言すると、信号処理部1407は、光電変換装置100から出力された信号を用いて、画像を生成する処理装置である。
【0080】
このように、本実施形態によれば、上述の光電変換装置100(例えば、撮像装置とも呼ばれうる)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0081】
次いで、本実施形態の光電変換装置100が組み込まれた機器として、光電変換システムおよび移動体について、
図16(a)、16(b)を用いて説明する。
図16(a)、16(b)は、本実施形態の光電変換装置100が組み込まれた光電変換システム1500、および、光電変換システム1500を搭載した移動体として輸送機器1501の構成を示す図である。
【0082】
図16(a)は、車載カメラに関する光電変換システム1500の一例を示したものである。光電変換システム1500は、本実施形態の光電変換装置100によって取得された複数の画像データに対し、画像処理などの信号処理を行う画像処理部1512と、画像処理部1512によって信号処理された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部1514を有する。また、光電変換システム1500は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部1516と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部1518と、を有する。ここで、視差取得部1514や距離取得部1516は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離などに関する情報である。衝突判定部1518はこれらの距離情報の何れかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。画像処理部1512、視差取得部1514、距離取得部1516、衝突判定部1518は、光電変換装置100から出力された信号を処理する処理装置の例である。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0083】
光電変換システム1500は、駆動装置を具備する輸送機器1501(例えば、車両)の車両情報取得装置1520と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム1500は、衝突判定部1518での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU1530が接続されている。また、光電変換システム1500は、衝突判定部1518での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置1540とも接続されている。例えば、衝突判定部1518の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU1530はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置1540は音などの警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0084】
本実施形態では、輸送機器1501の周囲、例えば、前方または後方を光電変換システム1500で撮像する。
図16(b)に、輸送機器1501の前方(撮像範囲1550)を撮像する場合の光電変換システム1500を示す。車両情報取得装置1520が、光電変換システム1500ないしは光電変換装置100に指示を送る。このような構成によって、測距の精度をより向上させることができる。
【0085】
上記では、他の車両と衝突しないように光電変換装置100で得られた情報に基づいて輸送機器1501のブレーキ、アクセル、エンジンなどの駆動装置1560を制御する例を説明した。しかし、これに限られることはなく他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。また、光電変換装置100が組み込まれた光電変換システム1500が、輸送機器1501に組み込まれる例を示したが、光電変換装置100は、車両情報取得装置1520や制御ECU1530、警報装置1540に組み込まれていてもよい。さらに、光電変換装置100が組み込まれた光電変換システム1500は、自動車などの車両に限らず、例えば、船舶、航空機、鉄道車両あるいは産業用ロボットなどの駆動装置を具備する輸送機器に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)など、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0086】
図17は、光電変換装置100が組み込まれた機器として、内視鏡システム1650の概略的な構成の一例を示す図である。
図17では、医師などの術者1631が、内視鏡システム1650を用いて、患者ベッド1633上の患者1632に対して施術する様子が図示されている。図示されるように、内視鏡システム1650は、内視鏡1600、術具1610、内視鏡検査のための各種の装置が搭載されたカート1634などを含み構成される。
【0087】
内視鏡1600は、先端から所定の長さの領域が患者1632の体腔内に挿入される鏡筒1601、鏡筒1601の基端に接続されるカメラヘッド1602を含みうる。
図17に示される例では、硬性の鏡筒1601を備える、所謂、硬性鏡として構成される内視鏡1600が示されている。しかしながら、これに限られることはなく、内視鏡1600は、軟性の鏡筒を備える、所謂、軟性鏡として構成されていてもよい。
【0088】
鏡筒1601の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡1600には、光源装置1603が接続されており、光源装置1603によって生成された光が、鏡筒1601の内部に延設されるライトガイドによって鏡筒1601の先端まで導光され、対物レンズを介して患者1632の体腔内の観察対象に向かって照射される。ここで、内視鏡1600は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡または側視鏡であってもよい。
【0089】
カメラヘッド1602の内部には、光学系および上述の光電変換装置100が配されている。観察対象からの反射光(観察光)は、光学系によって光電変換装置100に集光される。光電変換装置100によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。画像信号は、例えば、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU)1635に送信される。
【0090】
CCU1635は、中央処理装置(CPU)や画像処理装置(GPU)などを含み、内視鏡1600および表示装置1636の動作を統括的に制御する。さらに、CCU1635は、カメラヘッド1602から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)などの、画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。CCU1635は、光電変換装置100から出力された信号を処理する処理装置である。
【0091】
表示装置1636は、CCU1635からの制御によって、CCU1635によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。また、表示装置1636は、内視鏡システム1650を動作させる際の動作条件(例えば、撮影条件など)などを適宜、表示してもよい。
【0092】
光源装置1603は、例えば発光ダイオード(LED)などの光源をふくみ構成される。光源装置1603は、術部などを撮影する際の照射光を内視鏡1600に供給する。
【0093】
入力装置1637は、内視鏡システム1650に対する入力インターフェースである。ユーザは、入力装置1637を介して、内視鏡システム1650に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。
【0094】
処置具制御装置1638は、組織の焼灼、切開、血管の封止などのために用いられる処置具1612の駆動を制御する。
【0095】
光源装置1603として、例えば、LED、レーザ光源、または、それらの組み合わせによって構成される白色光源を使用してもよい。RGBレーザ光源の組み合わせによって白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度および出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置1603において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、その場合に、RGBレーザ光源のそれぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド1602の撮像素子の駆動を制御することによって、RGBのそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。RGBを時分割に撮像する方法を用いる場合、撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0096】
また、光源装置1603は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するように駆動が制御されてもよい。光源装置1603の光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド1602の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、時分割で取得した画像を合成することによって、所謂、黒つぶれや白とびが抑制された高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0097】
また、光源装置1603は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されていてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用する。具体的には、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することによって、粘膜表層の血管などの所定の組織を高コントラストで撮影できる。また、特殊光観察では、励起光を照射することによって発生する蛍光を用いて画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察は、体組織に励起光を照射し、体組織からの蛍光を観察することによって行われる。また、例えば、蛍光観察は、インドシアニングリーン(ICG)などの試薬を体組織に局注するとともに、体組織に試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ることによって行われる。光源装置1603は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光や励起光を供給可能に構成されていてもよい。
【0098】
次いで、
図17(a)を用いて、光電変換装置100が組み込まれた機器である光電変換システムとして眼鏡1700(スマートグラス)を説明する。眼鏡1700は、光電変換装置100を有する。また、レンズ1701の裏面側には、OLEDやLEDなどの発光装置を含む表示装置が設けられていてもよい。光電変換装置100は1つでもよいし、複数でもよい。また、複数種類の光電変換装置を組み合わせて用いてもよい。光電変換装置100の配置位置は、
図18(a)に示される位置に限られることはなく、適当な位置に配されていればよい。
【0099】
眼鏡1700は、制御装置1703をさらに備える。制御装置1703は、光電変換装置100と上記の表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1703は、光電変換装置100と表示装置の動作を制御する。制御装置1703は、光電変換装置100から出力された信号を処理し、表示装置に表示させる処理装置として機能してもよい。レンズ1701には、光電変換装置100に光を集光するための光学系が形成されている。
【0100】
図18(b)は、1つの適用例に係る眼鏡1710(スマートグラス)を説明する。眼鏡1710は、制御装置1712を有しており、制御装置1712に、光電変換装置100、表示装置が搭載される。レンズ1711には、制御装置1712内の光電変換装置100と表示装置からの発光を投影するための光学系とが形成されており、レンズ1711には画像が投影される。制御装置1712は、光電変換装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、光電変換装置および表示装置の動作を制御する。制御装置1712は、光電変換装置100から出力された信号を処理し、表示装置に表示させる処理装置として機能してもよい。制御装置は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0101】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0102】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザの視線が検出される。
【0103】
本実施形態の表示装置は、受光素子を有する光電変換装置を有し、光電変換装置からのユーザの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。
【0104】
具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザが注視する第1の視界領域と、第1の視界領域以外の第2の視界領域とを決定される。第1の視界領域、第2の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第1の視界領域の表示解像度を第2の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第2の視界領域の解像度を第1の視界領域よりも低くしてよい。
【0105】
また、表示領域は、第1の表示領域、第1の表示領域とは異なる第2の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第1の表示領域および第2の表示領域から優先度が高い領域を決定されてよい。第1の視界領域、第2の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0106】
なお、第1の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、光電変換装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0107】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する光電変換装置を更に有するスマートグラスに適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0108】
本明細書の開示は、以下の光電変換装置、電子機器および基板を含む。
【0109】
(項目1)
第1主面および第2主面を有する半導体層に複数の画素が配された光電変換装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、複数のアバランシェフォトダイオードを含み、
各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードは、1つのマイクロレンズを共有し、
前記複数の画素のうち互いに隣り合う画素の間には、前記第1主面から前記第2主面まで貫通する第1トレンチ構造が配され、
各画素において、前記複数のアバランシェフォトダイオードのうち互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードの間には、第2トレンチ構造が配され、
前記第2トレンチ構造は、前記第1主面から前記第1主面と前記第2主面との間の位置まで配され、
前記位置は、前記第2主面から離れていることを特徴とする光電変換装置。
【0110】
(項目2)
前記複数のアバランシェフォトダイオードのそれぞれは、第1導電型の第1半導体領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体領域と、によって構成されるPN接合面を備え、
前記第1主面から前記位置までの距離が、前記第1主面から前記PN接合面までの距離よりも長いことを特徴とする項目1に記載の光電変換装置。
【0111】
(項目3)
前記互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードのうち一方のアバランシェフォトダイオードの前記PN接合面の中心から前記互いに隣り合うアバランシェフォトダイオードの間に配された前記第2トレンチ構造までの距離をb、前記第1主面から前記PN接合面までの距離をd、前記一方のアバランシェフォトダイオードで発せられる光が前記一方のアバランシェフォトダイオードから前記第2トレンチ構造に入射する際の臨界角をAとしたときに、前記第2トレンチ構造の前記第1主面から前記位置までの距離Lが、
L>{(b2/cos2A)-b2}1/2+d
を満たすことを特徴とする項目2に記載の光電変換装置。
【0112】
(項目4)
前記複数のアバランシェフォトダイオードのそれぞれは、第1導電型の第1半導体領域と、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体領域と、のPN接合面を備え、
前記第1主面から前記位置までの距離が、前記第1主面から前記PN接合面までの距離よりも短いことを特徴とする項目1に記載の光電変換装置。
【0113】
(項目5)
前記第1主面と前記第2半導体領域との間に前記第1半導体領域が配され、
前記第1半導体領域は、前記PN接合面を構成する第1領域と、前記第1領域と前記第1主面との間に配された前記第1領域よりも不純物濃度が高い第2領域と、を含むことを特徴とする項目4に記載の光電変換装置。
【0114】
(項目6)
前記第1主面から前記PN接合面までの距離が、前記第2主面から前記PN接合面までの距離よりも短いことを特徴とする項目2乃至5の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0115】
(項目7)
前記第2トレンチ構造に、誘電体または金属が埋め込まれていることを特徴とする項目1乃至6の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0116】
(項目8)
前記第1トレンチ構造に、誘電体または金属が埋め込まれていることを特徴とする項目1乃至7の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0117】
(項目9)
各画素に前記複数のアバランシェフォトダイオードとして2つのアバランシェフォトダイオードが配されていることを特徴とする項目1乃至8の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0118】
(項目10)
各画素に前記複数のアバランシェフォトダイオードとして4つのアバランシェフォトダイオードが配され、
前記4つのアバランシェフォトダイオードは、前記第1主面に対する正射影において、2行2列に並ぶように配されていることを特徴とする項目1乃至8の何れか1項目に記載の光電変換装置。
【0119】
(項目11)
項目1乃至10の何れか1項目に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【0120】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0121】
100:光電変換装置、101:画素、201:APD、300:半導体層、323:マイクロレンズ、324,325:トレンチ構造、351,352:主面、360:位置