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特開2024-1647制御装置、制御プログラム、記録媒体、直流遮断装置、および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001647
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】制御装置、制御プログラム、記録媒体、直流遮断装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/087 20060101AFI20231227BHJP
   H01H 33/59 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
H02H3/087
H01H33/59 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100433
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 義文
(72)【発明者】
【氏名】豊田 玄紀
【テーマコード(参考)】
5G004
5G028
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA04
5G004CA04
5G004DA01
5G004DC02
5G004DC14
5G004EA01
5G028AA21
5G028FB06
5G028FC02
(57)【要約】
【課題】突入電流を遮断する可能性を低減可能な制御装置を実現する。
【解決手段】制御装置(40)は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線(11)に位置する半導体スイッチ(20)と、第1線における半導体スイッチと負荷との間、および、電源の負極と負荷とをつなぐ第2線(12)に接続されたコンデンサ(30)とを備える直流遮断装置において、コンデンサに流れる電流の方向に応じて、半導体スイッチを開とする電流遮断部(41)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、
前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、
前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、
前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサとを備える直流遮断装置における前記半導体スイッチの開閉を制御する制御装置であって、
前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断部を備える制御装置。
【請求項2】
前記電流遮断部は、前記第1端から前記第1線に電流が流れた後、前記コンデンサに流れる電流が0になった場合に前記半導体スイッチを開とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記電流遮断部は、前記コンデンサに流れる電流の方向および前記コンデンサにおける電圧の大きさに応じて、前記半導体スイッチを開とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記電流遮断部は、前記第1端から前記第1線に電流が流れている状態において前記コンデンサにおける電圧が閾値以下となり、その後に前記コンデンサに流れる電流が0になった状態において前記コンデンサにおける電圧が継続して前記閾値以下である場合に、前記半導体スイッチを開とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記電流遮断部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項7】
電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、
前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、
前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、
前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断部とを備える直流遮断装置。
【請求項8】
電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、
前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、
前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、
前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサとを備える直流遮断装置における前記半導体スイッチの開閉を制御する制御方法であって、
前記コンデンサに流れる電流の方向を検出する電流検出ステップと、
前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断ステップと、を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電流を遮断する直流遮断装置の制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流線路に流れる直流電流を遮断する直流遮断器が開示されている。当該直流遮断器は、事故電流遮断部と、制御回路とを備える。事故電流遮断部は、直流線路における事故の発生時に制御回路から入力される指令に従って開動作を行う。制御回路は、直流線路に流れる直流電流の値が閾値を超えた場合、事故が発生したと判断し、事故電流遮断部へ開動作のための指令を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6808091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている直流遮断器は、負荷への突入電流を事故電流と誤認して遮断する場合があるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、突入電流を誤って遮断する可能性を低減可能な制御装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサとを備える直流遮断装置における前記半導体スイッチの開閉を制御する制御装置であって、前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断部を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る直流遮断装置は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断部とを備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサとを備える直流遮断装置における前記半導体スイッチの開閉を制御する制御方法であって、前記コンデンサに流れる電流の方向を検出する電流検出ステップと、前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断ステップと、を含む。
【0009】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る制御装置などによれば、突入電流を誤って遮断する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る直流遮断装置の構成を示す回路図である。
図2】直流遮断装置の立ち上げ時における状態を示す図である。
図3】負荷で事故が発生した場合における直流遮断装置の状態を示す図である。
図4】コンデンサ負荷が追加された場合における直流遮断装置の状態を示す図である。
図5】電流遮断部による直流遮断装置の制御方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(直流遮断装置1の構成)
図1は、本実施形態に係る直流遮断装置1の構成を示す回路図である。図1に示すように、直流遮断装置1は、第1線11、第2線12、半導体スイッチ20、コンデンサ30、および制御装置40を備える。
【0014】
第1線11は、電源(不図示)の正極と負荷(不図示)とをつなぐ。第2線12は、電源の負極と負荷とをつなぐ。電源は直流電源である。負荷はコンデンサ負荷である。
【0015】
半導体スイッチ20は、第1線11において電源と負荷との間に位置する。半導体スイッチ20は、制御装置40からの制御信号により開閉を制御される。半導体スイッチ20としては、公知の半導体スイッチを特に制限なく用いることができる。半導体スイッチ20の具体例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FET(Field Effect Transistor)、および他のトランジスタが挙げられる。
【0016】
コンデンサ30は、第1端31と第2端32とを有するコンデンサである。第1端31は、第1線11における半導体スイッチ20と負荷との間に接続される。第2端32は、第2線12に接続される。コンデンサ30の容量は、直流遮断装置1に接続されることが想定されるコンデンサ負荷の容量の10%以下の小容量コンデンサであってよい。
【0017】
制御装置40は、直流遮断装置1の動作を制御する。例えば制御装置40は、半導体スイッチ20の開閉を制御する。本実施形態では、制御装置40が直流遮断装置1の一部であるものとして記載している。ただし、制御装置40は、直流遮断装置1とは別の装置であってもよい。制御装置40は、電流遮断部41、突入電流制御部42、および記憶部45を備える。
【0018】
電流遮断部41は、コンデンサ30に流れる電流Icoの方向に応じて、半導体スイッチ20を開とする。第1線11における電流Idが増大した場合、増大した電流が負荷で事故が発生したことに起因する事故電流であるか、コンデンサ負荷が新たに接続されたことに起因する突入電流であるかを電流Idの大きさにより判別することは困難である。しかし、コンデンサ30に流れる電流Icoの方向は、事故が発生した場合とコンデンサ負荷が接続された場合とで、互いに異なる挙動を示す。したがって、制御装置40によれば、電流遮断部41が上記のとおり動作することで、突入電流を誤って遮断する可能性を低減できる。
【0019】
具体的には、電流遮断部41は、第1端31から第1線11に電流Icoが流れた後、電流Icoが0になった場合に、半導体スイッチ20を開とする。電流遮断部41は、電流Icoの向きおよび大きさを示す信号を、後述する第1変流器51から取得する。
【0020】
後述するように、負荷において短絡事故または地絡事故が発生した場合には、第1端31から第1線11に電流Icoが流れた後、電流Icoが0になる。一方、コンデンサ負荷が追加されて第1線11に突入電流が流れた場合には、第1端31から第1線11に電流Icoが流れた後、第1線11から第1端31に電流Icoが流れ、その後に電流Icoが0になる。
【0021】
厳密には、第1線11に突入電流が流れた場合には、第1端31から第1線11に電流Icoが流れた後、第1線11から第1端31に電流Icoが流れる前に、一時的に電流Icoが0になる。電流Icoが0になった後、第1線11から第1端31に電流Icoが流れるまでの時間は、コンデンサ負荷の容量および電源電圧に依存する。
【0022】
例えば以下の例について考える。
・コンデンサ負荷の容量:4000μF(100kWの変換器に相当)
・コンデンサ30の容量:200μF(コンデンサ負荷の容量の5%)
・第1線11の直流抵抗率:0.5Ω/km
この例において、第1線11の長さを500mとした場合、配線抵抗は0.5Ω/km×500m=0.25Ωとなる。この場合、電流Icoが0になった後、第1線11から第1端31に電流Icoが流れるまでの時間は、0.25Ω(配線抵抗)×200μF(コンデンサ30の容量)=50μsとなる。
【0023】
したがって、この例では、電流Icoが0となった後、その状態が50μs以上継続すれば、負荷において短絡事故または地絡事故が発生した可能性が高いと言える。電流遮断部41が上記のとおり動作することで、制御装置40は、事故電流に対して短時間で半導体スイッチ20を開とすることができる。
【0024】
一般に、コンデンサへの充電は、電源電圧が高い場合には大電流で行われ、電源電圧が低い場合には小電流で行われる。このため、電流Icoが0になった後、第1線11から第1端31に電流Icoが流れるまでの時間は、電源電圧には依存しない。
【0025】
上記の判定において、電流遮断部41は、電流Icoが完全に0まで低下したか否かを判定する必要はなく、実質的に0になったと見なすことができる閾値以下まで低下したか否かを判定すればよい。電流Icoが実質的に0になったと見なすことができる閾値については、想定される電源の出力に応じて制御装置40の設計者またはユーザが適宜設定すればよい。例えば想定される電源の出力が100kWであり、電源電圧が600Vである場合、電源からの電流は167Aとなる。この場合、電流Icoが実質的に0になったと見なすことができる閾値は、電源からの電流の10%(16.7A)以下であってよく、例えば15Aであってよい。
【0026】
また、電流遮断部41は、コンデンサ30に流れる電流Icoの方向、およびコンデンサ30における電圧Vcoの大きさに応じて、半導体スイッチ20を開としてもよい。電圧Vcoの大きさも、事故が発生した場合とコンデンサ負荷が新たに接続された場合とで、互いに異なる挙動を示す。したがって、電流遮断部41は、電流Icoの方向に加えて、電圧Vcoの大きさにも応じて半導体スイッチ20を開とすることで、より高い精度で事故電流に対して半導体スイッチ20を開とすることができる。
【0027】
具体的には、電流遮断部41は、第1端31から第1線11に電流Icoが流れている状態において電圧Vcoが閾値以下となり、その後に電流Icoが0になった状態において電圧Vcoが継続して閾値以下である場合に、半導体スイッチ20を開とする。電流遮断部41は、電圧Vcoの大きさを示す信号を、後述する第1電圧センサ53から取得する。
【0028】
後述するように、負荷において短絡事故または地絡事故が発生した場合には、コンデンサ30は充電されていた電力を放電する。このため、第1端31から第1線11に電流Icoが流れるとともに、電圧Vcoが低下して閾値以下となる。そして、その後もコンデンサ30は充電されないため、電流Icoが0になってから事故が発生したと判定される時間が経過するまで、電圧Vcoは継続して閾値以下に低下したままの状態となる。この状態では、電圧Vcoは0に近い値となる。一方、後述するように、コンデンサ負荷が追加されて突入電流が発生した場合には、コンデンサ30は短時間のみ放電した後で再び充電される。このため、電圧Vcoは、一時的に閾値以下まで低下しても、電流Icoが0になってから事故が発生したと判定される時間が経過するよりも前に、閾値よりも高い値まで再び上昇する。このため、電流遮断部41が上記のとおり動作することで、より高い精度で事故電流に対して半導体スイッチ20を開とすることができる。
【0029】
電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とする電圧Vcoの閾値は、制御装置40の設計者またはユーザにより、0よりも大きく、かつ電源から直流遮断装置1に入力される電源電圧Vin未満である値に適宜設定されればよい。電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とする電圧Vcoの閾値は、定数であってもよく、電源電圧Vinを参照した値であってもよい。電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とする電圧Vcoの閾値を、電源電圧Vinを参照した値とする場合、電流遮断部41は、電源電圧Vinの大きさを示す信号を、後述する第2電圧センサ54から取得する。この場合、当該閾値は、例えば電源電圧Vinの半分の値であってよい。
【0030】
また、電流遮断部41は、上述した電流Icoの方向、または電流Icoの方向と電圧Vcoの大きさとの組み合わせに加えて、第1線11における電流Idの大きさに応じて半導体スイッチ20を開としてもよい。電流遮断部41は、電流Idの大きさを示す信号を、後述する第2変流器52から取得する。
【0031】
電流遮断部41は、電流Idが所定の閾値以上であることを、半導体スイッチ20を開とするための条件に含めてもよい。これにより、電流遮断部41は、より高い精度で事故電流に対して半導体スイッチ20を開とすることができる。電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とする電流Idの閾値は、制御装置40の設計者またはユーザにより、直流遮断装置1の定常状態における電流Idよりも十分高い値に設定されればよい。電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とする電流Idの閾値は、例えば直流遮断装置1の定常状態における電流Idの2倍に設定されてよい。
【0032】
一般に、半導体素子は、定格電流の半分程度の電流を定常状態における電流として運用されることが、電力効率の観点から好ましい。半導体スイッチ20がこのように運用されている場合、直流遮断装置1の定常状態における電流Idの2倍という値は、半導体スイッチ20の定格電流である。
【0033】
突入電流制御部42は、直流遮断装置1の立ち上げ時における突入電流を低減するように第1開閉器61および第2開閉器62を制御する。突入電流制御部42による制御の内容については後述する。
【0034】
記憶部45は、制御装置40による制御に必要な情報を記憶する記憶装置である。記憶部45は、例えば電流Icoが実質的に0になったとみなすことができる閾値を記憶する。ただし、制御装置40は必ずしも記憶部45を備える必要はなく、制御装置40による制御に必要な情報を記憶する外部の記憶装置と通信可能に接続されていてもよい。
【0035】
直流遮断装置1は、過電圧抑制回路25をさらに備える。過電圧抑制回路25は、第1線11に、半導体スイッチ20と並列に接続される。半導体スイッチ20が閉である場合には、電流は半導体スイッチ20を流れるため、過電圧抑制回路25へはほとんど流れない。一方、半導体スイッチ20が開である場合には、電源の正極と負荷とが過電圧抑制回路25を介してのみ接続されることとなるため、電流は過電圧抑制回路25へ流れる。過電圧抑制回路25の例として、LC共振回路、RCスナバ回路、およびサージアブソーバが挙げられる。
【0036】
また、直流遮断装置1は、第1変流器51および第2変流器52をさらに備える。第1変流器51は、コンデンサ30に流れる電流Icoの向きおよび大きさを検出するための変流器である。第1変流器51は、電流Icoの向きおよび大きさを示す信号を電流遮断部41に出力する。また、第1変流器51は、電流Icoの向きおよび大きさを示す信号を突入電流制御部42にも出力してよい。第1変流器51は、コンデンサ30の第1端31と第1線11との間に設けられる。
【0037】
第2変流器52は、第1線11における、半導体スイッチ20と負荷との間に流れる電流Idの大きさを検出するための変流器である。第2変流器52は、電流Idの大きさを示す信号を電流遮断部41に出力する。第2変流器52は、第1線11に設けられる。
【0038】
また、直流遮断装置1は、第1電圧センサ53および第2電圧センサ54をさらに備える。第1電圧センサ53は、コンデンサ30における電圧Vcoの大きさを検出するためのセンサである。第1電圧センサ53は、電圧Vcoの大きさを示す信号を電流遮断部41に出力する。また、第1電圧センサ53は、電圧Vcoの大きさを示す信号を突入電流制御部42にも出力してよい。第1電圧センサ53の一端は、第1線11における、半導体スイッチ20よりも電源側に接続される。第1電圧センサ53の他端は、第2線12に接続される。
【0039】
第2電圧センサ54は、電源電圧Vinの大きさを検出するためのセンサである。第2電圧センサ54は、電源電圧Vinの大きさを示す信号を電流遮断部41に出力する。第2電圧センサ54は、コンデンサ30と並列に設けられる。
【0040】
第1電圧センサ53、第2電圧センサ54および第2変流器52は、直流遮断装置1においては必須の構成要素ではない。電流遮断部41が上述した電圧Vcoを用いた判定を行わない場合には、第1電圧センサ53および第2電圧センサ54は省略されてもよい。また、電流遮断部41が上述した電流Idを用いた判定を行わない場合には、第2変流器52は省略されてもよい。
【0041】
また、直流遮断装置1は、第1開閉器61および第2開閉器62をさらに備える。第1開閉器61および第2開閉器62は、制御装置40により制御されるスイッチである。第1開閉器61および第2開閉器62は、半導体スイッチまたは機械式のスイッチのいずれであってもよい。第1開閉器61は、第1線11における、電源の正極と半導体スイッチ20との間に位置する。第2開閉器62は、第1開閉器61と並列であるように第1線11に接続される。
【0042】
また、直流遮断装置1は、突入電流抑制抵抗64をさらに備える。突入電流抑制抵抗64は、第1開閉器61と並列、かつ第2開閉器62と直列であるように第1線11に接続される抵抗器である。第2開閉器62および突入電流抑制抵抗64は、直流遮断装置1の立ち上げ時における突入電流を抑制する、突入電流抑制回路を構成する。突入電流抑制抵抗64の抵抗値は、想定される電源の出力および負荷の容量に応じて、直流遮断装置1の設計者が適宜決定すればよい。
【0043】
また、直流遮断装置1は、第3開閉器63をさらに備える。第3開閉器63は、第2線12に位置する。第3開閉器63は、直流遮断装置1、電源および負荷を含むシステム全体の作動と停止とを切り替えるスイッチである。第3開閉器63は、制御装置40により制御されるスイッチである。第3開閉器63は、半導体スイッチまたは機械式のスイッチのいずれであってもよい。
【0044】
第1開閉器61、第2開閉器62、突入電流抑制抵抗64および突入電流制御部42は、直流遮断装置1においては必須の構成要素ではない。直流遮断装置1の立ち上げ時における突入電流を低減する必要がなければ、これらの構成要素は省略されてもよい。
【0045】
第3開閉器63は、直流遮断装置1においては必須の構成要素ではない。直流遮断装置1、電源および負荷を含むシステムにおいては、例えば電源からの電力の供給と停止とを切り替えることで、当該システム全体の作動と停止とを切り替えてもよい。その場合には、制御装置40により制御される第3開閉器63は省略されてもよい。
【0046】
(直流遮断装置1の立ち上げ時の動作)
図2は、直流遮断装置1の立ち上げ時における状態を示す図である。図2において、符号201はコンデンサ30の充電完了前の状態を示し、符号202はコンデンサ30の充電完了後の状態を示す。簡単のため、図2においては、第1変流器51、第2変流器52、第1電圧センサ53、および第2電圧センサ54を省略している。
【0047】
直流遮断装置1の立ち上げ時には、電流遮断部41は、半導体スイッチ20を閉とする。また、突入電流制御部42は、第1開閉器61を開、第2開閉器62を閉、第3開閉器63を閉とする。このとき、符号201において矢印91で示すように、電源の正極からの電流は、第2開閉器62、突入電流抑制抵抗64、および半導体スイッチ20を経由して負荷へ流れる。このため、直流遮断装置1の立ち上げ時における突入電流は、突入電流抑制抵抗64を経由しない場合よりも抑制される。また、矢印92で示すように、電源の正極からの電流の一部はコンデンサ30に流れ、コンデンサ30を充電する。
【0048】
突入電流制御部42は、コンデンサ30の充電が完了すると、第1開閉器61を閉、第2開閉器62を開とする。このとき、符号202において矢印93で示すように、電源の正極からの電流は、第1開閉器61を経由して、突入電流抑制抵抗64を経由せずに負荷へ流れる。突入電流制御部42は、例えば電流Icoの大きさを示す信号を第1変流器51から取得し、電流Icoの大きさが0になった場合に、コンデンサ30の充電が完了したと判定してよい。または、突入電流制御部42は、例えば電圧Vcoの大きさを示す信号を第1電圧センサ53から取得し、電源電圧Vinの大きさを示す信号を第2電圧センサ54から取得する。突入電流制御部42は、電圧Vcoの大きさが電源電圧Vinの大きさと等しくなった場合に、コンデンサ30の充電が完了したと判定してもよい。
【0049】
(負荷で事故が発生した場合の動作)
図3は、負荷で事故が発生した場合における直流遮断装置1の状態を示す図である。図3において、符号301は電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とする前の状態を示し、符号302は電流遮断部41が半導体スイッチ20を開とした後の状態を示す。簡単のため、図3においては、第1変流器51、第2変流器52、第1電圧センサ53、および第2電圧センサ54を省略している。
【0050】
負荷で短絡事故または地絡事故が発生した場合には、矢印94で示すように、短絡電流または地絡電流が流れる。このとき、符号301において矢印95で示すように、コンデンサ30の第1端31から第1線11を介して負荷へ放電電流が流れる。コンデンサ30の放電が完了すると、コンデンサ30から第1線11へ流れる電流は0になる。
【0051】
電流遮断部41は、上記の電流Icoの方向に応じて、半導体スイッチ20を開とする。このとき、符号302において矢印96で示すように、電源の正極からの電流は、過電圧抑制回路25を介して負荷へ流れる。過電圧抑制回路25により、電源の正極から負荷へ流れる電流の、急激な増大を抑制し、事故電流を遮断するエネルギーにより生じる過電圧を抑制し、電流消弧することで、事故電流がゼロとなる。
【0052】
(コンデンサ負荷が追加された場合の動作)
図4は、コンデンサ負荷が追加された場合における直流遮断装置1の状態を示す図である。図4において、符号401はコンデンサ負荷における電圧がコンデンサ30における電圧よりも低い状態を示し、符号402はコンデンサ負荷における電圧がコンデンサ30における電圧以上である状態を示す。簡単のため、図4においては、第1変流器51、第2変流器52、第1電圧センサ53、および第2電圧センサ54を省略している。
【0053】
直流遮断装置1にコンデンサ負荷を追加で接続した場合、矢印97で示すように追加されたコンデンサ負荷が充電される。コンデンサ負荷における電圧がコンデンサ30における電圧よりも低い状態では、符号401において矢印98で示すように、コンデンサ30がコンデンサ負荷に放電する。コンデンサ負荷における電圧がコンデンサ30における電圧以上になると、符号402において矢印99で示すように、再びコンデンサ30が充電される。
【0054】
(電流遮断部41による直流遮断装置1の制御方法)
図5は、電流遮断部41による直流遮断装置1の制御方法の例を示すフローチャートである。電流遮断部41は、コンデンサ30に流れる電流Icoの方向を示す信号を第1変流器51から取得する(S1、電流検出ステップ)。ただし、電流遮断部41は、ステップS1に限らず、例えば後述するステップS4,S5の前に電流Icoの方向を示す信号を第1変流器51から取得してよい。また、電流遮断部41は、コンデンサ30における電圧Vcoを示す信号を、例えば後述するステップS3,S6の前に第1電圧センサ53から取得してよい。また、電流遮断部41は、電源電圧Vinを示す信号についても、例えば後述するステップS3,S6の前に第2電圧センサ54から取得してよい。
【0055】
電流遮断部41は、電流Icoが第1端31から第1線11に流れたか否かを判定する(S2)。電流Icoが第1端31から第1線11に流れた場合(S2でYES)、電流遮断部41は、電圧Vcoが閾値未満になったか否かを判定する(S3)。
【0056】
電圧Vcoが閾値未満になった場合(S3でYES)、電流遮断部41は、電流Icoが0になったか否かを判定する(S4)。電流Icoが0になった場合(S4でYES)、電流遮断部41は、電流Icoが0の状態が所定時間継続したか否かを判定する(S5)。電流Icoが0の状態が所定時間継続した場合(S5でYES)、電流遮断部41は、電圧Vcoが閾値未満のままであるか否かを判定する(S6)。
【0057】
電圧Vcoが閾値未満のままである場合(S6でYES)、電流遮断部41は、半導体スイッチ20を開とする(S7、電流遮断ステップ)。ステップS7の実行には、電流Icoの方向について判定するステップS2,S4,S5のそれぞれでYESと判定されることが前提となる。したがって、ステップS7は、コンデンサ30に流れる電流Icoの方向に応じて、半導体スイッチ20を開とするステップであると表現できる。一方、ステップS2~S6のいずれかで電流遮断部41がNOと判定した場合には、電流遮断部41は、ステップS7を実行せずに処理を終了する。
【0058】
ステップS2~S6の全てで電流遮断部41がYESと判定した場合には、負荷において事故が発生している可能性が高い。したがって、電流遮断部41は、ステップS7を実行することで、事故電流を遮断することができる。一方で、ステップS2~S6のいずれかで電流遮断部41がNOと判定した場合には、負荷において事故が発生している可能性は低い。したがって、電流遮断部41は、この場合にはステップS7を実行せず、第1線11を流れる電流を遮断しないことで、事故電流以外の電流を遮断する可能性を低減できる。
【0059】
ステップS3,S6は、事故が発生したことを電流遮断部41がより高い精度で判定するためのステップである。ただし、事故が発生したことを判定する上では、ステップS3,S6は必須ではない。このため、電流遮断部41は、ステップS3,S6を省略してもよい。また、電流遮断部41は、ステップS7よりも前に、第1線11における電流Idの大きさを示す信号を第2変流器52から取得し、電流Idの大きさについて判定するステップを実行してもよい。
【0060】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置40(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の制御ブロック(電流遮断部41)としてコンピュータを機能させるための制御プログラムにより実現することができる。
【0061】
この場合、上記装置は、上記制御プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記制御プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0062】
上記制御プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0063】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0064】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0065】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る制御装置は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサとを備える直流遮断装置における前記半導体スイッチの開閉を制御する制御装置であって、前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断部を備える。
【0066】
上記の構成によれば、電流遮断部は、直流遮断装置が備えるコンデンサに流れる電流の方向に応じて、半導体スイッチを開とする。当該コンデンサの第1端は、第1線における半導体スイッチと負荷との間に接続されている。当該コンデンサの第2端は第2線に接続されている。当該コンデンサに流れる電流は、第1線に流れる電流が事故電流である場合と突入電流である場合とで、互いに異なる挙動を示す。したがって、電流遮断部が上記のとおり半導体スイッチを開とすることで、制御装置は、突入電流を誤って遮断する可能性を低減できる。
【0067】
また、本発明の態様2に係る制御装置は、態様1において、前記電流遮断部は、前記第1端から前記第1線に電流が流れた後、前記コンデンサに流れる電流が0になった場合に前記半導体スイッチを開としてもよい。
【0068】
上記の構成によれば、制御装置は、第1線に事故電流が流れた場合における、コンデンサに流れる電流の方向が示す挙動に基づいて、事故電流に対して短時間で半導体スイッチを開とすることができる。
【0069】
また、本発明の態様3に係る制御装置は、態様1または2において、前記電流遮断部は、前記コンデンサに流れる電流の方向および前記コンデンサにおける電圧の大きさに応じて、前記半導体スイッチを開としてもよい。
【0070】
上記の構成によれば、電流遮断部は、コンデンサに流れる電流の方向に加えて、コンデンサにおける電圧の大きさに応じて半導体スイッチを開とする。コンデンサにおける電圧の大きさも、第1線に流れる電流が事故電流である場合と突入電流である場合とで、互いに異なる挙動を示す。したがって、制御装置は、より高い精度で事故電流に対して半導体スイッチを開とすることができる。
【0071】
また、本発明の態様4に係る制御装置は、態様3において、前記電流遮断部は、前記第1端から前記第1線に電流が流れている状態において前記コンデンサにおける電圧が閾値以下となり、その後に前記コンデンサに流れる電流が0になった状態において前記コンデンサにおける電圧が継続して前記閾値以下である場合に、前記半導体スイッチを開としてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、制御装置は、第1線に事故電流が流れた場合における、コンデンサに流れる電流の方向が示す挙動およびコンデンサにおける電圧が示す挙動に基づいて、事故電流に対して半導体スイッチを開とすることができる。
【0073】
また、本発明の態様5に係る制御プログラムは、態様1の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記電流遮断部としてコンピュータを機能させる。
【0074】
また、本発明の態様6に係る記録媒体は、態様5の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0075】
また、本発明の態様7に係る直流遮断装置は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサと、前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断部とを備える。
【0076】
また、本発明の態様8に係る制御方法は、電源の正極と負荷とをつなぐ第1線と、前記電源の負極と前記負荷とをつなぐ第2線と、前記第1線において前記電源と前記負荷との間に位置する半導体スイッチと、前記第1線における前記半導体スイッチと前記負荷との間に第1端が接続され、前記第2線に第2端が接続されたコンデンサとを備える直流遮断装置における前記半導体スイッチの開閉を制御する制御方法であって、前記コンデンサに流れる電流の方向を検出する電流検出ステップと、前記コンデンサに流れる電流の方向に応じて、前記半導体スイッチを開とする電流遮断ステップと、を含む。
【0077】
態様5~8の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 直流遮断装置
11 第1線
12 第2線
20 半導体スイッチ
30 コンデンサ
31 第1端
32 第2端
40 制御装置
41 電流遮断部
図1
図2
図3
図4
図5