(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016470
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ATP産生促進剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240131BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20240131BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20240131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240131BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240131BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/047
A61K31/045
A61P43/00 105
A61K8/34
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118620
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 友章
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD07
4B018MD08
4B018ME14
4C083AD531
4C083AD621
4C083CC03
4C083EE03
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA08
4C206CA13
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZC01
(57)【要約】
【課題】新規なATP産生促進剤を提供すること。
【解決手段】ルテイン、ゲラニルゲラニオールのいずれか1以上を有効成分とするATP産生促進剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテイン、ゲラニルゲラニオールのいずれか1以上を有効成分として含有するATP産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATP産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは、細胞小器官の一つであり、電子伝達系において酸素を消費してATP(アデノシン三リン酸)を産生している。ATPは、生物が活動するためのエネルギーの貯蔵、放出を担う化合物であり、生体の機能維持に重要な役割を果たしている。また、機能の低下した細胞や老化した細胞は、ATP量が減少することが知られており、ATPの産生促進、また、ATPを産生するミトコンドリアの活性化は、細胞の機能向上、老化の防止・改善等のために重要である。
特許文献1には、酵母エキスを有効分とする筋肉細胞のATP産生促進剤、特許文献2には、エルゴチオネインを有効成分とするATP産生促進剤、特許文献3にはスフィンゴミエリンを有効成分とするミトコンドリア機能向上剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-10947号公報
【特許文献2】特開2003-231626号公報
【特許文献3】特開2011-157328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なATP産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.ルテイン、ゲラニルゲラニオールのいずれか1以上を有効成分として含有するATP産生促進剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の剤により、ATPの産生を促進することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例におけるATP産生量測定の結果を示すグラフ。
【
図2】実施例における細胞増殖量測定の結果を示すグラフ。
【
図3】実施例におけるATP産生量/細胞増殖量の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ルテイン、ゲラニルゲラニオールのいずれか1以上を有効成分として含有するATP産生促進剤に関する。
【0009】
・ルテイン
ルテインはカロテノイドの一種である。ルテインは、ルテイン脂肪酸エステルの形で、オレンジ、桃、パパイヤ、プルーン、マンゴーなどの果実に含まれている。また、多くの花や野菜中にも存在する。特にマリーゴールドの花弁に多く含まれていることがわかっている。ルテインとしては、化合物単独で配合することもでき、ルテインを含むこれらの植物抽出物として配合することもできる。
【0010】
・ゲラニルゲラニオール
ゲラニルゲラニオールは、ジペテルペンアルコールの一種であり、ビタミンA、Eの生合成における中間体であり、また、医薬原料としても用いられている。
【0011】
本発明のATP産生促進剤は、ルテイン、ゲラニルゲラニオールのいずれか1以上を有効成分とするものであり、両者を含有することもできる。また、ルテイン、ゲラニルゲラニオールのいずれか1以上である有効成分そのもの、または他の化合物と混合した組成物として、食品、飲料、サプリメント等の健康食品、医薬品、化粧品等として使用することができる。
食品としては、通常の食品の他、栄養補助食品、機能性食品、健康食品、特定保健用食品等とすることができる。飲料としては、例えば、清涼飲料、果実飲料、乳清飲料、アルコール飲料等に配合することができる。本発明のATP産生促進剤を飲食品や化粧料等に配合する場合、その配合量は、剤形、使用目的を考慮して適宜調整できるが、その配合率は、有効成分として、好ましくは0.0001質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.001質量%以上10質量%以下である。
【0012】
サプリメントや医薬品とする場合、形態としては、例えば、粉末、散剤、顆粒、錠剤、カプセル等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等が挙げられる。この際、担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチレンデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等を用いることができる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の添加剤を適宜添加することもできる。
【実施例0013】
(1)細胞培養
ヒト胎児腎細胞株HEK293細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM(Dulbecco's modified Eagle medium)で37℃、5%CO2下で培養したものを使用した。
【0014】
(2)ATP産生量測定
HEK293細胞を2.5×10
4cells/mLの濃度になるようにDMEM培地で懸濁し、96ウエルホワイトプレート(Greiner)に100μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で培養した。培養24時間後に、5μM FCCP(abcam)及びルテイン(太陽化学株式会社、サンアクティブLT-L112、10μg/mL)あるいはゲラニルゲラニオール(タマ生化学株式会社、ゲラニルゲラニオール-50、10μg/mL)を添加した。なお、FCCP(カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)は、脱共役剤であり、FCCPの存在下では、ミトコンドリアの電子伝達系の反応は進行するが、ATPは合成されなくなる。
さらに24時間後、ATP産生量をCell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)にて測定した。また、有効成分を添加しない以外は同様にしてコントロール、ATP産生亢進作用が認められるとして報告のあるインドール化合物のMaitochonic acid 5(ナミキ商事株式会社、5μM)を添加してポジティブコントロールとした。コントロールの結果を1.0として規格化したATP産生量を
図1に示す。
【0015】
(3)細胞増殖測定
HEK293細胞を2.5×10
4cells/mLの濃度になるようにDMEM培地で懸濁し、96ウエルブラックプレート(Greiner)に100μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で培養した。培養24時間後に、5μM FCCP(abcam)及びルテイン(太陽化学株式会社、サンアクティブLT-L112、10μg/mL)あるいはゲラニルゲラニオール(タマ生化学株式会社、ゲラニルゲラニオール-50、10μg/mL)を添加した。
さらに24時間後、細胞増殖能をCyQUANTTM Proliferation Assay Kit(invitrogen)にて測定した。また、有効成分を添加しない以外は同様にしてコントロール、ATP産生亢進作用が認められるとして報告のあるインドール化合物のMaitochonic acid 5(ナミキ商事株式会社、5μM)を添加してポジティブコントロールとした。コントロールの結果を1.0として規格化した細胞増殖量と、ATP産生量/細胞増殖量を、それぞれ
図2、3に示す。
【0016】
(結果)
図1に示すように、ルテイン、またはゲラニルゲラニオール添加によりATP産生量が増加した。
ATPは、細胞内のミトコンドリアで産生されるため、細胞が増殖してミトコンドリアが増えるとATP産生量も増加する。そのため、細胞増殖能も調査したところ、
図2、3に示すように、ルテイン、ゲラニルゲラニオールを添加しても細胞増殖に影響を及ぼさなかった。このことから、ルテイン、ゲラニルゲラニオールは、細胞増殖に依存しない、ATP産生促進作用を有することが確認された。