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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164715
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】冷凍サイクル状態検知装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
F25B49/02 520C
F25B49/02 570C
F25B49/02 570Z
F25B49/02 520K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080397
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宜之
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰平
(72)【発明者】
【氏名】寺田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】祐川 直純
(72)【発明者】
【氏名】境 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 功
(57)【要約】
【課題】鉄道車両用の冷凍サイクル装置のどこに不具合が発生したか特定できる冷凍サイクル状態検知装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、冷凍サイクル状態検知装置は、圧縮機と、凝縮器と、減圧装置と、蒸発器とを含む冷凍サイクル装置における、前記凝縮器の出口の冷媒温度である第1の温度及び前記蒸発器の出口の冷媒温度である第2の温度を取得する取得部を備える。さらに前記冷凍サイクル状態検知装置は、前記第1の温度及び前記第2の温度に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下の状態を検知する検知部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、凝縮器と、減圧装置と、蒸発器とを含む冷凍サイクル装置における、前記凝縮器の出口の冷媒温度である第1の温度及び前記蒸発器の出口の冷媒温度である第2の温度を取得する取得部と、
前記第1の温度及び前記第2の温度に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下の状態を検知する検知部と、
を備える冷凍サイクル状態検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、
前記圧縮機を第1の回転数で動作させ、前記第1の温度及び前記第2の温度が飽和状態となった際に、前記第1の温度及び前記第2の温度の各々について、第1の上限閾値及び第1の下限閾値と比較する第1の比較を行い、
前記第1の比較の結果に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下のうち、いずれの状態であるかを判別する、
請求項1に記載の冷凍サイクル状態検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記第1の比較によって、
前記第2の温度が前記第1の上限閾値を超えており、かつ前記第1の温度が前記第1の上限閾値を超えていた場合は、冷媒漏れであると判別し、
前記第2の温度が前記第1の下限閾値未満であり、かつ前記第1の温度が前記第1の上限閾値を超えておらず、前記第1の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別し、
前記第2の温度が前記第1の下限閾値未満であり、かつ前記第1の温度が前記第1の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別し、
前記第2の温度が前記第1の上限閾値を超えておらず、前記第1の下限閾値未満でもなく、かつ前記第1の温度が前記第1の上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する、
請求項2に記載の冷凍サイクル状態検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、
前記圧縮機を前記第1の回転数よりも高い回転数である第2の回転数で動作させた際の前記第1の温度及び前記第2の温度に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下のうち、いずれの状態であるかを判別する、
請求項2又は3に記載の冷凍サイクル状態検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記圧縮機を第1の回転数よりも高い回転数である第2の回転数で動作させ、飽和状態となった際の前記第1の温度と、前記圧縮機を前記第1の回転数で動作させ、飽和状態となった際の前記第1の温度との温度差である第1の温度差を算出し、
前記圧縮機を前記第2の回転数で動作させ、飽和状態となった際の前記第2の温度と、前記圧縮機を前記第1の回転数で動作させ、飽和状態となった際の前記第2の温度との温度差である第2の温度差を算出し、
前記第1の温度差及び前記第2の温度差の各々について、第2の上限閾値及び第2の下限閾値と比較する第2の比較を行い、
前記第2の比較の結果に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下のうち、いずれの状態であるかを判別する、
請求項1に記載の冷凍サイクル状態検知装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記第2の比較によって、
前記第2の温度差が前記第2の上限閾値を超えており、かつ前記第1の温度差が前記第2の下限閾値未満である場合は、冷媒漏れであると判別し、
前記第2の温度差が前記第2の下限閾値未満であり、かつ前記第1の温度差が前記第2の上限閾値を超えておらず、前記第2の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別し、
前記第2の温度差が前記第2の下限閾値未満であり、かつ前記第1の温度差が前記第2の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別し、
前記第2の温度差が前記第2の上限閾値を超えておらず、前記第2の下限閾値未満でもなく、かつ前記第1の温度差が前記上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する、
請求項5に記載の冷凍サイクル状態検知装置。
【請求項7】
前記検知部は、
前記圧縮機を前記第1の回転数で動作させ、前記取得部が前記第1の温度及び前記第2の温度を取得した後、
前記第2の回転数で動作させ、前記取得部が前記第1の温度及び前記第2の温度を取得する、
請求項5に記載の冷凍サイクル状態検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用の冷凍サイクル装置では、正常時の冷凍サイクル圧力、外気温、車内温度をパターンとして記録及び設定し、実際に稼働させた冷凍サイクル装置の実測値のパターンが、この記録及び設定したパターンと差がみられた場合には、不具合が発生したと検出する不具合検出方法がある。
【0003】
しかし、上述した不具合検出方法では、鉄道車両用の冷凍サイクル装置のどこに不具合が発生したかは特定できない。このため、不具合が検出された場合、鉄道車両の保守作業員は、鉄道車両用空調装置全体を点検する必要があり、また、不具合の復旧にも時間を要する。さらに、上述した技術は、圧縮機をON/OFF制御する鉄道用車両用の冷凍サイクル装置を対象としており、圧縮機の回転数をインバータ等で可変する鉄道車両用の冷凍サイクル装置には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4958421号公報
【特許文献2】特開2022-38963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本実施形態によれば、これらの問題に鑑みて、鉄道車両用の冷凍サイクル装置のどこに不具合が発生したか特定できる冷凍サイクル状態検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、冷凍サイクル状態検知装置は、圧縮機と、凝縮器と、減圧装置と、蒸発器とを含む冷凍サイクル装置における、前記凝縮器の出口の冷媒温度である第1の温度及び前記蒸発器の出口の冷媒温度である第2の温度を取得する取得部を備える。さらに前記冷凍サイクル状態検知装置は、前記第1の温度及び前記第2の温度に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下の状態を検知する検知部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における冷凍サイクル装置及び鉄道車両の概要図である。
図2】第1実施形態における冷凍サイクルシステムの構成を表すブロック図である。
図3】第1実施形態における冷凍サイクル装置と、モリエル線図との関係図である。
図4】第1実施形態における冷凍サイクル装置の不具合の温度変化を表す図である。
図5】第1実施形態における冷凍サイクル状態検知装置のフローチャートの例である。
図6】第2実施形態における冷凍サイクルシステムの構成を表すブロック図である。
図7】第3実施形態における冷凍サイクル状態検知装置の不具合判定方法を説明するグラフである。
図8】第3実施形態における冷凍サイクル装置の不具合の温度変化を表す図である。
図9】第3実施形態における冷凍サイクル状態検知装置のフローチャートの例である。
図10】第4実施形態における冷凍サイクル状態検知装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における冷凍サイクル装置及び鉄道車両の概要図である。
【0010】
図1は、互いに垂直なX軸、Y軸、及びZ軸を示している。X方向は、鉄道車両100用の冷凍サイクル装置10が搭載された鉄道車両100の鉄道レール方向(鉄道車両100の進行方向)に相当する。Y方向は、鉄道車両100の幅方向に相当する。Z方向は、鉄道車両100の縦方向(垂直方向)に相当する。また、+Z方向は上方向に相当し、-Z方向は下方向に相当している。なお、-Z方向は、厳密に重力方向に一致していてもよいし、厳密には重力方向に一致していなくてもよい。
【0011】
冷凍サイクル装置10は、例えば、図1に示すように鉄道車両100の屋根上に搭載される。冷凍サイクル装置10は、ダクト200を通じて客室300に調和空気を供給する。図1では、1台の鉄道車両100につき、1台の冷凍サイクル装置10が搭載された例を示しているが、冷凍サイクル装置10の搭載数はこれに限定されない。例えば、1台の鉄道車両100につき、複数の冷凍サイクル装置10が備えられていてもよい。冷凍サイクル装置10の詳細は後述する。
【0012】
図2は、第1実施形態における冷凍サイクルシステム1の構成を表すブロック図である。
【0013】
冷凍サイクルシステム1は、冷凍サイクル装置10及び冷凍サイクル状態検知装置20を備える。冷凍サイクルシステム1は、冷凍サイクル状態検知装置20によって、冷凍サイクル装置10内で計測した温度データに基づいて、冷凍サイクル装置10内に発生する不具合を検知し、不具合の種類を判別する。冷凍サイクル装置10に発生する不具合の例として、凝縮器12の熱交換器に塵埃が付着し、凝縮器送風機(不図示)から供給される空気が減少し、熱交換効率が悪化する凝縮器の風量低下がある。また、不具合の別の例として、蒸発器14の熱交換器に塵埃が付着し、蒸発器送風機(不図示)から供給される空気が減少し、熱交換率が悪化する蒸発器の風量低下がある。また、不具合のさらに別の例として、減圧装置13の配管内部が腐食等によって狭くなる減圧装置の配管つまり、または冷凍サイクル装置10の各接合部分等から冷媒が漏れる冷媒漏れがある。冷凍サイクル状態検知装置20は、これら4つの不具合について検知及び判定を行う。以下、各装置の機能ブロックについて説明する。
【0014】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11と、凝縮器12と、減圧装置13と、蒸発器14と、測定器Saと、測定器Sbとを備える。圧縮機11と、凝縮器12との間は冷媒配管で接続される。また、凝縮器12と、減圧装置13との間、減圧装置13と、蒸発器14との間及び蒸発器14と、圧縮機11との間も同様に冷媒配管によって接続される。これらは冷凍サイクル装置10における主要な構成部品であり、これ以外にも図示しない凝縮器送風機、蒸発器送風機、ドライヤ、アキュムレータまたは弁等も冷凍サイクル装置10に含まれる。
【0015】
測定器Sa及び測定器Sbは、例えば温度センサである。本実施形態では、測定器Saは、蒸発器14と、圧縮機11との間に備えられ、蒸発器14の出口温度を計測する。測定器Sbは、凝縮器12と、減圧装置13との間に備えられ、凝縮器12の出口温度を計測する。冷媒配管が分岐している場合、測定器Sa及び測定器Sbは、冷媒配管が集合している箇所(気液分離装置や集合管)の冷媒温度を計測する。これら測定器Sa及び測定器Sbによって計測された測定データは、所定のタイミングで無線回線または有線回線によって、冷凍サイクル状態検知装置20に送信される。
【0016】
圧縮機11は、例えば、モータの回転数を変更可能なインバータ式の圧縮機である。圧縮機11は、ガス冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧の状態にして吐出する。圧縮機11が1回転で吐出する排除容積は、圧縮機ごとに決まっている。このため、回転周波数によって単位時間あたりに排出される容積が算出できる。また、本実施形態では、圧縮機11のモータは、通常運転時の回転数で動作する。以下、通常運転時の動作における圧縮機11のモータの回転数を第1の回転数と呼ぶ。なお、圧縮機11は、ON/OFF制御の圧縮機11でもよく、他の駆動方式でもよい。
【0017】
凝縮器12は、例えば、伝熱管と、多数のフィンとにより構成される熱交換器であり、圧縮機11と、減圧装置13とに冷媒配管により接続される。鉄道車両100用ではプレートフィン型の熱交換器が一般に用いられる。この凝縮器12は、配管内の冷媒と装置外の空気との熱交換を行う。これにより、凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒と、空気または水などの熱媒体とを熱交換させて、高温高圧の冷媒を凝縮液化させる。
【0018】
減圧装置13は、例えば、キャピラリーチューブで構成され、凝縮器12と蒸発器14とに、冷媒配管により接続される。この減圧装置13は、凝縮器12によって凝縮された冷媒を減圧して膨張させる。より詳細には、減圧装置13は、凝縮器12によって凝縮液化された冷媒配管内の冷媒を蒸発しやすいように減圧し、二相状態にする。特に車両用ではキャピラリーチューブが用いられることが多いが、これに限定されない。例えば、減圧弁や膨張弁などを用いてもよい。
【0019】
蒸発器14は、例えば、クロスフィン式の熱交換器であり、減圧装置13と圧縮機11とに冷媒配管により接続される。この蒸発器14は、冷媒配管内の冷媒と、装置外の空気との熱交換を行い、配管内の冷媒を蒸発させる。冷房運転の場合、冷却された空気が車両内に供給され、車両内の空気を冷却する。なお、冷媒には特に限定はなく、非共沸混合冷媒や単一冷媒などを適宜選択してよい。
【0020】
冷凍サイクル状態検知装置20は、冷凍サイクル装置10の状態を検知する。例えば、冷凍サイクル状態検知装置20は、冷凍サイクル装置10の不具合の発生を検知し、その発生箇所を特定する装置である。冷凍サイクル状態検知装置20は、例えば、遠隔の運転指令所に設置され、冷凍サイクル装置10と無線通信を行う。また、冷凍サイクル状態検知装置20は、運転台に設置されてもよく、無線又は有線通信を行う。冷凍サイクル状態検知装置20は、取得部21、記憶部22及び検知部23を備える。また、冷凍サイクル状態検知装置20は、例えばPC(Personal Computer)に冷凍サイクル状態検知装置20用のプログラムをインストールすることで実現できる。冷凍サイクル状態検知装置20内のCPU(Central Processing Unit)が、冷凍サイクル状態検知装置20のプログラムを実行することにより、取得部21、記憶部22及び検知部23の機能が実現される。また、記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置上に構築される。
【0021】
取得部21は、測定器Saと、測定器Sbとに接続され、無線又は有線通信によって蒸発器14の出口温度及び凝縮器12の出口温度を取得する。取得部21は、取得した蒸発器14の出口温度及び凝縮器12の出口温度を記憶部22に格納してもよい。以下、説明のため、凝縮器12の出口温度を第1の温度と呼び、蒸発器14の出口温度を第2の温度と呼ぶ。
【0022】
記憶部22は、第1の温度及び第2の温度を保持する。また、記憶部22は、後述する閾値を保持する。
【0023】
検知部23は、取得部21が取得した第1の温度及び第2の温度に基づいて、冷凍サイクル装置10で発生する不具合を検知及び判定する。検知部23は、第1の温度及び第2の温度について、それぞれ上限閾値及び下限閾値と比較し、比較の結果から、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下の不具合を検知する。また検知部23は、上記不具合を検知した場合、いずれの不具合が発生したのかを判別する。
【0024】
図3は、第1実施形態における冷凍サイクル装置10と、モリエル線図との関係図である。
【0025】
図3Aは、冷凍サイクル装置10の模式図を表しており、図3Bは、冷凍サイクル装置10の(1)~(4)の冷凍サイクルに対応するモリエル線図を表している。
【0026】
図3Aの(1)~(4)における圧力及び比エンタルピーの値は、図3Bの(1)~(4)の値に対応する。(1)~(2)は、等圧線図を表しており、凝縮器12が高温高圧の冷媒ガスから熱を奪い、外部に熱を放出させ、冷媒を凝縮させる。(2)~(3)は、等温線図を表しており、減圧装置13が高圧の冷媒の圧力を下げる。(3)~(4)は、等圧線図を表しており、蒸発器14が客室300の空気から熱を奪い、冷媒を蒸発させる。(4)~(1)は、圧縮機11が蒸発した冷媒ガスを圧縮し、高温高圧の冷媒ガスにする。本実施形態では、冷凍サイクルシステム1は、(2)及び(4)の位置で温度を計測する。
【0027】
図4は、第1実施形態における冷凍サイクル装置10の不具合の温度変化を表す図である。
【0028】
図4中の各プロットデータは、冷凍サイクル装置10で各不具合が発生した際の温度変化を時系列で表している。横軸は、第1の温度を示しており、縦軸は、第2の温度を示している。白丸のマーカで示すプロットデータは、冷媒漏れ発生時の時系列温度変化を表しており、黒丸のマーカで示すプロットデータは、蒸発器の風量低下発生時の時系列温度変化を表している。また、斜線が施された丸のマーカで示すプロットデータは、凝縮器の風量低下発生時の時系列温度変化を示しており、ドットが施された丸のマーカで示すプロットデータは、減圧装置の配管つまり発生時の時系列温度変化を示している。これらのプロットデータは、各不具合が発生した際、所定時間ごとに計測した第1及び第2の温度を表しており、いずれのプロットデータも矢印方向に向かうほど、時系列として新しいデータであることを示している。また、マーカの大きさは、圧縮機11のモータの回転数の高低を表しており、回転数が低い場合よりも、高い場合の方が不具合発生時の第1及び第2の温度の温度推移の変化が表れやすいことを示している。
【0029】
例えば、冷媒漏れは、時間を追うごとに冷媒の漏れ量が増えるに従い、第1の温度と、第2の温度が上昇していく。また、蒸発器の風量低下は、風量が少なくなっても、第1の温度は変化しないが、第2の温度は低下していく。同様に、凝縮器の風量低下は、風量が少なくなっても、第2の温度に変化はでにくいが、第1の温度は上昇していく。さらに、減圧装置の配管つまりの際は、第1の温度は上昇し、第2の温度は低下していく。このように、冷凍サイクル装置10において、上記不具合が発生した場合、第1及び第2の温度の温度推移は、不具合の種類によって傾向が異なる。
【0030】
そのため、検知部23は、これら第1及び第2の温度の温度推移から、不具合を判別することができる。また、上述の通り、圧縮機11のモータの回転数が高い場合、不具合発生時の第1及び第2の温度の温度推移の変化が表れやすい。そのため、検知部23による不具合判別は、圧縮機11のモータの回転数が一定回転数に達した後に不具合判別を開始するのが望ましい。
【0031】
図4に示す通り、検知部23が各不具合を検知及び判別するために、第1の温度についての上下限閾値及び第2の温度についての上下限閾値を設ける。この閾値は、例えば、過去の第1及び第2の温度に基づいて定めてもよく、例えば、過去の不具合発生時の値を用いて定めてもよい。また、閾値は、例えば記憶部22に格納しておき、冷凍サイクル状態検知装置20のプログラムの実行時に、CPUがメモリにロードして使用することが考えられる。
【0032】
検知部23は、第1の温度及び第2の温度の各々が、それぞれ上限閾値を超えているか否か、または下限閾値未満であるか否かを比較する。検知部23は、第1の温度及び第2の温度と、上下限閾値との比較の結果から不具合の発生を検知する。また、検知部23は、不具合の検知後、4つの不具合のうち、いずれの不具合が発生したのかを判別する。第1の温度及び第2の温度と比較する上下限閾値を、それぞれ、第1の上限閾値及び第1の上下限閾値と呼ぶ。
【0033】
検知部23は、第2の温度が第1の上限閾値を超えており、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えていた場合は、冷媒漏れであると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の下限閾値未満であり、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えておらず、第1の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の下限閾値未満であり、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の上限閾値を超えておらず、第1の下限閾値未満でもなく、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する。
【0034】
第1の温度及び第2の温度の各々について、第1の上限閾値及び第1の下限閾値と比較することを第1の比較と呼ぶ。第1の比較は、冷媒の温度が飽和状態になった際の第1の温度及び第2の温度を用いて行うのが望ましい。また、検知部23は、所定時間ごとに、第1の温度及び第2の温度の各々が、それぞれ上限閾値を超えているか否か、または下限閾値未満であるか否かを比較してもよい。
【0035】
図5は、第1実施形態における冷凍サイクル状態検知装置20のフローチャートの例である。
【0036】
冷凍サイクル状態検知装置20内のCPUが、冷凍サイクル状態検知装置20のプログラムを実行することにより、取得部21、記憶部22及び検知部23の機能が実現され、以下のステップS1~S5のフローチャートが実行される。また、第1の上下限閾値は、冷凍サイクル状態検知装置20のプログラム実行時に、あらかじめ、記憶部22からメモリにロードされる。
【0037】
ステップS1では、検知部23は、圧縮機11を第1の回転数で動作させる。例えば、冷凍サイクル状態検知装置20が運転指令所に設置される場合、検知部23は、無線通信によって、圧縮機11を動作させるための信号を送信する。また、冷凍サイクル状態検知装置20が運転台に設置される場合、無線通信または有線通信によって、圧縮機11を動作させるための信号を送信する。
【0038】
ステップS2では、取得部21は、測定器Sa及びSbから、第1及び第2の温度を取得する。例えば、冷凍サイクル状態検知装置20が運転指令所に設置される場合、取得部21は、無線通信によって、第1及び第2の温度を取得する。また、冷凍サイクル状態検知装置20が運転台に設置される場合、取得部21は、無線通信または有線通信によって、第1及び第2の温度を取得する。
【0039】
ステップS3では、検知部23は、第1の温度と、第1の上下限閾値とを比較する。例えば、まず、検知部23は、第1の温度が、第1の上限閾値を超えているかを比較する。次に、検知部23は、第1の温度が、第1の下限閾値未満であるかを比較する。検知部23は、第1の温度が、第1の上限閾値を超えていた場合、第1の温度と、第1の下限閾値との比較を行わなくてもよい。第1の温度と、第1の上下限閾値との比較の順序は逆であってもよい。
【0040】
ステップS4では、検知部23は、第2の温度と、第1の上下限閾値とを比較する。例えば、まず、検知部23は、第2の温度が、第1の上限閾値を超えているかを比較する。次に、検知部23は、第2の温度が、第1の下限閾値未満であるかを比較する。検知部23は、第2の温度が、第1の上限閾値を超えていた場合、第2の温度と、第1の下限閾値との比較を行わなくてもよい。第2の温度と、第1の上下限閾値との比較の順序は逆であってもよい。
【0041】
ステップS5では、検知部23は、ステップS3~S4で比較した結果から、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下のうち、いずれの不具合が発生したのかを判別する。具体的には、検知部23は、第2の温度が第1の上限閾値を超えており、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えていた場合は、冷媒漏れであると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の下限閾値未満であり、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えておらず、第1の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の下限閾値未満であり、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の上限閾値を超えておらず、第1の下限閾値未満でもなく、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する。
【0042】
また、冷凍サイクル状態検知装置20における不具合判定は、例えば、冷凍サイクル装置10の起動時に試験時間を設けて実施し、鉄道車両100の走行前に試験を完了させることが考えられる。
【0043】
本実施形態によれば、冷凍サイクル状態検知装置20は、第1の温度及び第2の温度に基づいて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下の発生を検知することができる。また、冷凍サイクル状態検知装置20は、第1及び第2の温度の各々と、上下限閾値を比較することにより、いずれの不具合が発生したのかを判別することができ、冷凍サイクル装置10のどこに不具合があるかを特定することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、冷凍サイクル状態検知装置20は、2つの測定器Sa及びSbのみを用いて、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下のうち、いずれの不具合が発生したのかを判別することができる。つまり、本実施形態の冷凍サイクル状態検知装置20は、少ない測定器の数で複数の不具合を判別することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、冷凍サイクル装置10の不具合判別により、故障個所が特定できるので、鉄道車両100の保守作業員は、冷凍サイクル装置10の不具合発生時に装置全体を点検する必要がなく、点検、修理及び部品交換に要する時間やコストを短縮することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態における冷凍サイクルシステム1の構成を表すブロック図である。
【0047】
本実施形態では、冷凍サイクル装置10は、インバータ式の圧縮機11’を備える。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
本実施形態では第1実施形態とは異なり、圧縮機11’は、インバータ式であり、通常の冷凍サイクル用のモータの回転数に加え、この回転数よりも高い回転数によって動作する故障検知専用モードを有する。上述した4つの不具合は、モータの回転数を上げることで、第1の温度及び第2の温度の温度推移に変化が生じる。以下、故障検知専用モードにおける圧縮機11’のモータの回転数を第2の回転数と呼ぶ。
【0049】
この故障検知専用モードの回転数によって常時モータを動作させた場合、圧縮機11’は劣化が早まる可能性がある。そのため、通常の冷凍サイクル装置10の運転では、圧縮機11’は、通常のモータの回転数によって動作するのが望ましい。そのため、例えば、冷凍サイクル装置10の起動時に試験時間を設ける等によって、試験時間の間のみ圧縮機11’を第2の回転数で回転させる方法が考えられる。
【0050】
本実施形態では、検知部23は、4つの不具合の検知及び判別を行うため、圧縮機11’を第2の回転数で動作させた際の第1の温度及び第2の温度を用いる。検知部23は、第1の温度及び第2の温度の各々が、それぞれ上限閾値を超えているか否か、または下限閾値未満であるか否かを比較し不具合の判別を行う。
【0051】
検知部23は、第2の温度が第1の上限閾値を超えており、かつ第1の温度が第1の第1の上限閾値を超えていた場合は、冷媒漏れであると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の下限閾値未満であり、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えておらず、第1の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の下限閾値未満であり、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別する。また、検知部23は、第2の温度が第1の上限閾値を超えておらず、第1の下限閾値未満でもなく、かつ第1の温度が第1の上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する。
【0052】
これら不具合は、冷媒の温度が飽和状態になった際の第1の温度及び第2の温度を用いて判別するのが望ましい。また、検知部23は、所定時間ごとに、第1の温度及び第2の温度の各々が、それぞれ上限閾値を超えているか否か、または下限閾値未満であるか否かを比較してもよい。
【0053】
また、検知部23は、圧縮機11’を第1の回転数で回転させて不具合判別を行った後、第2の回転数で回転させ、不具合判定を行ってもよい。例えば、検知部23は、圧縮機11’を第1の回転数で回転させて不具合判定を行い、その判定結果が判別不能であった場合に、第2の回転数で回転させて、改めて不具合判定を実施することが考えられる。
【0054】
本実施形態によれば、検知部23は、インバータ式の圧縮機11’を第1の回転数よりも高い回転数である第2の回転数で回転させ、不具合の検知及び判定を行う。これにより、冷凍サイクル状態検知装置20は、第1の回転数とは異なる回転数によって、不具合の発生を検知及び判定することができ、より精度の高い不具合判別を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、検知部23は、故障検知専用モードの場合のみ、圧縮機11’を通常の回転数よりも高い回転数である第2の回転数で回転させる。これにより、検知部23は、圧縮機11’が高回転することによる負担を軽減し、劣化を抑制することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態における冷凍サイクル状態検知装置20の不具合判定方法を説明するグラフである。
【0057】
本実施形態では、冷凍サイクルシステム1の構成は、図6と同様であるため説明を省略する。図7のグラフでは、横軸は時間を表し、縦軸は冷媒温度を表している。
【0058】
本実施形態では、取得部21は、不具合検査Aとして、圧縮機11’が第1の回転数で回転して、冷媒温度が飽和した際の第1及び第2の温度を取得する。また、取得部21は、不具合検査Bとして、圧縮機11’が第2の回転数で回転して、冷媒温度が飽和した際の第1及び第2の温度を取得する。
【0059】
図7では、取得部21は、第1の回転数において十分に時間が経過し、冷媒温度が飽和状態となった際に、不具合検査Aを行う様子を表している。また、同様に、取得部21は、第2の回転数において十分に時間が経過し、冷媒温度が飽和状態となった際に、不具合検査Bを行う様子を表している。また、圧縮機11’は、第1の回転数よりも第2の回転数の方が高いため、不具合検査Aよりも不具合検査Bで取得する冷媒温度の方が高いことを表している。
【0060】
不具合検査の順序は、不具合検査Aを行った後に、不具合検査Bを行うのが望ましい。つまり、取得部21は、検知部23が圧縮機11’を第1の回転数で動作させ飽和状態となった際の第1の温度及び第2の温度を取得した後、検知部23が圧縮機11’を第2の回転数で動作させ、飽和状態となった際の第1の温度及び前記第2の温度を取得する。冷凍サイクル状態検知装置20は、第2の回転数で先に不具合検査Bを実施し、その後に第1の回転数で不具合検査Aを実施すると、冷媒温度を下げる時間が必要となり、不具合の検査時間が長くなってしまう。冷凍サイクル状態検知装置20は、不具合検査Aから検査を始めることで、不具合の検査時間を短くすることができる。
【0061】
検知部23は、第2の回転数において飽和状態となった際の第1の温度と、第1の回転数において飽和状態となった際の第1の温度との温度差である第1の温度差を利用して、不具合の検知及び判定を行う。また、検知部23は、第2の回転数において飽和状態となった際の第2の温度と、第1の回転数において飽和状態となった際の第2の温度との温度差である第2の温度差を利用して、不具合の検知及び判定を行う。
【0062】
検知部23は、第1の温度差及び第2の温度差の各々が、上限閾値を超えているか否か、または下限閾値未満であるか否かを比較する。第1の温度差及び第2の温度差と比較する上下限閾値を、それぞれ第2の上限閾値及び第2の上限閾値と呼ぶ。第1の温度差及び第2の温度差の各々について、第2の上限閾値及び第2の下限閾値と比較することを第2の比較と呼ぶ。
【0063】
検知部23は、第2の温度差が第2の上限閾値を超えており、かつ第1の温度差が第2の下限閾値未満である場合は、冷媒漏れであると判別する。また、検知部23は、第2の温度差が第2の下限閾値未満であり、かつ第1の温度差が第2上限閾値を超えておらず、第2の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別する。また、検知部23は、第2の温度差が第2の下限閾値未満であり、かつ第1の温度差が第2の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別する。また、検知部23は、第2の温度差が第2の上限閾値を超えておらず、第2の下限閾値未満でもなく、かつ第1の温度差が第2の上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する。
【0064】
図8は、第3実施形態における冷凍サイクル装置10の不具合の温度変化を表す図である。
【0065】
図8中の各プロットデータは、冷凍サイクル装置10で各不具合が発生した際の温度変化を時系列で表している。横軸は、第1の温度差を示しており、縦軸は、第2の温度差を示している。
【0066】
図8に示す通り、冷媒漏れの温度推移は、特定の回転数によって計測した第1及び第2の温度をプロットしたものと、第1及び第2の温度差をプロットしたものでは、傾向が異なっている。例えば、冷凍サイクル装置10のロバスト性によって、冷媒漏れと凝縮器の風量低下との判別が困難な場合でも、検知部23は、圧縮機11’の回転数を変化させることで、不具合の種別を判別することができる。検知部23は、第1の比較を行った後、不具合の種別が判別できなかった場合、第2の比較を行うことで、さらに不具合の判別の精度を向上させることができる。
【0067】
図9は、第3実施形態における冷凍サイクル状態検知装置20のフローチャートの例である。
【0068】
冷凍サイクル状態検知装置20内のCPUが、冷凍サイクル状態検知装置20のプログラムを実行することにより、取得部21、記憶部22及び検知部23の機能が実現され、以下のステップS21~S28のフローチャートが実行される。また、第2の上下限閾値は、冷凍サイクル状態検知装置20のプログラム実行時に、あらかじめ、記憶部22からメモリにロードされる。
【0069】
ステップS21では、検知部23は、第1の回転数で圧縮機11’を動作させる。例えば、冷凍サイクル状態検知装置20が運転指令所に設置される場合、検知部23は、無線通信によって、圧縮機11’を動作させるための信号を送信する。また、冷凍サイクル状態検知装置20が運転台に設置される場合、無線通信または有線通信によって、圧縮機11’を動作させるための信号を送信する。
【0070】
ステップS22では、冷媒温度が飽和状態となった際に、取得部21は、測定器Sa及びSbから、第1及び第2の温度を取得する。例えば、冷凍サイクル状態検知装置20が運転指令所に設置される場合、取得部21は、無線通信によって、第1及び第2の温度を取得する。また、冷凍サイクル状態検知装置20が運転台に設置される場合、取得部21は、無線通信または有線通信によって、第1及び第2の温度を取得する。
【0071】
ステップS23では、検知部23は、第2の回転数で圧縮機11’を動作させる。ステップS21と同様に、検知部23は、冷凍サイクル状態検知装置20の設置場所に応じた通信方法によって、圧縮機11’を動作させるための信号を送信する。
【0072】
ステップS24では、取得部21は、冷媒温度が飽和状態となった際に、再び測定器Sa及びSbから、第1及び第2の温度を取得する。ステップS22と同様に、取得部21は、冷凍サイクル状態検知装置20の設置場所に応じた通信方法によって、第1及び第2の温度を取得する。
【0073】
ステップS25では、検知部23は、第2の回転数において飽和状態となった際の第1の温度と、第1の回転数において飽和状態となった際の第1の温度との温度差である第1の温度差を算出する。また、検知部23は、第2の回転数において飽和状態となった際の第2の温度と、第2の回転数において飽和状態となった際の第1の温度との温度差である第2の温度差を算出する。
【0074】
ステップS26では、検知部23は、第1の温度差と、第2の上下限閾値とを比較する。例えば、まず、検知部23は、第1の温度差が、第2の上限閾値を超えているかを比較する。次に、検知部23は、第1の温度差が、第2の下限閾値未満であるかを比較する。検知部23は、第1の温度差が、第2の上限閾値を超えていた場合、第1の温度差と、第2の下限閾値との比較を行わなくてもよい。第1の温度と、第1の上下限閾値との比較の順序は逆であってもよい。
【0075】
ステップS27では、検知部23は、第2の温度差と、第2の上下限閾値とを比較する。例えば、まず、検知部23は、第2の温度差が、第2の上限閾値を超えているかを比較する。次に、検知部23は、第2の温度差が、第2の下限閾値未満であるかを比較する。検知部23は、第2の温度差が、第2の上限閾値を超えていた場合、第2の温度差と、第2の下限閾値との比較を行わなくてもよい。第2の温度と、第2の上下限閾値との比較の順序は逆であってもよい。
【0076】
ステップS28では、検知部23は、ステップS26~S27で比較した結果から、検知部23は、ステップS3~S4の比較の結果によって、冷媒漏れ、減圧装置の配管つまり、蒸発器の風量低下及び凝縮器の風量低下のうち、いずれの不具合が発生したのかを判別する。具体的には、検知部23は、第2の温度差が第2の下限閾値未満であり、かつ第1の温度差が第2上限閾値を超えておらず、第2の下限閾値未満でもない場合は、蒸発器の風量低下であると判別する。また、検知部23は、第2の温度差が第2の下限閾値未満であり、かつ第1の温度差が第2の上限閾値を超えている場合は、減圧装置の配管つまりであると判別する。また、検知部23は、第2の温度差が第2の上限閾値を超えておらず、第2の下限閾値未満でもなく、かつ第1の温度差が第2の上限閾値を超えていた場合は、凝縮器の風量低下であると判別する。
【0077】
本実施形態によれば、検知部23は、第1の温度差及び第2の温度差を用いて不具合判別を実施する。特定の圧縮機11’の回転数における第1の温度及び第2の温度の冷媒温度の推移が同じ傾向を示す不具合があった場合、これらの温度差を利用することで冷媒温度の推移傾向が変わるため、検知部23は、いずれの不具合が発生したのかを判別しやすくなる。
【0078】
また、本実施形態によれば、冷凍サイクル状態検知装置20は、不具合検査Aを行った後に、不具合検査Bを行うことで、不具合の検査時間を短くすることができる。
【0079】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態における冷凍サイクル状態検知装置20のハードウェア構成図である。
【0080】
図10の冷凍サイクル状態検知装置20は、CPU等のプロセッサ52と、RAM等の主記憶装置53と、HDD等の補助記憶装置54と、LAN(Local Area Network)ボード等のネットワークインタフェース55と、メモリスロットやメモリポート等のデバイスインタフェース56、と、これらの機器を互いに接続するバス57とを備えている。冷凍サイクル状態検知装置20は例えば、PC等のコンピュータであり、キーボードやマウス等の入力装置や、LCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の出力装置を備えている。
【0081】
本実施形態においては、冷凍サイクル状態検知装置20の情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが、補助記憶装置54内にインストールされている。冷凍サイクル状態検知装置20は、このプログラムを主記憶装置53にロードして、プロセッサ52により実行する。これにより、図2に示す取得部21、記憶部22及び検知部23の機能を冷凍サイクル状態検知装置20内で実現し、第1~3実施形態で説明した不具合判別が可能となる。なお、この情報処理により生成されたデータは、主記憶装置53に一時的に保持されるか、補助記憶装置54内に格納され保存される。
【0082】
また、記憶部22は、補助記憶装置54上に構築される。第1の閾値または第2の閾値は、補助記憶装置54内に格納されている。第1の閾値または第2の閾値は、このプログラムの実行時に主記憶装置53にロードされる。
【0083】
また、冷凍サイクル状態検知装置20と、冷凍サイクル装置10は、ネットワークインタフェース55を介して、無線回線または有線回線等によって接続される。冷凍サイクル状態検知装置20は、ネットワークインタフェース55を介して、冷凍サイクル装置10に設置された測定器Sa及び測定器Sbから、第1の温度または第2の温度を取得する。
【0084】
また、不具合判定の結果は、出力装置に出力されてもよい。文字情報等によって、不具合の内容を出力装置に出力することで、保守作業員に不具合の発生を知らせることができる。
【0085】
冷凍サイクル状態検知装置20用のプログラムは例えば、このプログラムを記録した外部装置58をデバイスインタフェース56に装着し、このプログラムを外部装置58から補助記憶装置54に格納することでインストール可能である。外部装置58の例は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体や、このような記録媒体を内蔵する記録装置である。記録媒体の例はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD-R(Compact Disk Recordable)、フレキシブルディスク、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD-R (Digital Versatile Disk Recordable)であり、記録装置の例はHDDである。また、このプログラムは例えば、このプログラムをネットワークインタフェース55を介してダウンロードすることでインストール可能である。
【0086】
本実施形態によれば、第1~3実施形態における冷凍サイクル状態検知装置20の機能をソフトウェアにより実現することが可能となる。
【0087】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な冷凍サイクル状態検知装置20は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した冷凍サイクル状態検知装置20の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0088】
1:冷凍サイクルシステム、10:冷凍サイクル装置、11:圧縮機、
11’:圧縮機、12:凝縮器、13:減圧装置、14:蒸発器、
20:冷凍サイクル状態検知装置、21:取得部、22:記憶部、
23:検知部、52:プロセッサ、53:主記憶装置、54:補助記憶装置、
55:ネットワークインタフェース、56:デバイスインタフェース、
57:バス、58:外部装置、100:鉄道車両、200:ダクト
300:客室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10