(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164719
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】応答時間評価方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G01M17/007 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080401
(22)【出願日】2023-05-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利道
(57)【要約】
【課題】元の評価信号に含まれるノイズの大きさに応じた処理を施すことにより、精度良く評価信号の応答時間を評価することができる応答時間評価方法を提供すること。
【解決手段】応答時間評価方法は、ステップ入力信号を制御対象に入力したときに制御対象から出力される評価信号の時系列データx(i)を取得するステップと、ステップ入力信号の定常区間内に定められた長さNのノイズ標本区間にわたる時系列データx(i)の不偏分散σ
n
2を算出するステップと、離散時刻iを中心としかつ長さNPの平滑化区間にわたる時系列データx(i)の標本分散及び移動平均の時系列データσ
np
2(i),x
ma(i)を算出するステップと、時系列データσ
np
2(i),x
ma(i)に基づいて平滑化信号の時系列データy(i)を算出するステップと、時系列データy(i)に基づいて評価信号の応答時間を算出するステップと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象から出力される評価信号の応答時間評価方法であって、
(A)ステップ状に変化するステップ入力信号を前記制御対象に入力したときに前記制御対象から出力される前記評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表すパラメータとする)を取得するステップと、
(B)前記ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる前記時系列データx(i)の分散σ
n
2を算出するステップと、
(C)離散時刻iを中心としかつ前記ノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる前記時系列データx(i)の分散の時系列データσ
np
2(i)及び移動平均の時系列データx
ma(i)と、下記式(1)によって定義される平滑化信号の時系列データy(i)と、を算出するステップと、
(D)前記時系列データy(i)に基づいて前記評価信号の応答時間を算出するステップと、を備えることを特徴とする応答時間評価方法。
【数1】
【請求項2】
前記ステップ(D)では、前記ステップ入力信号の立ち上がり時刻から、前記時系列データy(i)が前記ステップ入力信号に基づいて定められた閾値を超えた時刻までの間の時間を前記応答時間として算出することを特徴とする請求項1に記載の応答時間評価方法。
【請求項3】
前記定常区間は、前記ステップ入力信号がステップ状に変化する前又は後の区間であることを特徴とする請求項1に記載の応答時間評価方法。
【請求項4】
前記制御対象は、前記入力信号に応じて回転する回転体を備えることを特徴とする請求項1に記載の応答時間評価方法。
【請求項5】
前記ステップ(C)では、前記時系列データσnp
2(i)の前記定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、前記分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の応答時間評価方法。
【請求項6】
前記ステップ(C)では、前記時系列データσnp
2(i)の前記定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、前記分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まり、かつ前記定常区間内における前記時系列データy(i)が前記ステップ入力信号に応じた指令値を含むように定められた信号設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の応答時間評価方法。
【請求項7】
ダイナモメータと、
当該ダイナモメータへ入力信号に応じた電力を供給するインバータと、
前記ダイナモメータの速度又はトルクに応じた評価信号を出力する評価信号出力部と、を備えるダイナモメータシステムにおける前記評価信号の応答時間評価方法であって、
(A)ステップ状に変化するステップ入力信号を前記インバータに入力したときに前記センサから出力される前記評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表すパラメータとする)を取得するステップと、
(B)前記ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる前記時系列データx(i)の分散σ
n
2を算出するステップと、
(C)離散時刻iを中心としかつ前記ノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる前記時系列データx(i)の分散の時系列データσ
np
2(i)及び移動平均の時系列データx
ma(i)と、下記式(2)によって定義される平滑化信号の時系列データy(i)と、を算出するステップと、
(D)前記時系列データy(i)に基づいて前記評価信号の応答時間を算出するステップと、を備えることを特徴とする応答時間評価方法。
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応答時間評価方法に関する。より詳しくは、制御対象又はダイナモメータシステムから出力される評価信号の応答時間を評価する応答時間評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電力消費率、燃料消費率、及び排気浄化性能等を測定、評価する試験では、シャシダイナモメータシステムが用いられる。シャシダイナモメータシステムは、試験対象となる車両の車輪が載置されるローラとこのローラに連結されたダイナモメータとを備え、ローラ上で走行する車両に対してころがり抵抗や慣性抵抗等の実走行時に発生する走行抵抗をダイナモメータ及びローラを用いて与えることにより、実走行条件に近い条件を再現する。
【0003】
またこのようなシャシダイナモメータシステムを用いた試験では、試験による測定結果や評価結果を保証するため、ダイナモメータの応答時間が適切であったかどうかも評価する必要がある。また応答時間は、ステップ状に変化する入力信号を制御対象に対して入力したときに、制御対象から出力される所定の評価信号の変化を測定することによって算出する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また多くの場合、センサから出力される評価信号にはノイズが含まれているため、特許文献1に記載の技術では、評価信号の時系列データに対しメディアンフィルタ処理を施すことにより、評価信号の立ち上がりに遅れを生じさせないようにしながら元の評価信号に含まれているノイズを除去している。より具体的には、特許文献1に記載の技術では、メディアンフィルタ処理を経た信号が所定の上限と下限との間の範囲内に収まるように、メディアンフィルタの時間幅を最適化している。
【0006】
このため特許文献1に記載の技術によれば、評価信号のS/N比が大きい場合であれば、精度良く評価信号の応答時間を算出することができる。しかしながらS/N比が小さくなると、メディアンフィルタ処理によって過剰に平滑化してしまい、精度良く応答時間を算出することができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、元の評価信号に含まれるノイズの大きさに応じた処理を施すことにより、精度良く評価信号の応答時間を評価することができる応答時間評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る応答時間評価方法は、制御対象から出力される評価信号の応答時間評価方法であって、(A)ステップ状に変化するステップ入力信号を前記制御対象に入力したときに前記制御対象から出力される前記評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表すパラメータとする)を取得するステップと、(B)前記ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる前記時系列データx(i)の分散σ
n
2を算出するステップと、(C)離散時刻iを中心としかつ前記ノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる前記時系列データx(i)の分散の時系列データσ
np
2(i)及び移動平均の時系列データx
ma(i)と、下記式(1)によって定義される平滑化信号の時系列データy(i)と、を算出するステップと、(D)前記時系列データy(i)に基づいて前記評価信号の応答時間を算出するステップと、を備えることを特徴とする。
【数1】
【0009】
(2)この場合、前記ステップ(D)では、前記ステップ入力信号の立ち上がり時刻から、前記時系列データy(i)が前記ステップ入力信号に基づいて定められた閾値を超えた時刻までの間の時間を前記応答時間として算出することが好ましい。
【0010】
(3)この場合、前記定常区間は、前記ステップ入力信号がステップ状に変化する前又は後の区間であることが好ましい。
【0011】
(4)この場合、前記制御対象は、前記入力信号に応じて回転する回転体を備えることが好ましい。
【0012】
(5)この場合、前記ステップ(C)では、前記時系列データσnp
2(i)の前記定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、前記分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することが好ましい。
【0013】
(6)この場合、前記ステップ(C)では、前記時系列データσnp
2(i)の前記定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、前記分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まり、かつ前記定常区間内における前記時系列データy(i)が前記ステップ入力信号に応じた指令値を含むように定められた信号設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することが好ましい。
【0014】
(7)本発明に係る応答時間評価方法は、ダイナモメータと、当該ダイナモメータへ入力信号に応じた電力を供給するインバータと、前記ダイナモメータの速度又はトルクに応じた評価信号を出力する評価信号出力部と、を備えるダイナモメータシステムにおける前記評価信号の応答時間を評価する方法であって、(A)ステップ状に変化するステップ入力信号を前記インバータに入力したときに前記センサから出力される前記評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表すパラメータとする)を取得するステップと、(B)前記ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる前記時系列データx(i)の分散σ
n
2を算出するステップと、(C)離散時刻iを中心としかつ前記ノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる前記時系列データx(i)の分散の時系列データσ
np
2(i)及び移動平均の時系列データx
ma(i)と、下記式(2)によって定義される平滑化信号の時系列データy(i)と、を算出するステップと、(D)前記時系列データy(i)に基づいて前記評価信号の応答時間を算出するステップと、を備えることを特徴とする。
【数2】
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明では、評価信号の時系列データx(i)に基づいて、ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる時系列データx(i)の分散σn
2と、離散時刻iを中心としかつノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる時系列データx(i)の分散の時系列データσnp
2(i)及び移動平均の時系列データxma(i)と、を算出する。また本発明では、上記式(1)に基づいて評価信号を平滑化した平滑化信号の時系列データy(i)を算出し、さらにこの時系列データy(i)に基づいて元の評価信号の応答時間を算出する。ここで上記式(1)によれば、離散時刻iを中心とする平滑化区間において評価信号の変化が小さい場合、すなわち評価信号の変動成分のほとんどがノイズである場合、σnp
2(i)≒σn
2となるので、y(i)≒xma(i)となる。すなわち、評価信号の変化が小さい平滑化区間では、元の評価信号に含まれていたノイズを除去し、滑らかな時系列データy(i)を得ることができる。一方、離散時刻iを中心とする平滑化区間において評価信号の変化が大きい場合、すなわち評価信号がステップ状に変化する場合、σnp
2(i)>σn
2となるので、y(i)≒x(i)となる。すなわち評価信号の変化が大きい平滑化区間では、元の時系列データx(i)とほぼ等しい時系列データy(i)を得ることができる。よって本発明によれば、元の評価信号の時系列データx(i)から平滑化信号の時系列データy(i)を生成する際、定常区間におけるノイズによる変動を滑らかにしつつ、時系列データx(i)がステップ状に変化する区間では平滑化処理による遅れが生じることも無いので、精度良く評価信号の応答時間を算出することができる。
【0016】
(2)本発明では、ステップ入力信号の立ち上がり時刻から、平滑化信号の時系列データy(i)がステップ入力信号に基づいて定められた閾値を超えた時刻までの間の時間を応答時間として算出する。これにより、制御対象におけるステップ入力信号に対する評価信号の応答時間を精度良く算出することができる。
【0017】
(3)本発明では、ステップ入力信号がステップ状に変化する前又は後の区間、すなわち評価信号の変動成分のほとんどがノイズである区間を定常区間と定義し、この定常区間内にノイズ標本区間を定め、時系列データx(i)の分散σn
2を算出する。これにより評価信号に含まれるノイズの大きさに応じた適切な平滑化処理(すなわち、上記式(1)による処理)を施すことができる。
【0018】
(4)本発明では、回転体を備える制御対象におけるステップ入力信号に対する評価信号の応答時間を精度良く算出することができる。
【0019】
(5)本発明では、時系列データσnp
2(i)の定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まるように、平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化する。よって本発明によれば、平滑化区間長を、評価信号に含まれるノイズの大きさに応じた長さに設定することができる。
【0020】
(6)本発明では、時系列データσnp
2(i)の定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まり、かつ定常区間内における時系列データy(i)が、ステップ入力信号に応じた指令値を含むように定められた信号設定範囲内に収まるように平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化する。よって本発明によれば、平滑化区間長を必要最小限の長さに設定しつつ、定常区間における時系列データy(i)の変動を信号設定範囲内に収めることができるので、結果として精度良く応答時間を評価することができる。
【0021】
(7)本発明によれば、上記(1)の発明と同じ理由により、精度良くダイナモメータシステムにおける評価信号の応答時間を評価(すなわち、算出)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る応答時間評価方法が適用されたシャシダイナモメータシステムの構成を示す図である。
【
図2A】上記実施形態に係る応答時間評価処理の具体的な手順を示すフローチャートである(その1)。
【
図2B】上記実施形態に係る応答時間評価処理の具体的な手順を示すフローチャートである(その2)。
【
図3】上記実施形態に係る応答時間評価処理の手順を説明するためのタイムチャートである。
【
図4A】本発明の第2実施形態に係る応答時間評価処理の具体的な手順を示すフローチャートである(その1)。
【
図4B】上記実施形態に係る応答時間評価処理の具体的な手順を示すフローチャートである(その2)。
【
図5】上記実施形態に係る応答時間評価処理の手順を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る応答時間評価方法が適用されたシャシダイナモメータシステムS及びその試験車両V(以下、単に「車両V」という)の構成を示す図である。
【0024】
以下では、車両Vは、その動力を前輪Wf及び後輪Wrへ分離して伝達する四輪駆動(4WD)車両とした場合について説明するが、本発明はこれに限らない。車両Vは、前輪駆動(FWD)車両や後輪駆動(RWD)車両としてもよい。
【0025】
シャシダイナモメータシステムSは、車両Vの前輪Wf及び後輪Wrがそれぞれ載置可能であり、各々の回転に従って回転する前輪ローラ1f及び後輪ローラ1rと、これらローラ1f,1rにそれぞれ同軸で連結された前輪ダイナモメータ2f及び後輪ダイナモメータ2rと、ダイナモメータ2f,2r又はローラ1f,1rの回転速度をそれぞれ検出する前輪速度センサ3f及び後輪速度センサ3rと、ダイナモメータ2f,2rに作用するトルクをそれぞれ検出する前輪トルクセンサ4f及び後輪トルクセンサ4rと、ダイナモメータ2f,2rのそれぞれに電力を供給する前輪インバータ5f及び後輪インバータ5rと、これらインバータ5f,5rを操作することによってダイナモメータ2f,2rを制御する制御装置6と、この制御装置6に接続された操作計測システム7と、を備える。
【0026】
制御装置6は、速度センサ3f,3r及びトルクセンサ4f,4r等から送信される検出信号や後述の操作計測システム7から送信される指令信号等に基づいて、ダイナモメータ2f,2rの速度制御、及び走行抵抗制御等を行う。
【0027】
操作計測システム7は、シャシダイナモメータシステムSのオペレータによる各種操作を受け付ける操作受付機能と、制御装置6に対し各種情報を送受信する通信機能と、操作受付機能や通信機能等によって得られた情報に基づいて演算を行う演算機能と、この演算機能や通信機能等によって得られた情報をオペレータが認識可能な態様で表示する表示機能と、を備えるコンピュータである。
【0028】
図2A及び
図2Bは、操作計測システム7による応答時間評価処理の具体的な手順を示すフローチャートである。この応答時間評価処理は、上述のようなダイナモメータシステムSを制御対象とし、この制御対象に対し入力信号を入力したときに制御対象から出力される評価信号の応答時間を評価する処理である。
【0029】
なお以下では、上述のようなダイナモメータシステムSのうち、前輪ダイナモメータ2f、前輪速度センサ3f、前輪トルクセンサ4f、及び前輪インバータ5fによって構成される前輪制御系を制御対象とし、前輪インバータ5fへ入力するトルク電流指令信号を入力信号とし、前輪速度センサ3fから出力される速度検出信号に所定の処理を施して得られる信号(例えば、速度検出信号を微分処理して得られる加減速度信号)を評価信号とし、この評価信号の応答時間を評価する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。このようなダイナモメータシステムSの前輪制御系では、前輪トルクセンサ4fから出力されるトルク検出信号や、速度検出信号及びトルク検出信号の少なくとも何れかに基づいて生成される信号(例えば、速度検出信号そのものや、速度検出信号やトルク検出信号を用いた演算によって得られる駆動力信号等)を評価信号としてもよい。
【0030】
また本発明は、後輪ダイナモメータ2r、後輪速度センサ3r、後輪トルクセンサ4r、及び後輪インバータ5rによって構成される後輪制御系を制御対象とし、後輪インバータ5rへ入力するトルク電流指令信号を入力信号とし、後輪速度センサ3rから出力される速度検出信号に所定の処理を施して得られる信号(例えば、速度検出信号を微分処理して得られる加減速度信号)を評価信号とし、この評価信号の応答時間を評価する場合も適用できる。この場合、前輪制御系と同様、後輪トルクセンサ4rから出力されるトルク検出信号や、速度検出信号及びトルク検出信号の少なくとも何れかに基づいて生成される信号(例えば、速度検出信号そのものや、速度検出信号やトルク検出信号を用いた演算によって得られる駆動力信号等)を評価信号としてもよい。
【0031】
なお以下では、操作計測システム7は、
図2A及び
図2Bに示す応答時間評価処理を、オペレータによる所定のスタート操作を受け付けたことに応じて開始する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
図2A及び
図2Bに示す応答時間評価処理は、制御装置による制御下において車両に対する車両試験の運転中又は運転前後、操作計測システム7が自動で開始してもよい。この場合、応答時間評価処理の結果を、車両に対する試験の結果と関連付けた状態で図示しない記憶媒体に記憶したり、オペレータに報告したりすることができる。
【0032】
図3は、応答時間評価処理の手順を説明するためのタイムチャートである。以下では、
図2A及び
図2Bに示す応答時間評価処理の具体的な手順について、
図3のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0033】
始めにステップST1では、操作計測システム7は、ステップ状に変化するステップ入力信号を制御対象に入力したときに、この制御対象から出力される評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表す整数のパラメータとする)を、所定のサンプリング周期の下で取得する。より具体的には、操作計測システム7は、制御装置6を介して前輪インバータ5rへステップ入力信号を入力するとともに、この時、前輪速度センサ2fから出力される速度検出信号に基づいて生成される評価信号の時系列データx(i)を取得する。なお
図3では、ステップ入力信号の時系列データz(i)を太実線で示し、評価信号の時系列データx(i)を細実線で示す。
【0034】
次にステップST2では、操作計測システム7は、ステップ入力信号の定常区間内に所定長さのノイズ標本区間を定めると共に、ステップST1で取得した時系列データx(i)に基づいて、ノイズ標本区間にわたる時系列データx(i)の不偏分散σn
2を算出し、ステップST3に移る。なお以下では、ノイズ標本区間の長さであるノイズ標本区間長を、このノイズ標本区間に含まれる時系列データx(i)のデータ数に相当する整数値“N”で表す。
【0035】
ここでステップ入力信号の定常区間とは、ステップ入力信号の時系列データz(i)がほぼ一定である区間であり、
図3に示すように、ステップ入力信号がステップ状に変化する時刻tsより前の変化前定常区間と、時刻tsより後の変化後定常区間と、に分けられる。なお
図3に示すように、評価信号の時系列データx(i)は、時刻tsより所定時間遅れて上昇し始めることから、変化後定常区間の始期は、tsから所定時間後に設定される。
【0036】
また以下では、不偏分散σ
n
2を算出するためのノイズ標本区間を、
図3に示すように変化前定常区間内に設定する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。ノイズ標本区間は、変化前定常区間内に限らず、変化後定常区間内に設定してもよい。
【0037】
またノイズ標本区間は、定常区間内においてできるだけ広い範囲に設定される。このためノイズ標本区間長Nは、例えば定常区間の長さよりもやや短く設定される。
【0038】
次にステップST3では、操作計測システム7は、後述の平滑化区間の長さである平滑化区間長NPを初期値NP0に設定する(NP←NP0)。ここで初期値NP0は、任意の整数値であるが、上述のノイズ標本区間長Nの値よりも十分に小さな値に設定することが好ましい(N>NP0)。
【0039】
次にステップST4では、操作計測システム7は、離散時刻iを中心とする平滑化区間長NPにわたる範囲に平滑化区間を定義すると共に、この平滑化区間にわたる時系列データx(i)の標本分散の時系列データσnp
2(i)を算出し、ステップST5に移る。
【0040】
次にステップST5では、操作計測システム7は、ステップST4で算出した標本分散の時系列データσ
np
2(i)の定常区間内(より具体的には、ステップST2においてノイズ標本区間を定義した区間と同じ定常区間内であり、
図3の例では変化前定常区間内)におけるピーク値σ
peak
2は、不偏分散σ
n
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まるか否かを判定する。ここで分散設定範囲は、より具体的には、下記式(3)によって定義される。下記式(3)において、“Lower”及び“Upper”は、何れも0よりもやや大きな任意の値である。
【数3】
【0041】
操作計測システム7は、ステップST5の判定結果がNOである場合、ステップST6に移り、YESである場合、ステップST11に移る(
図2B参照)。
【0042】
次にステップST6では、操作計測システム7は、平滑化区間長NPを所定の単位長ΔNPだけ増加させた後、ステップST7に移る(NP←NP+ΔNP)。ここで単位長ΔNPの値は、0より大きな任意の整数値であるが、できるだけ小さな値、例えば“1”に設定される。
【0043】
次にステップST7では、操作計測システム7は、現在の平滑化区間長NPは、所定の上限長NPmax以下であるか否かを判定する。以下では、上限長NPmaxをノイズ標本区間長Nと等しくした場合について説明するが(NPmax=N)、本発明はこれに限らない。上限長NPmaxは、初期値NP0より大きくかつノイズ標本区間長N以下の範囲内で設定される。操作計測システム7は、ステップST7の判定結果がYESである場合、ステップST4に戻り、変更した平滑化区間の下で再び標本分散の時系列データσ
np
2(i)を算出し、NOである場合、ステップST11(
図2B参照)に移る。
【0044】
以上のように操作計測システム7は、標本分散の時系列データσnp
2(i)の定常区間におけるピーク値σpeak
2が、上記式(3)に示す分散設定範囲内に収まるか(ステップST5参照)又は平滑化区間長NPが上限長NPmaxに達するまで(ステップST7参照)、平滑化区間長NPを初期値から単位長ΔNPずつ増加させる。すなわち、操作計測システム7は、ステップST4~ST7の処理を繰り返し実行することによって、ピーク値σpeak
2が分散設定範囲内に収まるように、平滑化区間長NPを最適化する。
【0045】
次にステップST11では、操作計測システム7は、上述のような手順によって最適化された平滑化区間にわたる時系列データx(i)の移動平均の時系列データxma(i)を算出し、ステップST12に移る。
【0046】
次にステップST12では、操作計測システム7は、ステップST2で算出した不偏分散σ
n
2と、最適化された平滑化区間の下で算出した時系列データσ
np
2(i),x
ma(i)とを用いた下記式(4)によって、元の評価信号を平滑化した平滑化信号の時系列データy(i)を算出し、ステップST13に移る。
【数4】
【0047】
図3には、以上のような手順によって算出される平滑化信号の時系列データy(i)を、太破線で示す。上記式(4)によれば、離散時刻iを中心とする平滑化区間において評価信号の変動が小さい場合、すなわち評価信号の変動成分のほとんどがノイズである場合、σ
np
2(i)≒σ
n
2となるので、y(i)≒x
ma(i)となる。すなわち、評価信号の変化が小さい区間(すなわち、
図3において時刻tsの近傍を除く区間)では、元の評価信号に含まれていたノイズを除去し、滑らかな時系列データy(i)を得ることができる。一方、離散時刻iを中心とする平滑化区間において評価信号の変化が大きい場合、すなわち評価信号がステップ状に変化する場合、σ
np
2(i)>σ
n
2となるので、y(i)≒x(i)となる。すなわち評価信号の変化が大きい区間(すなわち、
図3において時刻tsの近傍の区間)では、元の時系列データx(i)とほぼ等しい時系列データy(i)を得ることができる。よって本実施形態によれば、元の評価信号の時系列データx(i)から平滑化信号の時系列データy(i)を生成する際、定常区間におけるノイズによる変動を滑らかにしつつ、時系列データx(i)がステップ状に変化する区間では平滑化処理による遅れが生じることも無い。
【0048】
次にステップST13では、操作計測システム7は、ステップST12で算出した平滑化信号の時系列データy(i)に基づいて、元の評価信号の応答時間を算出し、
図2A及び
図2Bに示す応答時間評価処理を終了する。より具体的には、操作計測システム7は、ステップ入力信号の立ち上がり時刻(
図3では、時刻ts)から、平滑化信号の時系列データy(i)が、ステップ入力信号に基づいて定められた閾値を超えた時刻までの間の時間を応答時間として算出する。
【0049】
本実施形態に係る応答時間評価方法によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態では、評価信号の時系列データx(i)に基づいて、ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる時系列データx(i)の不偏分散σn
2と、離散時刻iを中心としかつノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる時系列データx(i)の標本分散の時系列データσnp
2(i)及び移動平均の時系列データxma(i)と、を算出する。また本実施形態では、上記式(4)に基づいて評価信号を平滑化した平滑化信号の時系列データy(i)を算出し、さらにこの時系列データy(i)に基づいて元の評価信号の応答時間を算出する。よって本実施形態によれば、元の評価信号の時系列データx(i)から平滑化信号の時系列データy(i)を生成する際、定常区間におけるノイズによる変動を滑らかにしつつ、時系列データx(i)がステップ状に変化する区間では平滑化処理による遅れが生じることも無いので、精度良く評価信号の応答時間を算出することができる。
【0050】
(2)本実施形態では、ステップ入力信号の立ち上がり時刻から、平滑化信号の時系列データy(i)がステップ入力信号に基づいて定められた閾値を超えた時刻までの間の時間を応答時間として算出する。これにより、制御対象におけるステップ入力信号に対する評価信号の応答時間を精度良く算出することができる。
【0051】
(3)本実施形態では、ステップ入力信号がステップ状に変化する前又は後の区間、すなわち評価信号の変動成分のほとんどがノイズである区間を定常区間と定義し、この定常区間内にノイズ標本区間を定め、時系列データx(i)の不偏分散σn
2を算出する。これにより評価信号に含まれるノイズの大きさに応じた適切な平滑化処理(すなわち、上記式(4)による処理)を施すことができる。
【0052】
(4)本実施形態では、標本分散の時系列データσnp
2(i)の定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、不偏分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まるように、平滑化区間長NPを最適化する。よって本実施形態によれば、平滑化区間長NPを、評価信号に含まれるノイズの大きさに応じた長さに設定することができる。
【0053】
(5)本実施形態によれば、ダイナモメータシステムの応答時間を、ダイナモメータシステムのメンテナンス時に限らず、ダイナモメータが制御されている状態であれば、車両試験の運転中や運転前後においても自動で評価することができるので、ユーザの利便性を向上することができる。
【0054】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るシャシダイナモメータシステムの機械的な構成は、第1実施形態に係るシャシダイナモメータシステムSと同じであるので、図示及び詳細な説明を省略する。本実施形態に係るシャシダイナモメータシステムは、第1実施形態に係るシャシダイナモメータシステムSと操作計測システム7における応答時間評価処理の手順が異なる。
【0055】
図4A及び
図4Bは、本実施形態に係る操作計測システム7による応答時間評価処理の具体的な手順を示すフローチャートである。なお以下では、第1実施形態と同様、前輪制御系を制御対象とし、前輪インバータへ入力するトルク電流指令信号を入力信号とし、前輪速度センサから出力される速度検出信号に所定の処理を施して得られる信号(例えば、速度検出信号を微分処理して得られる加減速度信号)を評価信号とし、この評価信号の応答時間を評価する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。制御対象や評価信号等については、第1実施形態と同様の変更が可能である。
【0056】
また以下では、操作計測システム7は、
図4A及び
図4Bに示す応答時間評価処理を、第1実施形態と同様、オペレータによる所定のスタート操作を受け付けたことに応じて開始する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。
図4A及び
図4Bに示す応答時間評価処理は、第1実施形態と同様、制御装置による制御下において車両に対する車両試験の運転中又は運転前後、操作計測システム7が自動で開始してもよい。
【0057】
図5は、本実施形態に係る応答時間評価処理の手順を説明するためのタイムチャートである。以下では、
図4A及び
図4Bに示す応答時間評価処理の具体的な手順について、
図5のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0058】
また
図4Aに示すステップST21~ST27に示す処理は、それぞれ
図2Aに示すステップST1~ST7に示す処理と同じであるので、以下では詳細な説明を省略する。すなわち、操作計測システム7は、ステップST24~ST27の処理を繰り返し実行することによって、ピーク値σ
peak
2が上記式(3)に示す分散設定範囲内に収まるように、平滑化区間長NPを調整した後、ステップST31に移る(
図4B参照)。
【0059】
ステップST31では、操作計測システム7は、離散時刻iを中心とする平滑化区間長NPにわたる範囲に平滑化区間を定義すると共に、この平滑化区間にわたる時系列データx(i)の標本分散の時系列データσnp
2(i)及び移動平均の時系列データxma(i)を算出し、ステップST32に移る。
【0060】
次にステップST32では、操作計測システム7は、ステップST22で算出した不偏分散σn
2と、ステップST31で算出した時系列データσnp
2(i),xma(i)とを用いて、上記式(4)によって、元の評価信号を平滑化した平滑化信号の時系列データy(i)を算出し、ステップST33に移る。
【0061】
次にステップST33では、操作計測システム7は、ステップST32において算出された時系列データy(i)は、変化前定常区間内において、ステップ入力信号に応じた指令値Sig_cmdを含むように定められた信号設定範囲内に収まるか否かを判定する。ここで信号設定範囲は、より具体的には、下記式(5)によって定義される。下記式(5)において、“Sig_Lower”は指令値Sig_cmdよりもやや小さな値に設定され、“Sig_Upper”は指令値Sig_cmdよりもやや大きな値に設定される。
【数5】
【0062】
なお本実施形態では、2つの定常区間のうち、変化前定常区間のみにおいて時系列データy(i)が信号設定範囲内に収まるか否かを判定する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。変化後定常区間のみ又は変化前定常区間及び変化後定常区間の両方において時系列データy(i)が信号設定範囲内に収まるか否かを判定してもよい。
【0063】
操作計測システム7は、ステップST33の判定結果がNOである場合、ステップST34に移り、YESである場合、ステップST41に移る。
【0064】
次にステップST34では、操作計測システム7は、平滑化区間長NPを所定の単位長ΔNPだけ増加させた後、ステップST35に移る(NP←NP+ΔNP)。
【0065】
次にステップST35では、操作計測システム7は、現在の平滑化区間長NPは、上限長NPmax以下であるか否かを判定する。操作計測システム7は、ステップST35の判定結果がYESである場合、ステップST31に戻り、変更した平滑化区間の下で再び時系列データσnp
2(i),xma(i),y(i)を算出し、NOである場合、ステップST41に移る。
【0066】
以上のように本実施形態に係る操作計測システム7は、標本分散の時系列データσnp
2(i)の定常区間におけるピーク値σpeak
2が、上記式(3)に示す分散設定範囲内に収まるか(ステップST25参照)又は平滑化区間長NPが上限長NPmaxに達するまで(ステップST27参照)、平滑化区間長NPを初期値から単位長ΔNPずつ増加させた後、さらに定常区間内における時系列データy(i)が、上記式(5)に示す信号設定範囲内に収まるか(ステップST33参照)又は平滑化区間NPが上限長NPmaxに達するまで(ステップST35参照)、平滑化区間長NPを単位長ΔNPずつさらに増加させる。すなわち、操作計測システム7は、ステップST24~ST27及びステップST31~ST35の処理を繰り返し実行することによって、ピーク値σpeak
2が分散設定範囲内に収まりかつ定常区間内における時系列データy(i)が信号設定範囲内に収まるように、平滑化区間長NPを最適化する。
【0067】
次にステップST41では、操作計測システム7は、上述のような手順によって最適化された平滑化区間の下で算出された平滑化信号の時系列データy(i)に基づいて、第1実施形態と同じ手順によって元の評価信号の応答時間を算出し、
図4A及び
図4Bに示す応答時間評価処理を終了する。
【0068】
本実施形態に係る応答時間評価方法によれば、上述の(1)~(3)及び(5)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0069】
(6)本実施形態では、標本分散の時系列データσnp
2(i)の定常区間内におけるピーク値σpeak
2が、不偏分散σn
2を含むように定められた分散設定範囲内に収まり、かつ定常区間内における時系列データy(i)が、ステップ入力信号に応じた指令値を含むように定められた信号設定範囲内に収まるように平滑化区間長NPを最適化する。よって本実施形態によれば、平滑化区間長NPを必要最小限の長さに設定しつつ、定常区間における時系列データy(i)の変動を信号設定範囲内に収めることができるので、結果として精度良く応答時間を評価することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【0071】
例えば上記実施形態では、応答時間評価方法を、シャシダイナモメータシステムに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明は、シャシダイナモメータシステムに限らず、エンジンベンチシステムやドライブトレインベンチシステム等のダイナモメータシステム、及びダイナモメータや回転電機等の回転体を備える制御対象等に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
S…シャシダイナモメータシステム(ダイナモメータシステム)
1f,1r…ローラ
2f,2r…ダイナモメータ
3f,3r…速度センサ
4f,4r…トルクセンサ
5f,5r…インバータ
6…制御装置
7…操作計測システム
V…車両
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象から出力される評価信号の応答時間評価方法であって、
(A)ステップ状に変化するステップ入力信号を前記制御対象に入力したときに前記制御対象から出力される前記評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表すパラメータとする)を取得するステップと、
(B)前記ステップ入力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる前記時系列データx(i)の分散σ
n
2を算出するステップと、
(C)離散時刻iを中心としかつ前記ノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる前記時系列データx(i)の分散の時系列データσ
np
2(i)及び移動平均の時系列データx
ma(i)と、下記式(1)によって定義される平滑化信号の時系列データy(i)と、を算出するステップと、
(D)前記時系列データy(i)に基づいて前記評価信号の応答時間を算出するステップと、を備
え、
前記ステップ(C)では、前記時系列データσ
np
2
(i)の前記定常区間内におけるピーク値σ
peak
2
が、前記分散σ
n
2
を含むように定められた分散設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することを特徴とする応答時間評価方法。
【数1】
【請求項2】
前記ステップ(D)では、前記ステップ入力信号の立ち上がり時刻から、前記時系列データy(i)が前記ステップ入力信号に基づいて定められた閾値を超えた時刻までの間の時間を前記応答時間として算出することを特徴とする請求項1に記載の応答時間評価方法。
【請求項3】
前記定常区間は、前記ステップ入力信号がステップ状に変化する前又は後の区間であることを特徴とする請求項1に記載の応答時間評価方法。
【請求項4】
前記制御対象は、前記入力信号に応じて回転する回転体を備えることを特徴とする請求項1に記載の応答時間評価方法。
【請求項5】
前記ステップ(C)では、前記ピーク値σpeak
2が、前記分散設定範囲内に収まり、かつ前記定常区間内における前記時系列データy(i)が前記ステップ入力信号に応じた指令値を含むように定められた信号設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の応答時間評価方法。
【請求項6】
ダイナモメータと、
当該ダイナモメータへ入力信号に応じた電力を供給するインバータと、
前記ダイナモメータの速度又はトルクに応じた評価信号を出力する評価信号出力部と、を備えるダイナモメータシステムにおける前記評価信号の応答時間評価方法であって、
(A)ステップ状に変化するステップ入力信号を前記インバータに入力したときに前記
評価信号出力部から出力される前記評価信号の時系列データx(i)(以下、iは離散時刻を表すパラメータとする)を取得するステップと、
(B)前記ステップ入
力信号の定常区間内に定められたノイズ標本区間にわたる前記時系列データx(i)の分散σ
n
2を算出するステップと、
(C)離散時刻iを中心としかつ前記ノイズ標本区間以下の長さの平滑化区間にわたる前記時系列データx(i)の分散の時系列データσ
np
2(i)及び移動平均の時系列データx
ma(i)と、下記式(2)によって定義される平滑化信号の時系列データy(i)と、を算出するステップと、
(D)前記時系列データy(i)に基づいて前記評価信号の応答時間を算出するステップと、を備
え、
前記ステップ(C)では、前記時系列データσ
np
2
(i)の前記定常区間内におけるピーク値σ
peak
2
が、前記分散σ
n
2
を含むように定められた分散設定範囲内に収まるように、前記平滑化区間の長さである平滑化区間長を最適化することを特徴とする応答時間評価方法。
【数2】