(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016472
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】カウンターフローデニューダ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20240131BHJP
G01N 15/00 20240101ALI20240131BHJP
【FI】
G01N1/02 A
G01N15/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118624
(22)【出願日】2022-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】591056927
【氏名又は名称】一般財団法人日本自動車研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 浩之
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA02
2G052AC20
2G052AD04
2G052BA03
2G052EA08
2G052EB11
(57)【要約】
【課題】高温度条件でのガス除去要求に応え、ゴム系素材の耐熱温度を超える高温環境下であってもシール機能を保って正常なガス交換を行うことができるカウンターフローデニューダを提供すること。
【解決手段】カウンターフローデニューダCFDは、サンプルガスチャネルSCを流れる試料気体に含まれるガス成分を、パージガスが流れるパージガスチャネルPCへの拡散により除去することで粒子試料を生成する。多孔膜内管1の両端部と外管部材に介装され、外管部材に対し多孔膜内管1の両端部を支持しつつガス漏れを封止する一対の管支持兼シール構造Sa,Sbを備える。管支持兼シール構造Sa,Sbは、グラファイトを素材とし、多孔膜内管1の外周円筒面に対するシール接触部を、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面50とするグラファイトフェラル5a,5bを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された多孔膜内管と外管部材の二重管構造によりサンプルガスチャネルとパージガスチャネルが画成され、前記サンプルガスチャネルを流れる試料気体に含まれるガス成分を、パージガスが流れる前記パージガスチャネルへの拡散により除去することで粒子試料を生成するカウンターフローデニューダであって、
前記多孔膜内管の両端部と前記外管部材に介装され、前記外管部材に対し前記多孔膜内管の両端部を支持しつつガス漏れを封止する一対の管支持兼シール構造を備え、
前記管支持兼シール構造は、グラファイトを素材とし、前記多孔膜内管の外周円筒面に対するシール接触部を、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面とするグラファイトフェラルを有する
ことを特徴とするカウンターフローデニューダ。
【請求項2】
請求項1に記載されたカウンターフローデニューダにおいて、
前記管支持兼シール構造は、前記グラファイトフェラルに加え、管軸方向の圧縮力を付与する圧縮力付与部材と前記グラファイトフェラルとに挟まれた位置に配置され、管軸方向に移動可能な可動リテーナリングを備え、
前記可動リテーナリングは、前記圧縮力付与部材の部材端面に圧接するリング端面と、前記グラファイトフェラルのリング垂直端面に圧接するリング垂直端面と、を有する
ことを特徴とするカウンターフローデニューダ。
【請求項3】
請求項2に記載されたカウンターフローデニューダにおいて、
前記管支持兼シール構造は、前記可動リテーナリングに加え、前記外管部材と前記グラファイトフェラルとに挟まれた位置に配置され、管軸方向に固定の固定リテーナリングを備え、
前記固定リテーナリングは、前記グラファイトフェラルのテーパー面にテーパー嵌合するテーパー面と、前記外管部材に形成されたシール構造嵌合穴の穴端面に押付けられるリング端面と、を有する
ことを特徴とするカウンターフローデニューダ。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載されたカウンターフローデニューダにおいて、
前記多孔膜内管は、シラス多孔質ガラスを管素材とし、
前記グラファイトフェラルは、350℃以上の耐熱性と、モース硬度1~2による柔軟性との両方を兼ね揃えた圧縮可能なグラファイト材料を素材とする
ことを特徴とするカウンターフローデニューダ。
【請求項5】
請求項1に記載されたカウンターフローデニューダにおいて、
前記パージガスチャネルのパージガス出口に、前記多孔膜内管によりガス交換が正常に行われているか否かでセンサ値が変化するガスセンサを設け、
前記ガスセンサからのセンサ値を入力し、前記センサ値に基づいてガス交換の正常判定や異常判定を行うコントローラを設ける
ことを特徴とするカウンターフローデニューダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料気体に含まれるガス成分を拡散により除去するカウンターフローデニューダに関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性隔膜を用いたガス置換技術としては、微粒子を含む試料ガスを置換ガスに変換するためのガス置換方法と、そのガス置換方法を実施するためのガス置換装置と、そのガス置換装置と、そのガス置換装置を備えた分析システムが知られている。ガス置換装置は、円筒形状の多孔性隔膜の両端面に、内外径が多孔性隔膜と等しい一対の内管の端面を結合し、一対の内管と外管とを等間隔空間を介在させて結合している(特許文献1を参照)。また、膜乳化、膜バブリング、膜ろ過、等を用途とする円筒状多孔質膜を用いた円筒状多孔質膜用モジュールが知られている。円筒状多孔質膜用モジュールは、円筒形状の多孔性隔膜と外管との間に、外管に対して多孔性隔膜の両端部を支持しつつ液漏れを封止するOリングシール構造を設けている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4315348号公報
【特許文献2】特開2021-62354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のガス置換装置は、多孔性隔膜と内管という異種材料の端面結合を必要とするし、多孔性隔膜の有効長が短くなるし、外管に加わる振動等の力が内管を経由して多孔性隔膜へ直接伝達することにより隔膜が破損し易い、という課題がある。これに対し、特許文献2に記載の円筒状多孔質膜用モジュールは、Oリングシール構造を設け、円筒状多孔質膜を弾性支持したことで、特許文献1に記載されたガス置換装置の課題を解消できる。しかし、Oリングの素材がゴム系素材であるため、耐熱性が確保される上限温度が低く(例えば、200℃程度)、使用流体が、ゴム系素材の上限温度以下である液体等に限られる。よって、使用流体をゴム系素材の上限温度を超える高温の気体に変更すると、Oリングが熱変形等を生じてシール機能を失い、円筒状多孔質膜を介して正常にガス交換が行えない。さらに、使用流体が試料気体の場合、温度を高くするほどガス除去効率が向上するため、粒子試料の測定結果の精度を高めるために高温度条件でガス除去したいという要求がある。しかし、Oリングシール構造は、高温度条件でのガス除去要求に応えることができない、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、高温度条件でのガス除去要求に応え、ゴム系素材の耐熱温度を超える高温環境下であってもシール機能を保って正常なガス交換が行えるカウンターフローデニューダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のカウンターフローデニューダは、同心状に配置された多孔膜内管と外管部材の二重管構造によりサンプルガスチャネルとパージガスチャネルが画成され、サンプルガスチャネルを流れる試料気体に含まれるガス成分を、パージガスが流れるパージガスチャネルへの拡散により除去することで粒子試料を生成する。多孔膜内管の両端部と外管部材に介装され、外管部材に対し多孔膜内管の両端部を支持しつつガス漏れを封止する一対の管支持兼シール構造を備える。管支持兼シール構造は、グラファイトを素材とし、多孔膜内管の外周円筒面に対するシール接触部を、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面とするグラファイトフェラルを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカウンターフローデニューダは、上記手段を採用したことで、高温度条件でのガス除去要求に応え、ゴム系素材の耐熱温度を超える高温環境下であってもシール機能を保って正常なガス交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のカウンターフローデニューダを示す全体断面図である。
【
図2】実施例1のカウンターフローデニューダの試料気体入口側の管支持兼シール構造を示す
図1のA部拡大断面図である。
【
図3】試料気体入口側の管支持兼シール構造を示す
図2のB-B線端面図である。
【
図4】実施例1のカウンターフローデニューダの多孔膜内管によるガス交換作用を示す作用説明図である。
【
図5】実施例1のカウンターフローデニューダの管支持兼シール構造によるガスシール作用を示す作用説明図である。
【
図6】実施例1のカウンターフローデニューダを適用した実施例2のIPA粒子試料個数測定システムを示すシステムブロック図である。
【
図7】4種類の有効長さが異なる多孔膜内管を備えるカウンターフローデニューダを用いて行った検証実験により得られたガス温度(25℃~350℃)に対するIPAガス除去効率の変化特性を示す実験結果図である。
【
図8】実施例1のカウンターフローデニューダを適用した実施例3の排気ガス粒子試料個数測定システムを示すシステムブロック図である。
【
図9】4種類の有効長さが異なる多孔膜内管を備えるカウンターフローデニューダを用いて行った検証実験により得られたガス温度(25℃~350℃)に対する粒子透過率の変化特性を示す実験結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のカウンターフローデニューダを実施するための形態を、図面に示す実施例1~実施例3に基づいて説明する。
【実施例0010】
実施例1は、気中粒子個数濃度等を測定するとき、試料気体に含まれる揮発性ガス・凝縮性ガス等のガス成分を除去し、測定に適合する粒子試料を生成するために用いられるカウンターフローデニューダの単体である。以下、実施例1のカウンターフローデニューダの構成を、「全体構成」と「管支持兼シール構造の詳細構成」とに分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
まず、
図1を参照してカウンターフローデニューダCFDの全体構成を説明する。カウンターフローデニューダCFDは、
図1に示すように、多孔膜内管1と、外管2(外管部材)と、一対のT字管3a,3b(外管部材)と、一対の管支持兼シール構造Sa,Sbと、を備えている。
【0012】
カウンターフローデニューダCFDは、同心状に配置された多孔膜内管1と外管部材である外管2及び一対のT字管3a,3bの二重管構造によりサンプルガスチャネルSCとパージガスチャネルPCが画成される。カウンターフローデニューダCFDは、サンプルガスチャネルSCへ導入される試料気体に含まれるガス成分を、パージガスチャネルPCへ拡散させて除去することで、ガス成分が除去された粒子試料を生成する。ここで、「カウンターフローデニューダCFD」は、サンプルガスチャネルSCへ導入される試料気体の流れ方向(
図1の右方向)と、パージガスチャネルPCへ導入されるパージガスの流れ方向(
図1の左方向)とが互いに対向することから名付けられている。
【0013】
多孔膜内管1は、サンプルガスチャネルSCを画成し、CaO-B2O3-SiO2-Al2O3系多孔質体のシラス多孔質ガラスSPG(「Shirasu Porous Glass」の略)を管素材とする細長い円筒管である。このシラス多孔質ガラスSPGは、膜を貫通する無数の超微細孔を有し、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れている多孔質ガラス膜である。シラス多孔質ガラスSPGは、微細孔径に因ることなく約50%乃至60%の気孔率を有し、サンプルガスチャネルSCを通過する試料気体に含まれるガス成分のガス分子をガス拡散により透過させる透過性に優れた多孔質体である。
【0014】
外管2は、多孔膜内管1の外周面との間にパージガスチャネルPCを画成し、ステンレス等を素材とする金属パイプである。外管2は、多孔膜内管1の中央部外周位置に配置され、両端部にガス漏れを封止した状態で一対のT字管3a,3bが密封固定される。つまり、実施例1では、外管2と一対のT字管3a,3bとを一体化して外管部材を構成している。
【0015】
一対のT字管3a,3bは、T字状の三方向通路を有する継手部材であり、金属等を素材とし製造される。ここで、「三方向通路」とは、多孔膜内管1の管軸方向であって互いに向かい合う内向き通路と、多孔膜内管1の管軸方向であって互いに外を向く外向き通路と、管軸方向に直交する交差通路と、をいう。
【0016】
T字管3a,3bの内向き通路には、通路端部に外管嵌合穴31a,31b及びフェラル嵌合テーパー穴32a,32bが形成され、向かい合う一対の外管嵌合穴31a,31bに外管2の両端部が差し込まれる。そして、一対のT字管3a,3bは、シール固定構造により外管2に対してガス漏れを封止した状態で固定される。シール固定構造は、一対のT字管3a,3bにネジ止めされる連結ナット8c,8dと、フェラル嵌合テーパー穴にテーパー嵌合されるフェラル14a,14bと、フェラル14a,14bと組み合わせて配置されるバックフェラル15a,15bと、を有する。
【0017】
T字管3a,3bの外向き通路には、通路端部にシール構造嵌合穴33a,33b及びコネクタ嵌合テーパー穴34a,34bが形成される。入口側のT字管3aには、シール構造嵌合穴33aに管支持兼シール構造Saが配置され、コネクタ嵌合テーパー穴34aに、試料気体入口9を有する入口ポートコネクタ7aがテーパー嵌合される。入口ポートコネクタ7aは、T字管3aにネジ止めされる入口ナット8aにより固定される。出口側のT字管3bには、シール構造嵌合穴33bに管支持兼シール構造Sbが配置され、コネクタ嵌合テーパー穴34bに、試料気体出口10を有する出口ポートコネクタ7bがテーパー嵌合される。出口ポートコネクタ7bは、T字管3bにネジ止めされる出口ナット8bにより固定される。
【0018】
T字管3a,3bの交差通路には、通路端部にパージガス管嵌合穴35a,35b及びフェラル嵌合テーパー穴36a,36bが形成される。入口側のT字管3aには、パージガス管嵌合穴35aにパージガス出口12を有する出口パージガス管13aが差し込まれる。出口パージガス管13aは、シール固定構造によりT字管3aに対してガス漏れを封止した状態で固定される。出口側のT字管3bには、のパージガス管嵌合穴35bにパージガス入口11を有する入口パージガス管13bが差し込まれる。入口パージガス管13bは、シール固定構造によりT字管3bに対してガス漏れを封止した状態で固定される。シール固定構造は、一対のT字管3a,3bにネジ止めされる連結ナット8e,8fと、フェラル嵌合テーパー穴にテーパー嵌合されるフェラル14c,14dと、フェラル14c,14dと組み合わせて配置されるバックフェラル15c,15dと、を有する。
【0019】
一対の管支持兼シール構造Sa,Sbは、多孔膜内管1の両端部と一対のT字管3a,3bに介装され、一対のT字管3a,3bに対して多孔膜内管1の両端部を支持しつつガス漏れを封止する。一対の管支持兼シール構造Sa,Sbは、グラファイトを素材とし、多孔膜内管1の外周円筒面に対するシール接触部を、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面50とするグラファイトフェラル5a,5bをそれぞれ有することを特徴とする。ここで、グラファイトとは、規則的な配列をしている炭素から成る元素鉱物をいう。なお、実施例1の一対の管支持兼シール構造Sa,Sbは、グラファイトフェラル5a,5bを挟んだ両側位置に、固定リテーナリング4a,4bと可動リテーナリング6a,6bを有して構成されている。
【0020】
[管支持兼シール構造の詳細構成]
次に、
図2及び
図3を参照してカウンターフローデニューダCFDの試料気体入口9側に設定される管支持兼シール構造Saの詳細構成を説明する。試料気体入口9側には、
図2に示すように、多孔膜内管1と、T字管3aと、管支持兼シール構造Saと、入口ポートコネクタ7a(圧縮力付与部材)と、入口ナット8aと、を備えている。なお、試料気体出口10側の管支持兼シール構造Sbの詳細構成は、試料気体入口9側の管支持兼シール構造Saの詳細構成と同様の構成であるため、管支持兼シール構造Sbの詳細構成の図示並びに説明を省略する。
【0021】
管支持兼シール構造Saは、多孔膜内管1の外周面と、T字管3aに形成されたシール構造嵌合穴33aの穴内面及び穴端面と、によって形成される円筒形状によるシール設定空間に配置される。そして、管支持兼シール構造Saは、グラファイトフェラル5aに、固定リテーナリング4aと可動リテーナリング6aを追加した組み合わせシール構造としている。
【0022】
固定リテーナリング4aは、5角形断面形状に形成されたリング部材であり、T字管3aに形成されたシール構造嵌合穴33aとグラファイトフェラル5aとに挟まれた位置に配置される。固定リテーナリング4aの取り付けは、シール構造嵌合穴33aの穴内面によって径方向に固定され、シール構造嵌合穴33aの穴端面への押付けによって管軸方向に固定される。固定リテーナリング4aの外周には、グラファイトフェラル5aのテーパー面51にテーパー嵌合するテーパー面41と、シール構造嵌合穴33aの穴内面に嵌合するリング外周面42と、シール構造嵌合穴33aの穴端面に押付けられるリング端面43と、を有する。
【0023】
グラファイトフェラル5aは、多孔膜内管1の外周面と固定リテーナリング4aと可動リテーナリング6aとに挟まれた位置に配置され、350℃以上の耐熱性(例えば、450℃の耐熱性)と、モース硬度1~2による柔軟性との両方を兼ね揃えた圧縮可能なグラファイト材料を素材として形成されている。多孔膜内管1の外周円筒面に対するグラファイトフェラル5aのシール接触部は、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面50としている。即ち、圧接シール支持内面50は、多孔膜内管1の外周円筒面に対して圧接する所定の管軸方向長さLによる環状支持面としている。圧接シール支持内面50の管軸方向長さLは、例えば、多孔膜内管1の全長が500mmの場合、15mm~20mmの長さになるように設定する。このとき、多孔膜内管1の細孔面積の有効長はおよそ460mm~470mmになる。
【0024】
グラファイトフェラル5aの外周には、圧接シール支持内面50以外に、固定リテーナリング4aのテーパー面41に圧接するテーパー面51と、可動リテーナリング6aに圧接するリング垂直端面52及びフェラル外周面53と、を有する。
【0025】
テーパー面51は、圧接シール支持内面50に対して直角未満の傾斜角度を有し、固定リテーナリング4aからグラファイトフェラル5aに対して管軸方向の圧縮力を受けたときの反力のうち内径方向分力を与える。リング垂直端面52は、圧接シール支持内面50に対して垂直面に形成され、可動リテーナリング6aからグラファイトフェラル5aに対して管軸方向の圧縮力を与える。フェラル外周面53は、圧接シール支持内面50と平行な円筒外周面に形成され、可動リテーナリング6aから管軸方向の圧縮力が与えられているとき、グラファイトフェラル5aが外径方向に膨張変形するのを抑える。
【0026】
可動リテーナリング6aは、L字断面形状に形成されたリング部材であり、シール構造嵌合穴33aと入口ポートコネクタ7aとグラファイトフェラル5aとに挟まれた位置に配置される。可動リテーナリング6aの取り付けは、シール構造嵌合穴33aの穴内面によって径方向に固定され、入口ポートコネクタ7aから加えられるネジ込み押付け力によって管軸方向に移動可能に配置される。可動リテーナリング6aの外周は、入口ポートコネクタ7aのコネクタ端面71に圧接するリング端面61と、リング垂直端面52に圧接するリング垂直端面62と、フェラル外周面53に圧接するリング内周面63と、シール構造嵌合穴3cの穴内面に嵌合するリング外周面64と、を有する。
【0027】
入口ポートコネクタ7aは、金属材により形成されたコネクタ部材であり、入口ナット8aとの段差面嵌合により組み合わせ固定される。入口ポートコネクタ7aの軸心位置には、試料気体入口9が形成される。入口ポートコネクタ7aの外周は、リング端面61に接触するコネクタ端面71と、コネクタ嵌合テーパー穴3dと同じテーパー角度によるテーパー面72と、入口ナット8aに形成される傾斜段差面83と嵌合する傾斜段差面73と、を有する。また、入口ポートコネクタ7aとしては、試料気体入口9の内径や外径が異なる複数種類のポートコネクタが用意され、接続される入口装置のコネクタサイズに対応して交換可能としている。なお、出口ポートコネクタ7bも同様である。
【0028】
入口ナット8aは、入口ポートコネクタ7aに段差面嵌合されると共に、T字管3aの入口端部の外周面に形成された雄ネジ37aに対しネジ止めされる。ここで、入口ナット8aの外周には、六角面81を有する。入口ナット8aの内周には、雄ネジ37aに螺合する雌ネジ82と、傾斜段差面73に嵌合する傾斜段差面83と、を有する。
【0029】
次に、「背景技術及び課題解決手段」について説明する。そして、カウンターフローデニューダCFDにおける「試料気体のガス交換作用」、「多孔膜内管の支持/シール作用」を説明する。
【0030】
[背景技術及び課題解決手段]
以下の説明において、『特許第4315348号公報』を「特許文献1」、『特開2021-62354号公報』を「特許文献2」、『特表2006-506640号公報』を「特許文献3」という。『CEN/TS 17434:2020』を「非特許文献1」、『Aerosol Science and Technology, 51(4), pp. 443-450 (2017)』を「非特許文献2」、『United Nations Global Technical Regulation No. 15』を「非特許文献3」、『Scientific Reports, 9, 17149 (2019)』を「非特許文献4」という。
【0031】
自動車排出ガス等の気中に存在する粒子の濃度は、排出ガス処理装置により低減され従来の粒子質量で測定することが困難であることから、高感度な測定方法である凝縮式粒子計数法による粒子個数濃度により、排出ガスの規制・管理が求められている。一方、半導体・エレクトロニクス産業では、部品洗浄用の超純水・薬液に対して厳しい清浄度管理が求められるが、洗浄液中の粒子の微小化に伴い、従来の光散乱法では測定できない粒径100nm以下のナノ粒子に対し、懸濁液中の粒子をエアロゾル化し気中に分散させ、凝縮式粒子計数法による容易かつ高感度に行うことが提案されている。
【0032】
凝縮式粒子計数(以下、「Condensation Particle Counter」の略である「CPC」という。)法を用いる分析装置により、気中の粒子がブタノール飽和蒸気と十分に混合させ、冷却により粒子の凝縮成長を行い、10μm程度の大きさまで粒径成長させることで、光学的に検出可能な粒径に成長した粒子数を計数することができる。CPC単体では粒径分布測定はできないため、CPCの上流部に微分型移動度分析器(DMA、Differential Mobility Analyzer)のような分級器を挟むことで粒径分布測定も可能になる。このとき、試料ガス中に粒子へ凝縮するガスである、水蒸気(湿度)、液中分析に含まれていた溶媒等が混入すると、CPC分析装置内のブタノール飽和蒸気によるにより粒子の凝縮成長を妨げとなる。試料ガスに含まれる水分をナフィオン(登録商標)製の非多孔質膜を介して除去する非特許文献1が提案されているが、ナフィオンはイオン交換により水分を吸着させる機構を有するため、有機溶媒などの不活性ガスを除去することができないといった問題がある。
【0033】
また、自動車排出ガス等の気中に存在する粒子をCPCで安定した計測値を得たいところ、排出ガスに含まれる粒子に凝縮しうるガスを加熱により除去しないと、粒子の凝縮成長やガスが凝縮することで新たに凝縮性粒子が生成する。よって、本来の粒子以外の凝縮性粒子が混在し、不安定な計測となるため、凝縮性粒子を約350℃以上の所定の温度で加熱して触媒で分解する特許文献3が提案されている。しかし、ハニカム構造などにより配管に粒子が25%以上付着して粒子損失が起こり、非特許文献3で定められている最小可測粒径10nmに対しては、70%程度の粒子損失(30%程度の粒子透過率)であることが知られており、正確な測定を行う上で問題となる。
【0034】
そこで、多孔質膜を介して試料ガスに含まれる水分や不活性ガスを純空気もしくは純窒素に置換するカウンターフローデニューダとする非特許文献2や非特許文献4、多孔質膜の固定には、均一な分散粒子のエマルションや、ろ過に好適に使用される円筒状多孔質膜の気密性を維持したシール構造を提供する特許文献2が、それぞれ提案されている。
【0035】
これまでのカウンターフローデニューダによる非特許文献2や円筒状多孔質膜のシール構造を提供する特許文献2の方法によると、当該円筒状多孔質膜の両辺縁部をOリングや樹脂で圧着支持する場合、材質の耐熱温度が約200℃以下であるため、凝縮性粒子などを除去する約350℃以上の所定の温度で加熱することができなかった。また、加熱したハニカム触媒を用いる特許文献3の触媒ストリッパーによると、ハニカム構造により配管に粒子が管内に付着して最小可測粒径10nmに対しては、70%程度の粒子損失(30%程度の粒子透過率)であることが知られており、正確な測定を行う上で問題があった。
【0036】
カウンターフローデニューダ法による円筒状多孔質膜のシール構造において、間違いなく多孔質膜を気密にするためには、非特許文献2や特許文献2に示す、円筒状多孔質膜の内管と外管とをゴム製のOリングにより気密に保持して固定しなければならない。しかし、その固定方法を誤ると、試料ガスの「ガス漏れ」が生じ、欠陥品になってしまう。ゴム製のOリングは、通常約8~30%のつぶし代が確保できる設計の溝に装着され、圧縮されることで発生したゴムの反発力(元のOリング形状に戻ろうとする力)によって、気密を確保する。また、Oリングは片側の溝に押し付けられてD型になることによって生じる反発力には、Oリングによる気密性を更に向上させる効果・機能である、Oリングの自封性により気密が保たれる。しかし、Oリングを選択において、円筒状多孔質膜の外径には、外径φ10mmに対し±0.5mm程度、外径φ5mmに対しては±0.3mm程度のバラツキがあり得るため、汎用のOリングは、その線径の太さやリング外径が様々存在する。当該円筒状多孔質膜を固定するOリングの選択を間違えると大いにその上述の「ガス漏れ」を生じる欠陥品を提供させる可能性が高い。
【0037】
そこで非特許文献3に示す、テフロン(登録商標)の通称で広く知られているフッ素樹脂(PTFE)薄膜を用いてばらつき内で収まるように当該円筒状多孔質膜を隙間が残らないような設計をすることが考えられる。しかし、PTFEはゴム材ほどの伸縮性はないため、気密性を更に向上させる効果や気密を満足できるという安心は得られない。また、PTFEはゴム製のOリングと比べて柔軟性や復元性が無いため、多孔質膜を破損させてしまうおそれがある。
【0038】
また、特許文献2に示す同径もしくは異径のOリングを二重、三重等と重ねることで、バラツキ内で収まるように当該円筒状多孔質膜を隙間が残らないような設計をしても、耐熱温度を約200℃以上に確保する材質が無い。Oリングに用いられる耐薬品性のポリフッ化ビニリデン、または非特許文献3で用いられるPTFEは、耐熱温度の約200℃以上に加熱する場合に熱分解してしまうため、ポリマーヒューム粒子やパーフルオロイソブチレンといった有害ガスが発生することが知られている。正しい粒子個数の測定が行えないことになる。更に装置外部への漏洩となると、場合によっては作業従事者への健康被害や環境汚染等を招く事態も考えられる。
【0039】
本発明者は、上記背景技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、カウンターフローデニューダにおいて、改良・改善の余地がある一対の管支持兼シール構造に着目した。
【0040】
そして、カウンターフローデニューダCFDの管支持兼シール構造Sa,Sbとして、グラファイトを素材とし、多孔膜内管1の外周円筒面に対するシール接触部を、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面50とするグラファイトフェラル5a,5bを有するシール構造を採用した。
【0041】
よって、多孔膜内管1の外周円筒面の支持を、支持姿勢が安定する両端支持であって、且つ、圧接シール支持内面50により分散荷重による面支持にすることで、集中荷重による線支持に比べて支持荷重を低く抑えながらも、高い気密性を確保することができる。加えて、シール接触部に耐熱性の上限温度がゴム系素材よりも高いグラファイトを素材とするグラファイトフェラル5a,5bを選定することで、耐熱性と柔軟性の両方を兼ね備えたシール構造にすることができる。この結果、高温度条件でのガス除去要求に応え、ゴム系素材の耐熱温度を超える高温環境下であってもシール機能を保って正常なガス交換を行うことができるカウンターフローデニューダCFDを提供できる。
【0042】
[試料気体のガス交換作用]
次に、
図4を参照して試料気体のガス交換作用を説明する。気中粒子個数濃度を測定する多孔膜内管1の内面により画成されるサンプルガスチャネルSCの入口に矢印方向(
図4の右方向)に導入される試料気体は、粒子試料(Particles)以外にガス成分(Sample Gas)が含まれているとする。多孔膜内管1の外周面と外管2の内周面により画成されるパージガスチャネルPCを矢印方向(
図4の左方向)に流れるガスは、空気や窒素ガス等によるパージガス(Purge Gas)とする。
【0043】
サンプルガスチャネルSCの入口に導入される試料気体(粒子試料+ガス成分)に対して、パージガスチャネルPCに加熱された空気等のパージガスを流すことで、粒子試料とガス成分の拡散係数の違いによりガス成分のみが多孔膜内管1によりガス交換される。ガス交換では、パージガスチャネルPCからの加熱された空気がサンプルガスチャネルSCに透過する。一方、サンプルガスチャネルSCに導入される試料気体のうち粒子個数計測に影響しうるガス成分である、粒子に凝縮しうるガス成分、排出ガス中の半揮発性ガス、溶媒等の液体が蒸発したガス成分等が、多孔膜内管1からパージガスチャネルPCに透過する。このように、多孔膜内管1での透過作用によってガス交換が行われる。
【0044】
このように、サンプルガスチャネルSCの入口に導入される試料気体のうち、気中粒子個数濃度等の正確な測定を阻害するガス成分のみが選択的に除去される。よって、サンプルガスチャネルSCの出口からの粒子試料は、個数濃度を損なうことなく、多孔膜内管1の下流側に配置した装置により気中粒子個数濃度等を測定することが可能になる。
【0045】
[多孔膜内管の支持/シール作用]
次に、
図5を参照して多孔膜内管1の支持/シール作用を説明する。カウンターフローデニューダCFDでは、管支持兼シール構造Sa,Sbのシール部材として、耐熱性の材質によるグラファイトフェラル5a,5bを使うとき、寸法バラツキのある多孔膜内管1との気密性をどのように確保するかが最も重要な点である。
【0046】
つまり、多孔膜内管1は、外径寸法のバラツキが多くみられ、カウンターフローデニューダCFDにて多孔膜内管1の両端部を耐熱性シール部材のみで支持する構造では、グラファイトフェラル5a,5bのサイズの選択が正しくなければ、ガス漏れの原因となる隙間が容易に形成されてしまう。
【0047】
これに対して、実施例1の管支持兼シール構造Saでは、多孔膜内管1の円筒外周面に当接するグラファイトフェラル5aを挟んで固定リテーナリング4aと可動リテーナリング6aを追加した組み合わせシール構造を採用している。
【0048】
したがって、入口ナット8aを工具により回してねじ込むと、入口ナット8aに組み合わせられる入口ポートコネクタ7aが
図5の矢印Eに示す右方向に移動する。この入口ポートコネクタ7aの管軸方向の移動により、コネクタ端面71が可動リテーナリング6aのリング端面61を管軸方向に押すことになる。可動リテーナリング6aのリング端面61が管軸方向に押されると、グラファイトフェラル5aに対して、固定リテーナリング4aを反力受けとする管軸方向の圧縮力が作用し、グラファイトフェラル5aは、両側から挟み込む方向に作用する圧縮力で圧縮変形する。このとき、グラファイトフェラル5aの外径方向への膨張変形については、可動リテーナリング6aのリング内周面63とフェラル外周面53との圧接により規制されて抑えられる。このため、グラファイトフェラル5aは、多孔膜内管1が存在する内径方向に向かって膨張変形することになる。
【0049】
このグラファイトフェラル5aの内径方向の膨張変形量は、グラファイトフェラル5aの圧接シール支持内面50と多孔膜内管1の円筒外周面とが離れて隙間が存在する場合、隙間を埋める膨張変形量になる。また、グラファイトフェラル5aの圧接シール支持内面50と多孔膜内管1の円筒外周面とが当接している場合、グラファイトフェラル5aの内径方向の膨張変形量は、多孔膜内管1に作用する圧接力になり、圧接力は膨張変形量の大きさに比例する。
【0050】
このように、多孔膜内管1の外径寸法やグラファイトフェラル5aの内径寸法にバラツキがあったとしても、入口ナット8aのねじ込み量調整により、寸法バラツキに合わせて膨張変形させることができる。よって、多孔膜内管1の外径寸法やグラファイトフェラル5aの内径寸法にバラツキがあったとしても、適正な圧接力に調整され、高いガスシール機能が確保される。
【0051】
さらに、実施例1の固定リテーナリング4aはテーパー面41を有し、グラファイトフェラル5aはテーパー面41にテーパー嵌合するテーパー面51を有する。このため、グラファイトフェラル5aに管軸方向の圧縮力が作用すると、グラファイトフェラル5aは、両側から挟み込む方向に作用する圧縮力に、テーパー面41、51のテーパー嵌合面による内径方向分力が加わって内径方向に膨張変形することになる。したがって、テーパー嵌合有りの場合は、管軸方向に付与される圧縮力が同じとき、テーパー嵌合無しの場合に比べ、グラファイトフェラル5aの内径方向への膨張変形量を大きく確保することができる。
【0052】
このため、多孔膜内管1の外径寸法やグラファイトフェラル5aの内径寸法にバラツキがあったとき、バラツキを吸収するバラツキ吸収幅が拡大される。この結果、多孔膜内管1の外径寸法のバラツキに対してグラファイトフェラル5aのサイズを厳密に選択するような作業を要さず、多孔膜内管1とグラファイトフェラル5aとの組み合わせ選択作業が非常に簡潔になる。
【0053】
以上説明したように、実施例1のカウンターフローデニューダCFDにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0054】
(1)同心状に配置された多孔膜内管1と外管部材(外管2、一対のT字管3a,3b)の二重管構造によりサンプルガスチャネルSCとパージガスチャネルPCが画成され、サンプルガスチャネルSCを流れる試料気体に含まれるガス成分を、パージガスが流れるパージガスチャネルPCへの拡散により除去することで粒子試料を生成するカウンターフローデニューダCFDであって、多孔膜内管1の両端部と外管部材に介装され、外管部材に対し多孔膜内管1の両端部を支持しつつガス漏れを封止する一対の管支持兼シール構造Sa,Sbを備え、管支持兼シール構造Sa,Sbは、グラファイトを素材とし、多孔膜内管1の外周円筒面に対するシール接触部を、圧接力が与えられた円筒形状による圧接シール支持内面50とするグラファイトフェラル5a,5bを有する。このため、高温度条件でのガス除去要求に応え、ゴム系素材の耐熱温度を超える高温環境下であってもシール機能を保って正常なガス交換を行うことができる。
【0055】
(2)管支持兼シール構造Sa,Sbは、グラファイトフェラル5a,5bに加え、管軸方向の圧縮力を付与する圧縮力付与部材(入口ポートコネクタ7a、出口ポートコネクタ7b)とグラファイトフェラル5a,5bとに挟まれた位置に配置され、管軸方向に移動可能な可動リテーナリング6a,6bを備え、可動リテーナリング6a,6bは、圧縮力付与部材の部材端面(コネクタ端面71)に圧接するリング端面61と、グラファイトフェラル5a,5bのリング垂直端面52に圧接するリング垂直端面62と、を有する。即ち、圧縮力付与部材(入口ポートコネクタ7a、出口ポートコネクタ7b)からグラファイトフェラル5a,5bに付与する管軸方向の圧縮力を調整することが可能である。このため、多孔膜内管1の外径寸法やグラファイトフェラル5a,5bの内径寸法にバラツキがあったとしても、適正な圧接力に調整され、高いガスシール機能を確保することができる。
【0056】
(3)管支持兼シール構造Sa,Sbは、可動リテーナリング6a,6bに加え、外管部材(一対のT字管3a,3b)とグラファイトフェラル5a,5bとに挟まれた位置に配置され、管軸方向に固定の固定リテーナリング4a,4bを備え、固定リテーナリング4a,4bは、グラファイトフェラル5a,5bのテーパー面51にテーパー嵌合するテーパー面41と、外管部材に形成されたシール構造嵌合穴33a,33bの穴端面に押付けられるリング端面43と、を有する。即ち、多孔膜内管1の外径寸法やグラファイトフェラル5a,5bの内径寸法にバラツキがあったとき、テーパー嵌合無しの場合に比べ、バラツキを吸収するバラツキ吸収幅を拡大させることができる。このため、多孔膜内管1とグラファイトフェラル5a,5bを選定するとき、厳密にサイズを選定する作業を要さず、寸法バラツキがある多孔膜内管1とグラファイトフェラル5a,5bの選定負担を軽減することができる。
【0057】
(4)多孔膜内管1は、シラス多孔質ガラスSPGを管素材とし、グラファイトフェラル5a,5bは、350℃以上の耐熱性と、モース硬度1~2による柔軟性との両方を兼ね揃えた圧縮可能なグラファイト材料を素材とする。即ち、耐熱性と透過性に優れた多孔質体であるシラス多孔質ガラスSPGを多孔膜内管1に選択し、耐熱性と柔軟性を持つ材料によるグラファイトフェラル5a,5bを選択している。このため、高温度条件でのガス除去要求に応え、350℃以上の高温環境下であってもシール機能を保って正常なガス交換を行うことができる。また、グラファイトフェラル5a,5bは、カッター等で切断できるため、円筒状の多孔膜内管1を取り外す作業にも適する。
実施例2は、実施例1のカウンターフローデニューダCFDを適用し、サンプルガスチャネルSCへ導入される試料気体を粒子発生器から発生するイソプロピルアルコール粒子(以下、「IPA粒子」という。)とするIPA粒子試料個数測定システムである。なお、IPAは「iso-Proply Alcohol」の略である。
PIDセンサ26は、正常にガス交換できているか否かを監視するコントローラ90に接続される。コントローラ90は、PIDセンサ26からのセンサ値(IPAガス濃度)を入力し、ガス交換が正常にできているときのIPAガス濃度領域であると、例えば、正常確認ランプ等を点灯させて正常であることを確認する。一方、ガス交換が正常にできているときのIPAガス濃度領域から外れると、例えば、多孔膜内管1の破損や管支持兼シール構造Sa,Sbからのガスリーク等による異常と判定し、異常を報知器91からの警報音やアナウンス音等により報知する。
実施例2のシステムでは、半導体製造プロセスにおける、洗浄後のウェーハ乾燥法の一種で、IPA(「2-プロパノール」ともいう。)を用いて行う直接置換乾燥、蒸気乾燥、マランゴニ乾燥等によるIPA乾燥中に、IPAの不純物に由来する微粒子を測定することができる。
例えば、IPA液をネブライザー法等に基づいてIPA粒子発生器16によりIPA粒子を発生させ、カウンターフローデニューダCFDの試料気体入口9より多孔膜内管1によるサンプルガスチャネルSCに試料気体を流す。一方、パージガス供給源18からのパージガスを、マスフローコントローラー10aで流量を制御しながらパージガス入口11へ導き、パージガスチャネルPCに流す。そして、パージガス出口12から熱交換器20とHEPAフィルター21を通してマスフローコントローラー19bで流量を制御しながらポンプ22でパージガスを吸引する。
このように、サンプルガスチャネルSCに試料気体を流し、パージガスチャネルPCにパージガスを流すことで、ガスと粒子の拡散係数の違いによりガス(余剰のIPA蒸気)のみが多孔膜内管1によってガス交換され、粒子個数計測に影響しうる液体であるIPA粒子から蒸発したガス成分を、多孔膜内管1からパージガスチャネルPCへと透過させ、多孔膜内管1のサンプルガスチャネルSCを流れる粒子は、個数濃度を損なうことなく、試料気体出口10から出た粒子試料の個数を粒子計測器17で測定するができる。このとき、IPA粒子発生器16を第1加熱ヒーター23により50℃~200℃に加熱し、カウンターフローデニューダCFDを第2加熱ヒーター24により50℃~350℃に加熱してもカウンターフローデニューダCFDの管支持兼シール構造Sa,Sbは、耐熱性を有するためガス漏れすることなく正常なガス交換ができる。また、パージガス出口12から粒子計測器17へ供給される粒子試料も高温になるが、熱交換器25により室温に戻されることで、粒子計測器17でのIPA粒子試料個数測定に支障を与えることもない。
(5)パージガスチャネルPCのパージガス出口12に、多孔膜内管1によりガス交換が正常に行われているか否かでセンサ値が変化するPIDセンサ26(ガスセンサ)を設け、PIDセンサ26からのセンサ値を入力し、センサ値に基づいてガス交換の正常判定や異常判定を行うコントローラ90を設ける。このため、カウンターフローデニューダCFDによりガス交換が正常に行われているとの確認ができると共に、多孔膜内管1の破損や管支持兼シール構造Sa,Sbからのガスリークを確認することができる。