IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CYC株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図1
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図2
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図3
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図4
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図5
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図6
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図7
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図8
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図9
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図10
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図11
  • 特開-工業炉用煤塵除去装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164725
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】工業炉用煤塵除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/02 20060101AFI20241120BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20241120BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20241120BHJP
   B01D 45/12 20060101ALI20241120BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20241120BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B01D46/02 Z
B01D53/50 100
B01D53/56 100
B01D45/12 ZAB
F23J15/06
F23J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080408
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】514032773
【氏名又は名称】CYC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】三品 仁
(72)【発明者】
【氏名】板津 雅春
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸示
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
4D031
4D058
【Fターム(参考)】
3K070DA07
3K070DA32
3K070DA35
4D002AA02
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA04
4D002BA13
4D002BA14
4D002CA07
4D002CA13
4D002DA05
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA66
4D002EA05
4D002FA02
4D031AC07
4D031BA06
4D031BB04
4D031DA05
4D031EA01
4D058JA04
4D058KB05
4D058QA01
4D058QA08
4D058TA02
4D058UA03
4D058UA25
(57)【要約】
【課題】工業炉用排ガス処理装置内等で発生し煤塵が含有された排ガスが大気に放出される前に有効に除去することができる新規な工業炉用煤塵除去装置を提供する。
【解決手段】工業炉2又は工業炉用排ガス処理装置7内で発生し煤塵を含有する排ガスが一方の管路8を介して流入するとともに該一方の管路8から流入した排ガスを冷却する冷却装置3と、この冷却装置3に他方の管路9を介して接続され、該冷却装置3により冷却された排ガスを濾過し該排ガスに含有する煤塵を捕捉するフィルタ94,95を備えた煤塵除去装置4と、を備えてなる。
【選択図】 図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化炉や焼却炉その他の工業炉の炉内で発生し煤塵が含有された排ガス又は該工業炉からの排ガスを化学分解する工業炉用排ガス処理装置内で発生し煤塵が含有された排ガスが一方の管路を介して流入するとともに該一方の管路から流入した排ガスを冷却する冷却装置と、
この冷却装置に他方の管路を介して接続され、該冷却装置により冷却された排ガスを濾過し該排ガスに含有する煤塵を捕捉するフィルタを備えた煤塵除去装置と、
を備えてなることを特徴とする工業炉用煤塵除去装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、冷却水により前記排ガスを内部で冷却させる水冷式冷却部と、この水冷式冷却部の下方に連続し該水冷式冷却部と連通してなるとともに内部空間が逆円錐状に成形された筐体を有してなる空冷式冷却部と、を有し、
上記水冷式冷却部は、円筒状に成形された内筒と、この内筒の外側に配置された外筒と、上記内筒と外筒との間に形成され冷却水が流通する冷却水流通用空間と、を有してなるとともに、上記冷却水流通用空間内に冷却水を供給する供給ポートと、該冷却水流通用空間内から加熱された冷却水を排出する排出ポートとを備え、
前記一方の管路は、上記内筒の内周面方向に上記排ガスが流入するように該内筒に対して斜めに接続されてなり、
この一方の管路から上記水冷式冷却部内に流入した排ガスは、上記内筒の内周を旋回した後に上記空冷式冷却部を構成する筐体の内周を旋回して前記他方の管路内に流入することを特徴とする請求項1記載の工業炉用煤塵除去装置。
【請求項3】
前記冷却装置を構成する内筒の内側には、先端から冷却水を噴霧する噴霧ノズルが配置され、前記一方の管路から流入した排ガスに上記冷却液が噴霧されるよう構成されてなることを特徴とする請求項2記載の工業炉用煤塵除去装置。
【請求項4】
前記空冷式冷却部の下方には、前記冷却装置内において落下した煤塵が貯留される煤塵貯留部を有し、この煤塵貯留部には、上面で該煤塵を支持するとともに該煤塵を下方に落下させる落下操作部材が配置されてなることを特徴とする請求項2又は3記載の何れかの工業炉用煤塵除去装置。
【請求項5】
前記落下操作部材は、前記塵貯留部の上端側中途部に配置され水平方向に往復動操作可能な第1のシャッタと、この第1のシャッタの下方に配置され水平方向に往復動操作可能な第2のシャッタとからなり、
上記第2のシャッタにより上記煤塵貯留部内を閉塞した状態で上記第1のシャッタを往動操作されて該第1のシャッタの上面に支持された煤塵を落下させた後に複動操作させて該煤塵貯留部の上端側中途部を閉塞し、次いで上記第2のシャッタを往動操作させて該煤塵貯留部の下端側を開放することにより、該煤塵貯留部内の煤塵を下方に落下することができるように構成されてなることを特徴とする請求項4記載の工業炉用煤塵除去装置。
【請求項6】
前記冷却装置と前記煤塵除去装置とを接続する他方の管路の一端は、該冷却装置を構成する水冷式冷却部内の中央に配置され下端は前記空冷式冷却部の上端近傍に開口を有してなる排出管の上端に接続され、
該煤塵除去装置は、上記他方の管路の他端が接続された除去用筐体と、この除去用筐体内に配置され前記排ガスに含有された煤塵が外側面で捕捉される前記フィルタとしてのバグフィルタと、このバグフィルタ内を通過した排ガスを上記除去用筐体から外部に排出する排出用管路と、を備えてなることを特徴とする請求項2又は3記載の何れかの工業炉用煤塵除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化炉、焼却炉その他の工業炉により熱分解された被処理物から生じた排ガスに含有する煤塵を大気に放出する前段階で除去するために使用される工業炉用煤塵除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化炉(熱分解炉)や焼却炉等の各種の工業炉は、該工業炉内に収容された被処理物をバーナー等により熱分解するために使用されるが、該被処理物がこうした熱分解されると該工業炉からはガス(排ガス、排煙)が発生し、この排ガスには煤塵硫黄酸化物(SOx)、二酸化硫黄(SO)又は窒素酸化物(NOx)等が含まれていることが多く、我が国では古くからこれらの物質が汚染物資とされ、規制の対象とされてきた。そこで、こうした排ガスに含まれる汚染物質を除去する技術(排ガス処理技術)が提案され又は実施されている。そして、こうした排ガス処理技術は、湿式法、乾式法、半乾式法に大別することができ、上記湿式法は、上記汚染物質と反応させる処理剤として、アルカリ水溶液又はそのスラリーを使用するものであり、上記乾式法は、活性炭や石灰石又は石炭灰などの処理剤(又は吸着剤)により汚染物質を化学反応させ別異の化学物質に変化させ或いは吸着させるものであり、上記半乾式法は、その一例として、消石灰スラリーを反応塔中に噴霧することにより上記大気汚染物質を例えば亜硫酸カルシウム等の粉体に転化するもののように、上記湿式法と乾式法とを組み合わせたものである。
【0003】
例えば、特公昭61-39095号公報(特許文献1)に開示された排ガス処理技術は、上記乾式法に分類される排ガス処理技術である。そして、この技術は、ボイラによる燃焼ガスを石灰からなるミクロン粒子を噴霧することにより石灰と燃焼ガス中の硫黄酸化物を反応させる工程と、その後に無水石膏を未反応石灰及び煤塵と共に集塵装置により排煙中より除去する工程を備え、上記集塵装置で回収した粉塵を分級機にかけて無水石膏および未反応石灰を多く含んだ細粉と、主として灰分からなる粗粉に分け、細粉を水素および一酸化炭素またはそのいずれか一方を含む高温の還元ガス中に噴霧して硫化カルシウムに還元した後、該ガスを冷却することによって、硫化カルシウムと炭酸ガスおよび水蒸気を反応させて炭酸カルシウムと硫化水素にし、このガス中から集塵装置で炭酸カルシウムの微粒子を分離し、これを排ガス処理剤としてボイラの中に再度噴霧する一方、集塵装置から排出されたガス中から硫化水素を回収することを特徴とするものである。こうした技術によれば、排ガス処理工程によって発生した物質を廃棄物として処理する必要性が減少し、再利用することができる点で評価に値する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭61-39095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された(乾式法による)排ガス処理技術では、該特許文献1に開示された図面からも明らかなように、各工程を経るためのプラントは複雑化しているばかりか巨大化されており、高コストとならざるを得ず、また広大な設置面積が必要となることから、採用することができない。また、こうした排ガス処理技術では、新たにプラントを建設する場合であればともかく、既に設置された炭化炉や焼却炉等の各種の工業炉の一部を変更したり組み込んだりすることにより、簡易に排ガス処理することができない。
【0006】
他方、上記湿式法により排ガス処理する場合には、スラリーを循環させたり多量の水が必要となったりするため、炭化炉や焼却炉等の各種の工業炉とは別個に排水処理施設が必要となる。特に、炭化炉により熱分解する対象が、使用済リチウムイオン電池である場合には、該炭化炉による熱分解によりコバルト等の高価な稀金属を回収する点のみを挙げれば、炭化炉による熱分解は効果的である。しかし、その一方において、この湿式法により排ガス処理する場合、特に一般的に用いられる方法であるスクラバー法(石灰水による湿式洗浄法)による場合では、先に記載したように排水処理設備が必要であることは言うまでもなく、該排水処理設備内には、石灰水との間における化学反応により生成されたフッ化カルシウムが沈殿すること、装置に付着するスケールを適宜処理する必要性があること、水に溶解して腐食性・有毒性の強いフッ化水素酸(フッ酸)が発生すること等を理由として、該装置及びメンテナンス作業が共に複雑となる。また、この場合では、上記フッ化水素は、ガラスも侵すほどの強い腐食性を有することに鑑みれば、上記炭化炉(熱分解炉)からの排ガスを湿式法により処理する処理設備の構成部材の素材として上記耐腐食性を有する素材の選定作業はかなりの困難性を伴う。また、上記湿式法による排ガス処理を行う場合であっても、新たにプラントを建設する場合であればともかく、先に記載した乾式法に係る課題と同じように、既に設置された炭化炉や焼却炉等の各種の工業炉の一部を変更することにより、簡易に排ガスに含まれた汚染物質を排ガス処理することができない。
【0007】
そこで、本出願人は、上述した一般的な湿式法や乾式法に係る排ガス処理技術や上記特許文献1に開示された排ガス処理技術が有する課題を解決するために、工業炉の排気塔の中途部に、工業炉用排ガス処理装置を配置したものを提案した。この工業炉用排ガス処理装置は、排ガスに含まれた所定の汚染物質を処理する処理剤が収容された内側容器を上下に段積みしたものである。上記処理剤は、排ガス処理される汚染物質との間で化学反応する物質又は該汚染物質を物理的に吸着する物資であり、例えば、生石灰や消石灰等のカルシウム化合物、石灰石(炭酸カルシウム系)や骨灰等である。
【0008】
しかしながら、上記工業炉内で発生し又は上記処理剤として上記石灰を主成分とした処理剤を使用した工業炉用排ガス処理装置から発生した煤塵(ダスト)が発生することがあり、こうした煤塵が含まれた排ガスを大気に放出することは近隣住民からの苦情の原因ともなりかねず決して好ましいものではない。
【0009】
そこで、本発明は、上記煤塵を含有する排ガスが大気に放出される前に有効に除去することができる新規な工業炉用煤塵除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、炭化炉や焼却炉その他の工業炉の炉内で発生し煤塵が含有された排ガス又は該工業炉からの排ガスを化学分解する工業炉用排ガス処理装置内で発生し煤塵が含有された排ガスが一方の管路を介して流入するとともに該一方の管路から流入した排ガスを冷却する冷却装置と、この冷却装置に他方の管路を介して接続され、該冷却装置により冷却された排ガスを濾過し該排ガスに含有する煤塵を捕捉するフィルタを備えた煤塵除去装置と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
この第1の発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、炭化炉や焼却炉その他の工業炉の炉内で発生し煤塵が含有された排ガス又は該工業炉からの排ガスを化学分解する工業炉用排ガス処理装置内で発生し煤塵が含有された排ガスが上記一方の管路を介して上記冷却装置内に流入すると、該排ガスはこの冷却装置により冷却され、その後上記他方の管路を介して該冷却装置に接続された煤塵除去装置により該排ガスに含まれた煤塵が除去される。すなわち、この発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、上記煤塵除去装置を構成するフィルタにより煤塵が捕捉される前段階において、工業炉の炉内からの排ガスを冷却するものである。これは、上記煤塵除去装置を構成するフィルタは、通常樹脂を素材とするものが多い中、上記工業炉から排出された排ガスの温度は高温であり、こうした高温の排ガスを、上記樹脂を素材とするフィルタにより濾過した場合、該フィルタが溶解して濾過機能を阻害するからである。
【0012】
したがって、こうした構成に係る工業炉用煤塵除去装置によれば、フィルタを溶解させることなく安定した状態で継続的に排ガスに含有された煤塵を除去した上で、該排ガスを大気に放出することができる。
【0013】
なお、上記第1の発明を構成する冷却装置は、少なくとも工業炉等からの排ガスの温度を冷却することができる機能を有したものであれば、以下に説明する第2の発明(請求項2記載の発明)のように、言わば水冷式とも評価することができる具体的な構成である必要はなく、空冷式の構造であっても良い。また、上記煤塵除去装置も、上記冷却装置により冷却された排ガスを濾過し該排ガスに含有する煤塵を捕捉するフィルタを備えたものであれば足りる。なお、上記フィルタについても、具体的にはバグフィルタ(第5の発明(請求項5記載の発明)参照)を挙げることはできるが、排ガスに含有する煤塵を捕捉することができる機能を有していれば、その形状や構造は特に限定されるものではない。また、フィルタとして上記バグフィルタを用いる場合であっても、排ガスが該バグフィルタの外部から内部に向かって供給され、外側面において煤塵が捕捉される構造であっても良いし、こうした構造とは反対に、排ガスが該バグフィルタの内部から外部に向かって供給され、内側面において煤塵が捕捉される構造であっても良い。また、上記フィルタや第5の発明を構成するバグフィルタの素材は、樹脂製の素材を使用することが望ましく、こうした樹脂製の素材としては、例えば、ポロプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファサイド(PPS)又はポリテトラフルオロエチレン(PTEE)が使用可能な温度(排ガスの温度により溶融して変形等することが防止できる温度)としては良好であるが、こうした素材に限定されることなく、例えば、ナイロン、アクリル、ポリエステル、アラミド、ポリイミド等であっても良い。
【0014】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記冷却装置は、前記冷却装置は、冷却水により前記排ガスを内部で冷却させる水冷式冷却部と、この水冷式冷却部の下方に連続し該水冷式冷却部と連通してなるとともに内部空間が逆円錐状に成形された筐体を有してなる空冷式冷却部と、を有し、上記水冷式冷却部は、円筒状に成形された内筒と、この内筒の外側に配置された外筒と、上記内筒と外筒との間に形成され冷却水が流通する冷却水流通用空間と、を有してなるとともに、上記冷却水流通用空間内に冷却水を供給する供給ポートと、該冷却水流通用空間内から加熱された冷却水を排出する排出ポートとを備え、前記一方の管路は、上記内筒の内周面方向に上記排ガスが流入するように該内筒に対して斜めに接続されてなり、この一方の管路から上記水冷式冷却部内に流入した排ガスは、上記内筒の内周を旋回した後に上記空冷式冷却部を構成する筐体の内周を旋回して前記他方の管路内に流入することを特徴とするものである。
【0015】
この第2の発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、前記冷却装置は水冷式冷却部と空冷式冷却部とを備えている。この水冷式冷却部は、円筒状に成形された内筒と、この内筒の外側に配置された外筒と、上記内筒と外筒との間に形成され冷却水が流通する冷却水流通用空間と、を有しており、上記内筒と外筒とにより形成された冷却水流通用空間内に上記供給ポートから供給された冷却水により間に上記内筒を介して(排ガスが内筒の内周面と接触されることにより)冷却されるとともに加熱された冷却水は、上記排出ポートから外部に排出される。この時、上記一方の管路は、上記内筒の内周面方向に上記排ガスが流入するように該内筒に対して斜めに接続されていることから、該排ガスは上記内筒の内周面に接触しながら旋回流となって移動し、その後上記空冷式冷却部方向に移動する。また、この空冷式冷却部は、上記水冷式冷却部と連通してなるとともに内部空間が逆円錐状に成形された筐体を有してなるものである。そして、この空冷式冷却部内に流入・移動した排ガスは、上記筐体の内周面に接触しながら旋回し、その後に上記他方の管路内に至る。すなわち、この工業炉用煤塵除去装置では、冷却装置を構成する水冷式冷却部内において常に冷却水が上記冷却水流通用空間内に供給されることにより、排ガスは効果的に冷却されるとともに、上記空冷式冷却部内においても更に冷却され、その後に上記煤塵除去装置内に移動する。
【0016】
したがって、この第2の発明に係る工業炉用煤塵除去装置によれば、より効果的に排ガスを冷却した上で上記煤塵除去装置内に供給することが可能となる。特に、上記冷却装置を構成する水冷式冷却部と空冷式堤脚部とによる排ガスの冷却により、フィルタの選択範囲に自由度を持たせることが可能となる。換言すれば、上記冷却装置により排ガスを冷却する温度は、上記フィルタの素材の溶融温度により相対的に決定されるものであるところ、上記冷却水流通用空間内に供給される冷却水の温度を低く設定すれば、フィルタの購入コストや重量或いは操作性等の諸条件を加味した結果、溶融温度が比較的低い素材に係るフィルタを選択することが可能となる。なお、上記内筒の内周面や上記筐体の内周面には、上記排ガスの旋回流をガイドする螺旋状のフィンが形成されていても良い。こうしたフィンの形成により、上記排ガスの旋回流の失速(低減)を抑制することができるばかりではなく、上記内筒や筐体と排ガスとの接触面積が増大することから、より排ガスの冷却効果を促進することができる。
【0017】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第2の発明において、前記冷却装置を構成する内筒の内側には、先端から冷却水を噴霧する噴霧ノズルが配置され、前記一方の管路から流入した排ガスに上記冷却液が噴霧されるよう構成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
この第3の発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、上記冷却装置を構成する内筒の内側には、先端から冷却水を噴霧する噴霧ノズルが配置されている。したがって、上記一方の管路を介してこの冷却装置内に流入した排ガスは、上記冷却水流通用空間内に供給される冷却水により間に内筒を介した状態で冷却されるばかりではなく、上記噴霧ノズルから噴霧される冷却水が煤塵に接触し、これが気化する際に気化熱を奪うことから更に一層排ガスを冷却することができる。
【0019】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第2又は第3の発明の何れかにおいて、前記空冷式冷却部の下方には、前記冷却装置内において落下した煤塵が貯留される煤塵貯留部を有し、この煤塵貯留部には、上面で該煤塵を支持するとともに該煤塵を下方に落下させる落下操作部材が配置されてなることを特徴とするものである。
【0020】
この第4の発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、上記煤塵貯留部には、上面で該煤塵を支持するとともに該煤塵を下方に落下させる落下操作部材が配置されている。したがって、上記落下操作部材が作業者により操作されると、それまで該落下操作部材の上面に支持されていた煤塵は、上記煤塵貯留部内から落下される。特に、上記第3の発明のように、冷却水を噴霧ノズルから噴霧する構成(水噴霧式水冷機構)を採用し、該噴霧される冷却水の噴霧量によっては、排ガスに含有された煤塵(微粒子)が上記冷却装置内において旋回する途中で凝集し、この凝集された煤塵が落下するところ、この第4の発明では、こうした落下した煤塵をこの冷却装置内から回収することができることから、後続する上記煤塵除去装置を構成するフィルタの交換頻度又は捕捉された煤塵の除去頻度を軽減する(フィルタへの負荷低減を図る)ことが可能となる。
【0021】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第4の発明において、前記落下操作部材は、前記塵貯留部の上端側中途部に配置され水平方向に往復動操作可能な第1のシャッタと、この第1のシャッタの下方に配置され水平方向に往復動操作可能な第2のシャッタとからなり、上記第2のシャッタにより上記煤塵貯留部内を閉塞した状態で上記第1のシャッタを往動操作されて該第1のシャッタの上面に支持された煤塵を落下させた後に複動操作させて該煤塵貯留部の上端側中途部を閉塞し、次いで上記第2のシャッタを往動操作させて該煤塵貯留部の下端側を開放することにより、該煤塵貯留部内の煤塵を下方に落下することができるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0022】
この第5の発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、上述したように、上記第2のシャッタにより上記煤塵貯留部内を閉塞した状態で上記第1のシャッタを往動操作されて該第1のシャッタの上面に支持された煤塵を落下させた後に複動操作させて該煤塵貯留部の上端側中途部を閉塞し、次いで上記第2のシャッタを往動操作させて該煤塵貯留部の下端側を開放することにより、該煤塵貯留部内の煤塵を下方に落下することができるように構成されてなるものである。したがって、こうした構成を採用することにより、上記第2のシャッタを往動操作させて該煤塵貯留部の下端側を開放する際には、必ず上記第1のシャッタにより煤塵貯留部内は閉塞されていることから、該煤塵貯留部から外気が冷却装置内に流入してしまうことを有効に防止することができる。換言すれば、この第5の発明によれば、工業炉用煤塵除去装置を停止させてからでなければ、該煤塵貯留部内に貯留された煤塵を外部に排出することができないと言う事態を有効に回避することができる。
【0023】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第2の発明又は第3の発明の何れかにおいて、前記冷却装置と前記煤塵除去装置とを接続する他方の管路の一端は、該冷却装置を構成する水冷式冷却部内の中央に配置され下端は前記空冷式冷却部の上端近傍に開口を有してなる排出管の上端にF接続され、該煤塵除去装置は、上記他方の管路の他端が接続された除去用筐体と、この除去用筐体内に配置され前記排ガスに含有された煤塵が外側面で捕捉される前記フィルタとしてのバグフィルタと、このバグフィルタ内を通過した排ガスを上記除去用筐体から外部に排出する排出用管路と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0024】
この第6の発明に係る工業炉用煤塵除去装置では、上記一方の管路を介して排ガスが上記冷却装置内に流入すると、この排ガスは上記内容の内周面と上記排出管の外周面との間に形成された円環状の空間内を旋回しながら移動し、徐々に上記空冷式冷却部内を旋回し、次いで、該排ガスは上記排出管の下端から流入し、上記他方の管路を介して煤塵除去装置を構成する除去用筐体内に流入する。この除去用筐体内には、前記フィルタとしてのバグフィルタが配置され、排ガスはこのバグフィルタを通過して上記排出用管路内に流入し、その後に外部に排出される。したがって、上記排ガスに含有する煤塵は、上記バグフィルタの外側面に捕捉され、該バグフィルタにより濾過された排ガスは上記排出用管路を通過して外部(大気中)に放出される。
【0025】
したがって、第6の発明に工業炉用煤塵除去装置によれば、冷却装置内に流入した排ガスは、上記水冷式冷却部内において大きな抵抗がない状態で旋回され、こうした旋回流は該水冷式冷却部の下方に形成された空冷式冷却部においても継続されることから、該冷却装置内においては効果的な冷却効果を発揮することができる。また、上記煤塵除去装置によれば、上記バグフィルタにより排ガスに含有する煤塵を除去した上で外部に放出することができるばかりではなく、所定時間内に該バグフィルタの外側面に捕捉され堆積した煤塵を極めて簡単に該バグフィルタから取り除くことができ、或いは新たなバグフィルタに簡単に交換することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、工業炉から排出される排ガスに含有した煤塵を大気に放出される前に除去することができる。特に、この発明では、高温とされた排ガスが煤塵除去装置に至る前段階において冷却装置により冷却されることから、該煤塵除去装置を構成するフィルタを、融点の低い素材からなるものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】工業炉に接続された煤塵除去装置を示す平面図である。
図2】工業炉に接続された煤塵除去装置を示す正面図である。
図3】冷却装置を示す正面図である。
図4】冷却装置を示す平面図である。
図5】冷却装置を示す右側面図である。
図6】第1のシャッタ及びその取付構造を示す背面図である。
図7】第1のシャッタ及びその取付構造を示す平面図である。
図8】第1のシャッタ及びその取付構造を示す左側面図である。
図9】第2のシャッタ及びその取付構造を示す背面図である。
図10】第2のシャッタ及びその取付構造を示す平面図である。
図11】第2のシャッタ及びその取付構造を示す左側面図である。
図12】煤塵除去装置の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態に係る工業炉用煤塵除去装置は、工業炉としての炭化炉(熱分解炉)に接続された煤塵除去装置に本発明を適用したものである。
【0029】
この実施の形態に係る工業炉用煤塵除去装置1は、図1又は図2に示すように、炭化炉2から排出された排ガスを冷却する冷却装置3と、この冷却装置3により冷却された排ガスに含有された煤塵を除去する煤塵除去装置4とを備えている。なお、上記炭化炉2は、リチウムイオン電池をリサイクルするために該リチウムイオン電池を熱分解するものであるととともに、該リチウムイオン電池を無酸素下で熱分解して発生する乾留ガスを加熱用の燃料として利用するものである。このように上記炭化炉2は、リチウムイオン電池を無酸素熱分解するものであることから、該リチウムイオン電池に使用されているコバルトのような高価なレアメタルを酸化させずに回収できる。そして、上記炭化炉2には、上記熱分解する過程で発生した排ガスを大気に放出する排気塔21が立設され、該排気塔21の中途部には、分岐管6の基端が固定されている。なお、この工業炉用煤塵除去装置1には、該排ガスの流路の下流側に後述するブロア86が配置され、このブロア86の吸引力により上記排気塔21の上端から外気が該排気塔21から流入し、後述する一連の流路を通過して後述する排ガス放出管87から大気に排出される。
【0030】
そして、上記分岐管6の先端は工業炉用排ガス処理装置(以下、排ガス処理装置と言う。)7の底側に接続されている。なお、この排ガス処理装置7の天板(符号は省略する。)には、本発明を構成する一方の管路8の一端が接続され、該一方の管路8の他端は上記冷却装置3に接続されている。そして、上記排ガス処理装置7内には、図示しない多数の開口を有し上下に段積みされた容器のそれぞれに処理剤が収容された状態で配置されている。この処理剤は、生石灰(酸化カルシウム)を主成分(94.13%)とし、他の物質としては酸化マグネシウム(0.91%)、二酸化ケイ素(0.83%)、酸化第二鉄(0.07%)、酸化アルミニウム(0.18%)、三酸化硫黄(0.02%)等が含まれたものである。したがって、上記排ガス処理装置7の下方から上記排ガスが内部に供給されると、該排ガスは上記処理剤の表面に接触し、該排ガス中に汚染物質としての硫黄酸化物(SOx)が含まれている場合には、該硫黄酸化物(SOx)と生石灰との化学反応により、該生石灰の表面に無水石膏が生成され、これが石灰の表面に付着・吸着される。また、上記汚染物質に含まれたフッ素は、該生石灰との化学反応により、フッ化カルシウムが生成されて石灰に吸着される。
【0031】
そして、上記排ガス処理装置7は上記一方の管路8を介して上記冷却装置3に接続されている。この冷却装置3は、本発明に係る工業炉用煤塵除去装置1を構成するものであり、上記排ガス処理装置7内に収容された処理剤との間で各種の汚染物質を化学反応等される過程で発生した煤塵が含まれた排ガスを冷却するものである。そして、この実施の形態に係る冷却装置3は、図1に示すように、水冷式冷却部31と、この水冷式冷却部31の下方に形成された空冷式冷却部32とを備えている。上記水冷式冷却部31は、図3図4又は図5に示すように、円盤状に成形された天板33と、この天板33の外周側の下面に上端が固定された外筒34と、この外筒34の内側に位置し上端は上記天板33の下面に固定された内筒35と、上記天板33の中央に形成された円形状の開口(符号は省略する。)内に挿通され上端は該天板33の上面よりも上方に位置し下端は上記外筒34及び内筒35の下端よりもやや下方に位置する排出管36を備えている。
【0032】
そして、上記天板33の上面には、図4に示すように、下端は上記天板33の上面に溶接されそれぞれの一端は上記排出管36の外周面に溶接され他端はそれぞれ該天板33の外周端に位置してなる4つの補強リブ33aが設けられている。また、上記外筒34の上端には、該外筒34の放射方向に幅を有する上フランジ部(符号は省略する。)が形成され、該外筒34の下端には、該外筒34の放射方向に幅を有する下フランジ部(符号は省略する。)が形成されている。そして、上記上フランジ部の上面は、上記天板33の下面にネジ等の固定手段により固定されている。また、上記下フランジ部の下面は、後述する短尺円筒部37の上端に形成されたフランジ部(符号は省略する。)の上面に固定されている。また、図4に示すように、上記外筒34と内筒35のそれぞれには、上記一方の管路8の他端側が挿通される挿通穴(符号は省略する。)が形成され、該一方の管路8を通過した排ガスは、上記内筒35の内周に向かって供給されるように構成されている。また、上記外筒34と内筒35との間であって、上記排出管36の外側には、冷却水が流通する冷却水流通用空間31aが形成されている。そして、図3に示すように、上記外筒34の外周面の下側中途部には、上記冷却水流通用空間31aに図示しない水道からチューブ34cを介して冷却水を供給する供給ポート34aが配置され、該外筒34の外周面の上側中途部には、上記冷却水流通用空間31aに供給され排ガスにより加熱された冷却水を、チューブ34dを介して外部に排出する排出ポート34bが配置されている。
【0033】
またさらに、上記空冷式冷却部32を構成する上記内筒35の内側には、図5に示すように、内部に流入した排ガスに先端から冷却水を噴霧する複数の噴霧ノズル41が配置されている。これらの噴霧ノズル41は、上記内筒35の高さ方向に並んでいるとともに、それぞれ噴霧水供給管42の先端に固定されている。なお、上記外筒34及び内筒35には、図3に示すように、上記それぞれの噴霧水供給管42が挿通される挿通穴(外筒34に形成された挿通穴)34eが穿設されている。また、上記それぞれの噴霧水供給管42の基端は連通してなるとともに、噴霧水供給装置43に接続されている。
【0034】
また、上記空冷式冷却部32は、円筒状に成形され内部は上記内筒35の内部と連通してなる短尺円筒部37と、この短尺円筒部37の下端に上端が固定されているとともに上端側から下端側にかけて徐々に縮径された(内部空間が逆円錐状に成形された)筐体45と、この筐体45の下端に固定され円筒状に成形された後述する煤塵収容筒46を備えている。上記短尺円筒部37は、上記内筒35と略同じ内径を有してなり、上端及び下端にはそれぞれフランジ部(符号は省略する。)が形成されている。また、上記筐体45の上端外周には、上記短尺円筒部37の下端に形成されたフランジ部の下面に固定されるフランジ部(符号は省略する。)が形成され、この筐体45に形成されたフランジ部には、この冷却装置3全体の荷重を支持する支持ラック47が固定されている。なお、この支持ラック47は、図3又は図5に示すように、4本の脚部47aと、両端がこれらの脚部47aの上端の何れかに固定され全体の平面形状が正方形状とされた4の枠部材47b(図4参照)と、両端がこれらの脚部47aの下端側中途部の何れかに固定された水平杆47cとを有しており、筐体45に形成されたフランジ部は上記4の枠部材47bに固定されている。そして、上記筐体45の下端に固定された煤塵収容筒46は、該筐体45と内部が連通してなるものであり、下端は上記支持ラック47の下端側中途部に位置している。なお、上記筐体45の下端外周には、図5に示すように、フランジ部45aが形成され、上記煤塵収容筒46(詳しくは後述する第1の収容筒51a)の上端外周には、上記一方のフランジ部45aの下面に上面が固定される第1のフランジ部51bが形成されている。
【0035】
そして、この煤塵収容筒46は、本発明を構成する塵貯留部であり、図5に示すように、第1の収容筒51と、第2の収容筒52と、第3の収容筒53と、第4の収容筒54とに4分割され、該第1ないし第4の収容筒51・・・54は、何れも同一の内径及び外径に成形されている。そして、上記第1の収容筒51には、第1のシャッタ55が水平方向にスライド(往復動)操作可能に配置され、上記第3の収容筒53の下端には第2のシャッタ56が水平方向にスライド(往復動)操作可能に配置されている。これら第1及び第2のシャッタは、本発明を構成する落下操作部材である。そして、上記第1の収容筒51は、図6に示すように、筒状部51aと、この筒状部51aの上端外周に形成された第1のフランジ部51bとから構成され、上記第2の収容筒52は、筒状部52aと、この筒状部52aの下端外周に形成された第2のフランジ部52bとから構成されている。また、上記第3の収容筒53は、図5に示すように、筒状部53aと、この筒状部53aの上端外周に形成され上記第2のフランジ部52bの下面に固定される第3のフランジ部53bと、該筒状部53aの下端外周に形成された第4のフランジ部53cとから構成されている。また、上記第4の収容筒54は、図9又は図10に示すように、筒状部54aと、この筒状部54aの上端外周に形成された第5のフランジ部54bとから構成されている。
【0036】
そして、図6又は図7に示すように、上記第1の収容筒51の下端には、平面形状が正方形状に成形された第1の上板61が固定され、上記第2の収容筒52の上端には平面形状が長方形状に成形された第1の下板62が固定されている。上記第1の上板61は、図7に示すように、各辺は上記第1の収容筒51を構成する筒状部51aの外径よりも長尺とされてなるとともに、中央には該筒状部51aの内径よりもやや短い内径とされた第1の円形状開口61aが形成されている。また、上記第1の下板62は、短辺が上記第1の上板61の辺と同一の長さとされてなる一方、長辺は後述する第1のシャッタ55のスライド方向に長さを有してなるものである。そして、この第1の下板62には上記第1の上板61に形成された第1の円形状開口61aの形成位置と同じ位置で且つ同じ内径とされた第2の円形状開口62aが形成されている。そして、上記第1の上板61と第1の下板62とは、間に複数のスペーサ63を介して面対向した状態でボルト及びナット(符号は省略する。)により固定され、該第1の上板61と第1の下板62との間には、図中右側に形成された把手55aを有する第1のシャッタ55がスライド(往復動)操作可能に配置されている。なお、上記スペーサ63は、上記第1のシャッタ55の把手55a側を除いた第1の上板61の3辺に沿って固定されている。また、上記第1の下板62の上面であって外部に露出した部位には、互いに平行となされた一方及び他方のスライドガイド部材65,66が該第1の下板62の長さ方向に固定されている。そして、上記第1のシャッタ55は、上記第1の下板62の上面に支持されてなるとともに該第1の下板62と第1の上板61との間の空間内にスライド操作可能に配置されてなる板体である。なお、この第1のシャッタ55に形成された上記把手55aの上端は、上記第1の上板61の上面よりも上方に位置してなり、作業者が該把手55aを把持しながら図7中左側にこの第1のシャッタ55をスライド(往動)操作することにより、該第1のシャッタ55は、上記一方及び他方のスライドガイド部材65,66によりガイドされながら上記第1の収容筒51及び第2の収容筒51内はそれぞれ閉塞される。
【0037】
また、図9又は図10に示すように、上記第4の収容筒54の下端には、正方形状に成形された第2の上板71が固定され、この第2の上板71の下方には長方形状に成形された第2の下板72が固定されている。上記第2の上板71は、図10に示すように、各辺は上記第4の収容筒54を構成する筒状部54aの外径よりも長尺とされてなるとともに、中央には該筒状部54aの内径よりもやや短い内径とされた第3の円形状開口71aが形成されている。一方、上記第2の下板72は、短辺が上記第2の上板71の辺と同一の長さとされ、長辺は後述する第2のシャッタ56のスライド方向に長さを有してなるものである。そして、この第2の下板22には上記第2の上板71に形成された第3の円形状開口71aの形成位置と同じ位置で且つ同じ内径とされた第4の円形状開口72aが形成されている。そして、上記第2の上板71と第2の下板72とは、間に複数のスペーサ73(図9参照)を介して面対向した状態でボルト及びナット(符号は省略する。)により固定され、該第2の上板71と第2の下板72との間には、図中右側に形成された把手56aを有する第2のシャッタ56がスライド(往復動)操作可能に配置されている。なお、上記スペーサ73は、上記第2のシャッタ56の把手56a側を除いた第2の上板71の3辺に沿って固定されている。また、上記第2の下板72の上面であって外部に露出した部位には、互いに平行となされた一方及び他方のスライドガイド部材75,76が該第2の下板72の長さ方向に固定されている。そして、上記第2のシャッタ56は、上記第2の下板72の上面に支持されてなるとともに該第2の下板72と第2の上板71との間の空間内にスライド操作可能に配置されてなる板体である。なお、この第2のシャッタ56に形成された上記把手56aの上端は、上記第2の上板671の上面よりも上方に位置してなり、作業者が該把手56aを把持しながら図10中右側に該第2のシャッタ56をスライド(往動)操作することにより、該第2のシャッタ56は、上記一方及び他方のスライドガイド部材75,76によりガイドされながら上記第4の収容筒54内はそれぞれ閉塞される。
【0038】
したがって、上記第1のシャッタ55を往動操作して上記第1の収容筒51及び第2の収容筒51内をそれぞれ閉塞し、また、上記第2のシャッタ56も往動させて上記第4の収容筒54を閉塞した状態において、後述するように、上記第1のシャッタ55上に凝集された煤塵が蓄積された場合には、上記第1のシャッタ55を複動させて第1の収容筒51及び第2の収容筒51内を開放すると、該煤塵は上記第2のシャッタ56上に落下する。そして、上記第1のシャッタ55を複動させた上で、上記第2のシャッタ56を往動させると、上記煤塵は落下される。こうした一連の操作によれば、上記第2のシャッタ56を複動操作する場合には、必ず上記第1のシャッタ55により上記第1の収容筒51及び第2の収容筒51は閉塞されていることから、後述するブロア86の駆動により上記第4の収容筒54の下端から内部に外気が吸引(流入)されてしまうことがない。
【0039】
そして、上述のように構成された冷却装置3は、図1又は図2に示すように、他方の管路9を介して煤塵除去装置4に接続されている。なお、上記他方の管路9の一端は、図3又は図5に示す上記排気管4に接続されている。そして、上記煤塵除去装置4は、図12に示すように、鉛直方向に長さを有する直方体状に成形された除去用筐体81と、この除去用筐体81内に収容され後述する第1及び第2のバグフィルタ94,95とを備えている。上記除去用筐体81の左側面には、上記他方の管路9の他端が接続され、上記冷却装置3により冷却された排ガスは、この除去用筐体81内に流入するようにされている。また、上記除去用筐体81の正面には、後で詳細に説明する第1及び第2のバグフィルタ94,95を装着したり取り外したりする際に開閉される開閉扉82と、この開閉扉82の下方に形成され上記第1及び第2のバグフィルタ94,95により濾過され該第1及び第2のバグフィルタ94,95から脱落した煤塵が内部に収容される引出83が形成されている。また、上記除去用筐体81は天板81aを備え、この天板81aには、上記第1及び第2のバグフィルタ94,95により濾過された後の排ガスを下流側に移動させる下流側管路85の一端が固定されている。なお、この下流側管路85の他端はブロア86に接続され、排ガスはこのブロア86の駆動により、上記分岐管6内から上記排ガス処理装置7、冷却装置3及び上記煤塵除去装置4を通過してこのブロア86に至り、その後該ブロア86に基端が接続された排ガス放出管87の先端から大気に放出されるように構成されている。
【0040】
そして、上記煤塵除去装置4内は、図12に示すように、上記除去用筐体81内を上方空間と下方空間とに仕切る仕切り板88が固定され、この仕切り板88には、多数の開口88aが形成されている。これらの開口88aは、煤塵が下方空間内に落下するようするためのものであり、該下方空間内には該煤塵が収容される上記引出83が配置されている。また、上記除去用筐体81の天板81aには図示しない管挿通穴が形成され、この管挿通穴には、内側筐体90の上部中央に形成された接続管部90aの上端が固定されている。また、上記内側筐体90の下面の図中左側には、円筒状に成形された第1の取付管90bが垂下してなり、内側筐体90の下面の図中右側には、円筒状に成形された第2の取付管90cが垂下している。そして、上記第1の取付管90bの外周には、多数の開口(符号は省略する。)が形成され円筒状に成形された第1のケージ92の上端が固定され、上記第2の取付管90cの外周には、多数の開口(符号は省略する。)が形成され円筒状に成形された第2のケージ93の上端が固定されている。これら第1及び第2のケージ92,93は、それぞれ鉛直方向に長さを有するものであり、以下の第1のバグフィルタ94や第2のバグフィルタ95の保形性を担保するものである。そして、上記第1のケージ92の外側には上記第1のバグフィルタ94の上端が固定され、上記第2のケージ93の外側には上記第2のバグフィルタ95が装着されている。これら第1及び第2のバグフィルタ94,95は、それぞれ上端が開放された円筒状に成形されたろ布であり、それぞれの下端側中途部は、該第1及び第2のバグフィルタ94,95の長さ方向と直交する方向に縫い目を有した状態で縫合されている。すなわち、上記縫合された部位の下方には、それぞれ舌片94a,95aが形成され、これらの舌片94a,95aには第1のフック96や第2のフック97が固定されている。また、上記第1のバグフィルタ94は、上記第1のケージ92全体を外側から包んでなるものであり、上端側は該第1のケージ92の外周面との間で該第1のバグフィルタ94を挟持する第1のベルト98により装着されている。また、上記第2のバグフィルタ95は、上記第2のケージ93全体を外側から包んでなるものであり、上端側は該第2のケージ93の外周面との間で該第2のバグフィルタ95を挟持する第2のベルト99により装着されている。なお、上記第1及び第2のバグフィルタ94,95は、本発明を構成するフィルタでもあり、この実施の形態においては、それぞれポリテトラフルオロエチレン(PTEE)を素材とするものである。そして、上記他方の管路9を介して上記煤塵除去装置4内に排ガスが流入すると、この排ガスは上記第1及び第2のバグフィルタ94,95を通過して上記下流側管路85に流入する。この際、上記排ガスに含有された煤塵は、上記第1及び第2のバグフィルタ94,95の外周面で捕捉され、上記下流側管路85に流入する排ガスは煤塵が除去されたものとなる。
【0041】
また、上記第1及び第2のフック96,97は、それぞれ円弧状に成形されてなるものである。一方、上記仕切る仕切り板88の上面には、上記第1のフック96に係止されL字状に成形されただ第1の係止部材101と、上記第2のフック97に係止されL字状に成形された第2の係止部材102が固定されている。これらの第1及び第2の係止部材101,102は、それぞれ上記仕切り板88の上面から起立した起立軸(符号は省略する。)とこの起立部の上端から水平方向に折曲され上記フック96,97が係止される係止軸(符号は省略する。)とからなるものである。したがって、上記第1のバグフィルタ94は、上端側は上記第1のベルト98により装着されてなるとともに下端側は上記第1のフック96と第1の係止部材101との係止により移動が規制され、また、上記第2のバグフィルタ95は、上端側は上記第2のベルト99により装着されてなるとともに下端側は上記第2のフック97と第2の係止部材102との係止により移動が規制されている。
【0042】
したがって、上述した実施の形態に係る工業炉用煤塵除去装置1では、冒頭で説明した炭化炉2から排出された排ガスは、上記ブロア86の駆動によって、上記排気塔21の中途部から上記分岐管6を介して上記排ガス処理装置7内を通過し、上記冷却装置3内で冷却され、この冷却された排ガスは上記煤塵除去装置4内に取り付けられた第1及び第2のバグフィルタ94,95によって濾過され、最終的には上記排ガス放出管87の先端から大気に放出される。そして、上記冷却装置3内においては、上記水冷式冷却部31と空冷式冷却部32とにより冷却されるとともに、上記噴霧水供給装置43から供給された冷却水が上記噴霧ノズル41のそれぞれから排ガスに噴霧されることから、排ガスは更に冷却されて、上記煤塵除去装置4内に送られる。また、上記噴霧ノズル41からの噴霧により、上記排ガスに含有された煤塵は凝集されて上記煤塵収容筒46内に収容され、先に説明した第1のシャッタ55や第2のシャッタ56をスライド(往復動)操作により外部に取り出すことができ、この結果上記煤塵除去装置4による煤塵の除去量を軽減させることができる。また、上記冷却装置3により排ガスが冷却されることから、上記煤塵除去装置4内に配置された第1及び第2のバグフィルタ94,95は各種の素材からなるものを使用することが可能となる。
【0043】
なお、上記実施の形態で説明した煤塵除去装置4では、第1及び第2のバグフィルタ94,95(二つのフィルタ)を構成要素としたが、本発明では上記構成に係るバグフィルタ94,95に限定されるものではないばかりか、その数も限定されるものではない。また、上記実施の形態では、上記煤塵除去装置4内において排ガスに含有された煤塵を除去する構造として、上記排ガスに含有された煤塵は上記第1及び第2のバグフィルタ94,95の外周面で捕捉される構造を採用したが、本発明では、こうした構造とは反対に、排ガスに含有された煤塵が第1及び第2のバグフィルタ94,95の内周面で捕捉される構造であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 工業炉用煤塵除去装置
2 炭化炉
3 冷却装置
4 煤塵除去装置
7 工業炉用排ガス処理装置
8 一方の管路
9 他方の管路
31 水冷式冷却部
31a 冷却水流通用空間
32 空冷式冷却部
34 外筒
35 内筒
36 排出管
41 噴霧ノズル
45 筐体
46 煤塵収容筒
51 第1の収容筒
52 第2の収容筒
53 第3の収容筒
54 第4の収容筒
55 第1のシャッタ
56 第2のシャッタ
81 除去用筐体
94 第1のバグフィルタ
95 第2のバグフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12