(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164727
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】渦流探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/9013 20210101AFI20241120BHJP
【FI】
G01N27/9013
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080417
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】仲田 京平
(72)【発明者】
【氏名】横井 響介
(72)【発明者】
【氏名】立松 尚紘
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA03
2G053BA13
2G053BB03
2G053BB07
2G053BC14
2G053CA03
2G053DA02
2G053DB20
2G053DB22
(57)【要約】
【課題】装置内に侵入した粉塵に起因する不具合の発生を抑制することができる渦流探傷装置を提供する。
【解決手段】渦流探傷装置15は、棒状の被検査体Wを挿通させるガイドスリーブ20と、ガイドスリーブ20内を移動する被検査体Wの外周面に沿って回転する検査プローブ30と、検査プローブ30を回転させる回転機構部40と、を備えている。更に渦流探傷装置15は、被検査体Wを囲むようにガイドスリーブ20の軸方向に沿ってエアを流通させる流路60と、被検査体Wの搬送方向下流側において流路60にエアを供給するエア供給部63と、検査プローブ30よりも搬送方向上流側においてエアを装置外に排出するエア排出部70と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の被検査体を挿通させるガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブ内を移動する前記被検査体の外周面に沿って回転する検査プローブと、
前記検査プローブを回転させる回転機構部と、
を備えた渦流探傷装置であって、
前記被検査体を囲むように前記ガイドスリーブの軸方向に沿ってエアを流通させる流路と、
前記被検査体の搬送方向下流側において前記流路にエアを供給するエア供給部と、
前記検査プローブよりも前記搬送方向上流側においてエアを装置外に排出するエア排出部と、
を更に備えている渦流探傷装置。
【請求項2】
前記回転機構部は、前記ガイドスリーブの外側において回転可能に配設された回転筒部を備えており、
前記ガイドスリーブと前記回転筒部との間に形成された隙間を前記流路としてエアを流通させる、請求項1に記載の渦流探傷装置。
【請求項3】
前記エア供給部は、前記流路よりも径方向外側に離間した位置に設けられ、エアを径方向内側に向けて案内する供給側流路を備えている、請求項1に記載の渦流探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、渦流探傷装置に関し、詳しくは走行中の棒状の被検査体の外周面を検査する回転式の渦流探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイスを用いて線材を所定の線径に伸線加工をする伸線ラインにおいて、ダイスよりも搬送方向下流側に回転式の渦流探傷装置を配置し、線材表面における疵等の欠陥をインラインで検出することが行われている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
このような伸線ラインにおいてダイスを通過させる際の引抜き性を良くするため線材表面に潤滑剤を付着させると、ダイスよりも下流側に配置された渦流探傷装置において、線材表面から剥離した潤滑剤からなる粉塵が装置内部に侵入して、装置内の回路基板等の腐食や回転機構部の動作不良といった不具合が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、装置内に侵入した粉塵に起因する不具合の発生を抑制することができる渦流探傷装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而してこの発明の第1の局面の渦流探傷装置は次のように規定される。即ち、
棒状の被検査体を挿通させるガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブ内を移動する前記被検査体の外周面に沿って回転する検査プローブと、
前記検査プローブを回転させる回転機構部と、
を備えた渦流探傷装置であって、
前記被検査体を囲むように前記ガイドスリーブの軸方向に沿ってエアを流通させる流路と、
前記被検査体の搬送方向下流側において前記流路にエアを供給するエア供給部と、
前記検査プローブよりも前記搬送方向上流側においてエアを装置外に排出するエア排出部と、
を更に備えている。
【0007】
このように規定された第1の局面の渦流探傷装置によれば、ガイドスリーブ内を挿通する被検査体を囲むエアの流れにより粉塵が捕らえられて装置外に排出されるため、粉塵がエアの流れを超えて更に径方向外側や被検査体の搬送方向に拡散するのを抑制することができる。このため第1の局面の渦流探傷装置によれば、装置内に侵入した粉塵に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0008】
ここで、前記回転機構部は、前記ガイドスリーブの外側において回転可能に配設された回転筒部を備えており、前記ガイドスリーブと前記回転筒部との間に形成された隙間を前記流路としてエアを流通させることができる(第2の局面)。
【0009】
またこの渦流探傷装置では、前記エア供給部を前記流路よりも径方向外側に離間した位置に設けて、前記エア供給部に、エアを径方向内側に案内する供給側流路を備えるように構成することができる(第3の局面)。
このようにすれば、エアを装置内に供給するための配管と、その近傍で搬送される被検査体との干渉を良好に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の渦流探傷装置を含む伸線ラインの概略構成を示した図である。
【
図2】同渦流探傷装置の全体構成を示した図である。
【
図3】
図2の渦流探傷装置におけるエアが流通する流路およびその周辺部を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本発明の一実施形態の渦流探傷装置を含む伸線ラインの概略構成を示した図である。
同図において、伸線ライン1は、線材がコイル状に巻回されたサプライリール2と、サプライリール2から引き出された線材Wを矯正する矯正機4と、ダイス装置6と、渦流探傷装置15と、伸線加工された線材Wをコイル状に巻き取る巻取ドラム12と、を備えている。
【0012】
このように構成された伸線ライン1では、図示を省略するモータにより巻取ドラム12を回転させることでサプライリール2から連続的に引き出された線材Wが、矯正機4およびダイス装置6を通過し所定の線径に伸線加工されるとともに、線材Wにおける表面欠陥の有無が渦流探傷装置15によりインライン検査される。
【0013】
ダイス装置6では、ダイス収容部7にダイス8が収容されるとともに、その前方には内部に粉末状の潤滑剤が収容された潤滑剤収容部9が設けられている。線材Wは表面に潤滑剤を付着させた状態でダイス8に引き込まれ、冷間で伸線加工(縮径加工)される。そして、所定の線径に伸線加工された線材Wが下流側に設けられた渦流探傷装置15に送られる。なお、ダイス装置6での潤滑剤としては、例えば各種金属石けんをベースとし、石灰・タルクなどの無機分に硫黄・MoS2等の添加剤を加えたものが好適に使用される。
また、ダイス装置6では複数のダイスを直列に配置して、段階的に線径を小さくするように伸線加工を行うことも可能である。
【0014】
図2は、渦流探傷装置15の全体構成を示した図である。
渦流探傷装置15は、図中左方向に移動する棒状の線材Wの外周面を検査する回転式の渦流探傷装置で、被検査体としての線材Wを挿通させるガイドスリーブ20と、線材Wの表面に近接配置された検査プローブ30と、検査プローブ30を回転させる回転機構部40と、を備えている。
【0015】
ガイドスリーブ20は、被検査体としての線材Wを案内するための部材で、その主部20aは円筒状をなしている。ガイドスリーブ20は、主部20aが水平となるようにハウジング28にて支持されている。ガイドスリーブ20の図中右側の端部には入口側開口21が形成され、図中左側の端部には出口側開口22が形成されて、ガイドスリーブ20の内部を棒状の線材Wが挿通可能とされている。
【0016】
ガイドスリーブ20の入口側開口21に近い位置には、軸方向に所定の幅を有する開口24が周方向に亘って設けられており、かかる開口24に後述する検査プローブ30の先端部31が配設されている。
【0017】
ガイドスリーブ20の前後にはそれぞれガイド部25,26が設けられている。ガイド部25,26についての詳しい説明は省略するが、ガイド部25,26にはそれぞれ線材Wの位置を調整するためのガイドローラおよび線材Wの表面に渦電流を発生させるための励磁コイル(共に図示省略)が設けられている。
【0018】
検査プローブ30は、内部にセンサコイル(図示省略)が埋設されており、線材Wに表面欠陥があった場合の線材表面での渦電流の変化に対応した探傷信号を出力する。
本例の検査プローブ30は、間隙調整装置32により径方向位置が調整可能に支持されており、センサコイルが埋設されている先端部31が、ガイドスリーブ20に形成された開口24を通じて、線材Wに接近できるように構成されている。
【0019】
検査プローブ30は、走行中の線材Wの外周面全体を検査できるように、開口24に沿って線材W周りに放射状に複数本設けられており、これら検査プローブ30は、回転機構部40により軸心P周りに回転可能とされている。
そして検査プローブ30から出力された探傷信号は、ハウジング28の内部に設けられた回転トランス35を介して図示を省略する判定装置に送られるようになっている。
【0020】
次に回転機構部40について説明する。回転機構部40は、駆動モータ41と、プーリ43と、ベルト44と、回転筒部46と、複数のベアリング47を含んで構成され、検査プローブ30を軸心P周りに回転させる。
【0021】
回転筒部46は、線材Wを挿通させるガイドスリーブ20の径方向外側に位置し、ベアリング47を介してガイドスリーブ20と同芯状に且つ回転可能にハウジング28に支持されている。回転筒部46は図中右側の端部(入口側開口21に近い側の端部)がプローブ収容部50とされており、その内部に間隙調整装置32を介して検査プローブ30が取り付けられている。
【0022】
駆動モータ41はハウジング28の上部に固定されており、この駆動モータ41の出力軸42に設けられたプーリ43と、回転筒部46の図中左側の端部(プローブ収容部50とは反対側の端部)に設けられたプーリ52とがベルト44で連結されている。これにより、駆動モータ41の回転駆動力が回転筒部46に伝達され、回転筒部46および検査プローブ30が所定の速度で回転せしめられる。
【0023】
そして本例の渦流探傷装置1では、線材Wとともに持ち込まれた粉塵を装置外に排出するための粉塵排出手段を備えている。粉塵排出手段は、線材Wを囲むようにガイドスリーブ20の軸方向に沿って形成された流路60と、流路60にエアを供給するエア供給部63と、流路60を流通したエアを装置外に排出するエア排出部70と、を含んで構成されている。
【0024】
本例では、
図3、
図4で示すように、同軸状に配設されたガイドスリーブ20と回転筒部46との間に生じる隙間δを流路60として利用する。
この流路60にエアを供給するエア供給部63は、線材Wの搬送方向下流側、ガイドスリーブ20の開口22側の端部であって、流路60よりも径方向外側に離間した位置に設けられている。エア供給部63には、高圧エア源65(
図2参照)から延び出したホース66の他端が継手67を介して接続されている。エア供給部63には、継手67との接続部に続いてエアを径方向内側に向けて案内する供給側流路68が形成されており、継手67を介してエア供給部63に導入されたエアは供給側流路68を通じて流路60に送られる。
本例では、
図2で示すように、周方向に略180°異なる位置の2箇所にエア供給部63が設けられている。
【0025】
一方、流路60を流通したエアを装置外に排出するエア排出部70は、検査プローブ30よりも線材Wの搬送方向上流側、ガイドスリーブ20の開口21側の端部であって、流路60よりも径方向外側に離間した位置に設けられている。エア排出部70には、集塵機72(
図2参照)から延び出したホース73の他端が継手74を介して接続されている。エア排出部70にはエアを径方向外側に向けて案内する排出側流路75が形成されており、流路60を流通したエアは、排出側流路75、継手74を経て装置外に排出され、ホース73を通じて集塵機72に送られる。本例では、周方向にそれぞれ略90°異なる位置の4箇所にエア排出部70が設けられている。
【0026】
以上のように構成された渦流探傷装置15によれば、例えば、線材Wの移動とともにガイドスリーブ20内に持ち込まれた粉塵が、ガイドスリーブ20に設けられた開口24を通じてガイドスリーブ20の外側にまで拡散した場合でも、流路60内を、線材Wの搬送方向とは逆向きに流通するエアの流れにより粉塵が捕らえられて、エアとともにエア排出部70を通じて装置外に排出されるため、粉塵がエアの流れを超えて更に径方向外側や線材Wの搬送方向に拡散するのを抑制することができる。このため、回路基板等の腐食や回転機構部の動作不良といった装置内に侵入した粉塵に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0027】
また渦流探傷装置15では、エア供給部63を流路60よりも径方向外側に離間した位置に設けるとともに、エア供給部63が、エアを径方向内側に案内する供給側流路68を備えるように構成されており、エアを装置内に供給するための配管66と、その近傍を走行する線材Wとの干渉を良好に回避することができる。
【0028】
以上本実施形態の渦流探傷装置について詳しく説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0029】
15 渦流探傷装置
20 ガイドスリーブ
30 検査プローブ
40 回転機構部
46 回転筒部
60 流路
63 エア供給部
70 エア排出部
δ 隙間
68 供給側流路
W 線材(被検査体)