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  • 特開-縫製手袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164728
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】縫製手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/00 20060101AFI20241120BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A41D19/00 K
A41D19/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080419
(22)【出願日】2023-05-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000101499
【氏名又は名称】アトム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】平 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 利孝
【テーマコード(参考)】
3B033
【Fターム(参考)】
3B033AA08
3B033AA09
3B033AB19
3B033AC04
3B033BA04
(57)【要約】
【課題】装着した際に縫着部による違和感を軽減でき、縫製が容易で量産化が可能な縫製手袋を提供する。
【解決手段】図は縫製手袋1となる生地を切断した抜型部材の形状を示し、(A)は本体部材2、(B)は親指部材3である。親指部材3は、一点鎖線で表された連結部33が親指の先端部に位置する形状である。(A)に示す状態から、親指部材3を連結部33で折り返し、親指甲部31と親指平部32を重ね合わせて(B)に示す状態にする。この状態から親指甲部31の側縁と親指平部32の側縁を縫製する。連結部33は、親指の先端部に位置するように形成されているため、親指の先端や手の平側の親指の部分には縫着部3aが設けられていない状態となる。本体部材2は、手の甲部21が手の平部22よりも幅が狭く形成され、縫着部2aが手の甲側に位置するものとなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製の生地を切断して形成された手の甲部及び手の平部の周縁部を縫製して形成される縫製手袋であって、
親指以外の指と手の甲を覆う手の甲部と、親指以外の指と手の平を覆う手の平部とを有する本体部材と、
前記本体部材とは別個に形成され、親指の甲側を覆う親指甲部と、親指の平側を覆う親指平部とを有する親指部材とを有し、
前記本体部材は、前記親指部材の根元部が装着される親指装着部を有し、手の入口を除く側縁が縫製され、
前記親指部材は、前記親指甲部と前記親指平部の先端部が連結された連結部となっており、前記親指甲部は前記親指平部に比べて幅が狭く形成されており、前記親指甲部の側縁と前記親指平部の側縁が縫製されて縫着部が形成され、根元部が前記親指装着部に縫製されてなることを特徴とする縫製手袋。
【請求項2】
請求項1に記載の縫製手袋であって、
前記親指部材は、前記親指甲部の側縁が内側に窪む凹曲線に形成され、前記親指平部の側縁が外側に膨らむ凸曲線に形成されていることを特徴とする縫製手袋。
【請求項3】
請求項1に記載の縫製手袋であって、
前記親指甲部の幅は、前記親指平部に対して50%以上80%以下に形成されていることを特徴とする縫製手袋。
【請求項4】
請求項1に記載の縫製手袋であって、
前記本体部材は、前記手の甲部と前記手の平部における各指の長さが同一に形成され、各指の幅は前記手の甲部が前記手の平部に比べて狭く形成されていることを特徴とする縫製手袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メリヤス等の生地を縫製して形成される縫製手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メリヤス等の生地を縫製して形成される縫製手袋は広く知られている。例えば、メリヤス等の生地を予め定められた型で切り抜き、手の甲と手の平の部位を重ね合わせて周縁部を縫製し、手袋形状に形成したものが一般的である。このような縫製手袋は、表面をゴム素材や合成樹脂素材で被覆し、作業用手袋としたものも広く用いられている。
【0003】
このような縫製手袋は、手の甲と手の平の抜型部材の形状を同じ形状にして縫製すると、手袋を手に装着した際に、両者の周縁部が縫着された縫着部が、指の腹の部分に位置することになり、装着時に違和感が生じたり、作業の際に縫着部が邪魔になるという不都合がある。
【0004】
そこで、特許文献1においては、手の甲と手の平の切り抜き時の抜型部材の形状について、手の平側の部材形状を、手の甲側の部材形状に比べて指の幅を広くすると共に指の長さを長くすることにより、縫着部が爪の上面に位置するようにすることが提案されている。
【0005】
また、特許文献1では、親指を覆う部分について、当該公報の図2に開示されているように、抜型部材の形状において他の指と一体として形成されているものや、図13に開示されているように、親指のみが別体で形成されているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08-284006号公報
【特許文献2】特開2006-002318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の作業用手袋は、確かに指先の縫着部が爪の上面に位置するものとなるが、手の甲側の周縁部と手の平側の周縁部とを縫着する際に、縫製が困難であり量産化が難しいという課題があった。
【0008】
また、本願出願人は、手の平側の指先部に折り返し片を形成し、手の甲側の指先部を折り返し片の分だけ短くすることにより、縫着部を指の先端部から遠ざけた構成の縫製手袋を提案している(特許文献2参照)。当該構成により、縫着部を指先から遠ざけることができるが、やはり縫製が困難であり、安価な製品に適用することが難しいという課題があった。
【0009】
本発明は、装着した際に縫着部による違和感を軽減することができ、縫製が容易で量産化が可能な縫製手袋を提供することを目的とする。また、本発明は、特に親指部分について、縫着部が指の手の平側に位置しないようにして違和感を軽減した縫製手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の縫製手袋は、布製の生地を切断して形成された手の甲部及び手の平部の周縁部を縫製して形成される縫製手袋であって、親指以外の指と手の甲を覆う手の甲部と、親指以外の指と手の平を覆う手の平部とを有する本体部材と、前記本体部材とは別個に形成され、親指の甲側を覆う親指甲部と、親指の平側を覆う親指平部とを有する親指部材とを有し、前記本体部材は、前記親指部材の根元部が装着される親指装着部を有し、手の入口を除く側縁が縫製され、前記親指部材は、前記親指甲部と前記親指平部の先端部が連結された連結部となっており、前記親指甲部は前記親指平部に比べて幅が狭く形成されており、前記親指甲部の側縁と前記親指部の側縁が縫製されて縫着部が形成され、根元部が前記親指装着部に縫製されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の縫製手袋によれば、親指部材は、親指甲部と親指平部の先端部が連結された連結部となっており、親指甲部の側縁と親指平部の側縁を縫製すると、手に手袋を装着した際に、親指の先端部には連結部が位置するため、親指の先端部には縫着部がない状態となる。これにより、親指における縫着部による違和感を防止することができる。
【0012】
ここで、特許文献1に記載された手袋のように、手の平側の抜型部材の形状を、手の甲側の抜型部材の形状に比べて指の幅を広くすると共に指の長さを長くした場合、手の平部に対して手の甲部の幅と長さを伸ばした状態で縫製を行う必要があるため、縫製が困難となる。本発明の縫製手袋によれば、親指甲部と親指平部の連結部が指の先端部にあるため、指の長さ方向には両部材を伸ばす必要がない。このため、本発明の縫製手袋は、縫製が容易で量産化が可能となる。
【0013】
また、本発明の縫製手袋において、前記親指部材は、前記親指甲部の側縁が内側に窪む凹曲線に形成され、前記親指平部の側縁が外側に膨らむ凸曲線に形成されててもよい。当該構成により、親指の手の平部の幅を広く取ることができ、親指の手の平に縫着部が位置することを防止できる。
【0014】
また、本発明の縫製手袋において、前記親指甲部の幅は、前記親指平部に対して50%以上80%以下、特に好ましくは55%以上70%以下に形成することが好ましい。当該構成により、親指部分における縫着部の位置を安定した範囲に収めることができる。
【0015】
また、本発明の縫製手袋において、前記本体部材は、前記手の甲部と前記手の平部における各指の長さが同一に形成され、各指の幅は前記手の甲部が前記手の平部に比べて狭く形成されていてもよい。
【0016】
本発明の縫製手袋では、各指の幅のみ、手の甲部が手の平部に比べて狭く形成されており、長さについては同一となっている。このような構成であっても、各指の部分の周縁部を縫製すると、本体部材における指の先の部分の縫着部が指の側方の周縁部につられて指の腹の部分から持ち上がって爪の方向に移動する。この場合、手の甲部と手の平部の指の長さは同一であるので、その周縁部の縫製にあたって、長さ方向に変形させる等の措置を必要としない。なお、指の部分の長さが同一とは、縫製の際にいずれか一方を伸ばす等の処理をすることなく縫製が行える範囲での同一という意味であり、厳密に同一の長さという意味ではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、親指部分については指の腹及び爪の部分に縫着部を位置させることなく縫製が可能であり、他の指においては、指の長さ方向の長さを異ならせることなく本体部材の縫着部を爪の部分に位置させることができるので、手袋を手に装着した際に、縫着部による違和感を軽減することができ、縫製が容易で量産化が可能な縫製手袋を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の縫製手袋において縫製後の縫着部の位置を示す説明図であり、(A)は手の甲側から見た図、(B)は手の平側から見た図。
図2】本実施形態の縫製手袋の材料となる生地を裁断した抜型部材の形状を示す説明図であり、(A)は本体の抜型部材の形状、(B)は親指部の抜型部材の形状を示す説明図。
図3】(A)~(C)は本実施形態の縫製手袋の親指部を縫製する際の過程を示す説明図。
図4】(A)及び(B)は本実施形態の縫製手袋の本体を縫製する際の過程を示す説明図。
図5】本実施形態の縫製手袋を縫製後に裏返した状態を示す説明図であり、(A)は手の側面から見た図、(B)は手の正面から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態の一例である縫製手袋1について、図1図5を参照して説明する。本実施形態の縫製手袋1は、図1及び図2に示すように、布製の生地を切断して形成された本体部材2の手の甲部21及び手の平部22の周縁部が縫製されて本体部材2における縫着部2aが形成され、親指部材3の親指甲部31と親指平部32の周縁部を縫製した親指部材3における縫着部3aが形成されている。
【0020】
縫着部2aは、図1(A)に示すように、手の甲部21側に寄った形で設けられており、図1(B)に示すように、手の平部22側は縫着部2aがない領域が大きく広がっている。また、親指部材3は、図中で一点鎖線によって表された連結部33が親指の先端部に位置するように形成され、縫着部3aは親指甲部31側に寄った形で設けられている。
【0021】
図2(A)及び(B)は、本実施形態の縫製手袋1の製造過程において、メリヤスの生地を切断して形成された抜型部材の形状を示す説明図である。図2(A)は本体部材2の抜型部材の形状を示しており、図2(B)は親指部材3の抜型部材の形状を示している。
【0022】
本体部材2は、手の形状に合わせて親指以外の指と手の平及び手の甲を覆うように切断された手の甲部21と手の平部22が、折り返し線23を介して左右に連続して形成されている。手の平部22には、親指部材3が装着される貫通孔である親指装着部24が形成されている。
【0023】
本体部材2の手の甲部21と手の平部22は、各指の長さが実質的に同一に形成されている。一方で、各指の幅は、手の甲部21における指の幅が、手の平部22における指の幅よりも狭く形成されている。本実施形態では、手の甲部21の幅は、手の平部22の幅の約67%となっている。
【0024】
手の甲部21と手の平部22の幅の割合は、手の甲部21が手の平部22の50%~80%、好適には55%~70%となるように調整すればよい。この比率が50%未満では、縫製が困難となり、縫着部2aの位置が手の甲側に寄りすぎて逆に装着時に違和感を生じさせるため好ましくない。一方で、80%を超えると、縫着部2aの手の甲側への移動量が少なくなり、縫着部2aが指先の部分に位置することになって好ましくない。
【0025】
親指部材3は、図2(B)に示すように、本体部材2とは別個に形成され、親指甲部31と親指平部32の先端部が連結部33によって連結されている。親指部材3の親指甲部31は、親指平部32に比べて幅が狭く形成されている。また、親指甲部31の側縁は内側に窪む凹曲線となっているのに対し、親指平部32の側縁は外側に膨らむ凸曲線となっている。
【0026】
親指甲部31の凹曲線の曲率は、親指平部32の凸曲線の曲率よりも小さく形成している。実際には、各曲線の曲率は、その位置によっても多少異なるように形成されているため、各側縁に近似する円弧を持つ円の半径を用いて各側縁の曲率を求めた。
【0027】
図2(B)において、親指甲部31の右側の側縁の曲率を1とすると、親指平部32の右側の側縁の曲率は約2.5となる。この曲率の比は1.1以上4.5以内の範囲とすることが好ましい。また、親指甲部31の左側の側縁の曲率を1とすると、親指平部32の左側の側縁の曲率は約0.6となる。この曲率の比は0.2以上1.1以内の範囲とすることが好ましい。
【0028】
このように、親指部材3の左右の側縁の曲率の比を上記比率で形成することにより、縫製時の歪みを解消している。なお、この曲率の比は、上記範囲から外れると、縫製時に歪みが生じ、親指部材3の縫製後の形状がいびつになるおそれがある。
【0029】
次に、本実施形態の縫製手袋1の製造方法について、図2図4を参照して説明する。本実施形態の縫製手袋1は、以下の工程により製造される。まず、メリヤスの生地を手袋を構成する部材毎に切り抜く裁断機(図示省略)によって切り抜き、、図2のように抜型部材を形成する。本実施形態においては、抜型部材としては、手の甲部21及び手の平部22が折り返し線23を介して一体に形成され、親指装着部24が打ち抜かれた本体部材2と、親指の部分のみの部材である親指部材3が形成される。
【0030】
親指部材3の縫製は、図3(A)に示す状態から、親指部材3を連結部33で折り返し、親指甲部31と親指平部32を重ね合わせて図3(B)に示す状態にする。この状態から、指の入口を除く部分について、親指甲部31の側縁と親指平部32の側縁を縫製する。縫製は、公知の縫製機(図示省略)によって行われ、縫製された部分には縫着部3aが形成される。このとき、指の長さ方向には生地を伸ばす必要がないので、既存の縫製機によって容易に縫製を行うことができる。
【0031】
本体部材2の縫製は、図4(A)に示すように、本体部材2の型抜部材を、折り返し線23で折り返し、手の甲部21と手の平部22とを重ね合わせる。次に、公知の縫製機によって、手の甲部21を幅方向に伸ばして両部材の側縁が重なるように位置決めする。この状態で手の入口を除く部分について両部材の側縁の縫製を行うことにより、本体部材2を形成する。
【0032】
次に、縫製が行われた本体部材2と、縫製が行われた親指部材3とを縫製して一体に形成する。具体的には、本体部材2において切り抜かれている親指装着部24と、親指部材3の根元部とを縫製して親指部材3を本体部材2に取り付ける。
【0033】
以上の製造方法により、本実施形態の縫製手袋1が形成される。本実施形態の縫製手袋1において、縫着部2aは、図1(A)に示すように、手の甲部21側に寄った位置に形成される。また、図1(B)に示すように、手の平部22側は縫着部2a及び縫着部3aがない領域が大きく広くなるように形成されている。特に、親指部材3は、図中で一点鎖線によって表された連結部33が親指の先端部に位置するように形成されているため、親指の先端や手の平側の親指の部分には縫着部3aが設けられていない状態となる。
【0034】
縫製手袋1を、図1の状態から裏返しにした状態を示すのが図5である。図5(A)は、縫製手袋1を小指側から見た側面図である。図5(A)に示すように、縫着部2a及び縫着部3aは、縫製手袋1が裏返されると本体から突出する部分が手袋の内部に収納されるため、外部は線状となる。この図5(A)に示すように、縫着部2aは手の甲部21側に寄った状態であり、指先の部分は縫着部2aがないため、装着時に違和感のない縫製手袋1が得られる。
【0035】
図5(B)は、縫製手袋1を指の先側から見た正面図である。同図に示すように、縫着部2a及び縫着部3aは、各指の爪の部分にまで寄った状態となり、指先の部分は縫着部2a及び縫着部3aがないため、装着時に違和感のない縫製手袋1が得られる。特に、親指部3は、図5(B)でも明らかなように、連結部33と、親指甲部31及び親指平部32の形状によって、親指部分の縫着部3aによる違和感が解消された構成となっている。
【0036】
また、図5に示した縫製手袋1の表面をゴム素材や合成樹脂素材、例えばニトリルゴム(NBR)等で被覆した際にも、親指部分については指の腹及び爪の部分に縫着部3aが位置していないため、縫着部3aによる違和感を生じさせることがない。また、その他の部分については、縫着部2aが手の甲側に位置することになるので、縫製手袋1を装着した際の縫着部2aによる違和感を軽減させることができる。
【0037】
なお、上記実施形態においては、布製の生地としてメリヤス生地を使用しているが、これに限らず、手袋に使用可能な生地を広く用いることができる。また、上記実施形態では、本体部材2を折り返し線23で手の甲部21と手の平部22を連結した形状としているが、これに限らず手の甲部21と手の平部22を別体としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…縫製手袋
2…本体部材
2a…縫着部
21…手の甲部
22…手の平部
23…折り返し線
24…親指装着部
3…親指部材
3a…縫着部
31…親指甲部
32…親指平部
33…連結部


図1
図2
図3
図4
図5