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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164729
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】モータ及び車両用駆動システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/14 20060101AFI20241120BHJP
   H02K 21/46 20060101ALI20241120BHJP
   H02P 25/02 20160101ALI20241120BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K21/46
H02P25/02
B60L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080420
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
【テーマコード(参考)】
5H125
5H505
5H621
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125EE05
5H125EE09
5H125FF01
5H505AA16
5H505BB10
5H505DD05
5H505DD08
5H505DD20
5H505EE07
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL38
5H505LL41
5H505LL45
5H505MM06
5H621AA01
5H621BB10
5H621HH01
5H621HH10
(57)【要約】
【課題】永久磁石部の減磁を抑制可能なモータ及び車両用駆動システムを提供する。
【解決手段】モータ2は、円筒状のステータ1と、ステータ17内にステータ17の中心軸と同軸で回転可能に設けられた円筒状のロータ19と、を有し、ロータ19の回転により車両1の前輪FWを駆動するのに用いられる。モータ2は、ロータ19に設けられたカゴ部31と、ロータ19においてカゴ部1の内周側に設けられた永久磁石部28と、を有している。永久磁石部28は、フェライト磁石により構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のステータと、当該ステータ内に当該ステータの中心軸と同軸で回転可能に設けられた円筒状のロータと、を有し、当該ロータの回転により車両の駆動輪を駆動するモータであって、
前記ロータは、カゴ部と、当該カゴ部の内周側に設けられた永久磁石部と、を有し、
前記永久磁石部は、フェライト磁石により構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記ロータは、外周ロータ部と、内周ロータ部とに分割して設けられ、
前記内周ロータ部は、軸方向視で多角形状をなしており、
前記永久磁石部は、板状をなす複数の永久磁石を備え、
前記複数の永久磁石は、前記外周ロータ部と前記内周ロータ部との径方向間において周方向に沿って並設され、
各永久磁石における厚み方向一側の面は、前記外周ロータ部の内周面に接しており、
前記各永久磁石における厚み方向他側の面は、前記内周ロータ部の外周面に接していることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータを備えた車両用駆動システムにおいて、
前記永久磁石部の磁力を用いて前記ロータを回転させる同期運転モードと、前記カゴ部に発生する誘導電流を用いて前記ロータを回転させる非同期運転モードと、を切り換え可能な制御部を更に備えていることを特徴とする車両用駆動システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用駆動システムにおいて、
前記制御部は、前記永久磁石部の温度が所定温度未満のときは、前記非同期運転モードを実行することを特徴とする車両用駆動システム。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用駆動システムにおいて、
前記制御部は、モータトルクが所定未満のときは、前記同期運転モードを実行し、かつ、前記モータトルクが前記所定以上のときは、非同期運転モードを実行することを特徴とする車両用駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び車両用駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータを種々の機械の駆動に用いることが知られている。例えば、特許文献1では、紡績機駆動用モータが開示されている。該紡績機駆動用モータは、ステータと、ステータの内周側に配設されたロータと、ロータに設けられたカゴ部と、ロータにおけるカゴ部の内周側に設けられた永久磁石部と、を備えており、糸を巻き取るボビンを保持するスピンドルを駆動するのに用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-178840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車等に搭載される車両駆動用モータには、永久磁石モータが採用される場合が多い。永久磁石モータは、モータの低回転域において瞬時に最大のモータトルクを生成できるため、停車状態からの車両発進性を確保できる利点がある。しかし、永久磁石モータは、モータの高回転域においては逆起電力が大きくなるので、例えば、高速走行時等にモータトルクが不足する場合がある。そのため、モータの低回転域から高回転域に亘って車両駆動に必要なモータトルクを生成可能な車両用駆動モータが求められている。
【0005】
そこで、低回転域において最大モータトルクを生成可能な永久磁石部と、高回転域において逆起電力の影響を受けないカゴ部と、を有するロータを備えた特許文献1の如き紡績機駆動用モータを車両駆動用モータとして用いることが考えられる。
【0006】
しかし、特許文献1の如きモータでは、ロータにおいて永久磁石部がカゴ部の内周側に配設される関係上、一般的な永久磁石モータに比べて永久磁石部の位置がロータの内周側に配設されるようになるので、永久磁石部において熱がこもり易くなる。そのため、ステータの回転磁界が作用することで永久磁石部において渦電流が発生すると、永久磁石部が一般の永久磁石モータよりも高温になり易い。ここで、永久磁石部が希土類磁石で構成されている場合、渦電流により永久磁石部が高温になると、不可逆的な減磁が発生し、車両駆動に必要なモータトルクを生成することが困難になるおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、永久磁石部の減磁を抑制可能なモータ及び車両用駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、円筒状のステータと、当該ステータ内に当該ステータの中心軸と同軸で回転可能に設けられた円筒状のロータと、を有し、当該ロータの回転により車両の駆動輪を駆動するモータを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、前記ロータは、カゴ部と、当該カゴ部の内周側に設けられた永久磁石部と、を有し、前記永久磁石部は、フェライト磁石により構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記ロータは、外周ロータ部と、内周ロータ部とに分割して設けられ、前記内周ロータ部は、軸方向視で多角形状をなしており、前記永久磁石部は、板状をなす複数の永久磁石を備え、前記複数の永久磁石は、前記外周ロータ部と前記内周ロータ部との径方向間において周方向に沿って並設され、各永久磁石における厚み方向一側の面は、前記外周ロータ部の内周面に接しており、前記各永久磁石における厚み方向他側の面は、前記内周ロータ部の外周面に接していることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明に係るモータを備えた車両用駆動システムおいて、前記永久磁石部の磁力を用いて前記ロータを回転させる同期運転モードと、前記カゴ部に発生する誘導電流を用いて前記ロータを回転させる非同期運転モードと、を切り換え可能な制御部を更に備えていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第3の発明において、前記制御部は、前記永久磁石部の温度が所定温度未満のときは、前記非同期運転モードを実行することを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第3の発明において、前記制御部は、モータトルクが所定未満のときは、前記同期運転モードを実行し、かつ、前記モータトルクが前記所定以上のときは、非同期運転モードを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、永久磁石部が高温時に減磁し難いフェライト磁石で構成されているので、渦電流によって永久磁石部が高温となった場合であっても、該永久磁石部が減磁してしまうのを抑制することができる。
【0015】
第2の発明では、外周ロータ部と内周ロータ部との径方向間に配設された各永久磁石の厚み方向一側の面が外周ロータ部の内周面に接しているとともに、各永久磁石の厚み方向他側の面が内周ロータ部の外周面に接するようになっている。さらに、各永久磁石が板状をなすとともに、内周ロータ部が軸方向視で多角形状をなしているので、各永久磁石が外周ロータ部と内周ロータ部との相対回転を規制する部材として機能するようになる。これにより、ロータが外周ロータ部と内周ロータ部とにより分割して構成された場合において、外周ロータ部と内周ロータ部とが相対回転するのを抑制することができる。
【0016】
第3の発明では、制御部により同期運転モードと非同期運転モードが切り換えられるようになる。これにより、例えば、モータの運転条件に応じて、同期運転モードから非同期運転モードへの切り換え、或いは、非同期運転モードから同期運転モードへの切り換えを行うことが可能となる。
【0017】
第4の発明では、永久磁石部の温度が所定未満のときは、非同期運転モードが実行されるようになる。該非同期運転モードが実行されると、カゴ部において二次電流が流れることで、カゴ部が発熱するようになる。該カゴ部の熱は、永久磁石部にも伝熱されるようになるので、永久磁石部を昇温させることが可能となる。これにより、低温時に減磁し易いフェライト磁石で構成された永久磁石部が減磁するのを抑制することができる。
【0018】
第5の発明では、モータトルクが比較的低いときは、非同期運転モードよりも効率の優れた同期運転モードが実行されるようになる。これにより、例えば、モータトルクを生成するための消費電力を低減することができる。また、モータトルクが比較的高いときは非同期運転モードが実行されるようになる。これにより、永久磁石部に希土類磁石に比べて磁力の低いフェライト磁石を用いた場合であってもモータトルクが不足するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動システムが搭載された車両の概略構成を示す平面図である。
図2】車両用駆動システムを示すブロック図である。
図3】モータの径方向断面を示す概略断面図である。
図4】制御装置の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5】同期運転モードにおけるモータトルクを示す図である。
図6】非同期運転モードにおけるモータトルクを示す図である。
図7】変形例に係る図3相当図である。
図8】変形例に係る図6相当図である。
図9】変形例に係る図6相当図である。
図10】変形例に係る図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用駆動システム5が搭載された車両1を示す。車両1は、駆動源としてのモータ2を搭載する前輪駆動式の電気自動車である。また、車両1は、減速機3、左右一対のドライブシャフト4、左右一対の前輪FW(駆動輪)及び左右一対の後輪RW(従動輪)を備えている。
【0022】
モータ2は、車両1の前部に設けられた図示しないモータルーム内に配設されている。また、モータ2は、減速機3と各ドライブシャフト4を介して各前輪FWと連結されている。これにより、モータ2において生成されたモータトルク(車両駆動力)は、減速機3と左右のドライブシャフト4とを介して左右の前輪FWにそれぞれ伝達されるようになっている。
【0023】
次に、図2を用いて、車両1に搭載された車両用駆動システム5について説明する。
【0024】
車両用駆動システム5は、モータ2、バッテリ6、インバータ7、アクセルペダルセンサ8、ブレーキペダルセンサ9、シフトレバーセンサ10、パドルシフトセンサ11、車速センサ12、及び、制御装置13を備えている。
【0025】
モータ2には、トルクセンサ14、温度センサ15、回転角センサ16及びステータ17が備えられている。
【0026】
トルクセンサ14は、モータ2が生成した実モータトルクを検出可能なセンサである。該トルクセンサ14は、検出したモータ2の実モータトルク情報を制御装置13に送信するように構成されている。
【0027】
温度センサ15は、モータ2の永久磁石部28(図3を参照)の実温度を検出可能なセンサである(例えば、赤外線センサ)。該温度センサ15は、検出した永久磁石部28の実温度情報を制御装置13に送信するように構成されている。
【0028】
回転角センサ16は、モータ2のロータ19(図3を参照)の回転角を検出可能なセンサである(例えば、レゾルバ、エンコーダ)。該回転角センサ16は、検出した回転角情報を制御装置13に送信するように構成されている。
【0029】
ステータ17は、複数の一次導体18を備えている。該複数の一次導体18は、インバータ7と電気的に接続されている。
【0030】
バッテリ6は、例えば、リチウムイオンバッテリであり、直流電流を充電及び放電をすることが可能となっている。また、バッテリ6は、インバータ7を介してモータ2と電気的に接続されている。
【0031】
インバータ7は、直流電流と交流電流(例えば、三相交流電流)とを変換可能となっている。また、インバータ7は、バッテリ6から放電された直流電流を交流電流に変換した後、モータ2に供給するモードと、モータ2から出力された交流電流(回生電流)を直流電流に変換した後、バッテリ6に充電するモードと、を実行可能となっている。
【0032】
アクセルペダルセンサ8は、車両1のドライバによるアクセルペダル(不図示)の踏み込み量(アクセル開度)を検出可能なセンサである。該アクセルペダルセンサ8は、検出したアクセルペダルの踏み込み量情報を制御装置13に送信するように構成されている。
【0033】
ブレーキペダルセンサ9は、車両1のドライバによるブレーキルペダル(不図示)の踏み込み量(ブレーキ開度)を検出可能なセンサである。該ブレーキペダルセンサ9は、検出したブレーキペダルの踏み込み量情報を制御装置13に送信するように構成されている。
【0034】
シフトレバーセンサ10は、車両1のドライバにより選択されるシフトレバー(不図示)の位置(シフトポジション)を検出可能なセンサ(例えば、レンジセンサ)である。本実施形態では、ドライバは、シフトレバーを手動操作することで、パーキング(駐車レンジ)、リバース(後退レンジ)、ニュートラル(中立レンジ)、ドライブ(走行レンジ)及びマニュアル(マニュアルレンジ)の中から任意のシフトポジションを選択することが可能となっている。また、シフトレバーセンサ10は、検出したシフトポジション情報を制御装置13に送信するように構成されている。本実施形態では、マニュアル(マニュアルレンジ)では、車両1のドライバが行う、シフトレバーを基準位置から車両前方側に動かす操作の情報(プラス操作情報)、又は、シフトレバーを基準位置から車両後方側に動かす操作の情報(マイナス操作情報)を制御装置13に送信するようになっている。なお、マニュアル(マニュアルレンジ)では、車両1のドライバがシフトレバーから手を離すと、基準位置に復帰するように構成されている。
【0035】
パドルシフトセンサ11は、ステアリングホイールに設けられた左右一対のパドルシフトスイッチ(不図示)の操作を検出可能なセンサである。該パドルシフトセンサ11は、検出したパドルシフトスイッチの操作情報を制御装置13に送信するように構成されている。本実施形態では、車両1のドライバが行う、右側のパドルシフトスイッチの操作情報(プラス操作情報)、又は、左側のパドルシフトスイッチの操作情報(マイナス操作情報)を制御装置13に送信するようになっている。
【0036】
車速センサ12は、車両1の車速を検出可能なセンサ(例えば、前輪FW及び後輪RWの車輪速センサ)である。該車速センサ12は、検出した車速情報を制御装置13に送信するように構成されている。
【0037】
制御装置13は、各センサから受信した情報に基づいて、モータ2、バッテリ6及びインバータ7を制御するように構成されている。なお、モータ2は、インバータ7を介して間接的に制御されるように構成されている。
【0038】
また、制御装置13は、プロセッサ13aと、制御プログラムが記憶されたメモリ13bとを備えている。そして、制御装置13は、プロセッサ13aが各センサから受信した情報に基づいて、メモリ13bに記憶されている制御プログラムの処理を実行することで、モータ2、バッテリ6及びインバータ7を制御するように構成されている。
【0039】
次に、図3を用いて、モータ2の詳細構造について説明する。
【0040】
モータ2は、略円筒状のステータ17と、ステータ17内にステータ17の中心軸と同軸で回転可能に設けられた略円筒状のロータ19とを備えている。
【0041】
ステータ17は、ステータコア20及び複数の一次導体18(一次コイル)を備えている。
【0042】
ステータコア20は、略円環状をなす複数の電磁鋼板が軸方向に積層されている。また、ステータコア20には、その内周面から径方向外側に向けて凹設された複数のスロット20aが備えられている。該複数のスロット20aは、互いに所定の間隔を空けつつ周方向に沿って並設されている。また、各スロット20aには、複数の一次導体18が収容されている。複数の一次導体18は、例えば、U相コイル、V相コイル及びW相コイルであり、各コイルが対応するスロット20aにそれぞれ収容されるようになっている。
【0043】
また、U相コイル、V相コイル及びW相コイルには、相毎に120°の位相がずれた交流電流がインバータ7から供給されるようになっている。インバータ7から一次導体18に交流電流が供給されると、該一次導体18において回転磁界が形成されるようになっている。
【0044】
ロータ19は、外周ロータ部21と内周ロータ部22とに内外周に分割して設けられている。
【0045】
外周ロータ部21は、軸方向視で略円環状をなしている、つまり、径方向断面が略円環状となっている。また、外周ロータ部21には、軸方向に貫通する第1貫通孔21aが設けられている。該第1貫通孔21aは、軸方向視で略八角形に開口する孔形状となっている。
【0046】
また、外周ロータ部21は、複数のブロック21bを有する外周ロータコア23を備えている。各ブロック21bは、鉄等の磁性材からなり、軸方向視で、等脚台形の下底を円弧状にしたような断面形状に形成されている。また、外周ロータコア23は、複数のブロック21bが所定の間隔を空けつつ周方向に沿って並設されている。
【0047】
また、外周ロータコア23には、その外周面から径方向内側に向けて凹設された複数の収容凹部23aと、外周ロータコア23の内周面と外周面とを内外周に貫通するよう形成された複数の第2貫通孔部23bとを備えている。複数の収容凹部23a及び複数の第2貫通孔部23bは、互いに所定の間隔を空けつつ周方向に沿って並設されている。
【0048】
内周ロータ部22は、軸方向視で略八角形状をなしている、つまり、径方向断面が略八角形状となっている。また、内周ロータ部22は、略八角環形状をなす複数の電磁鋼板が軸方向に積層された内周ロータコア24を備えている。
【0049】
内周ロータコア24の中心部分には、軸方向に貫通する第3貫通孔24aが形成されている。該第3貫通孔24aには、略円筒形状をなす出力軸25が挿通されている。該出力軸25の内部には、冷却用媒体が供給される冷却通路部25aが設けられている。
【0050】
内周ロータコア24(ロータ19)と出力軸25とは、一体回転するように連結されている。本実施形態では、内周ロータコア24の内周面と出力軸25の外周面とにそれぞれ設けられたキー溝26にキー27が嵌め込まれていることで、内周ロータコア24(ロータ19)と出力軸25とが相対回転不能に連結されている。
【0051】
外周ロータ部21と内周ロータ部22との径方向間には、略環状をなす収容空間Sが設けられている。該収容空間Sは、複数の第2貫通孔部23bの内周端部と接続されている。また、収容空間Sには、永久磁石部28が収容されている。
【0052】
永久磁石部28は、軸方向に延びかつ周方向に並ぶ複数の永久磁石29を備えている。また、複数の永久磁石29は、フェライト磁石で構成されている。該フェライト磁石は、高温時に不可逆減磁し難く、かつ、低温時に不可逆減磁し易い性質を有している。つまり、フェライト磁石は、高温時に不可逆減磁し易いとともに、低温時に不可逆減磁し難い希土類磁石(例えば、ネオジム磁石、サマコバ磁石等)とは逆の性質を有している。
【0053】
また、複数の永久磁石29は、板状をなし、かつ、永久磁石29の厚み方向一側にはN極部29a、上記厚み方向他側にはS極部29bが設けられている。
【0054】
また、複数の永久磁石29は、収容空間Sにおいて互いに所定の間隔を空けつつ周方向に沿って並設されている。本実施形態では、各永久磁石29は、内周ロータ部22の外周面を構成する8つの面に対応する周方向位置にそれぞれ配設されるようになっている。さらに、複数の永久磁石29は、それぞれの厚み方向が径方向と略一致した姿勢となっている。
【0055】
複数の永久磁石29は、N極部29aとS極部29bとが互い違いになるように配設されている。より詳細に説明すると、所定の永久磁石29は、外周側にN極部29a、内周側にS極部29bが配置されている。一方、所定の永久磁石29と周方向に隣り合う永久磁石29は、外周側にS極部29b、内周側にN極部29aが配置されている。これにより、複数の永久磁石29における外周側には、周方向においてN極部29aとS極部29bとが交互に配置されるようになっている。
【0056】
また、各永久磁石29における厚み方向一側の面は、外周ロータ部21の内周面と接している。さらに、各永久磁石29における厚み方向他側の面は、内周ロータ部22の外周面と接している。
【0057】
第2貫通孔部23bの内周側部分及び収容空間Sには、樹脂材30が充填されている。つまり、第2貫通孔部23bの内周側部分及び収容空間Sにおける永久磁石29が存在しない部分には樹脂材30で埋められている。該樹脂材30により、外周ロータ部21、内周ロータ部22及び各永久磁石29が相互に結合されるようになっている。
【0058】
永久磁石部28の外周側には、カゴ部31が設けられている。換言すると、カゴ部31の内周側に永久磁石部28が設けられている。
【0059】
カゴ部31は、略板状をなす複数の二次導体32(二次コイル)と、略円環状をなす一対の短絡環(不図示)とを備えている。複数の二次導体32及び一対の短絡環は、非磁性の導体(例えば、アルミニウム、銅)で構成されている。
【0060】
複数の二次導体32は、軸方向及び径方向に延びている。また、複数の二次導体32は、周方向に並べられている、つまり、互いに所定の間隔を空けつつ周方向に沿って並設されている。さらに、複数の二次導体32は、各軸方向端部がそれぞれ別の短絡環に連結されている。
【0061】
外周ロータコア23の外周には、ロータ飛散防止用の円筒状のカバー33(例えば、炭素繊維強化プラスチック製)が巻かれている。これにより、外周ロータ部21、内周ロータ部22及び永久磁石部28が強固に連結されるようになっている。
【0062】
次に、図4を用いて、制御装置13のプロセッサ13aが実行する制御プログラムの処理の一例について説明する。
【0063】
ステップS1では、アクセルペダルセンサ8、ブレーキペダルセンサ9、シフトレバーセンサ10、パドルシフトセンサ11、及び、車速センサ12が送信した情報を取得する。
【0064】
ステップS2では、ステップS1で取得した情報に基づいて、目標モータトルクを設定する。該目標モータトルクは、車両1のドライバが要求しているモータトルクである。
【0065】
アクセルペダルセンサ8からドライバによるアクセルペダルの踏み込み有りの情報を取得した場合は、車両1を駆動するための駆動側(正側)の目標モータトルクを設定する。一方、ブレーキペダルセンサ9からドライバによるブレーキペダルの踏み込み有りの情報を取得した場合は、車両1を減速させるための回生側(負側)の目標モータトルクを設定する。さらに、アクセルペダルセンサ8から取得したアクセルペダルの踏み込み量、或いは、ブレーキペダルセンサ9から取得したブレーキペダルの踏み込み量が大きいほど、目標モータトルクを大きくする。
【0066】
さらに、シフトレバーセンサ10から取得したシフトポジション情報がパーキング或いはニュートラルの場合は、目標モータトルクを0に設定する。一方、リバース、ドライブ、或いは、マニュアルの場合は、目標トルクを0よりも大きい値に設定する。また、シフトポジション情報がマニュアルであって、シフトレバーを基準位置から動かす操作が有る場合は、該基準位置から車両前方側に動かす操作の情報(プラス操作情報)のときは目標モータトルクを小さくする一方、上記基準位置から車両後方側に動かす操作の情報(マイナス操作情報)のときは目標モータトルクを大きくする。
【0067】
さらに、パドルシフトセンサ11から取得したパドルシフトスイッチの操作情報がパドルシフトスイッチ操作有りの場合は、該操作情報がプラス操作情報のときは目標モータトルクを小さくする一方、上記操作情報がマイナス操作情報のときは目標モータトルクを大きくする。
【0068】
さらに、車速センサ12から取得した車両1の車速が高い場合は、そうでない場合よりも目標モータトルクを小さくする。
【0069】
ステップS3では、ステップS2において設定したモータ2の目標モータトルクが、所定の同期運転モードの許容限界トルク未満であるか否かを判断する。該許容限界トルクは、例えば、モータ2に搭載された永久磁石部28の磁力等から予め設定されている。
【0070】
ステップS3の判断がYesの場合、ステップS4に進む。一方、ステップS3の判断がNoの場合、ステップS7に進む。
【0071】
ステップS4では、温度センサ15からモータ2の永久磁石部28の実温度情報を取得した後、ステップS5に進む。
【0072】
ステップS5では、永久磁石部28の実温度が永久磁石部許容温度以上であるか否かを判断する。該永久磁石部許容温度(所定温度)は、摂氏0℃以下の温度(例えば、摂氏-40℃)に設定されており、永久磁石部28が永久磁石部許容温度よりも低い温度になると、該永久磁石部28(永久磁石29)が不可逆減磁するおそれのある温度に設定されている。
【0073】
ステップ5の判断がYesの場合、ステップ6に進む。ステップS6では、モータ2の運転モードを同期運転モードに設定した後、ステップS8に進む。
【0074】
一方、ステップS5の判断がNoの場合、ステップS7に進む。
【0075】
ステップS7(ステップS3の判断がNoの場合、或いは、ステップS5の判断がNoの場合)では、モータ2の運転モードを非同期運転モードに設定した後、ステップS8に進む。
【0076】
ステップS8では、ステップS6又はステップS7において設定した運転モードが実行、かつ、ステップS2において設定した目標モータトルクが生成されるようにインバータ7に指令を行った後、リターンに進む。その後、図4のステップS1から処理を再度開始することで、図4の処理が繰り返し実行される。なお、ステップS8では、モータ2において目標モータトルクを発生させるべく、回転角センサ16から取得したロータ19の回転角情報からロータ19の磁石磁極位置を推定し、該推定した磁石磁極位置を基準として、所定の相、進角位置、大きさの交流電流を一次導体18に流すようにインバータ7に指令するように構構成されている。
【0077】
本実施形態では、モータ2が非同期運転モードで運転されているときに、ステップS6において同期運転モードが設定されると、ステップS8においてインバータ7に非同期運転モードから同期運転モードに切り替えるように指令する。また、モータ2が同期運転モードで運転されているときに、ステップS7において非同期運転モードが設定されると、ステップS8においてインバータ7に同期運転モードから非同期運転モードに切り替えるように指令する。
【0078】
次に、図5を用いて、永久磁石部28の磁力を用いてロータ19を回転させる同期運転モードについて説明する。該同期運転モードは、ロータ19を回転磁界の回転速度(同期速度)で回転させる運転モードである。つまり、同期運転モードでは、ロータ19の回転速度と回転磁界の回転速度(同期速度)とが一致している。
【0079】
図5では、縦軸が磁界の強さ(磁界の強さに対応する空間の磁束密度[-])、横軸が機械角[°]を示している。図5において、破線は機械角に対する永久磁石部28の磁界の強さの特性、及び、太字の実線は機械角に対するモータトルクをそれぞれ示している。なお、本実施形態では、永久磁石部28は8つの永久磁石29を備えているため、永久磁石部28は極数(N極及びS極の数)が8極である。
【0080】
モータ2が同期運転モードで運転される場合、インバータ7からステータ17の一次導体18に対して交流電流が供給される。該交流電流が供給されると、一次導体18において回転磁界が形成される。同期運転モードでは、回転磁界の磁極が8つ(8極)形成されている。
【0081】
同期運転モードでは、ロータ19が同期速度で回転するため、回転磁界がカゴ部31の二次導体32を横切らない、つまり、回転磁界と二次導体32との間に速度差(すべり)が生じない。これにより、二次導体32には二次電流(誘導電流)が流れないので、カゴ部31はモータトルクの生成には寄与しない。したがって、同期運転モードでは、回転磁界と永久磁石部28の磁界とにより、モータ2の出力軸25を回転させる力、つまり、モータトルクが生成される。なお、同期運転モードでは、図5の太字の実線で示すように、モータトルクが回転磁界と永久磁石部28の磁界とにより生成されており、他の脈動成分がないので、モータトルクの脈動が発生していない。
【0082】
次に、図6を用いて、カゴ部31における二次導体32の二次電流(誘導電流)を用いてロータ19を回転させる非同期運転モードについて説明する。該非同期運転モードは、ロータ19を回転磁界の回転速度(同期速度)とは異なる回転速度で回転させる運転モードである。つまり、非同期運転モードでは、ロータ19の回転速度と回転磁界の回転速度(同期速度)とが一致していない。
【0083】
図6では、図5と同様、縦軸が磁界の強さ(磁界の強さに対応する空間の磁束密度[-])、横軸が機械角[°]を示している。
【0084】
図6において、破線は機械角に対する永久磁石部28の磁界の強さの特性、一点鎖線は機械角に対するカゴ部31の磁界の強さの特性、実線は機械角に対する合成(永久磁石部28及びカゴ部31)の磁界の強さの特性、太字の実線は機械角に対するモータトルク、二点鎖線は機械角に対する定常トルク(カゴ部31の磁界にのみによって生成されるモータトルク)をそれぞれ示している。
【0085】
モータ2が非同期運転モードで運転される場合、同期運転モードと同様にインバータ7からステータ17の一次導体18に対して交流電流が供給される。該交流電流が供給されると、一次導体18において回転磁界が形成される。非同期運転モードでは、回転磁界の磁極が18つ(18極)形成されている。なお、本実施形態において、インバータ7は、複数の一次導体18を流れる電流の向きをそれぞれ変更して、電流が同じ向きに流れかつ周方向に連続して並ぶ一次導体18群の数を増減することで、ステータ17の回転磁界の磁極の数(極数)を任意に変更可能に構成されている。
【0086】
非同期運転モードでは、ロータ19が同期速度とは異なる速度(非同期速度)で回転しているため、回転磁界がカゴ部31の二次導体32を横切る、つまり、回転磁界と二次導体32との間に速度差(すべり)が生じる。これにより、二次導体32には、二次電流(誘導電流)が流れるようになるので、カゴ部31(ロータ19)においてステータ17の回転磁界と同じ18つの磁極(18極)が形成される(図6参照)。
【0087】
また、非同期運転モードでは、同期運転モードと同様にモータ2内において永久磁石部28の磁界が作用している。該永久磁石部28の磁界は、図6に示すように、8つの磁極(8極)が形成されている。したがって、非同期運転モードでは、永久磁石部28による磁界と、カゴ部31による磁界とが合成されるようになる(図6の実線を参照)。
【0088】
本実施形態では、永久磁石部28による磁界の極数(8極)と、カゴ部31による磁界の極数(18極)とが一致していないので、機械角に対する永久磁石部28の磁界の強さの周期とカゴ部31の磁界の強さの周期とが異なるようになる。換言すると、永久磁石部28の磁界とカゴ部31の磁界とは、位相差が生じるようになる。これにより、永久磁石部28及びカゴ部31により形成される合成の磁界の強さが脈動するようになる。本実施形態では、カゴ部31による磁界の強さが永久磁石部28による磁界の強さよりも大きいので、永久磁石部28による磁界の強さが合成の磁界の強さを脈動させる成分となる。
【0089】
上記の合成の磁界の強さが脈動しているので、該合成の磁界と回転磁界とにより生成されるモータトルクが、脈動するようになる(図6の太字の実線を参照)。換言すると、モータトルクは、カゴ部31の磁界にのみによって生成される定常トルク(図6の二点鎖線を参照)とは一致せず、図6の太字の実線で示すように脈動する(変動する)ようになる。モータトルクが脈動すると、モータ2の出力軸25の角速度がエンジンの燃焼時のクランク軸のように変動する。これにより、モータ2でありながら、エンジンのような角速度変動を擬似的に発生させることができる。
【0090】
モータ2の出力軸25の角速度変動、つまり、モータ2の振動は、モータ2から車両1に伝達される。該車両1のドライバは、上記車室に伝達されたモータ2の振動からモータ2の運転状態を把握することが可能となる。これにより、エンジンを搭載した車両(エンジン車)の運転に慣れたドライバが、モータ2を搭載した車両1(電気自動車)を運転した際に、車室に伝達されるモータ2の振動からモータ2の運転状態を把握できないことで、違和感を覚えてしまうのを抑制することができる。
【0091】
以上より、本実施形態によれば、永久磁石部28が高温時に減磁し難いフェライト磁石で構成されているので、渦電流によって永久磁石部28が高温となった場合であっても、該永久磁石部28が減磁してしまうのを抑制することができる。
【0092】
また、外周ロータ部21と内周ロータ部22との径方向間に配設された各永久磁石29の厚み方向一側の面が外周ロータ部21の内周面に接しているとともに、各永久磁石29の厚み方向他側の面が内周ロータ部22の外周面に接するようになっている。さらに、各永久磁石29が板状をなすとともに、内周ロータ部22が軸方向視で多角形状をなしているので、各永久磁石29が外周ロータ部21と内周ロータ部22との相対回転を規制する部材として機能するようになる。これにより、ロータ19が外周ロータ部21と内周ロータ部22とにより分割して構成された場合において、外周ロータ部21と内周ロータ部22とが相対回転するのを抑制することができる。
【0093】
また、制御装置13により同期運転モードと非同期運転モードが切り換えられるようになる。これにより、例えば、モータ2の運転条件に応じて、同期運転モードから非同期運転モードへの切り換え、或いは、非同期運転モードから同期運転モードへの切り換えを行うことが可能となる。
【0094】
また、永久磁石部28の温度が所定未満のときは、非同期運転モードが実行されるようになる。該非同期運転モードが実行されると、カゴ部31において二次電流(誘導電流)が流れることで、カゴ部31が発熱するようになる。該カゴ部31の熱は、永久磁石部28にも伝熱されるようになるので、永久磁石部28を昇温させることが可能となる。これにより、低温時に減磁し易いフェライト磁石で構成された永久磁石部28が減磁するのを抑制することができる。
【0095】
また、モータトルクが比較的低いときは、非同期運転モードよりも効率の優れた同期運転モードが実行されるようになる。これにより、例えば、モータトルクを生成するための消費電力を低減することができる。また、モータトルクが比較的高いときは非同期運転モードが実行されるようになる。これにより、永久磁石部28に希土類磁石に比べて磁力の低いフェライト磁石を用いた場合であってもモータトルクが不足するのを抑制することができる。さらに、非同期運転モードが実行されることで、例えば、モータ2の高回転時における逆起電力の影響を抑えることができる。
【0096】
また、一般的な電気自動車は、例えば、車両停車時はモータが回転(振動)しておらず、また、車両走行時におけるモータの振動もエンジンに比べて小さいので、モータの振動がドライバに認識され難くなっている。これに対して、本実施形態では、非同期運転モードにおいて回転磁界が永久磁石部28の磁界に対してスリップすることで、例えば、永久磁石部28により生成されるトルクが脈動成分となるので、モータトルクが脈動させることができる。これにより、モータ2でありながら、エンジンのような角速度変動を擬似的に発生させることができる。また、モータ2の出力軸25の角速度変動、つまり、モータ2の振動は、モータ2から車両1に伝達されるようになる。該車両1のドライバは、上記車室に伝達されたモータ2の振動からモータ2の運転状態を把握することが可能となる。したがって、エンジンを搭載した車両(エンジン車)の運転に慣れたドライバが、モータ2を搭載した車両1(電気自動車)を運転した際に、車室に伝達されるモータ2の振動からモータ2の運転状態を把握することができないことで、違和感を覚えてしまうのを抑制することができる。
【0097】
<変形例>
なお、本実施形態では、ロータ19が外周ロータ部21と内周ロータ部22とに内外周に分割して設けられていたが、図7に示すように、ロータ19を分割しなくてもよい。該図7に示す変形例の場合、ロータ19は、略円環状をなす複数の電磁鋼板が軸方向に積層されたロータコア19aを備えている。ロータコア19aには、その外周面から径方向内側に向けて凹設された複数の第1収容凹部19bと複数の第2収容凹部19cとが設けられている。複数の第1収容凹部19b及び複数の第2収容凹部19cは、互いに所定の間隔を空けつつ周方向に沿って並設されている。該第2収容凹部19cが、第1収容凹部19bよりも内周側まで延設されている。これにより、第2収容凹部19cにおける二次導体32(カゴ部31)の内周側に永久磁石29(永久磁石部28)を配設することができる。なお、図7に示す変形例では、各永久磁石29は、二次導体32と同様に径方向に延びており、かつ、各々の厚み方向が周方向と略一致するように配設されている。さらに、ロータコア19aの中心部分には、軸方向に貫通する第4貫通孔19dが形成されている。該第4貫通孔19dには、出力軸25が挿通されるようになっている。
【0098】
また、本実施形態では、軸方向視で内周ロータ部22が略八角形状をなしていたが、略八角形状以外の多角形状(例えば、略六角形状、略七角形状、略九角形状、略十角形状、略十二角形状)であってもよい。
【0099】
また、本実施形態では、永久磁石29は板状をなしていたが、板状以外の形状(例えば、円弧状)であってもよい。
【0100】
また、本実施形態では、永久磁石部28の極数が8極の例について説明したが、8極以外の極数(例えば、4極、6極、10極、12極)であってもよい。
【0101】
また、本実施形態では、カゴ部31の二次導体32が板状で構成されている例について説明したが、板状以外(例えば、棒状)で構成されていてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、モータ2の永久磁石部28の実温度を温度センサ15で検出するようにしていたが、車両1の走行履歴やインバータ7から一次導体18へ供給する交流電流の履歴等に基づいて永久磁石部28の温度を推定するようにしてもよい。
【0103】
また、本実施形態では、非同期運転モードの際、モータトルクが脈動していたが、永久磁石部28の磁界に対して逆位相の磁界(図8の点線を参照)を形成することで、永久磁石部28の磁界を打ち消して、モータトルクが脈動しないようにしてもよい。なお、逆位相の磁界は、ステータ17の一次導体18が形成する磁界であり、永久磁石部28の磁界による脈動成分と逆位相のトルクを発生させる電流を、モータ2を駆動する電流に重畳して一次導体18に供給することにより生成される。また、上記逆位相の磁界によって、永久磁石部28の磁界を完全に打ち消すのではなく、一部の永久磁石部28の磁界を残すように逆位相の磁界を形成することで、モータトルクの脈動を低減するようにしてもよい。このようにすることで、車両1のドライバや乗員がモータトルクの脈動を望まないシーン(例えば、ドライバや乗員がエンジンを搭載した車両に慣れ親しんでいない場合など)において、上記モータトルクの脈動を無くす(図8の太字の実線を参照)、或いは、低減することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態では、非同期運転モードの際、インバータ7は、ステータ17の一次導体18において18極の回転磁界を形成するようにしていたが、18極以外の極数(例えば、6極、8極、12極、14極、16極)の回転磁界を形成するようにしてもよい。永久磁石部28の磁界による脈動成分を用いてモータトルクを脈動させる場合には、永久磁石部28の極数と、ステータ17の回転磁界の極数、つまり、カゴ部31の極数とを異ならせるのが好ましい。
【0105】
図9では、回転磁界の極数が12極の非同期運転モードの例を示している。図9に示すように、カゴ部31においても、回転磁界と同じ12極の磁極が形成されている。永久磁石部28による磁界の極数(8極)と、カゴ部31による磁界の極数(12極)とが一致していないので、機械角に対する永久磁石部28の磁界の強さの周期とカゴ部31の磁界の強さの周期とが異なるようになる。これにより、図9の実線で示す双方の合成の磁界が脈動する。したがって、永久磁石部28及びカゴ部31の合成の磁界と回転磁界とにより生成されるモータトルクは、脈動するようになる(図9の太字の実線を参照)。ここで、図9に示す変形例では、図6に示す本実施形態よりも、モータトルクの周期、つまり、モータトルクの脈動の周波数が低くなっている。したがって、カゴ部31による磁界の極数(回転磁界の極数)を変更することで、モータトルクの脈動の周波数を変更することが可能となっている。なお、カゴ部31の極数を適宜変更することで、換言すると、永久磁石部28の極数とカゴ部31の極数との差を適宜変更することで、モータトルクの脈動の大きさ、或いは、モータトルクの脈動の大きさ及び周波数を変更することも可能である。
【0106】
また、本実施形態では、目標モータトルクに基づいてモータ2の運転モードを設定するようにしていたが、図10の変形例に示すように、実モータトルクに基づいてモータ2の運転モードを制御するようにしてもよい。なお、図10に示す変形例では、図4のステップS1~3をステップS11~12に変更している。
【0107】
図10のステップS11は、トルクセンサ14からモータ2の実モータトルク情報を取得する。ステップS12は、ステップS11において取得した実モータトルク情報が、所定の同期運転モードの許容限界トルク未満であるか否かを判断する。そして、ステップS12の判断がYesの場合、ステップS4に進む一方、ステップS12の判断がNoの場合、ステップS7に進む。なお、ステップS4~8の処理は、図4と共通のため、説明を省略する。
【0108】
また、本実施形態では、目標モータトルクと永久磁石部28の温度とに基づいて運転モード(同期運転モード又は非同期運転モード)を設定するようにしていたが、目標モータトルク及び永久磁石部28の温度のいずれか一方に基づいて運転モードを設定するようにしてもよい。さらに、目標モータトルクと永久磁石部28の温度に代えて、或いは、目標モータトルクと永久磁石部28の温度に加えて、モータ2の回転数(回転角センサ16から取得)に基づいてモータ2の運転モードを設定するようにしてもよい。例えば、モータ2の回転数が所定以上の場合は非同期運転モードとするとともに、モータ2の回転数が所定未満の場合は同期運転モードとしてもよい。このようにすることで、モータ2の高回転域では、非同期運転モードが実行されるようになるので、モータ2の高回転域において大きくなる永久磁石部28の逆起電力の影響によりモータトルクが低下するのを抑制することができる。さらに、モータ2の回転数に代えて、車速センサ12から取得した車速情報を用いてもよい。この場合、例えば、車両1の車速が所定以上の場合は非同期運転モードとするとともに、車両1の車速が所定未満の場合は同期運転モードとしてもよい。
【0109】
また、本実施形態では、モータ2が前輪FWのみを駆動する例について説明したが、前輪FW及び後輪RWを駆動するようにしてもよく、後輪RWのみを駆動するようにしてもよく、或いは、前輪FW及び後輪RW毎に駆動する複数のモータ2が備えられる構成であってもよい。
【0110】
また、本実施形態では、車両1の一例として電動自動車の例を説明したが、電動車であればよく、例えば、モータ2と図示しないエンジンを備えたハイブリッド自動車であってもよい。
【0111】
また、本実施形態では、車両1の一例として四輪車の例を説明したが、陸上を走行可能なものであれば、三輪車や二輪車であってもよく、或いは、農業用車両(トラクタなど)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、モータ及び車両用駆動システムに適している。
【符号の説明】
【0113】
1 車両
2 モータ
5 車両用駆動システム
13 制御装置(制御部)
17 ステータ
19 ロータ
21 外周ロータ部
22 内周ロータ部
28 永久磁石部
29 永久磁石
31 カゴ部
FW 前輪(駆動輪)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10