(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164735
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】車両用駆動システム
(51)【国際特許分類】
H02P 23/07 20160101AFI20241120BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241120BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241120BHJP
B60L 58/19 20190101ALI20241120BHJP
【FI】
H02P23/07
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080426
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
【テーマコード(参考)】
5H125
5H505
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC30
5H125CA01
5H125EE03
5H125EE23
5H125EE41
5H125EE51
5H125FF01
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD05
5H505EE07
5H505EE25
5H505EE36
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL25
5H505LL38
5H505LL41
5H505LL45
(57)【要約】
【課題】車両システムが不安定になるのを抑えつつ、モータの特性を変更することが可能な車両用駆動システムを提供する。
【解決手段】ステータとロータとを有するモータと、バッテリとを備える車両用駆動システムである。ステータは複数の一次導体を有し、ロータは複数の二次導体を有し、バッテリは複数の電池モジュールを有している。電流が同じ向きに流れ且つ周方向に連続して並ぶ一次導体群の数を増減することで、モータの極数を変更可能なモータECUと、互いに電気的に接続される電池モジュール対の接続形態を直列と並列との間で変更可能なバッテリECUとを備えている。ECU、モータECUおよびバッテリECUは、極数の変更(S9、S10)と、電池モジュール対の接続形態の変更(S13、S14)とを異なるタイミングで開始する(S11)ように構成されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のステータと、当該ステータ内に当該ステータの中心軸と同軸で回転可能に設けられた円筒状のロータと、を有し、当該ロータの回転により車両の駆動輪を駆動するモータと、当該モータへ電力を供給するバッテリと、を備える車両用駆動システムであって、
上記ステータは、軸方向に延び且つ周方向に並ぶ複数の一次導体を有し、
上記ロータは、径方向外側の部位で軸方向に延び且つ周方向に並ぶ複数の二次導体を有し、
上記バッテリは、複数の電池モジュールを有しており、
上記モータにおける、上記複数の一次導体を流れる電流の向きをそれぞれ変更して、電流が同じ向きに流れ且つ周方向に連続して並ぶ一次導体群の数を増減することで、当該ステータの極数を変更可能なモータ制御部と、
上記複数の電池モジュールを構成する、互いに電気的に接続される少なくとも1組の電池モジュール対の接続形態を直列と並列との間で変更可能なバッテリ制御部と、をさらに備え、
上記モータ制御部と上記バッテリ制御部とは、当該モータ制御部による上記ステータの極数の変更と、当該バッテリ制御部による上記電池モジュール対の接続形態の変更と、を異なるタイミングで開始するように構成されていることを特徴とする車両用駆動システム。
【請求項2】
上記請求項1に記載の車両用駆動システムにおいて、
上記バッテリ制御部は、上記モータ制御部による上記ステータの極数の変更が行われた場合には、当該極数の変更が行われてから所定時間経過後に、上記電池モジュール対の接続形態を変更するように構成されていることを特徴とする車両用駆動システム。
【請求項3】
上記請求項1または2に記載の車両用駆動システムにおいて、
上記バッテリ制御部は、上記バッテリの電源電圧が上記モータの逆起電圧より大きい場合に、当該電源電圧と当該逆起電圧との電位差が、上記車両の走行態様に応じて予め設定された目標電位差よりも大きいときは、並列接続される上記電池モジュール対の数を現在よりも増やすように構成されていることを特徴とする車両用駆動システム。
【請求項4】
上記請求項1または2に記載の車両用駆動システムにおいて、
上記バッテリ制御部は、上記バッテリの電源電圧が上記モータの逆起電圧より大きい場合に、当該電源電圧と当該逆起電圧との電位差が、上記車両の走行態様に応じて予め設定された目標電位差以下のときは、直列接続される上記電池モジュール対の数を現在よりも増やすように構成されていることを特徴とする車両用駆動システム。
【請求項5】
上記請求項1または2に記載の車両用駆動システムにおいて、
上記車両のステアリングホイールにはパドルシフトスイッチが設けられており、
上記モータ制御部は、運転者による上記パドルシフトスイッチの操作に応じて、上記ステータの極数を変更するように構成されていることを特徴とする車両用駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動システムに関し、特に、モータの特性を変更可能な車両用駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関(エンジン)を搭載せず、電動機(モータ)を駆動源として走行する電気自動車が知られている。
【0003】
エンジンは零から或る回転数までトルクがほとんど発生しないのに対し、モータは零回転からでも最大トルクを発揮することができることから、かかる電気自動車では、エンジン車両では必須とされる変速機(減速ギヤを除く。)が搭載されていないことが多い。このため、変速機が搭載されたエンジン車両に慣れたユーザが電気自動車を運転すると、違和感を覚える場合がある。
【0004】
そこで、変速機が搭載されていない電気自動車でも、エンジン車両と同様に、変速機による変速が生じるような状況において、駆動源であるモータの特性を変更することが考えられる。そうして、モータの特性を変更する手法には、種々のものがあるところ、例えば特許文献1には、巻線組の電流位相を制御して回転電機(モータ)の極数変換を行う回転電機制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気自動車では、例えばアクセルを踏み込むとモータ回転速度が上がり、それに伴って車速が上がるといった具合に、モータ回転速度と車速とを比例的に制御することで、良好な加速性能を実現していることが多いが、これでは、恰もゴーカートのようなフィーリングになってしまい、このことが、エンジン車両に慣れたユーザに違和感を与える原因の1つとなっている。
【0007】
そこで、上記特許文献1の回転電機制御装置を電気自動車に適用することが考えられるが、特許文献1のものは、モータの回転数が所定値を越えたと判定されたときに、電流位相をずらす制御を行って極数変換を行うものであり、エンジン車両における変速が生じるような状況において、モータの特性を変更するものではない。
【0008】
このため、特許文献1のものを電気自動車に単に適用したとしても、エンジン車両に慣れた運転者に、異なる運転操作フィーリング(違和感)を与えてしまうという問題を解決しきれない。
【0009】
そこで、変速機が搭載されていない電気自動車においても、運転者の趣向に応じた広い要求出力に対応するために、極数変換方式の他、電圧制御方式、電流制御方式などといったモータの特性を変更する手法を併用することが考えられるが、これらが同時に実行されると、状態急変により車両システムが不安定になるという問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両システムが不安定になるのを抑えつつ、モータの特性を変更することが可能な車両用駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る車両用駆動システムでは、モータの特性を変更する複数の手法の開始タイミングを異ならせるようにしている。
【0012】
具体的には、本発明は、円筒状のステータと、当該ステータ内に当該ステータの中心軸と同軸で回転可能に設けられた円筒状のロータと、を有し、当該ロータの回転により車両の駆動輪を駆動するモータと、当該モータへ電力を供給するバッテリと、を備える車両用駆動システムを対象としている。
【0013】
そして、この車両用駆動システムは、上記ステータは、軸方向に延び且つ周方向に並ぶ複数の一次導体を有し、上記ロータは、径方向外側の部位で軸方向に延び且つ周方向に並ぶ複数の二次導体を有し、上記バッテリは、複数の電池モジュールを有しており、上記モータにおける、上記複数の一次導体を流れる電流の向きをそれぞれ変更して、電流が同じ向きに流れ且つ周方向に連続して並ぶ一次導体群の数を増減することで、当該ステータの極数を変更可能なモータ制御部と、上記複数の電池モジュールを構成する、互いに電気的に接続される少なくとも1組の電池モジュール対の接続形態を直列と並列との間で変更可能なバッテリ制御部と、をさらに備え、上記モータ制御部と上記バッテリ制御部とは、当該モータ制御部による上記ステータの極数の変更と、当該バッテリ制御部による上記電池モジュール対の接続形態の変更と、を異なるタイミングで開始するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、モータ制御部がステータの極数を変更することで、変更の前後でモータの特性を変化させることができる。例えば、ステータの極数を相対的に多くすれば、モータトルクが相対的に大きく(モータ回転速度が低く)なることで、低速段に近いフィーリングを実現することができる一方、ステータの極数を相対的に少なくすれば、モータ回転速度が相対的に高く(モータトルクが小さく)なることで、高速段に近いフィーリングを実現することができる。
【0015】
また、モータは、電流に比例してモータトルクが増える一方、電圧を高めるとモータ回転速度が上昇する性質があるところ、この構成によれば、バッテリ制御部が電池モジュール対の接続形態を直列と並列との間で変更することから、変更の前後でモータの特性を変化させることができる。例えば、並列接続される電池モジュール対の数を増やせば、大きな電流がモータへ供給されることで、モータトルクを相対的に大きくすることができる一方、直列接続される電池モジュール対の数を増やせば、高い電圧がモータへ供給されることで、モータ回転速度を相対的に高くすることができる。
【0016】
そうして、かかるバッテリ制御部による接続形態の変更と、かかるモータ制御部による極数の変更と、を共に実行すれば、これらの作用が相俟って、モータトルクをより一層大きくしたり、モータ回転速度をより一層高くしたりすることができ、これにより、運転者の趣向に応じた広い要求出力に対応することが可能となる。
【0017】
もっとも、接続形態の変更と極数の変更とを同じタイミングで開始すると、状態急変により車両システムが不安定になる可能性があるところ、本発明では、モータ制御部とバッテリ制御部とが、極数の変更と接続形態の変更とを異なるタイミングで開始するように構成されていることから、車両システムが不安定になるのを抑えつつ、モータの特性を変更することができる。
【0018】
また、上記車両用駆動システムでは、上記バッテリ制御部は、上記モータ制御部による上記ステータの極数の変更が行われた場合には、当該極数の変更が行われてから所定時間経過後に、上記電池モジュール対の接続形態を変更するように構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、ステータの極数の変更が行われてから所定時間経過後に、換言すると、極数変更の遷移状態が安定した後に、電池モジュール対の接続形態を変更することから、車両システムが不安定になるのを確実に抑えることができる。
【0020】
さらに、上記車両用駆動システムでは、上記バッテリ制御部は、上記バッテリの電源電圧が上記モータの逆起電圧より大きい場合に、当該電源電圧と当該逆起電圧との電位差が、上記車両の走行態様に応じて予め設定された目標電位差よりも大きいときは、並列接続される上記電池モジュール対の数を現在よりも増やすように構成されていてもよい。
【0021】
電圧が高い方から低い方へ電力は移動するところ、バッテリの電源電圧がモータの逆起電圧より大きい場合、すなわち、電力がモータ側へ移動する(供給される)放電の場合には、モータの回転駆動に利用可能な電位差(仮に「利用可能電位差」という。)が生じることになる。
【0022】
ここで、バッテリの電源電圧は、充電状態(SOC)に連動して変動するが、モータ回転速度が高い程、逆起電圧が大きくなるため、利用可能電位差は小さくなる傾向にある一方、モータ回転速度が低い程、逆起電圧が小さくなるため、利用可能電位差は大きくなる傾向にある。つまり、利用可能電位差は車両の走行態様に応じて、大きくなったり小さくなったりする。
【0023】
この点、この構成によれば、放電の場合に、利用可能電位差が、車両の走行態様に応じて予め設定された目標電位差よりも大きいとき、換言すると、(モータ回転速度が低い走行態様等において)電圧に余裕があるときは、並列接続される電池モジュール対の数を現在よりも増やすことから、大きな電流がモータへ供給されることで、モータトルクを相対的に大きくすることができる。
【0024】
また、上記車両用駆動システムでは、上記バッテリ制御部は、上記バッテリの電源電圧が上記モータの逆起電圧より大きい場合に、当該電源電圧と当該逆起電圧との電位差が、上記車両の走行態様に応じて予め設定された目標電位差以下のときは、直列接続される上記電池モジュール対の数を現在よりも増やすように構成されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、放電の場合に、利用可能電位差が目標電位差以下のとき、換言すると、(モータ回転速度が高い走行態様等において)電圧に余裕がないときは、直列接続される電池モジュール対の数を現在よりも増やすことから、高い電圧がモータへ供給されることで、モータ回転速度を相対的に高くすることができる。
【0026】
さらに、上記車両用駆動システムでは、上記車両のステアリングホイールにはパドルシフトスイッチが設けられており、上記モータ制御部は、運転者による上記パドルシフトスイッチの操作に応じて、上記ステータの極数を変更するように構成されていてもよい。
【0027】
この構成によれば、運転者によるパドルシフトスイッチの操作に応じて極数が変更されるので、換言すると、運転者の要求に応じて極数変更が行われるので、より一層運転者の趣向に応じたモータ制御を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る車両用駆動システムによれば、車両システムが不安定になるのを抑えつつ、モータの特性を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動システムが搭載された車両を模式的に示す平面図である。
【
図2】車両用駆動システムを模式的に示すブロック図である。
【
図6】一次導体およびインバータを模式的に示す斜視図である。
【
図8】6極のステータを模式的に説明する概念図である。
【
図9】8極のステータを模式的に説明する概念図である。
【
図10】モータの回転原理を模式的に説明する図であり、同図(a)は低速域における8極のモータを示し、同図(b)は高速域における4極のモータを示している。
【
図12】制御部が実行する協調制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(電気自動車の全体構成)
図1は、本実施形態に係る車両用駆動システム10が搭載された車両1を模式的に示す平面図である。なお、
図1の、符号Fwは車両前後方向前側を、また、符号Rrは車両前後方向後側を、また、符号Rhは車幅方向右側を、また、符号Lfは車幅方向左側をそれぞれ示している。車両1は、
図1に示すように、バッテリ20と、インバータ30と、モータ40と、これらを制御する各種ECU11,13,15と、を備えている。これらバッテリ20、インバータ30、モータ40および各種ECU11,13,15は、車両用駆動システム10の要部を構成している。
【0032】
この車両1では、バッテリ20から供給された直流電流が、インバータ30で交流電流に変換されてモータ40に供給されることで、モータ40が回転駆動する。このように回転駆動したモータ40で発生したトルクが、減速機5で減速されてドライブシャフト6に出力され、左右一対の駆動輪(前輪7)が回転駆動するとともに従動輪(後輪8)が連れ回されることで、車両1が走行するようになっている。つまり、車両1は、モータ40を駆動源として走行する電気自動車として構成されている。それ故、以下では、車両1を「電気自動車1」とも称する。
【0033】
また、電気自動車1は、
図1に示すように、シフター2と、ステアリングホイール3に設けられたパドルスイッチ73と、を備えている。これらシフター2およびパドルスイッチ73の操作に対応する信号は、ECU11に入力されるようになっている。この電気自動車1には、エンジン車両に通常搭載されている変速機が搭載されていないが、これらシフター2およびパドルスイッチ73を運転者が操作することによって、モータ40の特性が変化し、これにより、運転者の趣向を反映した「走り」を実現することが可能になっている。
【0034】
(車両用駆動システム)
図2は、車両用駆動システム10を模式的に示す図である。この車両用駆動システム10は、
図2に示すように、ECU11と、モータECU13と、バッテリECU15と、バッテリ20と、インバータ30と、モータ40と、例えばアクセル踏込み量やブレーキ踏込み量や電気自動車1の車速V等を検出する各種センサ(スイッチを含む)70,71,72,73,74と、GPS受信機75と、を備えている。
【0035】
-ECU-
ECU(Electronic Control Unit)11は、例えばCPU(Central Processing Unit)や、CPUが実行するプログラムおよびマップ等を予め記憶したROM(Read Only Memory)や、CPUが必要に応じてデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)や、電源が遮断されている間もデータを保持するバックアップRAMや、入力出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ、予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより各種制御を実行する。
【0036】
また、ECU11は、モータECU13およびバッテリECU15とCAN(Controller Area Network)通信線(図示せず)を介して接続されており、
図2の破線矢印で示すように、相互に情報の交換を行うことが可能となっていて、モータECU13およびバッテリECU15を統合する役割を担っている。
【0037】
さらに、ECU11は、
図2に示すように、アクセルペダルセンサ70、ブレーキペダルセンサ71、シフトポジションセンサ72、パドルスイッチ73、車速センサ74およびGPS受信機75と、電気的に接続されていて、これらの検出結果や各種情報がECU11に入力・送信されるようになっている。
【0038】
アクセルペダルセンサ70は、アクセルペダル(図示せず)に取り付けられていて、アクセル踏込み量を検出し、検出したアクセル踏込み量を表す信号をECU11に出力するようになっている。なお、アクセルペダルセンサ70は、アクセル踏込み変化量(単位時間当たりの変化量)を検出するように構成されていてもよい。
【0039】
ブレーキペダルセンサ71は、ブレーキペダル(図示せず)に取り付けられていて、ブレーキ踏込み量を検出し、検出したブレーキ踏込み量を表す信号をECU11に出力するようになっている。なお、ブレーキペダルセンサ71は、ブレーキ踏込み変化量(単位時間当たりの変化量)を検出するように構成されていてもよい。
【0040】
シフトポジションセンサ72は、シフター2における各シフトポジションに設けられていて、シフトレバー2aが、メインゲート2bに配置されたP(パーキング)レンジ、R(後進)レンジおよびD(ドライブ)レンジ、並びに、サブゲート2cに配置されたM(マニュアル)レンジのどこに位置しているかを検出して、ECU11に出力するようになっている。さらに、サブゲート2cはMレンジを基準位置とする復帰式のゲートとなっている。シフトポジションセンサ72は、運転者が行う、シフトレバー2aを車両前後方向前側に動かす操作(プラス操作)、または、後側に動かす操作(マイナス操作)の回数に対応して、D--、D-、D、D+およびD++の5段階の信号をECU11に出力するように構成されている。
【0041】
パドルスイッチ73は、ステアリングホイール3の裏側(車両前後方向前側)に左右一対で設けられていて、それぞれ運転者が手前(車両前後方向後側)に引く操作を繰り返し行うことが可能な復帰式のスイッチとなっている。左右一対のパドルスイッチ73は、運転者が行う、車幅方向右側のパドルスイッチ73を手前に引く操作(プラス操作)、または、左側のパドルスイッチ73を手前に引く操作(マイナス操作)の回数に対応して、D--、D-、D、D+およびD++の5段階の信号をECU11に出力するように構成されている。
【0042】
ECU11のROMには、D--、D-、D、D+、D++の順に大きくなるように設定されたモータ40への要求トルクが記憶されていて、後述するように、シフトレバー2aまたはパドルスイッチ73の操作で表される運転者の意思を反映したモータ40の制御が、ECU11によって行われるようになっている。なお、以下の説明では、このような制御が行われるモードを、「マニュアルモード」ともいう。
【0043】
車速センサ74は、駆動輪(前輪7)の車輪速などに基づいて、電気自動車1の車速Vを検出し、検出した車速Vを表す信号をECU11に出力するように構成されている。ECU11は、車速センサ74によって検出された車速V等に基づいて、モータ40の制御を行うように構成されている。
【0044】
GPS受信機75は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信することにより、電気自動車1の位置(例えば、電気自動車1の緯度および経度)を測定し、その位置情報をECU11に送信する。ECU11は、GPS受信機75から受け取った位置情報と、例えばROMに記憶された地図データベース等と、に基づき、電気自動車1の周辺走行環境を取得(認識)するように構成されている。具体的には、ECU11は、電気自動車1が現在、平坦路を走行中か、登坂路を走行中か、降坂路を走行中か、旋回中か、ワインディングロードを走行中か、市街地を走行中か、といった情報を取得する。なお、電気自動車1が現在、登坂路を走行中か、降坂路を走行中か、といった情報を取得する場合には、これに限らず、路面勾配を検出する勾配センサ(図示せず)を用いてもよい。
【0045】
-バッテリ-
バッテリ20は、電気的に接続された複数の電池モジュール21(
図3参照)が積層されて、電池ケース(図示せず)に収容された電池パックとして構成されている。各電池モジュール21は、各々リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等から成る複数の電池セル(図示せず)を主要部として構成されている。より詳しくは、各電池モジュール21は、絶縁体(図示せず)を間に挟むように、絶縁体と交互に積層された複数の電池セルを、電気的に接続してモジュール化したものとなっている。
【0046】
バッテリ20には、
図2に示すように、バッテリ20の温度を検出するバッテリ温度センサ25や、バッテリ20の電圧(直流電源電圧値PSV)を検出する電圧センサ27や、バッテリ20の充電状態(SOC:State Of Charge)を検出するSOCセンサ29等が取り付けられている。これらバッテリ温度センサ25、電圧センサ27およびSOCセンサ29は、バッテリECU15と電気的に接続されていて、検出温度を表す信号、検出電圧を表す信号、充電状態を表す信号をそれぞれバッテリECU15に出力するように構成されている。
【0047】
-バッテリECU-
バッテリECU15は、ECU11と同様に、例えばCPUや、ROMや、RAMや、バックアップRAMや、入力出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより各種制御を実行する。
【0048】
バッテリECU15は、上述の如く、CAN通信線を介してECU11と接続されており、バッテリ温度センサ25から入力されたバッテリ20の温度や、電圧センサ27から入力されたバッテリ20の直流電源電圧値PSVや、SOCセンサ29から入力されたバッテリ20の充電状態に関する信号をECU11に出力するように構成されている。また、バッテリ20の温度が低過ぎると、回生充電能力が低下する一方、バッテリ20の温度が高過ぎると、故障のおそれが生じることから、バッテリECU15は、バッテリ20の温度に基づいて、バッテリ冷却水の流量等を調整するように構成されている。
【0049】
図3は、バッテリ20の構成を模式的に示す図である。なお、
図3では、図を見易くするために、電池モジュール21や切替えスイッチ23をデフォルメして描いている。複数の電池モジュール21は、
図3に示すように、切替えスイッチ23を介して互いに電気的に接続される電池モジュール対22を複数対([電池モジュール21の数-1]対)含むようにして構成されている。切替えスイッチ23は、バッテリECU15の指令に基づいて、ON/OFFが切り替えられるように構成されている。
【0050】
かかる構成により、バッテリECU15の指令によって、
図3(a)に示すように切替えスイッチ23が切り替えられれば、複数の電池モジュール21(電池モジュール対22)全てが並列接続されたバッテリ20を実現することができる。このように、複数の電池モジュール21全てが並列接続されたバッテリ20とすれば、供給電圧は相対的に低くなるものの、供給電流を相対的に高くすることが可能となる。
【0051】
一方、バッテリECU15の指令によって、
図3(b)に示すように切替えスイッチ23が切り替えられれば、複数の電池モジュール21(電池モジュール対22)全てが直列接続されたバッテリ20を実現することができる。このように、複数の電池モジュール21全てが直列接続されたバッテリ20とすれば、供給電流は相対的に低くなるものの、供給電圧を相対的に高くすることが可能となる。
【0052】
また、図示省略するが、バッテリECU15の指令によって切替えスイッチ23が切り替えられることで、電池モジュール対22の一部の接続形態を直列とするとともに、電池モジュール対22の残部の接続形態を並列とすることも可能となっている。
【0053】
これらにより、請求項との関係では、本実施形態のECU11およびバッテリECU15が、本発明で言うところの「複数の電池モジュールを構成する、互いに電気的に接続される少なくとも1組の電池モジュール対の接続形態を直列と並列との間で変更可能なバッテリ制御部」に相当する。
【0054】
なお、バッテリECU15およびバッテリ20は、電気自動車1の停車中や駐車中のみならず、電気自動車1の走行中でも、電池モジュール対22の接続形態を直列と並列との間で変更可能に構成されている。
【0055】
-モータおよびインバータ-
〈全体構成〉
図4は、モータ40を模式的に示す断面図である。なお、
図4では、図を見易くするために、二次導体65および樹脂66のハッチングを省略している。また、
図4では、図を見易くするために、エアギャップGの大きさを誇張して示している。モータ40は、
図4に示すように、回転軸41と、ロータ60と、ステータ50と、を備えている。モータ40は、回転軸41が略水平になるように電気自動車1に搭載されている。
【0056】
回転軸41は、モータ40のケーシング(図示せず)に対して、軸受(図示せず)により回転可能に支持されている。回転軸41は、円筒状に形成されていて、その内部空間は、モータ40の各部を冷却するための冷媒が流れる流路42を構成している。流路42の一端には、ポンプ(図示せず)が接続されていて、このポンプから冷媒が供給されるようになっている。
【0057】
ロータ60は、その内径が回転軸41の外径よりも僅かに大きい円筒状に形成されている。ロータ60は、回転軸41の径方向外側に配置されていて、回転軸41に対して一体回転可能に取付けられている。一方、ステータ50は、円筒状に形成されていて、その中心軸が回転軸41の中心軸と一致するように、ロータ60の径方向外側に配置されている。換言すると、ロータ60は、ステータ50内にステータ50の中心軸と同軸で回転可能に配置されている。ステータ50の内径とロータ60の外径とは、ステータ50内にロータ60が配置されると、ステータ50の内周面51aとロータ60の外周面61aとが、エアギャップGを挟んで対向するような寸法に設定されている。
【0058】
また、モータ40には、
図2に示すように、モータ40の温度を検出するモータ温度センサ43や、モータトルクを検出するトルクセンサ45や、ロータ60の回転角を検出する回転角センサ47等が取り付けられている。これらモータ温度センサ43、トルクセンサ45および回転角センサ47は、モータECU13と電気的に接続されていて、検出温度を表す信号、モータトルクの大きさを表す信号、ロータ60の回転角を表す信号をそれぞれモータECU13に出力するようになっている。
【0059】
以上のように構成されたモータ40では、モータECU13の指令に基づき、バッテリ20からインバータ30を介して、ステータ50へ駆動電流が供給されることで、ステータ50に回転磁界を発生し、これに伴ってロータ60が回転駆動されて、電気自動車1の前輪7が駆動されるようになっている。つまり、本実施形態のモータ40は、誘導モータとして構成されている。以下、ロータ60、ステータ50およびインバータ30について詳細に説明する。
【0060】
〈ロータ〉
ロータ60は、
図4に示すように、ロータコア61と、ロータコア61に埋め込まれた複数の二次導体65と、を有している。
【0061】
ロータコア61は、例えば、鉄等の磁性材である電磁鋼板を打ち抜き加工することにより円環状に形成された板体を、複数積層して一体に連結することで円筒状に形成されている。ロータコア61の外周部には、ロータコア61の軸方向の全長に亘って延び且つロータコア61の外周面61aから径方向内側に窪む、断面矩形状の溝条部63が、周方向に等間隔で72個形成されている。換言すると、ロータコア61の外周部には、径方向に延びる72個の溝条部63が、軸方向に見て、放射状に形成されている。
【0062】
図5は、二次導体65を模式的に示す斜視図である。なお、
図5では、図を見易くするために、72本の二次導体65のうち4本のみを示している。また、
図5の符号RAは、モータ40の回転軸を示している。各二次導体65は、銅等の磁性材から成っていて、
図4および
図5に示すように、ロータ60の軸方向の全長に亘って延びる、矩形板状に形成されている。72本の二次導体65は、各二次導体65がロータコア61の外周部に形成された各溝条部63に挿入されることで、軸方向に見て、放射状をなすように周方向に並んでいる。溝条部63と、溝条部63に挿入された二次導体65と、の間の隙間は、射出成型によって充填された樹脂66で埋められており、これにより、ロータコア61と二次導体65との一体化が図られている。なお、
図4では、72条の溝条部63および72本の二次導体65が描かれているが、これらは飽くまでも例示であり、溝条部63および二次導体65の数はこれに限定されない。
【0063】
図5に示すように、72本の二次導体65は、(回転軸RAの)軸方向一方側(
図5の左側)の端部が銅製の第1エンドリング67(短絡環)に溶接等で連結され、且つ、軸方向他方側(
図5の右側)の端部が銅製の第2エンドリング68(短絡環)に溶接等で連結されることで、かご状をなしている。このように、72本の二次導体65は、第1および第2エンドリング67,68を介して互いに電気的に接続されることで、閉回路を形成している。各二次導体65が磁場を横切ると、電磁誘導により各二次導体65に誘導起電力が生じるところ、このように72本の二次導体65が閉回路を成すことにより、各二次導体65に誘導電流が流れるようになっている。なお、周方向で相隣り合う二次導体65に、反対方向の誘導電流が流れる場合における漏電を可及的に抑えるべく、各二次導体65は外周面が絶縁被覆されている。
【0064】
〈ステータ〉
ステータ50は、
図4に示すように、円筒状のステータコア51と、ステータ50を軸方向に貫くように、ステータコア51内に設けられた複数の一次導体55と、を有している。
【0065】
ステータコア51は、例えば、各々所定の形状に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を積層し、一体に連結することにより形成されていてもよいし、また例えば、磁性粉末を成形型で圧縮成形した圧粉磁性体によって形成されてもよい。ステータコア51は、スロット53と呼ばれる溝を複数有している。各スロット53は、ステータコア51の内周面51aから径方向外側へ延びていて、隣り合うスロット53同士は、ステータコア51の周方向に互いに離間している。
【0066】
図6は、一次導体55およびインバータ30を模式的に示す斜視図である。なお、
図6では、図を見易くするために、36本の一次導体55のうち3本のみを示している。各一次導体55は、銅等の磁性材から成っていて、
図4および
図6に示すように、ロータ60の軸方向の全長に亘って延びる、丸棒状に形成されている。36本の一次導体55は、各一次導体55が各スロット53に挿入されることで、軸方向に見て、円を描くように間欠的に周方向に並んでいる。なお、
図4では、36個のスロット53および36本の一次導体55が描かれているが、これらは飽くまでも例示であり、スロット53および一次導体55の数はこれに限定されない。
【0067】
スロット53に挿入された36本の一次導体55は、
図6に示すように、(回転軸RAの)軸方向他方側(
図6の右側)の端部が銅製のバスリング57に溶接等でそれぞれ接続され、各接続部57aが、電位が0(V)となる中性点を構成するようになっている。これに対し、各一次導体55の軸方向一方側(
図6の左側)の端部は、インバータ30における円環状のボード31に形成された、円を描くように間欠的に周方向に並ぶ孔31aを貫通して、ボード31よりも軸方向一方側に突出している。
【0068】
〈インバータ〉
図7は、インバータ30を模式的に示す正面図である。インバータ30は、
図7に示すように、ボード31の他、外側リング部32と、内側リング部33と、(+)端子34と、(-)端子35と、外側アーム素子36と、内側アーム素子37と、信号線端子38と、を備えていて、
図6に示すように、モータ40と一体となっている。
【0069】
外側リング部32は、銅製の円環状の部材であり、円環状のボード31の軸方向一方側の面における径方向外側の部位に、ボード31と同心に取り付けられている。この外側リング部32には、下方に延びる(+)端子34が一体に形成されていて、この(+)端子34が、バッテリ20のプラス端子と接続されることで、外側リング部32に直流電流が供給されるようになっている。この外側リング部32は、径方向内側に延びる銅製の外側アーム32aを介して、ボード31よりも軸方向一方側に突出している36本の一次導体55の端部とそれぞれ電気的に接続されている。
【0070】
内側リング部33は、外側リング部32よりも小径に形成された、銅製の円環状の部材であり、円環状のボード31の軸方向一方側の面における径方向内側の部位に、ボード31と同心に取り付けられている。この内側リング部33には、ボード31の軸方向一方側の面で内側リング部33と繋がるとともに、ボード31を裏側に貫通して、軸方向他方側の面にて下方に延びる(-)端子35が一体に形成されていて、この(-)端子35が、バッテリ20のマイナス端子と接続されている。また、内側リング部33は、径方向外側に延びる銅製の内側アーム33aを介して、36本の一次導体55の端部とそれぞれ電気的に接続されている。
【0071】
図7に示すように、外側アーム32aの中間位置には外側アーム素子36が、また、内側アーム33aの中間位置には内側アーム素子37がそれぞれ設けられている。外側アーム素子36および内側アーム素子37は、例えば、Si-MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)で構成されていて、高速スイッチングが可能となっている。36個の外側アーム素子36および内側アーム素子37は、
図7の破線で示すように、信号線端子38とそれぞれ電気的に接続されていて、これら外側アーム素子36および内側アーム素子37のスイッチON/OFFが、信号線端子38によって個別に制御されるようになっている。なお、信号線端子38によるスイッチON/OFF制御は、モータECU13からの指令に基づいて行われる。
【0072】
外側アーム素子36がスイッチONの場合には、外側リング部32から一次導体55へ電流が流れる一方、外側アーム素子36がスイッチOFFの場合には、外側リング部32と一次導体55との間が絶縁されて、外側リング部32から一次導体55へ電流が流れないようになっている。同様に、内側アーム素子37がスイッチONの場合には、一次導体55から内側リング部33へ電流が流れる一方、内側アーム素子37がスイッチOFFの場合には、一次導体55と内側リング部33との間が絶縁されて、一次導体55から内側リング部33へ電流が流れないようになっている。
【0073】
図8は、6極のステータ50を模式的に説明する概念図であり、
図9は、8極のステータ50を模式的に説明する概念図である。なお、
図8および
図9では、図を見易くするために、円環状の外側リング部32、内側リング部33およびバスリング57を直線状にデフォルメして描いている。また、
図8および
図9では、外側アーム素子36および内側アーム素子37を、白抜きで示している場合は、スイッチONの状態を表し、黒塗りで示している場合は、スイッチOFFの状態を表している。
【0074】
図8に示す例では、電流が
図8の右向きに(実際にはボード31側からバスリング57側へ向かって)流れ、且つ、連続して並ぶ(実際には周方向に並ぶ)6本の一次導体55が、1つの一次導体群55Aを構成するように、モータECU13によって、これら6本の一次導体55と接続される、外側アーム素子36がそれぞれスイッチON状態とされるとともに、内側アーム素子37がそれぞれスイッチOFF状態とされる。また、電流が
図8の左向きに(実際にはバスリング57側からボード31側へ向かって)流れ、且つ、連続して並ぶ(実際には周方向に並ぶ)6本の一次導体55が、1つの一次導体群55Bを構成するように、モータECU13によって、これら6本の一次導体55と接続される、外側アーム素子36がそれぞれスイッチOFF状態とされるとともに、内側アーム素子37がそれぞれスイッチON状態とされる。これにより、
図8に示すように6つの極Pが形成されることになる。
【0075】
これに対し、
図9に示す例では、電流が
図9の右向きに(実際にはボード31側からバスリング57側へ向かって)流れ、且つ、連続して並ぶ(実際には周方向に並ぶ)4本の一次導体55が、1つの一次導体群55Aを構成するように、モータECU13によって、これら4本の一次導体55と接続される、外側アーム素子36がそれぞれスイッチON状態とされるとともに、内側アーム素子37がそれぞれスイッチOFF状態とされる。また、電流が
図9の左向きに(実際にはバスリング57側からボード31側へ向かって)流れ、且つ、連続して並ぶ(実際には周方向に並ぶ)4本の一次導体55が、1つの一次導体群55Bを構成するように、モータECU13によって、これら4本の一次導体55と接続される、外側アーム素子36がそれぞれスイッチOFF状態とされるとともに、内側アーム素子37がそれぞれスイッチON状態とされる。さらに、一次導体群55Aと一次導体群55Bとの間に、電流が流れない一次導体55’が、8つおきに生じるように、モータECU13によって、かかる一次導体55’と接続される外側アーム素子36および内側アーム素子37がそれぞれスイッチOFF状態とされる。これにより、
図9に示すように8つの極Pが形成されることになる。
【0076】
なお、電気自動車1では、モータ40の振動が運転者に認知され難いため、エンジン車両の運転に慣れた運転者が電気自動車1の運転をすると、車室に伝達される振動から運転状態を認識することができないことに対して違和感を覚えるケースが想定される。この点、本実施形態では、電流が流れない一次導体55’を意図的に作出することで、磁界のギャップが生じるとともに、極Pのピッチが不均等になることから、脈動を生じさせることが可能となる。これにより、車室に伝達されるモータ40の振動から運転者が運転状態を認識することが可能となるので、振動という面からも、エンジン車両に近い運転操作フィーリングを実現することができる。
【0077】
このように、本実施形態のモータ40は、モータECU13によって、信号線端子38を介して、36本の一次導体55を流れる電流の向きがそれぞれ変更されて、電流が同じ向きに流れ且つ周方向に連続して並ぶ一次導体群55A,55Bの数が増減されることで、ステータ50の極数が変更されるように構成されている。以下、これを「極数変更制御」とも称する。
【0078】
これにより、請求項との関係では、本実施形態のECU11、モータECU13およびインバータ30が、本発明で言うところの「モータにおける、複数の一次導体を流れる電流の向きをそれぞれ変更して、電流が同じ向きに流れ且つ周方向に連続して並ぶ一次導体群の数を増減することで、ステータの極数を変更可能なモータ制御部」に相当する。なお、以下では、ECU11、モータECU13およびインバータ30を「ECU11等」とも称する。
【0079】
なお、6極や8極は飽くまでも例示であり、同じインバータ30およびステータ50を用いて、例えば9本の一次導体55が1つの一次導体群55A,55Bを構成するようにして4極にすることや、例えば2本の一次導体55が1つの一次導体群55A,55Bを構成するとともに、電流が流れない一次導体55’が8つおきに生じるようにして16極にすることや、例えば、三相(U相、V相、W相)の4極や6極にすることも可能である。また、ステータ50の極数変更が可能であることを除けば、本実施形態のインバータ30は通常のインバータと同様の機能を有するので、当然に、モータ40が発生させる回生電力を直流電流に変換してバッテリ20に供給することにより、バッテリ20を充電することが可能となっている。
【0080】
-モータECU-
モータECU13は、ECU11やバッテリECU15と同様に、例えばCPUや、ROMや、RAMや、バックアップRAMや、入力出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより各種制御を実行する。
【0081】
モータECU13は、上述の如く、CAN通信線を介してECU11と接続されており、モータ温度センサ43から入力されたモータ40の温度や、トルクセンサ45から入力されたモータトルクや、回転角センサ47から入力されたロータ60の回転角に関する信号をECU11に出力するように構成されている。そうして、モータECU13は、後述するように、ECU11から入力されるモータ40への要求トルクを発生させるように、回転角センサ47が検出したロータ60の回転角等に基づいて、所定の相、所定の進角、所定の大きさの入力電流が一次導体55に流れるよう、モータ40を制御するように構成されている。
【0082】
図10は、モータ40の回転原理を模式的に説明する図であり、同図(a)は低速域における8極のモータ40を示し、同図(b)は高速域における4極のモータ40を示している。なお、
図10では、丸内に×を描いた矢尻のマークは紙面奥側へ(例えばボード31側からバスリング57側へ向かって)電流が流れることを表す一方、丸内に黒点を描いた矢頭のマークは紙面手前側へ(例えばバスリング57側からボード31側へ向かって)電流が流れることを表している。
【0083】
モータ40におけるモータ回転速度は、ステータ50の極数に反比例することから、低速域では、モータECU13は、
図10(a)に示すように、例えば極数を8極に設定(相対的に多く)する。そうして、モータECU13は、信号線端子38を介して、ステータ50(一次導体55)へ電流を供給しつつ、外側アーム素子36および内側アーム素子37の高速スイッチングを行わせることで、
図10(a)の黒塗り矢印で示すような時計回りの回転磁界を発生させる。すると、二次導体65が、回転磁界に対し相対移動することから、フレミングの右手の法則により、二次導体65に誘導電流が流れる。このように、回転磁界内にある二次導体65に電流が流れることで、フレミングの左手の法則により、二次導体65に電磁力が発生し、これにより、二次導体65が埋め込まれたロータ60が、
図10(a)の白抜き矢印で示すように、回転磁界に対し遅れながら時計回りに低速で回転する非同期運転が行われることになる。
【0084】
一方、高速域では、モータECU13は、
図10(b)に示すように、例えば極数を4極に設定(相対的に少なく)する。そうして、モータECU13が、
図10(b)の黒塗り矢印で示すような時計回りの回転磁界を発生させると、二次導体65に電磁力が発生し、これにより、二次導体65が埋め込まれたロータ60が、
図10(b)の白抜き矢印で示すように、回転磁界に対し遅れながら時計回りに高速で回転する非同期運転が行われることになる。
【0085】
(極数変更制御)
上述の如く、本実施形態の係る電気自動車1には、エンジン車両に通常搭載されている変速機が搭載されていない。このため、エンジン車両に慣れた運転者が電気自動車1を運転した場合に、異なる運転操作フィーリング(違和感)を与えてしまうケースが想定される。
【0086】
そこで、本実施形態に係る車両用駆動システム10では、運転者による運転操作および電気自動車1の走行状態の少なくとも一方に基づいて、モータ40の特性(モータ回転速度およびモータトルク)を変化させるように、具体的には、ステータ50の極数を変更するように、ECU11等を構成している。
【0087】
より詳しくは、ECU11のROMには、例えば4極、6極、8極といった各可変極数に対応する許容限界トルクが記憶されている。そうして、ECU11は、運転者による運転操作および電気自動車1の走行状態の少なくとも一方に基づいて、モータ40への要求トルクを検出し、許容限界トルクを用いて、そのような要求トルクを満足するような極数を選択するように構成されている。
【0088】
このようにECU11等を構成することで、例えば、ステータ50の極数を相対的に多くすれば、モータトルクが相対的に大きくなることで、低速段に近いフィーリングを実現することができる一方、ステータ50の極数を相対的に少なくすれば、モータ回転速度が相対的に高くなることで、高速段に近いフィーリングを実現することが可能となる。
【0089】
ここで、「運転者による運転操作」には、アクセル操作およびブレーキ操作が含まれている。そうして、ECU11は、予めROMに記憶された、アクセル踏込み量(およびブレーキ踏込み量)と車速Vとで規定されるモータ40への要求トルクをマップ化した制御マップ(第1制御マップ)を用いて、モータ40への要求トルクを検出し、かかる要求トルクに基づいてステータ50の極数を変更するように構成されている。
【0090】
具体的には、ECU11は、第1制御マップを用いて、車速センサ74によって検出された車速Vと、アクセルペダルセンサ70によって検出されたアクセル踏込み量(アクセル操作)と、に基づいて推定される要求駆動力(要求トルク)が大きい場合には、要求駆動力が小さい場合よりも、ステータ50の極数を多くするように構成されている。例えば、(1)高速走行中での追い越しのためにアクセルペダルが大きく踏み込まれた場合など、要求駆動力が大きい場合には、ECU11等がステータ50の極数を多くすることから、モータトルク(加速度)を大きくすることができ、これにより、運転者の趣向に応じた加速フィーリングを実現することができる。
【0091】
一方、ECU11は、車速Vと、ブレーキペダルセンサ71によって検出されたブレーキ踏込み量(ブレーキ操作)と、に基づいて推定される要求制動力が大きい場合には、要求制動力が小さい場合よりも、ステータ50の極数を多くするように構成されている。例えば、(2)高速走行中や市街地での走行中にブレーキペダルが踏み込まれた急減速の場合など、要求制動力が大きい場合には、ECU11等がステータ50の極数を多くすることから、大きな回生ブレーキ力を発生させることができ、これにより、運転者の趣向に応じた減速フィーリングを実現することができる。
【0092】
これらに対し、ECU11は、第1制御マップを用いて、車速センサ74によって検出された車速Vと、アクセルペダルセンサ70によって検出されたアクセル踏込み量(アクセル操作)と、に基づいて推定される要求駆動力(要求トルク)が小さい場合には、ステータ50の極数を少なくするように構成されている。例えば、(3)高速巡行中や、(4)市街地でのノロノロ運転、また、(5)高速走行中での惰行減速や市街地での惰行減速など、要求駆動力(要求トルク)が小さい場合には、ECU11等がステータ50の極数を少なくすることから、運転者の趣向に応じた減速フィーリングを実現することができる。
【0093】
また、「自車両の走行状態」には、電気自動車1の周辺走行環境が含まれている。上述の如く、ECU11は、GPS受信機75から受け取った位置情報と、ROMに記憶された地図データベースと、に基づき、電気自動車1の周辺走行環境(平坦路、登坂路、降坂路、旋回中、ワインディングロード、市街地)を取得する。そうして、ECU11は、予めROMに記憶された、車速Vと周辺走行環境とで規定されるモータ40への要求トルクをマップ化した制御マップ(第2制御マップ)を用いて、モータ40への要求トルクを検出し、かかる要求トルクに基づいて、ステータ50の極数を変更するように構成されている。例えば、ECU11は、電気自動車1が(6)登坂発進をする場合には、ステータ50の極数を多くするように構成されている。このように、登坂発進をする場合には、ステータ50の極数を多くすることから、モータトルクを大きくすることができ、これにより、登坂路をスムーズに登ることができる。
【0094】
もっとも、運転者により「マニュアルモード」が選択されている場合にも、ECU11が、アクセル操作およびブレーキ操作、並びに、電気自動車1の周辺走行環境に基づいて、ステータ50の極数(モータの特性)を変更してしまうと、運転者に違和感を与えてしまうケースが想定される。このため、本実施形態では、運転者により「マニュアルモード」が選択されている場合には、シフトレバー2aまたはパドルスイッチ73の操作で表される運転者の意思を反映した極数変更制御を行うべく、D--、D-、D、D+、D++の順に大きくなるように要求トルクを設定し、そのような要求トルクを満足するように、極数を変更するよう、ECU11を構成している。このように、運転者によるシフトレバー2aまたはパドルスイッチ73の操作に応じてステータ50の極数が変更されるので、換言すると、運転者の要求に応じて極数変更が行われるので、より一層運転者の趣向に応じたモータ制御を行うことが可能となる。
【0095】
(接続形態変更制御)
ところで、モータ40は、電流に比例してモータトルクが増える一方、電圧を高めるとモータ回転速度が上昇する性質がある。また、上述の如く、並列接続される電池モジュール対22の数を増やせば、供給電流を相対的に高くすることが可能となる一方、直列接続される電池モジュール対22の数を増やせば、供給電圧を相対的に高くすることが可能となる。
【0096】
そこで、本実施形態に係る車両用駆動システム10では、電気自動車1の走行態様に応じて、電池モジュール対22の接続形態を変更するように、ECU11およびバッテリECU15(以下、「バッテリECU15等」という。)を構成している。このように、バッテリECU15等を構成することで、例えば、並列接続される電池モジュール対22の数を増やせば、大きな電流がモータ40へ供給されることで、モータトルクを相対的に大きくすることができる一方、直列接続される電池モジュール対22の数を増やせば、高い電圧がモータ40へ供給されることで、モータ回転速度を相対的に高くすることができる。
【0097】
このように、接続形態変更制御によれば、変更の前後でモータ40の特性を変化させることができることから、極数変更制御と同様、運転者の趣向(電気自動車1の走行態様)に応じたモータ制御を行うことが可能となる。
【0098】
(協調制御)
上記極数変更制御と、上記接続形態変更制御と、を共に実行すれば、これらの作用が相俟って、モータトルクをより一層大きくしたり、モータ回転速度をより一層高くしたりすることができ、これにより、運転者の趣向に応じた広い要求出力に対応することが可能となる。もっとも、これらが同時に実行されると、状態急変により車両システムが不安定になる可能性がある。
【0099】
そこで、本実施形態に係る車両用駆動システム10では、ステータ50の極数を変更する極数変更制御と、電池モジュール対22の接続形態を変更する接続形態変更制御と、を異なるタイミングで開始する協調制御を行うように、ECU11、モータECU13およびバッテリECU15を構成している。
【0100】
なお、「異なるタイミングで開始」には、例えば、ステータ50の極数の変更中に、接続形態変更制御が開始される場合も含まれるが、車両システムの状態が最も急変し易いのは、各制御の開始時と考えられることから、この場合でも、極数変更制御と接続形態変更制御とを異なるタイミングで開始することによって、車両システムが不安定になるのを抑えるという効果を見込むことができる。
【0101】
そうして、車両システムが不安定になるのをより一層確実に抑えるべく、ECU11、モータECU13およびバッテリECU15は、ステータ50の極数の変更が行われた場合には、極数の変更が行われてから所定時間T経過後に、電池モジュール対22の接続形態を変更するように構成されていることが好ましい。ここで、「所定時間T」は、極数変更の遷移状態が安定するまでの時間であり、例えば0.3~1.0秒の間で設定される。かかる協調制御によれば、ステータ50の極数を変更する極数変更制御が行われてから所定時間T経過後に、換言すると、極数変更の遷移状態が安定した後に、電池モジュール対22の接続形態を変更する接続形態変更制御が行われることから、車両システムが不安定になるのをより一層確実に抑えることができる。
【0102】
そうして、所定時間T経過後に電池モジュール対22の接続形態を変更する際、バッテリ20の直流電源電圧値PSVがモータ40の逆起電圧RVより小さい場合、すなわち、充電の場合には、バッテリECU15等は、回生による電費の向上を図るべく、電池モジュール21全てを並列接続するように構成されている。
【0103】
これに対し、バッテリ20の直流電源電圧値PSVがモータ40の逆起電圧RVより大きい場合には、バッテリECU15等は、直流電源電圧値PSVと逆起電圧RVとの電位差PDが、目標電位差TPDよりも大きいときは、並列接続される電池モジュール対22の数を現在よりも増やす一方、目標電位差TPD以下のときは、直列接続される電池モジュール対22の数を現在よりも増やすように構成されている。なお、「目標電位差TPD」とは、電気自動車1の走行態様に応じて予め設定された値である。
【0104】
この構成について詳述すると、電圧が高い方から低い方へ電力は移動するところ、バッテリ20の直流電源電圧値PSVがモータ40の逆起電圧RVより大きい場合、すなわち、電力がモータ40側へ供給される放電の場合には、直流電源電圧値PSVと逆起電圧RVとの差分だけ、モータ40の回転駆動に利用可能な電位差PD(以下、「利用可能電位差PD」ともいう。)が生じることになる。
【0105】
ここで、バッテリ20の直流電源電圧値PSVは、充電状態(SOC)に連動して変動するが、モータ回転速度が高い程、逆起電圧RVが大きくなるため、利用可能電位差PDは小さくなる傾向にある一方、モータ回転速度が低い程、逆起電圧RVが小さくなるため、利用可能電位差PDは大きくなる傾向にある。つまり、利用可能電位差PDは電気自動車1の走行態様に応じて、大きくなったり小さくなったりする。
【0106】
例えば上記(6)登坂発進をする場合には、大きいモータトルクが要求されるが、モータ40は電流に比例してモータトルクが増える性質があることから、相対的に小さな目標電位差TPDを設定することが好ましい。これに対し、例えば上記(3)高速巡行中の場合には、高いモータ回転速度が要求されるが、モータ40は電圧を高めるとモータ回転速度が上昇する性質があることから、相対的に大きな目標電位差TPDを設定することが好ましい。
【0107】
このような考え方で、設定された目標電位差TPDの傾向を
図11に示す。なお、目標電位差TPDは、電気自動車1の走行態様と関連付けて、ECU11のROMに記憶されている。
【0108】
図11に示すように、先ず(1)高速走行中での追い越しの場合には、要求トルクが「+大」であることから、極数を「多」とする極数変更制御が行われる。また、この場合には、モータ回転速度が「+大」であることから、逆起電圧RVが「+大」となるため、利用可能電位差PDは「小」となる傾向にある。そうして、追い越しのためにモータ回転速度を上昇させるべく、目標電位差TPDが「大」に設定されることから、利用可能電位差PDが目標電位差TPD以下という条件が成立し易くなる。これにより、推奨接続形態である「直列」接続される電池モジュール対22の数が増え、大きな電圧がモータ40へ供給されることから、追い越しに必要な高いモータ回転速度を発生させることが可能となる。
【0109】
また、(6)登坂発進をする場合には、要求トルクが「+大」であることから、極数を「多」とする極数変更制御が行われる。また、この場合には、モータ回転速度が「+小」であることから、逆起電圧RVが「+小」となるため、利用可能電位差PDは「中(~大)」となる傾向にある。そうして、登坂発進のためにモータトルクを上昇させるべく、目標電位差TPDが「小」に設定されることから、利用可能電位差PDが目標電位差TPDよりも大きいという条件が成立し易くなる。これにより、推奨接続形態である「並列」接続される電池モジュール対22の数が増え、大きな電流がモータ40へ供給されることから、登坂発進に必要な大きなモータトルクを発生させることが可能となる。
【0110】
さらに、(3)高速巡行中の場合には、要求トルクが「+小」であることから、極数を「少」とする極数変更制御が行われる。また、この場合には、モータ回転速度が「+大」であることから、逆起電圧RVが「+大」となるため、利用可能電位差PDは「(小~)中」となる傾向にある。そうして、高速巡行継続のため高いモータ回転速度を維持するべく、目標電位差TPDが「大」に設定されることから、利用可能電位差PDが目標電位差TPD以下という条件が成立し易くなる。これにより、推奨接続形態である「直列」接続される電池モジュール対22の数が増え、大きな電圧がモータ40へ供給されることから、高速巡行に必要な高いモータ回転速度を発生させることが可能となる。
【0111】
また、(4)市街地でのノロノロ運転の場合には、要求トルクが「+小」であることから、極数を「少」とする極数変更制御が行われる。また、この場合には、モータ回転速度が「+小」であることから、逆起電圧RVが「+小」となるため、利用可能電位差PDは「大」となる傾向にある。そうして、回生のためにモータトルクを上昇させるべく、目標電位差TPDが「小」に設定されることから、利用可能電位差PDが目標電位差TPDよりも大きいという条件が成立し易くなる。これにより、推奨接続形態である「並列」接続される電池モジュール対22の数が増えることから、回生による電費の向上を図ることが可能となる。
【0112】
以上のように、本実施形態に係る車両用駆動システム10によれば、ECU11、モータECU13およびバッテリECU15が、極数変更制御と接続形態変更制御とを異なるタイミングで開始するように構成されていることから、車両システムが不安定になるのを抑えつつ、モータ40の特性を変更することができる。
【0113】
(制御フロー)
次に、ECU11等が実行する極数変更制御および接続形態変更制御の一例を、
図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0114】
先ず、ステップS1では、ECU11が、モータ40への要求トルクを検出する。具体的には、ECU11は、ROMに記憶された第1または第2制御マップを用いて、アクセル踏込み量、ブレーキ踏込み量、車速V、周辺走行環境等に基づいて、要求トルクを検出し、その後ステップS2へ進む。
【0115】
次のステップS2では、ECU11が、現在のステータ50の極数を検出した後、ステップS3へ進む。次のステップS3では、ECU11が、バッテリ20の直流電源電圧値PSVを取得した後、ステップS4へ進む。
【0116】
次のステップS4では、ECU11が、モータ40の回転速度(モータ回転速度)を検出した後、ステップS5へ進む。次のステップS5では、ECU11が、ステップS4で検出したモータ回転速度に基づいて、モータ40の誘起電圧(逆起電圧RV)を推定した後、ステップS6へ進む。
【0117】
次のステップS6では、ECU11が、ステップS3で取得したバッテリ20の直流電源電圧値PSVと、ステップS5で推定したモータ40の逆起電圧RVと、に基づいて、利用可能電位差PDを推定した後、ステップS7へ進む。
【0118】
次のステップS7では、ECU11が、充電中か否か、すなわち、利用可能電位差PD<0か否かを判定する。このステップS7での判定がYESの場合にはステップS13に進み、バッテリECU15等が、複数の電池モジュール21全てを並列接続にした後、RETURNする。一方、このステップS7での判定がNOの場合、すなわち、放電中の場合にはステップS8に進む。
【0119】
次のステップS8では、ECU11が、ステップS1で検出したモータ40への要求トルクが、ステップS2で取得した現在極数での許容限界トルクよりも大きいか否かを判定する。このステップS8での判定がYESの場合、すなわち、要求トルクが現在極数での許容限界トルクよりも大きい場合には、ステップS9に進み、ECU11等が、ステータ50の極数を現在よりも増やした後、ステップS11に進む。一方、このステップS8での判定がNOの場合、すなわち、要求トルクが現在極数での許容限界トルク以下の場合には、ステップS10に進み、ECU11等が、ステータ50の極数を現在よりも減らした後、ステップS11に進む。
【0120】
次のステップS11では、ECU11が、電気的に接続された時計(図示せず)等を用いて、ステップS9またはステップS10での極数変更から所定時間Tが経過したか否かを判定する。ECU11は、ステップS11での判定がNOの場合には、判定がYESになるまで当該判定を繰り返す。このステップS11での判定がYESの場合、すなわち、極数変更から所定時間Tが経過した場合には、ステップS12に進む。
【0121】
次のステップS12では、ECU11が、ステップS6で推定した利用可能電位差PDが、予めROMに記憶されている目標電位差TPDよりも大きいか否かを判定する。このステップS12での判定がYESの場合、すなわち、利用可能電位差PDが目標電位差TPDよりも大きい場合(電圧に余裕がある場合)には、ステップS13に進み、バッテリECU15等が、複数の電池モジュール21全てを並列接続にした後、RETURNする。
【0122】
一方、このステップS12での判定がNOの場合、すなわち、利用可能電位差PDが目標電位差TPD以下の場合(電圧に余裕がない場合)には、ステップS14に進み、バッテリECU15等が、複数の電池モジュール21全てを直列接続にした後、RETURNする。
【0123】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0124】
上記実施形態では、二次導体65に発生する誘導電流を用いてロータ60を回転させる非同期運転を行うようにしたが、これに限らず、例えば、ロータ60における二次導体65よりも径方向内側の部位に、周方向に並ぶ複数の永久磁石(図示せず)を配置し、永久磁石の磁力を用いてロータ60を回転させる同期運転を行うようにしてもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、モータ40を電気自動車1の車両前後方向前側に配置し、前輪7を駆動輪としたが、これに限らず、例えばモータ40を電気自動車1の車両前後方向後側に配置し、後輪8を駆動輪としてもよい。
【0126】
さらに、上記実施形態では、極数変更制御の実行後に接続形態変更制御を実行する場合について説明したが、これに限らず、接続形態変更制御の実行後に極数変更制御を実行するようにしてもよい。
【0127】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によると、車両システムが不安定になるのを抑えつつ、モータの特性を変更することができるので、モータの特性を変更可能な車両用駆動システムに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0129】
1 車両
3 ステアリングホイール
7 前輪(駆動輪)
10 車両用駆動システム
11 ECU(モータ制御部、バッテリ制御部)
13 モータECU(モータ制御部)
15 バッテリECU(バッテリ制御部)
20 バッテリ
21 電池モジュール
22 電池モジュール対
30 インバータ(モータ制御部)
40 モータ
50 ステータ
55 一次導体
55A 一次導体群
55B 一次導体群
60 ロータ
65 二次導体
73 パドルスイッチ(パドルシフトスイッチ)
P 極
PD 電位差
PSV 直流電源電圧値
RV 逆起電圧
T 所定時間
TPD 目標電位差