(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164739
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20241120BHJP
G03B 5/08 20210101ALI20241120BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20241120BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20241120BHJP
G02B 7/14 20210101ALI20241120BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20241120BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20241120BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20241120BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20241120BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241120BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B5/08
G02B7/02 C
G03B17/14
G02B7/14
G03B13/36
G03B11/00
H04N23/50
H04N23/67 100
H04N23/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080438
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健太
【テーマコード(参考)】
2H011
2H044
2H083
2H101
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H011CA14
2H044AC03
2H044HB00
2H083AA04
2H083AA26
2H083AA34
2H101EE08
2H151AA06
2H151DA24
2H151DD05
5C122DA01
5C122EA31
5C122FB03
5C122FB08
5C122FB10
5C122FB20
5C122FB23
5C122FC02
5C122FD01
5C122FD13
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA82
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】
光学特性が変化した場合の画質の低下を抑制できる撮像装置を提供する。
【解決手段】
撮像装置において、レンズユニットと、撮像素子と、前記レンズユニットの主面又は前記撮像素子の受光面の少なくとも一方を相対的にチルトさせるチルト手段と、前記レンズユニットと前記撮像素子との距離を変更するシフト手段と、前記レンズユニットのレンズ情報を取得する取得手段を有し、前記レンズ情報及び前記撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、前記チルト手段と前記シフト手段の駆動量を制御する制御手段と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズユニットと、
撮像素子と、
前記レンズユニットの主面又は前記撮像素子の受光面の少なくとも一方を相対的にチルトさせるチルト手段と、
前記レンズユニットと前記撮像素子との距離を変更するシフト手段と、
前記レンズユニットのレンズ情報を取得する取得手段を有し、
前記レンズ情報及び前記撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、前記チルト手段と前記シフト手段の駆動量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記レンズユニットは、撮像装置に対して交換可能な交換レンズユニットであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記レンズ情報は、前記レンズユニットのID又は光学特性を含むことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記シフト手段は前記撮像素子及び前記レンズユニットの少なくとも一方の位置を変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記チルト手段により前記チルトをした場合に、前記合焦領域の中心座標に対応する前記撮像素子の画素位置と所定のフランジバック位置との差が所定値以下となるように前記シフト手段により前記距離を変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記合焦領域は、ユーザにより指定された複数の合焦位置を包括する領域であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記合焦領域は、ユーザにより指定された被写体距離よりも遠方の被写体像が含まれる領域であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記レンズ情報と前記チルトの角度に基づいて求めた前記レンズユニットの収差量と前記撮像素子の画素ピッチの大小関係に基づき、前記シフト手段の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像素子の前に挿入可能な赤外カットフィルタを有し、
前記制御手段は、前記赤外カットフィルタが挿入されているか否かに基づき前記シフト手段の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
レンズユニットと、撮像素子と、前記レンズユニットの主面又は前記撮像素子の受光面の少なくとも一方を相対的にチルトさせるチルト手段と、前記レンズユニットと前記撮像素子との距離を変更するシフト手段と、を有する撮像装置を用いた撮像方法であって、
前記レンズユニットのレンズ情報を取得する取得ステップと、
前記レンズ情報及び前記撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、前記チルト手段と前記シフト手段の駆動量を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする撮像方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像方法、及びコンピュータプログラム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠近両方へ合焦させ撮影する手段として、シャインプルーフの原理を利用した撮像装置が知られている。例えば特許文献1では、撮像素子をチルトさせ、特定の焦点検出位置において焦点ズレが発生していた場合には光軸方向へ微動させ、フォーカス補正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、光学系と撮像素子の一方をチルトさせると、結像面までの距離が変動するため、設計値通りの光学特性を発揮できない場合があり、光学特性が大きく変化すると画質が低下することがある。例えば色収差により色ずれが発生する。
【0005】
そこで、本発明の目的の1つは、光学特性が変化した場合の画質の低下を抑制できる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1側面に係る撮像装置は、
レンズユニットと、
撮像素子と、
前記レンズユニットの主面又は前記撮像素子の受光面の少なくとも一方を相対的にチルトさせるチルト手段と、
前記レンズユニットと前記撮像素子との距離を変更するシフト手段と、
前記レンズユニットのレンズ情報を取得する取得手段を有し、
前記レンズ情報及び前記撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、前記チルト手段と前記シフト手段の駆動量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学特性が変化した場合の画質の低下を抑制できる撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る撮像装置10の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る撮像装置を用いた撮像方法の例を説明するフローチャートである。
【
図3】(A)、(B)は、実施形態1に係る、ユーザの操作による領域指定方法の例を示す図である。
【
図4】(A)~(C)は、実施形態1に係る、チルト動作時のレンズの収差変化について説明する図である。
【
図5】(A)、(B)は、実施形態1に係る、シフト量を導出する計算式を説明するための模式図である。
【
図6】実施形態1に係る、チルト角補正値を導出する方法を説明するための図である。
【
図7】実施形態3に係る撮像装置10の機能ブロック図である。
【
図8】(A)~(C)は、実施形態3に係る、チルト動作及びシフト動作を説明するための図である。
【
図9】は、本発明の実施形態1~3に係る撮像装置10等のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図において、同一の部材または要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0010】
尚、本実施形態においては、撮像装置としてネットワークカメラに適用した例について説明する。しかし、撮像装置はデジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラ、カメラ付きのスマートフォン、カメラ付きのタブレットコンピュータ、車載カメラ、ドローンカメラ、ロボットに搭載されたカメラなどの撮像機能を有する電子機器等を含む。
【0011】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置10の機能ブロック図である。尚、
図1に示される機能ブロックの一部は、撮像装置に含まれるコンピュータとしてのCPU等に、記憶媒体としてのメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行させることによって実現されている。撮像装置10のハードウェア構成例については
図9において後述する。
【0012】
尚、
図1の機能ブロックの一部又は全部をハードウェアで実現するようにしても構わない。ハードウェアとしては、専用回路(ASIC)やプロセッサ(リコンフィギュラブルプロセッサ、DSP)などを用いることができる。
【0013】
又、
図1に示される夫々の機能ブロックは、同じ筐体に内蔵されていなくても良く、互いに信号路を介して接続された別々の装置により構成しても良い。尚、
図1に関する上記の説明は、
図7についても同様に当てはまる。
【0014】
撮像装置10は、交換レンズユニット100、撮像素子101、画像処理部102、制御部103、通信部104、センサチルト機構105、センサシフト機構106及びレンズ情報取得部107等によって構成される。
【0015】
交換レンズユニット100は、被写体像を撮像素子101の受光面に結像するためのレンズを有し、撮像装置10に対して交換可能なレンズユニットである。撮像素子101は、例えばベイヤ配列のR,G、Bフィルタを有する、CMOSイメージセンサ等であり、撮像素子101により取得された画像は、画像処理部102にて所定の画像処理が行われ、制御部103へ転送される。
【0016】
制御部103は、通信部104を介して、外部端末からのユーザの操作入力情報を受信する。制御部103は、ユーザの操作入力情報やレンズ情報取得部107の取得情報等に応じてセンサチルト機構105やセンサシフト機構106を駆動する。
【0017】
ここで、制御部103は、レンズ情報及び撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、センサチルト機構105とセンサシフト機構106の駆動量を制御する制御手段として機能している。
【0018】
通信部104は、インターネット等のネットワークへの接続が可能なように構成されており、撮像装置で取得した画像を送信して外部端末等のブラウザ上に表示する。又、通信部104は、外部端末から、チルト角やシフト量などを含むフォーカス操作などのユーザ操作を受信する。
【0019】
センサチルト機構105は、制御部103によって、交換レンズユニットのレンズの主面(レンズの光軸と垂直な面)に対して撮像素子101の受光面を相対的に傾ける機構である。
【0020】
ここで、センサチルト機構105は、レンズユニットの主面又は撮像素子の受光面の少なくとも一方である撮像素子を相対的にチルトさせるチルト手段として機能している。尚、後述のようにレンズユニットの主面を相対的にチルトさせても良いし、撮像素子とレンズユニットを共にチルトさせても良い。
【0021】
センサシフト機構106は、交換レンズユニット100のレンズマウント基準面に対する撮像素子101までの距離(フランジバック距離)を光軸方向に変更する機構である。ここで、センサシフト機構106は、レンズユニットと撮像素子との距離を変更するシフト手段として機能している。
【0022】
尚、シフト手段は撮像素子及びレンズユニットの少なくとも一方の位置を変更すれば良く、ここでは撮像素子の位置をシフトしているが、後述のようにレンズユニットの位置をシフトしても良いし、両方をシフトしても良い。
【0023】
尚、レンズ情報取得部107は、交換レンズユニット100内に設けた不図示のROMに記憶されたレンズ情報を取得する。本実施形態におけるレンズ情報とは、例えば交換レンズユニット100の型名情報、ID情報、交換レンズユニット100のレンズの光学特性等の少なくとも1つを含む。即ち、レンズ情報取得部107は、レンズユニットのレンズ情報を取得する取得手段として機能しており、レンズ情報は、レンズユニットのID又は光学特性を含む。
【0024】
又、本実施形態では、交換レンズユニット100の例を用いて説明するが、レンズユニットは撮像装置10に対して交換可能でなくても良い。
【0025】
図2は、実施形態1に係る撮像装置を用いた撮像方法の例を説明するフローチャートである。尚、撮像装置10内のコンピュータとしてのCPU等がメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって
図2のフローチャートの各ステップの動作が順次行われる。
【0026】
以下、
図2を参照して、本発明の実施形態1に係る、AF(オートフォーカス)動作時にあおり制御をする際の、チルト駆動量・シフト駆動量を算出するためのフローについて説明する。
【0027】
先ずステップS200では、レンズ情報取得部107は、交換レンズユニット100と通信をすることによって、交換レンズユニット100内に設けた不図示のROMに記憶されたレンズ情報を取得する。ここでステップS200はレンズユニットのレンズ情報を取得する取得ステップとして機能している。
【0028】
ステップS201では、現在のセンサチルト角及びシフト位置を夫々センサチルト機構105とセンサシフト機構106から取得する。尚、センサチルト機構105とセンサシフト機構106には、夫々におけるセンサチルト角及びシフト位置を示すエンコーダを有し、ステップS201では、夫々のエンコーダからセンサチルト角及びシフト位置を取得する。
【0029】
その後、ステップS202にて、外部端末から、ユーザによる操作部の指示内容を取得する。そして取得した指示内容に基づき、合焦したい領域(合焦領域)のチルト方向の中心座標を取得する。次に、ステップS200~ステップS202にて取得した情報に基づいて、ステップS203にてシフト駆動が必要か判定する。
【0030】
ステップS203にてYesと判定された場合には、ステップS204へ処理を進め、Noと判定された場合には、
図2のフローを終了する。ステップS204では、ユーザの指示内容である、合焦したい領域(合焦領域)の中心座標と、交換レンズユニット100のレンズ情報に基づき、前記中心座標が合焦位置となるようにセンサシフト駆動量を算出する。
【0031】
ステップS205では、算出したセンサシフト駆動量に基づきチルト角補正量を算出する。その後、ステップS206にてセンサシフト駆動及びセンサチルト駆動を実行し、
図2のフローを終了する。尚、ステップS200~ステップS206は、レンズ情報及び撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、チルト手段とシフト手段の駆動量を制御する制御ステップとして機能している。
【0032】
図3(A)、(B)は、実施形態1に係る、ユーザの操作による領域指定方法の例を示す図である。
図3(A)は、ステップS202における操作部の指示内容を取得する方法の一例を示す図である。
【0033】
撮像装置10は、通信部104を介して外部端末のブラウザ300上に撮像画像301を表示する。ユーザは、撮像画像301の一部を例えばクリックすることにより、合焦したい領域である、合焦指定位置303を1つまたは複数選択することができる。
【0034】
図3(A)に示す例では合焦指定位置303が2つ示されている。合焦領域302は、ユーザからの合焦指定位置303の位置を包括する例えば矩形状の領域であり、自動的に設定される。即ち、合焦領域302は、ユーザにより指定された複数の合焦位置を包括する領域である。尚、合焦領域302はユーザがドラッグ操作等をすることで設定されたものであっても良い。
【0035】
合焦指定位置303は、ユーザが任意の個数及びサイズで指定可能であり、指定された領域はハイライト表示や枠表示や点滅表示などの強調表現を用いてユーザへ通知される。合焦領域302は、合焦指定位置303を示すための強調表現とは異なる第2の強調表現を用いてユーザへ通知される。
【0036】
図3(B)は、ステップS202における操作部の指示内容を取得する方法の他の例を示す図である。
図3(B)に示す例では、ユーザは入力操作部304を操作して、撮影したい被写体までの最短距離情報を設定する。
【0037】
撮像装置10は、最短距離情報を受信し、予め取得したレンズ情報に含まれる、距離情報と深度情報のテーブルに基づき、合焦領域302を決定する。
図3(B)に示す例の場合には、合焦領域は、ユーザにより指定された被写体距離よりも遠方の被写体像が含まれる領域とする。
【0038】
以上のような方法で、撮像装置10は合焦領域302の情報を取得し、更にその領域の中心画素の座標を取得する。尚、ここで、領域の中心画素の座標とは、合焦領域302の合焦距離範囲の略中央の距離に対応した画素の座標を意味する。
【0039】
又、
図3(A)、(B)の例ではユーザが合焦領域を指定したり、最短距離情報を設定したりしているが、画像認識に基づき所定の被写体が1つ以上検出された場合に、それらの被写体領域を包括する合焦領域を自動設定しても良い。
【0040】
図4(A)~(C)は、実施形態1に係る、チルト動作時のレンズの収差変化について説明する図であり、
図4(A)~(C)を用いて、ステップS203におけるシフト駆動の要否を判断する方法を説明する。尚、レンズユニットは複数枚のレンズ群によって構成されるが、説明を簡単化するために、レンズユニットを単一のレンズ400とみなして説明する。
【0041】
レンズ400と交差する実線、点線、及び破線は、撮像素子101の受光面に結像する光線を示し、実線、点線、破線は夫々光線の波長の違いを表している。同図(C)中の撮像素子101中の黒点であるOは撮像素子101のチルト回転軸を示し、撮像素子101のY軸方向の中央に設けられている。
【0042】
尚、本実施形態においては、フランジバック距離(レンズマウントの基準面等から撮像素子の受光面までの距離)が所定の適正距離となるように設定されており、フランジバック距離から離れると色収差等の光学特性が劣化する。
【0043】
又、
図4(A)、(B)に示すように、各波長における色収差の発生度合はレンズ400毎に異なる。
図4(C)に示すように、センサチルト動作を実施した場合、特に回転軸中心から離れた画素ほど、レンズ設計時とはフランジバック距離が大きく変化する。この時、センサチルト動作前後で、同一画素座標近傍における収差の程度が変化する場合がある。
【0044】
本実施形態においては、レンズ情報として、レンズの種類を示した識別番号(又はID)を含むと共に、レンズの識別番号に対応する光学特性のテーブルを撮像装置10内のROMに記憶している。実際に撮像している際に収差量を観測することは困難であるため、本実施形態では、レンズ情報とチルト角とを基に、収差量を算出する。
【0045】
そしてステップS203において、レンズ情報とチルト角に基づいて求めた収差量が画素ピッチ未満の場合は、センサシフト駆動の実施は不要であると判断し、一連の処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS203において、収差量が画素ピッチ以上である場合は、合焦したい領域(合焦領域)である、合焦指定位置303において色再現性の低下が見込まれるため、ステップS204の処理へと進める。即ち、本実施形態ではレンズ情報とチルトの角度に基づいて求めたレンズユニットの収差量と撮像素子の画素ピッチの大小関係に基づき、シフト手段の動作を制御している。
【0047】
図5(A)、(B)は、実施形態1に係る、シフト量を導出する計算式を説明するための模式図であり、ステップS205におけるシフト量(センサシフトの駆動量)の算出方法について説明している。
図5(B)において、θは現在チルト角を、dはシフト量を、Oは回転軸中心を、pは指定領域中心の画素位置に対応する、実際の画素位置を示す。
【0048】
図5(A)、(B)のX座標は撮像素子の水平走査方向に対応し、Y座標は撮像素子の垂直走査方向に対応し、Z座標はレンズ400の光軸方向に対応している。尚、説明の簡略化のため、ここではシフト駆動の初期位置(即ち、シフト駆動量がゼロの位置)においては、撮像素子101の有効画素の中心は、回転軸中心Oの、Z方向の位置と一致するものとする。
【0049】
pとOの間の距離Lは、pとOのいずれの画素座標も既知であるから、夫々の
図5(A)におけるY座標をpy、Oyと表すと、以下の式1より導出できる。
【数1】
【0050】
ここで、PixelPitchは撮像素子の画素間距離(画素ピッチ)である。シフト量dは以下の式2より導出可能である。
【数2】
【0051】
上述のシフト量dだけ、シフト手段により撮像素子を移動し、レンズユニットとの距離を変更することにより、合焦領域の中心座標に対応する撮像素子の画素位置と所定のフランジバック位置との差を所定値以下(ほぼゼロ)とすることができる。尚、所定値は例えば所定の許容値とする。
【0052】
上記のようにシフト量dだけシフト手段により撮像素子を移動した場合に、チルト角を変更しないと、シャインプルーフの原理より、レンズ主面と撮像面との位置関係が変化する。即ち、撮像装置10から見たときのシフト駆動前のピント面と、シフト駆動後のピント面が変化する。これを避けるため、本実施形態では、ステップS205において、ステップS204で算出されたシフト駆動量に基づき、チルト角補正量θ_addを算出する。
【0053】
図6は、実施形態1に係る、チルト角補正値を導出する方法を説明するための図である。ここで、M0をシフト前の撮像素子位置、M1をシフト後の撮像素子位置、Fをフランジバック距離、Aをレンズマウントからレンズ主面までの距離、Sをピント面の延長線、dをステップS205にて算出したシフト量、θをシフト前のチルト角とする。その場合、以下の式3~式6により、チルト角補正量θaddを算出できる。
【0054】
【0055】
算出したチルト角補正量θaddとなるようにチルト角を制御することにより、合焦したい撮影領域である合焦領域302に対して、レンズの光学特性(例えば収差)をフランジバック距離における設計値に近づけることができる。
【0056】
<実施形態2>
実施形態1では、
図2のステップS203にて、光学レンズとその収差量に応じてシフト駆動の要否を判定した。しかし、撮像装置10の光学レンズと撮像素子の間に挿抜可能な光学フィルタ(赤外カットフィルタ)を有している場合には、ステップS203にて、その光学フィルタの挿抜状態を判定するように制御しても良い。
【0057】
具体的には、光学フィルタを挿入している場合(所謂DAYモード、日中モード)には赤外光の入射はカットされるため、色収差の影響は軽微となる。この場合はステップS204以降の処理を実施しない。一方で、光学フィルタを挿入していない場合(所謂NIGHTモード、夜間モード)の時は、赤外光が入射し、色収差の影響が顕著になるため、ステップS204以降の処理を実施する。
【0058】
このように、実施形態2においては、撮像素子の前に挿入可能な赤外カットフィルタを有し、制御手段は、赤外カットフィルタが挿入されているか否かに基づきシフト手段の動作を制御する。
【0059】
<実施形態3>
実施形態1では、センサチルト、センサシフトの動作による制御について説明した。しかし、センサ及びレンズの相対角度や相対位置が変化すれば良いので、レンズチルト、レンズシフト動作でも実現可能であり、その制御は実施形態1と同様である。
【0060】
図7は、実施形態3に係る撮像装置10の機能ブロック図である。
図1の構成との違いは、センサチルト機構105の代わりにレンズチルト機構705を、センサシフト機構106の代わりにレンズシフト機構706を有する点である。
【0061】
図8(A)~(C)は、実施形態3に係る、チルト動作及びシフト動作を説明するための図であり、レンズチルト動作及びレンズシフト動作を説明している。ここで、点Oはレンズの回転軸中心を示す。
【0062】
実施形態1における、θ角だけセンサチルト動作させることは、
図8(A)、(B)に示すように、点Oを中心としてレンズ400をθだけ回転させる動作と等価である。又、
図8(C)に示すように、センサシフト動作は、レンズ400の主面の中心から点Oまでの距離を変更することと等価である。
【0063】
図9は、本発明の実施形態1~3に係る撮像装置10等のハードウェア構成例を示す図である。
図9において、コンピュータとしてのCPU(Central Processing Unit)901はバス902を介して接続される各デバイスを統括的に制御する。
【0064】
CPU901は、記憶媒体としての読み出し専用メモリ(ROM)903に記憶された処理ステップやコンピュータプログラムを読みだして実行することによって
図2に示すフローチャートの処理を行う。
【0065】
オペレーティングシステム(OS)をはじめ、本実施形態に係る各処理プログラム、デバイスドライバ等はROM903に記憶されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)904に一時記憶され、CPU901によって適宜実行される。
【0066】
又、入力I/F905は、外部の装置(表示装置や操作装置や他の情報処理装置など)から撮像装置10で処理可能な形式で各種の入力信号を受信する。又、出力I/F906は、外部の装置(表示装置や他の情報処理装置など)へ、それらの外部の装置が処理可能な形式で出力信号を出力する。
【0067】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。尚、上記実施形態を適宜組み合わせても良く、本発明は、以下の組み合わせを含む。
【0068】
(構成1)レンズユニットと、撮像素子と、前記レンズユニットの主面又は前記撮像素子の受光面の少なくとも一方を相対的にチルトさせるチルト手段と、前記レンズユニットと前記撮像素子との距離を変更するシフト手段と、前記レンズユニットのレンズ情報を取得する取得手段を有し、前記レンズ情報及び前記撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、前記チルト手段と前記シフト手段の駆動量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【0069】
(構成2)前記レンズユニットは、撮像装置に対して交換可能な交換レンズユニットであることを特徴とする構成1に記載の撮像装置。
【0070】
(構成3)前記レンズ情報は、前記レンズユニットのID又は光学特性を含むことを特徴とする構成2に記載の撮像装置。
【0071】
(構成4)前記シフト手段は前記撮像素子及び前記レンズユニットの少なくとも一方の位置を変更することを特徴とする構成1~3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0072】
(構成5)前記制御手段は、前記チルト手段により前記チルトをした場合に、前記合焦領域の中心座標に対応する前記撮像素子の画素位置と所定のフランジバック位置との差が所定値以下となるように前記シフト手段により前記距離を変更することを特徴とする構成1~4のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0073】
(構成6)前記合焦領域は、ユーザにより指定された複数の合焦位置を包括する領域であることを特徴とする構成1~5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0074】
(構成7)前記合焦領域は、ユーザにより指定された被写体距離よりも遠方の被写体像が含まれる領域であることを特徴とする構成1~6のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0075】
(構成8)前記制御手段は、前記レンズ情報と前記チルトの角度に基づいて求めた前記レンズユニットの収差量と前記撮像素子の画素ピッチの大小関係に基づき、前記シフト手段の動作を制御することを特徴とする構成1~7のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0076】
(構成9)前記撮像素子の前に挿入可能な赤外カットフィルタを有し、
前記制御手段は、前記赤外カットフィルタが挿入されているか否かに基づき前記シフト手段の動作を制御することを特徴とする構成1~8のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0077】
(方法)レンズユニットと、撮像素子と、前記レンズユニットの主面又は前記撮像素子の受光面の少なくとも一方を相対的にチルトさせるチルト手段と、前記レンズユニットと前記撮像素子との距離を変更するシフト手段と、を有する撮像装置を用いた撮像方法であって、前記レンズユニットのレンズ情報を取得する取得ステップと、前記レンズ情報及び前記撮像素子から出力された画像上の指定された合焦領域に基づき、前記チルト手段と前記シフト手段の駆動量を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする撮像方法。
【0078】
(プログラム)構成1~9のいずれか1つに記載の撮像装置の各手段をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【0079】
尚、上記実施形態における制御の一部又は全部を実現するために、上述した実施形態の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して撮像装置等に供給するようにしてもよい。そしてその撮像装置等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がそのプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0080】
100:交換レンズユニット
101:撮像素子
102:画像処理部
103:制御部
104:通信部
105:センサチルト機構部
106:センサシフト機構部
107:レンズ情報取得部