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  • 特開-補強部材を備えた鉄道車両 図1
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  • 特開-補強部材を備えた鉄道車両 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164743
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】補強部材を備えた鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/06 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
B61D17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080442
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 英之
(72)【発明者】
【氏名】木村 宗太
(57)【要約】
【課題】
乗客スペースを減少させることなく、軽量に構成でき、障害物との衝突時の運転席が設置される運転台の変形を抑える補強部材を備えた鉄道車両を提供する。
【解決手段】
台枠と、側構体と、妻構体と、側構体と妻構体の上部に設置される屋根構体とを有する構体を有する鉄道車両であって、妻構体は、貫通路を分離する貫通路柱と、一端を妻構体の側面版に、他端を貫通路柱に固定され、地上高1500mm以上でかつ運転台の高さ以下に、水平に設けられた補強梁と、妻構体の中心付近に設けられた第1の補強柱と、妻構体の中心を軸に貫通路柱と対称の位置に設けられた第2の補給柱とを有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、側構体と、妻構体と、前記側構体と前記妻構体の上部に設置される屋根構体とを有する構体を有する鉄道車両であって、
前記構体は、
運転台が設置される運転室と乗客スペースとを有し、
前記妻構体は、
貫通路を分離する貫通路柱と、
FRPにより構成され、一端を前記妻構体の側面版に、他端を前記貫通路柱に固定され、地上高1500mm以上でかつ前記運転台の高さ以下に、水平に設けられた補強梁と、
FRPにより構成され、前記妻構体の中心付近に設けられた第1の補強柱と、
FRPにより構成され、前記妻構体の中心を軸に前記貫通路柱と対称の位置に設けられた第2の補強柱とを有する
鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記補強梁の地上高は、1600mmから1800mmである
鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両において、
前記第1の補強柱は、
前記補強梁の上部で、前記運転台の上端以下の高さに設けられる第3の補強柱と、
前記補強梁の下部で、地上高1500mm以上の高さに設けられる第4の補強柱と、を有する
鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両において、
前記第2の補強柱は、
前記補強梁の上部で、前記運転台の上端以下の高さに設けられる第5の補強柱と、
前記補強梁の下部で、地上高1500mm以上の高さに設けられる第6の補強柱と、を有する
鉄道車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鉄道車両において、
前記第3の補強柱と前記第5の補強柱と前記妻構体の前面板との間に空隙を有する
鉄道車両。
【請求項6】
請求項4に記載の鉄道車両において、
前記第3の補強柱と前記第5の補強柱のそれぞれは、前記鉄道車両の横方向に貫通する貫通穴を有する
鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材を備えた鉄道車両に関して、特に軽量な補強部材を備える鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両構体(以下、構体と記することもある)は、床面をなす台枠と、台枠の幅方向の両端部に配置される側構体と、台枠の長手方向の両端部に配置される妻構体と、側構体と妻構体の上部に配置される屋根構体とから構成される6面体の構造物である。
【0003】
台枠は、台枠の幅方向の両端部にその長手方向に沿って備えられる側梁と、側梁の長手方向の両端部同士を接続する端梁と、構体の長手方向端部から所定距離の位置に端梁に沿って備えられる枕梁と、端梁と枕梁とを構体に接続するための構体長手方向に沿って配置される中梁とを有する。
【0004】
一般的に、鉄道車両の車体の台枠の前後方向(長手方向)の端部において、前方に突出するようにエネルギー吸収体が取り付けられることが知られている。この前方に突出したエネルギー吸収体を有する鉄道車両の構造を簡素かつ軽量にしながら、衝突時の車体姿勢を安定させる技術として、特許文献1がある。特許文献1では、鉄道車両の車体は、台枠と、前記台枠の鉛直方向中心よりも鉛直方向一方側に配置された状態で前記台枠に支持され、衝突エネルギーを吸収する第1部材と、前記台枠の鉛直方向中心よりも鉛直方向他方側に配置された状態で前記台枠に支持され、前記第1部材が障害物との衝突によって圧縮されたときに前記障害物に接触する第2部材と、を備え、前記第1部材が前記障害物との衝突によって圧縮されたときに前記第2部材が前記障害物から反力を受けることで、前記第2部材は前記第1部材により前記台枠に伝達されるモーメント荷重とは逆回転のモーメント荷重を前記台枠に伝達する、ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-222195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、障害物との衝突時の姿勢安定のための構造が開示されているが、障害物としては、鉄道車両(段落0020)が想定され、衝突物との衝突は、第1のエネルギー吸収体8、217(第1部材)と、エネルギー吸収体215(第2部材)とで生じるものとなっている。
【0007】
しかしながら、障害物が鉄道車両ではなく、大型車両の場合には、鉄道車両同士の衝突よりも上方で大きな衝突荷重を受けることが想定される。例えば、トラックによる場合にはトラックの荷台部分で、大きな衝突荷重を受けることが想定される。そのため、特許文献1に記載された第1部材や第2部材の高さより上方で大きな衝突荷重を受けることとなる。このように、障害物による衝突荷重が高い位置の場合に、運転席の生存空間を確保するには十分でないことが考えられる。
【0008】
また、鉄道車両は、鉄道会社によるオペレーションの制約で、車両の長さは決まっている。車両長さが決まっているのは、通勤客を運ぶ通勤車両においても同様である。通勤車両では、より多くの乗客を乗せるために、乗客スペースをより広くすることが望まれる。特許文献1のように、車体の外部に、第1エネルギー吸収体や第2エネルギー吸収体を設けると、乗客スペースがその分減少するため、特許文献1に記載された構成を、通勤車両では採用することができない。
【0009】
そこで、本発明は、乗客スペースを減少させることなく、軽量に構成でき、障害物との衝突時の運転席が設置される運転台の変形を抑える補強部材を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決する鉄道車両の一態様は、台枠と、側構体と、妻構体と、側構体と妻構体の上部に設置される屋根構体とを有する構体を有する鉄道車両であって、構体は、運転台が設置される運転室と乗客スペースとを有し、妻構体は、貫通路を分離する貫通路柱と、FRPにより構成され、一端を妻構体の側面版に、他端を貫通路柱に固定され、地上高1500mm以上でかつ運転台の高さ以下に、水平に設けられた補強梁と、FRPにより構成され、妻構体の中心付近に設けられた第1の補強柱と、FRPにより構成され、妻構体の中心を軸に貫通路柱と対称の位置に設けられた第2の補給柱とを有する
【発明の効果】
【0011】
本発明である構造部材およびそれを備えた台枠構造で床を構成する鉄道車両によれば、通勤車両の乗客スペースを確保しつつ、軽量に構成でき、障害物との衝突時の運転席が設置される運転台の変形を抑える補強部材を備えた鉄道車両を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に関する鉄道車両の先端部の側面図である。
図2】実施例に関する鉄道車両の先端部の斜視図である。
図3】実施例に関する鉄道車両の妻構体の斜視断面図である。
図4】実施例に関する妻構体を車両側から見た正面断面図である。
図5】実施例に関する鉄道車両の妻構体の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を、図面を参照して説明する。鉄道車両100の進行方向あるいは長手方向(前後方向)をx方向、鉄道車両100の幅方向(左右方向)をy方向、鉄道車両100の高さ方向(上下方向)をz方向とする。以下、単に、x方向、y方向、z方向と記す場合がある。鉄道車両100は、構体1と構体1を搭載する台車2を備えている。
【0014】
構体1は、床面をなす台枠8と、台枠の幅方向の両端部に配置される二つの側構体7と、台枠の長手方向の両端部に配置される二つの妻構体5と、側構体7と妻構体5の上部に配置される屋根構体6とから構成される6面体の構造物である。
【実施例0015】
図1は、実施例の鉄道車両100の先頭部の側面図である。図2は実施例の鉄道車両の先端部の斜視図である。図3は鉄道車両の妻構体の斜視断面図である。図4は実施例の妻構体を車両側から見た正面断面図である。図5は実施例の鉄道車両の妻構体の他の例を示す斜視断面図である。
【0016】
図1に示す通り、鉄道車両100は構体1と構体1を搭載する台車2を備えている。
【0017】
構体1は、床面をなす台枠8と、台枠8の幅方向の両端部に配置される二つの側構体7と、台枠の長手方向の両端部に配置される二つの妻構体5と、側構体7と妻構体5の上部に配置される屋根構体6とから構成される六面体の構造物である。側構体7には、窓および乗客等が乗降に供する側引き戸等を備える。
【0018】
台枠8は、台枠8のx方向の両端部に備えられる端梁81と、台枠8のy方向の両端部に備えられる側梁82とを有する周縁部と、この周縁部を外縁とする床構体とからなる平面状の構造体である。台枠8は、台車2に支持される部位にy方向に沿って備えられる一対の枕梁9を有する。
【0019】
台枠8のx方向の先端部付近には、連結器85を支持するための連結器支持部材84と、連結器支持部材84を台枠8に固定する連結器固定部材83が設けられる。連結器固定部材83は、台枠8のx方向の先端部において、台枠8の下方に固定される。連結器固定部材83は、連結器支持部材84と結合される部分が下方に向かって長く、離れるにしたがって(構体1の先頭から遠ざかるに従って)、その長さは短くなる。
【0020】
連結器支持部材84は、連結器固定部材83より前方に位置するように固定され、更に前方に連結器85が取り付けられる。連結器85の先端である連結器前端86は、他の連結器前端と連結される。
【0021】
台車2は、構体1を搭載するため、台車枠3と台車枠3と台枠8の間に設置される空気ばね4を有する。また、構体1の側構体7には、乗客や運転手のための乗降用のドア、窓が設けらる。
【0022】
構体1は、その内部に、運転手が乗り運転台が設置される運転室18と、乗客を乗せるスペースである乗客スペース19とを有する。
【0023】
通勤車両においては、その全長が、鉄道会社のオペレーションの関係で一定値に定まっている。一方、通勤車両は、より多くの乗客を運ぶために、乗客スペース19を広くしたい。そのため、運転室18は一定の広さ(x方向に一定値)となる。通勤車両100の長さには制約があり、乗客スペース19をより広くし、一定の運転室18のスペースを確保するためには、構体1の外部に衝突吸収材を設けることは実質的に許されない。
【0024】
通勤車両100の長さ、乗客スペース19及び運転室18のサイズを考慮すると、構体1の妻構体5のx方向の長さは、z方向において台枠8付近で500mm程度、屋根構体付近で350mmとなる。衝突時の衝撃を緩和し、運転室18に運転手の生存スペースを確保するため、妻構体5の構造に新規な工夫が必要となる。また、近年の脱酸素社会の実現手段として鉄道車両の軽量化を図る必要がある。
【0025】
限られた寸法の妻構体5に、衝突時の衝撃を緩和し、運転室18に運転手の生存スペースを確保するためには、生存スペースが侵される危険度の高い衝突対象を特定しなければならない。通勤車両100において、このような運転室18における運転手の生存スペースが侵される危険性が最も高い衝突対象は、トラック、タンクローリー等の大型車両である。
【0026】
衝突対象が大型車両としたシミュレーションを行ったところ、衝突対象が大型車両である場合に、運転席18における運転手の生存スペースの確保をするためには、運転台11の傾きを抑えることが効果的であるとの結論を得た。
【0027】
そこで、構体1の妻構体5には、衝突時に衝撃を吸収し、構体の強度を高めるために補強部材10を、運転台11の前方に設ける。この補強部材10は運転台11の上端より下方に設置される。通勤車両の運転台の高さは、一般的に、地上高2360mm程度である。衝突対象が大型車両としたシミュレーションの結果では、生存スペースの確保をするためには、衝突により運転室18に運転台11の全体がずれ込みを抑えるより、運転台11の上部が運転室18に倒れ込みを抑える方が、重要であるとの結論を得た。そこで、妻構体5において、運転台11の上部より下側(詳細は後述)に補強部材10を設けることにより、効果的に運転台11の倒れ込みを抑止し、運転台11の上部の倒れ込みによる運転室18の生存スペースを確保することとした。
【0028】
また、補強部材10は、障害物との衝突時の運転席が設置される運転台の変形を抑える軽量な衝突吸収部材を採用することで、補強部材10を設置することによる鉄道車両の重量の増加を抑止する。尚、補強部材10の詳細は、図2-5を用いて後述する。
【0029】
図2に示す通り、台枠8には、x方向の両端部に備えられる端梁81と、台枠8のy方向の両端部に備えられる側梁82とがある。端梁81の前方(或いは後方)に妻構体5が固定される。妻構体5には、貫通路12や窓13が設けられる。妻構体5の内部には、補強部材10が設けられる。補強部材10は、運転台11の高さ(2360mm前後)より、低い位置に設けられる。大型車両との衝突時に運転台11の倒れ込み(倒れ量)を一定値(300mm)以下とするためである。
【0030】
図3は、実施例に関する鉄道車両の妻構体の斜視断面図である。妻構体5の内部に、妻構体5に設けられる貫通路12と他の部分(後方に運転台11を設置する部分)とを分離する貫通路柱14と、補強部材10が設置される。貫通路柱14は、妻構体5に設けられる貫通路12と他の部分(後方に運転台11を設置する部分)とを分離し、前後方向に強度を持たせる部材である。貫通路柱14は、妻構体5のy方向の中心線を中心に、中心から500-900mm離れた位置に設置される。
【0031】
補強部材10は、構体1の横方向(y方向)に延伸し、地上からの高さが1600-1800mmのところに水平に補強梁16をFRP素材で設置する。補強梁16の高さ(地上からの高さ)は、通勤車両の衝突対象として想定される大型車両の重心高さの代表値である1500mmより、100-300mm程、上方である。尚、大型車両がトラックである場合、補強梁16の高さは、通勤車両との衝突個所となる荷台の高さと略一致する。
【0032】
補強部材10は、補強梁16の他、妻構体5のy方向の中心付近と、中心から500-900mm離れたところ(貫通路柱14とは、妻構体5のy方向の中心から対称な位置)の二か所に二本の補強柱15を設ける。補強柱15は、構体1のy方向中心に設けられた第1の補強柱と、構体1のy方向中心を中心として貫通路柱14とy方向に対称の位置に設けられた第2の補強柱の二本の補強柱を有する。
【0033】
このような構成とすることにより、既存の貫通路柱14を有効的に活用することができる。つまり、軽量化と衝突時の衝撃の緩和を実現し、運転室の生存スペースを少ない点数で確保することができる。
【0034】
第1の補強柱15のうち、補強梁16より上方で妻構体5の窓13の下側において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第3の補強柱15aである。第1の補強柱15のうち、補強梁16より下方で地上高1500mmより上側において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第4の補強柱15bである。第3の補強柱15a及び第4の補強柱15bは、妻構体5のy方向の中心付近に設けられる。第3、4の補強柱15a、bは、FRP素材で構成する。
【0035】
第2の補強柱15のうち、補強梁16より上方で妻構体5の窓13の下側において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第5の補強柱15cである。第5の補強柱15cは、妻構体5のy方向の中心から500-900mm離れたところに設ける。第2の補強柱15のうち、補強梁16より下方で地上高1500mmより上側において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第6の補強柱15dである。第6の補強柱15dは、妻構体5のy方向の中心から500-900mm離れたところに設ける。第5、6の補強柱15c、dは、FRP素材で構成する。
【0036】
FRPで構成された補強梁16、第3-6の補強柱15a-dは、通勤車両の妻構体5の内部に、地上からの高さ1500mm以上で運転台11の上端より低い位置に設けられる。この高さは、通勤車両の衝突から運転室の生存スペースを確保するため、通勤車両の衝突危険度が高い大型車両の重心高さの代表値1500mmに基づいて、運転台11の上部の倒れ量が300mm以下となるように決定されたものである。尚、補強部材、特に、補強梁16、第3-6の補強柱15a-dの部分にFRPを採用したことにより、補強による重量を最低限に抑えると共に、衝突に対して十分の緩衝性を担保することができる。
【0037】
尚、第3、5の補強柱15a、cは、妻構体5の前面板(鉄道車両の先端あるいは後端)との間に空隙15eを有する。この空隙15eは、鉄道車両100の前後方向(x方向)において、妻構体5の前面板と第3、5の補強柱15a、cとの間に設ける。補強梁16より上方では、衝突による妻構体5の変形が、直接的に運転台11の倒れ量に影響する。そのため、補強梁16やそれより低い部分より変形しやすく、衝突によるエネルギーが第3、5の補強柱15a、cから運転台11の上方に伝わりにくくしている。
【0038】
図4は、実施例に関する妻構体を車両側から見た正面断面図である。
【0039】
図4に示す通り、妻構体5の内部に、妻構体5に設けられる貫通路12と他の部分(後方に運転台11を設置する部分)とを分離する貫通路柱14と、補強部材10が設置される。貫通路柱14は、妻構体5に設けられる貫通路12と他の部分(後方に運転台11が設置される部分)とを分離し、前後方向に強度を持たせる部材である。貫通路柱14は、妻構体5のy方向の中心線を中心に、中心から500-900mm(好ましくは、750mm)離れた位置に設置される。
【0040】
補強部材10は、構体1の横方向(y方向)に延伸し、地上からの高さが1600-1800mmのところに、補強梁16をFRP素材で設置する。補強梁16の高さは、通勤車両の衝突対象として想定される大型車両の重心高さの代表値である1500mmより、100-300mm上方である。尚、補強梁16の一端は、妻構体5の側面版に固定され、他端は、貫通路柱14に固定される。
【0041】
補強部材10は、補強梁16の他、妻構体5のy方向の中心付近の第1の補強柱15と、中心から500-900mm離れたところ(貫通路柱14とは、妻構体5のy方向の中心から対称な位置)に第2の補強柱15を設ける。
【0042】
第1の補強柱15のうち、補強梁16より上方で妻構体5の窓13の下側において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第3の補強柱15aであり、補強梁16より下方で地上高1500mm以上の部分において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第4の補強柱15bである。第3、4の補強柱15a、bは、妻構体5のy方向の中心付近に設けられ、FRP素材で構成される。
【0043】
第2の補強柱15のうち、補強梁16より上方で妻構体5の窓13の下側において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第5の補強柱15cであり、補強梁16より下方で地上高1500mm以上の部分において、高さ方向(z方向)に延伸する部分が第6の補強柱15dである。第5、6の補強柱15c、dは、妻構体5のy方向の中心から500-900mm(好ましくは、750mm)離れたところ設けられ、FRP素材で構成される。
【0044】
図4に示したように、一つの補強柱15は、妻構体5のy方向の中心に設けられ、もう一方の補強柱15は、妻構体5の中心を軸に、貫通路柱14と対称の位置に設置される。
【0045】
上述のように、補強部材10を配置することで、大型車両との衝突時の衝撃を妻構体全体で受けることができ、衝突による妻構体5の変形が運転台11の倒れ量を抑えることができる。
【0046】
図5は、実施例に関する鉄道車両の妻構体の斜視断面図である。図3に示した妻構体との相違は、第3、5の補強柱15a、cに、y方向に貫通穴17を設けた点である。貫通穴17の形状は、衝突による前後の変形を考慮した場合、z方向がx方向より長い長方形断面が好ましいが、前後方向に変形しやすい形状であれば長方形に限定されるものではない。
【0047】
貫通穴17により、補強梁16やそれより低い部分(第4,6の補強柱15b、d)より変形しやすい。そのため、衝突によるエネルギーが第3、5の補強柱15a、cから運転台11の上方への衝突荷重や変形の伝達を抑制する。
【0048】
以上説明した実施例の補強部材を備えた鉄道車両によれば、通勤車両の乗客スペースを確保しつつ、障害物との衝突時の運転席が設置される運転台の変形を抑えることができる。つまり、通勤車両の衝突による危険度の高い、大型車両との衝突を想定し、大型車両との衝突時においても運転手の生存スペースを確保することができる。
【0049】
また、補強部材の一部をFRPで構成することで、補強部材を設置した場合であっても、軽量化を図り、省エネ化し、脱酸素社会の実現に貢献することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:構体
2:台車
3:台車枠
4:空気ばね
5:妻構体
6:屋根構体
7:側構体
8:台枠
9:枕梁
10:補強部材
11:運転台
12:貫通路
14:貫通路柱
15:補強柱
16:補強梁
17:貫通穴
18:運転室
19:乗客スペース
図1
図2
図3
図4
図5