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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164744
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】情報処理システム、車両
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241120BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20241120BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20241120BHJP
【FI】
G06Q50/10
B60N3/00 Z
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080443
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 祥
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3B087DE10
3B088CA15
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】
乗員の乗り心地をより客観的に評価するための技術を提供すること。
【解決手段】
車両の座席に着座する乗員の身体に作用する振動の検知に用いるセンサ部と、前記センサ部から得られるデータを処理する処理部と、前記処理部が処理したデータの伝送に用いる伝送部と、前記伝送部から伝送されたデータを蓄積するサーバと、を備えることを特徴とする情報処理システム。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に着座する乗員の身体に作用する振動の検知に用いるセンサ部と、
前記センサ部から得られるデータを処理する処理部と、
前記処理部が処理したデータの伝送に用いる伝送部と、
前記伝送部から伝送されたデータを蓄積するサーバと、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記サーバ上における前記センサ部から得られるデータを用いて機械学習された乗員による評価を推定する予測モデルを用いて、前記センサ部から得られるデータを入力として、乗員による評価を推定する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理システムであって、
乗員の属性を用いて生成された前記予測モデルを用いて、乗員の属性に応じた前記評価を推定する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記処理部は、
前記サーバ上における前記センサ部から得られるデータを用いて機械学習された乗員による評価を推定する予測モデルを用いて、前記センサ部からのデータに基づいて、乗員の不快感を数値化した不快指数を求める、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理システムであって、
前記処理部は、
前記不快指数に応じた情報を、運転者に対して通知する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の情報処理システムであって、
前記処理部は、
リアルタイムで得られた前記不快指数と、一定時間前に得られた前記不快指数と、の差分に応じた情報を、運転者に対して通知する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記サーバは、
前記データに基づいた乗員の評価の情報と、予め登録された車両の運転者の情報と、の紐づけを行い、紐づけた情報をサイト上に一覧表示し、
その後に取得する前記データに基づいた乗員の評価に応じて、前記情報の並び替えを行う、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
乗員を撮影するカメラを更に備え、
前記カメラによって乗員が検知された後に、前記処理部は、前記センサ部から得られるデータを処理する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理システムであって、
前記カメラによって乗員の降車が検知された場合、前記処理部は、前記センサ部からのデータの取得を停止する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項10】
乗員が着座する座席の背面部、座面部、および、前記乗員が足を置く床部のうちの少なくとも何れか1箇所に配置され、座席に着座する前記乗員に作用する振動の検知に用いるセンサを含むセンサ部と、
前記センサ部から得られるデータを処理する処理部と、
前記処理部が処理したデータの伝送に用いる伝送部と、
を備えることを特徴とする車両。
【請求項11】
請求項10に記載の車両において、
前記処理部は、
前記センサ部から得られるデータを用いて機械学習された乗員による評価を推定する予測モデルを用いて、前記センサ部から得られるデータを入力として、乗員による評価を推定し、
前記センサ部から得られるデータに基づいて、前記予測モデルに入力可能なデータを生成する、
ことを特徴とする車両。
【請求項12】
請求項10に記載の車両であって、
前記背面部および前記床部に配置される前記センサは、3軸方向の加速度データの取得に用いるセンサであり、
前記座面部に配置される前記センサは、3軸方向、および、前記3軸方向それぞれの回転方向の加速度データの取得に用いるセンサである、
ことを特徴とする車両。
【請求項13】
座席に着座する前記乗員に作用する振動の検知に用いる第1センサと、
センサから得られるデータを処理する処理部と、
前記処理部が処理したデータの伝送に用いる伝送部と、
を備え、
前記第1センサは、
乗員が着座する座席の座面部に配置される、
ことを特徴とする車両。
【請求項14】
請求項13に記載の車両であって、
座席に着座する前記乗員に作用する振動の検知に用いる第2センサを更に備え、
前記第2センサは、
前記乗員が着座する座席の背面部に配置される、
ことを特徴とする車両。
【請求項15】
請求項13に記載の車両であって、
座席に着座する前記乗員に作用する振動の検知に用いる第2センサを更に備え、
前記第2センサは、
座席に着座する前記乗員の足が置かれる床部に配置される、
ことを特徴とする車両。
【請求項16】
請求項14に記載の車両であって、
座席に着座する前記乗員に作用する振動の検知に用いる第3センサを更に備え、
前記第3センサは、
座席に着座する前記乗員の足が置かれる床部に配置される、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、および、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗り心地を評価する技術が知られている。特許文献1は、「乗り心地評価を行う乗り心地評価方法であって、頭部加速度応答のデータから、前記乗り心地を評価する乗り心地評価方法。」を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-251913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗員の乗り心地をより客観的に評価することは容易ではないと考えられる。従って、乗員の乗り心地をより客観的に評価するための技術を提供することに課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記の情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、センサ部と、処理部と、伝送部と、サーバと、を備える。センサ部は、車両の座席に着座する乗員の身体に作用する振動の検知に用いる。処理部は、センサ部から得られるデータを処理する。伝送部は、処理部が処理したデータの伝送に用いる。サーバは、伝送部から伝送されたデータを蓄積する。
【0006】
本発明によれば、下記の車両が提供される。この車両は、センサ部と、処理部と、伝送部と、を備える。センサ部は、乗員が着座する座席の背面部、座面部、および、乗員が足を置く床部のうちの少なくとも何れか1箇所に配置され、座席に着座する乗員に作用する振動の検知に用いる。処理部は、センサ部から得られるデータを処理する。伝送部は、処理部が処理したデータの伝送に用いる。また、本発明によれば、下記の車両が提供される。この車両は、第1センサと、処理部と、伝送部と、を備える。第1センサは、座席に着座する乗員に作用する振動の検知に用いる。処理部は、センサから得られるデータを処理する。伝送部は、処理部が処理したデータの伝送に用いる。そして、第1センサは、乗員が着座する座席の座面部に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乗員の乗り心地をより客観的に評価するための技術が提供される。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の構成の一例を示す図。
図2】乗客の属性と前記乗客の乗車時における加速度をデータセットとして保存する処理の一例を示す図。
図3】乗り心地評価システムの一例を示す図。
図4】乗り心地評価システムが提供する情報の一例を示す図。
図5】加速度センサの配置の一例を示す図。
図6】制御ユニットが取得するデータの一例を示す図。
図7】加速度データに基づく値の算出に用いる数式の一例を示す図。
図8】制御ユニットが取得する加速度帯域ごとのデータの一例を示す図。
図9】予測モデルの一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0011】
実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0012】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0013】
本実施形態では、車両に乗車する乗客(乗員)の乗り心地を客観的に評価することができる乗り心地評価システムについて説明する。また、このシステムは、車両の運転手の情報に評価結果の紐づけを行い、紐づけた情報を提示することができる。
【0014】
先ず、図1を参照しながら、車両情報を取得する車両について説明する。図1に示すように、車両101は、一例として、ステアリング103と、制御ユニット104と、フロントカメラ105と、座席カメラ106と、モニタ(107a、107b)と、シート(108a、108b)と、加速度センサ(109a、109b、109c)と、ウィンドシールド110と、を備える。ステアリング103は、前方のシート108aに着座するドライバーの運転に用いる。フロントカメラ105は、車両前側に配置され、車両101の前方の画像データを取得する。ウィンドシールド110は、ドライバーの前方に設けられる。車両101およびドライバーまたは運転者に対して、水平方向Xは、左右方向、車両の横方向または車両の幅方向であり、鉛直方向Zは、車両の上下方向、縦方向であり、車両の横方向に対し直交する水平方向Yは、車両の前後方向または車両の進行方向である。
【0015】
座席カメラ106は、後方のシート108bに着座する乗客(乗員)の画像データを取得することができるように配置される。座席カメラ106は、この例では、ドライバーが着座するシート108aの背面側に配置される。モニタ(107a、107b)は、各種の情報などを表示する。モニタ107aは、ドライバーに対して、例えば、経路情報、運賃情報、後述する乗客の快適度に関する情報を提示する。モニタ107bは、乗客に対して、例えば、経路情報、運賃情報、適宜の広告情報を提示する。
【0016】
加速度センサ(109a、109b、109c)は、乗客が着座するシート108bおよび車両101の床部に配置される。なお、加速度センサ(109a、109b、109c)の具体的な配置の例について、後で図5を参照しながら詳しく説明する。
【0017】
車両101には、例えば、GPS受信機、ドライバーが各種の情報を入力する入力装置が設けられてもよい。また、車両101には、温度センサ、照度センサ、測距センサ等の公知のセンサが、適宜に設けられてもよい。
【0018】
制御ユニットまたは制御部104(処理部)は、データ処理を実行することができる。制御ユニット104は、一例として、ECU(Electronic Control Unit)とすることができ、また、データ処理を行う処理装置、各種のデータを記憶する記憶装置、車両101の外部との通信に用いる通信装置等を含む構成とされてもよい。制御ユニット104は、バス(不図示)を介して車両101の適宜の構成に接続され、データの入出力を行う。
【0019】
また、制御ユニット104は、データの入出力に基づいて車両101の制御を行う。制御ユニット104および該制御ユニット104に接続されるデバイス等により、車載システム100が構成される。すなわち、車載システム100は、車両情報102を用いて制御ユニット104が車両101を制御可能なシステムである。
【0020】
車両情報102は、例えば、速度情報、ギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、カメラ映像情報(車内/車外)、GPS情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、路車間通信情報、車体識別情報を含む。制御ユニット104は、車両101に設けられる各種のセンサ、通信装置等から、車両情報102を適宜に取得することができる。
【0021】
次に、車両101が取得するデータセットについて説明する。このデータセットは、加速度および乗客の属性に関するデータであり、一例として、乗り心地の評価値の算出、および、乗り心地評価に用いる予測モデルを構築するためのデータとして用いることができる。本実施形態では、制御ユニット104は、座席カメラ106、加速度センサ(109a、109b、109c)に接続されている。そして、制御ユニット104は、座席カメラ106からの入力と紐づけて、3つの加速度センサ(109a、109b、109c)から取得するデータを蓄積する。さらに、制御ユニット104は、一例として、座席カメラ106からの映像に対して、画像認識AIを用いて人物の属性判定を実行する。
【0022】
図2を参照しながら、データセットを取得する処理例について説明する。先ず、車両101への乗員(乗客)の乗車が座席カメラ106によって検知される(S201)。そして、制御ユニット104は、乗客の画像データを取得する。
【0023】
制御ユニット104は、例えば、座席カメラ106が取得した映像データに対する顔認識に基づいて乗客の乗車を判断し、乗客の画像データの取得を開始してもよい。また、例えば、座席カメラ106が乗客の検知に応じてON/OFFの切り替えを自動で行うカメラとされ、制御ユニット104は、座席カメラ106のONへの切り替わりに応じて、乗客の画像データの取得を開始してもよい。また、例えば、ドライバーが、入力装置を用いて、画像データを取得する指示を入力し、制御ユニット104は、乗客の画像データの取得を開始してもよい。
【0024】
制御ユニット104は、乗客の属性を取得する(S202)。乗客の属性には、乗客の年齢、乗客の国籍、乗客の性別等が挙げられる。
【0025】
制御ユニット104は、例えば、取得した画像データ(すなわち、カメラ画像)と、カメラ画像から乗客の属性を推論するモデルと、を用いて、乗客の属性をAI推論することで、乗客の属性を取得する。制御ユニット104は、例えば、顔認識情報を用いた画像認識AIに基づいて、乗客の属性を取得(推論)する。ここで、乗客の属性を推論するためのモデルは、予め記憶される。なお、S202では、例えば、乗客の属性をドライバーが入力装置を用いて入力し、制御ユニット104がドライバーによって入力された乗客の属性を取得してもよい。
【0026】
ドライバーが車両101を乗客の目的地へ向かって発進させるとともに、制御ユニット104は、加速度センサ(109a、109b、109c)のデータ蓄積を開始する(S203)。
【0027】
その後、目的地に到着し、乗客の降車を座席カメラ106が検知する(S204)。制御ユニット104は、加速度センサ(109a、109b、109c)のデータ蓄積を終了する(S205)。
【0028】
制御ユニット104は、例えば、座席カメラ106への入力がなくなったことに基づいて乗客の降車を判断し、加速度センサ(109a、109b、109c)のデータ蓄積を終了してもよい。また、例えば、座席カメラ106が乗客の検知に応じてON/OFFの切り替えを自動で行うカメラとされ、制御ユニット104は、座席カメラ106のOFFへの切り替わりに応じて、加速度センサ(109a、109b、109c)のデータ蓄積を終了してもよい。
【0029】
乗客の目的地までの走行中、常に加速度センサ(109a、109b、109c)による加速度データの取得が行われる。そして、制御ユニット104において加速度データが蓄積され、制御ユニット104は、加速度データを整理する。なお、整理された加速度データの例について、後で図6および図8を参照しながら詳しく説明する。
【0030】
制御ユニット104は、乗客の属性および時刻ごとの加速度データをデータセットとして保存する(S206)。そして、新たな乗客の乗車があった場合、上記と同様の処理が行われる。従って、制御ユニット104は、新たなデータセットを取得し、該データセットを保存する。S201~S206を繰り返すことで、データセットが蓄積される。
【0031】
次に、図3を参照しながら、乗り心地評価システム(情報処理システム)の概要について説明する。図3に示すように、車両101は、通信装置(伝送部)を介して、専用サーバ203との通信を無線で行う。本実施形態では、制御ユニット104は、インターネット上に繋がっており、専用サーバ203にWi-Fiなどの無線通信202を介してデータを送信することができる。専用サーバ203は、専用サイト205に乗り心地評価に関する情報を掲載する。なお、専用サイト205に掲載する情報の一例について、後で図4を参照しながら詳しく説明する。専用サーバ203は、適宜のコンピュータとして構成され、例えば、プロセッサと、記憶装置と、通信装置と、を備える。
【0032】
システムの運用では、先ず、登録済みのドライバー200が乗車する際に、ID等で識別を行うことで、車両101とドライバー200の個別情報の紐づけが行われる。この同期以降、該車両101が取得するデータは、該ドライバー200による運転の乗り心地評価に用いられる。
【0033】
本実施形態では、車両101の制御ユニット104には、加速度データおよび乗客の属性を入力として、乗り心地の評価値を出力(推定)する予測モデルが格納される。
【0034】
そして、車両101に乗客が乗車し、ドライバー200は、乗客の目的地まで車両101を運転し、乗客が目的地で降車する。降車後には、制御ユニット104上で走行中に蓄積された加速度データが整理される。そして、制御ユニット104は、整理された加速度データ、および、取得した車両101に乗車した乗客201の属性を入力として、インプット済みの乗り心地評価アルゴリズム(すなわち、予測モデル)を用いて、乗り心地の評価値(乗り心地点数)を出力する。制御ユニット104は、通信装置(伝送部)を介して、この乗り心地の評価値(乗り心地点数)を専用サーバ203に送信する。
【0035】
また、降車後の乗客201bは、インターネットサイトやスマートフォンアプリを通じてユーザ評価207を送信することができる。ここで、乗客201bは、パーソナルコンピュータやスマートフォン206等を用いることができる。後述するように、専用サーバ203は、ユーザ評価207に関するデータ208を取得し、該データ208を用いたデータ処理を行うことができる。
【0036】
本実施形態では、専用サーバ203は、HTTP通信204を行い、インプット済みの乗り心地評価アルゴリズムによる得点、あるいは乗り心地の評価値が掲載された専用サイト205を提供する。ここで、図4を参照しながら、専用サイト205で表示される情報の一例について説明する。
【0037】
図4に示すように、専用サイト205には、ドライバー200の属性、および、乗り心地の評価値(図4において、乗り心地)が、専用サーバ203によって紐づけられて掲載される。ドライバー200の属性には、所属会社、氏名、年齢、性別、対応言語等が挙げられ、ドライバー200の属性は、ドライバー200の情報として、専用サーバ203に事前に登録される。
【0038】
図4に示すように、専用サイト205は、基本的には、乗り心地の評価値に関して降順で表示し、点数の高いドライバー200から順に表示してもよい。また、専用サイト205は、ユーザの設定により、各欄に応じたフィルタリングなどが可能なユーザインタフェースであってもよい。
【0039】
なお、この例で、乗り心地の欄には、ドライバーの平均評点が掲載される。すなわち、乗客の乗り降りのたびに、予測モデルに基づく乗り心地の評価値が、車両101から専用サーバ203に送信され、専用サーバ202は、乗り心地の評価値を集計し、その平均値を専用サイト205に掲載する。従って、この例では、乗客の乗り降りのたびに、乗り心地の評価値(乗り心地)がアップデートされる。
【0040】
また、専用サイト205は、例えば、現在地からの距離を掲載してもよい。すなわち、専用サーバ203は、例えば、専用サイト205を閲覧するユーザによって入力された位置情報、および、車両101の位置情報を取得する。そして、専用サーバ203は、ユーザによって入力された位置から車両101までの距離を、専用サイト205に掲載してもよい。
【0041】
専用サイト205を閲覧するユーザは、予測モデルによって可視化された乗り心地の評価値等の各種の情報を参照して、例えば、どのドライバーのサービスを利用するかを選択することができる。また、車両101の配車を行うサービス業者のユーザは、専用サイト205を閲覧し、どのドライバーの車両101あるいは当該ドライバーが運転している車両101を配車するかを選択することができる。
【0042】
次に、図5を参照しながら、加速度センサ109の具体的な配置について説明する。加速度センサ109aは、それぞれ直交するx方向、y方向、および、z方向の加速度の検知に用いられる。すなわち、加速度センサ109aは、3軸方向の加速度の検知に用いられ、x方向は車両101の前後方向、y方向は車両101の車幅方向、z方向は車両101の高さ方向に対応している。加速度センサ109aは、車両101の走行中において、シート108bに着座する乗客201に、該シート108bの背面側から伝わる振動を検知するために設けられる。この例では、加速度センサ109aは、シート108bの背面部であって、該シート108bに着座する乗客201の背もたれの高さに配置される。
【0043】
加速度センサ109bは、それぞれ直交するx方向、y方向、および、z方向の加速度の検知に用いられる。すなわち、加速度センサ109bは、3軸方向の加速度の検知に用いられ、x方向は車両101の前後方向、y方向は車両101の車幅方向、z方向は車両101の高さ方向に対応している。さらに、加速度センサ109bは、x方向を中心とした回転方向r、y方向を中心とした回転方向r、および、z方向を中心とした回転方向rの加速度の検知に用いられる。加速度センサ109bは、車両101の走行中において、シート108bに着座する乗客201に、該シート108bの座面側から伝わる振動を検知するために設けられる。この例では、加速度センサ109bは、乗客201が着座するシート108bの座面部に配置される。
【0044】
加速度センサ109cは、それぞれ直交するx方向、y方向、および、z方向の加速度の検知に用いられる。すなわち、加速度センサ109cは、3軸方向の加速度の検知に用いられ、x方向は車両101の前後方向、y方向は車両101の車幅方向、z方向は車両101の高さ方向に対応している。加速度センサ109cは、車両101の走行中において、車両101の床部からシート108bに着座する乗客201の脚部へ伝わる振動を検知するために設けられる。この例では、加速度センサ109cは、車両101の床部であって、シート108bに乗客201が着座した状態で乗客201の足が置かれる位置に設けられる。
【0045】
次に、図6図8を参照しながら、制御ユニットが蓄積されたデータを整理し、取得するデータの一例について説明する。図6に示すように、制御ユニット104は、上記した成分(x、y、z、x、y、z、r、r、r、x、y、z)の加速度データを取得する。なお、制御ユニット104は、任意または所定の計測間隔(この例では、0.5s)の加速度データを取得する。また、制御ユニット104は、これらの成分に基づいてaseatを算出する。
【0046】
上記aseatは、加速度データに基づいた振動を評価する値であり、本実施形態では、ISO2631-1における人体の周波数特性に関する値である。本実施形態では、制御ユニット104は、図7に示す数式に基づくaseatを算出する。なお、aseatに基づく乗り心地の評価は、一例として、下記(0)~(5)のように表すことができる。
【0047】
この例では、後述する図9に示すように、下記(0)~(5)で与えられる加速度帯に応じて乗り心地の評価係数k=0、k=100、k=150、k=200、k=250、k=300の初期値をそれぞれ予め設定し、乗客が感じた乗り心地点数を算出して評価を行う。
(0)aseatが0.315[m/s]より小さい場合、乗り心地は「不快ではない」。
(1)aseatが0.315~0.6[m/s]である場合、乗り心地は「少し不快」。
(2)aseatが0.6~1.0[m/s]である場合、乗り心地は「やや不快」。
(3)aseatが1.0~1.6[m/s]である場合、乗り心地は「不快」。
(4)aseatが1.6~2.5[m/s]である場合、乗り心地は「非常に不快」。
(5)aseatが2.5[m/s]より大きい場合、乗り心地は「極度に不快」。
【0048】
制御ユニット104は、計測間隔のaseatが上記した(0)~(5)のどの加速度帯域(区分)に分類されるかを判定する。さらに、制御ユニット104は、計測間隔および計測回数から、乗客201の総乗車時間における各加速度帯域の継続時間を計算し、図8に示すデータを取得する。
【0049】
図8に示すように、制御ユニット104は、各加速度帯に、計測間隔、計測回数、総乗車時間、継続時間、継続時間/総乗車時間を分類したデータを取得する。ここで、計測間隔は、制御ユニット104が加速度データを取得する間隔である。計測回数は、aseatが対応する加速度帯に含まれる回数を示す。総乗車時間は、加速度データの取得から終了までの時間に対応する。継続時間は、対応する加速度帯におけるaseatの継続時間を示す。継続時間/総乗車時間は、継続時間を総乗車時間で割った値である。
【0050】
次に、乗り心地に関する評価をするための予測モデルについて詳しく説明する。予測モデルは、一例として、制御ユニット104が蓄積したデータセットを用いた機械学習により生成される。なお、本実施形態では、後で説明する図9に示す予測モデルが用いられる。
【0051】
ここで、一例として、専用サーバ203が、車両101に予測モデルを送信してもよい。すなわち、専用サーバ203が、車両101から蓄積されたデータセットを取得し、車両101に送信する予測モデルを生成する。そして、車両101が、通信を介して、該予測モデルを取得してもよい。
【0052】
ところで、予測モデルの出力値と、乗車した実際のユーザ(乗客)の評価が乖離し、実際のユーザ(乗客)の評価を適切に出力することができないこともあり得る。従って、より適切に乗り心地評価を行うことができる予測モデルが取得されてもよい。
【0053】
そのため、本実施形態では、制御ユニット104が取得した各加速度帯のデータに基づく乗り心地点数sと、実際の乗客の評価(すなわち、ユーザ評価207)と、に基づいて、より適切な予測モデルを取得する処理が行われる。乗り心地点数の算出例を説明しつつ、この処理を具体的に説明する。
【0054】
先ず、乗り心地点数sの算出の一例について説明する。図9に示す予測モデルにおいて、kは着席時の振動加速度に基づく不快指数(すなわち、加速度帯に応じた乗り心地の評価係数)であり、暫定的な値(初期値)として、事前に設定される。この例では、k=0、k=100、k=150、k=200、k=250、k=300が最初にインプットされたとする。なお、満点(この例では、100)は、ユーザ評価207の満点に対応する値とされる。
【0055】
そして、例えば、図8に示すデータが入力される場合、このデータに関する乗客の乗り心地点数sは、100-(0×0.524+100×0.352+150×0.088+200×0.024+250×0.011+300×0.001)=43.75と計算することができる。
【0056】
このデータに関するドライバーに対する専用サイト205で実際に得られたユーザ評価207の平均の評点が、68.0点だったとすると、これを解答として、k(すなわち、k、k、k、k、k、k)を調整(学習)することで、より適切な予測モデルを取得することができる。なお、ユーザ評価207の平均の評点を解答として、k、k、k、k、k、kのようなパラメータが乗客ごとに存在するため、数式における計算結果を解答に近づけるためのパラメータは、勾配降下法によって略一意的に定まる。
【0057】
すなわち、インプット済みの乗り心地評価アルゴリズムによる採点(aseatに基づく乗り心地点数s)と、ユーザ評価207の平均値による採点と、の差を最小にするための学習を再び実行することで、より適切な予測モデルを取得することができる。この学習を繰り返すことで、人体の官能的な評価に近づいた独自のアルゴリズムを構築することができる。
【0058】
なお、このアルゴリズムは、例えば座席カメラ106で認識した乗客の属性ごとに別々に設定しても構わない。そして、属性による局所的なアップデートも可能である。ただし、この場合、乗客属性ごとに独自の学習を実行する必要がある。そして、乗客の属性に応じた予測モデルを用いて、乗り心地が評価される。
【0059】
専用サーバ203が、上記の学習を実行し、取得したより適切な予測モデルを車両101に送信してもよい。そして、専用サーバ203により強化されたアルゴリズム(すなわち、より適切とされる予測モデル)は、車両101の制御ユニット104に上書きされてもよい。
【0060】
以上の説明より、ドライバーによって運転特性は異なるが、乗り心地を客観的に評価することを可能とする技術が提供される。また、乗員の属性によって指標が変化することもあるが、普遍的な数値化を可能とする技術が提供される。
【0061】
制御ユニット104は、目的地までの走行中に、加速度センサから取得されるデータを予測モデルに入力し、乗客の不快感を数値化した不快指数を求めてもよい。ここで、不快指数は、一例として、予測モデルを用いて推定した乗り心地点数を変換することで求めることができる。
【0062】
そして、例えば、走行中に乗り心地評価を行うアルゴリズムを制御ユニット104に組み込むことで、制御ユニット104は、走行中の適宜のタイミングで不快指数を求めてもよい。ここで、制御ユニット104は、リアルタイム、または、予め設定される時間ごとに、不快指数を求めてもよい。また、制御ユニット104は、蓄積される加速度データの分布に基づいて、不快指数を求めてもよく、例えば、1分間の加速度分布に基づいて、不快指数を求めてもよい。
【0063】
制御ユニット104は、運転者向けのモニタ107aに接続され、運転者向けのモニタ107aに対して、乗客の快適度の情報(言い換えれば、乗客の不快指数に応じた情報)を表示してもよい。この通知を得ることで、運転者200は運転を改善することが可能となる。制御ユニット104は、例えば、リアルタイムで不快指数を求め、該不快指数に基づく乗客の快適度の情報をリアルタイムでモニタ107aに表示してもよい。この場合、運転者200はリアルタイムで運転を改善することが可能となる。
【0064】
また、制御ユニット104は、運転者向けのモニタ107aに対して、リアルタイムで得られた不快指数と、一定時間前に得られた不快指数と、の差分に応じた情報を表示してもよい。すなわち、不快指数の差分が、運転が向上していることを示す場合、制御ユニット104は、運転者の向けのモニタ107aに対して、運転が改善されていることを示す情報を表示してもよい。その逆に、不快指数の差分が、運転が悪化していることを示す場合、制御ユニット104は、運転者の向けのモニタ107aに対して、運転が悪化していることを示す情報を表示してもよい。ここで、一定時間は、運転を評価する観点から適宜に設定される時間である。一定時間は、例えば、数分単位としてもよい。
【0065】
制御ユニット104は、乗客向けのモニタ107bに接続され、取得した乗客の属性に応じて、モニタ107bの広告表示をカスタマイズしてもよい。制御ユニット104は、例えば、乗客の年齢、乗客の性別等に応じて、広告表示の内容、広告表示の大きさを変えてもよい。
【0066】
以上、実施形態について説明されたが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をしてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、加速度センサ(109a、109b、109c)が用いられた。ただし、乗客(乗員)の身体に作用する振動の検出に用いるセンサ部が構成されればよく、他のセンサが用いられてもよい。なお、他のセンサとしては、例えば、ジャイロセンサ、モーションセンサ等の公知のセンサが考えられる。また、制御ユニット104は、センサ部のデータを用いた公知の演算方法に基づいて、加速度データを取得してもよい。
【0068】
上記の実施形態では、属性を考慮した予測モデルを取得する例が説明されたが、乗客の属性を考慮しないで乗り心地を評価する予測モデルが取得されてもよい。
【0069】
上記の実施形態では、制御ユニット104に予測モデルが格納され、制御ユニット104が予測モデルを用いて乗り心地の評価値を算出する例が説明された。ただし、専用サーバ203が乗り心地点数を算出してもよい。すなわち、専用サーバ203に予測モデルが格納され、車両101から取得するデータを入力として、専用サーバ203が乗り心地点数を算出してもよい。
【0070】
本明細書において、「身体」は、頭部を除いた部分を意味する。
【0071】
本明細書によれば、一例として、下記の予測モデル生成方法が提供される。すなわち、車両101から取得する走行中の加速度データを入力として、乗客の乗り心地の評価に用いる予測モデルを生成するステップと、前記予測モデルと、実際に取得するユーザによる乗り心地の評価と、に基づいて、前記予測モデルの出力値が実際に取得するユーザによる乗り心地の評価に近づくように前記予測モデルを機械学習することで、新たな予測モデル(より適切な予測モデル)を生成するステップと、を含む予測モデル生成方法が提供される。
【0072】
また、前記予測モデル生成方法において、前記予測モデルは、加速度帯に応じたパラメータ(乗り心地の評価係数)を有し、前記機械学習において前記パラメータを再設定することで、前記の新たな予測モデルが生成されてもよい。
【0073】
また、予測モデル生成方法は、乗客の属性ごとの予測モデルを生成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
101 車両
104 制御ユニット
106 座席カメラ
107a モニタ
107b モニタ
109 加速度センサ
200 運転者
201 乗客
202 無線通信
203 専用サーバ
204 HTTP通信
205 専用サイト
206 スマートフォン
207 ユーザ評価
208 ユーザ評価に関するデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9