(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164745
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】振動減衰構造、減衰構造付き振動体、および電磁クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241120BHJP
F16D 27/118 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16D27/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080447
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】寺島 和希
(72)【発明者】
【氏名】濱 信治
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AD08
3J048BF09
3J048EA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電磁クラッチのアーマチュア位置・動作の誤検知を防止でき、かつ検出板の疲労破壊を防止できる技術を提供すること。
【解決手段】振動減衰構造3は振動体5の振動を減衰させるために振動体5に遊嵌されている構造であって、振動体5の振動方向V上に設けられた挿通孔4に遊嵌されている支持部1と、支持部1の両端に設けられている一対の反発手段2a、2bとからなる構成とする。振動体5には、前記反発手段2a、2bと当接する箇所にこれらとの衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和手段を設けることとしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動する物体である振動体の振動を減衰させるために該振動体に遊嵌されている構造であって、
該振動体の振動方向上に設けられた挿通孔に遊嵌されている支持部と、
該支持部の両端にそれぞれ設けられている反発手段とからなり、
該反発手段は自身に向かってくる該振動体を制止しこれを反発させることを特徴とする、振動減衰構造。
【請求項2】
前記反発手段は、前記振動体との衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和構造を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動減衰構造。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の振動減衰構造が振動体に取り付けられてなることを特徴とする、減衰構造付き振動体。
【請求項4】
前記振動体は、前記反発手段との衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和構造を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の減衰構造付き振動体。
【請求項5】
前記振動体は、電磁クラッチを構成するアーマチュアの位置検出用の検出板であることを特徴とする、請求項3に記載の減衰構造付き振動体。
【請求項6】
前記振動体は、電磁クラッチを構成するアーマチュアの位置検出用の検出板であることを特徴とする、請求項4に記載の減衰構造付き振動体。
【請求項7】
請求項5、6のいずれかに記載の減衰構造付き振動体たる検出板を備えていることを特徴とする、電磁クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動減衰構造、減衰構造付き振動体、および電磁クラッチに係り、特に、任意で回転を切り替え可能な電磁クラッチにおける振動を減衰する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の電磁クラッチの構成例を示す説明図であり、図中(a)は端面方向からの図、(b)は(a)側方断面図である。電磁クラッチ710は、アーマチュア700が直線運動Mをして接続を切り替える装置であり、アーマチュア700、アーマチュア700と噛み合い等により接続する噛み合い歯等の切替え対象77P、77S、電磁石78、コイルばね79から構成されている。
【0003】
電磁石78に通電していない状態では、アーマチュア700はコイルばね79の反力によって切替え対象77Pに押し付けられ、これと接続する。一方、電磁石78に通電した状態では、アーマチュア700は切替え対象77S側に吸引され、これと接続する。電磁石78の通電切り替えにより、アーマチュア700は直線運動Mを行う。アーマチュア700の動作・位置を外部から検出するため、アーマチュア700には通常は金属製の検出板75が取り付けられている。この検出板75を、フォトセンサあるいは磁気センサなどの検出手段によって検出し、アーマチュア700の動作・位置を確認している。
【0004】
電磁クラッチについては従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、電磁クラッチ駆動機構における共振による異音発生抑制策として、電磁コイルに流れる電流値の変化分が一定値以上となったら回転軸および板状バネ部材に共振が生じていると判定する電子制御装置が開示されている。同判定によりリレースイッチがOFFされ、走行用エンジンからの回転力が伝達されず圧縮機は停止するため、板状バネ部材に生じた共振が停止され、これに伴う振動伝達を防止できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-59986号公報「電磁クラッチの駆動装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に示した従来の電磁クラッチ710においては、噛み合い歯等の切替え対象77P-77S間のクラッチ切り替え時、アーマチュア700から伝達された直線運動Mの衝撃によって、検出板75が直動方向に振動する。この振動の振幅の大きさ、または振動時間の長さが原因となり、位置検出センサがアーマチュア700の位置・動作を誤検知してしまうという問題がある。
【0007】
また、同様の振動の繰り返しにより、検出板75が疲労破壊するという問題も発生する。なお、図示する通り検出板75は、アーマチュア700から外周側に延長された配置となっており、この距離の大きさも振動が大きくなる原因の一つである。アーマチュア700の位置・動作の誤検知や、検出板75の疲労破壊を防止する技術が求められる。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、電磁クラッチのアーマチュア位置・動作の誤検知を防止でき、かつ検出板の疲労破壊を防止できる技術を提供することである。
【0009】
また、本発明の課題は、電磁クラッチに留まらず、振動体の振動を効果的に減衰させることによって、振動体自身への衝撃による損傷・破壊を低減でき、かつ振幅の大きさや振動時間の長さを低減させ、早期に振動による悪影響を止めることのできる構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、電磁クラッチを構成するアーマチュアに延設されている検出板の振動方向両側を弾性物質で挟み込み、弾性物質の両外側には振動する検出板に対して反発作用を行うダンパーを設け、ダンパーは直動方向に対して自由に移動可能とする構造に想到した。そして、この構造によれば、ダンパーは弾性物質との衝突を経て検出板の動きに遅れて動作し、かつそれが繰り返されることによって、検出板の振動を妨げ、減衰させられること、さらには弾性物質により検出板を衝撃から保護できることを確かめ、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
〔1〕 振動する物体である振動体の振動を減衰させるために該振動体に遊嵌されている構造であって、
該振動体の振動方向上に設けられた挿通孔に遊嵌されている支持部と、
該支持部の両端にそれぞれ設けられている反発手段とからなり、
該反発手段は自身に向かってくる該振動体を制止しこれを反発させることを特徴とする、振動減衰構造。
〔2〕 前記反発手段は、前記振動体との衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和構造を備えていることを特徴とする、〔1〕に記載の振動減衰構造。
〔3〕 〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の振動減衰構造が振動体に取り付けられてなることを特徴とする、減衰構造付き振動体。
【0012】
〔4〕 前記振動体は、前記反発手段との衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和構造を備えていることを特徴とする、〔3〕に記載の減衰構造付き振動体。
〔5〕 前記振動体は、電磁クラッチを構成するアーマチュアの位置検出用の検出板であることを特徴とする、〔3〕に記載の減衰構造付き振動体。
〔6〕 前記振動体は、電磁クラッチを構成するアーマチュアの位置検出用の検出板であることを特徴とする、〔4〕に記載の減衰構造付き振動体。
〔7〕 〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の減衰構造付き振動体たる検出板を備えていることを特徴とする、電磁クラッチ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の振動減衰構造、減衰構造付き振動体、および電磁クラッチは上述のように構成されるため、これらによれば、電磁クラッチのアーマチュア位置・動作の誤検知を防止でき、かつ検出板の疲労破壊を防止することができる。すなわち、アーマチュアに取り付けられた検出板は、アーマチュアから生じた振動をより短い時間で減衰することができ、これによって、位置検出センサの誤検知を軽減できる。そして、振動を原因とする金属疲労等疲労破壊による検出板寿命低下に対しても改善効果を得ることができる。
【0014】
さらに本発明は、電磁クラッチに留まらず、発生した振動の早期減衰・抑制が望まれる全ての技術分野、産業分野においても適用可能である。本発明の振動減衰構造および減衰構造付き振動体によれば、振動体の振動を効果的に減衰させることによって、振動体自身への衝撃による損傷・破壊を低減でき、かつ振幅を縮小させ、振動時間を短縮させ、早期に振動による悪影響を止めることができる。
【0015】
なお、上述の「検出板の振動方向両側を弾性物質で挟み込」むという構成における弾性物質の作用効果は、ダンパー(反発手段)自体を弾性具有のものとする構成などによっても得ることができるが、追って詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の振動減衰構造および減衰構造付き振動体の基本構成を示す概念的説明図である。
【
図2】
図1に示す振動減衰構造および減衰構造付き振動体の作用を示す概念的説明図である。
【
図2-3】本発明振動減衰構造の変形例を示す概念的説明図である。
【
図3】本発明の振動減衰構造および減衰構造付き振動体の別の構成を示す概念的説明図である。
【
図4】本発明の電磁クラッチおよび減衰構造付き振動体の構成例を示す説明図であり、図中(a)は端面方向からの図、(b)は(a)側方断面図、(c)は反対の端面方向からの図である。
【
図5】
図4に示す電磁クラッチおよび減衰構造付き振動体の作用を示す要部側方断面図である(その1)。
【
図6】
図4に示す電磁クラッチおよび減衰構造付き振動体の作用を示す要部側方断面図である(その2)。
【
図7】従来の電磁クラッチの構成例を示す説明図であり、図中(a)は端面方向からの図、(b)は(a)側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の振動減衰構造および減衰構造付き振動体の基本構成を示す概念的説明図である。図示するように本振動減衰構造3は振動する物体である振動体5の振動を減衰させるために振動体5に遊嵌されている構造であって、振動体5の振動方向V上に設けられた挿通孔4に遊嵌されている支持部1と、支持部1の両端にそれぞれ設けられている反発手段2a、2bとからなることを、主たる構成とする。かかる構成による作用を、次に説明する。
【0018】
図2は、
図1に示す振動減衰構造および減衰構造付き振動体の作用を示す概念的説明図である。図中(a)は、振動体が一方の反発手段に衝突・当接した状態を、また(b)は、振動体が他方の反発手段に衝突・当接した状態を示す。また、
図2-2は、
図2をさらに補助する説明図である。これらに図示するように本振動減衰構造3においては、振動体5がその振動方向V上の一方側に振れると、つまり振動方向V上にてニュートラル位置(
図2-2中の(o)。以下同様)から移動量Daだけ移動すると、振動体5の挿通孔4に支持部1が遊嵌されていることによってそのニュートラル位置からの移動量Dxが0以上Da未満であるところの一方の反発手段2aに衝突、当接し(各図中(a))、反発手段2aによって反発され、振動方向V上の反対方向へと振れる。
【0019】
反発手段2aにより振動体5は、もし反発手段2aがなければ移動したであろう移動量よりも短い移動量で移動を阻止され、そこから反発する。すなわち、反発手段2aによって振動体5は、その振動の振幅が縮小され、最終的な振動減衰効果へと繋がる一つの作用が実現される。
【0020】
なお、反発手段2aの移動量Dxを「0以上Da未満」と述べたが、これは、
図2-2中の(a)における図示に拘わらず、ほぼ0となり得る。支持部1は、挿通孔4に遊嵌されているために振動体5における振動の影響が少なく、ないしはそれをほとんど受けず、振動体5が振動してもそれに遅れてより少ない量で移動するか、ないしはほとんど移動しないからである。
【0021】
反対方向へと振れた振動体5は、振動方向V上にてニュートラル位置から移動量Dbだけ移動し、振動体5の挿通孔4に遊嵌されていることによってその直前位置(
図2-2中(a))からの移動量Dx’が0以上Db未満であるところの一方の反発手段2bに衝突、当接し(図中(b))、反発手段2bによって反発され、振動方向V上の反対方向へと振れる。
【0022】
反発手段2bにより振動体5は、もし反発手段2bがなければ移動したであろう移動量よりも短い移動量で移動を阻止され、そこから反発する。すなわち、反発手段2bによって振動体5は、その振動の振幅が縮小され、ここでも、最終的な振動減衰効果へと繋がる一つの作用が実現される。
【0023】
なお、反発手段2bの移動量Dx’を「0以上Db未満」と述べたが、これは、
図2-2中の(b)における図示に拘わらず、ほぼ0となり得る。支持部1は、挿通孔4に遊嵌されているために振動体5における振動の影響が少なく、ないしはそれをほとんど受けず、振動体5が振動してもそれに遅れてより少ない量で移動するか、ないしはほとんど移動しないからである。
【0024】
以上述べた通り、反発手段2a、2bはともに、自身に衝突してくる振動体5を阻止してその振動の振幅を縮小させ、反発作用によって振動体5を反対方向へと反動させるが、この反動は、当該縮小された振幅によってなされる。すなわち、反発手段2a、2bによる振幅縮小作用は、向かってきた振動体5を阻止する衝突時点のみならず、その後に続く振動体5の振動状態に対しても及ぶ。
【0025】
また、一対の反発手段2a、2bの一方2a等に対する振動体5の衝突は、当然ながら、当該反発手段2a等に対して衝突方向の力を及ぼす。そうすると、支持部1により繋がっている反対側の反発手段2b等には、自身に向かってくる振動体5に対してこれを迎える方向の力が生じ、振動体5の振幅の抑制、振幅を縮小する作用は阻害されず、むしろ支持される。
【0026】
このように、振動体5の振動には同期しない(あるいは、追随しない)一定間隔の各反発手段2a、2b間を、振動体5が繰り返し往復する過程で、以上述べた各作用は繰り返され、振動体5は急速にその振幅を縮小していき、それによって振動が減衰され、早期に振動が収まる。(
図2-2には、振動体5の移動量が Db<Da、反発手段2aおよび2bの移動量が Dx’<Dx と、いずれも縮小していることを示している。)
【0027】
なお、反発手段2a、2bは、振動体5との衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和構造を備えた構成としてもよい。すなわち、弾性体などの衝撃を緩和する構造や材料により、反発手段2a等の全体を、あるいは要部を形成するという構成である。これにより、反発手段2a等に衝突して反発する振動体5への影響を軽減し、振動体5の損傷や寿命短縮を防止することができる。
以上説明した振動減衰構造3が取り付けられた振動体5、すなわち減衰構造付き振動体も本発明の範囲内である。
【0028】
図2-3は、本発明振動減衰構造の変形例を示す概念的説明図である。図中(o)は基準形態、(i)、(ii)、(iii)は変形例を示す。(i)に示すように振動減衰構造23Iは、その反発手段22aI、22bIの長さを基準形態よりも長くし、振動減衰作用の強化を図ったものである。このように、反発手段の長さを適宜変更してもよい。
【0029】
(ii)に示すように振動減衰構造23IIは、その反発手段22aII、22bIIの厚さを基準形態よりも厚くし、振動減衰作用の強化を図ったものである。このように、反発手段の厚さや重さを適宜変更してもよい。
【0030】
(iii)に示すように振動減衰構造23IIIは、その支持部21IIIの長さを基準形態よりも短くし、振動減衰作用の強化を図ったものである。このように、支持部の長さを適宜変更してもよい。
【0031】
なお、この他にも、振動体5上において本発明振動減衰構造3を設ける位置を変更する、反発手段2a等の側断面形状、平断面形状等の形状を変更するなど、振動減衰作用の強化を図るための様々な設計は、適宜行うことができる。
【0032】
図3は、本発明の振動減衰構造および減衰構造付き振動体の別の構成を示す概念的説明図であり、一方の反発手段に振動体が当接している状態の図である。図示するように本減衰構造付き振動体35は、上述した構成要素に加えて、反発手段32a、32bとの衝突による衝撃を緩和するための衝撃緩和構造36a、36b、を備えている構成とすることができる。つまり、衝突する振動体35と反発手段32a等のうち、振動体35の方に衝撃緩和手段が備えられている、という構成である。もっともこの場合でも、反発手段32a等の方にも衝撃緩和構造が備えられている構成であってもよい。
【0033】
図示するように衝撃緩和構造36a等は、本減衰構造付き振動体35の振動体本体の要部に取り付けられた弾性体など衝撃緩和機能のある部材の態様とすることができる。しかしながら、振動体35の全体が衝撃緩和作用のある弾性体などの構造、材料によって構成されていることとしてもよい。いずれにしても、かかる衝撃緩和構造によって、減衰構造付き振動体35の損傷や寿命短縮を防止することができる。
【0034】
図4は、本発明の電磁クラッチおよび減衰構造付き振動体の構成例を示す説明図であり、図中(a)は端面方向からの図、(b)は(a)側方断面図、(c)は反対の端面方向からの図である。なお、一方の反発手段に振動体が当接している状態の図である。図示するように、電磁クラッチ410を構成するアーマチュア400の位置検出用の検出板45に、本発明の減衰構造付き振動体(45)を応用することができる。なお、電磁クラッチ410は電磁石48の作用によってアーマチュア400が直線運動Mをし、噛み合い歯などの切替え対象47P、47S間の接続を切り替える装置であり、基本的な構造は前出
図7に示した従来技術と同様である。
【0035】
かかる基本的な構造に加え、本発明電磁クラッチ410には、アーマチュア400の動作・位置を外部から検出するために、アーマチュア400には減衰構造付き振動体(検出板)45が取り付けられており、この検出板45の動作・位置を、フォトセンサあるいは磁気センサなどの検出手段によって検出する。図示するように検出板45には、衝撃緩和構造46a等が備えられている構成例である。衝撃緩和構造46a等としては、適宜の弾性体を好適に用いることができる。
【0036】
衝撃緩和構造46a、46bにそれぞれ対向してこれらをカバーするように、反発手段42a、42b(以下、「ダンパー」ともいう)が取り付けられている。両反発手段42a、42bは、支持部41(以下、「ピン」ともいう)の各端部に固定され、反発手段42a―支持部41―反発手段42bは一体となっており、ピン41は検出板45に設けられた挿通孔44に遊嵌されている。つまり、ピン41はその径よりも大径の挿通孔44に挿通され、直線方向に自由に運動可能である。したがって反発手段42a等も、直線方向に自由に運動し得る構造である。
【0037】
クラッチ切り替え時、アーマチュア400から伝達された直線運動Mの衝撃によって検出板45が直動方向に振動するが、本減衰構造付き振動体45ではこの振動が上述した各作用により効果的に減衰される。すなわち、検出板45の振動は、その振幅および振動時間が急速に抑えられ、短時間で振動が停止する。このような良好な振動減衰、停止により、検出板45の位置・動作検出手段がアーマチュア400の位置・動作を誤検知するという問題が解消され、併せて、検出板45が疲労破壊するという問題も解消される。
ついで、本発明の作用につき、
図4に例示した電磁クラッチ410に即し、別図を用いて重ねて説明する。
【0038】
図5、6は、
図4に示す電磁クラッチおよび減衰構造付き振動体の作用を示す要部側方断面図であり、前者は切替え対象47Pへの接続状態、後者は切替え対象47Sへの接続状態を示す。まず、
図5に示す状態は、電磁石48に通電していない状態であり、アーマチュア400はコイルばね49の反力によって切替え対象47Pに押し付けられ、これと接続している。検出板45はアーマチュア400に固定されているため、アーマチュア400の動作に応じて動作する。
【0039】
一方、反発手段(ダンパー)42a、42bは検出板45には固定されておらず、遊嵌されているのみである。したがって、電磁石48への通電によりアーマチュア400が噛み合い歯などの切替え対象47Sに吸引され接続していることを示す
図6の状態へと移行するその過程において、検出板45が、まだ
図6の状態に向かって動き始めた時点では、ダンパー42a、42bは現在位置、すなわち <切替え対象47P側> に留まろうとする。
【0040】
さらに検出板45が
図6に示す状態へ向かって移動すると、衝撃緩和手段46a等を介しつつ、ダンパー42a等は検出板45と同じ方向、すなわち <切替え対象47S側> に動き始める。アーマチュア400が切替え対象47Sに到達すると、そこでアーマチュア400の動作は停止するが、検出板45はここで、衝突時の衝撃によって振動を開始する。
【0041】
この振動によって、検出板45の移動方向は、
図5に示す状態の方向、すなわち <切替え対象47P側> へと反転するのだが、ダンパー42a等は、検出板45と反対の方向、つまり
図6状態から
図5状態への過程におけるアーマチュア400および検出板45の運動方向、すなわち <切替え対象47S側> に進み続ける状態を維持する。
【0042】
このように、検出板45の動作に対してダンパー42a等が遅れた動作になり、かつこれを繰り返すことによって、ダンパー42a等は検出板45の動作を妨げる働きをする。こうして、検出板45の振動を減衰させる効果が得られる。
【0043】
なお、本発明振動減衰構造において反発手段は、支持部の両端にそれぞれ設けられている構成であり、これまで説明したように「一対の反発手段」として構成することができる。つまり
図1等における、それぞれ別体である一対の反発手段2a、2bのように、である。一方、「支持部の両端にそれぞれ設けられている反発手段」は、別体ではなく一体に形成されているものであってもよい。たとえば、U字状やコの字状の部材の両端を反発手段とし、それが支持部により繋がれる構成、環状の部材の対向位置に反発手段を設け、それが支持部により繋がれる構成、などである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の振動減衰構造、減衰構造付き振動体、および電磁クラッチによれば、電磁クラッチのアーマチュア位置・動作の誤検知を防止でき、かつ検出板の疲労破壊を防止することができる。また、電磁クラッチに留まらず、発生した振動の早期減衰・抑制が望まれる全ての技術分野、産業分野においても、振動体自身への衝撃による損傷・破壊を低減でき、かつ早期に振動による悪影響を止めることができる。したがって、電磁クラッチ製造・使用分野を初め、発生する振動による悪影響がのぞまれる全ての技術分野、産業分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0045】
1、21I、21II、21III、31、41…支持部
2a、2b、22aI、22bI、22aII、22bII、22aIII、22bIII、32a、32b、42a、42b…反発手段
3、23I、23II、23III、33、43…振動減衰構造
4、24I、24II、24III、34、44…挿通孔
5、25I、25II、25III、35…振動体(減衰構造付き振動体)
36a、36b、46a、46b…衝撃緩和構造
45…検出板(減衰構造付き振動体)
47P、47S…切替え対象(噛み合い歯などの)
48…電磁石
49…コイルばね
400…アーマチュア
410…電磁クラッチ
Da、Db…振動体の移動量
M…直線運動
V…振動方向
75…検出板
77P、77S…切替え対象(噛み合い歯等の)
78…電磁石
79…コイルばね
700…アーマチュア
710…電磁クラッチ