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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016477
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118631
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 耕大
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓治
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA01
4M118FA06
4M118GA02
4M118GB01
4M118GB13
4M118GC08
4M118GD04
4M118HA25
4M118HA30
4M118HA31
(57)【要約】
【課題】 光検出装置における画素アレイに対するロジックチップからの反射光を抑止しつつ、半導体基板上に形成された材料膜どうしの界面での剥離を抑制する。
【解決手段】 本技術は、複数の光電変換素子がアレイ状に配列された画素アレイ部を含む半導体基板と、前記半導体基板上に、前記画素アレイ部とスペース領域を隔てて載置された少なくとも1つのロジックチップと、前記画素アレイ部に近位する前記ロジックチップの遮光対象領域を少なくとも覆うように形成された遮光部材とを備える光検出装置である。前記画素アレイ部は、前記複数の光電変換素子の受光面上に形成された少なくとも1つの有機系樹脂材料膜を含む。また、前記遮光部材は、前記ロジックチップの前記遮光対象領域から前記スペース領域を超えて前記画素アレイ部上に形成された前記有機系樹脂材料膜の縁部まで覆うように形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子がアレイ状に配列された画素アレイ部を含む半導体基板と、
前記半導体基板上に、前記画素アレイ部とスペース領域を隔てて載置された少なくとも1つのロジックチップと、
前記画素アレイ部に近位する前記ロジックチップの遮光対象領域を少なくとも覆うように形成された遮光部材と、を備え、
前記画素アレイ部は、前記複数の光電変換素子の受光面上に形成された少なくとも1つの有機系樹脂材料膜を含み、
前記遮光部材は、前記ロジックチップの前記遮光対象領域から前記スペース領域を超えて前記画素アレイ部上に形成された前記有機系樹脂材料膜の縁部まで覆うように形成されている、
光検出装置。
【請求項2】
前記遮光対象領域は、前記スペース領域に近位する前記ロジックチップの第1の側面部分を含む、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記遮光対象領域は、前記スペース領域に近位する前記ロジックチップの上面縁部分を更に含む、
請求項2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記遮光対象領域は、前記第1の側面部分と直交する第2の側面部分における少なくとも前記スペース領域に近位する部分である、
請求項2に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記半導体基板上に形成された前記スペース領域は、前記有機系樹脂材料膜が除去された領域である、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記スペース領域は、シリコン窒化膜で覆われている、
請求項4に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記スペース領域の表面は、凹凸形状部分を含む、
請求項4に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記有機系樹脂材料膜は、カラーフィルタ及びオンチップレンズの少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記画素アレイ部上に形成された前記有機系樹脂材料膜の前記縁部において、前記縁部に沿って形成された、前記遮光部材の流入を堰き止めるための少なくとも1つのダム部を有する、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記遮光部材は、前記ロジックチップの表面の光の反射率よりも低い反射率を有する樹脂材料からなる、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記ロジックチップは、前記半導体基板上にバンプ電極を介して載置されるとともに、前記半導体基板と前記ロジックチップとの間に注入されたアンダーフィル部材により固定される、
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記遮光部材は、前記スペース領域にはみ出た前記アンダーフィル部材を覆っている、
請求項11に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記ロジックチップの前記遮光対象領域側の前記スペース領域の一端部から前記有機系樹脂材料膜上の前記縁部を覆う前記遮光部材の裾部分までの前記遮光部材の幅に対する前記有機系樹脂材料膜上の前記縁部を覆う前記遮光部材の幅の比は、0より大きく1/2以下である、
請求項1に記載の光検出装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光検出装置に関し、特に、入射した光に応じた電気信号に変換する画素アレイを備える光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のICチップ(シリコンダイ)を1つの半導体基板上に設けてパッケージ化したマルチチップ構造の半導体デバイスが知られている。例えば、複数のICチップをシリコンウェハ上に積層して形成した後、ダイシングによりチップ化し、更にそれをパッケージ化することにより製造された半導体デバイスはCOW(Chip on Wafer)と呼ばれる。COW型の光検出装置は、アレイ状の光電変換素子からなる画素アレイが形成された半導体基板上に、例えば1つ以上のロジック回路を形成したロジックチップが画素アレイに近接して並置されるように構成されている。
【0003】
画素アレイとロジックチップとが並置された構造を有する光検出装置では、画素アレイによる受光の際、画素アレイ側のロジックチップの側面で反射した光が画素アレイの受光面に入り込み、この結果、画像にフレア等が発生してしまうため、ロジックチップの上面及び側面といった遮光対象領域は、遮光性の樹脂材料部材(遮光部材)で覆われる。
【0004】
例えば、下記特許文献1は、複数の画素が配置された画素領域を有する基板と、前記基板に接続端子を介してフリップチップ接合された1以上のチップとを備え、前記チップの裏面を保護する第1の樹脂材料と、前記チップの側面を保護する第2の樹脂材料とを含む、半導体装置を開示している。
【0005】
このような光検出装置は、例えばカメラ等の撮像デバイスに広く利用されている。カラー画像に対応した光検出装置は、各光電変換素子がRGB(Red, Green, Blue)いずれかの色の光のみを受光するように、各光電変換素子の受光面上に層状形成されたカラーフィルタを備えている。また、光検出装置は、外部からの光を効果的に光電変換素子に結合することができるよう、カラーフィルタ上にオンチップレンズを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2022/050119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光検出装置に熱ストレスが加わると、半導体基板及びその上に形成された各種の材料膜に熱応力が働き、材料膜間の線膨張係数の違いから、密着性が低い材料膜の界面で剥離が生じ易い。とりわけ、光検出装置に用いられるカラーフィルタやオンチップレンズは有機系樹脂材料膜からなるため密着性が比較的低く、接触している遮光部材等との線膨張係数の違いによって、これらの界面を起点として剥離が発生し、製品不良を来すおそれがあった。
【0008】
一方で、上記のような剥離の発生を抑制するために、ロジックチップを覆う遮光部材をロジックチップに並置された画素アレイの縁部にまで延伸させない場合、ロジックチップと画素アレイとの間に露出部分(例えば、無機系酸化膜)が残り、該露出部分での光の反射によりフレア等が発生するという問題がある。
【0009】
そこで、本開示は、光検出装置において、画素アレイに対するロジックチップからの反射光を効果的に抑止しつつ、半導体基板上に形成された各種の材料膜どうしの界面での剥離を効果的に抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本技術は、以下に示す発明特定事項又は技術的特徴を含んで構成される。
【0011】
ある観点に従う本技術は、複数の光電変換素子がアレイ状に配列された画素アレイ部を含む半導体基板と、前記半導体基板上に、前記画素アレイ部とスペース領域を隔てて載置された少なくとも1つのロジックチップと、前記画素アレイ部に近位する前記ロジックチップの遮光対象領域を少なくとも覆うように形成された遮光部材とを備える光検出装置である。前記画素アレイ部は、前記複数の光電変換素子の受光面上に形成された少なくとも1つの有機系樹脂材料膜を含む。また、前記遮光部材は、前記ロジックチップの前記遮光対象領域から前記スペース領域を超えて前記画素アレイ部上に形成された前記有機系樹脂材料膜の縁部まで覆うように形成されている。
【0012】
ここで、前記ロジックチップの前記遮光対象領域側の前記スペース領域の一端部から前記有機系樹脂材料膜上の前記縁部を覆う前記遮光部材の裾部分までの前記遮光部材の幅に対する前記有機系樹脂材料膜上の前記縁部を覆う前記遮光部材の幅の比は、0より大きく1/2以下であることが好ましい。
【0013】
なお、本明細書等において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されても良い。また、「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことをいい、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0014】
本技術の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の一例を示す平面図である。
図2図2は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の要部の概略的構成の一例を示す部分断面図である。
図3図3は、本技術の一実施形態に係る光検出装置における有機系樹脂材料膜と遮光部材との被り量を説明するための図である。
図4図4は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の製造工程における半導体基板上の遮光部材の形成方法の一例を説明するための部分断面図である。
図5図5は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の製造工程における半導体基板上の遮光部材の形成方法の一例を説明するための部分断面図である。
図6図6は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の製造工程における半導体基板上の遮光部材の形成方法の一例を説明するための部分断面図である。
図7図7は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第1の変形例を示す平面図である。
図8図8は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第2の変形例を示す平面図である。
図9図9は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第3の変形例を示す平面図である。
図10図10は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第4の変形例を示す平面図である。
図11図11は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第5の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本技術の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本技術は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0017】
図1は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の一例を示す図である。また、図2は、図1に示す光検出装置の要部の部分断面図である。
【0018】
図1に示すように、光検出装置1は、画素を構成する複数の光電変換素子がアレイ状に配列された画素アレイ部11が形成された半導体基板10と、半導体基板10上に画素アレイ部11に隣接して載置されたロジックチップ12とを含み構成される。光電変換素子(符号なし)は、入射した光に応じて蓄積される電荷に基づいて電気信号を出力する半導体素子である。光電変換素子は、画素アレイ部11の有効画素領域を規定する。
【0019】
半導体基板10は、配線パターンが形成された配線層(図示せず)を含む。ロジックチップ12は、半導体基板10内に形成された配線層を介して画素アレイ部11に電気的に接続され、画素アレイ部11から出力される電気信号を処理するロジック回路を含むシリコンダイである。本例では、1つのロジックチップ12が、画素アレイ部11に隣接して配置された構成が示されているが、これに限られず、変形例で示されるように、複数のロジックチップ12が、画素アレイ部11の周囲に複数配置された構成であっても良い。なお、本開示では、光検出装置1は、裏面照射型のCMOSイメージセンサであるものとするが、これに限られず、例えば、表面照射型のCMOSイメージセンサであっても良い。
【0020】
また、半導体基板10の外周部には、複数の外部パッド電極13が形成されている。外部パッド電極13は、例えば、半導体テストのためのプローブの接触やワイヤーボンディングによるワイヤーの接続に利用される(図示せず)。
【0021】
図2を参照して、画素アレイ部11を構成する光電変換素子の受光面上には、平坦化膜111aが形成され、その上にカラーフィルタ111b及びオンチップレンズ111cが順に積層され、更に、酸化膜112が積層される。平坦化膜111a、カラーフィルタ111b、及びオンチップレンズ111cは、典型的には、有機系樹脂材料からなる。本開示では、便宜上、有機系樹脂材料からなる平坦化膜111a、カラーフィルタ111b、及び/又はオンチップレンズ111cを有機系樹脂材料膜111と称することがある。
【0022】
画素アレイ部11上に積層形成される有機系樹脂材料膜111及び酸化膜112は、光検出装置1の製造工程上、典型的には、光電変換素子による有効画素領域を超えて形成される。後述するように、有機系樹脂材料膜111が積層形成されたロジックチップ12に近い画素アレイ部11の縁部は、ロジックチップ12の遮光対象領域を覆うように形成された遮光部材14により連続的に覆われている。遮光対象領域は、ロジックチップ12の表面で反射した光が画素アレイ部11へ入り込むおそれがある領域である。有機系樹脂材料膜111等の縁部には、複数のダム部15が溝状に形成されている(本例では2列)。ダム部15は、遮光部材14や後述するアンダーフィル部材18の余剰分が有効画素領域まで到達しないようにこれらを堰き止める。なお、本例では、ダム部15は2列の溝として示されたが、これに限られず、ロジックチップ12を囲むように形成されても良い。
【0023】
画素アレイ部11とロジックチップ12とはスペース領域Sを隔てて並置されている。スペース領域Sは、有機系樹脂材料膜111が形成されていない領域である(酸化膜112は形成されていても良い。)。より具体的には、光検出装置1の製造工程において、カラーフィルタ111b及びオンチップレンズ111cといった有機系樹脂材料膜111は、半導体基板10の表面全体に亘って形成された後、ロジックチップ12が載置される領域とともに画素アレイ部11とロジックチップ12との間の領域がエッチング処理等により除去される。その後、ロジックチップ12がバンプ電極16を介して載置されることにより、スペース領域Sが画定される。スペース領域Sの表面形状は、平坦形状であっても良いし、ランダム又は幾何学的な凹凸形状であっても良い。
【0024】
ロジックチップ12は、半導体基板10上に形成されたパッド電極17にバンプ電極16を介して電気的に接続されるように載置される。ロジックチップ12は、例えばフリップチップ実装により載置される。半導体基板10とロジックチップ12との間の空間には、アンダーフィル部材18が注入され、これにより、バンプ電極16等の配線が保護されるとともに、ロジックチップ12は、半導体基板10に固定される。ロジックチップ12の周囲にはみ出たアンダーフィル部材18は、遮光部材14に覆われる。
【0025】
また、画素アレイ部11に近位するロジックチップ12の遮光対象領域は、遮光部材14によって覆われる。遮光対象領域は、ロジックチップ12の表面で反射した光が画素アレイ部11へ入り込むおそれがある領域であり、例えば、画素アレイ部11に対向するロジックチップ12の側面部分12a(第1の側面部分)である。また、遮光対象領域は、ロジックチップ12の上面部分12bであり得る。更に、遮光対象領域は、該側面部分12aの両端の角部及び該側面部分12aに直交する他の側面部分12c(第2の側面部分)であり得る。
【0026】
遮光部材14は、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂材料や酸化シリコーン樹脂材料からなる。遮光部材14の硬化のために加えられる熱によって、熱膨張係数の違いから有機系樹脂材料膜111の界面での剥離が生じるおそれがある。したがって、後述するように、有機系樹脂材料膜111に対する遮光部材14の被り率を調整し、有機系樹脂材料膜111の界面での剥離の抑制を図っている。遮光部材14は、画素アレイ部11への反射光の入り込みを防止するため、ロジックチップ12の反射率よりも低い反射率となるように構成される。例えば、遮光部材14は、カーボンブラック等の光吸収材を含有する。追加的に又は代替的に、遮光部材14は、反射光が拡散し得るように光拡散材を含有しても良いし、その表面が凹凸形状に形成されても良い。
【0027】
遮光部材14は、光検出装置1の製造工程において、例えば、ロジックチップ12が半導体基板10に載置されてアンダーフィル部材18により固定された後、半導体基板10の上方から塗布される。遮光部材14の塗布は、1回の工程で又は複数の工程に分けて行われる。塗布された遮光部材14は、ロジックチップ12の遮光対象領域を覆うとともに、スペース領域Sを覆って更にその先端が画素アレイ部11の縁部まで達する。画素アレイ部11の縁部に到達した遮光部材14のうち余剰分は、縁部に形成されたダム部15によって堰き止められる。画素アレイ部11の縁部上にまで到達した遮光部材14の裾部分の幅が有機系樹脂材料膜111との被り量となる。なお、遮光部材14がスペース領域Sを覆っていない場合、つまり、遮光部材14の裾部分が画素アレイ部11の縁部まで達せずにスペース領域Sが露出した状態であると、露出した部分で反射した光が画素アレイ部11に入り込むおそれがある。一方で、遮光部材14と有機系樹脂材料膜111との被り量が大きすぎると、熱ストレスが加わった場合に熱応力によって界面での剥離が生じ易くなる。そこで、本開示では、遮光部材14の裾部分は、画素アレイ部11の縁部にまで確実に到達し、適度な被り量で有機系樹脂材料膜111を覆っていることが要求されることから、以下に述べるように被り率が定められる。
【0028】
図3は、本技術の一実施形態に係る光検出装置における有機系樹脂材料膜と遮光部材との被り量を説明するための図である。同図に示すように、画素アレイ部11の縁部での遮光部材14の被り率は、遮光部材14の全体幅Δに対する画素アレイ部11の縁部上での遮光部材14の裾部分の幅δ(被り量)の比で規定される。ここで、遮光部材14の全体幅Δとは、ロジックチップ12の遮光対象領域側のスペース領域Sの一端部から縁部を覆う遮光部材14の裾部分までの幅である。
【0029】
遮光部材14に熱硬化型材料が用いられる場合、遮光部材14の硬化のために加えられる熱によって生じる内部応力により有機系樹脂材料膜111での界面の剥離が生じるおそれがあり、光検出装置1の製品不良につながる。光検出装置1における材料膜間の界面の剥離は、例えば、熱ストレスを繰り返し加える温度サイクル試験(TCC:Thermal Cycle Test)によって評価され得る。
【0030】
温度サイクル試験でのサンプルを評価したところ、遮光部材14の被り率(δ/Δ)が約60%を超えると、いくつかのサンプルで有機系樹脂材料膜111、とりわけ、上下層が有機系樹脂材料で挟まれたカラーフィルタ111bの界面での剥離が観測された。また、遮光部材14の被り率が約20%ではサンプルに界面の剥離は観測されなかった。
【0031】
したがって、遮光部材14の被り率は、0より大きく1/2以下であることが好ましく、より好ましくは0より大きく1/3以下であることが好ましいと考えられる。このような遮光部材14の被り率は、遮光部材14の塗布量及び半導体基板10上に形成されるスペース領域Sのレイアウトによって調整される。すなわち、スペース領域Sは、半導体基板10上のカラーフィルタ111b材料が塗布された後のフォトリソグラフィ工程による除去、並びにドライエッチング工程がなされる平坦化膜111a及びオンチップレンズ111cの加工領域に依存する。
【0032】
以上のように、遮光部材14がロジックチップ12の遮光対象領域からスペース領域Sを超えて画素アレイ部11の有機系樹脂材料膜111の縁部まで連続的に覆うことにより、ロジックチップ12表面での反射光の画素アレイ部11への入り込みによるフレアの発生を抑止するとともに、熱応力による材料膜間の界面の剥離を防止することができる。
【0033】
なお、本例では、ロジックチップ12における遮光対象領域は、遮光部材14によって覆われるものとしたが、これは、ロジックチップ12の全体が遮光部材14によって覆われることを排除する趣旨ではない。また、ロジックチップ12の遮光対象領域以外の部分が他の遮光部材(例えばテープ状の遮光部材)で覆われても良い。
【0034】
図4図6は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の製造工程における半導体基板上の遮光部材の形成方法の一例を説明するための部分断面図である。
【0035】
まず、図4(a)に示すような半導体基板10が準備される。半導体基板10は、下地の基板上に例えばエピタキシャル成長により成膜された半導体層を微細加工することによりアレイ状に配列された光電変換素子PD等を含む各種の半導体素子が形成され、更に、配線パターンを含む配線層101が積層されて構成されている。アレイ状に配列された光電変換素子は、有効画素領域を確定する。半導体基板10のおもて面には、配線層に接続されたパッド電極17が形成されている。また、半導体基板10上には、例えばシリコン窒化膜102が形成され、更に、例えばスピンコートにより平坦化膜111aが形成される。
【0036】
続いて、半導体基板10の平坦化膜111a上には、RGBのいずれかの着色材を含有したカラーフィルタ111bが形成される(同図(b))。カラーフィルタ111bは、例えば、RGBに対応した画素ごとにその材料が塗布されて、フォトリソグラフィ工程による露光及び現像処理により形成される。カラーフィルタ111bは、光電変換素子が形成された有効画素領域を僅かに超えて形成されるとともに、後述する工程(同図(e)参照)によりスペース領域Sを形成するために半導体基板10上の有機系樹脂材料膜111が除去される位置に合わせて形成される。
【0037】
次に、半導体基板10上にはレンズ用樹脂材料が成膜され、オンチップレンズ111cに加工される(同図(c))。このように、半導体基板10上には、平坦化膜111a、カラーフィルタ111b、及びオンチップレンズ111cが順に積層された有機系樹脂材料膜111が形成される。
【0038】
続いて、ロジックチップ12が載置される側の有効画素領域の外側に、例えばエッチング処理により溝状のダム部15が形成される(同図(d))。本例では、ダム部15は、カラーフィルタ111bの縁部に沿って2列に形成されている。
【0039】
続いて、半導体基板10上の、ロジックチップ12が載置される領域及びスペース領域Sの有機系樹脂材料膜111が、例えばエッチング処理等により除去される(図5(e))。これにより、半導体基板10上の画素アレイ部11が画定される。なお、有機系樹脂材料膜111が除去される範囲は、画素アレイ部11の縁部上での有機系樹脂材料膜111と遮光部材14との被り率が最大で1/2以下となるように規定される。半導体基板10上の除去された領域は、シリコン窒化膜102が露出する。
【0040】
続いて、有機系樹脂材料膜111が部分的に除去された半導体基板10上に酸化膜112が低温成膜され(同図(f))、更に、パッド電極17が露出するようにエッチング処理される(同図(g))。
【0041】
続いて、パッド電極17にバンプ電極16が形成され、更に、その上にロジックチップ12が載置される(図6(h))。ロジックチップ12は、例えば、アラインメントマークに従って位置調整されて載置される。
【0042】
続いて、バンプ電極16を介した半導体基板10とロジックチップ12との空間にアンダーフィル部材18が注入される(同図(i))。該空間をはみ出したアンダーフィル部材18の一部は、スペース領域Sに入り込んでも良い。これにより、バンプ電極16等の配線が保護されるとともに、ロジックチップ12は、半導体基板10上に固定される。
【0043】
続いて、半導体基板10上には遮光部材14が形成される(同図(j))。より具体的には、遮光部材14は、ロジックチップ12の遮光対象領域を覆うように、ロジックチップ12上に塗布され、これにより、ロジックチップ12の遮光対象領域に塗布された遮光部材14の一部(裾部分)は、スペース領域Sを超えて有機系樹脂材料膜111の縁部にまで流れ込む。有機系樹脂材料膜111の縁部に流れ込んだ遮光部材14は、光電変換素子が形成された有効画素領域の手前のダム部15によって堰き止められる。塗布された遮光部材14は、例えば加熱されて硬化される。
【0044】
以上のようにして、画素アレイ部11にスペース領域を挟んで載置されたロジックチップ12の遮光対象領域に塗布された遮光部材14は、有機系樹脂材料膜111が除去されたスペース領域Sを超えて画素アレイ部11の有機系樹脂材料膜111の縁部まで覆うように形成される。これにより、ロジックチップ12表面での反射光の画素アレイ部11への入り込みによるフレアの発生を抑止する。また、有機系樹脂材料膜111と遮光部材14との被り量は、0より大きく1/2以下としているため、熱ストレスによる材料膜間の界面の剥離を防止することができる。
【0045】
(変形例)
上記の例では、スペース領域Sは、画素アレイ部11とロジックチップ12との間に形成されるようにレイアウトされたが、これに限られず、スペース領域Sは、以下に述べるように、遮光部材14が塗布される領域、及び/又はロジックチップ12の数・配置等との関係に応じて、種々にレイアウトされ得る。
【0046】
図7は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第1の変形例を示す平面図である。同図に示す光検出装置1は、画素アレイ部11に対向する2つのロジックチップ12を備えている。このような光検出装置1においても、画素アレイ部11と各ロジックチップ12との間にはスペース領域Sを形成することができる。
【0047】
したがって、上記の例と同様に、ロジックチップ12表面での反射光の画素アレイ部11への入り込みによるフレアの発生を抑止するとともに、熱ストレスによる材料膜間の界面の剥離を防止することができる。
【0048】
図8は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第2の変形例を示す平面図である。同図に示す光検出装置1では、スペース領域Sが、画素アレイ部11に対向するロジックチップ12の第1の側面部分12aに加えて、第1の側面部分12aに直交する第2の側面部分12cに対応する領域を含むように形成されている。つまり、遮光部材14はロジックチップ12の上方から第1の側面部分12a及び第2の側面部分12cに塗布されることから、スペース領域Sは、該第2の側面に対応する領域を含むように形成されるようにレイアウトされる。このように、第2の側面部分12cに対応する領域は有機系樹脂材料膜111が除去されることにより、遮光部材14が形成された該領域での熱ストレスによる界面の剥離の発生が防止される。
【0049】
また、図9は、図8に示したスペース領域Sのレイアウトを2つのロジックチップ12に適用した第3の変形例を示している。すなわち、スペース領域Sは、各ロジックチップ12第1の側面部分12aに加えて、第1の側面部分12aに直交する第2の側面部分12cに対応する領域を含むように形成されている。
【0050】
図10は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第4の変形例を示す平面図である。同図に示す光検出装置1では、画素アレイ部11に対向する4つのロジックチップ12を備えている。本例では、隣接するロジックチップ12どうしの間の領域にも、スペース領域Sが連続的に形成されている。
【0051】
図11は、本技術の一実施形態に係る光検出装置の概略的構成の第5の変形例を示す平面図である。同図に示す光検出装置1では、各ロジックチップ12の第2の側面部分12cのうち外側の側面に対応する領域部分12c’を含むように形成されている。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、画素アレイ部11にスペース領域を挟んで載置されたロジックチップ12の遮光対象領域に塗布された遮光部材14は、有機系樹脂材料膜111が除去されたスペース領域Sを超えて画素アレイ部11の有機系樹脂材料膜111の縁部まで覆うように形成される。これにより、ロジックチップ12表面での反射光の画素アレイ部11への入り込みによるフレアの発生を抑止する。また、有機系樹脂材料膜111と遮光部材14との被り量は、0より大きく1/2以下としているため、熱ストレスによる材料膜間の界面の剥離を防止することができる。
【0053】
上記各実施形態は、本技術を説明するための例示であり、本技術をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本技術は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0054】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、技術の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0055】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本技術の要旨に含まれる。
【0056】
また、本技術は、以下のような技術的事項を含み構成されても良い。
(1)
複数の光電変換素子がアレイ状に配列された画素アレイ部を含む半導体基板と、
前記半導体基板上に、前記画素アレイ部とスペース領域を隔てて載置された少なくとも1つのロジックチップと、
前記画素アレイ部に近位する前記ロジックチップの遮光対象領域を少なくとも覆うように形成された遮光部材と、を備え、
前記画素アレイ部は、前記複数の光電変換素子の受光面上に形成された少なくとも1つの有機系樹脂材料膜を含み、
前記遮光部材は、前記ロジックチップの前記遮光対象領域から前記スペース領域を超えて前記画素アレイ部上に形成された前記有機系樹脂材料膜の縁部まで覆うように形成されている、
光検出装置。
(2)
前記遮光対象領域は、前記スペース領域に近位する前記ロジックチップの第1の側面部分を含む、
前記(1)に記載の光検出装置。
(3)
前記遮光対象領域は、前記スペース領域に近位する前記ロジックチップの上面縁部分を更に含む、
前記(2)に記載の光検出装置。
(4)
前記遮光対象領域は、前記第1の側面部分と直交する第2の側面部分における少なくとも前記スペース領域に近位する部分である、
前記(2)又は(3)に記載の光検出装置。
(5)
前記半導体基板上に形成された前記スペース領域は、前記有機系樹脂材料膜が除去された領域である、
前記(1)から(4)のいずれか一つに記載の光検出装置。
(6)
前記スペース領域は、シリコン窒化膜で覆われている、
前記(4)に記載の光検出装置。
(7)
前記スペース領域の表面は、凹凸形状部分を含む、
前記(1)から(6)のいずれか一つに記載の光検出装置。
(8)
前記有機系樹脂材料膜は、カラーフィルタ及びオンチップレンズの少なくともいずれかを含む、
前記(1)から(7)のいずれか一つに記載の光検出装置。
(9)
前記画素アレイ部上に形成された前記有機系樹脂材料膜の前記縁部において、前記縁部に沿って形成された、前記遮光部材の流入を堰き止めるための少なくとも1つのダム部を有する、
前記(1)から(8)のいずれか一つに記載の光検出装置。
(10)
前記遮光部材は、前記ロジックチップの表面の光の反射率よりも低い反射率を有する樹脂材料からなる、
前記(1)から(9)のいずれか一つに記載の光検出装置。
(11)
前記ロジックチップは、前記半導体基板上にバンプ電極を介して載置されるとともに、前記半導体基板と前記ロジックチップとの間に注入されたアンダーフィル部材により固定される、
前記(1)から(10)のいずれか一つに記載の光検出装置。
(12)
前記遮光部材は、前記スペース領域にはみ出た前記アンダーフィル部材を覆っている、
前記(10)に記載の光検出装置。
(13)
前記ロジックチップの前記遮光対象領域側の前記スペース領域の一端部から前記有機系樹脂材料膜上の前記縁部を覆う前記遮光部材の裾部分までの前記遮光部材の幅に対する前記有機系樹脂材料膜上の前記縁部を覆う前記遮光部材の幅の比は、0より大きく1/2以下である、
前記(1)から(12)のいずれか一つに記載の光検出装置
【符号の説明】
【0057】
1…光検出装置
10…半導体基板
101…配線層
102…シリコン窒化膜
11…画素アレイ部
111…有機系樹脂材料膜
111a…平坦化膜
111b…カラーフィルタ
111c…オンチップレンズ
112…酸化膜
12…ロジックチップ
12a…第1の側面部分
12b…上面部分
12c…第2の側面部分
13…外部パッド電極
14…遮光部材
15…ダム部
16…バンプ電極
17…パッド電極
18…アンダーフィル部材
S…スペース領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11