(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164780
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】水産養殖動物に対する昆虫またはその幼虫の誘引効果を向上させるための処理剤およびその方法
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20241120BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20241120BHJP
A23K 50/80 20160101ALI20241120BHJP
【FI】
A01K67/033 502
A01K67/033 503
A23K10/20
A23K50/80
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123439
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】202310544510.4
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523287791
【氏名又は名称】ペティデア・キャピタル・インベストメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄志堅
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005GA01
2B005GA02
2B005GA06
2B005GA07
2B005HA01
2B005HA02
2B005JA01
2B005MA03
2B005MA05
2B005NA03
2B005NA12
2B150AA07
2B150AA08
2B150AB04
2B150CD34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水産養殖動物に対する昆虫またはその幼虫の誘引性を向上させるための処理剤およびその方法を提供する。
【解決手段】処理剤は、硝酸塩および亜硝酸塩のうち少なくとも1種と、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、茶ポリフェノールおよびナイアシンアミドのうち少なくとも1種とを含む。処理方法は、昆虫またはその幼虫を洗浄し、前記処理剤の溶液に浸漬し、取り出して水切りする。
【効果】本発明の処理方法は、低コストで操作が容易で、栄養素が完全に保存され、昆虫内の病原体を殺菌し、昆虫のヘモグロビンを固定して酸化腐敗しにくくし、また、昆虫またはその幼虫の本来の色を変えることにより、水産飼料としての誘食性および嗜好性を向上させることができ、広く利用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸塩および亜硝酸塩のうち少なくとも1種と、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、茶ポリフェノールおよびナイアシンアミドのうち少なくとも1種とを含むことを特徴とする昆虫またはその幼虫用の処理剤。
【請求項2】
重量百分率で、前記処理剤は、硝酸塩および/または亜硝酸塩それぞれ4~20%、およびアスコルビン酸、イソアスコルビン酸、茶ポリフェノールまたはナイアシンアミド10~40%を含むことを特徴とする請求項1に記載の処理剤。
【請求項3】
前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムのうち少なくとも1種から選ばれ、前記亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムのうち少なくとも1種から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の処理剤。
【請求項4】
前記昆虫またはその幼虫は、ヘモグロビンを含む昆虫またはその幼虫であり、前記ヘモグロビンを含む昆虫またはその幼虫は、ユスリカ幼虫、ミミズ、イトミミズ、イエバエ幼虫、沙蚕を含むことを特徴とする請求項1に記載の処理剤。
【請求項5】
昆虫またはその幼虫を洗浄するステップS1と、
洗浄後の昆虫を請求項1~4のいずれか1項に記載の処理剤溶液に浸漬し、取り出して水切りするステップS2と、を含む昆虫またはその幼虫の処理方法。
【請求項6】
前記ステップS2での処理剤溶液の浸漬時間は0.5~16時間であることを特徴とする請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
前記処理方法は、さらに以下の手順を含む:処理剤溶液に浸漬後の昆虫またはその幼虫を栄養液に浸漬し、栄養液に浸漬する時間は0.5~3時間であることを特徴とする請求項5に記載の処理方法。
【請求項8】
重量百分率で、前記栄養液は、ビタミン複合体5~15%、微量元素複合体0.5~3%を含むことを特徴とする請求項7に記載の処理方法。
【請求項9】
前記栄養液中のビタミン複合体は、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEの1種または複数種を含み、微量元素複合体は、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、マンガン、銅、鉄、セレンの1種または複数種を含むことを特徴とする請求項8に記載の処理方法。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか1項に記載の処理方法で得られた昆虫またはその幼虫の、水産飼料の製造における使用であって、前記水産飼料は、釣り餌、魚の飼料、エビの飼料、カニの飼料、亀の飼料を含むことを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物飼料の技術分野に属し、特に、水産養殖動物に対する昆虫またはその幼虫の誘引効果を向上させるための処理剤およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫には豊富なタンパク質や、繁殖方法が非常に簡単であることで知られている。昆虫は食物として、豊富なタンパク質、低脂肪量、多種多様なビタミンなどの栄養素を含み、さらに、新しいタンパク質資源として、多様な種類と持続的な発展の特徴を持っている。雑食性と肉食性の淡水魚にとって、昆虫は日常の摂食の一部であり、昆虫のタンパク質は魚粉とは異なる栄養価と香りを提供し、水産養殖動物の高品質タンパク質の源となる。
【0003】
収穫後の昆虫は従来、水で洗浄してから様々な方法で保存処理されている。関連技術において、昆虫の保存方法は主にオゾンや次亜塩素酸による消毒、殺菌剤の添加、乾燥、冷凍、発酵などがある。特許出願「動物摂食用昆虫の保存処理方法」(公開番号:CN109965154A)では、オゾン水、高温、マイクロ波を使用して昆虫を消毒し、冷凍保存すると記載されている。特許出願「食用サンプルおよび繁殖昆虫の低温高速パーシャルフリージング保存技術」(公開番号:CN109691615A)では、昆虫をパーシャルフリージング液で直接凍結することで保存すると記載されている。特許出願「プロバイオティクスを含む保存昆虫の製造方法」(公開番号:CN113273639A)では、バッシュ法およびプロバイオティクスの発酵液を使用して腐敗微生物の成長を抑制し、昆虫を保存する目的を達成すると記載されている。
【0004】
上記による昆虫処理方法にはそれぞれ利点と欠点がある。殺菌剤を使用することでコストを低減することができるが、多くは体表に作用し、腸内の泥や砂を完全に除去したことができない。オゾンや次亜塩素酸による消毒を使用すると、昆虫の体が黒くなり、タンパク質やアミノ酸の風味が悪化し、水産養殖動物の誘引性に影響を与えてしまう。乾燥させることで輸送コストを低減し、保存期間を延ばすことができるが、高温に晒されると栄養素が失われ、酸化がひどくて製品が黒くなり、製品の品質および見た目に影響を与え、昆虫の誘引性と嗜好性が低下してしまう。冷凍することで栄養素や活性物質を保持することができるが、殺菌処理が行われず直接に冷凍する場合は虫体に病原体が残りやすく、水産養殖動物の健康状態に影響を与え、コントロールしにくい経済的な損失を引き起こす。プロバイオティクスの発酵液における酸性物質を利用することで、腐敗微生物の成長を効果的に抑制することができるが、昆虫を適切な衛生基準に達するように他の殺菌手段と組み合わせる必要があり、高温殺菌を使用すると、昆虫の外観や風味に影響を与えることは避けられない。従って、昆虫の内部にある病原体を効果的に殺菌し、腸内の泥や砂を取り除き、昆虫の品質および見た目を確保し、水産養殖動物の誘引性と嗜好性の優位性を十分に引き出す処理技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】CN109965154A
【特許文献2】CN109691615A
【特許文献3】CN113273639A
【発明の概要】
【0006】
本発明は、少なくとも上記既存技術の技術問題のいずれかを解決することを目的とする。そのため、本発明の第1の側面では、昆虫またはその幼虫の体内に存在する病原体を効果的に殺菌し、昆虫またはその幼虫の品質および見た目を確保することができる昆虫またはその幼虫用の処理剤を提供する。
【0007】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は、硝酸塩および亜硝酸塩のうち少なくとも1種と、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、茶ポリフェノールおよびナイアシンアミドのうち少なくとも1種とを含む。
【0008】
本発明では、前記アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、茶ポリフェノール、およびナイアシンアミドは、エトキシキノリン、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、tert-ブチルヒドロキノン、ビタミンE、L-アスコルビル-6-パルミテート、ローズマリー抽出物、チオジプロピオン酸ジラウリル、甘草根抽出物、フィチン酸(イノシトール六リン酸)などの抗酸化剤に置き換えてもよい。
【0009】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤はさらに水を含む。
【0010】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は硝酸塩、亜硝酸塩、アスコルビン酸、および水を含む。
【0011】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は亜硝酸塩、イソアスコルビン酸、および水を含む。
【0012】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は亜硝酸塩、アスコルビン酸、および水を含む。
【0013】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は亜硝酸塩、茶ポリフェノール、および水を含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は亜硝酸塩、ナイアシンアミド、および水を含む。
【0015】
本発明の一部の実施形態では、重量百分率で、前記処理剤は、硝酸塩および/または亜硝酸塩それぞれ4~20%、およびアスコルビン酸、イソアスコルビン酸、茶ポリフェノールまたはナイアシンアミド10~40%を含む。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、前記処理剤は残量として水を含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態では、重量百分率で、前記処理剤は、硝酸塩5~20%および/または亜硝酸塩それぞれ4~15%、およびアスコルビン酸20~40%、イソアスコルビン酸25~40%、茶ポリフェノール10~20%、またはナイアシンアミド15~30%を含み、残りは水である。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、前記硝酸塩は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムのうち少なくとも1種から選ばれ、前記亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムのうち少なくとも1種から選ばれる。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、前記昆虫またはその幼虫は、ヘモグロビンを含む昆虫またはその幼虫であり、前記ヘモグロビンを含む昆虫またはその幼虫は、ユスリカ幼虫(Chironmidae larvae)、ミミズ(Lumbricus terrestris)、イトミミズ(Tubifex)、イエバエ幼虫(Muscomorpha)、沙蚕(Nereis succinea)を含む。
【0020】
本発明の第2の側面では、昆虫またはその幼虫の処理方法を提供し、前記処理方法は以下の手順を含む。
【0021】
ステップS1:昆虫またはその幼虫を洗浄する。
【0022】
ステップS2:洗浄された昆虫を本発明の第1の側面に係る処理剤溶液に浸漬し、取り出して水切りする。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、前記ステップS2での処理剤溶液の浸漬時間は0.5~16時間である。
【0024】
本発明の一部の実施形態では、前記処理方法は、さらに以下の手順を含む。ステップS3:処理剤溶液に浸漬後の昆虫またはその幼虫を栄養液に浸漬し、栄養液に浸漬する時間は0.5~3時間である。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、重量百分率で、前記ステップS3での栄養液は、ビタミン複合体5~15%、微量元素複合体0.5~3%を含む。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、前記栄養液中のビタミン複合体は、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEの1種または複数種を含み、微量元素複合体は、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、マンガン、銅、鉄、セレンの1種または複数種を含む。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、重量百分率で、前記ビタミン複合体は、ビタミンB1 0.1~0.5%、ビタミンB2 0.1~0.5%、ビタミンB3 0.4~0.8%、ビタミンB12 0.01~0.10%、ビタミンC 2~10%、ビタミンD 1~3%、ビタミンE 5~10%を含み、前記微量元素複合体は、カルシウム1~3%、ヨウ素0.01~0.03%、亜鉛0.5~2%、銅0.05~0.3%、コバルト0.001~0.003%、セレン0.00001~0.00002%を含む。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、前記ビタミン複合体と微量元素複合体は、残量として水を含む。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、前記ステップS3での栄養液に浸漬する時間は0.5~3時間である。
【0030】
本発明の一部の実施形態では、前記昆虫、処理剤溶液、および栄養液の重量比は、10~30:0.5~4:1~4である。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、前記昆虫、処理剤溶液、および栄養液の重量比は、10~20:1:1~2である。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、前記処理方法で得られた昆虫またはその幼虫はさらに、低温冷凍、乾燥、凍結乾燥、発酵を含むがこれらに限定されない加工を行ってもよい。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、前記低温冷凍の温度は-20~-40℃である。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、前記低温冷凍の時間は20~40分である。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、前記凍結乾燥は真空中で行う。
【0036】
本発明の一部の実施形態では、前記凍結乾燥の温度は-20~-30℃である。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、前記凍結乾燥の時間は15~25時間である。
【0038】
本発明の第三の側面は、第二の側面に係る処理方法で得られた昆虫またはその幼虫の、水産飼料の製造における使用を提供し、前記水産飼料は釣り餌、魚の飼料、エビの飼料、カニの飼料、亀の飼料を含む。
【0039】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
【0040】
1.本発明で調製された処理剤溶液は、生体昆虫に浸漬する間、昆虫が生きている状態で処理剤をゆっくりと腸内に吸収し、腸内の泥や砂を排出するのに十分な時間がある。その中に、硝酸塩および/または亜硝酸塩は、昆虫のヘモグロビンと結合してニトロシルヘモグロビンを形成し、さらに抗菌作用を持って昆虫内の病原体を効果的に殺菌することができる。また、本発明で調製された処理剤溶液におけるアスコルビン酸またはイソアスコルビン酸などの抗酸化剤の作用により、硝酸塩および/または亜硝酸塩の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンが一酸化窒素に還元され、昆虫体内のヘモグロビンの三価鉄が二価鉄に還元される。昆虫体内の酸欠環境において、二価鉄と結合したヘモグロビンはニトロソ第一鉄ヘモグロビンを形成し、昆虫体内のヘモグロビン中の鉄がより安定になり、褐変しにくくなる。処理後の虫体は赤紫色になり、天然の赤色よりも水産養殖動物の誘引効果が高くなる。
【0041】
2.本発明の処理方法は、昆虫体内のヘモグロビンを、安定して鮮明で赤紫色のニトロソ第一鉄ヘモグロビンに変え、昆虫の虫体の色を赤紫色にすることができる。こんな色は、水産養殖動物にとってより良い誘引効果があり、水産養殖動物への誘引性と嗜好性を向上させる。
【0042】
3.本発明で提供される処理方法は、低コストで操作が容易で、得られた昆虫またはその幼虫の製品中の栄養素が完全に保存され、酸化腐敗や微生物の成長による異臭が発生しにくい。また、昆虫の色を変えて、昆虫の本来の風味を大きく維持することで、魚類、エビ類、カニ類、亀類などの水産養殖動物に発見されて摂食されやすくなり、水産養殖動物への誘引性に優れ、水産飼料の製造などにおいて広大な応用可能性を持っている。
【0043】
以下に、図面と実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係る昆虫またはその幼虫の処理方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例1および比較例1~3で得られた半製品を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1および比較例1~3で得られた冷凍品を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1および比較例1~3で得られた凍結乾燥品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下は、本発明の目的、特徴および効果を十分に理解させるために、実施例に基づいて、本発明の概念と技術効果を明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を必要とせずに得られるその他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0046】
本発明は、昆虫またはその幼虫の処理方法を提供する。
図1は、本発明に係る昆虫またはその幼虫の処理方法の主要な手順を示す。
【0047】
本発明の実施例では、前記室温はすべて25℃である。
【0048】
本発明の実施例では、重量百分率で、前記ビタミン複合体は、ビタミンB1 0.3%、ビタミンB2 0.25%、ビタミンB3 0.7%、ビタミンB12 0.08%、ビタミンC 5%、ビタミンD 2%、ビタミンE 10%を含み、残りは水である。前記微量元素複合体は、カルシウム 2.5%、ヨウ素 0.02%、亜鉛 1%、銅 0.15%、コバルト 0.002%、セレン 0.00001%を含み、残りは水である。前記ビタミン複合体と微量元素複合体は、いずれも広東美瑞科海洋生物科技有限公司から購入した。
【0049】
本発明の実施例で使用される実験材料および試薬は、特に記載がない限り、いずれも商業ルートから入手可能な一般消耗品および試薬である。
【0050】
実施例1
【0051】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0052】
(1)100kgのユスリカ(または赤虫とも呼ばれる。本発明で言及される赤虫とユスリカは同一である)を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0053】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、硝酸カリウム5%、亜硝酸ナトリウム5%、アスコルビン酸20%、水70%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に12時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0054】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体10%、微量元素1%、水89%である。処理剤に浸漬した赤虫を栄養液にさらに1.5時間浸漬してから水切りし半製品として、当該半製品を次の異なる手順でそれぞれ処理した。
【0055】
(a)-30℃で30分間急速冷凍後に包装し、冷凍品とした。(b)真空凍結乾燥であって、真空中で-25℃まで冷却し、20時間乾燥させて凍結乾燥品とした。
【0056】
実施例2
【0057】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0058】
(1)100kgのミミズを清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0059】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸ナトリウム15%、イソアスコルビン酸25%、水60%である。洗浄後のミミズを室温の処理剤溶液に12時間浸漬した後、ミミズを取り出した。
【0060】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体5%、微量元素1%、水94%である。処理剤に浸漬したミミズを栄養液にさらに0.5時間浸漬してから水切りし、処理後のミミズを急速冷凍して包装した。
【0061】
実施例3
【0062】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0063】
(1)100kgのイトミミズを清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0064】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、硝酸カリウム15%、亜硝酸ナトリウム5%、アスコルビン酸20%、水60%である。洗浄後のイトミミズを室温の処理剤溶液に16時間浸漬した後、イトミミズを取り出した。
【0065】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体5%、微量元素3%、水92%である。処理剤に浸漬したイトミミズを栄養液にさらに2時間浸漬してから水切りし、処理後のイトミミズを急速冷凍して包装した。
【0066】
実施例4
【0067】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0068】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0069】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸ナトリウム15%、アスコルビン酸20%、水65%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に16時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0070】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体12%、微量元素1%、水87%である。処理剤に浸漬した赤虫を栄養液にさらに3時間浸漬してから水切りし、処理後の赤虫を急速冷凍し、凍結乾燥して包装した。
【0071】
実施例5
【0072】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0073】
(1)100kgのイトミミズを清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0074】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸カリウム4%、イソアスコルビン酸40%、水56%である。洗浄後のイトミミズを室温の処理剤溶液に3時間浸漬した後、イトミミズを取り出した。
【0075】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体8%、微量元素0.5%、水91.5%である。処理剤に浸漬したイトミミズを栄養液にさらに0.5時間浸漬してから水切りし、処理後のイトミミズを急速冷凍し、凍結乾燥して包装した。
【0076】
実施例6
【0077】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0078】
(1)100kgのイエバエ幼虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0079】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、硝酸ナトリウム20%、アスコルビン酸40%、水40%である。洗浄後のイエバエ幼虫を室温の処理剤溶液に0.5時間浸漬した後、イエバエ幼虫を取り出した。
【0080】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体5%、微量元素2%、水93%である。処理剤中で浸漬したイエバエ幼虫を栄養液にさらに0.5時間浸漬してから水切りし、処理後のイエバエ幼虫を急速冷凍し、凍結乾燥して包装した。
【0081】
実施例7
【0082】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0083】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0084】
(2)処理剤溶液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸カリウム20%、アスコルビン酸30%、水50%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に15時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0085】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体8%、微量元素2%、水90%である。処理剤に浸漬した赤虫を栄養液にさらに3時間浸漬してから水切りし、処理後の赤虫をミキサーで均質化し、均質化後の赤虫の総重量の1%の植物性乳酸菌発酵液を加え、室温で5日間発酵させた。
【0086】
実施例8
【0087】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0088】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0089】
(2)処理剤溶液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸ナトリウム12%、茶ポリフェノール10%、水78%である。洗浄後のイトミミズを室温の処理剤溶液に14時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0090】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体6%、微量元素1%、水93%である。処理剤に浸漬した赤虫を栄養液にさらに1時間浸漬してから水切りし、処理後の赤虫を急速冷凍して包装した。
【0091】
実施例9
【0092】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0093】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0094】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸ナトリウム8%、茶ポリフェノール20%、水72%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に10時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0095】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体15%、微量元素1%、水84%である。処理剤に浸漬した赤虫を栄養液にさらに1時間浸漬してから水切りし、処理後の赤虫を急速冷凍して、凍結乾燥して包装した。
【0096】
実施例10
【0097】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0098】
(1)100kgの沙蚕を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0099】
(2)処理剤溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸カリウム6%、ナイアシンアミド15%、水79%である。洗浄後の沙蚕を室温の処理剤溶液に8時間浸漬した後、沙蚕を取り出した。
【0100】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体10%、微量元素2%、水88%である。処理剤に浸漬した沙蚕を栄養液にさらに0.5時間浸漬してから水切りし、処理後の沙蚕を急速冷凍して包装した。
【0101】
実施例11
【0102】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0103】
(1)100kgの沙蚕を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0104】
(2)処理剤溶液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸カリウム8%、ナイアシンアミド30%、水62%である。洗浄後の沙蚕を室温の処理剤溶液に8時間浸漬した後、沙蚕を取り出した。
【0105】
(3)栄養液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、ビタミン複合体10%、微量元素2%、水88%である。処理剤に浸漬した沙蚕を栄養液にさらに0.5時間浸漬してから、処理後の沙蚕を急速冷凍した後、凍結乾燥して包装した。
【0106】
実施例12
【0107】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0108】
(1)100kgの沙蚕を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0109】
(2)処理剤溶液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸カリウム10%、アスコルビン酸25%、水65%である。洗浄後の沙蚕を室温の処理剤溶液に12時間浸漬した後、沙蚕を取り出し、処理後の沙蚕を急速冷凍した後、凍結乾燥して包装した。
【0110】
実施例13
【0111】
本実施例は、昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0112】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0113】
(2)処理剤溶液を10kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、亜硝酸カリウム20%、アスコルビン酸20%、水60%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に16時間浸漬した後、赤虫を取り出し、処理後の赤虫を急速冷凍した後、凍結乾燥して包装した。
【0114】
比較例1
【0115】
この比較例は、現在市販の昆虫またはその幼虫、あるいは伝統的な昆虫またはその幼虫の処理方法の具体的な過程であり、処理手順は次のとおりである。
【0116】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去し、半製品とした。
【0117】
(2)当該半製品を次の異なる後処理でそれぞれ処理した。(a)-30℃で30分間急速冷凍後に包装し、冷凍品とした。(b)真空凍結乾燥であって、真空中で-25℃まで冷却し、20時間乾燥させて凍結乾燥品とした。
【0118】
比較例2
【0119】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0120】
(2)5kgのアスコルビン酸溶液を調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、アスコルビン酸20%、水80%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に12時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0121】
(3)処理剤に浸漬した赤虫を水切りし、半製品とした。処理後の赤虫を次の異なる後処理でそれぞれ処理した。(a)-30℃で30分間急速冷凍後に包装し、冷凍品とした。(b)真空凍結乾燥であって、真空中で-25℃まで冷却し、20時間乾燥させて凍結乾燥品とした。
【0122】
比較例3
【0123】
(1)100kgの赤虫を清水で洗い、表面の不純物を除去した。
【0124】
(2)硝酸塩溶液を5kg調製し、重量百分率で異なる成分を秤量した。具体的には、硝酸カリウム5%、亜硝酸ナトリウム5%、水90%である。洗浄後の赤虫を室温の処理剤溶液に12時間浸漬した後、赤虫を取り出した。
【0125】
(3)処理剤に浸漬した赤虫を水切りし、半製品とした。当該半製品を次の異なる手順でそれぞれ処理した。(a)-30℃で30分間急速冷凍後に包装し、冷凍品とした。(b)真空凍結乾燥であって、真空中で-25℃まで冷却し、20時間乾燥させて凍結乾燥品とした。
【0126】
実施例と比較例による効果の比較検証
【0127】
本発明の実施例1の処理方法と比較例1~3の処理方法によって得られた昆虫サンプルの半製品および製品の見た目や色合い、ニトロソヘモグロビン生成効果、抗菌性および保存耐性、釣り餌としての誘引性、水産飼料としての誘引性などの効果を比較した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0128】
1.見た目や色合い評価
【0129】
前記実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のそれぞれの対応する処理方法を経た半製品、冷凍品および凍結乾燥品を、同じ観察視野で肉眼で比較し、撮影写真で記録した(
図2~
図4参照)。その中に、冷凍品を実施例1-1、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1とし、凍結乾燥品を実施例1-2、比較例1-2、比較例2-2、比較例3-2とした。
【0130】
図2~
図4から、実施例1で得られた赤虫の製品の色がより安定して鮮やかで、比較例1~3で得られた赤虫の製品よりも見た目が優れていることが分かる。
【0131】
2.ニトロソヘモグロビン生成効果の評価
【0132】
(1)製品のニトロソヘモグロビン含有量の測定
【0133】
アセトン法により、前記実施例1と比較例1~3の半製品、冷凍品および凍結乾燥品各25gを取って試験サンプルとし、それぞれ225mlの生理食塩水が添加された無菌均質カップに入れ、8000r/minのミキサーで2分間均質化した。均質化したサンプル溶液をろ過し、ろ液を凍結乾燥後、共栓試験管に移し、体積分率80%のアセトン溶液で溶解し、ニトロソヘモクロモーゲンが完全に抽出されるまで、室温で遮光して一定時間静置した。ろ液を取り、質量濃度80%のアセトン溶液をブランクとし、540nm波長での試験サンプルの吸光度を紫外分光光度計で測定し、結果を表1に示す。
【0134】
(2)試験結果
【0135】
【0136】
結果は、本発明の処理方法で高濃度のニトロソヘモグロビンを含む昆虫およびその幼虫の製品を得ることができ、虫体の色が鮮やかな赤色になり、製品の見た目がよく、より良い誘引効果が得られることを示す。
【0137】
3.抑菌および耐保存評価
【0138】
(1)試験サンプルの準備
【0139】
実施例1、比較例1~3の半製品をランダムに50g取り、室温で6時間、12時間、1日、3日、5日、7日放置し、それぞれ総菌数を測定して抗菌性を評価した。また、ランダムに50g取り、特定の保存条件(半製品と冷凍品は-20℃、凍結乾燥品は室温)で3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月保存し、揮発性塩基窒素とニトロソヘモグロビンの含量を測定して耐保存性を評価した。
【0140】
(2)製品の総菌数測定
【0141】
上記室温で保存の試験サンプルをそれぞれ25g取り、それぞれ225mlの生理食塩水が添加された無菌均質カップに入れ、8000r/minのミキサーで2分間均質化した。10倍の段階希釈を行った後、1mlの均一液体となるサンプルを無菌プレートに吸着し(プレートカウント寒天(Plate Count Agar)培地の調製:トリプトン5.0g、酵母エキス2.5g、グルコース1.0g、寒天15.0gを秤量し、蒸留水1000mlを加えて、煮沸して溶解させ、pHを7.0±0.2に調整した後、121℃で15分間高圧滅菌を行った)、均一に塗布し、37℃±1℃で48時間培養し、プレートのコロニー数を数え、結果は表2に示す。
【0142】
(3)製品の揮発性塩基窒素測定
【0143】
上記特定保存条件下に保存された試験サンプルを粉砕し、十分に混合した後、磨口瓶に詰めて予備とする。10gのサンプルを取り250mlの共栓三角フラスコに入れ、蒸留水100mlを加え、30分間振とう撹拌した。質量濃度2%のホウ酸溶液を20ml取り、150ml三角フラスコ中に入れ、混合指示薬(メチルレッドの質量濃度0.1%のエタノール溶液とブロモクレゾールグリーンの質量濃度0.5%のエタノール溶液とを等体積混合したもの)を2滴加え、半微量蒸留装置の冷却管端をこの溶液に浸漬した。蒸留装置の蒸気発生器の水に、指示薬であるメチルレッドと0.01mol/Lの硫酸溶液を2滴加え、この溶液の色をオレンジレッドに保った。正確に10mlのサンプル液を蒸留装置の反応室に注入し、少量の蒸留水でサンプル入口を洗浄した後、質量濃度1.0%の酸化マグネシウム懸濁液を10ml加えた。入口に水で密封して漏気を防止し、4分間蒸留し、冷却管端を吸収液面から離し、さらに1分間蒸留して、蒸留水で冷却管端を洗浄し、洗浄液を吸収液に流し込んだ。アンモニアを吸収した吸収液は、0.01mol/Lの塩酸標準溶液ですぐに滴定し、溶液が青緑色からグレーレッドに変わるまで滴定した。同時に試薬のブランク測定を行い、結果は表3に示す。また、別途の対応するサンプルをそれぞれ25g取り、本実施例のニトロソヘモグロビン含量測定手順のアセトン法に従って、異なる保存時間の試験サンプルの吸光度を測定し、結果を表4に示す。
【0144】
試験サンプルの揮発性塩基窒素含量ω(mg/g)は、以下の式で計算される。
【0145】
【0146】
上式中、V1は、測定に使用されるサンプル液が消費した塩酸標準溶液の体積(単位はmL)を表す。
【0147】
V2は、試薬のブランクが消費した塩酸標準溶液の体積(単位はmL)を表す。
Cは、塩酸標準溶液の実際濃度(単位はmol/L)を表す。
mは、サンプルの重量(単位はg)を表す。
【0148】
(4)試験結果
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
結果は、本発明の処理剤と方法がよい抗菌効果と保存耐性を持つことを示す。特に、表2から、実施例の赤虫製品が同じ保存条件下で雑菌の成長を効果的に抑制できることがわかる。一方、表3の揮発性塩基窒素は、動物性食品が腐敗の過程で酵素と細菌の作用によってタンパク質が分解され、アンモニアやアミン類などの塩基性の窒素を含む物質が生成されることを指す。このような物質は揮発性があり、含有量が高いほど、アミノ酸、特に、メチオニンやチロシンが破壊される量が多いことを示し、そのため、栄養価値が大きく低下してしまう。表3から、実施例1の赤虫製品の揮発性塩基窒素の含有量が比較例1~3のものよりも低いことがわかる。また、表4から、処理剤を施していない比較例1のサンプルのニトロソヘモグロビン含有量が3ヶ月の保存後に大幅に低下し、比較例2および比較例3のニトロソヘモグロビン含有量が12ヶ月後にも著しく低下していることがわかる。一方、実施例1のサンプルは、36ヶ月間持続的に高いニトロソヘモグロビン含有量を維持できる。測定結果から、本発明の処理剤と方法が、細菌の成長を効果的に抑制し、昆虫またはその幼虫内のタンパク質分解を防止し、昆虫内のニトロソヘモグロビン含有量を長時間保持することができ、昆虫の品質や見た目を確保することができることが示される。
【0153】
3.処理で得られた昆虫の釣り餌としての誘引効果評価
【0154】
(1)実験に使用する魚と飼育の管理
【0155】
平均体重87.3±4.7gの30匹のシクリッドを、室内のガラス水槽(長さ120cm×幅30cm×高さ70cm)に飼育し、基礎飼料を与え、具体的には毎日魚の体重の2%で飼料を与え、15日後に試験を行った。水槽には循環ろ過器と加熱装置が設置され、有効な水の容量は200リットルである。試験期間中、十分に換気された水道水を水源として使用し、水温を21±1℃に保ち、持続的に酸素を供給し、1日に1回、約1/3程度水を交換しました。
【0156】
(2)釣り餌の処理
【0157】
実施例1の半製品(実施例1-1)、冷凍品(実施例1-2)、凍結乾燥品(実施例1-3)から作られた赤虫を各10匹で釣り餌とし、試験グループとした。比較例1、比較例2、比較例3の半製品(比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1)、冷凍品(比較例1-2、比較例2-2、比較例3-2)、凍結乾燥品(比較例1-3、比較例2-3、比較例3-3)から作られた赤虫を各10匹で釣り餌とし、それぞれ対照グループ1、対照グループ2、対照グループ3とした。釣り餌は合計12グループでそれぞれ綿糸で縛り、長さ120cmの水槽に10cmの間隔で均等に配置し、幅の真ん中に位置させ、水面下の深さ25cmに餌を置いた。
【0158】
(3)誘引効果の評価方法
【0159】
試験魚が12グループの釣り餌を啄む回数を15分間観察して記録し、1日おきに実験を行い、5回繰り返し、データは5回の平均値±標準偏差で表す。啄む回数から釣り餌のシクリッドへの誘引効果を判断し、結果は表5に示す。
【0160】
実施例1の半製品、冷凍品、凍結乾燥品は、それぞれ比較例1の半製品、冷凍品、凍結乾燥品に対応し、1匹のシクリッドを1枚の透明な仕切板で水槽の片側に隔て、摂食したサンプルの優先順位を観察して記録し、各グループで30匹のシクリッドの釣り餌を啄む回数を記録した。試験は1日おきに行い、5回繰り返し、データは5回の平均値±標準偏差で表す。結果は表6に示す。
【0161】
(4)試験結果
【0162】
【0163】
【0164】
結果によれば、実施例1で得られた赤虫は釣り餌として優れた誘引効果を持ち、試験中、シクリッドが実施例1で得られた赤虫を啄む回数は比較例1~3で得られた赤虫よりも高かった。比較例1に比べて、実施例1で得られた赤虫の優先摂食回数が高く、シクリッドは実施例1の赤虫製品を優先的に摂食する傾向があり、このことから、当該サンプルは色合いが鮮やかで、魚に対する誘引効果が大きいことが示される。この処理方法で得られた製品は保存耐性が高く、優れた誘引効果があり、魚の餌として広範な利用可能性がある。
【0165】
4.処理で得られた昆虫の水産飼料としての誘引効果評価
【0166】
(1)実験に使用する魚と飼育の管理
【0167】
前記釣り餌の誘引性評価における実験に使用する魚と飼育の管理を参照する。
【0168】
(2)誘引効果評価
【0169】
自由摂食方法を採用して、前記釣り餌の誘引性評価の分類を参照して、投与する餌の処理方法を変え、すなわち、対応する赤虫を飼料として直接投与し、各クループに過剰の飼料100gずつ投与した。誘引効果は、30分間(この時点でまだ飼料が残っている)の誘引指数の平均値で表される。試験は1日おきに行い、5回繰り返し、データは5回の平均値±標準偏差で表す。結果は表7に示す。
【0170】
誘引指数の計算式は次のとおりである(凍結乾燥品の場合は、残った飼料を計量する前に乾燥する必要がある)。
誘引指数=1-残りの飼料の重量/投与した飼料の重量
【0171】
(3)試験結果
【0172】
【0173】
結果によれば、実施例1で得られた赤虫は、水産飼料としての摂食量が他の比較例よりも明らかに高く、誘引指数も比較例1~3で得られた赤虫よりも高い。この処理方法で得られた製品は保存耐性に優れ、嗜好性や誘引性も良好であり、水産飼料として広範な利用可能性がある。
【0174】
以上の試験結果から、本技術方法で処理された昆虫製品は、鮮やかな色合い、抗菌効果に優れ、高い誘引性、高い嗜好性などの利点を持ち、水産飼料の分野で広範な利用可能性を持っている。
【0175】
以上は図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されず、当業者の知識範囲内で本発明の趣旨を逸脱せずに様々な変更を加えることができる。また、相互に矛盾しない限り、本発明の実施例および実施例における特徴を相互に組み合わせることができる。