(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164789
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】応力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/1623 20200101AFI20241120BHJP
G01L 1/20 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G01L5/1623
G01L1/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194393
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2023080384
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】早坂 哲
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB07
2F051BA07
2F051DA03
(57)【要約】
【課題】配線の設計が簡単であり、圧力及びせん断応力が検出可能な応力センサを提供す
る。
【解決手段】第1基材には所定方向の一端に配置される第1小電極に接続される共通配線と、所定方向の他端に配置される第1小電極に接続される信号配線と、所定方向の両端に配置される第1小電極以外の第1小電極のうち、隣接する2個の第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線と、が設けられ、第2基材には隣接する2個の第2小電極を接続するn/2本の第2接続配線が設けられ、共通配線に接続される共通電極及び信号配線に接続される検出電極のいずれもが第1基材の一方面に設けられている、応力センサ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、
第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材の間に配置された複数の検知部と、
前記第1基材及び前記第2基材を接着し、複数の前記検知部を包含する検知領域を取り囲むように設けられた接着層と、を備え、
複数の前記検知部は、
前記第1基材の一方面に設けられる複数の第1検知部構成物と、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面に、前記第1検知部構成物のそれぞれに対向して設けられる複数の第2検知部構成物と、を備え、
複数の前記第1検知部構成物のそれぞれは、
前記第1基材の前記一方面に所定方向に間隔を空けて配列されるn個(ただし、nは正の偶数)の第1小電極と、
前記第1小電極のそれぞれに積層される第1小感圧層とを有し、
複数の前記第2検知部構成物のそれぞれは、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面に、対向する前記第1検知部構成物の前記第1小電極のそれぞれと対向するように配列されるn個の第2小電極と、
前記第2小電極のそれぞれに積層される第2小感圧層と、を有し、
前記第1基材には更に
前記所定方向の一端に配置される前記第1小電極に接続される共通配線と、
前記所定方向の他端に配置される前記第1小電極に接続される信号配線と、
前記所定方向の両端に配置される前記第1小電極以外の前記第1小電極のうち、隣接する2個の前記第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線と、が設けられ、
前記第2基材には更に、
隣接する2個の前記第2小電極を接続するn/2本の第2接続配線が設けられ、
前記共通配線に接続される共通電極及び前記信号配線に接続される検出電極のいずれもが前記第1基材の前記一方面に設けられている、応力センサ。
【請求項2】
第1基材と、
第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材の間に配置された複数の検知部と、
前記第1基材及び前記第2基材を接着し、複数の前記検知部を包含する検知領域を取り囲むように設けられた接着層と、を備え、
複数の前記検知部は、
前記第1基材の一方面に設けられる複数の第1検知部構成物と、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面に、前記第1検知部構成物のそれぞれに対向して設けられる複数の第2検知部構成物とを備え、
複数の前記第1検知部構成物のそれぞれは、
前記第1基材の前記一方面に所定方向に間隔を空けて配列されるn個(ただし、nは正の偶数)の第1小電極と、
前記第1小電極のそれぞれに積層される第1小感圧層と、を有し、
複数の前記第2検知部構成物のそれぞれは、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面に、対向する前記第1検知部構成物の隣接する一対の前記第1小電極に重なるn/2個の第2小電極と、
前記第2小電極のそれぞれに積層される第2小感圧層と、を有し、
前記第1基材には更に
前記所定方向の一端に配置される前記第1小電極に接続される共通配線と、
前記所定方向の他端に配置される前記第1小電極に接続される信号配線と、
前記所定方向の両端に配置される前記第1小電極以外の前記第1小電極のうち、隣接する2個の前記第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線とが設けられ、
前記共通配線に接続される共通電極及び前記信号配線に接続される検出電極のいずれもが前記第1基材の前記一方面に設けられている、応力センサ。
【請求項3】
前記検知部の数がmのとき、前記検知領域の幾何中心を通る任意の直線上に存在する前記検知部の数が、1以上(m-1)以下である、請求項1または2に記載の応力センサ。
【請求項4】
第1基材と、
第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材の間に配置された5つの検知部と、
前記第1基材及び前記第2基材を接着し、5つの前記検知部を包含する円形の検知領域を取り囲むように設けられた接着層と、を備え、
5つの前記検知部は、
前記第1基材の一方面に設けられる5つの第1検知部構成物と、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面に、前記第1検知部構成物のそれぞれに対向して設けられる5つの第2検知部構成物と、を備え、
5つの前記検知部のうち1つが前記検知領域の幾何中心に配置され、残りの4つの前記検知部が5つの前記検知部の前記1つの周囲に回転対称となるように配置され、
5つの前記第1検知部構成物のそれぞれは、
前記第1基材の前記一方面に間隔を空けて配列されるn個(ただし、nは正の偶数)の第1小電極と、
前記第1小電極のそれぞれに積層される第1小感圧層と、を有し、
複数の前記第2検知部構成物のそれぞれは、
前記第2基材の前記第1基材と対向する面に、対向する前記第1検知部構成物の前記第1小電極のそれぞれと対向するように配列されるn個の第2小電極と、
前記第2小電極のそれぞれに積層される第2小感圧層と、を有し、
前記幾何中心となる1つの前記検知部において、n個の前記第1小電極及び前記第2小電極は、前記幾何中心を通る任意の直線方向に間隔を空けて配列され、
前記4つの前記検知部のそれぞれにおいて、n個の前記第1小電極及び前記第2小電極は、前記検知領域の周方向に間隔を空けて配列され、
前記第1基材には更に
5つの前記第1検知部構成物のそれぞれにおいて、n個の前記第1小電極のうち、一端に配置される前記第1小電極に接続される共通配線と、
5つの前記第1検知部構成物のそれぞれにおいて、n個の前記第1小電極のうち、他端に配置される前記第1小電極に接続される信号配線と、
前記一端及び前記他端に配置される前記第1小電極以外の前記第1小電極のうち、隣接する2個の前記第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線と、が設けられ、
前記第2基材には更に、
隣接する2個の前記第2小電極を接続するn/2本の第2接続配線が設けられ、
前記共通配線に接続される共通電極及び前記信号配線に接続される検出電極のいずれもが前記第1基材の前記一方面に設けられている、応力センサ。
【請求項5】
前記接着層の形状が円環形状である、請求項1、2及び4のいずれかに記載の応力センサ。
【請求項6】
前記接着層の幾何中心が前記検知領域の幾何中心と一致する、請求項5に記載の応力センサ。
【請求項7】
前記第1基材の他方面に、平面視において前記検知領域を包含するように設けられる緩衝材を備える、請求項1、2及び4のいずれかに記載の応力センサ。
【請求項8】
前記検知部は、荷重に応じて抵抗値が変化し、前記第1検知部構成物と前記第2検知部構成物との間で生じる抵抗値を電圧に変換して出力する出力回路を備える、請求項1、2及び4のいずれかに記載の応力センサ。
【請求項9】
前記出力回路がブリッジ回路であり、
前記ブリッジ回路は、対向する前記第1検知部構成物及び前記第2検知部構成物における前記共通配線に接続される前記第1小電極と、前記信号配線に接続される前記第1小電極との間の合成した抵抗値を出力する、請求項8に記載の応力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力及びせん断応力を検出可能な応力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力やせん断応力を検出する応力センサとして、対向させた2つの電極の間に導電体層や樹脂層を挟み込んだ構造を有するものが知られている。この応力センサは、外力によって導電体層や樹脂層が変形することで電極間の物理量を変化させ、電極間の物理量変化に基づいて圧力やせん断力を検出することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、対向する2枚の基板間に、一対の導電体層と、導電体層のそれぞれを覆う一対の抵抗体層とを設け、力の入力で導電層が変形することにより電極間抵抗値が変化することを利用した抵抗膜式の応力センサが記載されている。
れている。
【0004】
また、特許文献2には、電極面積の変化により接触対象物から入力された荷重を、圧縮力、せん断力に分解する静電容量型の応力センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3664622号公報
【特許文献2】特許第5448423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な応力センサでは、対向する2枚の基板(上下基板)間に形成された電極間の抵抗値変化を、電極に接続された配線を介して計測する場合、電気信号を入力する配線と出力する配線は、別々の基板に形成される。しかし、入力配線と出力配線が上下別々の基板に形成されている場合、上基板の配線と下基板の配線との間の電気的なノイズを低減する必要があるため、配線構造が複雑になり、センサの小型化に不利な構造となる。また入力端子と出力端子が別々の基板に形成されることになるが、入力・出力端子と入出力装置の接続に例えばFPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)を用いる場合、入力端子が形成された基板と出力端子が形成された基板のそれぞれにFPCを接着する必要があるため、入出力装置との接続が複雑になりやすくなるという欠点がある。また、上下2枚の基板にFPCを接着する必要があるため、1枚の基板のみにFPCを接着する場合よりも、製造コストが高くなるという欠点がある。
【0007】
それ故に、本願発明は、配線構造が簡単であり、かつ、せん断力の検出精度に優れた応力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、第1基材と、第2基材と、第1基材及び第2基材の間に配置された複数の検知部と、第1基材及び第2基材を接着し、複数の検知部を包含する検知領域を取り囲むように設けられた接着層と、を備え、複数の検知部は、第1基材の一方面に設けられる複数の第1検知部構成物と、第2基材の第1基材と対向する面に、第1検知部構成物のそれぞれに対向して設けられる複数の第2検知部構成物と、を備え、複数の第1検知部構成物のそれぞれは、第1基材の一方面に所定方向に間隔を空けて配列されるn個(ただし、nは正の偶数)の第1小電極と、第1小電極のそれぞれに積層される第1小感圧層とを有し、複数の第2検知部構成物のそれぞれは、第2基材の第1基材と対向する面に、対向する第1検知部構成物の第1小電極のそれぞれと対向するように配列されるn個の第2小電極と、第2小電極のそれぞれに積層される第2小感圧層と、を有し、第1基材には更に所定方向の一端に配置される第1小電極に接続される共通配線と、所定方向の他端に配置される第1小電極に接続される信号配線と、所定方向の両端に配置される第1小電極以外の第1小電極のうち、隣接する2個の第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線と、が設けられ、第2基材には更に、隣接する2個の第2小電極を接続するn/2本の第2接続配線が設けられ、共通配線に接続される共通電極及び信号配線に接続される検出電極のいずれもが第1基材の一方面に設けられている、応力センサである。
【0009】
また、本発明の他の局面は、第1基材と、第2基材と、第1基材及び第2基材の間に配置された複数の検知部と、第1基材及び第2基材を接着し、複数の検知部を包含する検知領域を取り囲むように設けられた接着層と、を備え、複数の検知部は、第1基材の一方面に設けられる複数の第1検知部構成物と、第2基材の第1基材と対向する面に、第1検知部構成物のそれぞれに対向して設けられる複数の第2検知部構成物とを備え、複数の第1検知部構成物のそれぞれは、第1基材の一方面に所定方向に間隔を空けて配列されるn個(ただし、nは正の偶数)の第1小電極と、第1小電極のそれぞれに積層される第1小感圧層と、を有し、複数の第2検知部構成物のそれぞれは、第2基材の第1基材と対向する面に、対向する第1検知部構成物の隣接する一対の第1小電極に重なるn/2個の第2小電極と、第2小電極のそれぞれに積層される第2小感圧層と、を有し、第1基材には更に所定方向の一端に配置される第1小電極に接続される共通配線と、所定方向の他端に配置される第1小電極に接続される信号配線と、所定方向の両端に配置される第1小電極以外の第1小電極のうち、隣接する2個の第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線とが設けられ、共通配線に接続される共通電極及び信号配線に接続される検出電極のいずれもが第1基材の一方面に設けられている、応力センサである。
【0010】
また、本発明の他の局面は、第1基材と、第2基材と、第1基材及び第2基材の間に配置された5つの検知部と、第1基材及び第2基材を接着し、5つの検知部を包含する円形の検知領域を取り囲むように設けられた接着層と、を備え、5つの検知部は、第1基材の一方面に設けられる5つの第1検知部構成物と、第2基材の第1基材と対向する面に、第1検知部構成物のそれぞれに対向して設けられる5つの第2検知部構成物と、を備え、5つの検知部のうち1つが検知領域の幾何中心に配置され、残りの4つの検知部が5つの検知部の1つの周囲に回転対称となるように配置され、5つの第1検知部構成物のそれぞれは、第1基材の一方面に間隔を空けて配列されるn個(ただし、nは正の偶数)の第1小電極と、第1小電極のそれぞれに積層される第1小感圧層と、を有し、複数の第2検知部構成物のそれぞれは、第2基材の第1基材と対向する面に、対向する第1検知部構成物の第1小電極のそれぞれと対向するように配列されるn個の第2小電極と、第2小電極のそれぞれに積層される第2小感圧層と、を有し、幾何中心となる1つの検知部において、n個の第1小電極及び第2小電極は、幾何中心を通る任意の直線方向に間隔を空けて配列され、4つの検知部のそれぞれにおいて、n個の第1小電極及び第2小電極は、検知領域の周方向に間隔を空けて配列され、第1基材には更に5つの第1検知部構成物のそれぞれにおいて、n個の第1小電極のうち、一端に配置される第1小電極に接続される共通配線と、5つの第1検知部構成物のそれぞれにおいて、n個の第1小電極のうち、他端に配置される第1小電極に接続される信号配線と、一端及び他端に配置される第1小電極以外の第1小電極のうち、隣接する2個の第1小電極を接続する(n/2-1)本の第1接続配線と、が設けられ、第2基材には更に、隣接する2個の第2小電極を接続するn/2本の第2接続配線が設けられ、共通配線に接続される共通電極及び信号配線に接続される検出電極のいずれもが第1基材の一方面に設けられている、応力センサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配線構造が簡単であり、かつ、せん断力の検出精度に優れた応力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る応力センサの概略構成を示す模式図。
【
図5】圧力測定時における応力センサの部分断面図。
【
図6】せん断応力測定時における応力センサの断面図。
【
図7】n=4の場合の小電極及び配線の接続を説明する図。
【
図8】n=6の場合の小電極及び配線の接続を説明する図。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る応力センサの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。なお、実施形態に係る応力センサを構成する各構成物の形状や数は一例であり、本発明を限定するものではない。また、説明の簡単化のため、実寸法と異なる比で図を描いているが、本発明に係る技術の主旨を損なうものではない。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る応力センサの概略構成を示す模式図であり、より詳細には、
図1(a)は、応力センサの平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すA-A’線に沿う断面図である。
図2は、応力センサの第1基材側の部分模式図であり、より詳細には、
図2(a)は、応力センサの第1基材側の部分平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すB-B’線に沿う断面図である。
図3は、応力センサの第2基材側の部分模式図であり、より詳細には、
図3(a)は、応力センサの第2基材側の部分平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すC-C’線に沿う断面図である。
【0015】
応力センサ100は、基材に加えられた圧力及びせん断力(ずり力)を検出可能なセンサであり、第1基材1、第2基材2、第1基材1及び第2基材2の間に配置された複数の検知部30、及び、第1基材1及び第2基材2を接着する接着層5、第1基材1の一方面に設けられる共通配線3’及び信号配線4’、を備える。複数の検知部30は、第1基材1の一方面に設けられる複数の第1検知部構成物10と、第2基材2の第1基材1と対向する面に、第1検知部構成物10のそれぞれに対向して設けられる複数の第2検知部構成物20とを備える。応力センサ100において、圧力及びせん断力(ずり力)が印加された際に、当該応力を検出可能な検知領域Rは、全ての第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20を包含する最小円に相当し、
図1において二点鎖線で囲んで示す。
【0016】
第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20は、荷重に応じて抵抗値が変化する素子であり、応力センサ100は、第1検知部構成物10と第2検知部構成物20との間で生じる抵抗値を電圧に変換して出力するブリッジ回路等の出力回路を備える。第1基材1と第2基材2とは、複数の検知部30(第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20)を包含する検知領域Rを取り囲むように設けられた接着層5を介して接着されており、第1基材1には共通電極3と検出電極4が設けられる。また、第2基材2上に緩衝材6を備えてもよい。なお、圧力とは、センサ面に対して垂直方向の力成分を示し、せん断力とは基材の面方向の力成分を示す。
【0017】
(基材)
第1基材1上には、第1検知部構成物10(第1小電極10a、第1小感圧層10b)、共通配線3’、信号配線4’、共通電極3、及び検出電極4が設けられる。第2基材2上には、第2検知部構成物20(第2小電極20a、第2小感圧層20b)が設けられる。基材(第1基材1及び第2基材2)は、それぞれの表面にセンサ素子、共通電極3、及び検出電極4を形成可能な基材であれば材料は特に限定されないが、可撓性を有するシート状の部材であることが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、セロファンなどのプラスチックフィルムや、シリコーンゴムのジメチルポリシロキサンや、クリーンペーパー、コート紙、カレンダー紙などの加工紙などを使用することができる。また、応力センサ100の生体への使用を考慮する場合、基材の材料として、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等のホモポリマーまたは共重合体からなるポリエステル、アクリル樹脂、シリコーン、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、スチレン・ブタジエン系エラストマーなどを使用することができる。さらに、センシングしたい圧力に応じて、圧力バッファとしてゴムなどの弾性体を用いてもよい。導電性の基材を用いる場合はセンサや信号線、電極への影響がないように表面を絶縁性の材料でコーティングすることが望ましい。また、可撓性を有するフレキシブルな基材だけではなく実質的に曲がらないフラットな基材を使用してもよく、応力センサ100の用途等に応じて適宜選択できる。また、基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、未延伸基材及び延伸基材のいずれであってもよい。機械的強度及び寸法安定性を考慮した場合には、一軸延伸基材及び二軸延伸基材などの延伸基材、特には二軸延伸基材を使用することが好ましい。
【0018】
第1基材1及び第2基材2の厚さに特に制限はないが、薄型化の観点から薄い方が好ましい一方で、基材として十分な強度を達成し得る厚さを有している必要がある。基材の厚さは、例えば6μm以上200μm以下が好ましい。また、
図1に記載されるように本実施形態においては基材の平面視形状を四角形としているが、平面視の形状はこれに限定されず、三角形や円形など、センサを設置する場所などに合わせた形状を適宜選択できる。ただし、量産性を考慮した場合、基材は長尺物であることが好ましい。また、第1基材1及び第2基材2の各材料や厚さは同一でなくてもよい。
【0019】
(検知部構成物)
第1検知部構成物10は、第1基材1の一方面(第2基材2と対向する面)上に複数設けられる。第1検知部構成物10のそれぞれは、第1小電極10a及び第1小感圧層10bを有する。第2検知部構成物20は、第2基材2の第1基材1の一方面と対向する面に、第1検知部構成物10のそれぞれに対向して設けられる。第2検知部構成物20のそれぞれは、第2小電極20a、及び第2小感圧層20bを有する。
【0020】
本実施形態において、第1検知部構成物10(第1小電極10a及び第1小感圧層10b)は、第1基材1の一方面(第2基材2と対向する面)上に5つ設けられており、
図1(a)に示すように、1つの第1検知部構成物10(検知部構成物O)が検知領域Rの幾何中心に配置され、他の4つの第1検知部構成物10が4回対称となるように配置される。第1検知部構成物10は、第1基材1側から順に第1小電極10aと、第1小電極10a上に積層された第1小感圧層10bとを有する。第2検知部構成物20は、第2基材2の一方面(第1基材1と対向する面)上に5つ設けられており、1つの第2検知部構成物20(検知部構成物O)を中心として、他の4つの第2検知部構成物20が4回対称となるように配置される。第2検知部構成物20は、第2基材2側から順に第2小電極20aと、第2小電極20a上に積層された第2小感圧層20bとを有する。第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20は、第1基材1及び第2基材2の間においてそれぞれが互いに対向している。5つの検知部構成物(上下で対となる第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20)の中心に配置される検知部構成物(検知部30)OによってZ軸方向の圧力を検出する。また、検知部構成物Oを挟んでX軸方向に並ぶ検知部構成物X1、X2によってX軸方向のせん断力を検出し、検知部構成物Oを挟んでY軸方向に並ぶ検知部構成物Y1、Y2によってY軸方向のせん断力を検出する。なお、ここでは第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20(すなわち検知部30)がそれぞれ5つずつ配置される場合について説明したが、第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20の数は複数であればこれに限定されない。また、検知部構成物(検知部30)の数がm(ただしm≧2の整数)のとき、検知領域Rの幾何中心を通る任意の直線上に存在する検知部構成物(検知部30)の数が、1以上(m-1)以下となる。また、検知部構成物の配置についても用途に応じて適宜変更可能であるが、例えば応力センサ100を人の指に貼付して使用する用途を想定した場合(例えばゴルフクラブやテニスラケット等の用具を振る際に、指と用具の間に作用する応力を解析することを想定した場合)、各検知部構成物は、検知領域Rの幾何中心に配置さる検知部構成物Oの中心から、半径6mm以内の円内に配置することが好ましい。
【0021】
(小電極)
第1小電極10aは、1つの第1検知部構成物10につき、n(ただしnは正の偶数)個ずつ設けられており、第1基材1の一方面に所定方向に間隔を空けて配列される。第2小電極20aは、1つの第2検知部構成物20につき、n(ただしnは正の偶数)またはn/2個ずつ設けられており、第2基材2の第1基材1の一方面と対向する面に、対向する第1検知部構成物10の第1小電極10aのそれぞれと対向するように配列される。小電極(第1小電極10aと第2小電極20a)の形状は、例えば長方形とすることができる。なお、本実施形態においては、
図2に示すように第1小電極10aの数を2(n=2)とし、また
図3に示すように第2小電極20aの数を2(n=2)とする。
【0022】
図2に示すように、各第1検知部構成物10を構成する2つの第1小電極10aのうち一方の第1小電極10aには共通配線3’が共通接続されており、もう一方の第1小電極10aには信号配線4’がそれぞれ接続されている。共通配線3’は第1基材1上の共通電極3に接続され、信号配線4’は第1基材1上の検出電極4に接続されている。さらに、
図3に示すように、各第2検知部構成物20において、2つの第2小電極20aの間には、2つの第2小電極20aを接続する第2接続配線8が設けられる。
【0023】
このように、本実施形態においては、各検知部構成物における第1小電極10a及び第2小電極20aの数が2であり、第1小電極10aの一方の第1小電極10aには共通配線3’が接続され、もう一方の第1小電極10aには信号配線4’が接続され、2つの第2小電極20a間は第2接続配線8で接続されている。そのため、対向する第1小感圧層10b及び第2小感圧層20b同士が接触すると、共通配線3’に接続される第1小電極10aと、信号配線4’に接続される第1小電極10aとを両端とし、第2検知部構成物20に含まれる第2小電極20aを経由する直列の電流経路が形成される。すなわち、第1基材1側から入力された電流が一旦第2基材2側に流れた後、再び第1基材1側に戻ってくる経路となっている。このため、第2基材2については信号取り出し用の配線を設ける必要がなくなるため、配線の設計が簡単でセンサの小型化もしやすく、また、配線の形成不良も低減できる。
【0024】
小電極の抵抗率は、1.0×10-3Ω・cm以下であることが好ましい。また、各小電極の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.05μm以上、20μm以下であることがより好ましい。0.01μm未満の場合、形成された膜が不連続な膜になりやすく、十分な導電性が得られなくなる。また30μmを超える場合、可撓性を有する基材上に形成された応力センサ100を屈曲させた際に小電極に割れが発生する恐れがある。また、上下で対向するそれぞれの小電極の形状及び面積は同一の形状・面積でもよいが、一方が他方より相対的に大きい面積を有することが好ましい。相対的に面積が小さい小電極の面積は、相対的に面積が大きい小電極の面積の1/5以上2/3以下であることが好ましい。1/5未満の場合は、応力センサ100の感度が落ちてしまう。また、2/3を超える場合は、両小電極の位置合わせが困難となる。
【0025】
小電極は、使用するセンサ素子の仕様に適した導電性材料であれば材料、形成方法共に限定されない。例えば、材料としては、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属や、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)などの導電性金属酸化物を用いることができる。形成方法としては、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法などの印刷法を用いる方法や、真空蒸着法、スパッタリング法等の気相堆積法を用いて基材全面に成膜した膜を、エッチング法によりパターニングする方法を用いることができる。印刷方法を用いる場合には、電極の材料を樹脂と混合し各印刷方法で塗布できるようインキ化したものを用いることができる。気相堆積法の場合、メタルマスクを用いて所定の位置のみに材料を成膜することで形成してもよい。また、一般的なビニル導線などを基材上に粘着剤などで固定してもよい。その他一般的な信号取り出し線及び電極形成方法であればいずれの方法でもよい。小電極は、共通電極3、共通配線3’、検出電極4、信号配線4’と同じ工程で作製してもよい。なお、本実施形態においては、小電極の形状を長方形としているが、円形や正方形などであってもよい。
【0026】
(小感圧層)
第1小感圧層10bは、第1小電極10aのそれぞれに積層される。第2小感圧層20bは、第2小電極20aのそれぞれに積層される。各小感圧層(第1小感圧層10b及び第2小感圧層20b)は、各第小電極を完全に覆い、かつ、隣接する小電極に積層された小感圧層とは離間するように形成される。平面視において、各小感圧層の大きさは同じであることが好ましい。
【0027】
小感圧層の厚さは1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。小感圧層が1μm未満の場合、小電極を十分に覆うことが困難となり、上下の小電極が小感圧層を介さずに導通するため、センサ動作に不良が生じる。小感圧層が100μmを超える場合、押圧力の変化に対する変形が鈍くなったり、押圧力が全ての小感圧層に均等に伝わるまでの時間が増加したりするため、圧力及びせん断力の検出精度が低下する。また、薄型化の観点から、第1小電極10aと第1小感圧層10b及び第2小電極20aと第2小感圧層20bは、合計で260μm以下の厚みとなるように形成されることが好ましい。
【0028】
小感圧層の抵抗率は、1.0×10-1Ω・cm以上1.0×106Ωcm以下であることが好ましい。この場合、押圧力の変化に対する導通抵抗値の変化量が好適となり、応力センサ100の検出精度が良好となる。
【0029】
本実施形態に係る応力センサ100は、対向する電極間の抵抗値変化に基づいて圧力及びせん断力を検出するため、小感圧層は、導電性を有する材料で形成する。ただし、小電極より抵抗率が高い材料を使用する必要がある。また、応力センサ100は、入力された押圧力により生じる小感圧層の厚みの変化に伴って上下間の小感圧層の抵抗値が変化することで、入力された押圧力を検知することができる。そのため、小感圧層には変形により抵抗率が変化する圧抵抗効果を有する材料を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子や、グラファイトやカーボンナノチューブを用いたカーボンペースト及びこれらにメジウムなどの調整剤を混ぜて抵抗率を調整した材料を用いることができる。小感圧層は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などの公知の印刷方法やスプレー塗布などの公知の塗工方法を使用して形成できる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法等の気相堆積法を用いて全面に形成しエッチング法により形成してもよい。この場合、メタルマスクを用いて所定の位置のみに材料を成膜することで形成することもできる。
【0030】
また、各小感圧層の表面に数μmオーダーの凹凸を形成してもよい(
図5)。この場合、押圧力が入力されると上下の小感圧層が互いに接し、表面の凹凸が僅かに変形して接触面積が増加する。当該接触面積の変化に応じて抵抗値が変化するため、入力された押圧力を検知することができる。この場合、小感圧層には押圧力に応じて変形する材料を用いることが好ましく、例えば、導電性カーボンや導電性ナノカーボンを用いることができる。小感圧層の表面に凹凸を形成する方法としては、例えば、スクリーン印刷を用いて、導電性カーボンインキを印刷形成する方法を用いることができる。
【0031】
小感圧層は、想定する押圧力の大きさに応じて抵抗率が調整されることが好ましい。想定する押圧力が大きい場合は、抵抗率の変化が穏やかな材料を選び、想定する応力が小さい場合は、抵抗率の変化が急峻な材料を選ぶことが好ましい。
【0032】
(共通配線、共通電極)
共通配線3’は、第1基材1上に形成され、共通電極3と、第1基材1上の第1検知部構成物10のそれぞれにおける第1小電極10aの1つとを接続する。共通配線3’と接続される第1小電極10aは、各第1検知部構成物10の、所定方向に間隔を空けて配列された第1小電極10aのうち、所定方向の一端に配置される第1小電極10aである。なお、共通配線3’及び共通電極3は第1基材1にのみ形成され、第2基材2には形成されない。
【0033】
(信号配線、検出電極)
信号配線4’は、第1基材1上に形成され、検出電極4と、第1基材1上の第1検知部構成物10のそれぞれにおける第1小電極10aの1つとを接続する。信号配線4’と接続される第1小電極10aは、各第1検知部構成物10の、所定方向に間隔を空けて配列された第1小電極10aのうち、所定方向の他端(共通配線3’が接続される第1小電極10aと反対側)に配置される第1小電極10aである。なお、信号配線4’及び検出電極4は第1基材1にのみ形成され、第2基材2には形成されない。
【0034】
(接続配線)
第2接続配線8は、第2基材2側に配置される第2検知部構成物20のそれぞれにおいて、2つの第2小電極20aを接続するように設けられ(
図3)、本実施形態においては5本の第2接続配線8が設けられる。
【0035】
これらの電極及び配線(共通配線3’、共通電極3、信号配線4’、検出電極4、及び第2接続配線8)は、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)などの導電性金属酸化物を用いることができる。
【0036】
電極及び配線の抵抗率は1.0×10-3Ω・cm以下であることが好ましい。電極及び配線の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上30μm以下の範囲が好ましく、0.05μm以上、20μm以下であることがより好ましい。0.01μm未満の場合、形成された膜が島状になりやすく、十分な導電性が得られなくなる。また、30μmを超える場合、可撓性基材上に形成された応力センサ100を屈曲させた場合に、電極及び配線に割れが発生する恐れがある。
【0037】
電極及び配線の形成方法は、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法などの印刷法を用いることができる。このような印刷法を用いる場合には、電極の材料を樹脂と混合し各印刷方法で塗布できるようインキ化したものを用いることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法等の気相堆積法を用いて基材全面に成膜した膜を、エッチング法によりパターニングすることにより形成してもよい。気相堆積法の場合、メタルマスクを用いて所定の位置のみに材料を成膜することができる。電極及び配線の材料および形成方法は限定されないが、例えば、共通配線3’、共通電極3、信号配線4’、検出電極4は、第1小電極10aの形成工程時に同一の材料で同時に形成してもよく、また、第2接続配線8は、第2小電極20aの形成工程時に同一の材料で同時に形成してもよい。
【0038】
(接着層)
接着層5の厚さは、第1検知部構成物10と第2検知部構成物20の合計厚さ未満であることが好ましい。具体的には、第1検知部構成物10と第2検知部構成物20の高さの和d1と、接着層5の厚さd2との比d1/d2が1.1~5.0であることが好ましい(
図1)。d1/d2が1.1未満の場合、第1検知部構成物10と第2検知部構成物20とが接触しにくくなり、圧力およびせん断力の検出精度が低下する。またd1/d2が5.0より大きい場合、無負荷状態でも第1検知部構成物10と第2検知部構成物20の接触が過剰な状態となるため、第1検知部構成物10と第2検知部構成物20が押圧力に追従できず、圧力およびせん断力の検出精度が低下する。接着層5の材料には特に制限がなく、基材に対して良好な粘着力があれば良い。例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系などの接着剤が好適に用いられる。また、接着層5として、両面テープなどを用いてもよい。
【0039】
接着層5は、全ての検知部30を取り囲むように形成され、
図1に示すような円環形状であることが好ましい。接着層5の中心と、検知領域Rの中心(検知部構成物Oの中心)を一致させた場合、せん断力検知に寄与する検知部30(検知部構成物O以外の検知部構成物)と、接着層5の距離が全て等しくなる。この場合、せん断力が加えられた時の接着層5の反発力が、せん断力の方向にかかわらず一定となり、せん断力の印加方向依存性が小さくなるため、せん断力の検出精度がさらに向上する。また、接着層5は、検出精度の観点から検知領域Rよりも半径が大きいことが好ましく、例えば円環状の接着層5の半径は、7mm以上10mm以内とすることができる。なお、接着層5は円環状に限定されず、正方形状であっても良い。
【0040】
接着層5の形成方法として、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、両面テープを所望の形状に加工したものを接着層5の形成位置に貼り合わせることで形成しても良い。基材に余計な熱負荷を与えたくない場合や印刷ばらつきによる粘着力のムラを避けたい場合は、両面テープが好適に使用される。
【0041】
(緩衝材)
緩衝材6は、第2基材2の一方面(第1基材1と対向する面)と反対側の面に接着剤等を介して設けられる。緩衝材6を設けることで、検知領域Rの位置がわかりやすくなり、また、全ての電極に対して安定的に分散して力をかけやすくなる。緩衝材6は、平面視において、緩衝材6の中心と、検知領域Rの幾何中心(検知部構成物Oの中心)とが一致し、全ての検知部構成物(検知部30)を包含するように設けられる。緩衝材6は、例えば円形とすることができる。緩衝材6を円形とし、接着層5を円環形状とした場合、緩衝材6の外周は、検知領域Rの外周と一致、または検知領域Rよりも外側にあり、かつ、接着層5の内周よりも内側にあることが特に好ましい。なお、緩衝材6の形状は円形以外の形状であってもよい。
【0042】
緩衝材6には、シリコーンゴムやブタジエンゴムといったゴム材料や、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂といった樹脂材料を用いることができる。また、必ずしも弾性を有する必要がなく、その場合は、表面に絶縁処理を施したアルミやステンレスといった金属や、ガラス等を用いることができる。また、複数の層で形成されていてもよい。緩衝材6は、検出対象となる圧力領域によって適宜選択される。なお、緩衝材6は省略してもよい。
【0043】
(検出原理)
次に、本実施形態に係る応力センサ100における圧力およびせん断力の検出について説明する。
【0044】
図4は、圧力測定時における応力センサの断面図であり、
図5は、圧力測定時における応力センサの部分断面図である。なお、
図4及び
図5では緩衝材6を省略する。また
図5においては、小感圧層の表面に凹凸を形成したものを示す。
【0045】
第1基材1上の検知部構成物Oの第1小電極10aと、第2基材2上の検知部構成物Oの第2小電極20aとが、一対の第1小感圧層10b及び第2小感圧層20bを介して接続されている。圧力方向の負荷がない場合、上下の小感圧層の接触面積が小さい、または上下の小感圧層が互いに接していないため、第1基材1上の検知部構成物Oの第1小電極10aと第2基材2上の検知部構成物Oの第2小電極20aとの間の電気抵抗値は大きい(
図5(a)参照)。圧力F1を加えることで上下の小感圧層の表面に形成された凹凸形状が僅かに変形し、接触面積が増える(
図5(b)参照)。接触面積が増えると、第1基材1上の検知部構成物Oの第1小電極10aと第2基材2上の検知部構成物Oの第2小電極20aの導通パスが増えるため、電気抵抗値が減少する。したがって、第1基材1上の検知部構成物Oの第1小電極10aと第2基材2上の検知部構成物Oの第2小電極20aとの電気抵抗値に基づいて、圧力を検出することができる。
【0046】
図6は、せん断力測定時における応力センサの断面図である。なお、
図6では緩衝材6を省略する。
【0047】
まず、応力センサ100の検知領域Rに、せん断方向の成分を含まない紙面下方向への圧力F1を印加した場合、
図6(a)に示すように、いずれの小電極に加わる力も等しくなり、検知部構成物O、X1、X2で検出される圧力がいずれも等しい。
【0048】
次に、
図6(a)の状態から、紙面下方向への力の大きさを変えずに、紙面左方向にせん断力F2を印加すると、検知部構成物Oの小電極に加わる圧力は変わらないが、荷重のバランスが変化したことにより、検知部構成物X1の小電極に加わる圧力が増加し、検知部構成物X2の小電極に加わる圧力が減少する。したがって、
図6(b)に示す状態では、
図6(a)に示す状態と比べて、検知部構成物Oで検出される圧力は変化せず、検知部構成物X2で検出される圧力が減少し、検知部構成物X1で検出される圧力が増加する。この検知部構成物X1及びX2の間の圧力の差分からせん断力を検出することができる。なお、Y方向に力が入力された場合も、同様に、検知部構成物Y1及びY2の間の圧力の差分からせん断力を検出することができる。
【0049】
このように、本実施形態に係る応力センサ100は、せん断力が入力された場合に、せん断力検出用の電極に加わる力(基材に直交するZ方向の成分)が増加または減少することを利用して、入力されたせん断力の方向及び大きさを検出する。圧力及びせん断力と、各組の電極間の抵抗値との関係を予め検量線として取得することにより、以後、測定した抵抗値を圧力及びせん断力に変換することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、検知部30の数を5個としているが、圧力及びせん断力を検出するなら3個以上であればよく、6個以上であってもよい。検知部30(小電極)の数が多くなるほど精度よくせん断力の変化を検出することができるが、応力センサ自体が大きくなるため、用途に応じて適宜選択すればよい。また、検知部30は必ずしも等間隔に設ける必要はないが、本実施形態のように4回対称となるように配置した方が、センサ全体の厚みを均一にすることができ、測定の安定性も向上する。
【0051】
また、本実施形態では、検知部30のうち1つ(検知部構成物O)を検知領域Rの幾何中心に設けることで圧力を測定しているが、検知部30を検知領域Rの中央に設けない構造であっても圧力を検出することができる。この場合、各検知部30が検出した圧力の平均を圧力値として導出することができる。
【0052】
以上の説明において、第1小電極10a(第2小電極20a)の数が2(n=2)について説明した。しかし、nが偶数であれば、
図7及び
図8のように、4個(n=4)や6個(n=6)などであってもよい。
【0053】
(n=4の場合)
図7は、n=4の場合の小電極及び配線の接続を説明する図である。
図7(a)に示すように、第1基材1側の第1検知部構成物10においては、整列方向の一方の端部に配置される第1小電極10aに共通配線3’が接続され、他方の端部に配置される第1小電極10aに信号配線4’が接続され、さらに、両端を除く第1小電極10aのうち、隣接する2個の第1小電極10aを接続する1本の第1接続配線7が設けられる。第2基材2側の第2検知部構成物20においては、隣接する2個の第2小電極20aを接続する第2接続配線8が2本設けられる。
【0054】
(n=6の場合)
図8は、n=6の場合の小電極及び配線の接続を説明する図である。
図8(a)に示すように、第1基材1側の第1検知部構成物10においては、整列方向の一方の端部に配置される第1小電極10aに共通配線3’が接続され、他方の端部に配置される第1小電極10aに共通配線3’が接続され、さらに、両端を除く第1小電極10aのうち、隣接する2個の第1小電極10aを接続する2本の第1接続配線7が設けられる。第2基材2側の第2検知部構成物20においては、隣接する2個の第2小電極20aを接続する第2接続配線8が3本設けられる。
【0055】
すなわち、1つの第1検知部構成物10において、第1基材1の一方面に所定方向に間隔を空けて配列される第1小電極10aの数がn個(ただし、nは正の偶数)の場合、共通配線3’は所定方向の一端に配置される第1小電極10aに接続され、信号配線4’は所定方向の他端に配置される第1小電極10aに接続され、(n/2-1)本の第1接続配線7が、所定方向の両端に配置される第1小電極10a以外の第1小電極10aのうち、隣接する2個の第1小電極10aを接続される。第2基材2においては、n/2本の第2接続配線8が、隣接する2個の第2小電極20aを接続する。そのため、対向する第1小感圧層10b及び第2小感圧層20b同士が接触すると、共通配線3’に接続される第1小電極10aと、信号配線4’に接続される第1小電極10aとを両端とし、第1検知部構成物10に含まれる残りの第1小電極10a及び第2検知部構成物20に含まれる第2小電極20aを経由する直列の電流経路が形成される。ゆえに、n=2の場合と同様に、nが4以上(ただし、nは正の偶数)の場合であっても、第1基材1側から入力された電流が一旦第2基材2側に流れた後、再び第1基材1側に戻ってくる経路となっている。このように、第2基材2については、入出力の配線を設ける必要がなくなるため、簡単な配線構造の応力センサ100とすることができる。そのため、本実施形態に係る応力センサ100は、小型化もしやすく、また、入出力装置との接続も簡単にすることができる。
【0056】
上述のように、第1小電極10a(第2小電極20a)の数が4(n=4)以上の場合は、第1小電極10a間に第1接続配線7が設けられるが、第1接続配線7は、第2接続配線8と同様の材料及び方法で形成することができる。
【0057】
なお、
図9に示すように、第2接続配線8で第2小電極20aを接続する代わりに、隣接する1対(n個)の第1小電極10aと重なるように1つの第2小電極20aを設けても良い。この場合、
図3に示した第2小電極20aの構成に比べ、第2接続配線8がなくなる分、第2小電極20aの面積が増える。
図1に示す構成の応力センサ100における第1基材1と第2基材2との貼り合わせによって生じる第1小電極10aと第2小電極20aとの僅かな位置ずれや、第1小電極10a及び第2小電極20a形成時での電極の僅かな大小によって生じる形状差を、
図9に示す第2基材2の構成からなる応力センサ100では低減でき、より正確に3軸の応力測定が可能となる。なお、
図9の例においては、対となる第1検知部構成物10の第1小電極10aの数は2(n=2)となる。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る応力センサ200は、主に検知部30(検知部構成物、或いは小電極及び小感圧層)の形状に特徴を有する。以下において、第2実施形態に係る応力センサ200について、第1実施形態に係る応力センサ100と異なる点を中心に説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る応力センサの概略構成を示す模式図であり、第2実施形態に係る応力センサの平面図を示している。
図11は、応力センサの第1基材側の部分模式図であり、
図12は、応力センサの第2基材側の部分模式図である。
【0059】
応力センサ200においては、第1基材1、第2基材2、第1基材1及び第2基材2の間に配置された5つの検知部30、及び、第1基材1及び第2基材2を接着する接着層5、第1基材1の一方面に設けられる共通配線3’及び信号配線4’、を備える。
【0060】
(検知部)
5つの検知部30は、第1基材1の一方面に設けられる複数の第1検知部構成物10と、第2基材2の第1基材1と対向する面に、第1検知部構成物10のそれぞれに対向して設けられる複数の第2検知部構成物20とを備える。5つの検知部30(第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20)のうち1つが検知領域Rの幾何中心に配置され、残りの4つの検知部30が前記1つの検知部30の周囲に回転対称となるように配置される。
【0061】
(検知部構成物)
第1検知部構成物10は、第1基材1の一方面(第2基材2と対向する面)上に5つ設けられる。第1検知部構成物10のそれぞれは、第1小電極10a及び第1小感圧層10bを有する。第2検知部構成物20は、第2基材2の第1基材1の一方面と対向する面に、第1検知部構成物10のそれぞれに対向して設けられる。第2検知部構成物20のそれぞれは、第2小電極20a、及び第2小感圧層20bを有する。
【0062】
第1検知部構成物10(第1小電極10a及び第1小感圧層10b)は、第1基材1の一方面(第2基材2と対向する面)上に5つ設けられており、
図11に示すように、1つの第1検知部構成物10(検知部構成物O)が検知領域Rの幾何中心に配置され、他の4つの第1検知部構成物10が回転対称(4回対称)となるように配置される。第1検知部構成物10は、第1基材1側から順に第1小電極10aと、第1小電極10a上に積層された第1小感圧層10bとを有する。第2検知部構成物20は、第2基材2の一方面(第1基材1と対向する面)上に5つ設けられており、1つの第2検知部構成物20(検知部構成物O)を中心として、他の4つの第2検知部構成物20が回転対称(4回対称)となるように配置される。第2検知部構成物20は、第2基材2側から順に第2小電極20aと、第2小電極20a上に積層された第2小感圧層20bとを有する。第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20は、第1基材1及び第2基材2の間においてそれぞれが互いに対向している。5つの検知部構成物(上下で対となる第1検知部構成物10及び第2検知部構成物20)の中心に配置される検知部構成物O(検知部30)によってZ軸方向の圧力を検出する。また、検知部構成物Oを挟んでX軸方向に並ぶ検知部構成物X1、X2によってX軸方向のせん断力を検出し、検知部構成物Oを挟んでY軸方向に並ぶ検知部構成物Y1、Y2によってY軸方向のせん断力を検出する。
【0063】
(小電極)
検知領域Rの幾何中心に配置される検知部30(検知部構成物O)の第1小電極10aは、第1基材1の一方面に、検知領域Rの幾何中心を通る任意の直線方向に間隔を空けて2個配列される。その他の4つの検知部30(検知部構成物X1、X2、Y1、Y2)の第1小電極10aは、検知領域Rの周方向に間隔を空けて2個ずつ配列される。第2小電極20aは、1つの第2検知部構成物20につき、2個ずつ設けられており、第2基材2の第1基材1の一方面と対向する面に、対向する第1検知部構成物10の第1小電極10aのそれぞれと対向するように配列される。
【0064】
4つの検知部30(検知部構成物X1、X2、Y1、Y2)の第1小電極10aは、
図10に示すように円環を周方向に分割した形状とする。このような形状の小電極を円形の検知領域Rに沿うように配置することで、第1実施形態のように小電極を矩形にした場合よりも検知領域Rに占める小電極の面積を大きくすることができる。小電極の面積を大きくした場合、広範囲で押圧力を検出することが可能となり、より微少な押圧力の変化を検出することが可能となるため、せん断力の検出精度が向上する。また、より均一に押圧力を小感圧層に分散させることが可能となるため、せん断力の検出精度を向上させることができる。また、接着層5を円環形状とし、接着層5の中心と小電極の円中心を一致させた場合、4つの検知部30(検知部構成物X1、X2、Y1、Y2)の第1小電極10aと、接着層5の距離が全て等しくなる。この場合、せん断力が加えられた時の接着層5の反発力が、せん断力の方向にかかわらず一定となり、せん断力の印加方向依存性が小さくなるため、せん断力の検出精度がさらに向上する。
【0065】
図11(a)に示すように、各第1検知部構成物10を構成する2つの第1小電極10aのうち一方の第1小電極10aには共通配線3’が共通接続されており、もう一方の第1小電極10aには信号配線4’がそれぞれ接続されている。さらに、
図11(b)に示すように、各第2検知部構成物20において、2つの第2小電極20aの間には、2つの第2小電極20aを接続する第2接続配線8が設けられる。
【0066】
このように、本実施形態においては、検知部構成物における第1小電極10a及び第2小電極20aの数が2であり、第1小電極10aの一方の第1小電極10aには共通配線3’が接続され、もう一方の第1小電極10aには信号配線4’が接続され、2つの第2小電極20a間は第2接続配線8で接続されている。そのため、対向する第1小感圧層10b及び第2小感圧層20b同士が接触すると、共通配線3’に接続される第1小電極10aと、信号配線4’に接続される第1小電極10aとを両端とし、第2検知部構成物20に含まれる第2小電極20aを経由する直列の電流経路が形成される。すなわち、第1実施形態に係る応力センサ100と同様に、第1基材1側から入力された電流が一旦第2基材2側に流れた後、再び第1基材1側に戻ってくる経路となり、第2基材2については信号取り出し用の配線を設ける必要がなくなるため、配線の設計が簡単でセンサの小型化もしやすく、また、配線の形成不良も低減できる。
【0067】
以上の第2実施形態に係る説明において、第1小電極10a(第2小電極20a)の数が2(n=2)について説明した。しかし、第1実施形態と同様に、nが偶数であれば、nは4以上であってもよい。この場合、第1基材1側においては、各第1検知部構成物10の両端に配置される第1小電極10a以外の第1小電極10aのうち、隣接する2個の第1小電極10aを接続する(n/2-1)本の第1接続配線7が設けられる。また、第1基材1側においては、各第2検知部構成物20の隣接する2個の第2小電極20aを接続するn/2本の第2接続配線8が設けられる。これにより、共通配線3’に接続される第1小電極10aと、信号配線4’に接続される第1小電極10aとを両端とし、第1検知部構成物10に含まれる残りの第1小電極10a及び第2検知部構成物20に含まれる第2小電極20aを経由する直列の電流経路が形成される。ゆえに、nが4以上(ただし、nは正の偶数)の場合であっても、第1基材1側から入力された電流が一旦第2基材2側に流れた後、再び第1基材1側に戻ってくる経路となる。
【実施例0068】
(実施例1)
第1基材1として25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン:カプトン100H)を使用し、
図2(a)に示す第1小電極10aを、導電性銀インキを用いてスクリーン印刷にて形成した。第1小電極10aは、いずれも200μm×500μmの長方形(面積0.10mm
2)とし2つ並べて形成した。また、第1小電極10aと同時に幅250μmで長さ5mmの共通電極3及び検出電極4と、幅100μmの共通配線3’及び信号配線4’とを作製した。電極及び配線の厚みは、10μmであった。
【0069】
次に、各第1小電極10aの上に、導電性カーボンインキを用いてスクリーン印刷にて、第1小感圧層10bを厚み10μmで形成した。
【0070】
次に、第2基材2として25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン:カプトン100H)を使用し、
図3(a)に示す第2小電極20aを、導電性銀インキを用いてスクリーン印刷にて形成した。第2小電極20aは、いずれも200μm×500μm(面積0.10mm
2)の長方形とし2つ並べて形成した。第2小電極20a間を長さ100μm、幅100μmの第2接続配線8で接続、形成した。第2小電極20a及び第2接続配線8の厚みは、10μmであった。
【0071】
次に、各第2小電極20aの上に、導電性カーボンインキを用いてスクリーン印刷にて、第2小感圧層20bを厚み10μmで形成した。
【0072】
次に、第1基材1の検知領域Rを中心に、内径7mm、幅1mmの円環状の両面テープを貼り、接着層5を形成した。接着層5の厚みは30μmとした。
【0073】
次に、第1基材1と第2基材2とを接着層5を介して貼り合わせた。
【0074】
次に、第2基材2上に緩衝材6を接着剤で接着し、応力センサを得た。このとき、緩衝材6の直径は3mm、厚みは0.3mmであった。
【0075】
(実施例2)
第2小電極20aとして、
図9に示す第2小電極20aを作製したことを除き、実施例1と同様に実施例2に係る応力センサを作製した。第2小電極20aは、いずれも500μm×500μm(面積0.25mm
2)の正方形であった。
【0076】
(実施例3)
第1小電極10aとして、
図11に示す第1小電極10aを作製し、第2小電極20aとして、
図12に示す第2小電極20aを作製したこと、及び第1基材1の検知領域Rを中心に、一辺が7mm、幅0.3mmの正方形の環状の両面テープを貼り、接着層5を形成したことを除き、実施例1と同様に実施例3に係る応力センサを作製した。このとき、検知領域Rの幾何中心に配置される検知部構成物Oの第1小電極10a及び第2小電極20aは250μm×500μm(面積0.125mm
2)の長方形であった。また、検知領域Rの周方向に配置されるせん断検知部(検知部構成物X1、X2、Y1、Y2)の第1小電極10a及び第2小電極20aは、円環を周方向に分割した形状(面積0.22mm
2)であった。
【0077】
(実施例4)
第1小電極10aとして、
図11に示す第2小電極20aを作製し、第2小電極20aとして、
図12に示す第2小電極20aを作製したとことを除き、実施例1と同様に実施例3に係る応力センサを作製した。このとき、検知領域Rの幾何中心に配置される検知部構成物Oの第1小電極10a及び第2小電極20aは250μm×500μm(面積0.125mm
2)の長方形であった。また、検知領域Rの周方向に配置されるせん断検知部(検知部構成物X1、X2、Y1、Y2)の第1小電極10a及び第2小電極20aは、円環を周方向に分割した形状(面積0.22mm
2)であった。
【0078】
(比較例1)
第1小電極10a及び第2小電極20aを、いずれも500μm×500μm(面積0.25mm2)の正方形としたことを除き、実施例1と同様に比較例1に係る応力センサを作製した。
【0079】
(配線構造評価)
実施例1~4及び比較例1に係る圧力センサついて、配線構造の評価を行った。
【0080】
実施例1~4の応力センサについては、1つの第1検知部構成物10における、第1基材1の一方面に所定方向(または検知領域Rの周方向)に間隔を空けて配列される第1小電極10aの数nが2個の偶数であり、共通配線3’が一方の第1小電極10aに接続され、信号配線4’は他方の第1小電極10aに接続され、1本(n/2本)の第2接続配線8が、隣接する2個の第2小電極20aを接続する構成(ただし、実施例2に係る応力センサは第2接続配線8をなくし第2小電極20aのみからなる構成)であった。そのため、第1基材1側から入力された電流が一旦第2基材2側に流れた後、再び第1基材1側に戻ってくる経路となり、共通電極3、共通配線3’、検出電極4、及び信号配線4’を第1基材1に纏めて形成できた。一方で、比較例1の応力センサについては、共通配線3’及び共通電極3が第1基材1に形成され、信号配線4’及び検出電極4が第2基材2に形成されるため、実施例1~4と比較すると配線構造が複雑であった。
【0081】
(圧力測定精度の評価)
実施例1~4及び比較例1に係る応力センサについて、圧力測定精度の評価を行った、具体的には、荷重印加装置(ロードセル:アイコーエンジニアリング MODEL-3005(50N))の測定用ステージの上に固定した。測定用端子を応力センサに当て、せん断力を与えず垂直荷重のみを0.1Nから10.0Nまで0.1N刻みで増加させながら、応力センサの圧力の出力値を取得し、印加した圧力値と応力センサの出力値との差を求めた。圧力の測定精度は以下の基準で評価した。
◎:印加圧力値とセンサ出力値との差の最大値が±5%以内
〇:印加圧力値とセンサ出力値との差の最大値が±10%以内
×:印加圧力値とセンサ出力値との差の最大値が±10%を超える
【0082】
(せん断力測定精度の評価)
各実施例及び比較例に係る応力センサについて、せん断力測定精度の評価を行った。具体的には、荷重印加装置(ロードセル:アイコーエンジニアリング MODEL-3005(50N))の測定用ステージの上に固定した。応力センサに一定の垂直荷重をかけた状態で、X方向及びY方向のそれぞれのせん断荷重を0Nから0.3Nまで0.05N刻みで増加させながらセンサのせん断力の出力値を取得し、印加したせん断荷重値と得られたせん断力の出力値とを比較した。また、X方向及びY方向のそれぞれのせん断荷重を0Nから-0.3Nまで0.05N刻みで減少させながらセンサのせん断力の出力値を取得し、印加したせん断荷重値と得られたせん断力の出力値との差を求めた。尚、X方向及びY方向はいずれも応力センサの面方向と平行な方向であって、互いに直交する方向である。せん断力の測定精度は以下の基準で評価した。
◎:印加せん断荷重値とセンサ出力値との差の最大値が±5%以内
○:印加せん断荷重値とセンサ出力値との差の最大値が±10%以内
×:印加せん断荷重値とセンサ出力値との差の最大値が±10%を超える
【0083】
(総合評価)
応力センサの総合評価を以下の基準で判定した。
◎:圧力測定精度とせん断力測定精度の評価がいずれも◎
×:圧力測定精度とせん断力測定精度の評価のいずれかが×である
○:その他
【0084】
実施例1~4及び比較例1に係る圧力センサのセンサ構造と評価結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
実施例1~4に係る応力センサにおいては、印加される圧力及びせん断荷重の範囲にかかわらず、優れた測定精度を示すことが確認できた。特に、実施例3及び4については、せん断力検知部の小電極形状を、円環を周方向に分割した形状としたことで、円形状の検知領域内に面積の大きい小電極を配置できることとなり、せん断力の検出精度が向上した。さらに、実施例4においては接着層5の形状が円環状であり、接着層5の中心と、各小電極の円環の円中心とを一致させた構成とした。これにより、各検知部の小電極の外周と接着層5の距離が全て等しくなり、せん断力の印加方向依存性が小さくなってせん断力の検出精度がさらに向上し、特に優れた測定精度を示した。
【0087】
比較例1に係る応力センサについては、実施例1~4と異なり、電極が分割されていない構造であるため、せん断力の測定精度が実施例1~4と比較して劣る結果となった。実施例1~4の方が比較例1よりもせん断力の測定精度が優れた理由としては、電極が2つに分割されていたためである。2分割されていたことで、電流が通る経路が長く(2倍に)なってせん断力印加による電圧変化を2回取得することができるため、素子のバラツキが平均化されてより正確な測定値が得られる。さらに、同じずれ量であれば、2分割されている場合は、分割されていない場合と比較して、面積変化(抵抗変化)が2倍になるため、せん断力の検出精度は向上する。