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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164793
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/04 20060101AFI20241120BHJP
   F02M 37/44 20190101ALI20241120BHJP
   F02M 37/50 20190101ALI20241120BHJP
【FI】
F02M37/04 B
F02M37/44
F02M37/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001157
(22)【出願日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2023079907
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渕上 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】レバークエン
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和貴
(72)【発明者】
【氏名】濱本 泰輔
(57)【要約】
【課題】燃料タンク内の燃料残量が減少して燃料フィルタが燃料の液面から露出した状態おいて、燃料の圧送時間を極力延長できるようにする。
【解決手段】燃料タンクT内に設置されている燃料ポンプ32により燃料フィルタ36を介して燃料タンクT内の燃料を吸引し、エンジンに圧送する燃料供給装置であって、燃料タンクT内に設置されており、燃料ポンプ32から吐出された燃料の圧力を調整する圧力調整弁34と、圧力調整弁34において燃料の圧力調整時に発生した余剰燃料を燃料タンクT内に戻すリターン配管350とを有しており、リターン配管350は、圧力調整弁34の位置から燃料フィルタ36の近傍まで延び、そのリターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料の液流が燃料フィルタ36の表面に当たるように設置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に設置されている燃料ポンプにより燃料フィルタを介して前記燃料タンク内の燃料を吸引し、エンジンに圧送する燃料供給装置であって、
前記燃料タンク内に設置されており、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力を調整する圧力調整弁と、
前記圧力調整弁において燃料の圧力調整時に発生した余剰燃料を前記燃料タンク内に戻すリターン配管と、
を有しており、
前記リターン配管は、前記圧力調整弁の位置から前記燃料フィルタの近傍まで延び、そのリターン配管の先端開口部から流出する余剰燃料の液流が前記燃料フィルタの表面に当たるように設置されている燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載された燃料供給装置であって、
前記リターン配管の先端開口部には、その先端開口部から流出する余剰燃料の液流を前記燃料フィルタの表面に導くガイド部が設けられている燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載された燃料供給装置であって、
前記ガイド部は、前記リターン配管の先端開口部における底部の突出部分であり、前記リターン配管の先端部分を斜めに切断することにより形成されている燃料供給装置。
【請求項4】
請求項2に記載された燃料供給装置であって、
前記ガイド部は、前記リターン配管の先端開口部に形成された溝状部であり、前記燃料フィルタの周縁フランジ部を挟めるように構成されている燃料供給装置。
【請求項5】
請求項2に記載された燃料供給装置であって、
前記ガイド部は、前記リターン配管に沿って先端開口部の位置から突出する一対の縦壁部であり、前記燃料フィルタを厚み方向から挟めるように構成されている燃料供給装置。
【請求項6】
請求項2に記載された燃料供給装置であって、
前記ガイド部は、前記リターン配管の先端開口部を前記燃料フィルタ側へ突出した突出部であり、該突出部は四角筒形状とされている燃料供給装置。
【請求項7】
燃料タンク内に設置されている燃料ポンプにより燃料フィルタを介して前記燃料タンク内に貯留されている燃料を吸引し、エンジンに圧送する燃料供給装置であって、
前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力を調整する圧力調整弁と、
前記圧力調整弁において燃料の圧力調整時に発生した余剰燃料を前記燃料タンク内に戻す配管であり、配管本体部と、その配管本体部に対して拡径した燃料貯留部と、その燃料貯留部の少なくとも一箇所に形成された開口部とを備えるリターン配管と、
を有しており、
前記リターン配管は、少なくとも前記燃料貯留部が前記燃料タンク内に設置されており、その燃料貯留部の開口部から流出する余剰燃料の液流が前記燃料フィルタの表面に当たるように構成されている燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、燃料タンク内に設置されている燃料ポンプにより燃料フィルタを介して前記燃料タンク内の燃料を吸引し、エンジンに圧送する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した燃料供給装置に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の燃料供給装置100は、図13に示すように、燃料タンク101内に設置されている燃料ポンプ103により燃料フィルタ104を介して燃料タンク101内の燃料Fを吸引し、エンジン107のインジェクター108に圧送する装置である。燃料ポンプ103により吐出された燃料は、燃料圧送配管105によりエンジン107に圧送される。燃料圧送配管105の途中には、燃料の圧力を調整する圧力調整弁106が設けられており、その圧力調整弁106において圧力調整時に発生した余剰燃料がリターン配管106rにより燃料タンク101に戻される。
【0003】
リターン配管106rの先端部は、図14に示すように、燃料タンク101の床面から上方に突出している。そして、リターン配管106rの先端開口106xから上方に向けて流出した余剰燃料の液流がキャップ状のガイド部材109により燃料タンク101の床面上に戻されて、燃料フィルタ104の近傍に導かれる。これにより、燃料タンク101に戻された余剰燃料をエンジン107に圧送できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/00734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した燃料供給装置100では、圧力調整弁106が燃料タンク101の外にあり、余剰燃料を同じく燃料タンク101の外にあるリターン配管106rで燃料タンク101内に戻す構成である。このため、余剰燃料の量が少ない場合には、余剰燃料を効果的に燃料タンク101内に戻せなくなる。また、リターン配管106rの先端開口106xから上方に向けて流出した余剰燃料の液流をキャップ状のガイド部材109により燃料タンク101の床面上に戻し、燃料フィルタ104の近傍に導く構成である。このため、例えば、燃料タンク101内の燃料が減少して燃料フィルタ104が燃料Fから露出した状態では余剰燃料を効率的に燃料フィルタ104に導けなくなる。この結果、燃料フィルタ104が燃料Fから露出した状態における燃料の圧送可能時間が短くなる。
【0006】
本技術は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、燃料タンク内の燃料残量が減少して燃料フィルタが燃料の液面から露出した状態において、燃料の圧送可能時間を極力延長できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各技術によって解決される。第1の技術は、燃料タンク内に設置されている燃料ポンプにより燃料フィルタを介して前記燃料タンク内の燃料を吸引し、エンジンに圧送する燃料供給装置であって、前記燃料タンク内に設置されており、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力を調整する圧力調整弁と、前記圧力調整弁において燃料の圧力調整時に発生した余剰燃料を前記燃料タンク内に戻すリターン配管とを有しており、前記リターン配管は、前記圧力調整弁の位置から前記燃料フィルタの近傍まで延び、そのリターン配管の先端開口部から流出する余剰燃料の液流が前記燃料フィルタの表面に当たるように設置されている。
【0008】
第1の技術によると、リターン配管は、圧力調整弁の位置から燃料フィルタの近傍まで延び、そのリターン配管の先端開口部から流出する余剰燃料の液流が前記燃料フィルタの表面に当たるように設置されている。このため、燃料タンク内の燃料残量が減少して燃料フィルタが燃料の液面から露出した状態おいて、圧力調整弁における余剰燃料を効率的にエンジンに圧送できるようになる。これにより、燃料フィルタが燃料の液面から露出した状態における燃料の圧送可能時間を延長できる。
【0009】
第2の技術によると、リターン配管の先端開口部には、その先端開口部から流出する余剰燃料の液流を前記燃料フィルタの表面に導くガイド部が設けられている。このため、リターン配管の先端開口部から流出した余剰燃料を確実に燃料フィルタに供給できるようになる。
【0010】
第3の技術によると、ガイド部は、リターン配管の先端開口部における底部の突出部分であり、前記リターン配管の先端部分を斜めに切断することにより形成されている。
【0011】
第4の技術によると、ガイド部は、リターン配管の先端開口部に形成された溝状部であり、燃料フィルタの周縁フランジ部を挟めるように構成されている。
【0012】
第5の技術によると、ガイド部は、リターン配管に沿って先端開口部の位置から突出する一対の縦壁部であり、燃料フィルタを厚み方向から挟めるように構成されている。
【0013】
第6の技術によると、ガイド部は、リターン配管の先端開口部を燃料フィルタ側へ突出して形成された突出部であり、該突出部は四角筒形状とされている。このように突出部が形成されているため、車両走行中、リターン配管からの余剰燃料がエンジン振動、ブレーキ操作等に伴う加速度を受けて燃料フィルタ方向以外へ飛散するのを突出部により防止し、余剰燃料を燃料フィルタを介して効率的にエンジンに圧送することができる。
【0014】
第7の技術は、燃料タンク内に設置されている燃料ポンプにより燃料フィルタを介して前記燃料タンク内に貯留されている燃料を吸引し、エンジンに圧送する燃料供給装置であって、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力を調整する圧力調整弁と、前記圧力調整弁において燃料の圧力調整時に発生した余剰燃料を前記燃料タンク内に戻す配管であり、配管本体部と、その配管本体部に対して拡径した燃料貯留部と、その燃料貯留部の少なくとも一箇所に形成された開口部とからなるリターン配管とを有しており、前記リターン配管は、少なくとも前記燃料貯留部が前記燃料タンク内に設置されており、その燃料貯留部の開口部から流出する余剰燃料の液流が前記燃料フィルタの表面に当たるように構成されている。
【0015】
第7の技術によると、リターン配管に燃料貯留部が設けられていることで、リターン配管に燃料をより多く貯留できるようになる。さらに、リターン配管の燃料貯留部は、燃料タンク内に設置されており、その燃料貯留部の開口部から流出する余剰燃料の液流が前記燃料フィルタの表面に当たるように構成されている。このため、余剰燃料を効率的にエンジンに圧送でき、さらに燃料の圧送可能時間を延長できる。
【0016】
第8の技術は、上記第1、2、6の技術において、前記燃料フィルタは、概略外観形状が方形の角部の一つが三つの角部を残して方形状に切り欠かれた切欠部を形成された多角形を成し、該切欠部が燃料液面低下時に燃料液面から最も露出し易い位置となるように上側に配置されており、燃料ポンプの燃料吸込口が燃料フィルタの切欠部の下部に連通されており、前記リターン配管の先端開口部は、そこから流出した余剰燃料の液流が前記燃料ポンプの燃料吸込口に向かうように配置されている。第8の技術によれば、リターン配管の先端開口部から流出する余剰燃料が燃料フィルタの切欠部から燃料フィルタ内に導入され、燃料ポンプの燃料吸込口に流入し易くなる。そのため、圧力調整弁における余剰燃料を効率的にエンジンに圧送できる。
【0017】
第9の技術は、上記第8の技術において、前記リターン配管は、全体として水平に配置され、且つその先端開口部は、その内底面が下方に向けて傾斜した傾斜面にて形成されてその開口面積を拡大され、先端開口部の開口幅は前記燃料フィルタの幅と同等とされている。第9の技術によれば、余剰燃料の量が少ない状態でも水平配置のリターン配管及び先端開口部の傾斜底面を通って余剰燃料を燃料フィルタに無駄なく導くことができる。また、先端開口部を通って燃料フィルタに流れる余剰燃料は、先端開口部の開口幅と燃料フィルタの幅が同等とされているため、燃料フィルタ外に漏れずに効率的に燃料フィルタに供給される。
【発明の効果】
【0018】
本願の技術によると、燃料タンク内の燃料が減少して燃料フィルタが燃料の液面から露出した状態おいて、燃料の圧送可能時間を極力延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る燃料供給装置を備える燃料タンクを車両側面方向から見た縦断面図である。
図2】前記燃料タンクの平断面図(図1のII-II矢視断面図)である。
図3】前記燃料タンクを車両後方から見た縦断面図(図1のIII-III矢視断面図)である。
図4】前記燃料供給装置(燃料供給装置本体部)とエンジンとの関係を表す配管系統図である。
図5】前記燃料供給装置(燃料供給装置本体部の平断面図(図1のV-V矢視断面図)である。
図6】前記燃料供給装置を左斜め下後方から見た斜視図である。
図7】前記燃料供給装置の側面図である。
図8】変更例1に係る燃料供給装置のリターン配管の斜視図である。
図9】変更例2に係る燃料供給装置のリターン配管の側面図である。
図10】変更例3に係る燃料供給装置のリターン配管の側面図である。
図11】変更例4に係る燃料供給装置のリターン配管の斜視図である。
図12】変更例5に係る燃料供給装置のリターン配管の斜視図である。
図13】変更例5に係る燃料供給装置のリターン配管の側面図である。
図14】変更例5に係る燃料供給装置のリターン配管の平面図である。
図15】変更例5に係る燃料供給装置の燃料ポンプと燃料フィルタの位置関係を示す斜視図である。
図16】変更例6に係る燃料供給装置のリターン配管の斜視図である。
図17】従来の燃料供給装置の側面図である。
図18】従来の燃料供給装置のリターン配管の先端開口部とキャップ状のガイド部材とを表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態〕
以下、図1図16に基づいて、本発明の実施形態に係る燃料供給装置について説明する。本実施形態に係る燃料供給装置10は、オートバイ(車両)の燃料タンクT内に搭載されて、前記燃料タンクT内の燃料をエンジンに圧送する装置である。
【0021】
<燃料タンクTの概要について>
オートバイの燃料タンクTは、図1図3に示すように、右タンク部Tmと、左タンク部Thと、左右のタンク部Th,Tmの上部空間をつなぐ連通タンク部Trとから断面略逆U字形(図3参照)に形成されている。そして、燃料タンクTは、オートバイ中央のメインフレーム(図示省略)を左右方向に跨ぐように、そのメインフレーム上に設置されている。さらに、燃料タンクTの左タンク部Th内には、本実施形態に係る燃料供給装置10の燃料供給装置本体部30が収納されている。また、燃料タンクTの連通タンク部Trの底板Trbの中央には、燃料供給装置10の液面計20(液面計本体部23)が設置されている。
【0022】
<燃料供給装置10の概要について>
燃料供給装置10は、図4の配管系統図に示すように、上記した燃料供給装置本体部30と、液面計20と、前記燃料供給装置本体部30から吐出された燃料Fをエンジンの燃料噴射装置18に導く燃料供給配管13とを備えている。燃料供給装置本体部30は、燃料タンクTに貯留されている燃料Fをエンジンに圧送する部分である。液面計20は、燃料タンクTに貯留されている燃料Fの液面レベルを検知するセンサーである。液面計20は、フロート式の液面センサーであり、図1等に示すように、連通タンク部Trの底板Trbに取付けられた液面計本体部23と、フロート25と、フロート25の上下動を液面計本体部23に伝える連結棒27とを備えている。液面計本体部23は、フロート25の上下動に起因する連結棒27の回動角度に基づいて燃料Fの液面レベルを検知する構成である。
【0023】
<燃料供給装置本体部30について>
燃料供給装置本体部30は、上記したように、燃料タンクT内の燃料Fをエンジンに送り出す部分である。燃料供給装置本体部30は、図4に示すように、燃料ポンプ32と、圧力調整弁34と、その燃料ポンプ32、及び圧力調整弁34を収納して燃料タンクT(左タンク部Th)内に固定する装置ハウジング300と、燃料フィルタ36とから構成されている。
【0024】
<燃料ポンプ32について>
燃料ポンプ32は、図4図5に示すように、燃料フィルタ36を介して燃料Fを吸引し、エンジンに圧送するポンプ部(図示省略)と、そのポンプ部を回転駆動させるモータ部(図示省略)とから構成されている。燃料ポンプ32のモータ部とポンプ部とは、略円筒形に形成されたケーシング32cに同軸に収納されている。燃料ポンプ32のケーシング32cには、軸方向における一端側(ポンプ部側)に吸引ポート32eが形成されており、軸方向における他端側(モータ部側)に吐出ポート32pが形成されている。そして、燃料ポンプ32のポンプ部が回転駆動されることにより、吸引ポート32eから吸引された燃料が加圧されてモータ部を通過し、吐出ポート32pから吐出されるようになる。
【0025】
<圧力調整弁34について>
圧力調整弁34は、燃料ポンプ32から吐出された燃料Fの圧力が設定圧力を超えないように調整する弁であり、圧力調整時に発生した余剰燃料を排出できるように構成されている。圧力調整弁34は、図5に示すように、略円筒形のケーシング34cを備えており、そのケーシング34cの軸方向における一端側に受圧面34rが形成されている。また、圧力調整弁34のケーシングの軸方向における他端側には、余剰燃料を排出する排出ポート34sが形成されている。圧力調整弁34は、受圧面34rに加わる燃料圧力が設定圧力よりも上昇するとケーシング34c内の弁体(図示省略)が調圧バネ(図示省略)のばね力に抗して変位して流路を開く。これにより、受圧面34r側の燃料の一部が余剰燃料としてケーシング34c内に導かれ、排出ポート34sから排出されるようになる。
【0026】
<装置ハウジング300の概要について>
装置ハウジング300は、図5等に示すように、燃料タンクT(左タンク部Th)の側面開口(図番省略)を塞ぐ円盤蓋状のハウジング本体部320と、燃料ポンプ32を収納するポンプハウジング部330とを備えている。さらに、装置ハウジング300は、図5図7に示すように、ハウジング本体部320に収納された圧力調整弁34の余剰燃料を燃料フィルタ36の近傍まで導くリターン配管350を備えている。
【0027】
<装置ハウジング300のハウジング本体部320について>
装置ハウジング300のハウジング本体部320は、図5図7に示すように、円盤状の蓋部322を備えている。そして、蓋部322のほぼ中央下寄り位置には、図5に示すように、燃料通路327がその蓋部322を軸方向に貫通するように形成されている。前記蓋部322のタンク内側に位置するハウジング本体部320には、燃料通路327の先端位置に圧力調整弁34が収納される円筒状の調整弁収納凹部325が燃料通路327と同軸に形成されている。
【0028】
圧力調整弁34は、図5に示すように、受圧面34rがハウジング本体部320の燃料通路327の端部を塞ぐように、ハウジング本体部320の調整弁収納凹部325に対して軸方向から挿入されている。この状態で、圧力調整弁34の排出ポート34sは、ハウジング本体部320の調整弁収納凹部325の開口部分に位置するようになる。
【0029】
蓋部322のタンク内側に位置するハウジング本体部320には、図5図7に示すように、前記燃料通路327に対して直角、かつ斜め下向きの状態で燃料ポンプ32の端部が収納される円筒状のポンプ収納凹部324が燃料通路327と連通した状態で形成されている。
【0030】
燃料ポンプ32は、図5に示すように、その燃料ポンプ32の吐出側の端部がハウジング本体部320のポンプ収納凹部324に対して軸方向から挿入されている。これにより、燃料ポンプ32の吐出ポート32pがハウジング本体部320の燃料通路327に接続される。ここで、燃料ポンプ32のモータ部の電気配線(図示省略)は、ハウジング本体部320の蓋部322のタンク外側に設けられた電気コネクタ(図示省略)に接続されている。また、ハウジング本体部320の蓋部322のタンク外側には、燃料吐出ポート328が燃料通路327と連通した状態で、その燃料通路327に対して直角に形成されている。燃料吐出ポート328には、燃料供給装置10の燃料供給配管13が接続されている。
【0031】
<装置ハウジング300のポンプハウジング部330について>
装置ハウジング300のポンプハウジング部330は、図5に示すように、燃料ポンプ32を覆う有底円筒状のハウジングで、軸方向一端側(前上端側)に開口部331を備えており、軸方向他端側(後下端側)に底板部(図番省略)を備えている。ポンプハウジング部330の開口部331は、ハウジング本体部320のポンプ収納凹部324を径方向外側から覆った状態で、ハウジング本体部320と係合可能なように構成されている。
【0032】
ポンプハウジング部330の底板部の中央には、図5に示すように、燃料吸引ポート333が軸方向に突出するように形成されている。そして、ポンプハウジング部330の燃料吸引ポート333に対して、ハウジング内部から燃料ポンプ32の吸引ポート32eが接続されている。また、ポンプハウジング部330の燃料吸引ポート333の突出端が燃料フィルタ36の連結部材360に接続されている。
【0033】
<燃料フィルタ36について>
燃料フィルタ36は、燃料を濾過して燃料中の異物を除去する部材であり、図6図7に示すように、側面形状が略逆L字形をした扁平な袋状に形成されている。即ち、燃料フィルタ36は、側面形状が方形の角部の一つが三つの角部を残して概ね方形状に切り欠かれた切欠部36kを備えた多角形を成している。そして、燃料フィルタ36は、切欠部36kが燃料液面低下時に燃料液面から最も露出し易い位置となるように上側に配置されている。燃料フィルタ36は、袋状に形成された濾過材からなるフィルタ部材361と、フィルタ部材361を内側から支える形状保持部材(図示両略)とを備えている。また、燃料フィルタ36は、図5に示すように、フィルタ部材361の内部空間Sとポンプハウジング部330の燃料吸引ポート333とを連通させる連結部材360を備えている。
【0034】
燃料フィルタ36の連結部材360には、図5に示すように、フィルタ部材361の内部空間Sとポンプハウジング部330の燃料吸引ポート333とを連通させる燃料通路(「課題を解決するための手段」における燃料吸込口に相当する)362が形成されている。燃料フィルタ36は、図1、及び図7に示すように、切欠部36kを上側にして縦向きの状態でハウジング本体部320の円盤状の蓋部322の斜め後下方位置で、圧力調整弁34が収納される調整弁収納凹部325よりも低い位置に配置されている。
【0035】
<リターン配管350について>
装置ハウジング300のリターン配管350は、図5等に示すように、圧力調整弁34の排出ポート34sから排出された余剰燃料を燃料フィルタ36まで戻す配管である。リターン配管350は、図5図7に示すように、配管本体部352と、その配管本体部352の基端側(前端側)に設けられた係合キャップ部354と、配管本体部352の先端側(後端側)に設けられた幅広部355と、幅広部355の先端から燃料フィルタ36の切欠部36kの上面36uに沿って延びるガイド部356とから構成されている。
【0036】
リターン配管350の係合キャップ部354は、図6図7に示すように、円周方向において複数に分割された係合壁部(図番省略)によりキャップ状に形成されている。そして、リターン配管350の係合キャップ部354がハウジング本体部320の調整弁収納凹部325を径方向外側から覆った状態で、ハウジング本体部320と係合するようになる。これにより、図5に示すように、圧力調整弁34の排出ポート34sとリターン配管350とが接続される。
【0037】
リターン配管350の幅広部355は、図5図6に示すように、管状に形成された配管本体部352の幅寸法を広げるように形成した部分であり、底面が平坦になるように加工されている。幅広部355の底面の内側幅は、燃料フィルタ36の外形の左右幅と同等とされている。リターン配管350のガイド部356は、幅広部355の平坦な底面の幅寸法とほぼ等しい幅寸法で形成された帯板状の部材である。ガイド部356は、図7に示すように、幅広部355の先端から約20°程度下方に折り曲げられ、傾斜した状態で形成されている。
【0038】
リターン配管350は、図7に示すように、係合キャップ部354がハウジング本体部320と係合した状態で水平後方に延びるように位置決めされる。この状態で、リターン配管350のガイド部356は、燃料フィルタ36の切欠部36kの上方でその切欠部36kの上面36uにほぼ沿うようになる。これにより、リターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料は、ガイド部356の働きで燃料フィルタ36の切欠部36kを通じて燃料フィルタ36内に導入され、燃料ポンプの燃料吸込口である燃料通路362に向けて流れる。即ち、リターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料の液流は燃料ポンプの燃料通路362に流入し易くなる。
【0039】
<燃料供給装置10の燃料供給装置本体部30の動作について>
燃料供給装置本体部30の燃料フィルタ36を、図1図3に示すように、燃料タンクTの側面開口から左タンク部Th内に挿入し、前記側面開口をハウジング本体部320の円盤状の蓋部322で塞いだ状態で、燃料供給装置本体部30は左タンク部Th内に設置される。この状態で、燃料供給装置本体部30の燃料フィルタ36は、切欠部36kを上側とした縦向きの状態で左タンク部Th内の最も低い位置に設置されるようになる。
【0040】
燃料供給装置本体部30の燃料ポンプ32が駆動されると、図4図5に示すように、燃料タンクT内の燃料Fは、燃料フィルタ36を通過し、その燃料フィルタ36の内部空間S、連結部材360の燃料通路362を介して燃料ポンプ32の吸引ポート32eに導かれる。燃料ポンプ32に吸引された燃料Fは、燃料ポンプ32のポンプ部で加圧されて吐出ポート32pからハウジング本体部320の燃料通路327に吐出される。
【0041】
燃料ポンプ32の吐出ポート32pからハウジング本体部320の燃料通路327に吐出された燃料Fは、圧力調整弁34によって設定圧力を超えないように調圧される。そして、圧力調整弁34によって調圧された燃料Fが、図4に示すように、ハウジング本体部320の燃料吐出ポート328から燃料供給配管13を介してエンジンの燃料噴射装置18に圧送される。
【0042】
また、圧力調整弁34が燃料Fの圧力を調整する際に生じた余剰燃料は、図5に示すように、圧力調整弁34の排出ポート34sからリターン配管350によって燃料フィルタ36の切欠部36kの位置まで導かれる。即ち、余剰燃料は、図7に示すように、リターン配管350の配管本体部352、幅広部355によって圧力調整弁34の水平後方に導かれ、さらに下方に傾斜したガイド部356によって燃料フィルタ36の切欠部36kを通じて燃料フィルタ36内に導入され、燃料ポンプの燃料吸込口である燃料通路362に向けて流れる。即ち、リターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料の液流は燃料ポンプの燃料通路362に流入し易くなる。
【0043】
リターン配管350を流れる余剰燃料は、幅広部355で液流の幅を広げられ、その幅は燃料フィルタ36の外形幅と同等とされる。そのため、余剰燃料は、燃料フィルタ36の外側に漏れる量が抑制され、燃料フィルタ36内に流入して、燃料フィルタ36内に開口する燃料通路362に高い比率で回収される。
【0044】
これにより、燃料タンクT内の燃料残量が減少して燃料フィルタ36が燃料Fの液面から露出した状態おいて、圧力調整弁34の余剰燃料を効率的にエンジンに圧送できるようになる。この結果、燃料フィルタ36が燃料Fの液面から露出した状態における燃料Fの圧送可能時間を極力延長できる。
【0045】
<本実施形態に係る燃料供給装置10の長所について>
本実施形態に係る燃料供給装置10によると、リターン配管350は、圧力調整弁34の位置から燃料フィルタ36の近傍まで延び、そのリターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料の液流が燃料フィルタ36の表面に当たるように設置されている。このため、燃料タンクT内の燃料残量が減少して燃料フィルタ36が燃料の液面から露出した状態おいて、余剰燃料を効率的にエンジンに圧送できるようになる。これにより、燃料フィルタ36が燃料の液面から露出した状態における燃料の圧送可能時間を延長できる。
【0046】
<変更例1>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図7等に示すように、リターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料の液流を帯板状のガイド部356によって燃料フィルタ36の上面36uに掛ける(当てる)例を示した。しかし、図8に示すように、リターン配管350の配管本体部352の先端部分を斜めに切断することで、先端開口部352kの下側にガイド部352xを形成することも可能である。即ち、ガイド部352xは、先端開口部352kの底部の突出部分であるため、そのガイド部352xよって燃料フィルタ36の上面36uに余剰燃料を導けるようになる。
【0047】
<変更例2、3>
また、図9図10に示すように、リターン配管350の配管本体部352の先端開口部に燃料フィルタ36の周縁フランジ部36fを挟むU字溝状のガイド部355x、あるいはV字溝状のガイド部355vを形成することも可能である。これにより、リターン配管350の先端開口部から流出する燃料の液流を確実に燃料フィルタ36の表面に当てることができる。
【0048】
<変更例4>
さらに、図11に示すように、リターン配管350の幅広部355の先端に燃料フィルタ36を幅方向両側(厚み方向両側)から挟む一対の縦壁部357を設けることも可能である。これにより、リターン配管350の先端開口部から流出する燃料の液流を確実に燃料フィルタ36の上面36uに当てることができる。即ち、一対の縦壁部357が本発明のガイド部として働くようになる。
【0049】
<変更例5>
図12~15には変更例5を示す。変更例5では、図6、7の実施形態に比べて幅広部355の前後方向長さを長くされ、リターン配管350の先端開口側を後方に突出させた突出部(「課題を解決する手段」におけるガイド部に相当する)358を備える。この突出部358は、四角筒形状とされ、燃料フィルタ36の切欠部36kに向けて配置されている。突出部358は、前後方向の中央部付近から後方の先端側の内底面358bが図7のガイド部356と同様、下方に向けて傾斜した傾斜面にて形成されている。それにより、突出部358の開口面積は拡大されている。また、先端開口部の開口幅は燃料フィルタ36の外形幅と同等とされている。
【0050】
突出部358をこのように構成することにより、リターン配管350の先端開口部から流出する余剰燃料が燃料フィルタ36の切欠部36kから燃料フィルタ36内に誘導され、突出部358の下方に位置する燃料通路362に流入し易く、圧力調整弁34における余剰燃料を効率的にエンジンに圧送できる。しかも、余剰燃料の量が少ない状態でも水平配置のリターン配管350及び突出部358の先端開口部の傾斜した内底面358bを通って余剰燃料を燃料フィルタ36にスムーズに導くことができる。燃料フィルタ36内に導かれた余剰燃料は、突出部358の先端開口部の下方に位置する燃料ポンプ32の燃料吸込口である燃料通路362に吸い込まれて燃料ポンプ32から吐出される。また、突出部358の先端開口部を通って燃料フィルタ36に流れる余剰燃料は、先端開口部の開口幅と燃料フィルタ36の外形幅が同等とされているため、燃料フィルタ36外への漏れを抑制して効率的に燃料フィルタ36に供給される。
【0051】
<変更例6>
変更例6に係るリターン配管350は、図16に示すように、配管本体部352の先端側に燃料を貯留するための燃料貯留部359を備えている。燃料貯留部359は、配管本体部352よりも大径の円筒状に形成されており、配管本体部352と同軸に設けられている。そして、燃料貯留部359の先端側の側面(燃料フィルタ36側の側面)に開口部359hが形成されている。これにより、リターン配管350の燃料貯留部359に貯められた余剰燃料を開口部359hから流出させて燃料フィルタ36の表面に当てられるようになる。なお、開口部359hは、燃料貯留部359の先端以外の側面に形成することも可能である。
【0052】
ここで、変更例6では、燃料タンクT内に設けられるリターン配管350の配管本体部352の先端部に燃料貯留部359を設ける例を示した。しかし、従来の燃料供給装置のように、燃料タンクTの外側に配管されるリターン配管において、燃料タンク内に収納される配管の先端部分に燃料貯留部359を形成し、開口部359hから流出する余剰燃料の液流を燃料フィルタ36の表面に当てる構成でも可能である。
【0053】
<その他の変更例>
また、本実施形態では、オートバイの燃料タンクTにおいて本発明に係る燃料供給装置10を使用する例を示したが、乗用車、トラックあるいは重機等の特殊車両の燃料タンクに本発明に係る燃料供給装置10を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・・燃料供給装置
32・・・・燃料ポンプ
34・・・・圧力調整弁
36・・・・燃料フィルタ
36k・・・切欠部
36u・・・上面
350・・・リターン配管
352・・・配管本体部
352x・・ガイド部
352k・・先端開口部
354・・・係合キャップ部
355・・・幅広部
355x・・ガイド部
355v・・ガイド部
356・・・ガイド部
357・・・縦壁部(ガイド部)
358・・・突出部(ガイド部)
358b・・内底面
359・・・燃料貯留部
359h・・開口部
360・・・連結部材
362・・・燃料通路(燃料吸込口)
T・・・・・燃料タンク
Th・・・・左タンク部(燃料タンク)
Tm・・・・右タンク部
Tr・・・・連通タンク部
図1
図2
図3
図4
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図6
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図9
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