(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164794
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】光半導体素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/026 20060101AFI20241120BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20241120BHJP
G02F 1/025 20060101ALI20241120BHJP
G02F 1/017 20060101ALI20241120BHJP
H01S 5/50 20060101ALI20241120BHJP
H01S 3/063 20060101ALI20241120BHJP
G02F 1/295 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01S5/026 618
H01S5/026 616
G02B6/122 311
G02F1/025
G02F1/017 503
H01S5/50 610
H01S3/063
G02F1/017 506
G02F1/295
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004283
(22)【出願日】2024-01-16
(62)【分割の表示】P 2023566997の分割
【原出願日】2023-05-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 智志
(72)【発明者】
【氏名】松浦 雅広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼子
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
5F172
5F173
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB03
2H147AB04
2H147AB24
2H147AB28
2H147AC01
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2H147BB04
2H147BD01
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2H147GA26
2K102AA20
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2K102EB28
5F172AL05
5F172AL07
5F172AM05
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5F172BB12
5F173AB13
5F173AD12
5F173AD18
(57)【要約】
【課題】光ファイバへの結合が容易な光半導体素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の光半導体素子500aは、第1導波路80と、第1導波路80の他端と接続され、他端に向かって導波路幅が減少し、利得導波路からなる第1利得テーパ型導波路82と、第1利得テーパ型導波路82と接続され、第1導波路80の導波路幅よりも狭い第2導波路81と、第1導波路80に接続され、光の伝搬方向に沿って導波路幅が増大する形状を呈し、利得導波路からなる第2利得テーパ型導波路15と、を備え、第1利得テーパ型導波路82は、入射した基本モード光の伝搬によって高次モード光が励起されるテーパ形状を有し、第1利得テーパ型導波路82内の基本モード光と高次モード光との干渉により伝搬光の強度が1か所に結像する結像位置において第1利得テーパ型導波路82と第2導波路81が接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成され、高次モードの伝搬光が許容される第1導波路と、
前記半導体基板上に形成され、一端が前記第1導波路の他端と接続され、他端に向かって導波路幅が減少し、光学利得を持つ利得導波路コア層を有する利得導波路からなる第1利得テーパ型導波路と、
前記半導体基板上に形成され、一端が前記第1利得テーパ型導波路と接続され、前記第1導波路の導波路幅よりも狭い導波路幅を有する第2導波路と、
前記半導体基板上に形成され、前記第1導波路の一端に接続され、光の伝搬方向に沿って導波路幅が増大する形状を呈し、前記利得導波路からなる第2利得テーパ型導波路と、を備え、
前記第1利得テーパ型導波路は、前記第1導波路の他端から入射した基本モード光が伝搬することによって前記第1利得テーパ型導波路内に高次モード光が励起されるテーパ形状を有し、前記第1利得テーパ型導波路内の前記基本モード光と前記高次モード光との干渉により伝搬光の強度が1か所に結像する結像位置が存在し、前記結像位置において前記第1利得テーパ型導波路と前記第2導波路が接続されることを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
前記結像位置は、前記第1導波路から入射した光が伝搬する際に最初に結像する位置であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記第1利得テーパ型導波路の他端と前記第2導波路の一端とが接続する接続部において、前記第1利得テーパ型導波路の他端の導波路幅は前記第2導波路の一端の導波路幅よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1利得テーパ型導波路の光の伝搬方向における導波路長をL、前記第1導波路の他端と前記第1利得テーパ型導波路の一端との接続部における前記第1利得テーパ型導波路の一端の導波路幅をWとする場合に、導波路長Lと導波路幅Wとの比率であるL/Wが10以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記第2導波路は、利得導波路からなることを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第2導波路は、伝搬光の波長に対して透明である透明導波路からなることを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記第2利得テーパ型導波路は、前記第2利得テーパ型導波路の導波路幅が小さい側から入射した光が前記第2利得テーパ型導波路内と伝搬する場合に高次モードの発生が抑制されるテーパ形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項8】
前記半導体基板上に形成され、伝搬光を変調する変調信号光生成部をさらに備え、
前記変調信号光生成部の出射側に前記第2利得テーパ型導波路の入射側が接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体素子。
【請求項9】
前記変調信号光生成部内にレーザ光を発生させるレーザ光源部、及び前記レーザ光源部で発生するレーザ光を光変調し、変調レーザ光を出力する光変調器部が設けられ、
前記変調信号光生成部は、光の伝搬方向に沿って前記レーザ光源部と前記光変調器部と前記第2利得テーパ型導波路が順に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の光半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信を行うためのデバイスの一つとして、半導体を用いてレーザ光を発生させて出力する光半導体素子が知られている。例えば、レーザ部と電界吸収型(EA:Electro Absorption)光変調器と半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)とを集積した光半導体素子が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
これらのような従来の光半導体素子において、レーザ部は注入された電流に応じてレーザ光を発生する。EA変調器は、印加された電圧に応じて半導体層の光吸収スペクトルが変化する効果を用いて変調を行う機能を有しており、レーザ部が発生させたレーザ光に変調を行った変調レーザ光を発生する。半導体光増幅器は、注入された電流に応じた誘導放出が生じることで光強度を増加させる機能を有しており、EA変調器が変調した変調レーザ光を増幅させた増幅レーザ光を発生する。
【0004】
しかしながら、光通信技術の普及に伴い、光半導体素子の光出力のさらなる増大が期待されている。高出力化に適したSOAとして、光の伝搬方向に沿って導波路幅を増大し、スポットサイズを拡大するテーパ形状のSOAを集積し、さらに、出力光を光ファイバへ良好に結合させるために長尺のスポットサイズ変換器を集積した素子構造が報告されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-160840号公報
【特許文献2】特開平08-195525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光半導体素子の後段側にSOAを設けることにより、光出力の増大が可能となる。光が増幅されてSOAの活性層位置における光子密度が増大する駆動条件においては、電流注入されたキャリアが誘導放出により消費され枯渇する等により、利得飽和が生じることが知られている。そのため、特許文献1に記載の半導体光集積素子では、導波路幅が均一幅のSOAを用いた場合、光強度の増幅が飽和し飽和強度以上の高光出力化が制限されるようになる。
【0007】
特許文献2に記載の半導体レーザで示される、より高光出力化が可能となるように、光の伝搬方向に沿って導波路幅を増大し、スポットサイズを拡大するテーパ形状のSOAを集積した素子構造では、光強度が増幅される一方でスポットサイズの水平方向の拡大により光子密度の増大が抑制されるため、利得飽和が軽減され高光出力化が図られる。
【0008】
スポットサイズを拡大するテーパ形状のSOAからの出力光の導波モード形状は、導波モードの垂直方向のサイズと水平方向のサイズの比率である真円度が小さくなるため、光ファイバへの結合が悪化してしまう。特許文献2では、SOAの後段にスポットサイズを縮小するテーパ形状のスポットサイズ変換器を集積することにより、導波モード形状を真円に近づけて光ファイバへの結合の改善を図る素子構造が開示されている。しかしながら、水平方向に拡大された導波モード形状を真円に近づけるようにスポット形状を変換するには、長尺の変換エレメントが必要となり、光半導体素子が大型化してしまうという問題があった。
【0009】
本開示は上記のような問題点を解消するためになされたもので、半導体基板の水平方向のスポットサイズが大きく真円度の小さい導波モード形状の導波光を、光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換することが可能な光半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示による光半導体素子は、
半導体基板上に形成され、高次モードの伝搬光が許容される第1導波路と、
前記半導体基板上に形成され、一端が前記第1導波路の他端と接続され、他端に向かって導波路幅が減少し、光学利得を持つ利得導波路コア層を有する利得導波路からなる第1利得テーパ型導波路と、
前記半導体基板上に形成され、一端が前記第1利得テーパ型導波路と接続され、前記第1導波路の導波路幅よりも狭い導波路幅を有する第2導波路と、
前記半導体基板上に形成され、前記第1導波路の一端に接続され、光の伝搬方向に沿って導波路幅が増大する形状を呈し、前記利得導波路からなる第2利得テーパ型導波路と、を備え、
前記第1利得テーパ型導波路は、前記第1導波路の他端から入射した基本モード光が伝搬することによって前記第1利得テーパ型導波路内に高次モード光が励起されるテーパ形状を有し、前記第1利得テーパ型導波路内の前記基本モード光と前記高次モード光との干渉により伝搬光の強度が1か所に結像する結像位置が存在し、前記結像位置において前記第1利得テーパ型導波路と前記第2導波路が接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示による光半導体素子によれば、半導体基板の水平方向のスポットサイズが大きく真円度の小さい導波モード形状の導波光を、光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換する光半導体素子が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、実施の形態1に係る光半導体素子をそれぞれ示す上面図である。
【
図2】実施の形態1に係る光半導体素子を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る光半導体素子内の伝搬光の光強度分布を示す図である。
【
図4】実施の形態1の変形例に係る光半導体素子内の伝搬光の光強度分布を示す図である。
【
図5】
図5Aは実施の形態1に係る光半導体素子を、
図5B及び
図5Cは、実施の形態1の他の変形例に係る光半導体素子をそれぞれ示す上面図である。
【
図6】実施の形態2に係る光半導体素子を示す上面図である。
【
図7】実施の形態2に係る光半導体素子を示す断面図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、実施の形態2の変形例1に係る光半導体素子を示す上面図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは実施の形態2の変形例2に係る光半導体素子を示す上面図である。
【
図11】実施の形態2の変形例4に係る光半導体素子を示す上面図である。
【
図12】実施の形態3に係る光半導体素子を示す上面図である。
【
図13】実施の形態3に係る光半導体素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
各実施の形態に係る光半導体素子について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0014】
<実施の形態1>
図1A及び
図1Bは、それぞれ実施の形態1に係る光半導体素子500、500aを示す上面図である。なお、図を分かり易くするために、導波路の光伝搬方向、及び光伝搬方向に垂直な方向の縮尺は、光伝搬方向に圧縮して表示している。
【0015】
実施の形態1に係る光半導体素子500は、第1導波路10と、透明テーパ型導波路12と、第2導波路11と、横方向クラッド領域13と、を備える。
【0016】
図1Aに示すように、導波路幅がW1である第1導波路10と、第1導波路10側の一端の導波路幅がW1、他端の導波路幅がW2、光の伝搬方向における導波路長がL1であり、伝搬光の波長(以下、使用波長と呼ぶ)において透明である、つまり、伝搬光を吸収しないテーパ型導波路(以下、透明テーパ型導波路12と呼ぶ)と、導波路幅がW3である第2導波路11が
図1Aの左側から順に、すなわち、光の伝搬方向に沿って接続されている。第2導波路11も、透明テーパ型導波路12と同様、使用波長において透明である。つまり、第2導波路11及び透明テーパ型導波路12は、使用波長において、透明導波路であると言える。透明導波路を用いるのは、導波路内の光強度が増大する集光位置、つまり透明テーパ型導波路12の後段部分及び第2導波路11において透明であるので、過大な光子密度に起因する利得飽和等による信号光の劣化が発生することを抑制できるからである。これにより真円度が低く光ファイバへの結合が困難な第1導波路10内のレーザ光を、真円度が高く光ファイバへの結合率が改善した第2導波路11内のレーザ光に変換するモード変換エレメント、つまり透明テーパ型導波路12を、信号光の劣化を抑制しつつ小型化できるようになる。
【0017】
透明テーパ型導波路12のテーパ形状は導波路幅W1>導波路幅W2の関係を有する。すなわち、透明テーパ型導波路12の一端側の導波路幅W1から他端側の導波路幅W2へと、導波路幅が光の伝搬方向に沿って減少していく形状を呈する。また、透明テーパ型導波路12の導波路長L1と透明テーパ型導波路12の一端側、つまり第1導波路10側の導波路幅W1との比率であるL1/W1が10以下であることが好適である。かかる構成により、真円度が低く光ファイバへの結合が困難な第1導波路10内のレーザ光を、真円度が高く光ファイバへの結合率が改善した第2導波路11内のレーザ光に変換するモード変換エレメント、すなわち、透明テーパ型導波路12を小型化できるからである。
【0018】
光半導体素子500において、第1導波路10、透明テーパ型導波路12、及び第2導波路11が形成されている以外の領域は、横方向クラッド領域13が設けられている。
【0019】
第1導波路10、透明テーパ型導波路12及び第2導波路11の導波路幅W1、W2及びW3のサイズの組み合わせの事例として、例えば使用波長1.3μmにおいて、W1=10.0μm、W2=3.5μm、W3=2.0μm、L1=80μm、または、W1=7.0μm、W2=2.8μm、W3=2.0μm、L1=50μmの組み合わせが挙げられる。透明テーパ型導波路12のテーパ形状は、上面視において台形を呈する。
【0020】
図1Bは、
図1Aに示される光半導体素子500の構成要素である導波路を利得導波路とした場合の光半導体素子500aの上面図である。つまり、光半導体素子500aは、利得第1導波路80と、利得第2導波路81と、利得テーパ型導波路82と、横方向クラッド領域13と、を備える。以下では、透明テーパ型導波路12と利得テーパ型導波路82を総称して、単にテーパ型導波路と呼ぶ場合がある。また、以下では、
図1Aに関する説明を述べるが、
図1Bに示される光半導体素子500aでは、後述の
図1Aで示される光半導体素子500が奏する効果に加えて、伝搬光の強度を増幅する結果、光半導体素子の高出力化が可能になるという効果を奏する。利得テーパ型導波路82を用いると、高光強度下で発生し易く光信号劣化の要因となる利得飽和等の非線形現象が軽微な信号劣化にとどまる光強度条件下において、利得テーパ型導波路82内での光強度及び利得第2導波路81における出力光強度を増大できるからである。
【0021】
<実施の形態1に係る光半導体素子の断面構造>
図2は、実施の形態1に係る光半導体素子500を示す断面図であり、
図1AのA-A線に沿った断面を示している。光半導体素子500は、半導体基板20上に形成された下部クラッド層21及び透明導波路コア層22からなり、断面が凸状を呈する透明導波路メサ部22aと、透明導波路メサ部22aの両側面に形成された横方向クラッド層23と、透明導波路メサ部22aの上面及び横方向クラッド層23の上面に形成された上部クラッド層24と、を備える。
【0022】
<実施の形態1に係る光半導体素子の製造方法>
半導体基板20上に、下部クラッド層21、透明導波路コア層22をエピタキシャル結晶成長方法などにより順次積層する。フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて所望の形状のエッチングマスクを形成し、ドライエッチング技術等により透明導波路コア層22の全部及び下部クラッド層21の途中に達するまで横方向クラッド層23をエッチング除去して、凸状を呈する透明導波路メサ部22aを形成する。その後、透明導波路メサ部22aの両側面を埋め込むように横方向クラッド層23を埋込結晶成長する。埋込結晶成長後、上部クラッド層24をエピタキシャル結晶成長方法などにより積層することで、
図2に示される断面構造が得られる。
【0023】
透明導波路コア層22の屈折率は、下部クラッド層21、横方向クラッド層23、及び上部クラッド層24の各層の屈折率よりも高屈折率となるように、透明導波路コア層22を構成する材料が選択されている。かかる材料として、半導体基板20、下部クラッド層21、横方向クラッド層23、上部クラッド層24がそれぞれInPからなり、透明導波路コア層22が使用波長の光に対して透明な組成であるInGaAsPまたはInAlGaAsからなる材料が挙げられる。これらの各層は、公知の結晶成長技術を用いて半導体基板上にエピタキシャル結晶成長することが可能である。
【0024】
図1AのA-A線に沿った断面以外の断面においても、透明導波路コア層22の導波路幅が異なる以外は同様の断面構造を呈する。上部クラッド層24の層厚として、たとえば2.0μm、透明導波路コア層22の層厚として、たとえば0.4μmがそれぞれ好適である。
【0025】
図1Aの上面図に示される実施の形態1に係る光半導体素子500に関して、第1導波路10側から基本モード光が入射した場合の伝搬光の光強度分布を、市販の導波路シミュレータを用いて計算した結果を
図3に示す。光強度は濃淡で表示され、濃いほど光強度が大きいことを表している。第1導波路10の一端から入射した基本モード光は、第1導波路10の他端側から透明テーパ型導波路12へと入射して導波路幅を狭めながら伝搬していく。
【0026】
図3中のD-D線の位置における伝搬光は、第1導波路10内の伝搬光とよく類似している。伝搬光が透明テーパ型導波路12内を伝搬するにしたがって、基本モード光が高次モード光へと変換され、基本モード光と高次モード光との間の干渉により、伝搬光全体での光強度の形状が複雑化していく。
図3中のE-E線の位置における伝搬光は、次数の異なる導波モード光の干渉のため、光半導体素子500の中央部の光強度が最大ではなくなり、双峰状に分裂した光強度形状を呈している。
【0027】
図3中のF-F線の位置に至ると、次数の異なる導波モード光の位相がそろい、第1導波路10の伝搬光よりもビームサイズの小さい、単峰状の光強度形状の光に結像する。この結像位置で結像したビームのサイズに適合する第2導波路11に接続することにより、第1導波路10の伝搬光を低損失で第2導波路11に結合させることができる。すなわち、実施の形態1に係る光半導体素子500を構成する透明テーパ型導波路12は、モードサイズ変換ができる一出力一入力のMMI(多モード干渉計、MultiMode Interferometer)として動作していると言うことができる。
なお、透明テーパ型導波路12を著しく長尺化させた場合では、基本モード光が光学的な意味で断熱的に伝搬するため高次モード光への変換が生じず、伝搬光の強度分布は単峰状のままとなり、
図3のような伝搬光の強度分布にならない。
【0028】
図3に示される場合の計算結果によると、第1導波路10から第2導波路11に移行する導波光の光強度の損失は0.06dBと、低損失な値となる。実施の形態1に係る光半導体素子500の素子構造によれば、半導体基板20に水平方向のスポットサイズが大きく真円度の小さい導波モード形状の導波光を、光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換する光半導体素子を提供することが可能になる。
【0029】
すなわち、実施の形態1に係る光半導体素子500では、透明テーパ型導波路12は、第1導波路10の他端から入射した基本モード光が伝搬することによって透明テーパ型導波路12内に高次モード光が励起されるテーパ形状を有し、さらに、透明テーパ型導波路12内の基本モード光と高次モード光との干渉により伝搬光の強度が1か所に結像する結像位置が存在し、この結像位置において透明テーパ型導波路12と第2導波路11が接続されるので、水平方向のスポットサイズが大きく真円度の小さい導波モード形状の導波光を、光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換する光半導体素子を提供することが可能となる効果を奏する。なお、上述の結像位置は、第1導波路10から入射した光が伝搬する際に最初に結像する位置であることが望ましい。また、結像位置において透明テーパ型導波路12と第2導波路11が接続されるとは、結像位置を中心として集光性が良好に維持される範囲である、光波長の±5倍以内の範囲内で両者が接続されていれば良いということを意味する。
【0030】
実施の形態1に係る光半導体素子500の素子構造の特徴である、透明テーパ型導波路12内の基本モード光と高次モード光との干渉により伝搬光の強度が1か所に結像する結像位置が存在し、この結像位置で透明テーパ型導波路12と第2導波路11が接続されるという構成は、たとえば上述の導波路シミュレータを用いて、第1導波路10の導波路幅W1、透明テーパ型導波路12の第2導波路11側の導波路幅W2、透明テーパ型導波路12の導波路長L1と第2導波路11の導波路幅W3などをパラメータとして、各パラメータを変えながら計算を繰り返すことにより、実現することが可能である。
【0031】
<実施の形態1の変形例>
図4は、実施の形態1の変形例に係る光半導体素子において、第1導波路10側から基本モード光が入射した場合の伝搬光の光強度分布を、市販の導波路シミュレータを用いて計算した結果を表している。
図4の光半導体素子のサイズの組み合わせは、使用波長1.3μmにおいて、W1=10.0μm、W2=2.8μm、W3=2.0μm、L1=150μmである。光の入射の状況は
図3の場合と同じである。
【0032】
図4中のG-G線の位置における伝搬光の光強度形状は、
図3のD-D線の位置における伝搬光の光強度形状と同様に、第1導波路10の基本モードに類似している。H-H線の位置とI-I線の位置の光強度形状は、それぞれ
図3のE-E線の位置、F-F線の位置の光強度形状と定性的に同じ、すなわち、双峰的形状と、導波路中央の1か所へ結像した形状である。さらに光が伝搬するにしたがい、J-J線の位置で光強度形状が再び双峰的形状になり、K-K線の位置において2回目の結像形状となる。
図4は、この結像光を導波路幅の適合した第2導波路11に結合させた素子構造を示している。
【0033】
I-I線の位置における結像光のサイズとK-K線の位置の結像光のサイズは、K-K線の位置の方が小さくなっており、I-I線の位置ではビームサイズの縮小率が劣ることになる。また、2回目以降の結像位置では、結像位置がテーパ形状の先端になるほど、繰り返し結像位置が生じる位置の間隔が接近するため、均一の導波路幅である第2導波路11に結合させる場合に、結合率が素子構造ばらつきに対してより敏感に変動するようになるという不具合が発生する。つまり、
図3と
図4の素子構造を比較すると、
図3のように結像位置の出現が早い方が光結合の素子構造ばらつきに対する許容度が大きくなるため、光半導体素子として好適である。
【0034】
<実施の形態1の他の変形例>
図5B及び
図5Cは、実施の形態1の他の変形例に係る光半導体素子510a、510bの上面図をそれぞれ表す図である。
図5Aは、
図1Aに示す実施の形態1に係る光半導体素子500の上面図のうち、透明テーパ型導波路12と第2導波路11との接続部の近傍を拡大して表示した図である。
図5Bに示す光半導体素子510a及び
図5Cに示す光半導体素子510bの素子構造は、それぞれ
図5Aに示す光半導体素子500の素子構造を変形した変形例である。
【0035】
実施の形態1の他の変形例に係る光半導体素子である
図5B及び
図5Cに示す素子構造では、透明テーパ型導波路12と第2導波路11との間に、両者を接続する接続用透明テーパ型導波路14が設けられる。接続用透明テーパ型導波路14は、透明テーパ型導波路12との接続部で導波路幅がW4であり、透明テーパ型導波路12の導波路幅W2以下となる導波路幅に設定される。第2導波路11の接続部では、接続用透明テーパ型導波路14の導波路幅は、第2導波路11の導波路幅W3と同一の導波路幅に設定される。接続用透明テーパ型導波路14の光の伝搬方向における導波路長はL2である。
【0036】
MMIと入出力用の導波路の接続部にテーパ型導波路を設ける構造は、接続時の損失が素子構造ばらつきに対して敏感に変化する現象を緩和したり、接合界面で生じる戻り光の反射率を低減したりする効果があるため、望ましい。
【0037】
接続用透明テーパ型導波路14の光の伝搬方向における導波路長L2には接続用透明テーパ型導波路14内での高次モードへの再変換が生じない限り特段の上限はないが、素子の小型化の意味で短い方が望ましい。たとえば光半導体素子の小型化のために導波路長L2を使用波長の10倍以下とした場合であっても、素子構造ばらつきの許容度の改善、及び戻り光反射率の低減の効果が得られる。また、
図5Cに示す光半導体素子510bの素子構造のように、W4=W2とする素子構造でも、
図5Bに示す素子構造と同様の効果を奏する。
【0038】
なお、実施の形態1では透明テーパ型導波路12の形状が上面視において台形を呈する場合を一例として説明した。しかしながら、導波路の両側(台形の斜辺)が直線形状ではなく光半導体素子の中央位置に対して対称な曲線形状であっても、導波路幅が光の伝搬方向に沿って第1導波路10側から単調に減少するテーパ形状であれば、直線形状のテーパ形状の場合と同様に、小型かつ低損失で光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換することが可能な光半導体素子を得ることができる。
【0039】
<実施の形態1の効果>
以上、実施の形態1に係る光半導体素子によれば、テーパ型導波路内の基本モード光と高次モード光との干渉により伝搬光の強度が1か所に結像する結像位置が存在し、この結像位置において透明テーパ型導波路と第2導波路が接続される構成を有しているため、半導体基板の水平方向のスポットサイズが大きく真円度の小さい導波モード形状の導波光を、光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換することが可能な光半導体素子が得られるという効果を奏する。
【0040】
<実施の形態2>
実施の形態2に係る光半導体素子550では、実施の形態1で説明した素子構造に対して、
図6に示すように、利得導波路部100を第1導波路10に接続するように設ける。
図6は、
図1A及び
図1Bで示したものと同様に、光半導体素子550の上面図である。
【0041】
実施の形態2に係る光半導体素子550は、信号光の入射方向から、利得導波路入射部16と、利得テーパ型導波路15と、第1導波路10と、透明テーパ型導波路12と、第2導波路11と、を備える。利得導波路入射部16及び利得テーパ型導波路15は、利得導波路部100を構成する。光半導体素子550の出射側端面には低反射コーティング膜17が、入射側端面には低反射コーティング膜18がそれぞれ設けられている。
【0042】
第1導波路10、第2導波路11、及び透明テーパ型導波路12は
図1Aに示される素子構造、つまり、実施の形態1に係る光半導体素子500と同様である。利得導波路部100は、利得導波路入射部16及び利得テーパ型導波路15が、信号光の入射方向から順に接続されている。利得テーパ型導波路15は、利得導波路入射部16とは反対側の端部側で第1導波路10に接続されている。
【0043】
信号光が利得導波路入射部16側から光半導体素子550に入射し、第2導波路11側から出射する際に、利得導波路部100において信号光の光強度が増幅される。光半導体素子550の出射側端面に低反射コーティング膜17を、入射側端面に低反射コーティング膜18をそれぞれ設けることにより、両端面からの反射戻り光の干渉に起因する利得スペクトルの波長リップル等の挙動が発生することを防止できるため、光半導体素子550は波長依存性が低減された光増幅素子として動作可能である。
【0044】
<実施の形態2に係る光半導体素子の製造方法>
図7は、
図6のC-C線の位置における実施の形態2に係る光半導体素子550の断面図である。
図2で示される実施の形態1の素子構造と共通する半導体基板20、下部クラッド層21上に、利得導波路コア層25を積層する。利得導波路メサ部25aを形成するために、利得導波路コア層25の全部及び下部クラッド層21の途中までエッチングにより除去し、横方向クラッド層23を再結晶成長する。再結晶成長後、上部クラッド層24を積層することで、
図7に示す断面構造が形成される。エッチングと横方向クラッド層23の再結晶成長は、
図2に示す実施の形態1の素子構造を形成する場合と同様に実施することができる。
【0045】
<実施の形態2に係る光半導体素子の構造上の特徴>
利得導波路コア層25の屈折率は、下部クラッド層21、横方向クラッド層23、及び上部クラッド層24の屈折率よりも高屈折率になるように材料が選択されている。また、利得導波路コア層25は素子駆動時に光学利得を持つ。材料の一例として、半導体基板20、下部クラッド層21、横方向クラッド層23、上部クラッド層24がそれぞれInPからなり、利得導波路コア層25が順方向電流注入時に使用波長の光に対して光学利得を有する組成であるInGaAsPまたはInAlGaAsの多重量子井戸層からなる構成が挙げられる。これらの各層は、公知の結晶成長技術を用いて半導体基板上にエピタキシャル結晶成長することが可能である。
【0046】
図6におけるC-C線の位置以外の断面においても、利得導波路コア層25の導波路幅が異なる以外は同様の断面構造を呈する。
【0047】
電流注入のために、たとえば、半導体基板20と下部クラッド層21としてn型ドープのn-InP、上部クラッド層24としてp型ドープのp-InPを用いる一方、利得導波路コア層25としては意図的にドーピングしないように設定する。横方向クラッド層23は電流狭窄のために用いられる公知の半絶縁性のFeドープInP、またはp-InPとn-InPの界面で逆バイアス状態になるようにして高抵抗化した公知のpn接合付きInPを用いる。
【0048】
順方向電圧を印加するための電極として、半導体基板20の裏面に下部電極30を、上部クラッド層24の上にコンタクト層31及び上部電極32をそれぞれ設ける。各層の層厚の一例として、たとえば下部クラッド層21が0.5μm、利得導波路コア層25が0.2μm、上部クラッド層24が2.0μmの各層厚が挙げられる。
【0049】
また、第1導波路10との界面において、半導体基板20の厚さ方向のモードサイズが透明導波路と利得導波路との間で乖離しないように利得導波路コア層25と透明導波路コア層22の仕様を調整することが、上述の界面における導波モード形状のミスマッチによる伝搬損失増加を避けるために好適である。
【0050】
実施の形態2に係る光半導体素子550は上述のような素子構造とすることで、上部電極32から注入された電流が利得導波路コア層25まで効率よく到達し、使用波長の光に対する光学的な利得を発生させることが可能となる。
【0051】
実施の形態1で説明したように、透明テーパ型導波路12は、第1導波路10側の接続部における基本モード光を、第2導波路11に低損失で結合させるように調整される。したがって、利得導波路部100に入射した基本モードの信号光を可能な限り低損失で第2導波路11に結合させるためには、利得テーパ型導波路15と第1導波路10の接続部において増幅された信号光のうち、基本モード光の光強度が利得テーパ型導波路15内で励起されうる高次モード光の光強度と比較して支配的であることが必要である。
【0052】
これを言い換えると、利得テーパ型導波路15内で光学的な意味で断熱的に信号光が導波し、高次モードをほとんど励起することなしにスポットサイズを拡大することが必要である、ということになる。このためには、利得テーパ型導波路15の形状が、断熱的に導波するための上限以下のテーパ角となる細長い形状であることが必要となる。たとえば、第1導波路10側の導波路幅W1=10μm、利得テーパ型導波路15の導波路長L3=400μm以上であることが、上述の条件を満たす一例である。
【0053】
なお、断熱的に導波するための上限のテーパ角は、利得テーパ型導波路15の構造、すなわち利得導波路コア層25の層厚及びクラッド層との屈折率差により変化する。利得導波路コア層25の層厚が薄くなるほど導波路幅の変化量に対する導波モードの有効屈折率の変化が小さくなるため、基本モードから高次モードに変換されにくくなる。言い換えると、同一の導波路幅W1に対して、導波路長のより短いテーパ形状、より大きなテーパ角を有する利得テーパ型導波路15を用いることが可能になる。
【0054】
また、利得導波路コア層25の組成を短波長化するほど、クラッド層との屈折率差が小さくなり、導波路幅の変化量に対する導波モードの有効屈折率の変化が小さくなるため、上述の場合と同様に、導波路長のより短いテーパ形状、より大きなテーパ角を有する利得テーパ型導波路15を用いることが可能になる。
【0055】
また、実施の形態2に係る光半導体素子550では、公知の一定幅の導波路による半導体光増幅器に比べて利得テーパ型導波路15の導波路幅を広くできるので、光増幅時の導波路内での光子密度が低減する結果、利得飽和現象が抑制されるため、利得テーパ型導波路15からの全出力光の高出力化が可能になるという効果を奏する。
【0056】
<実施の形態2の変形例1>
図8A及び
図8Bは、実施の形態2の変形例1に係る光半導体素子560及び光半導体素子560aの上面図である。
図8Aに示される光半導体素子560は、信号光の入射方向から、斜め利得導波路43と、曲げ利得導波路42と、利得導波路入射部16と、利得テーパ型導波路15と、第1導波路10と、透明テーパ型導波路12と、第2導波路11と、曲げ導波路40と、斜め導波路41と、横方向クラッド領域13と、を備える。光半導体素子560の出射側端面には低反射コーティング膜17が、入射側端面には低反射コーティング膜18がそれぞれ設けられている。斜め利得導波路43と、曲げ利得導波路42と、利得導波路入射部16と、利得テーパ型導波路15とは、斜め入射付き利得導波路部101を構成する。
【0057】
図8Aに示される光半導体素子560の素子構造は、
図6に示される実施の形態2に係る光半導体素子550の素子構造において、第2導波路11から出射する信号光を曲げ導波路40及び斜め導波路41を介して、低反射コーティング膜17を設けた出射側端面に導波させる構成を有している。斜め導波路41は、導波路が出射側端面に対して垂直の場合に比べて、傾斜角度θ
1の角度分だけ出射側端面に対して傾斜させる。傾斜角度θ
1の一例として、7度が挙げられる。傾斜角度θ
1を7度以上とすることにより、導波路が垂直の場合よりも出射側端面からの戻り光反射率をさらに低反射にできるので、波長依存性がより低減された光増幅素子として動作可能となる。
【0058】
また、利得導波路入射部16に対しても同様に、曲げ利得導波路42及び斜め利得導波路43を設けて斜め入射付き利得導波路部101を構成し、低反射コーティング膜18を設けた入射側端面に導波させる。斜め利得導波路43は、入射側端面に対して導波路が垂直の場合に比べて傾斜角度θ2の角度分だけ傾斜させる。傾斜角度θ2の一例として、7度が挙げられる。傾斜角度θ2を7度以上とすることにより、入射側端面からの戻り光反射率を導波路が垂直の場合よりもさらに低反射にできるので、波長依存性がより低減された光増幅素子として動作可能となる。
【0059】
図8Bに示される光半導体素子560aの素子構造では、
図8Aの斜め導波路41に代えて先細のテーパ形状であるスポットサイズ変換導波路44を設ける。また、
図8Aの斜め利得導波路43に代えて先細のテーパ形状であるスポットサイズ変換利得導波路45を設け、スポットサイズ変換付き利得導波路102を構成する。このような素子構造にすることにより、光ファイバを用いて信号光の入出力を行う際の光ファイバとの結合損失が低減できるので、より利得の大きな光増幅素子を実現できる。
【0060】
<実施の形態2の変形例2>
図9A及び
図9Bは、実施の形態2の変形例2に係る光半導体素子570及び光半導体素子570aの上面図である。
図9Aに示される光半導体素子570は、
図8Aに示される光半導体素子560と比べて、曲げ利得導波路42及び斜め利得導波路43が、透明導波路である曲げ導波路40及び斜め導波路41に置換された素子構造である。
【0061】
図9Bに示される光半導体素子570aは、
図9Aに示される光半導体素子570と比べて、斜め導波路41がスポットサイズ変換導波路44に置換された素子構造である。このような素子構造としても、
図8Aで示される素子構造の場合と同様に、光ファイバを用いて信号光の入出力を行う際の光ファイバとの結合損失が低減できるので、利得の大きな光増幅器を実現できる。
【0062】
<実施の形態2の変形例3>
図10Aは、
図6で示される実施の形態2に係る光半導体素子550の素子構造の中で、第1導波路10の近傍を拡大して示した図である。
図10B、
図10C、及び
図10Dは、実施の形態2の変形例3である光半導体素子580a、光半導体素子580b、光半導体素子580cをそれぞれ示す上面図である。
【0063】
図10Bから
図10Dに示される各素子構造では、第1導波路10のうち利得テーパ型導波路15に接する一部の領域の導波路コア層を、利得導波路コア層25としている。いずれの場合も、利得導波路コア層25と透明導波路コア層22の界面が、導波路の光伝搬方向に対して傾斜した素子構造としている。
【0064】
図10Bから
図10Dに示される各素子構造とすることにより、
図10Aに示される素子構造に比べて、利得導波路コア層25と透明導波路コア層22との界面で発生する戻り光反射が低減されるため、理想的な光増幅器を構成することが可能となる。
【0065】
<実施の形態2の変形例4>
図11は、実施の形態2の変形例4に係る光半導体素子590の上面図であり、
図9Aに示される素子構造において、利得導波路入射部16の利得テーパ型導波路15に接しない側の一部を透明導波路コア層22とし、利得導波路コア層25と透明導波路コア層22の界面が、導波路の光伝搬方向に対して傾斜した素子構造としている。
【0066】
図11に示される素子構造とすることにより、
図9Aに示される素子構造に比べて利得導波路コア層25と透明導波路コア層22の界面で発生する戻り光反射が低減され、理想的な光増幅器を構成することが可能になる。
図9Aに示される素子構造のみならず、
図9Bに示される素子構造に対しても、利得導波路入射部16における斜め界面を設けることができるため、同様の戻り光反射の低減により理想的な光増幅器を構成することが可能になる。
【0067】
<実施の形態2の効果>
以上、実施の形態2に係る光半導体素子によると、実施の形態1に係る光半導体素子の素子構造に対して利得導波路を適切に接続することにより、増幅された信号光を小型かつ低損失で光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換することが可能になるという効果を奏する。
【0068】
<実施の形態3>
図12は、実施の形態3に係る光半導体素子600の上面図である。実施の形態3に係る光半導体素子600は、信号光の入射方向から、レーザ光源部50と、レーザ光変調器接続部51と、光変調器部52と、光変調器利得導波路接続部53と、利得導波路入射部16と、利得テーパ型導波路15と、第1導波路10と、透明テーパ型導波路12と、接続用透明テーパ型導波路14と、第2導波路11と、曲げ導波路40と、スポットサイズ変換導波路44と、横方向クラッド領域13と、を備える。レーザ光源部50と、レーザ光変調器接続部51と、光変調器部52と、光変調器利得導波路接続部53とは、変調信号光生成部200を構成する。光半導体素子600の出射側端面には高反射コーティング膜19が、入射側端面には低反射コーティング膜18がそれぞれ設けられている。
【0069】
実施の形態3に係る光半導体素子600では、実施の形態2に係る光半導体素子550に対して、
図12に示されるように、変調信号光生成部200を利得導波路入射部16に接続するように設ける点に特徴がある。
図12に示される光半導体素子600では、変調信号光生成部200として、分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)であるレーザ光源部50と電界吸収型光変調器である光変調器部52が、透明導波路であるレーザ光変調器接続部51を介して接続され、光変調器部52が透明導波路である光変調器利得導波路接続部53を介して利得導波路入射部16に接続される。
【0070】
なお、変調信号光生成部200として、他の構成、たとえば直接変調型半導体レーザ、マッハツェンダ光変調器付き半導体レーザ、マイクロリング光変調器付き半導体レーザといった他の変調信号光生成部を設けてもよい。
【0071】
図13は、
図12に示される実施の形態3に係る光半導体素子600の素子構造に関して、直線及び曲げ導波路の中央に沿った断面(非平面)における基板厚さ方向に対して平行な方向の断面図である。レーザ光源部50から曲げ導波路40に至る断面は基板端面に垂直な方向の断面であり、曲げ導波路40からスポットサイズ変換導波路44に至る断面は基板端面に対して傾斜した方向の断面である。
【0072】
実施の形態3に係る光半導体素子600において、信号光が導波される層として、信号光が入射する方向から、レーザ活性層60と、透明導波路コア層61と、光変調器活性層62と、透明導波路コア層63と、利得導波路コア層25と、透明導波路コア層22とが設けられている。
【0073】
半導体基板20、下部クラッド層21、上部クラッド層24については、実施の形態2に係る光半導体素子550の素子構造と同様である。半導体基板20の裏面に下部電極30を設ける。さらに、レーザ光源部50に電流注入するためのコンタクト層35及び上部電極36を設ける。下部クラッド層21の上にドーパントを意図的にドープしないレーザ活性層60を積層し、レーザ活性層60の上方に近接して、分布帰還型半導体レーザとして使用波長の光を出力させるための回折格子70を設ける。回折格子70は、半導体レーザの単一モード発振を安定化させる効果が知られている、回折格子間隔の異なる公知の位相シフト箇所を内部に設けた構造としてもよい。レーザ光源部50側の入射側端面には、高反射コーティング膜19を設け、利得テーパ型導波路15側への出力光が増大するようにする。
【0074】
透明導波路コア層61及び透明導波路コア層63は、透明導波路コア層22と同一組成及び層厚として、一括して成膜する。光変調器活性層62は、レーザ光源部50の発振波長が吸収端近傍波長域にあり、逆バイアス印加時に量子閉じ込めシュタルク効果が生じて吸収端近傍波長域の光吸収係数が増加するように調整された多重量子井戸層によって構成される。光変調器活性層62に逆バイアスを印加するために、コンタクト層33及び上部電極34を設ける。
【0075】
レーザ光変調器接続部51及び光変調器利得導波路接続部53は、上部電極36、上部電極34、上部電極32がそれぞれ相互の電気的分離が低抵抗化しないように必要な導波路長に設定して設ける。かかる導波路長の一例として、たとえば、レーザ光変調器接続部51と光変調器利得導波路接続部53の導波路長がそれぞれ50μmである場合が挙げられる。
【0076】
実施の形態3に係る光半導体素子600では、上部電極36と上部電極32との間に独立した定電圧の順方向電圧を印加して、レーザ光源部50及び利得導波路部100を駆動する。上部電極34には、適切な逆バイアス電圧と、光通信用に符号化された高周波の電圧信号を重畳した変調電気信号とを印加する。印加した変調電気信号に応じて光変調器部52の光吸収係数が変化し、変調信号光が生成される。
【0077】
変調信号光が利得導波路部100に入射し、基本モードが支配的な状態で光強度が増幅されて第1導波路10に到達する。その後、変調信号光が透明テーパ型導波路12を伝搬する際に、小型かつ低損失で光ファイバへの結合が容易な真円度が高い導波モード形状に変換されて第2導波路11に到達し、最終的にスポットサイズ変換導波路44から出射される。
【0078】
<実施の形態3の効果>
以上、実施の形態3に係る光半導体素子によれば、さらに変調信号光生成部を設けたので、変調された光信号が光増幅器により高出力化され、良好なビーム形状に成形された出射光として取り出すことが可能になるという効果を奏する。
【0079】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0080】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0081】
10 第1導波路、11 第2導波路、12 透明テーパ型導波路、13 横方向クラッド領域、14 接続用透明テーパ型導波路、15、82 利得テーパ型導波路、16 利得導波路入射部、17、18 低反射コーティング膜、19 高反射コーティング膜、20 半導体基板、21 下部クラッド層、22 透明導波路コア層、22a 透明導波路メサ部、23 横方向クラッド層、24 上部クラッド層、25 利得導波路コア層、25a 利得導波路メサ部、30、32 下部電極、31、33、35 コンタクト層、32、34、36 上部電極、40 曲げ導波路、41 斜め導波路、42 曲げ利得導波路、43 斜め利得導波路、44 スポットサイズ変換導波路、45 スポットサイズ変換利得導波路、50 レーザ光源部、51 レーザ光変調器接続部、52 光変調器部、53 光変調器利得導波路接続部、60 レーザ活性層、61、63 透明導波路コア層、62 光変調器活性層、70 回折格子、80 利得第1導波路、81 利得第2導波路、100 利得導波路部、101 斜め入射付き利得導波路部、102 スポットサイズ変換付き利得導波路、200 変調信号光生成部、500、500a、510a、510b、550、560、560a、570、570a、580a、580b、580c、590、600 光半導体素子