(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164798
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】鞍乗型車両及びこれに用いる連結ブラケット
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20241120BHJP
B62J 43/16 20200101ALI20241120BHJP
B62K 25/20 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B62M7/02 C
B62J43/16
B62M7/02 Z
B62K25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022387
(22)【出願日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2023080107
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 将
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 幸紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
【テーマコード(参考)】
3D014
【Fターム(参考)】
3D014DF12
(57)【要約】
【課題】動力伝達部材から入力される荷重を車体フレームに効率よく伝達する。
【解決手段】鞍乗型車両は、後輪(3)を回転可能に支持するスイングアーム(14)と、ピボットシャフト(13)を介してスイングアーム(14)を揺動可能に支持する車体フレームと、電動モータ(5)と、電動モータ(5)及びピボットシャフト(13)から離れた位置に配置され、電動モータ(5)により回転駆動される駆動側回転体(42)と、後輪(3)に固定された従動側回転体(47)と、駆動側回転体(42)と従動側回転体(47)との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材(48)と、駆動側回転体(42)とピボットシャフト(13)とを連結する一体の連結ブラケット(60)とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪を回転可能に支持するスイングアームと、
ピボットシャフトを介して前記スイングアームを揺動可能に支持する車体フレームと、
電動モータと、
前記電動モータ及び前記ピボットシャフトから離れた位置に配置され、前記電動モータにより回転駆動される駆動側回転体と、
前記後輪に固定された従動側回転体と、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材と、
前記駆動側回転体を軸支する第1支持部と、前記ピボットシャフトに支持される第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部を連結する連結部と、を一体に含む連結ブラケットとを備えた、鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記連結ブラケットは、前記駆動側回転体と前記ピボットシャフトとの間に亘って前後方向に延び、かつ前記ピボットシャフトに沿って車幅方向に延びる形状を有する、鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両において、
前記連結ブラケットは、前記電動モータ及び前記ピボットシャフトから離れた位置で前記車体フレームに着脱自在に取り付けられる取付部をさらに含む、鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両において、
前記電動モータを支持するとともに前記車体フレームに着脱自在に取り付けられるサポートをさらに備えた、鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗型車両において、
前記サポートは、前記電動モータの車幅方向の両側において前記車体フレームに着脱自在に取り付けられる左右一対の支持プレートを含み、
前記電動モータは、その左右両側部が一対の前記支持プレートに着脱自在に結合されることで当該両支持プレートの間に支持される、鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗型車両において、
一対の前記支持プレートの間に亘って車幅方向に延びるカラーをさらに備えた、鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両において、
前記電動モータを支持するとともに前記車体フレームに着脱自在に取り付けられるサポートをさらに備え、
前記サポートは、前記車体フレームに結合される結合部として、前後方向に離れた第1結合部及び第2結合部と、両結合部から上下方向に離れた第3結合部とを有する、鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両において、
前記電動モータの外周部に、前記車体フレームに着脱自在に結合される複数の結合片が設けられた、鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両において、
前記電動モータの出力軸であるモータ出力軸の回転を前記駆動側回転体に伝達する伝達機構をさらに備えた、鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項9に記載の鞍乗型車両において、
前記伝達機構は、前記モータ出力軸と前記駆動側回転体との間に掛け渡された無端状の上流側伝達部材を含む、鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項9に記載の鞍乗型車両において、
前記伝達機構は、前記電動モータを挟んで前記動力伝達部材の反対側に配置される、鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両において、
車体の上部から下方に延びるショックアブソーバと、
前記ショックアブソーバの下端部と前記車体フレームのロアクロスパイプとを連結するリンクアームと、
前記リンクアームと前記連結ブラケットとを連結する連結部材とをさらに備えた、鞍乗型車両。
【請求項13】
後輪を回転可能に支持するスイングアームと、ピボットシャフトを介して前記スイングアームを揺動可能に支持する車体フレームと、駆動源と、前記駆動源及び前記ピボットシャフトから離れた位置に配置され、前記駆動源により回転駆動される駆動側回転体と、前記後輪に固定された従動側回転体と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材と、を含む鞍乗型車両に適用される連結ブラケットであって、
前記駆動側回転体を軸支する第1支持部と、
前記ピボットシャフトに支持される第2支持部と、
前記第1支持部及び前記第2支持部を連結する連結部と、を一体に備えた、鞍乗型車両の連結ブラケット。
【請求項14】
駆動源と、
車輪を回転させる回転体と、
前記駆動源の出力軸と前記回転体との間に掛け渡された無端状の伝達部材と、
前記駆動源と別体に構成され、前記回転体を軸支するブラケットとを備えた、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に鞍乗型車両が開示されている。この鞍乗型車両は、駆動源としての電動モータと、電動モータの駆動力を後輪に伝達するチェーンとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような鞍乗型車両においては、駆動源(電動モータ)の動力がチェーンを介して後輪に伝達されるのに伴い、駆動側のスプロケットにチェーン張力が作用する。このとき、駆動源におけるスプロケットを支持する部分(スプロケット支持部)には、前後方向の曲げ応力が生じる。このため、駆動源は、そのスプロケット支持部の剛性を向上させる必要があり、設計自由度が低い。
【0005】
本開示は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、駆動源の設計自由度を向上させ得る鞍乗型車両を提供することを目的とする。また、本開示は、このような目的に資する鞍乗型車両の連結ブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本開示の一局面に係る鞍乗型車両は、後輪を回転可能に支持するスイングアームと、ピボットシャフトを介して前記スイングアームを揺動可能に支持する車体フレームと、電動モータと、前記電動モータ及び前記ピボットシャフトから離れた位置に配置され、前記電動モータにより回転駆動される駆動側回転体と、前記後輪に固定された従動側回転体と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材と、前記駆動側回転体を軸支する第1支持部と、前記ピボットシャフトに支持される第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部を連結する連結部と、一体に含む連結ブラケットと、を備えたものである。
【0007】
本開示の他の局面に係る連結ブラケットは、後輪を回転可能に支持するスイングアームと、ピボットシャフトを介して前記スイングアームを揺動可能に支持する車体フレームと、駆動源と、前記駆動源及び前記ピボットシャフトから離れた位置に配置され、前記駆動源により回転駆動される駆動側回転体と、前記後輪に固定された従動側回転体と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材と、を含む鞍乗型車両に適用される連結ブラケットであって、前記駆動側回転体を軸支する第1支持部と、前記ピボットシャフトに支持される第2支持部と、前記第1及び第2支持部を連結する連結部と、を一体に備えたものである。
【0008】
本開示のさらに他の局面に係る鞍乗型車両は、駆動源と、車輪を回転させる回転体と、前記駆動源の出力軸と前記回転体との間に掛け渡された無端状の伝達部材と、前記駆動源と別体に構成され、前記回転体を軸支するブラケットと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、動力伝達部材から駆動側回転体に入力された荷重を連結ブラケットを介して車体フレームに伝達することができる。したがって、後輪への動力伝達に伴い電動モータ(駆動源)に加わる荷重を軽減することができ、駆動源の設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る電動二輪車(鞍乗型車両)を左側から見た側面図である。
【
図2】上記電動二輪車の中央下部を拡大して示す側面断面図である。
【
図3】上記電動二輪車の駆動系を示す上面図である。
【
図4】電動モータ及びその周辺部品の分解斜視図である。
【
図5】上記電動モータを車体フレームに取り付ける構造を示す分解斜視図である。
【
図6】上記電動モータ及びその近傍部を左側から見た拡大側面図である。
【
図7】
図6の部品群から支持プレート等を取り外した側面図である。
【
図9】上記第1実施形態の作用効果を説明するための概略側面図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る電動二輪車(鞍乗型車両)を示す側面図である。
【
図11】上記第2実施形態の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1実施形態
[電動二輪車の車体構造]
以下、図面に基づいて、本開示の鞍乗型車両の第1実施形態について説明する。
図1は、鞍乗型車両の一例としての電動二輪車を左側から見た側面図であり、
図2は、当該電動二輪車の中央下部を拡大して示す側面断面図であり、
図3は、電動二輪車の駆動系を示す上面図である。本図に示すように、電動二輪車は、車体1と、前輪2及び後輪3と、電動モータ5と、バッテリ6と、シート8と、ハンドル9とを備える。前輪2及び後輪3は、車体1を移動可能に支持する前後一対の車輪である。電動モータ5は、後輪3を回転させる駆動力、換言すれば電動二輪車を走行させる駆動力を発生する駆動源であり、例えば三相交流同期型の電動モータにより構成されている。バッテリ6は、電動モータ5に供給される電力を貯える蓄電器である。シート8は、電動二輪車を運転する乗員(ライダー)が着座するシートである。ハンドル9は、乗員が前輪2を操舵する際に把持する操舵ハンドルである。
【0012】
車体1は、車体フレーム11とピボットシャフト13とを含む。車体フレーム11は、車体1の骨格を形成するフレーム構造体であり、上述した前後輪2,3、電動モータ5、バッテリ6、シート8、及びハンドル9を支持する。ピボットシャフト13は、車体フレーム11の後部に取り付けられた車幅方向に延びるシャフトである。
【0013】
車体フレーム11は、その前端部にヘッド部12を有する。ヘッド部12は、上下方向に延びるステアリング軸をその軸心回りに回転可能に保持する筒状部材である。ステアリング軸の上端部にはハンドル9が取り付けられており、ステアリングの下端部にはフロントフォーク15が接続されている。すなわち、ヘッド部12は、ハンドル9とフロントフォーク15とを連結するステアリング軸を回転可能に保持している。フロントフォーク15の下端部には前輪2が軸支されている。
【0014】
ピボットシャフト13は、スイングアーム14の揺動支点として機能する。ピボットシャフト13は、前輪2及び後輪3の間でかつシート8の下方において、車体フレーム11に支持されている。
【0015】
スイングアーム14は、後輪3を回転可能に支持するアームであり、ピボットシャフト13と後輪3の車軸16とを連結するように前後方向に延びている。すなわち、ピボットシャフト13にスイングアーム14の前端部が軸支されるとともに、スイングアーム14の後端部に後輪3が軸支されている。
【0016】
スイングアーム14は、
図1に示す車体1の左側だけでなく、車体1の右側にも設けられる(
図3参照)。すなわち、本実施形態の電動二輪車は、ピボットシャフト13の左右両端部と後輪3の車軸の左右両端部とをそれぞれ連結する一対のスイングアーム14を備える。一対のスイングアーム14は、車幅方向に延びるクロスメンバ17を介して互いに連結されている。
【0017】
一対のスイングアーム14は、その前端部に、ピボットシャフト13に外挿されるボス部14aをそれぞれ有する(
図3及び後述する
図8参照)。ボス部14aの内部には、ピボットシャフト13に対するボス部14aの相対回転を許容するためのピボットベアリング18(
図8)が取り付けられている。
【0018】
図1及び
図2に示すように、車体フレーム11は、メインパイプ21と、フロントパイプ22と、ロアパイプ23と、リヤパイプ24と、第1連結パイプ25と、第2連結パイプ26とを含む。メインパイプ21は、ヘッド部12の上部から後方かつ下方に傾斜しつつ延びるパイプ材である。フロントパイプ22は、ヘッド部12の下部から概ね下方に延びるパイプ材であり、メインパイプ21の前方かつ下方に配置されている。ロアパイプ23は、メインパイプ21の後端(下端)とフロントパイプ22の下端とを連結する屈曲したパイプ材であり、フロントパイプ22の下端から略真っ直ぐ後方に延びる部分と、当該部分の後端から上方かつ後方に傾斜(湾曲)しつつ延びる部分とを有する。リヤパイプ24は、メインパイプ21の中間部から後方かつ上方に傾斜しつつ延びるパイプ材である。第1連結パイプ25は、フロントパイプ22の中間部とメインパイプ21の後部とを連結する前後方向に延びるパイプ材である。第2連結パイプ26は、メインパイプ21の後部とリヤパイプ24の中間部とを連結する上下方向に延びるパイプ材である。
【0019】
車体フレーム11は、左右対称の構造を有する。すなわち、車体フレーム11の上述したパイプ群21~26は、
図1に示す車体1の左側だけでなく、車体1の右側にも設けられる(
図2及び後述する
図5参照)。言い換えると、車体フレーム11は、ヘッド部12から左右に分岐しつつ延びる一対のメインパイプ21及び一対のフロントパイプ22と、左右のメインパイプ21の中間部から後方に分岐した一対のリヤパイプ24と、左右のメインパイプ21と左右のフロントパイプ22とをそれぞれ連結する一対のロアパイプ23及び一対の第1連結パイプ25と、左右のメインパイプ21と左右のリヤパイプ24とをそれぞれ連結する一対の第2連結パイプ26とを含む。
【0020】
メインパイプ21とロアパイプ23とが結合される部分は、アーチ状に湾曲した湾曲部P1とされる。すなわち、メインパイプ21の後部が下向きに湾曲しつつロアパイプ23に向かって延びるともに、ロアパイプ23の後部が上向きに湾曲しつつメインパイプ21に向かって延びている。そして、メインパイプ21及びロアパイプ23のそれぞれの湾曲した後端部が互いに結合されることにより、後側に凸に湾曲したアーチ状の湾曲部P1が形成されている。湾曲部P1には、ピボットシャフト13を保持する板状のピボットステー91が固定されている。これら湾曲部P1及びピボットステー91は、左側のメインパイプ21と左側のロアパイプ23の結合部と、右側のメインパイプ21と右側のロアパイプ23の結合部とに、それぞれ設けられている。言い換えると、車体フレーム11は、左右一対の湾曲部P1と、各湾曲部P1に固定された左右一対のピボットステー91とを有する。一対のピボットステー91は、各湾曲部P1の前側に溶接等により固定されており、ピボットシャフト13の左右両端部を保持している。具体的に、ピボットシャフト13は、後述する
図8に示される締結部材B5を用いて車幅方向に締め付けられることにより、一対のピボットステー91の間に固定されている。
【0021】
車体フレーム11は、後述する支持プレート50を介して、電動モータ5を支持している。また、車体フレーム11は、電動モータ5の上方の位置でバッテリ6を支持している。電動モータ5及びバッテリ6は、前輪2及び後輪3の間でかつシート8の下方に配置されている。
【0022】
図2に示すように、車体フレーム11は、車幅方向に延びるロアクロスパイプ27、第1クロスバー28、及び第2クロスバー29をさらに含む。ロアクロスパイプ27は、左右のロアパイプ23の後部どうしを車幅方向に連結するパイプ材である。後述する
図5にも示すように、第1クロスバー28は、左右の第1連結パイプ25の前部どうしを車幅方向に連結する棒材である。第2クロスバー29は、左右の第1連結パイプ25の後部どうしを車幅方向に連結する棒材である。
【0023】
[駆動系]
図4は、電動モータ5及びその周辺部品の分解斜視図であり、
図5は、電動モータ5を車体フレーム11に取り付ける構造を示す分解斜視図である。本図に示すように、電動モータ5は、モータハウジング31と、モータハウジング31に回転可能に支持されたモータ出力軸32とを含む。
【0024】
モータハウジング31は、ロータやステータ等の電気部品を内部に収容するケース体である。モータハウジング31は、後述する連結ブラケット60とは別体とされ、連結ブラケット60から間隔を空けて配置されている。
【0025】
モータ出力軸32は、バッテリ6から供給される電力を受けて回転駆動される出力軸であり、車幅方向に延びるように配置されている。モータ出力軸32は、モータハウジング31の車幅方向一方側の側面から突出するように設けられている。本実施形態において、モータ出力軸32は、モータハウジング31の右側の側面から突出するように設けられている。モータ出力軸32は、ピボットシャフト13の前方かつ下方に位置している。
【0026】
電動モータ5の出力、つまりモータ出力軸32の回転は、1次伝達機構33及び2次伝達機構34(
図3)を介して後輪3に伝達される。両伝達機構33,34は、モータ出力軸32の回転を所定の減速比で減速しつつ後輪3に伝達する。なお、1次伝達機構33は、本開示における「伝達機構」に相当する。
【0027】
1次伝達機構33は、モータ出力軸32に固定されて当該軸32と一体に回転するモータスプロケット41と、当該モータスプロケット41から後方に離れた位置に配置された中継軸42と、モータスプロケット41と中継軸42との間に掛け渡された無端状の1次チェーン46とを含む。中継軸42は、後述する
図8にも示すように、車幅方向に延びる軸部43と、軸部43の一端に固定された第1スプロケット44と、軸部43の他端に固定された第2スプロケット45とを有する。第1スプロケット44の外径は、モータスプロケット41の外径よりも大きい。1次チェーン46は、モータスプロケット41と中継軸42の第1スプロケット44との間に掛け渡されており、両スプロケット41,44が連動して回転するように動力伝達を行う。なお、中継軸42は本開示における「駆動側回転体」もしくは「回転体」に相当し、1次チェーン46は本開示における「上流側伝達部材」もしくは「伝達部材」に相当する。
【0028】
2次伝達機構34は、1次伝達機構33と共用される上述した中継軸42と、後輪3に固定された従動スプロケット48と、中継軸42と従動スプロケット48との間に掛け渡された無端状の2次チェーン49とを含む。従動スプロケット48の外径は、第2スプロケット45の外径よりも大きい。2次チェーン49は、中継軸42の第2スプロケット45と従動スプロケット48との間に掛け渡されており、両スプロケット45,48が連動して回転するように動力伝達を行う。なお、従動スプロケット48は本開示における「従動側回転体」に相当し、2次チェーン49は本開示における「動力伝達部材」に相当する。
【0029】
中継軸42は、モータ出力軸32の後方かつ上方に位置している。また、中継軸42は、ピボットシャフト13の前方に位置している。言い換えると、中継軸42は、モータ出力軸32とピボットシャフト13との間において両者と平行に車幅方向に延びるように配置されている。
【0030】
1次伝達機構33及び2次伝達機構34は、電動モータ5を挟んで車幅方向の反対側に配置されている。すなわち、1次伝達機構33の構成部品であるモータスプロケット41、第1スプロケット44、及び1次チェーン46が電動モータ5の車幅方向一方側に配置され、かつ2次伝達機構34の構成部品である第2スプロケット45、従動スプロケット48、及び2次チェーン49が電動モータ5の車幅方向他方側に配置されている。本実施形態では、車体1の右側に1次伝達機構33が配置され、かつ車体1の左側に2次伝達機構が配置されている。
【0031】
[電動モータの取付構造]
図6は、電動モータ5及びその近傍部を左側から見た拡大側面図である。
図1~
図6に示すように、電動モータ5は、左右一対の支持プレート50を介して車体フレーム11に取り付けられている。一対の支持プレート50は、車幅方向に所定の厚みを有する板状の部材であり、電動モータ5(モータハウジング31)の左右両側部にそれぞれ結合される。また、電動モータ5に結合された各支持プレート50は、電動モータ5の周囲にある車体フレーム11の各所に結合される。すなわち、電動モータ5は、一対の支持プレート50の間に支持されるとともに、当該各支持プレート50を介して車体フレーム11に取り付けられる。
【0032】
電動モータ5のモータハウジング31は、その左右両側面に、複数のモータ固定ボルトB1に対応した複数の締結座31aを有する(
図4等参照)。モータ固定ボルトB1は、支持プレート50をモータハウジング31に結合するための締結部材であり、このモータ固定ボルトB1に対応したネジ孔が締結座31aに形成されている。また、一対の支持プレート50には、それぞれ、モータ固定ボルトB1の軸部が挿通される複数のボルト孔H1が形成されている。そして、モータハウジング31の両側面の締結座31aに対し、一対の支持プレート50の各ボルト孔H1に挿通されたモータ固定ボルトB1がそれぞれ螺合されることにより、モータハウジング31の両側面にそれぞれ支持プレート50が着脱自在に結合される。
【0033】
各支持プレート50は、概ね四角形(ひし形)に形成されている。また、各支持プレート50は、側面視において、メインパイプ21とフロントパイプ22とロアパイプ23と第1連結パイプ25とで囲まれた領域に収まるようなサイズに形成されている。すなわち、主に
図5及び
図6に示すように、車体フレーム11に取り付けられた支持プレート50は、第1連結パイプ25の下側近傍において同パイプと略平行に延びる上辺L1と、ロアパイプ23の前部の上側近傍において同パイプと略平行に延びる下辺L2と、ロアパイプ23及びメインパイプ21の各後部(アーチ状に湾曲しつつ上下方向に延びる部分)の前側近傍において各パイプと略平行に延びる後辺L4と、フロントパイプ22の後方において後辺L4と略平行に延びる前辺L3とを含む。
【0034】
一対の支持プレート50は、車体フレーム11に取り付けられた状態において、電動モータ5の左右両側面を外側から覆うように配置される。本実施形態において、各支持プレート50は、電動モータ5の側面の大部分を覆う形状を有する(
図6参照)。すなわち、各支持プレート50は、電動モータ5の前端部から後端部まで延び、かつ電動モータの上端部から下端部まで延びる形状を有する。ただし、支持プレート50は、電動モータ5の側面の少なくとも一部を覆う形状であればよく、電動モータ5の側面全体を覆うものでもよいし、同側面のうち
図6よりも少ない領域を覆うものでもよい。
【0035】
図4に示すように、右側の支持プレート50の中央部近傍には、電動モータ5のモータ出力軸32が挿通される第1挿通孔H4が形成されている。モータスプロケット41は、右側の支持プレート50の外側(右側)に第1挿通孔H4を通じて突出したモータ出力軸32の先端部に嵌着される。本実施形態では、部品の共通化のために左側の支持プレート50にも第1挿通孔H4が形成されているが、この左側の第1挿通孔H4は省略してもよい。
【0036】
一対の支持プレート50の後上部には、中継軸42の軸部43が挿通される第2挿通孔H5が形成されている。第1スプロケット44は、右側の支持プレート50の外側(右側)に第2挿通孔H5を通じて突出した軸部43の一端部に嵌着される。第2スプロケット45は、左側の支持プレート50の外側(左側)に第2挿通孔H5を通じて突出した軸部43の他端部に嵌着される。
【0037】
上記のとおり、本実施形態では、モータスプロケット41及び第1スプロケット44が右側の支持プレート50の外側に配置されるとともに、第2スプロケット45が左側の支持プレート50の外側に配置される。言い換えると、本実施形態では、1次伝達機構33用のスプロケット(41,44)と、2次伝達機構34用のスプロケット(45)とが、電動モータ5及び一対の支持プレート50を挟んで車幅方向の反対側に配置されている。なお、図示を省略するが、支持プレート50の外側に配置される上記スプロケット類を保護するために、各支持プレート50のさらに外側には、別体の意匠カバーが取り付けられる。意匠カバーは、支持プレート50に取り付けられてもよいし、車体フレーム11に取り付けられてもよい。
【0038】
図1、
図2、
図5、及び
図6に示すように、一対の支持プレート50は、それぞれ、複数のステー(51~53)を介して車体フレーム11に着脱自在に取り付けられている。本実施形態では、第1ステー51、第2ステー52、及び第3ステー53からなる3つのステーが用いられる。第1ステー51は、支持プレート50の前端部、つまり支持プレート50の前辺L3と下辺L2との交差部の近傍を、ロアパイプ23の前部に結合するための金具である。第2ステー52は、支持プレート50の後部、つまり支持プレート50の後辺L4の中間部の近傍を、ロアパイプ23の後部に結合するための金具である。第3ステー53は、支持プレート50の上部、つまり支持プレート50の上辺L1の中間部の近傍を、第1連結パイプ25に結合するための金具である。
【0039】
第1~第3ステー51~53は、それぞれ側面視で略三角形を呈している。
図5に示すように、各ステー51~53における三角形の各頂点に対応する位置には、支持プレート50を固定するための締結部材であるプレート固定ボルトB2用のボルト孔h1がそれぞれ形成されている。第1~第3ステー51~53の各頂点に対応する支持プレート50の3箇所、つまり支持プレート50の前端部、後部、及び上部には、プレート固定ボルトB2が螺合されるネジ孔H2がそれぞれ形成されている。
【0040】
また、ロアパイプ23の前部には、第1ステー51の2つのボルト孔h1に対応した2つの締結座23aが設けられ、ロアパイプ23の後部には、第2ステー52の2つのボルト孔h1に対応した2つの締結座23bが設けられている。各締結座23a,23bには、プレート固定ボルトB2が螺合されるネジ孔がそれぞれ形成されている。また、第1連結パイプ25の中間部には、第3ステー53の2つのボルト孔h1に対応した2つのネジ孔を有する板状の締結座25aが形成されている。
【0041】
第1ステー51の3つのボルト孔h1に挿通された各プレート固定ボルトB2は、支持プレート50の前端部のネジ孔H2と、ロアパイプ23の前部の締結座23aとにそれぞれ螺合される。第2ステー52の3つのボルト孔h1に挿通された各プレート固定ボルトB2は、支持プレート50の後部のネジ孔H2と、ロアパイプ23の後部の締結座23bとにそれぞれ螺合される。第3ステー53の3つのボルト孔h1に挿通された各プレート固定ボルトB2は、支持プレート50の上部のネジ孔H2と、第1連結パイプ25の締結座25aとにそれぞれ螺合される。以上により、支持プレート50の前端部とロアパイプ23の前部とが第1ステー51を介して結合され、支持プレート50の後部とロアパイプ23の後部とが第2ステー52を介して結合され、さらに支持プレート50の上部と第1連結パイプ25とが第3ステー53を介して結合される。
【0042】
上述したとおり、本実施形態では、電動モータ5の左右両側部に、モータ固定ボルトB1を用いて一対の支持プレート50が着脱自在に結合される。また、各支持プレート50は、ステー51~53及びプレート固定ボルトB2を用いて車体フレーム11の各所に着脱自在に結合される。言い換えると、電動モータ5は、車体フレーム11及び電動モータ5の双方に対し着脱自在な支持プレート50を介して、車体フレーム11に着脱自在に取り付けられる。
【0043】
また、上述したとおり、各支持プレート50は、その前端部、後部、及び上部に、支持プレート50を車体フレーム11に結合するためのプレート固定ボルトB2が螺合されるネジ孔H2を有する。ここで、
図4~
図6に示すように、前端部のネジ孔H2に対応するボルトB2の締結先を第1締結部f1、後部のネジ孔H2に対応するボルトB2の締結先を第2締結部f2、上部のネジ孔H2に対応するボルトB2の締結先を第2締結部f3とする。第1締結部f1と第2締結部f2とは前後方向に離れており、両締結部f1,f2と第3締結部f3とは上下方向に離れている。言い換えると、各支持プレート50は、車体フレーム11に締結される締結部として、前後方向に離れた第1締結部f1及び第2締結部f2と、両締結部f1,f2から上下方向に離れた第3締結部f3とを有する。なお、第1締結部f1、第2締結部f2、及び第3締結部f3は、それぞれ本開示における「第1結合部」、「第2結合部」、及び「第3結合部」に相当する。
【0044】
図2、
図3、及び
図5に示すように、左右一対の支持プレート50の間には、複数(3つ)のカラー55が配置されている。カラー55は、車幅方向に延びる長円筒状の部品であって、一対の支持プレート50の車幅方向の離隔距離に対応した軸長を有している。本実施形態では、上述した第1~第3締結部f1~f3に対応して、3つのカラー55が用意されている。すなわち、カラー55は、一対の支持プレート50の各第1締結部f1どうしの間と、一対の支持プレート50の各第2締結部f2どうしの間と、一対の支持プレート50の各第3締結部f1どうしの間と、の3箇所にそれぞれ配置されている。カラー55は、その両端にプレート固定ボルトB2の先端部が挿入され、かつ一対の支持プレート50の間に挟まれた状態で、各締結部f1~f3に対応する位置に保持されている。
【0045】
[連結ブラケット]
図7は、
図6の部品群から支持プレート50等を取り外した側面図である。
図2~
図7に示すように、電動モータ5の後方には、当該電動モータ5(モータハウジング31)とは別体の連結ブラケット60が配置されている。連結ブラケット60は、中継軸42とピボットシャフト13とを連結するブラケットであって、中継軸42とピボットシャフト13との間に亘って前後方向に延び、かつピボットシャフト13に沿って車幅方向に延びる形状を有する。
【0046】
図8は、連結ブラケット60の断面図である。
図2及び
図4~
図8に示すうように、連結ブラケット60は、中継軸42を軸支する第1ボス61と、ピボットシャフト13に支持される第2ボス62と、第1ボス61及び第2ボス62を連結する連結部63と、を一体に含む。連結ブラケット60は、例えば、これら各要素61~63を一体に含む鋳物等の成型品から構成することができる。もちろん、連結ブラケット60の一体性を実現できる限りにおいて、板金溶接品など、成型品以外の部品から連結ブラケット60を構成することも可能である。なお、第1ボス61は本開示における「第1支持部」に相当し、第2ボス62は本開示における「第2支持部」に相当する。
【0047】
第1ボス61は、車幅方向に延びる筒状体であり、中継軸42の軸部43を回転可能に保持している。第1ボス61の両端には、当該第1ボス61を支持プレート50に結合するためのフランジ64が形成されている。各フランジ64には、複数のネジ孔h2(
図7)が形成されており、このネジ孔h2に対応する複数のボルト孔H3(
図4)が一対の支持プレート50にそれぞれ形成されている。本実施形態において、フランジ64は、側面視で概ね五角形状に形成されており、この五角形の各頂点に対応する位置にそれぞれネジ孔h2が形成されている。すなわち、第1ボス61の両端のフランジ64にはそれぞれ5つのネジ孔h2が形成され、これに対応する5つのボルト孔H3が一対の支持プレート50にそれぞれ形成されている。各ネジ孔h2には、支持プレート50のボルト孔H3に挿通されるボルトB3(
図4)の軸部がそれぞれ螺合される。連結ブラケット60は、このようなボルトB3による締結が両端のフランジ64に対しそれぞれ行われることにより、一対の支持プレート50に着脱自在に結合される。なお、支持プレート50に対し着脱自在なフランジ64は、本開示における「取付部」に相当する。
【0048】
第1ボス61の両端のフランジ64の内部には、それぞれベアリング67(
図8)が配置されている。ベアリング67は、第1ボス61に対する中継軸42の回転を許容する軸受であり、中継軸42の軸部43の両端外周と各フランジ64の内周面との間に配置されている。
【0049】
第2ボス62は、第1ボス61よりも後方において当該第1ボスと平行に(車幅方向に)延びる筒状体からなる。第2ボス62は、一対のスイングアーム14の前端軸受部(ボス部14a)同士の間に亘って車幅方向に延びるように配置されている。第2ボス62は、その内部にピボットシャフト13が挿入されることにより、当該ピボットシャフト13を中心に回転可能に支持されている。第2ボス62とピボットシャフト13との間には、径方向にわずかな隙間が存在し得る。すなわち、第2ボス62は、上述した第1ボス61(フランジ64)と支持プレート50との結合を解除した状態であれば、ピボットシャフト13の軸心を中心に回転可能である。言い換えると、連結ブラケット60は、ピボットシャフト13を中心に側面視で傾動(角度変位)可能な状態で支持されている。逆に、第1ボス61が支持プレート50に結合された状態では、ピボットシャフト13の傾動が禁止される。
【0050】
連結部63は、上下方向を厚み方向とする略板状体であり、第1ボス61と第2ボス62とを前後方向に連結している。連結部63の上下方向寸法つまり厚みは、第1ボス61及び第2ボスの厚み(外径)よりも小さい。
【0051】
連結部63の上面には、複数のリブ65が設けられている。各リブ65は、連結部63の上面から上方に突出するとともに、第1ボス61と第2ボス62との間に亘って前後方向に延びるように形成されている。本実施形態では、連結部63の上面に2つのリブ65が形成されており、両リブ65は車幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0052】
図2、
図6、及び
図7に示すように、連結部63の後部には、下方に突出したアーム取付部66が形成されている。アーム取付部66には、後述する第1連結プレート73を軸支するための支持孔h3が形成されている。
【0053】
[リヤサスペンション]
図1及び
図2に示すように、車体フレーム11の後上部とスイングアーム14との間には、リヤサスペンション70が配置されている。リヤサスペンション70は、
図2に示すように、ショックアブソーバ71と、リンクアーム72と、第1連結プレート73と、第2連結プレート74とを含む。
【0054】
ショックアブソーバ71は、路面の凹凸に起因した衝撃を吸収するための筒状の部品であり、車体フレーム11の後上部とスイングアーム14とを上下方向に連結するように配置されている。ショックアブソーバ71は、上端部に上側取付部71aを有するとともに、下端部に下側取付部71bを有する。上側取付部71aは、車体フレーム11におけるリヤパイプ24と第2連結パイプ26との結合部に軸支される。具体的には、リヤパイプ24と第2連結パイプ26との結合部に板状のサスステー92が固定されるとともに、このサスステー92に上側取付部71aが軸支されている。
【0055】
リンクアーム72は、側面視で浅いV字状を呈するアームである。リンクアーム72の後端部は、ショックアブソーバ71の下側取付部71bに軸支されている。また、リンクアーム72の前端部は、ロアクロスパイプ27に固定されたアームステー93に軸支されている。すなわち、リンクアーム72は、下側取付部71bとロアクロスパイプ27とを揺動可能に連結している。
【0056】
第1連結プレート73は、前後方向に延びるプレートである。第1連結プレート73の後端部は、リンクアーム72の前端部に軸支されている。また、第1連結プレート73の前端部は、連結ブラケット60のアーム取付部66に軸支されている。すなわち、第1連結プレート73は、リンクアーム72と連結ブラケット60とを揺動可能に連結している。なお、第1連結プレート73は、本開示における「連結部材」に相当する。
【0057】
第2連結プレート74は、前後方向に延びるプレートである。第2連結プレート74の前端部は、リンクアーム72の前後方向中間部に軸支されている。また、第2連結プレート74の後端部は、左右のスイングアーム14の間のクロスメンバ17に固定された固定片94に軸支されている。すなわち、第2連結プレート74は、リンクアーム72とスイングアーム14とを揺動可能に連結している。
【0058】
[バッテリの支持構造]
図2に示すように、バッテリ6は、バッテリトレー80により支持されている。バッテリトレー80は、上面が開放された箱型の容器体である。バッテリ6は、その下端部がバッテリトレー80の内部に収納された状態で当該バッテリトレー80に支持されている。
【0059】
バッテリトレー80は、電動モータ5の上方に支持されている。具体的に、バッテリトレー80は、電動モータ5の上方のカラー55と係合する第1係合部81と、車体フレーム11の第1クロスバー28と係合する第2係合部82と、車体フレーム11の第2クロスバー29と係合する第3係合部83とを含む。
【0060】
第1係合部81は、バッテリトレー80の底面の前後方向中央部に形成されている。この第1係合部81と係合するカラー55は、支持プレート50の上部の第2締結部f2(
図6)に対応して設けられたカラーであり、電動モータ5の上方に位置し、かつ一対の支持プレート50の間に亘って車幅方向に延びている。
【0061】
第2係合部82は、バッテリトレー80の前辺の上端部に形成されている。この第2係合部82と係合する第1クロスバー28は、電動モータ5の前方かつ上方に位置し、かつ上述したカラー55と平行に車幅方向に延びている。
【0062】
第3係合部83は、バッテリトレー80の後辺の上端部に形成されている。この第3係合部83と係合する第2クロスバー29は、電動モータ5の後方かつ上方に位置し、かつ上述したカラー55と平行に車幅方向に延びている。
【0063】
バッテリトレー80は、その各係合部81,82,83が上述したカラー55、第1クロスバー28、及び第2クロスバー29とそれぞれ係合することにより、電動モータ5の上方に支持されている。
【0064】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、電動モータ5により回転駆動される中継軸42と、後輪3に固定された従動スプロケット48とが、2次チェーン49を介して連動連結される。また、後輪3を支持するスイングアーム14の揺動支点であるピボットシャフト13と、上述した中継軸42とが、一体の連結ブラケット60により連結される。このような構成によれば、後輪3への動力伝達に伴い電動モータ5に加わる荷重を軽減することができ、電動モータ5の設計自由度を向上させることができる等の利点がある。
【0065】
すなわち、本実施形態では、中継軸42とピボットシャフト13とが一体の連結ブラケット60により連結されるので、後輪3への動力伝達に伴い2次チェーン49から中継軸42に入力された荷重は、
図9に白抜き矢印で示すように、連結ブラケット60からピボットシャフト13を介して車体フレーム11に伝達される。一方、電動モータ5は中継軸42から離れており、中継軸42を直接支持しないので、中継軸42から電動モータ5への荷重伝達は起こり難い。したがって、例えば電動モータ5に中継軸42を直接支持させた場合、つまり電動モータ5に支持された中継軸と後輪3とを2次チェーン49で連結した場合と比べて、2次チェーン49からの荷重が電動モータ5に伝達されるのを抑えることができる。これにより、電動モータ5のモータハウジング31の必要剛性が低くなるので、電動モータ5の設計自由度を向上させることができ、電動モータ5の選択肢の幅を増やすことができる。例えば、電動二輪車に用いるために専用設計された電動モータではなく、既存の汎用的な電動モータを採用し得る可能性を高めることができる。さらに、モータハウジング31の必要剛性が低いので、電動モータ5の軽量化もしくは小型化を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、連結ブラケット60の軽量化もしくは小型化も図ることができる。具体的に、連結ブラケット60は、中継軸42を軸支する第1ボス61と、ピボットシャフト13に支持される第2ボス62と、第1ボス61及び第2ボス62を連結する連結部63と、を一体に含む。このため、中継軸42に入力された荷重は、連結ブラケット60の軸間方向、つまり第1ボス61及び第2ボス62の各軸心を結ぶ方向(前後方向)の圧縮荷重として、第1ボス61から連結部63を介して第2ボス62へと伝達される。また、第2ボス62に伝達された荷重は、ピボットシャフト13を介して車体フレーム11に伝達される。このように、本実施形態では、中継軸42に入力された荷重が一体の連結ブラケット60を介して車体フレーム11に圧縮荷重として直線的に伝達されるので、連結ブラケット60に作用する曲げ荷重を軽減することができる。これにより、連結ブラケット60の必要剛性(曲げ剛性)が低くなるので、連結ブラケット60の軽量化もしくは小型化を図ることができ、電動二輪車の重量である車両重量を軽減することができる。
【0067】
ここで、本実施形態の電動二輪車のように、バッテリ6に蓄えられた電力を用いて電動走行する二輪車の場合は、車両重量の大小が航続距離(走行可能距離)に大きく影響する。連結ブラケット60を用いる本実施形態の構造は、上記のように車両重量の軽減をもたらすので、航続距離を延ばす効果も期待することができる。特に、モトクロス競技用の電動二輪車の場合は、軽量化だけでなく、車体剛性の確保も重要である。これに対し、一体の連結ブラケット60により中継軸42とピボットシャフト13とを連結する本実施形態の構成は、軽量化と車体剛性との両立につながるので、モトクロス競技用の電動二輪車に好適である。
【0068】
また、本実施形態において、連結ブラケット60は、中継軸42とピボットシャフト13との間に亘って前後方向に延び、かつピボットシャフト13に沿って車幅方向に延びる形状を有する。このような構成によれば、2次チェーン49から中継軸42に入力された前後方向の荷重の大部分を、連結ブラケット60を介して、車幅方向に分散しつつ後方のピボットシャフト13に圧縮荷重として伝達することができ、連結ブラケット60の変形を抑止することができる。
【0069】
また、本実施形態では、連結ブラケット60の第1ボス61と第2ボス62とが、両ボスよりも厚みの小さい概ね板状の連結部63によって連結されるので、連結ブラケット60の軽量化もしくは小型化を図ることができる。
【0070】
しかも、連結部63には前後方向に延びる複数のリブ65が突設されるので、当該リブ65によって特に連結ブラケット60のねじり剛性を高めることができる。これにより、上述した連結ブラケット60の軽量化等を図りながら、連結ブラケット60のねじり剛性を十分に確保することができる。
【0071】
また、本実施形態では、電動モータ5のモータ出力軸32に固定されたモータスプロケット41と上述した中継軸42とが1次チェーン46を介して連動連結される。このような構成によれば、電動モータ5の種類変更に伴う調整を比較的容易に行うことができ、汎用性を高めることができる。すなわち、電動モータ5の種類が変更になる場合には、例えばモータ出力軸32と中継軸42との軸間距離を変更したり、減速比を変更したりする等の調整が必要になる。これに対し、モータ出力軸32と中継軸42との動力伝達を1次チェーン46を用いて行う本実施形態によれば、当該1次チェーン46を交換する等により、上記の軸間距離や減速比の調整を比較的容易に行うことができる。このため、例えばギヤ機構を用いて動力伝達を行うよりも汎用性を高めることができる。
【0072】
また、本実施形態では、連結ブラケット60が電動モータ5とは別体に構成される。このような構成によれば、2次チェーン49から中継軸42に入力された荷重が、電動モータ5とは別体の連結ブラケット60で受け止められるので、中継軸42に入力された上記荷重が1次チェーン46を介してモータ出力軸32に伝達され難くなる。これにより、電動モータ5の必要剛性が低く済むので、電動モータ5の軽量化もしくは小型化を図ることができる。また、共通の連結ブラケット60に対し、形状等の異なる複数種の電動モータ5を共用できるので、汎用性を高めることができる。
【0073】
また、本実施形態では、電動モータ5を挟んだ2次チェーン49の反対側に1次チェーン46が配置される。このような構成によれば、例えば1次チェーン46及び2次チェーン49を車幅方向にオフセットさせつつ電動モータ5の片側に配置した場合と比べて、電動モータ5の幅中心を車体1の幅中心に近づけ易くなり、重量バランスを良好に確保することができる。
【0074】
また、本実施形態では、車体フレーム11に対し着脱自在な一対の支持プレート50を介して電動モータ5が車体フレーム11に取り付けられる。このような構成によれば、形状の異なる複数種の支持プレート50を用意しておけば、当該支持プレート50を適宜取り替えることにより、形状の異なる複数種の電動モータ5を共通の車体フレーム11に選択的に取り付けることができ、異なる電動モータ5に対し車体フレーム11を共通化することができる。あるいは、形状の異なる複数種の車体フレーム11に共通の電動モータ5を取り付けることができ、異なる車体フレーム11に対し電動モータ5を共通化することができる。
【0075】
また、1次チェーン46及び2次チェーン49の張力が直接作用しない支持プレート50は、その設計自由度が比較的高い。このため、支持プレート50の軽量化もしくは小型化を容易に図ることができる。
【0076】
しかも、電動モータ5の左右両側部に一対の支持プレート50が結合されるので、2枚の支持プレート50で分担して電動モータ5を支持することができ、1枚の支持プレートを用いるよりも電動モータ5の支持剛性を高めることができる。また、一対の支持プレート50により電動モータ5が左右両側から覆われるので、例えば電動二輪車が転倒した場合であっても、周囲の障害物等から電動モータ5を効果的に保護することができる。
【0077】
また、本実施形態において、連結ブラケット60は、ピボットシャフト13から前方に離れた位置に第1ボス61を有するとともに、この第1ボス61の両端に、ボルトB3を用いて支持プレート50に着脱自在に結合されるフランジ64が形成される。このような構成によれば、フランジ64と支持プレート50との結合を解除した状態で、ピボットシャフト13を中心に連結ブラケット60を側面視で角度変位させることができる。このことは、支持プレート50を別の形状のものに取り替えれば、同一の連結ブラケット60を用いながら、中継軸42とピボットシャフト13との位置関係を変更できることを意味する。このような位置関係の変更は、中継軸42から車体フレーム11への荷重伝達性、換言すれば車体特性の変更をもたらす。このように、支持プレート50に対し着脱自在なフランジ64が第1ボス61の両端に設けられる本実施形態によれば、支持プレート50を取り替えるだけで車体特性を容易に調整できるという利点がある。
【0078】
また、本実施形態では、第1ボス61の両端のフランジ64内にそれぞれベアリング67が配置され、各ベアリング67を介して中継軸42が第1ボス61に軸支される。このような構成によれば、例えばベアリング67が片側にしか存在しなかった場合と比べて、2次チェーン49から中継軸42に入力された荷重を、車幅方向に良好に分散しつつ、連結ブラケット60を介してピボットシャフト13に伝達することができる。
【0079】
また、本実施形態では、支持プレート50を車体フレーム11に締結する締結部として、前後方向に離れた第1締結部f1及び第2締結部f2と、両締結部f1,f2から上下方向に離れた第3締結部f3とが設けられる。このような構成によれば、車体フレーム11の3点を連結するトラス状の補強部材として支持プレート50を利用することができ、車体フレーム11を効率よく補強することができる。これにより、車体フレーム11自体の必要剛性が低くなるので、車体フレーム11を含む車両重量を軽減することができる。
【0080】
また、本実施形態では、上述した各締結部f1~f3に対応する位置に、左右の支持プレート50の間に亘って車幅方向に延びるカラー55が配置される。このような構成によれば、各支持プレート50の車幅方向の倒れ変形をカラー55によって抑止することができ、車体フレーム11のねじり剛性を高める補強部材として各支持プレート50を利用することができる。
【0081】
また、本実施形態では、電動モータ5の上方に配置されたバッテリトレー80がカラー55によって支持されるので、補強用のカラー55をバッテリトレー80(車載部品)の支持材としても利用することができ、部品点数を削減することができる。
【0082】
また、本実施形態では、ショックアブソーバ71の下側取付部71bと車体フレーム11のロアクロスパイプ27とがリンクアーム72を介して連結されるとともに、リンクアーム72と連結ブラケット60とが第1連結プレート73を介して連結される。このような構成によれば、路面の凹凸がもたらすショックアブソーバ71の伸縮に応じてロアクロスパイプ27に加わる荷重の一部を、第1連結プレート73を通じて連結ブラケット60に逃がすことができる。これにより、ロアクロスパイプ27の負担が軽減するので、ロアクロスパイプ27を含む車両重量の軽減を図ることができる。
【0083】
[変形例]
上記第1実施形態では、左右一対の支持プレート50を介して電動モータ5を車体フレーム11に取り付けたが、電動モータ5は何らかのサポートを介して車体フレーム11に取り付けられていればよく、支持プレート50以外のものをサポートとして用いることも当然に可能である。例えば、上記第1実施形態のような概ね四角形状の板状体に代えて、三角形や五角形等の適宜の形状の板状体をサポートとして用いてもよい。あるいは、フレーム構造体やブロック構造体のような、板状ではないサポートを用いてもよい。
【0084】
また、サポートは、電動モータ5の両側に配置される左右一対の部材から構成する必要はなく、電動モータ5の片側に配置される1つの部材から構成してもよい。
【0085】
さらに、電動モータ5は、支持プレート50(サポート)を介することなく、車体フレーム11に直接取り付けられてもよい。
【0086】
上記第1実施形態では、モータ出力軸32がピボットシャフト13の前方かつ下方に位置するように電動モータ5を配置したが、これ以外の位置に電動モータ5(モータ出力軸32)を配置してもよい。例えば、モータ出力軸32は、ピボットシャフト13と同じ高さに配置されてもよいし、ピボットシャフト13よりも上側に配置されてもよい。また、モータ出力軸32は、ピボットシャフト13と同じ前後方向位置に配置されてもよいし、ピボットシャフト13よりも後方に配置されてもよい。
【0087】
上記第1実施形態では、電動モータ5の上方にバッテリ6を配置したが、これ以外の位置にバッテリ6を配置してもよい。例えば、バッテリ6は、電動モータ5の前方又は後方に配置されてもよい。
【0088】
上記第1実施形態では、連結ブラケット60の第1ボス61の両端に、支持プレート50に対し着脱自在に結合されるフランジ64を設けたが、連結ブラケット60は、ピボットシャフト13から離れた位置に、車体フレーム11に対し着脱自在な取付部を備えていればよく、その限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、取付部は、支持プレート50のようなサポートに着脱自在に取り付けられるもの、つまりサポートを介して車体フレーム11に着脱自在に取り付けられるものでもよいし、車体フレーム11に用意された複数の取付先のいずれかに着脱自在に取り付けられるものでもよい。
【0089】
上記第1実施形態では、中継軸42と従動スプロケット48との間に掛け渡される動力伝達部材として、2次チェーン49を使用したが、動力伝達部材は2つの回転体が連動して回転するように動力伝達する無端状のものであればよく、例えばベルトでもよい。
【0090】
同様に、上記第1実施形態では、モータ出力軸32(モータスプロケット41)と中継軸42との間に掛け渡される上流側伝達部材として、1次チェーン46を使用したが、上流側伝達部材は2つの回転体が連動して回転するように動力伝達する無端状のものであればよく、例えばベルトでもよい。さらに、無端状の動力伝達部材に代えて、歯車を用いてもよい。つまり、モータ出力軸32の回転を歯車を介して中継軸42に伝達してもよい。
【0091】
上記第1実施形態では、1次チェーン46を含む1次伝達機構33と、2次チェーン49を含む2次伝達機構34とを、電動モータ5を挟んで車幅方向の反対側に配置したが、1次伝達機構33を2次伝達機構34と同じ側に配置してもよい。
【0092】
上記第1実施形態では、連結ブラケット60における連結部63の上面に、前後方向に延びる複数のリブ65を設けたが、リブ65は連結部63の上面だけでなく下面に設けてもよいし、下面のみに設けてもよい。また、リブ65は少なくとも1つあればよく、連結部63の上面又は下面に1つのリブ65を設けてもよい。
【0093】
上記第1実施形態では、連結ブラケット60の第1ボス61の両端(フランジ64)を支持プレート50に結合するとともに、連結ブラケット60の第2ボス62にピボットシャフト13に挿入したが、これに代えて、連結ブラケット60の第2ボス62にピボットシャフト13を圧入してもよい。また、連結ブラケット60は、車体フレーム11に溶接等により固定されていてもよい。
【0094】
上記第1実施形態では、後輪3とピボットシャフト13とを連結するアームとして、左右一対のスイングアーム14を設けたが、スイングアームは、左右いずれか一方のみに設けられる謂片持ち式のスイングアームでもよい。
【0095】
上記第1実施形態では、メインパイプ21とロアパイプ23との結合部に形成された湾曲部P1に板状のピボットステー91を固定し、当該ピボットステー91にピボットシャフト13を支持させたが、ピボットシャフト13の支持態様はこれに限られない。例えば、ピボットステー91は、上下方向に直線状に延びるメインパイプ等のフレーム要素に固定されていてもよい。また、ピボットシャフト13は、ピボットステー91を介することなく、メインパイプ等のフレーム要素に直接的に支持されていてもよい。さらに、ピボットシャフト13は、車体フレーム11の適宜の位置にボルト締結された別体のステーに支持されていてもよい。
【0096】
上記第1実施形態で示した車体フレーム11は、あくまで一例であって、電動モータ5及びピボットシャフト13を支持可能な構造である限りにおいて、他の適宜の構造に変更することが可能である。例えば、車体フレーム11は、上記第1実施形態のようにパイプ材同士を溶接した構造に限らず、鋳造成形フレームであってもよい。
【0097】
上記第1実施形態では、鞍乗型車両の一種である電動二輪車に本開示を適用した例について説明したが、本開示は、電動三輪車や電動四輪バギー等の、他の電動式の鞍乗型車両にも適用可能である。
【0098】
ここで、中継軸42とピボットシャフト13とを連結する連結ブラケット60に相当するブラケットは、電動式の鞍乗型車両に限らず適用可能である。例えば、内燃エンジン及び減速機からなるパワートレインを駆動源として用いる従来型の鞍乗型車両にも上記ブラケットを適用可能である。この従来型の鞍乗型車両において、パワートレインの出力軸と、後輪を回転させる回転体(上記第1実施形態の中継軸42に相当)とが、チェーン等の無端状の伝達部材を介して連動連結されることがある。この場合において、回転体を軸支するブラケットを駆動源とは別体に設ければ、伝達部材から回転体に入力される荷重が駆動源に伝達され難くなるので、駆動源の軽量化もしくは小型化を図ることができる。
【0099】
(2)第2実施形態
図10は、本開示の第2実施形態に係る電動二輪車(鞍乗型車両)を示す側面図である。第2実施形態は、上述した第1実施形態と比べて、主に電動モータ5の支持構造が異なっている。以下では、この第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図10において、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0100】
電動モータ5は、車体フレーム11に直接的に支持されている。詳しくは、電動モータ5は、その外周部に、径方向外側に突出する複数の第1突片101を有している。また、車体フレーム11における各第1突片101に対応する位置には、電動モータ5に向けて突出する複数のステー103が設けられている。電動モータ5は、各第1突片101が対応するステー103にそれぞれ締結されることにより、車体フレーム11に着脱自在に結合されている。
【0101】
具体的に、第2実施形態では、電動モータ5の外周部に3つの第1突片101が周方向に分散して設けられるとともに、これに対応した3つのステー103が車体フレーム11に設けられている。ステー103は、電動モータ5の前方に位置するフロントパイプ22と、電動モータ5の下方に位置するロアパイプ23と、電動モータ5の上方に位置する第1連結パイプ25と、にそれぞれ設けられている。第1突片101は、電動モータ5の前部、上部、下部に相当する周方向の3箇所に設けられている。
【0102】
なお、
図10は、車体1の左側の構造を表しているが、右側の構造も同様である。すなわち、上述した3つの第1突片101は、電動モータ5の左側部だけでなく、電動モータ5の右側部にも設けられている。同様に、上述した3つのステー103は、車体フレーム11の左側のパイプ群22,23,25だけでなく、右側のパイプ群22,23,25にも設けられている。そして、左側の3つの第1突片101が左側の3つのステー103に締結されるとともに、右側の3つの第1突片101が右側の3つのステー103に締結されることにより、電動モータ5が車体フレーム11に着脱自在に結合されている。
【0103】
電動モータ5と連結ブラケット60の第1ボス61との間には、両者を連結する左右一対の連結プレート105が設けられている。すなわち、電動モータ5の左側部と第1ボス61の左側端面とが左側の連結プレート105を介して互いに連結されるとともに、電動モータ5の右側部と第1ボス61の右側端面とが右側の連結プレート105を介して互いに連結されている。
【0104】
具体的に、第2実施形態では、電動モータ5の左側部及び右側部に、それぞれ2つの第2突片102が設けられている。各第2突片102は、上述した第1突片101よりも後側の位置に設けられている。左側の連結プレート105は、左側の第2突片102と第1ボス61の左側端面とを連結し、右側の連結プレート105は、右側の第2突片102と第1ボス61の右側端面とを連結する。
【0105】
各連結プレート105は、その各所が第2突片102及び第1ボス61にそれぞれ締結されることにより、電動モータ5と連結ブラケット60とを連結している。すなわち、連結プレート105の前部における上下2点がそれぞれ第2突片102に締結されるとともに、連結プレート105の後部における上下2点がそれぞれ第1ボス61の端面に締結されることにより、電動モータ5と連結ブラケット60とが互いに連結されている。
【0106】
以上説明したとおり、第2実施形態では、電動モータ5の外周部に、車体フレーム11に着脱自在に結合される複数の第1突片101(結合片)が設けられる。このような構成によれば、車体フレーム11に対する電動モータ5の着脱性を確保しつつ、電動モータ5の支持剛性を高めることができる。
【0107】
なお、上記第2実施形態では、電動モータ5と連結ブラケット60の第1ボス61とを左右一対の連結プレート105によって連結したが、両者の連結形態はこれに限られない。例えば、
図11に示すように、上下一対の連結プレート110によって電動モータ5と第1ボス61とを連結してもよい。各連結プレート110は、例えば、車幅方向に延びるとともに前後方向視で角皿状を呈するプレートによって構成することができる。具体的に、
図11の例において、上側の連結プレート110は、下方に開放された角皿状のプレートとすることができ、下側の連結プレート110は、上方に開放された角皿状のプレートとすることができる。
【0108】
(3)まとめ
上述した各実施形態及びその変形例には、以下の開示が含まれる。
【0109】
本開示の第1の態様に係る鞍乗型車両は、後輪を回転可能に支持するスイングアームと、ピボットシャフトを介して前記スイングアームを揺動可能に支持する車体フレームと、電動モータと、前記電動モータ及び前記ピボットシャフトから離れた位置に配置され、前記電動モータにより回転駆動される駆動側回転体と、前記後輪に固定された従動側回転体と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材と、前記駆動側回転体を軸支する第1支持部と、前記ピボットシャフトに支持される第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部を連結する連結部と、を一体に含む連結ブラケットと、を備えたものである。
【0110】
この第1の態様によれば、駆動側回転体とピボットシャフトとが一体の連結ブラケットにより連結されるので、後輪への動力伝達に伴い電動モータに加わる荷重を軽減することができ、電動モータの設計自由度を向上させることができる。
【0111】
すなわち、後輪への動力伝達に伴い動力伝達部材から駆動側回転体に入力された荷重は、連結ブラケットからピボットシャフトを介して車体フレームに伝達される。一方、電動モータは駆動側回転体から離れており、駆動側回転体を直接支持しないので、駆動側回転体から電動モータへの荷重伝達は起こり難い。したがって、例えば電動モータに駆動側回転体を直接支持させた場合、つまり電動モータに支持された駆動側回転体と後輪とを動力伝達部材で連結した場合と比べて、動力伝達部材からの荷重が電動モータに伝達されるのを抑えることができる。これにより、電動モータの必要剛性が低くなるので、電動モータの設計自由度を向上させることができ、電動モータの選択肢の幅を増やすことができる。例えば、鞍乗型車両に用いるために専用設計された電動モータではなく、既存の汎用的な電動モータを採用し得る可能性を高めることができる。さらに、電動モータの必要剛性が低いので、電動モータの軽量化もしくは小型化を図ることができる。
【0112】
また、本態様では、連結ブラケットの軽量化もしくは小型化も図ることができる。すなわち、動力伝達部材から駆動側回転体に入力された荷重は、連結ブラケットの軸間方向、つまり第1支持部及び第2支持部の各軸心を結ぶ方向の圧縮荷重として、第1支持部から連結部を介して第2支持部へと伝達される。また、第2支持部に伝達された荷重は、ピボットシャフトを介して車体フレームに伝達される。このように、本実施形態では、駆動側回転体に入力された荷重が一体の連結ブラケットを介して車体フレームに圧縮荷重として伝達されるので、連結ブラケットに作用する曲げ荷重を軽減することができる。これにより、連結ブラケットの必要剛性(曲げ剛性)が低くなるので、連結ブラケットの軽量化もしくは小型化を図ることができ、鞍乗型車両の重量を軽減することができる。
【0113】
第2の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1の態様において、前記連結ブラケットは、前記駆動側回転体と前記ピボットシャフトとの間に亘って前後方向に延び、かつ前記ピボットシャフトに沿って車幅方向に延びる形状を有する。
【0114】
この第2の態様によれば、駆動側回転体とピボットシャフトとが前後方向に延びる連結ブラケットを介して連結されるので、動力伝達部材から駆動側回転体に入力された前後方向の荷重の大部分を、連結ブラケットを介して後方のピボットシャフトに圧縮荷重として伝達することができる。また、連結ブラケットはピボットシャフトに沿って車幅方向に延びるので、駆動側回転体に入力された前記荷重を車幅方向に分散しつつピボットシャフトに伝達することができ、連結ブラケットの変形を抑止することができる。
【0115】
第3の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1又は第2の態様において、前記連結ブラケットは、前記電動モータ及び前記ピボットシャフトから離れた位置で前記車体フレームに着脱自在に取り付けられる取付部をさらに含む。
【0116】
この第3の態様によれば、連結ブラケットの取付部を車体フレームから取り外せば、ピボットシャフトを中心に連結ブラケットを側面視で角度変位させることができる。この場合、車体フレームの複数位置に前記取付部の結合先を用意するか、もしくは前記取付部と車体フレームとの間に介在する別体のサポートを複数種類用意すれば、前記結合先の変更又は前記サポートの取り替えに応じて連結ブラケットの角度を変更することができる。この角度変更によって、駆動側回転体とピボットシャフトとの位置関係を変更することができ、例えばアンチスクワット量等の車体特性を調整することができる。
【0117】
第4の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1~第3のいずれか1つの態様において、前記電動モータを支持するとともに前記車体フレームに着脱自在に取り付けられるサポートをさらに備える。
【0118】
この第4の態様によれば、車体フレームと電動モータとがサポートを介して接続される。言い換えると、サポートは、車体フレームと電動モータとの接続を中継する中継部材として機能する。この構造は、車体フレームと電動モータとを直接接続する構造と比較して、車体レイアウトや設計の自由度(汎用性)を高めることにつながる。
【0119】
例えば、サポートを取り替えかつ連結ブラケットを変更することで、車体フレーム及び電動モータを共通化しつつ、駆動側回転体とピボットシャフトとの位置関係を変更することができ、車体特性を調整することができる。また、形状の異なる複数種のサポートを用意しておけば、当該サポートを適宜切り替えることにより、形状等の異なる複数種の電動モータを共通の車体フレームに選択的に取り付けることができ、異なる電動モータに対し車体フレームを共通化することができる。あるいは、形状の異なる複数種の車体フレームに共通の電動モータを取り付けることができ、異なる車体フレームに対し電動モータを共通化することができる。
【0120】
また、動力伝達部材から入力される荷重が、上述した連結ブラケットを介して車体フレームに伝達されるので、サポートが受ける荷重を軽減することができ、サポートの設計自由度を高めて軽量化もしくは小型化を図り易くすることができる。
【0121】
第5の態様に係る鞍乗型車両は、前記第4の態様において、前記サポートは、前記電動モータの車幅方向の両側において前記車体フレームに着脱自在に取り付けられる左右一対の支持プレートを含み、前記電動モータは、その左右両側部が一対の前記支持プレートに着脱自在に結合されることで当該両支持プレートの間に支持される。
【0122】
この第5の態様によれば、一対(2枚)の支持プレートで分担して電動モータを支持することができ、1枚の支持プレートを用いるよりも電動モータの支持剛性を高めることができる。また、一対の支持プレートにより電動モータが左右両側から覆われるので、電動二輪車の側方から飛来する異物等から電動モータを効果的に保護することができる。
【0123】
第6の態様に係る鞍乗型車両は、前記第5の態様において、一対の前記支持プレートの間に亘って車幅方向に延びるカラーをさらに備える。
【0124】
この第6の態様によれば、各支持プレートの車幅方向の倒れ変形をカラーによって抑止することができ、車体フレームのねじり剛性を高める補強部材として各支持プレートを利用することができる。
【0125】
第7の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1~第6のいずれか1つの態様において、前記電動モータを支持するとともに前記車体フレームに着脱自在に取り付けられるサポートをさらに備え、前記サポートは、前記車体フレームに結合される結合部として、前後方向に離れた第1結合部及び第2結合部と、両結合部から上下方向に離れた第3結合部とを有する。
【0126】
この第7の態様によれば、車体フレームの3点を連結するトラス状の補強部材としてサポートを利用することができ、車体フレームを効率よく補強することができる。これにより、車体フレーム自体の必要剛性が低くなるので、車両重量を軽減することができる。
【0127】
第8の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1~第3のいずれか1つの態様において、前記電動モータの外周部に、前記車体フレームに着脱自在に結合される複数の結合片が設けられる。
【0128】
この第8の態様によれば、車体フレームに対する電動モータの着脱性を確保しつつ、電動モータの支持剛性を高めることができる。
【0129】
第9の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1~第8のいずれか1つの態様において、前記電動モータの出力軸であるモータ出力軸の回転を前記駆動側回転体に伝達する伝達機構をさらに備える。
【0130】
この第9の態様によれば、モータ出力軸と駆動側回転体との間に伝達機構が介在するので、電動モータと連結ブラケットとを離して配置し易くなる。また、伝達機構を調整すれば、共通の連結ブラケットに対し、形状等の異なる複数種の電動モータを共用できるので、汎用性を高めることができる。
【0131】
第10の態様に係る鞍乗型車両は、前記第9の態様において、前記伝達機構は、前記モータ出力軸と前記駆動側回転体との間に掛け渡された無端状の上流側伝達部材を含む。
【0132】
この第10の態様によれば、電動モータの種類変更に伴って軸間距離や減速比を調整する必要が生じた場合に、当該調整を、無端状の上流側伝達部材を交換する等によって比較的容易に行うことができる。このため、例えばギヤ機構を用いて動力伝達を行うよりも汎用性を高めることができる。
【0133】
第11の態様に係る鞍乗型車両は、前記第9又は第10の態様において、前記伝達機構は、前記電動モータを挟んで前記動力伝達部材の反対側に配置される。
【0134】
この第11の態様によれば、伝達機構と動力伝達部材とを同じ側に配置した場合と比べて、電動モータの幅中心を車体の幅中心に近づけることが容易になり、重量バランスを良好に確保することができる。
【0135】
第12の態様に係る鞍乗型車両は、前記第1~第11のいずれか1つの態様において、車体の上部から下方に延びるショックアブソーバと、前記ショックアブソーバの下端部と前記車体フレームのロアクロスパイプとを連結するリンクアームと、前記リンクアームと前記連結ブラケットとを連結する連結部材とをさらに備える。
【0136】
この第12の態様によれば、路面の凹凸がもたらすショックアブソーバの伸縮に応じてロアクロスパイプに加わる荷重の一部を、連結部材を通じて連結ブラケットに逃がすことができる。これにより、ロアクロスパイプの負担が軽減するので、ロアクロスパイプを含む車両重量の軽減を図ることができる。
【0137】
第13の態様に係る連結ブラケットは、後輪を回転可能に支持するスイングアームと、ピボットシャフトを介して前記スイングアームを揺動可能に支持する車体フレームと、駆動源と、前記駆動源及び前記ピボットシャフトから離れた位置に配置され、前記駆動源により回転駆動される駆動側回転体と、前記後輪に固定された従動側回転体と、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に掛け渡された無端状の動力伝達部材と、を含む鞍乗型車両に適用される連結ブラケットであって、前記駆動側回転体を軸支する第1支持部と、前記ピボットシャフトに支持される第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部を連結する連結部と、を一体に備えたものである。
【0138】
この第13の態様に係る連結ブラケットを鞍乗型車両に適用すれば、上述した第1の態様と同様の効果を得ることができる。
【0139】
第14の態様に係る鞍乗型車両は、駆動源と、車輪を回転させる回転体と、前記駆動源の出力軸と前記回転体との間に掛け渡された無端状の伝達部材と、前記駆動源と別体に構成され、前記回転体を軸支するブラケットと、を備えたものである。
【0140】
この第14の態様によれば、回転体を軸支するブラケットが駆動源と別体に構成されるので、伝達部材から回転体に入力される荷重が駆動源に伝達され難くなる。これにより、駆動源の必要剛性が過剰にならずに済むので、駆動源が軽量化もしくは小型化を図ることができる。また、共通のブラケットに対し、形状等の異なる複数種の駆動源を共用できるので、汎用性を高めることができる。
【符号の説明】
【0141】
1 車体
3 後輪(車輪)
5 電動モータ(駆動源)
11 車体フレーム
13 ピボットシャフト
14 スイングアーム
27 ロアクロスパイプ
32 モータ出力軸
33 1次伝達機構(伝達機構)
42 中継軸(駆動側回転体、回転体)
46 1次チェーン(上流側伝達部材、伝達部材)
48 従動スプロケット(従動側回転体)
49 2次チェーン(動力伝達部材)
50 支持プレート
55 カラー
60 連結ブラケット(ブラケット)
61 第1ボス(第1支持部)
62 第2ボス(第2支持部)
63 連結部
64 フランジ(取付部)
71 ショックアブソーバ
72 リンクアーム
73 第1連結プレート(連結部材)
101 第1突片(結合片)
B2 プレート固定ボルト(締結部材)
f1 第1締結部(第1結合部)
f2 第2締結部(第2結合部)
f3 第3締結部(第3結合部)