(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164803
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】レールの被覆構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01B 5/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
E01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030417
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023080075
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】原 崇晃
(72)【発明者】
【氏名】古橋 勝之
(72)【発明者】
【氏名】西井 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】浪花 直人
(57)【要約】
【課題】レールの腐食防止効果に優れ、かつ作業が簡便である、レールの被覆構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】レール10と、前記レール10の一部を覆う被覆層20とを有し、前記被覆層20は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体30の製造方法であって、前記レール10の施工面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記施工面に塗布した前記接着剤が硬化する前に、前記接着剤上に前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートを貼り付ける貼付工程と、前記貼付工程の後に前記接着剤を硬化する、接着剤硬化工程と、前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層20とする被覆層硬化工程と、を有することよりなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、前記レールの一部を覆う被覆層とを有し、前記被覆層は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体の製造方法であって、
前記レールの施工面に前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートを貼り付ける貼付工程と、
前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層とする被覆層硬化工程と、を有する、レールの被覆構造体の製造方法。
【請求項2】
レールと、前記レールの一部を覆う被覆層とを有し、前記被覆層は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体の製造方法であって、
前記レールの施工面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記施工面に塗布した前記接着剤が硬化する前に、前記接着剤上に前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートを貼り付ける貼付工程と、
前記貼付工程の後に前記接着剤を硬化する、接着剤硬化工程と、
前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層とする被覆層硬化工程と、を有する、レールの被覆構造体の製造方法。
【請求項3】
レールと、前記レールの一部を覆う被覆層とを有し、前記被覆層は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体の製造方法であって、
前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートの一方の面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記プリプレグシートに塗布した前記接着剤が硬化する前に、前記接着剤を前記レールの施工面に当て、前記プリプレグシートを前記レールの施工面に貼り付ける貼付工程と、
前記貼付工程の後に前記接着剤を硬化する、接着剤硬化工程と、
前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層とする被覆層硬化工程と、を有する、レールの被覆構造体の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤を塗布してから、前記プリプレグシートを貼り付け始めるまでの時間は、60分以下である、請求項2又は3に記載のレールの被覆構造体の製造方法。
【請求項5】
前記貼付工程は、前記レールに前記プリプレグシートを押し付けて、前記接着剤と前記プリプレグシートとの間、又は前記接着剤と前記レールとの間に存在する空気を脱気する脱気操作を有する、請求項2又は3に記載のレールの被覆構造体の製造方法。
【請求項6】
前記施工面にプライマーを塗布するプライマー塗布工程をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のレールの被覆構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの被覆構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レールには、電車の動力となる電気が流れている。そのため、レールは腐食が進行しやすくなっている。そして、レールの腐食は、わずかに発生するだけでも、レールの折損を引き起こす原因となる。そのため、レールの腐食防止方法としては、例えば、レールの底部にテープを巻き付けて腐食の進行を妨げるテープ工法、レールの底部にアラミド繊維を巻き付け、さらにアラミド繊維に樹脂を含浸させて腐食の進行を妨げるアラミド繊維工法等が用いられている(特許文献1参照)。
しかしながら、テープ工法は、摩耗性が低く、現場でテープを使用する際に、テープが劣化してレールが腐食するという課題がある。
アラミド繊維工法は、現場でアラミド繊維に樹脂を含浸させる工法であるため、施工性に課題がある。アラミド繊維工法は、素地ケレン工程と、プライマーを塗布する工程と、エポキシ樹脂を塗布する工程と、アラミド繊維を貼付ける工程と、上塗りエポキシ樹脂を塗布する工程と、アラミド繊維に前記の樹脂を含浸する工程と、前記の樹脂を硬化する工程とを有するため、煩雑、かつ、作業者による樹脂の含浸技術が必要な複雑なプロセスとなっている。
施工性の問題を解決する方法としては、例えば、プリプレグシート工法が知られている。プリプレグシート工法は、強化繊維に樹脂が含浸したプリプレグシートを対象物に貼付ける工法である。プリプレグシート工法は、素地ケレン工程と、プライマーを塗布する工程と、接着剤を塗布する工程と、プリプレグシートを貼付ける工程と、プリプレグシートに含まれる樹脂を硬化する工程とを有する。繊維強化プリプレグシート工法は、鋼管や歩道橋等の鋼構造体に用いられている。
工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリプレグシートをレールの腐食に適用するには、繊維強化プリプレグをレールのような複雑形状へ追随させ、その複雑な形状に貼り付ける必要がある。加えて、敷設されたレールの補強や補修は、短時間で完了する必要がある。
そこで、本発明は、レールの腐食防止効果に優れ、かつ作業が簡便である、レールの被覆構造体の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
レールと、前記レールの一部を覆う被覆層とを有し、前記被覆層は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体の製造方法であって、
前記レールの施工面に前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートを貼り付ける貼付工程と、
前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層とする被覆層硬化工程と、を有する、レールの被覆構造体の製造方法。
<2>
レールと、前記レールの一部を覆う被覆層とを有し、前記被覆層は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体の製造方法であって、
前記レールの施工面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記施工面に塗布した前記接着剤が硬化する前に、前記接着剤上に前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートを貼り付ける貼付工程と、
前記貼付工程の後に前記接着剤を硬化する、接着剤硬化工程と、
前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層とする被覆層硬化工程と、を有する、レールの被覆構造体の製造方法。
<3>
レールと、前記レールの一部を覆う被覆層とを有し、前記被覆層は補強部材と硬化性樹脂とを有する繊維強化プリプレグの硬化物を含む、レールの被覆構造体の製造方法であって、
前記繊維強化プリプレグを含むプリプレグシートの一方の面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記プリプレグシートに塗布した前記接着剤が硬化する前に、前記接着剤を前記レールの施工面に当て、前記プリプレグシートを前記レールの施工面に貼り付ける貼付工程と、
前記貼付工程の後に前記接着剤を硬化する、接着剤硬化工程と、
前記貼付工程の後に前記硬化性樹脂を硬化して前記被覆層とする被覆層硬化工程と、を有する、レールの被覆構造体の製造方法。
<4>
前記接着剤を塗布してから、前記プリプレグシートを貼り付け始めるまでの時間は、60分以下である、<2>又は<3>に記載のレールの被覆構造体の製造方法。
<5>
前記貼付工程は、前記レールに前記プリプレグシートを押し付けて、前記接着剤と前記プリプレグシートとの間、又は前記接着剤と前記レールとの間に存在する空気を脱気する脱気操作を有する、<2>~<4>のいずれかに記載のレールの被覆構造体の製造方法。<6>
前記施工面にプライマーを塗布するプライマー塗布工程をさらに有する、<1>~<5>のいずれかに記載のレールの被覆構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレールの被覆構造体の製造方法によれば、施工時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレールの被覆構造体を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るレールの被覆構造体の被覆層の燃焼性試験を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るレールの被覆構造体の製造方法を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るレールの被覆構造体の製造方法を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るレールの被覆構造体の製造方法を示す断面図である。
【
図7】被覆層硬化工程に用いられるエネルギー線照射装置を示す断面図である。
【
図8】疲労試験の測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明について説明する。
(レールの被覆構造体)
図1は、本発明の一実施形態に係るレールの被覆構造体を示す断面図である。
なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
【0009】
図1に示すように、レールの被覆構造体30は、レール10と、レール10の一部を覆う被覆層20とを有する。
レール10は、頭部11と、腹部12と、底部13とを有する。レール10は、鉛直下方から上方に向かって順に連続する底部13と、腹部12と、頭部11とを、有する。
底部13は、断面形状が略三角形状をなしている。底部13は、枕木の表面等の設置面に接する底面13aと、底面13aと連続し、底部13の一方の端13d及び他方の端13eから立ち上がる一方の底部上面13b及び他方の底部上面13cとを有する。
腹部12は、断面形状が略長方形状をなしている。腹部12は、底部13の一方の底部上面13b及び他方の底部上面13cと連続する両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)を有する。
頭部11は、断面形状が略長方形状をなしている。
【0010】
本実施形態において、被覆層20は、底面13aと、端13d及び13eと、底部上面13b及び13cと、レール腹部12a及び12bの一部と、を覆っている。即ち、被覆層20は、底部13と腹部12の一部とを覆っている。なお、本発明において、被覆層20は、底面13aを覆い、かつ頭部11を覆っていなければよく、腹部側面12a及び12bの一部もしくは全部、又は、底部上面13b及び13cの一部もしくは全部を覆っていなくてもよい。ただし、腐食防止効果をより高める観点から、被覆層20は、底部13及び腹部の一部又は全部を覆っていることが好ましい。
被覆層20は、レール10だけでなく、電気による腐食(電食)の発生が見込まれる部分を覆ってもよい。
【0011】
図2に示すように、レール10と被覆層20との間には、接着層18が位置している。接着層18を有することで、レール10に対して、被覆層20をより強固に接着できる。
なお、レール10と被覆層20とが、接着層18を介さず直接接していてもよい。
【0012】
本実施形態において、被覆層20は、レール10との間に空間を有しない。本発明において、被覆層20は、その一部がレール10との間に空間を有してもよい。但し、レール10と被覆層20との間への水や空気の侵入をより効果的に防ぐためには、被覆層20は、レール10との間に空間を有しないことが好ましい。
【0013】
被覆層20は、プリプレグシートの硬化物である。プリプレグシートは、繊維強化プリプレグを有する。即ち、被覆層20は、繊維強化プリプレグの硬化性樹脂が硬化してなる。
プリプレグシートは、レール10に接着硬化するので、空気や水との接触を遮断してレール10の腐食を防止する。それとともに、硬化したプリプレグシートとレール10とが一体化するので、レール10の強度が補強される。
【0014】
被覆層20は、透明であることが好ましい。被覆層20が透明であると、脱気操作時に残存空気を目視確認でき、また、レール10の表面の腐食状態を目視で容易に確認できる。
なお、透明であるとは、レール10の表面を確認できる程度に可視光線を透過することを意味し、例えば、可視光線の20%以上を透過する性質である。
【0015】
被覆層20の目付量は、1500g/m2以上3500g/m2以下が好ましく、2000g/m2以上3000g/m2以下がより好ましい。目付量が上記下限値以上であると、耐食性をより高められる。目付量が上記上限値以下であると、被覆層20を構成するプリプレグシートの可撓性が高まり、施工面(被覆層を設ける領域)へ、より容易に追随できる。
【0016】
被覆層20の厚さt20は、3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。厚さt20が上記上限値以下であると、被覆層20を構成するプリプレグシートの可撓性が高まり、施工面へ、より容易に追随できる。
被覆層20の厚さt20は、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。厚さt20が上記下限値以上であると、耐食性をより高められる。
【0017】
なお、被覆層20は、連続した1枚のものであってもよく、2枚以上を組み合わせたものであってもよい。レール10に貼り付ける工程を簡略化するためには、被覆層20は、連続した1枚のものが好ましい。
【0018】
被覆層20(即ち、プリプレグシートの硬化物)は、鉄道車両用燃焼性試験による難燃性を有することが好ましい。より好ましくは、不燃性であることが好ましい。
レールは、保守点検で、削正車でレール頭部を削る作業があり、繊維強化プリプレグには火花がかかる。そのため、被覆層20には、鉄(レール)に貼り付けた構成で難燃性以上(火元が離れると燃えない性質)が必要となる。
【0019】
鉄道車両用燃焼性試験について説明する。
鉄道車両用燃焼性試験は、「鉄道車両用材料燃焼性試験のご案内 燃焼試験 JRMA 一般社団法人 日本鉄道車両機械技術協会」に記載されている方法に準拠して行う。
燃焼試験(鉄道車両用非金属材料)方法は、
図3に示すように、B5の供試材(182mm×257mm)110を45°傾斜に保持し、燃料容器120の底の中心が、供試材110の下面(燃焼面)中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台130に載せ、燃料容器120に純エチルアルコール0.5mLを入れて着火し、純エチルアルコールが燃え尽きるまで放置する。
燃焼判定は、純エチルアルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて判定する。純エチルアルコールの燃焼中は、供試材110への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察する。純エチルアルコールの燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査する。
供試材110の試験前処理は、供試材110が吸湿性の材料の場合、所定寸法に仕上げたものを、通気性のある室内で直射日光を避け床面から1m以上離し、5日以上経過させる。
試験室内の条件は、温度:15℃~30℃、湿度:60%~75%で空気の流動はない状態とする。
【0020】
被覆層20(即ち、繊維強化プリプレグの樹脂を硬化させた状態)におけるJIS E 1203:2007の直流絶縁抵抗試験(下記測定条件)で測定される抵抗値(直流絶縁抵抗値)は、5×106Ω以上であり、5×108Ω以上が好ましく、5×1010Ω以上がより好ましい。直流絶縁抵抗値が上記下限値以上であると、レール10から地面への通電を防止して、電流によるレール10の腐食を防止できる。直流絶縁抵抗値の上限値は、特に限定されない。直流絶縁抵抗値は、プリプレグシートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0021】
<測定条件>
印加電圧:500V DC×1分。
状態調節:20℃×48時間。
試験装置:ハイレジスタンスメータ 4339B(アジレント・テクノロジー社製)。
試験体:幅20mm×長さ40mm×厚さ1.5mm。
【0022】
被覆層20におけるJIS C 2110-1:2016の交流絶縁破壊電圧試験(下記測定条件)で測定される電圧(交流絶縁破壊電圧)は、20kV以上が好ましく、30kV以上がより好ましく、40kV以上がさらに好ましい。交流絶縁破壊電圧が上記下限値以上であると、レール10から地面への通電を防止して、電流によるレール10の腐食を防止できる。交流絶縁破壊電圧の上限値は、特に限定されない。交流絶縁抵抗値は、プリプレグシートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0023】
<測定条件>
(条件)
試験雰囲気:油中。
温度:23℃。
試験装置:AC・DC絶縁破壊試験器、YST-243AT-100形。
昇圧速度:3kV/秒。
【0024】
被覆層20におけるJIS C 2110-2:2016の直流絶縁破壊電圧試験(下記測定条件)で測定される電圧(直流絶縁破壊電圧)は、15kV以上が好ましく、30kV以上がより好ましく、40kV以上がさらに好ましい。直流絶縁破壊電圧が上記下限値以上であると、レール10から地面への通電を防止して、電流によるレール10の腐食をより良好に防止できる。直流絶縁破壊電圧の上限値は、特に限定されない。直流絶縁破壊電圧は、プリプレグシートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0025】
<測定条件>
試験雰囲気:油中。
温度:23℃。
試験装置:AC・DC絶縁破壊試験器、YST-243AT-100形。
昇圧速度:5kV/秒。
【0026】
被覆層20は、JIS A 7502-2:2015の附属書Fの防食被覆層の透水試験で測定される透水量は、0.15g以下が好ましく、0.10g以下がより好ましく、0.05g以下がさらに好ましい。透水量が上記下限値以上であると、レール10表面への水分の接触を防止して、レール10の腐食をより良好に防止できる。透水量の下限値は、特に限定されない。本透水量は、プリプレグシートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0027】
被覆層20のJIS A 7502-2の附属書Fに規定された透水量を求めるには、附属書Fの「F3.2 試験体の作成」の「a)塗布型ライニング工法の場合」に記載された方法に従って試験体を作成する。
試験体は具体的には、JIS A 5430に規定するフレキシブル板(厚さ6mm、直径150mmの円に内接する正八角形)に被覆層20を重ねたものである。
【0028】
この試験体を用いて、JIS A 1404の「7.6(透水試験)」に従い、0.29MPaの水圧を1時間かけて透水試験を行う。透水試験前のフレキシブル板の質量p1と、透水試験後付着水を拭き取ったフレキシブル板の質量p2との質量差(p2-p1)を被覆層20の透水量とする。
【0029】
被覆層20は、表面防護工の品質基準「中防食C種」で測定される塩化物イオン遮断性が1.0×10-3mg/cm2・日以下が好ましく、0.9×10-3mg/cm2・日以下がより好ましく、0.8×10-3mg/cm2・日以下がさらに好ましい。塩化物イオン遮断性が上記上限値以下であると、レール10表面への塩分の接触を防止して、レール10の腐食をより良好に防止できる。塩化物イオン遮断性の下限値は、特に限定されないが、実質的に0.7×10-3mg/cm2・日以上である。本塩化物イオン遮断性は、レール腐食防止用シートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせるにより調節される。
なお、「表面防護工の品質基準「中防食C種」」は、阪神高速道路株式会社,「道路構造物の補修要領」第2部コンクリート構造物 第2編 コンクリート構造物表面保護要領(平成30年7月)表面保護工の品質基準「中防食C種」である。
【0030】
被覆層20は、表面防護工の品質基準「中防食C種」で測定される酸素遮断性が1.00mol/m2・年以下が好ましく、0.10mol/m2・年以下がより好ましく、0.05mol/m2・年以下がさらに好ましい。酸素遮断性が上記上限値以下であると、レール10表面への酸素の接触を防止して、レール10の腐食をより良好に防止できる。酸素遮断性の下限値は、特に限定されない。本酸素遮断性は、レール腐食防止用シートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0031】
被覆層20において、JIS A 1452:2015に記載された装置を用いて下記測定条件で測定した摩耗量がモルタル板の摩耗量より小さいこと、が好ましい。かかる摩耗量であることで、被覆層20の耐久性をより高められる。本摩耗量は、プリプレグシートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0032】
<測定条件>
・試験片寸法:50mm×50mm。
・検体数:各n=3。
・研削材:JIS R 6111の4.1.2 表6に規定された炭化けい素研磨材2C。
・落下高さ:65cm。
・落下総量:10kg。
【0033】
被覆層20における本摩耗量は、モルタル板の摩耗量の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
被覆層20の摩耗量が小さいほど、飛来する小石・砂と被覆層20間の摩耗により、被覆層20が劣化することが抑制される。
【0034】
被覆層20において、JIS K 7204の摩耗試験での摩耗量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。摩耗量が上記上限値以下であると、耐久性をより高められる。摩耗量の下限値は、特に限定されない。本摩耗量は、レール腐食防止用シートの硬化性樹脂及び補強部材の種類、被覆層20の厚さ等の組み合わせにより調節される。
【0035】
被覆層20は、JIS A 1408:2017の建築用ボード類の曲げ及び衝撃試験方法に準じて下記条件で測定した衝撃面において、異常がないことが好ましい。
【0036】
<測定条件>
・試験体の指示方法:S1:砂上全面支持。
・おもりの区分:球形おもり:W2-1000。
・おもりの落下高さ:50cm。
【0037】
接着層18は、接着剤の硬化物である。
被覆層20が透明である場合、接着層18は透明であることが好ましい。接着層18が透明であると、脱気操作時に残存空気を目視確認でき、また、レール10の表面の腐食状態を目視で容易に確認できる。
【0038】
接着層18の厚さt18(即ち、レール10の表面から被覆層20までの距離)は、接着剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.1~1.5mmが好ましく、0.1~0.5mがより好ましい。厚さt18が上記下限値以上であると、レール10に対して被覆層20をより強固に接着できる。厚さt18が上記上限値以下であると、接着剤の硬化をより早めて、施工時間をより短縮できる。
【0039】
接着層18(接着剤の硬化物)におけるJIS E 1203:2007の直流絶縁抵抗試験(下記測定条件)で測定される抵抗値(直流絶縁抵抗値)は、5×106Ω以上が好ましく、5×108Ω以上がより好ましく、5×1010Ω以上がさらに好ましい。2枚のプリプレグシートの端部を突き合せて、被覆層20の繋ぎ目とする場合、この繋ぎ目で接着層18の一部が漏出する場合がある。接着層18の直流絶縁抵抗値が上記下限値以上であると、接着層18が露出していても、レール10から地面への通電を防止して、電流によるレール10の腐食をより良好に防止できる。接着層18の直流絶縁抵抗値の上限値は、特に限定されない。直流絶縁抵抗値は、接着層18の接着剤の種類により調節される。
<測定条件>
・印加電圧:500V DC×1分。
・状態調節:20℃×48時間。
・試験装置:ハイレジスタンスメータ 4339B(アジレント・テクノロジー社製)。
・接着剤を硬化して厚さ5mmの平板を作製し、前記平板から切り出し加工を行って幅20mm×長さ40mm×厚さ5mmの試験体を作製し、前記試験体の中央部にφ5mmの孔を2カ所開ける加工を行った後、測定を実施。
【0040】
接着層18におけるJIS C 2110-1:2016の交流絶縁破壊電圧試験(下記測定条件)で測定される電圧(交流絶縁破壊電圧)は、20kV以上が好ましく、30kV以上がより好ましく、40kV以上がさらに好ましい。交流絶縁破壊電圧が上記下限値以上であると、接着層18が露出していても、レール10から地面への通電を防止して、電流によるレール10の腐食を防止できる。交流絶縁破壊電圧の上限値は、特に限定されない。直流絶縁抵抗値は、接着層18の接着剤の種類、接着層18の厚さt18等の組み合わせにより調節される。
【0041】
接着層18は、JIS C 2110-2:2016の直流絶縁破壊電圧試験で測定される電圧(直流絶縁破壊電圧)は、15kV以上が好ましく、30kV以上がより好ましく、40kV以上がさらに好ましい。直流絶縁破壊電圧が上記下限値以上であると、接着層18が露出していても、レール10から地面への通電を防止して、電流によるレール10の腐食をより良好に防止できる。直流絶縁破壊電圧の上限値は、特に限定されない。交流絶縁破壊電圧は、接着層18の接着剤の種類、接着層18の厚さt18等の組み合わせにより調節される。
【0042】
接着層18は、JIS A 7502-2:2015の附属書Fの防食被覆層の透水試験で測定される透水量が、0.15g以下が好ましく、0.10g以下がより好ましく、0.05g以下がさらに好ましい。透水量が上記下限値以上であると、接着層18が露出していても、レール10表面への水分の接触を防止して、レール10の腐食をより良好に防止できる。透水量の下限値は、特に限定されない。本透水量は、接着層18の接着剤の種類、接着層18の厚さt18等の組み合わせにより調節される。
【0043】
接着層18は、表面防護工の品質基準「中防食C種」で測定される塩化物イオン遮断性が、1.0×10-3mg/cm2・日以下が好ましく、0.9×10-3mg/cm2・日以下がより好ましく、0.8×10-3mg/cm2・日以下がさらに好ましい。塩化物イオン遮断性が上記上限値以下であると、レール10表面への塩分の接触を防止して、レール10の腐食をより良好に防止できる。塩化物イオン遮断性の下限値は、特に限定されないが、実質的に0.7×10-3mg/cm2・日以上である。本塩化物イオン遮断性は、接着層18の接着剤の種類、接着層18の厚さt18等の組み合わせにより調節される。
【0044】
接着層18は、表面防護工の品質基準「中防食C種」で測定される酸素遮断性が、1.00mol/m2・年以下が好ましく、0.10mol/m2・年以下がより好ましく、0.05mol/m2・年以下がさらに好ましい。酸素遮断性が上記上限値以下であると、接着層18が露出していても、レール10表面への酸素の接触を防止して、レール10の腐食をより良好に防止できる。酸素遮断性の下限値は、特に限定されない。本酸素遮断性は、接着層18の接着剤の種類、接着層18の厚さt18等の組み合わせにより調節される。
【0045】
接着層18とレール10との間には、プライマー層を有してもよい。プライマー層を有することで、接着層18とレール10とをより強固に接着できる。
接着層18を有さず、レール10と被覆層20との間にプライマー層のみを有していてもよい。プライマー層を有することで、被覆層20のみの場合に比べて、より強固に接着できる。
【0046】
(レールの被覆構造体の製造方法)
本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法は、プリプレグシートを、接着剤を介してレールに貼り付け、貼り付けたプリプレグシートを硬化して被覆層20とし、かつ接着剤を硬化して接着層とする。
【0047】
プリプレグシートは、補強部材と、硬化性樹脂とを含む未硬化樹脂シートである。プリプレグシートにおいて、硬化性樹脂は、補強部材に含浸している。
プリプレグシートは、繊維強化プリプレグのみからなってもよいし、繊維強化プリプレグ以外の層(任意層)を有してもよい。
任意層としては、プライマー層、接着層、塗料層等が挙げられる。
【0048】
補強部材としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維、ビニロン繊維等の有機繊維、炭素繊維、スチール繊維等の金属繊維等の繊維が挙げられる。中でも、絶縁性を高める観点から、補強部材としてはガラス繊維が好ましい。
【0049】
繊維の形態としては特に限定されず、例えば、トウ、クロス、チョップドファイバー、連続繊維等の繊維を一方向に引き揃えた形態;連続繊維を経緯にして織物とした形態;トウの方向を一方向に引揃え横糸補助糸で保持した形態;繊維の方向を一方向に引揃えた複数の繊維シートをそれぞれの繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態;及び、繊維の不織布の形態等が挙げられる。これらの中でも、繊維が等方的に配置されている観点から、不織布が好ましい。
【0050】
中でも、補強部材としては、ガラス繊維のチョップドストランドマットが好適である。チョップドストランドマットを補強部材として用いることで、絶縁性を高め、かつ可撓性を高められる。
【0051】
補強部材の含有量は、繊維強化プリプレグの総質量に対して、10~35質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましく、18~23質量%がさらに好ましい。補強部材の含有量が上記下限値以上であると、プリプレグシートの強度及び耐久性をより高められる。補強部材の含有量が上記上限値以下であると、プリプレグシートの可撓性をより高められる。
【0052】
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、施工をより容易にする観点から、硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性ビニルエステル樹脂、光硬化性不飽和ポリエステル樹脂、光硬化性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐食性の観点から、光硬化性ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0053】
硬化性樹脂の含有量は、繊維強化プリプレグの総質量に対して、65~90質量%が好ましく、70~85質量%がより好ましく、77~82質量%がさらに好ましい。硬化性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、プリプレグシートの可撓性をより高められる。硬化性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、補強部材の含有量を高めて、プリプレグシートの強度及び耐久性をより高められる。
【0054】
プリプレグシートの目付量は、1500g/m2以上3500g/m2以下が好ましく、2000g/m2以上3000g/m2以下がより好ましい。目付量が上記下限値以上であると、耐食性をより高められる。目付量が上記上限値以下であると、プリプレグシートの可撓性が高まり、施工面へ、より容易に追随できる。
【0055】
プリプレグシートの厚さは、3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。厚さが上記上限値以下であると、プリプレグシートの可撓性が高まり、施工面へ、より容易に追随できる。
プリプレグシートの厚さは、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。プリプレグシートの厚さが上記下限値以上であると、耐食性をより高められる。
【0056】
次に、レールの被覆構造体の製造方法の一例を説明する。
本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法は、レールの施工面にプライマーを塗布する工程(以下、「工程A1」と言う。)と、前記プライマーを介して、施工面に接着剤を塗布する工程(以下、「工程B1」と言う。)と、施工面で、前記接着剤を塗布した面にプリプレグシートを貼り付ける工程(以下、「工程C1」と言う。)と、プリプレグシートの硬化性樹脂を硬化させて被覆層とする工程(以下、「工程D1」と言う。)と、接着剤を硬化する工程(以下、「E1」工程と言う。)と、を有する。
【0057】
接着剤としては、2液混合型の接着剤が好ましい。2液混合型の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂製ガラス繊維入りパテ等が挙げられる。これらの中でも、耐食性及び硬化時間の短縮の観点から、ビニルエステル樹脂系接着剤が好ましい。
【0058】
本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法では、工程A1の前に、レール10の表面、特に、施工面に対して、素地調製(下地処理)を行い、錆を落とすことが好ましい。
【0059】
素地調製の方法としては、例えば、グラインダーやサンドペーパーでのケレンが挙げられる。新設、既設のレールを問わず、レールの状態に準じて1~4種ケレンを適宜選択してよい。接着性の観点から1種又は2種ケレンであってもよい。
【0060】
「工程A1」
工程A1は、プライマー塗布工程である。
工程A1では、レール10の施工面にプライマーを塗布する。詳細には、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)、腹部12と底部13の一方の境界12c及び他方の境界12d、レール10の底部13の底面13a、レール10の底部13の底部13の一方の底部上面13b及び他方の底部上面13c、並びにレール10の底部13の一方の端13d及び他方の端13eにプライマーを塗布する。なお、「施工面」は、少なくとも底面13aを含んでいればよい。
【0061】
施工面にプライマーを塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り方法、ローラー塗り方法、スプレー塗布方法等を用いることができる。
【0062】
プライマーの塗布量は、施工面の単位面積当たり、0.05kg/m2以上0.25kg/m2以下が好ましく、0.1kg/m2以上0.2kg/m2以下がより好ましい。プライマーの塗布量が上記下限値以上であれば、レール10と接着剤との密着性を向上することができる。プライマーの塗布量が上記上限値以下であれば、プライマーを対象物により均一に塗布できる。
【0063】
プライマーとしては、例えば、エポキシ樹脂系プライマー、ウレタン樹脂系プライマー、ポリエステル樹脂系プライマー、ポリプロピレン樹脂系プライマー等が挙げられる。これらの中でも、作業性の観点から、ウレタン樹脂系プライマーが好ましい。
プライマーは、湿式硬化型でも常温硬化型でもよいが、現場での作業性の観点で、湿式硬化型であることが望ましい。
プライマーを塗布した後、タック(べたつき)がなくなるまで養生する。
【0064】
「工程B1」
工程B1は、接着剤塗布工程である。
工程B1では、工程A1で塗布したプライマーを介して、施工面に接着剤を塗布する。本実施形態では、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)と、レール10の底部13の底面13a、並びにレール10の底部13の一方の底部上面13b及び他方の底部上面13cとに、プライマーを介して接着剤を塗布する。
【0065】
施工面に接着剤を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り法、スプレー塗布法等を用いることができる。
【0066】
接着剤の塗布量は、施工面の単位面積当たり、0.05kg/m2以上0.25kg/m2以下が好ましく、0.1kg/m2以上0.2kg/m2以下がより好ましい。接着剤の塗布量が上記下限値以上であれば、レール10の表面と被覆層20とをより強固に接着できる。接着剤の塗布量が上記上限値以下であれば、作業性がより高まる。
【0067】
「工程C1」
工程C1は、貼付工程である。
工程C1では、施工面に塗布した接着剤が硬化する前に、接着剤上にプリプレグシートを貼り付ける。
工程C1では、まず、上記接着剤を塗布したレール10の一方の腹部側面12aにプリプレグシートを貼り付ける。次に、プリプレグシートを、腹部12と底部13の境界12cで折り曲げて、レール10の底部13の一方の底部上面13bに貼り付ける。次に、プリプレグシートを、レール10の底部13の一方の端13dで折り曲げて、レール10の底部13の底面13aに貼り付ける。次に、プリプレグシートを、レール10の底部13の他方の端13eで折り曲げて、レール10の底部13の他方の底部上面13cに貼り付ける。次に、プリプレグシートを、腹部12と底部13の境界12dで折り曲げて、レール10の他方の腹部側面12bに貼り付ける。
この際、ヘラ等でプリプレグシートをしごく様にして、接着剤とプリプレグシートとの間の空気を脱気することが好ましい(脱気操作)。
【0068】
接着剤をレール10へ塗布した後、プリプレグシートを接着剤に当てて、レール10に貼り付け始めるまでの時間(貼着開始時間)は、60分以下が好ましく、45分以下がより好ましく、20分以下がさらに好ましい。貼着開始時間が上記上限値以下であると、接着剤が硬化しておらず、脱気操作をより効果的に行い、かつ施工時間をより短縮できる。
貼着開始時間をより短くする観点から、工程B1と工程C1とを並行して行ってもよい。「並行して行う」とは、レール10に接着剤を塗布しつつ、塗布した接着剤を押し広げるように、プリプレグシートを貼り付けることをいう。「並行して行う」場合、貼着開始時間は、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。
【0069】
工程C1では、プリプレグシートを複数枚用い、複数枚のプリプレグシートが互いにレール10の長手方向で一部を重ねわせてもよい。あるいは、複数枚のプリプレグシート同士が重ならないように、複数枚のプリプレグシートの長手方向の端面同士を突き合せてもよい。
接着層の絶縁性が低く、被覆層で絶縁性を確保する必要がある場合、絶縁性を担保する点では、重ね合わせることが好ましい。プリプレグシート同士を重ね合わせることで、形成された被覆層20が剥がれにくくなるため、外部環境とレール10との遮断性を保持することができる。
レール腐食防止用シート同士の重なりによる段差が生じない点では、突き合せることが好ましい。
ただし、最も好ましいものは1枚のレール腐食防止用シートでレール長全体に貼り付けることである。
【0070】
例えば、
図4及び
図5に示すように、プリプレグシートとして、第1のプリプレグシート21と第2のプリプレグシート22を用いた場合について説明する。例えば、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13e及び底部13の底面13aに、第1のプリプレグシート21と第2のプリプレグシート22を貼り付ける場合について説明する。
レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13e及び底部13の底面13aに、プライマー40を塗布する。
次に、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13e及び底部13の底面13aに、プライマー40を介して接着剤50を塗布する。
次に、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13e及び底部13の底面13aに、接着剤50を介して、第1のプリプレグシート21を貼り付ける。
次に、レール10の底部13の一方の底部上面13b、底部13の他方の端13e及び底部13の底面13aに、接着剤50を介して、第2のプリプレグシート22を貼り付ける。この際、第1のプリプレグシート21のレール10の長手方向の一端部21aに、第2のプリプレグシート22のレール10の長手方向の一端部22aを重ねる。この場合、第1のプリプレグシート21の一端部21aと、第2のプリプレグシート22の一端部22aとは、例えば、第1のプリプレグシート21の一端部21aに塗布したプライマー及び接着剤を介して接着していることが好ましい。
このようにすれば、プリプレグシート21、22をレール10に貼り付けた後、レール10の腹部12の両側面(一方の腹部側面12a、他方の腹部側面12b)、腹部12と底部13の一方の境界12c及び他方の境界12d、レール10の底部13の底面13a、レール10の底部13の底部13の一方の底部上面13b及び他方の底部上面13c、並びにレール10の底部13の一方の端13d及び他方の端13eと外部環境との遮断性を保持することができる。
第1のプリプレグシート21の一端部21aと、第2のプリプレグシート22の一端部22aとが重なる長さ(
図4に示すW)は、0mm以上でもよく、10mm以上でもよい。
【0071】
あるいは、
図6に示すように、第1のプリプレグシート21の端面21bと、第2のプリプレグシート22の端面22bとを突き合せて、第1のプリプレグシート21と、第2のプリプレグシート22とを接着剤50でレール10に貼り付けてもよい。かかる態様とすることで、第1のプリプレグシート21と第2のプリプレグシート22との境界23の近傍で、プリプレグシート同士が重ならないため、被覆層の厚さを均一にできる。
第1のプリプレグシート21の端面21bと、第2のプリプレグシート22の端面22bとを突き合せて、プリプレグシートをレール10に貼り付ける場合、工程B1で用いる接着剤は、硬化した状態(即ち、接着層18の状態)で、上述した直流絶縁抵抗値、交流絶縁破壊電圧、直流絶縁破壊電圧、透水量、塩化物イオン遮断性及び酸素遮断性(以上、総じて「諸特性)という。)のいずれかが好ましい範囲であることが好適であり、少なくとも直流絶縁抵抗値、透水量及び塩化物イオン遮断性のいずれかが好ましい範囲であることがより好適である。
【0072】
「工程D1」
工程D1は、プリプレグシートの繊維強化プリプレグの硬化性樹脂を硬化し、プリプレグシートを被覆層とする、被覆層硬化工程である。
工程D1では、エネルギー線照射によりプリプレグシートの硬化性樹脂を硬化して、被覆層20とする。
エネルギー線の種類は、硬化性樹脂の種類に応じて適宜決定され、例えば、紫外線、電磁波、熱等を例示できる。
工程D1において、エネルギー線の照射量は、特に限定されず、プリプレグシートの硬化性樹脂の種類や量に応じて適宜調整する。
エネルギー線の照射方法は特に限定されない。
好ましい照射方法の一例として、プリプレグシートを貼り付けたレール10をリンギなどでかさ上げし、その状態で、エネルギー線照射器を固定部材でレール10に固定し、エネルギー線照射器からプリプレグシートにエネルギー線を照射する方法が挙げられる。この方法では、エネルギー線照射器を人の手で持つ必要がなく、硬化作業時の人手を削減することができる。
図7は、この方法に用いられるエネルギー線照射装置60の概略構成を示す断面図である。エネルギー線照射装置60は、車輪61と、車輪61の両側に位置し、車輪61の軸に取り付けられた一対の転倒防止板62と、固定部材63と、固定部材63の一方の面に固定された3つのエネルギー線照射器64a、64b、64cと、を備えている。車輪61の幅は、レール10の頭部11の幅とほぼ同じであり、一対の転倒防止板62は車輪61の下方に突出している。この例において、固定部材63は、鋼材であり、エネルギー線照射器64a、64b、64c側の面を内側にして、両端が一対の転倒防止板62それぞれに取り付けられ、断面略五角形の環状をなしている。固定部材は、エネルギー線照射器を取り付けられれば、鋼材以外を使用してもよい。
図7に示すように、プリプレグシート21を貼り付けたレール10かさ上げし、その頭部11の上に車輪61を載せると、レール10が車輪61と一対の転倒防止板62と固定部材63で囲まれた状態となる。このとき、一対の転倒防止板62は頭部11を挟持し、車輪61の転倒を防止する。3つのエネルギー線照射器64a、64b、64cはそれぞれ、レール10の底部13の下方、腹部12の左右の側方に位置しており、各エネルギー線照射器64a、64b、64cからレール10の底部13及び腹部12に向かってエネルギー線を照射することで、プリプレグシート21の硬化性樹脂が硬化し、被覆層20となる。
【0073】
「工程E1」
工程E1は、接着剤を硬化して接着層18とする接着剤硬化工程である。
接着剤を硬化する方法は、例えば、任意の時間、静置する方法が挙げられる。接着剤を硬化する時間(硬化時間)は、接着剤の種類等に応じて適宜決定され、例えば、60分間以内が好ましく、10~60分間がより好ましく、20~40分間がさらに好ましい。硬化時間が上記下限値以上であると、接着剤とレール10又は被覆層20とをより強固に接着できる。硬化時間が上記上限値以下であると、施工時間をより短縮できる。
工程E1において、接着剤を加熱してもよいし、加熱しなくてもよい。
【0074】
本実施形態において、工程D1と工程E1とは、それぞれを順次に行ってもよいし、同時に行ってもよい。工程D1と工程E1とを順次に行う場合、工程D1を先に行ってもよいし、工程E1を先に行ってもよい。
但し、施工時間をより短縮する観点からは、工程D1と工程E1とを同時に行うことが好ましい。
【0075】
以上の工程により、被覆層20でレール10の底部13を被覆するとともに、被覆層20でレール10の底部13と連続するレール10の腹部12の両側面を被覆し、レールの被覆構造体30とする。
【0076】
本実施形態のレールの被覆構造体によれば、レールの底部、及び腹部の両側面を被覆層で被覆している。被覆層は、直流絶縁抵抗試験で測定される抵抗値が特定の範囲であるため、レール固定治具等とレールとの接触箇所、レールの底部等からの漏れ電流を遮断して、レールの電食を防止することができる。
【0077】
本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法によれば、可撓性のあるプリプレグシートをレールに貼り付けるため、レールの複雑な形状にプリプレグシートを追随できる。加えて、本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法によればレールにプリプレグシートを貼り付けた後に接着剤を硬化するため、接着剤を養生する時間を短縮して、施工時間を短縮できる。
【0078】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法は、レールに対して、施工面にプライマーを塗布する工程(以下、「工程A1」と言う。)と、プリプレグシートに接着剤を塗布する工程(以下、「工程B2」と言う。)と、プリプレグシートの接着剤を塗布した面を、接着剤が硬化する前にプライマーを介して施工面に貼り付ける工程(以下、「工程C2」と言う。)と、エネルギー線照射によりプリプレグシートを硬化させる工程(以下、「工程D1」と言う。)と、接着剤を硬化する工程(以下、「E1」工程と言う。)と、を有する。
即ち、本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法は、工程B1に代えて工程B2とし、工程C1に代えて、工程C2とした点で、上述の実施形態の製造方法と相違する。
【0079】
本実施形態のレールの腐食防止方法でも、工程A2の前に、レール10の表面に対して、素地調製(下地処理)を行い、錆を落とすことが好ましい。
【0080】
「工程A1」
工程A1では、レール10の施工面にプライマーを塗布する。
【0081】
「工程B2」
工程B2は、プリプレグシートの一方の面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程である。
工程B2では、プリプレグシートに接着剤を塗布する。プリプレグシートに接着剤を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り法、スプレー塗布法、ディップ法等を用いることができる。
接着剤としては、上述の工程B1で用いられるものと同様である。
【0082】
接着剤の塗布量は、プリプレグシートの表面の単位面積当たり、0.5kg/m2以上2.0kg/m2以下が好ましく、0.7kg/m2以上1.2kg/m2以下がより好ましい。接着剤の塗布量が上記下限値以上であると、レール10とプリプレグシートとをより強固に接着できる。接着剤の塗布量が前記上限値以下であれば、作業性が向上する。
また、プリプレグシートは、連続した1枚のものであってもよく、2枚以上を組み合わせたものであってもよい。レール10に貼り付ける工程を簡略化するためには、プリプレグシートは、連続した1枚のものが好ましい。
【0083】
「工程C2」
工程C2は、プリプレグシートに塗布した接着剤が硬化する前に、接着剤をレールの施工面に当て、プリプレグシートをレールの施工面に貼り付ける貼付工程である。
工程C2では、プリプレグシートの接着剤を塗布した面を、上記の工程C1と同様に、プライマーを介して、レール10に貼り付ける。
この際、ヘラ等でプリプレグシートをしごく様にして、接着剤とプリプレグシートとの間、又は接着剤とレール10との間の空気を脱気することが好ましい(脱気操作)。
工程C2の貼着開始時間は、工程C1の貼着開始時間と同様である。
【0084】
接着剤プリプレグシートに塗布し、プリプレグシートの接着剤をレール10に当てて、レール10にプリプレグシートを貼り付け始めるまでの時間(貼着開始時間)は、60分以下が好ましく、45分以下がより好ましく、20分以下がさらに好ましい。貼着開始時間が上記上限値以下であると、接着剤が硬化しておらず、脱気操作をより効果的に行い、かつ施工時間をより短縮できる。
貼着開始時間をより短くする観点から、工程B2と工程C2とを並行して行ってもよい。「並行して行う」とは、プリプレグシートに接着剤を塗布しつつ、塗布した接着剤を押し広げるように、プリプレグシートをレール10に貼り付けることをいう。「並行して行う」場合、貼着開始時間は、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。
【0085】
「工程D1」
工程D1では、エネルギー線照射によりプリプレグシートの硬化性樹脂を硬化させる。
【0086】
「工程E1」
工程E1では、接着剤を硬化して接着層18とし、レール10と被覆層20又はプリプレグシートを接着する。
【0087】
以上の工程により、レール10の一部に被覆層20を設け、レールの被覆構造体30とする。
【0088】
本実施形態のレールの被覆構造体の製造方法によれば、プライマー硬化時間を利用してプリプレグシートの貼り付け面に接着剤を塗布して施工時間を削減することができる。
【0089】
なお、上述の実施形態においては、工程B1又はB2の前段で、レールにプライマーを塗布する工程A1を有するが、本発明はこれに限定されない。工程B1又はB2で用いる接着剤の種類によっては、工程A1を有しなくてもよい。
上述の実施形態においては、プライマーを介して施工面に接着剤を塗布する工程B1又はプリプレグシートに接着剤を塗布する工程B2を有するが、本発明はこれに限定されない。例えばプリプレグシートが粘着性を持つ場合、接着剤を使用せずに施工できるので、プリプレグシートを直接、レール10に貼り付けてもよい。あるいは、プライマーを介してプリプレグシートを貼り付けてもよい。
【0090】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。さらに、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。
【実施例0091】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
(使用材料)
<プリプレグシート>
・シート1:補強部材=ガラスチョップドストランドマット、硬化性樹脂=ビニルエステル、目付量:2580g/m2、寸法:厚さ1.5mm、縦400mm、横400mm、硬化後の直流絶縁抵抗値=4.6×1014Ω、硬化後の交流絶縁破壊電圧=20kV、硬化後の直流絶縁破壊電圧=15kV、硬化後の透水量=0.15g、硬化後の塩化物イオン遮断性=0.7×10-3mg/cm2・日、硬化後の酸素遮断性=0.01mol/m2・年。
・シート2:補強部材=ガラスチョップドストランドマット、硬化性樹脂=ポリエステル、目付量:2580g/m2、寸法:厚さ1.5mm、縦400mm、横400mm、硬化後の直流絶縁抵抗値=4.6×1014Ω、硬化後の交流絶縁破壊電圧=20kV、硬化後の直流絶縁破壊電圧=15kV、硬化後の透水量=0.15g、硬化後の塩化物イオン遮断性=0.7×10-3mg/cm2・日、硬化後の酸素遮断性=0.01mol/m2・年。
【0093】
<プライマー>
・ウレタンプライマー:シンクボンドプライマーU-100(商品名)、積水化学工業株式会社製。
<接着剤>
・主剤:ビニルエステル接着剤、貼り付けプライマーV200(商品名)、積水化学工業株式会社製。
・硬化剤:メポックスD(商品名)、積水化学工業株式会社製。
なお、主剤と硬化剤とを混合した接着剤の硬化物について、前記した方法で直流絶縁抵抗値を測定したところ、1.3×1016Ωであった。
【0094】
(評価方法)
<疲労試験>
図7に示すように、H鋼230上に枕木220と軌道パッド210とレールの被覆構造体30とをこの順で載置した。レールの被覆構造体30をレール締結治具200で枕木220に固定した。その後、レールの中心部に、鉛直方向下方に荷重5~100kNの負荷で1000万回の荷重試験を行った。その後、レールの被覆構造体の外観(底:軌道パッド210と接する面、締結部:レール締結治具200と接する面及びその近傍)を観察し、下記判定基準に従って評価した。
【0095】
≪判定基準≫
◎:目視で外観上の変化がない。
〇:目視にて白化が確認された。
×:目視にて浮き、剥がれ、又は割れが確認された。
【0096】
(実施例1-1~1-6)
レールの腹部の両側面と、レールの底部の底面、及びレールの底部の上面とに対して、サンドペーパーで素地調製を行い、これらの面の錆を落とした。
次に、レールの表面の錆微粉を、アセトンを染み込ませたウエスで拭き取った。
次に、レールの底部及び腹部に、ウレタンプライマーを塗布し、タック(べたつき)がなくなるまで養生した。
次に、ウレタンプライマーを介して、レールの底部及び腹部に主剤と硬化剤とを混合した接着剤を塗布した。接着剤を塗布した後、表1中の貼着開始時間で、接着剤を塗布した面にシート1を貼り付けた。この際、レールに対してプリプレグシートを押し付けて、レールとシート1との間の接着剤を気泡と共に押し出すことにより、レールとシート1との間に気泡が残らないようにした。また、シート1を貼り付けた際の接着剤の状態を表中に示す。
レールにシート1を貼り付けた後、23℃の環境下で自然光を照射(20分間)して、プリプレグを硬化し、かつ接着剤を硬化して、各例のレールの被覆構造体を得た。
得られたレールの被覆構造体について、疲労試験を行いその結果を表中に示す。
【0097】
【0098】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1-1~1-6は、疲労試験(底)の結果が「◎」。疲労試験(締結部)の結果が「〇」であった。
これらの結果から、貼着開始時間を短縮しても、十分な耐久性のレールの被覆構造体を得られることが分かった。
【0099】
(実施例2-1~2-4、参考例)
JIS Z 2371の塩水噴霧試験方法に基づいて試験を実施した。
母材として、SS400の70mm角を使用し、表面処理として3M社のCNSベベルブラック 電動工具用 ♯120をケレン装置に装着して表面を研磨した。
次に、研磨した表面に刷毛塗方法にてプライマーを塗布した。
次に、刷毛塗方法にて接着剤を塗布し、その直後に接着剤を押し出すように扱きながら、表2中のプリプレグシートを貼り付けた。
プリプレグシートからはみ出た接着剤を軽くふき取り、試験片をN=5で作製した。
試験片を塩水噴霧装置(CYP-90a:スガ試験機製)内に並べ、JIS Z 2371 4.2.1に記載の中性塩水噴霧試験方法に基づいて構成した塩溶液(塩化ナトリウム、濃度5±0.5%、比重:1.029~1.036、pH:6.5~7.2)を塩溶液補給タンクにセットした後、塩水噴霧を行った(噴霧:35±1℃、噴霧量:1.5±0.5mL/hr)。
塩水噴霧前を0時間として、塩水を噴霧してから1000時間までの接着力をサンコーテクノ製テクノテスター RT-3000LDIIにおける建研式引張試験にて評価し、N=5の平均値を算出した。これらの結果を表中に示す。
【0100】
【0101】
実施例2-1、2-2及び参考例は、接着剤が未硬化の状態でプリプレグシートを貼り付けた例である。実施例2-3及び2-4は、接着剤が硬化した後にプリプレグシートを貼り付けた例である。
表2に示すように、接着剤が未硬化の状態でプリプレグシートを貼り付けた実施例2-1及び2-2は、塩水噴霧1000時間後の引張試験結果が1.7~1.9MPaであった。
接着剤が硬化した後にプリプレグシートを貼り付けた実施例2-3及び2-4は、塩水噴霧1000時間後の引張試験結果が1.2~1.4MPaであった。