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特開2024-164806海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164806
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/16 20060101AFI20241120BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20241120BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241120BHJP
   C09D 163/02 20060101ALI20241120BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C09D5/16
C09D7/62
C09D7/63
C09D163/02
C09D163/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048653
(22)【出願日】2024-03-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-09
(31)【優先権主張番号】202310552335.3
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524114238
【氏名又は名称】泰山学院
【氏名又は名称原語表記】Taishan University
【住所又は居所原語表記】No. 525 Dongyue Street, Daiyue District, Tai ’an City, Shandong Province, 271021, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 清
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲じぇ▼
(72)【発明者】
【氏名】張 睿
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038GA07
4J038GA09
4J038HA006
4J038JA03
4J038JA17
4J038JA38
4J038JB01
4J038JB12
4J038KA03
4J038NA05
4J038PB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法を提供する。
【解決手段】(1)ステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得るステップと、(2)混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、そして乾燥させて、変性された疎水性赤泥粉末を得るステップと、(3)ベンジルグリシジルエーテルをエポキシ樹脂に加え、均一に分散させ、次に疎水性赤泥粉末を加え、均一に分散させ続け、ブレンドを得、次にブレンドを粉砕し、防汚塗料を得るステップと、(4)使用時、防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成するステップとを含む。本発明により得られる防汚塗料は、表面エネルギーが低く、疎水性及び耐腐食性を有し、環境にやさしい無機塗料である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法であって、
(1)ステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得るステップと、
(2)ステップ(1)における混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、そして乾燥過程で乾燥させて、変性された疎水性赤泥粉末を得るステップと、
(3)ベンジルグリシジルエーテルをエポキシ樹脂に加え、均一に分散させ、次にステップ(2)における疎水性赤泥粉末を加え、均一に分散させ続け、ブレンドを得、次にブレンドを粉砕し、防汚塗料を得るステップと、
(4)使用時、ステップ(4)における防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成するステップとを含み、
ステップ(1)では、ステアリン酸と無水エタノールとの質量比は1:20~30であり、
ステップ(2)では、混合溶液と赤泥粉末との質量比は2~3:1であり、前記乾燥過程はオーブン中で行われ、
ステップ(3)では、ベンジルグリシジルエーテル、エポキシ樹脂及び疎水性赤泥粉末の使用量配合比は、重量部で、2~6:50~70:15~20であり、
ステップ(4)では、前記ポリアミド硬化剤の添加量は防汚塗料の重量の2~7%を占める、ことを特徴とする海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)では、マグネチックスターラーを用いてステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、撹拌時間を40min~60minに制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法。
【請求項3】
ステップ(3)では、前記エポキシ樹脂はビスフェノールAエポキシ樹脂である、ことを特徴とする請求項1に記載の海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋防汚塗料の技術分野に関し、具体的には海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類が海洋関連の活動を行って以来、海洋生物の汚損は、人類の前に突きつけられた厄介な問題となっている。沿岸の付着生物は主に藻類と軟体動物の2種類に分けられ、これらの付着生物はコンクリート表面で大量に繁殖した後、清掃が間に合わないと、水中建物の腐食を加速し、水中建物の点検、保守及び修理を妨害する。
【0003】
海洋汚損生物の防除方法は、物理的防汚、化学的防汚及び生物的防汚の三種類に大別される。ここで、物理的防汚は、主に物理的方法によって海洋生物の付着行動を除去又は干渉し、大部分が防汚塗料によって実現される。物体の表面エネルギーが低いほど、海洋生物が付着しにくくなるため、表面エネルギーが低い材料をコーティングとして利用することにより、汚損生物がその上に付着し成長しにくくすることができる。現在、海洋生物付着を防止するための低表面エネルギー防汚塗料は、主にナノ材料を選択するか又はフッ素系含有の有機物を用いて変性する。しかしながら、ナノ材料は、高価であり、実用化には限界がある。フッ素系含有物質は、高価であるだけでなく、毒性のある有機物であり、環境を汚染しやすい。
【0004】
例えば、出願公開番号がCN112625595Aである中国特許公報には、ナノで効果を強化した低表面エネルギー防汚組成物及び製造方法が開示され、該方法は、まず分散剤であるエタノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートで処理してナノ酸化亜鉛スラリーを得、応用時、樹脂基材、ω-ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、テトラエチルシリケート架橋剤、ジブチル錫ジラウレート触媒、2,4-ペンタンジオン溶媒をナノ酸化亜鉛スラリーと混合する。該方法により形成された有機-無機複合のナノコンポジット高分子材料は、良好な防汚能力及び硬い物体への耐傷性を有するが、ナノ材料を用いて変性し、製造コストが高く、広く普及して応用することが困難であり、また製造方法に用いられるジブチル錫ジラウレートなどの有機物質は水域環境に長期的な悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術的問題に基づいて、本発明は、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に用いられる技術的解決手段は以下のとおりであり、
海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法であって、
(1)ステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得るステップと、
(2)ステップ(1)における混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、そして乾燥過程で乾燥させて、変性された疎水性赤泥粉末を得るステップと、
(3)ベンジルグリシジルエーテルをエポキシ樹脂に加え、均一に分散させ、次にステップ(2)における疎水性赤泥粉末を加え、均一に分散させ続け、ブレンドを得、次にブレンドを粉砕し、防汚塗料を得るステップと、
(4)使用時、ステップ(4)における防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成するステップとを含む。
【0007】
好ましくは、ステップ(1)では、ステアリン酸と無水エタノールとの質量比は1:20~30である。
【0008】
好ましくは、ステップ(1)では、マグネチックスターラーを用いてステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、撹拌時間を40min~60minに制御する。
【0009】
好ましくは、ステップ(2)では、混合溶液と赤泥粉末との質量比は2~3:1であり、前記乾燥過程はオーブン中で行われる。
【0010】
好ましくは、ステップ(3)では、前記エポキシ樹脂はビスフェノールAエポキシ樹脂である。
【0011】
好ましくは、ステップ(3)では、ベンジルグリシジルエーテル、エポキシ樹脂及び疎水性赤泥粉末の使用量配合比は、重量部で、2~6:50~70:15~20である。
【0012】
好ましくは、ステップ(4)では、前記ポリアミド硬化剤の添加量は防汚塗料の重量の2~7%を占める。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有益な技術的効果は以下のとおりである。
本発明により得られた防汚塗料は、表面エネルギーが低く、疎水性及び耐腐食性を有し、環境にやさしい無機塗料であり、塗布して形成されたコーティングは、海洋生物の付着を防止するという作用を果たすことができ、環境にやさしく、毒性がなく、海洋の水域環境を汚染することがなく、製造コストが低い。
【0014】
本発明は、産業固形廃棄物である高アルカリ性赤泥を原料として創造的に使用することにより、アルミナ製造工程で発生する固形廃棄物赤泥を利用して赤泥の堆積量を減少し、コーティングの製造コストを削減することができる一方、赤泥のアルカリ性が高い特徴を効果的に利用して、海洋細菌、真菌などの繁殖を抑制し、海洋生物の付着及び成長を効果的に防止することができる。
【0015】
本発明は、アルカリ性が高い特徴を有する赤泥をステアリン酸により変性し、高アルカリ性を維持した上で、赤泥の表面エネルギーを低下させ、表面エネルギーが低い塗料を製造し、海洋生物付着を防止する効果を強化する。また、変性された低表面エネルギー物質としてステアリン酸を用い、毒性がなく、汚染がなく、安定性が高い。
【0016】
本発明は、さらに、変性された疎水性赤泥粉末をビスフェノールAエポキシ樹脂、ベンジルグリシジルエーテルなどと配合し、各原料の使用量を限定し、防汚塗料を得、次にポリアミド硬化剤と混合し、塗装してアルカリ性赤泥コーティングを得、海洋生物の付着及び成長を効果的に防止することができるだけでなく、コーティングが良好な力学的性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法のプロセスフロー図である。
図2】ステアリン酸変性赤泥のメカニズム図である。
図3】変性された疎水性赤泥のミクロ形態図である。
図4】変性赤泥粉末上の水滴の疎水性の実測図である。
図5】赤泥と変性赤泥のフーリエデータ曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来の低表面エネルギー防汚塗料の実現方法は、一つがナノ材料を用い、もう一つがフッ素系、シラン系を含有する変性剤を用いる。ナノ材料は、高価であり、分散しにくく、製造プロセスが複雑であり、フッ素系含有物質は、毒性があり、環境に害を及ぼし、シラン系含有物質は、構造が不安定である。
【0019】
赤泥は、アルミナの精錬に伴って発生する、成分が複雑で、アルカリ性が高い産業固形廃棄物である。これらの廃棄物は、現在のところ、適切な処理方法がなく、堆積して保管すると、土壌汚染を引き起こし、また、メンテンナンス管理のために多額の資金が必要である。
【0020】
上記技術的問題に基づいて、本発明は、赤泥の高アルカリ性、耐食性の特徴を利用し、持続可能な海洋防汚コーティングを製造し、赤泥廃棄物を利用する問題を解決するだけでなく、製造コストを削減し、また得られた防汚コーティングは、海洋生物の付着及び成長を防止する効果が高い。
【0021】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をさらに説明する。
【0022】
実施例1
図1に示すように、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法であって、以下のステップを含む。
【0023】
(1)マグネチックスターラーを用いてステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得た。ここで、ステアリン酸と無水エタノールとの質量比は1:20であり、撹拌時間を40minに制御した。
【0024】
(2)ステップ(1)における混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、混合溶液と赤泥粉末との質量比は2:1であり、そしてオーブンで乾燥させて、変性された疎水性赤泥粉末を得た。
【0025】
(3)ベンジルグリシジルエーテル(692希釈剤)をビスフェノールAエポキシ樹脂に加え、高速分散機を用いて低速で均一に分散させ、分散速度が300回転/分間であった。次にステップ(2)における疎水性赤泥粉末を加え、高速で均一に分散させ、分散速度が900回転/分間であり、ブレンドを得た。次にコニカルミルを用いて、ブレンドを適切な細かさに粉砕して、防汚塗料を得た。
【0026】
上記ベンジルグリシジルエーテル、ビスフェノールAエポキシ樹脂及び疎水性赤泥粉末の使用量配合比は、重量部で、2:50:20であった。
【0027】
(4)使用時、ステップ(4)における防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、防汚塗料の重量の3%を占めるようにポリアミド硬化剤の添加量を制御し、均一に混合した後に建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成した。
【0028】
研究によると、アルカリ性環境は、海洋細菌、真菌などの繁殖を抑制する作用を有し、表面エネルギーの低い物体の表面に海洋生物が付着しにくい。そのため、高アルカリ性の特徴を有する赤泥をステアリン酸により変性し、高アルカリ性を維持した上で、赤泥の表面エネルギーを低下させ、低表面エネルギー塗料を製造し、海洋生物の付着を困難にする作用を果たすことができる。
【0029】
本発明で使用される赤泥は、アルミナ製造過程の廃棄物であり、生産量が大きく、その高アルカリ性の特徴が海洋生物付着の防止に有利であり、赤泥を利用することも持続可能な発展の理念に沿っている。本発明は、さらに、変性剤としてステアリン酸を用いて、高アルカリ性赤泥を変性して、低表面エネルギー物質を得、毒性がなく、汚染がなく、安定性が高い。
【0030】
実施例2
海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法であって、以下のステップを含む。
【0031】
(1)マグネチックスターラーを用いてステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得た。ここで、ステアリン酸と無水エタノールとの質量比は1:30であり、撹拌時間を60minに制御した。
【0032】
(2)ステップ(1)における混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、混合溶液と赤泥粉末との質量比は3:1であり、そしてオーブンで乾燥させて、変性された疎水性赤泥粉末を得た。
【0033】
(3)ベンジルグリシジルエーテル(692希釈剤)をビスフェノールAエポキシ樹脂に加え、高速分散機を用いて低速で均一に分散させ、分散速度が300回転/分間であった。次にステップ(2)における疎水性赤泥粉末を加え、高速で均一に分散させ、分散速度が900回転/分間であり、ブレンドを得た。次にコニカルミルを用いて、ブレンドを適切な細かさに粉砕して、防汚塗料を得た。
【0034】
上記ベンジルグリシジルエーテル、ビスフェノールAエポキシ樹脂及び疎水性赤泥粉末の使用量配合比は、重量部で、6:50:15であった。
【0035】
(4)使用時、ステップ(4)における防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、防汚塗料の重量の2%を占めるようにポリアミド硬化剤の添加量を制御し、均一に混合した後に建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成した。
【0036】
実施例3
海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法であって、以下のステップを含む。
【0037】
(1)マグネチックスターラーを用いてステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得た。ここで、ステアリン酸と無水エタノールとの質量比は1:25であり、撹拌時間を50minに制御した。
【0038】
(2)ステップ(1)における混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、混合溶液と赤泥粉末との質量比は2.5:1であり、そしてオーブンで乾燥させて、改質された疎水性赤泥粉末を得た。
【0039】
(3)ベンジルグリシジルエーテル(692希釈剤)をビスフェノールAエポキシ樹脂に加え、高速分散機を用いて低速で均一に分散させ、分散速度が250回転/分間であった。次にステップ(2)における疎水性赤泥粉末を加え、高速で均一に分散させ、分散速度が800回転/分間であり、ブレンドを得た。次にコニカルミルを用いて、ブレンドを適切な細かさに粉砕して、防汚塗料を得た。
【0040】
上記ベンジルグリシジルエーテル、ビスフェノールAエポキシ樹脂及び疎水性赤泥粉末の使用量配合比は、重量部で、3:70:20であった。
【0041】
(4)使用時、ステップ(4)における防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、防汚塗料の重量の7%を占めるようにポリアミド硬化剤の添加量を制御し、均一に混合した後に建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成した。
【0042】
実施例4
海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングの製造方法であって、以下のステップを含む。
【0043】
(1)マグネチックスターラーを用いてステアリン酸及び無水エタノールを撹拌して混合し、混合溶液を得た。ここで、ステアリン酸と無水エタノールとの質量比は1:20であり、撹拌時間を60minに制御した。
【0044】
(2)ステップ(1)における混合溶液を赤泥粉末と十分に混合し、混合溶液と赤泥粉末との質量比は2:1であり、そしてオーブンで乾燥させて、改質された疎水性赤泥粉末を得た。
【0045】
(3)ベンジルグリシジルエーテル(692希釈剤)をビスフェノールAエポキシ樹脂に加え、高速分散機を用いて低速で均一に分散させ、分散速度が300回転/分間であった。次にステップ(2)における疎水性赤泥粉末を加え、高速で均一に分散させ、分散速度が700回転/分間であり、ブレンドを得た。次にコニカルミルを用いて、ブレンドを適切な細かさに粉砕して、防汚塗料を得た。
【0046】
上記ベンジルグリシジルエーテル、ビスフェノールAエポキシ樹脂及び疎水性赤泥粉末の使用量配合比は、重量部で、2:60:20であった。
【0047】
(4)使用時、ステップ(4)における防汚塗料をポリアミド硬化剤と混合し、防汚塗料の重量の5%を占めるようにポリアミド硬化剤の添加量を制御し、均一に混合した後に建物表面に塗装し、海洋生物付着を防止するアルカリ性赤泥コーティングを形成した。
【0048】
上記実施例1~4におけるベンジルグリシジルエーテルに代えて、フェニルグリシジルエーテル(690希釈剤)を用いてもよい。
【0049】
図2は、本発明の実施例におけるステアリン酸変性赤泥のメカニズム図である。図から分かるように、ステアリン酸は赤泥微粒子の表面に変性グラフトされた。
【0050】
図3は、本発明の変性された疎水性赤泥のミクロ形態図であり、即ち走査電子顕微鏡で30000x拡大した変性赤泥のミクロ構造図である。図から分かるように、赤泥粒子は、略球形を呈し、粒子が小さく、表面テクスチャが粗く、エッジが目立たない。赤泥中の微粒子は、互いにくっつきやすく、比較的大きな凝集体を形成する。
【0051】
図4は、変性赤泥粉末上の水滴の疎水性の実測図である。図から分かるように、水滴は球形を呈し、変性後の赤泥粉末が疎水性表面を有することを示す。
【0052】
図5は、赤泥と変性赤泥のフーリエデータ曲線図である。二つの曲線の比較から、2920cm-1及び2850cm-1位置で、変性赤泥に二つの伸縮ピークが多くなることが分かり、これは、変性赤泥がすでにステアリン酸中の-COOH疎水性基を有し、ステアリン酸がすでに赤泥の表面に変性グラフトされ、赤泥の疎水性赤泥への変性に成功したことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5