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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164810
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/00 314
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064248
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2023080309
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】鉄野 修一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 利彦
(72)【発明者】
【氏名】片桐 裕子
【テーマコード(参考)】
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H134HB01
2H134HB02
2H134HB05
2H134HB07
2H134HB16
2H134KB02
2H134KD04
2H134KG01
2H134KG03
2H134KG04
2H134KG08
2H134KH01
2H270KA39
2H270KA65
2H270KA70
2H270MA28
2H270MC48
2H270MC49
(57)【要約】
【課題】ブラシ部材からの紙粉の流出が発生しにくい画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転する像担持体と、帯電手段と、現像手段と、転写手段と、像担持体の回転方向において転写部の下流かつ帯電部の上流で像担持体と接触するブラシ部材と、を備え、転写部において被転写体に転写されなかったトナーが現像部において現像手段に回収される画像形成装置であって、ブラシ部材は、基材と、基材に支持され像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、繊維部の繊維の50%以上は、捲縮糸であり、捲縮糸の繊維が像担持体の回転方向における繊維部の全域に分散して配置される、画像形成装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電部において帯電させる帯電手段と、
前記像担持体に形成された静電潜像を、現像部においてトナーを用いてトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を転写部において被転写体に転写する転写手段と、
前記像担持体の回転方向において前記転写部の下流かつ前記帯電部の上流で前記像担持体と接触するブラシ部材と、
を備え、前記転写部において前記被転写体に転写されなかったトナーが前記現像部において前記現像手段に回収される画像形成装置であって、
前記ブラシ部材は、基材と、前記基材に支持され前記像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、
前記繊維部の繊維の50%以上は、捲縮糸であり、前記捲縮糸の繊維が前記像担持体の回転方向における前記繊維部の全域に分散して配置される、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電部において帯電させる帯電手段と、
前記像担持体に形成された静電潜像を、現像部においてトナーを用いてトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を転写部において被転写体に転写する転写手段と、
前記像担持体の回転方向において前記転写部の下流かつ前記帯電部の上流で前記像担持体と接触するブラシ部材と、
を備え、前記転写部において前記被転写体に転写されなかったトナーが前記現像部において前記現像手段に回収される画像形成装置であって、
前記ブラシ部材は、基材と、前記基材に支持され前記像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、
前記繊維部の繊維を所定の方向から平行投影することで得られる曲線の一方の端点を前記曲線の始点とし、前記始点から前記曲線に沿って前記曲線上の任意の点pまで測った長さを変数xとし、前記曲線の両端点を結ぶ直線と前記点pとの間の距離をxの関数f(x)とした場合、前記繊維部の繊維の50%以上は、前記関数f(x)が変曲点を有する繊維であり、前記変曲点を有する繊維が前記像担持体の回転方向における前記繊維部の全域に分散して配置される、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記繊維部の繊維を所定の方向から平行投影することで得られる曲線の一方の端点を前記曲線の始点とし、前記始点から前記曲線に沿って前記曲線上の任意の点pまで測った長さを変数xとし、前記曲線の両端点を結ぶ直線と前記点pとの間の距離をxの関数f(x)とし、
前記繊維部の繊維ごとの前記関数f(x)の最大値を前記基材の単位面積の領域内に配置される全ての繊維について平均した値をα(mm)とし、前記領域における前記繊維部の繊維密度ρ(本/mm^2)から次の式で定まる値をβとした場合、
【数1】
α>βである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記繊維部の繊維ごとの前記関数f(x)の最大値を前記基材の単位面積の領域内に配置される全ての繊維について平均した値をα(mm)とし、前記領域における前記繊維部の繊維密度ρ(本/mm^2)から次の式で定まる値をβとした場合、
【数2】
α>βである、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体の回転軸方向に見た場合に、前記基材が前記繊維部を支持している領域のうちの前記像担持体の回転方向における上流端を通り且つ前記基材に対して垂直な仮想直線を第1の線とし、前記第1の線と前記像担持体の表面との交点における前記像担持体の表面の接線を第2の線とした場合に、
前記回転方向における下流側に向かうほど、前記第1の線の方向における前記基材と前記第2の線との間の距離が広がるように、前記ブラシ部材は前記第2の線に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記繊維部の繊維密度は、40kF/inch^2以上200kF/inch^2以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ブラシ部材はパイル織物であり、前記繊維部は前記パイル織物のパイル糸である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ブラシ部材にトナーの正規極性と同極性の電圧を印加する電圧印加手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記被転写体は、記録材である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記被転写体は、中間転写体であり、
前記中間転写体に転写されたトナー像を記録材に転写する二次転写手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の一形態として、像担持体から被転写体に転写されなかった転写残トナーを現像部で回収して再利用するクリーナーレス方式(現像同時クリーニング方式)が提案されている。クリーナーレス方式では、転写部において感光ドラムに付着した紙粉や填料等が後の工程に影響を及ぼす場合がある。特許文献1は、感光ドラムの表面に当接するブラシ部材を設けることにより、紙粉等の付着物を回収する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-96237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブラシ部材の繊維部に割れ(毛束割れ)が生じることで、ブラシ部材に蓄積された紙粉が局所的に流出し、帯電不良とそれに伴う画像不良が発生する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、ブラシ部材からの紙粉の流出が発生しにくい画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、回転する像担持体と、前記像担持体を帯電部において帯電させる帯電手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を、現像部においてトナーを用いてトナー像に現像する現像手段と、前記トナー像を転写部において被転写体に転写する転写手段と、前記像担持体の回転方向において前記転写部の下流かつ前記帯電部の上流で前記像担持体と接触するブラシ部材と、を備え、前記転写部において前記被転写体に転写されなかったトナーが前記現像部において前記現像手段に回収される画像形成装置であって、前記ブラシ部材は、基材と、前記基材に支持され前記像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、前記繊維部の繊維の50%以上は、捲縮糸であり、前記捲縮糸の繊維が前記像担持体の回転方向における前記繊維部の全域に分散して配置される、ことを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
本発明の他の一態様は、回転する像担持体と、前記像担持体を帯電部において帯電させる帯電手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を、現像部においてトナーを用いてトナー像に現像する現像手段と、前記トナー像を転写部において被転写体に転写する転写手段と、前記像担持体の回転方向において前記転写部の下流かつ前記帯電部の上流で前記像担持体と接触するブラシ部材と、を備え、前記転写部において前記被転写体に転写されなかったトナーが前記現像部において前記現像手段に回収される画像形成装置であって、前記ブラシ部材は、基材と、前記基材に支持され前記像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、前記繊維部の繊維を所定の方向から平行投影することで得られる曲線の一方の端点を前記曲線の始点とし、前記始点から前記曲線に沿って前記曲線上の任意の点pまで測った長さを変数xとし、前記曲線の両端点を結ぶ直線と前記点pとの間の距離をxの関数f(x)とした場合、前記繊維部の繊維の50%以上は、前記関数f(x)が変曲点を有する繊維であり、前記変曲点を有する繊維が前記像担持体の回転方向における前記繊維部の全域に分散して配置される、ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブラシ部材からの紙粉の流出が発生しにくい画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の概略図。
図2】第1実施形態に係るブラシ部材の斜視図(a)及び模式図(b、c)。
図3】捲縮糸の判別方法を説明するための図。
図4】ブラシ部材のパラメータについて説明するための図(a、b)。
図5】参考例(a)と第1実施形態(b)のブラシ部材に紙粉が蓄積された場合の挙動を説明するための図。
図6】紙粉回収試験における画像不良の例を示す図。
図7】ブラシ部材の上流端における毛束割れの様子を示す図。
図8】第2実施形態に係るブラシ部材の構成を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置100の概略図である。本実施形態の画像形成装置100は電子写真方式のモノクロプリンターである。
【0012】
画像形成装置100は、像担持体としての感光ドラム1と、帯電手段又は帯電ユニットとしての帯電ローラ2と、現像手段又は現像ユニットとしての現像装置3と、露光手段又は露光ユニットとしての露光装置4と、転写手段又は転写ユニットとしての転写ローラ5と、ブラシ部材11と、を備える。感光ドラム1は、円筒型の感光体である。帯電ローラ2、現像装置3、露光装置4、転写ローラ5、ブラシ部材11は、感光ドラム1の周囲に配置される。
【0013】
感光ドラム1と帯電ローラ2の対向部を帯電部という。感光ドラム1と現像装置3の現像ローラ31の対向部を現像部という。感光ドラム1と転写ローラ5の対向部を転写部という。ブラシ部材11は、感光ドラム1の回転方向において転写部と帯電部の間で、感光ドラム1の表面と接触している。ブラシ部材11の詳細は後述する。
【0014】
本実施形態における感光ドラム1は、負帯電性の有機感光体である。感光ドラム1の外径は24mmである。感光ドラム1は、電気的に接地されたアルミニウムのドラム状の基体と、基体上に形成された感光層と、を有する。感光ドラム1は、画像形成装置100が備える駆動装置によって図中矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0015】
帯電ローラ2は、感光ドラム1に所定の圧接力で接触される。帯電ローラ2は、帯電電圧供給手段としての帯電高圧電源(不図示)によって、所望の帯電電圧を印加される。露光装置4は、例えばレーザ光を感光ドラム1の回転軸方向に走査するレーザスキャナ装置である。なお、露光装置4はレーザスキャナ装置に限定されることはなく、例えば、感光ドラム1の長手方向に沿って複数のLEDが配列されたLEDアレイを採用しても良い。
【0016】
現像装置3は、現像部材(現像剤担持体)としての現像ローラ31と、現像剤供給手段としてのトナー供給ローラ32と、現像剤としてのトナーを収容する現像剤収容室35と、現像ブレード34と、撹拌搬送部材33と、を有する。現像ローラ31は、現像電圧印加手段としての現像高圧電源(不図示)により現像電圧が印加される。本実施形態では現像方式として接触現像方式・反転現像方式を用いる。つまり、現像ローラ31に担持されるトナーは、現像部において感光ドラム1と接触する。また、現像部において、現像ローラ31から感光ドラム1の露光領域にトナーが転移するように、現像電圧の値が設定される。
【0017】
なお、本実施形態では粒径が6μm、正規極性が負極性のトナーを用いている。また、本実施形態では一成分非磁性接触現像法を採用したが、二成分非磁性接触/非接触現像法を使用してもよいし、磁性現像法を採用してもよい。
【0018】
転写ローラ5は、外周部が弾性材料で形成された弾性ローラを好適に用いることができる。弾性材料の例は、ポリウレタンゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)である。転写ローラ5は感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と当接している。転写ローラ5には、転写電圧印加手段として不図示の転写高圧電源が接続され、所定の転写電圧が印加される。
【0019】
また、画像形成装置100は、シート積載部としてのカセット6と、給送手段としての給送ローラ7と、搬送手段としての搬送ローラ対8と、定着手段としての定着装置9と、排出手段としての排出ローラ対10と、を備える。
【0020】
カセット6には、シートSが積載され収納される。記録材(記録媒体)であるシートSとしては、普通紙及び厚紙等の紙、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材、プラスチックフィルム、布等、サイズ及び材質の異なる多様なシート材を使用可能である。
【0021】
定着装置9は、熱定着方式の構成を備える。本実施形態の定着装置9は、定着フィルム91と、定着フィルム91と対向する加圧ローラ92と、定着フィルム91の内部空間に配置され通電によって発熱するヒータと、を含むフィルム加熱方式のものである。画像形成装置100の制御部は、ヒータに装着された温度検知素子の検知結果に基づいてヒータの通電制御を行うことで、定着フィルム91を画像の定着に適した目標温度で維持する。
【0022】
画像形成動作の流れを説明する。画像形成装置100は、外部装置から画像情報を入力された場合に画像形成動作を開始する。画像形成動作が開始されると、感光ドラム1が回転駆動され、帯電ローラ2が感光ドラム1の表面を所定の電位に均一に帯電させる。本実施形態では、感光ドラム1は帯電ローラ2により負極性に帯電される。露光装置4は、画像情報に基づいて感光ドラム1に光を照射して露光し、感光ドラム1の表面に静電潜像を書き込む。
【0023】
現像装置3は、現像剤としてのトナーを用いて静電潜像をトナー像に現像する。現像装置3の内部では、撹拌搬送部材33が現像剤収容室35のトナーを撹拌し、現像ローラ31及びトナー供給ローラ32に向けてトナーを搬送する。現像ローラ31は、トナー供給ローラ32から供給されるトナーを担持して回転し、現像部に搬送する。現像ブレード34は現像ローラ31に担持されたトナーを摺擦し、現像ローラ31表面のトナー量を規制すると共に、トナーを摩擦帯電させる。そして、現像部において、帯電したトナー粒子が感光ドラム1の表面の電位分布に応じて現像ローラ31から感光ドラム1に転移することで、静電潜像がトナー像に現像される。トナー像は、感光ドラム1の回転によって現像部から転写部に搬送される。
【0024】
感光ドラム1に形成されるトナー像が転写部に到達するタイミングに合わせて、カセット6に格納された被転写体としてのシートSが給送ローラ7及び搬送ローラ対8によって転写部に搬送される。そして、転写部において、感光ドラム1からシートSにトナー像が転写される。
【0025】
転写部を通過したシートSは、定着装置9に搬送される。定着装置9は、定着フィルム91と加圧ローラ92の間のニップ部(定着ニップ)でシートSを挟持して搬送しながらシートS上のトナー像を加熱することで、トナー像をシートSに定着させる。定着装置9を通過したシートSは、排出ローラ対10により画像形成装置100の外部に排出される。
【0026】
以上の画像形成動作において、シートSに転写されずに感光ドラム1に残留した転写残トナーは、以下の工程で回収される。本実施形態の画像形成装置100は、転写残トナーを現像部において回収し再利用する方式(クリーナーレス方式、現像同時クリーニング方式)を採用する。
【0027】
転写残トナーには、正極性(非正規極性)に帯電しているトナー粒子や、負極性に帯電しているものの充分な電荷を有していないトナー粒子が含まれる。転写残トナーは、ブラシ部材11の接触部(以下、「ブラシ接触部」という)を通過した後、帯電部における放電により負極性(正規極性)の帯電量を増やされる。帯電部において帯電させられた転写残トナーは、感光ドラム1の回転に伴い現像部に到達する。
【0028】
先述の通り、現像部に到達した感光ドラム1の表面には静電潜像が形成されているため、現像部に到達した転写残トナーの挙動について、感光ドラム1の露光領域(画像領域)と非露光領域(非画像領域)に分けて説明する。
【0029】
現像ローラ31に印加される現像電圧の値は、現像部において、感光ドラム1の露光領域の電位(明部電位)に対して現像ローラ31の電位がトナーの正規極性と同極性(つまり、現像ローラ31が負極性側)となるように設定される。また、現像電圧の値は、現像部において、感光ドラム1の非露光領域の電位(暗部電位)に対して現像ローラ31の電位がトナーの正規極性とは反対極性(つまり、現像ローラ31が正極性側)となるように設定される。
【0030】
感光ドラム1の非露光領域に付着している転写残トナーは、現像部における感光ドラム1の表面電位と現像電圧との電位差により、現像ローラ31に転移し、現像剤収容室35に回収される。現像剤収容室35に回収されたトナーは、現像剤収容室35内のトナーと撹拌搬送部材33によって撹拌されて均一化され、再び画像形成に使用される。
【0031】
感光ドラム1の露光領域に付着している転写残トナーは、現像部における感光ドラム1の表面電位と現像電圧との電位差により、現像ローラ31に転移せずに感光ドラム1に留まる。この場合、転写残トナーは、現像部において現像ローラ31から感光ドラム1に転移したトナーと共にトナー像を形成する。転写残トナーを含むトナー像は、転写部においてシートSに転写されることで感光ドラム1から除去される。
【0032】
なお、本実施形態の画像形成装置100は、転写残トナーを廃トナー容器に回収するクリーニング部材を有しない。
【0033】
(ブラシ部材)
次に、本実施形態におけるブラシ部材11について説明する。ブラシ部材11は、感光ドラム1から紙粉を除去(回収、捕集)する紙粉除去部材(回収部材、捕集部材)として機能する。また、ブラシ部材11は、転写残トナーの通過を許容することで現像部における転写残トナーの回収を可能とする。
【0034】
図2(a)は、ブラシ部材11の全体の斜視図と、その一部を拡大した拡大図(右下)である。図2(b)は、画像形成装置100に取付けられる前のブラシ部材11を、後述するブラシ部材11の長手方向に見た様子を示す模式図である。図2(c)は、画像形成装置100に取付けられた状態のブラシ部材11を、ブラシ部材11の長手方向に見た様子示す模式図である。図2(a)~(c)に示すように、ブラシ部材11は、基材111(基部、支持部)と、基材111に支持される多数のブラシ繊維bf(毛材、ブラシ毛)からなる繊維部110(毛材部、ブラシ部)と、を有する。図2(a)~(c)では、便宜上、ブラシ繊維bfが直線状に描かれているが、本実施形態では後述するようにブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いる。
【0035】
ブラシ部材11は、パイル糸によって繊維部110が形成されたパイル織物を用いることができる。この場合、ブラシ部材11は、例えば予め捲縮処理を施した繊維をパイル糸として織り込んだ織物生地を作成し、パイル糸のループをカットした後、織物生地を所定の大きさに裁断することで作成される。この場合、織物生地の基布がブラシ部材11の基材111となり、パイル糸がブラシ部材11の繊維部110となる。
【0036】
ブラシ部材11は、感光ドラム1の回転方向において、転写部よりも下流、かつ、帯電部よりも上流で感光ドラム1と接触するように配置される。前述のブラシ接触部は、ブラシ部材11の繊維部110と感光ドラム1の表面が接触する領域である。ブラシ部材11は、繊維部110の一部が感光ドラム1の表面に対して侵入するように配置される。
【0037】
図2(b)、(c)を用いて、ブラシ部材11の感光ドラム1に対する侵入量D3について説明する。侵入量D3は、ブラシ部材11が画像形成装置100に装着される前の繊維部110の高さD1と、ブラシ部材11が画像形成装置100に装着された状態における基材111と感光ドラム1との間の最短距離D2の差(D1-D2)である。なお、繊維部110の高さD1は、ブラシ部材11が感光ドラム1等と接触していない状態(単体の状態)において、基材111に対する繊維部110の突出高さ(毛丈)である。最短距離D2は、基材111に対する繊維部110の突出方向(基材111の法線方向)に測定したときの、支持部材における基材111の支持面(ブラシ取付座面)から感光ドラム1の表面までの距離の最小値である。侵入量は、ブラシ部材11の感光ドラム1に対する当接の深さを示す量である。
【0038】
ブラシ部材11は不図示の支持部材によって基材111を支持され、感光ドラム1に対して位置決めされる。支持部材は、画像形成装置100の筐体に対して固定された部材である。つまり、ブラシ部材11は、基材111の位置が固定された固定ブラシである。そのため、感光ドラム1の回転に伴って、ブラシ部材11の繊維部110が感光ドラム1の表面を摺擦する。なお、ブラシ部材11を支持する支持部材は、画像形成装置100の筐体に着脱可能且つ筐体に対して位置決めされるプロセスカートリッジの一部であってもよい。
【0039】
ブラシ部材11は、転写部においてシートSから感光ドラム1に転移した紙粉などの付着物を捕集(回収)し、感光ドラム1の回転方向においてブラシ部材11よりも下流側の帯電部及び現像部に移動する紙粉の量を低減する。
【0040】
ブラシ部材11には、電圧印加手段(ブラシ電圧印加手段、電圧印加部)としての電源11V(図1)からブラシ電圧を印加することができる。ブラシ電圧は、トナーの正規極性(本実施形態では負極性)と同極性の電圧である。本実施形態では、ブラシ電圧印加手段として現像高圧電源を使用する。つまり、現像ローラ31に印加される現像電圧と同じ電圧がブラシ電圧としてブラシ部材11に印加される。なお、ブラシ電圧印加用の電源11Vと現像電圧電源のそれぞれを独立で有していてもよい。
【0041】
非正規極性に帯電したトナー粒子がブラシ接触部を抜けて帯電部に到達すると、正規極性の帯電電圧を印加される帯電ローラ2に付着し、帯電不良の原因となる可能性がある。トナーの正規極性と同極性のブラシ電圧を印加することで、ブラシ接触部に到達した転写残トナーのうち非正規極性に帯電したトナー粒子を繊維部110に絡めとることができ、帯電不良の可能性を低減できる。なお、ブラシ部材11は、正規極性に帯電しているトナー粒子や、ブラシ接触部において正規極性の電荷を付与されたトナー粒子については、ブラシ接触部を通過することを許容する。
【0042】
また、ブラシ部材11は、ブラシ接触部を転写残トナーが通過する間に、トナー粒子に正規極性の電荷を付与することができる。ブラシ部材11の電荷付与方法として、ブラシ接触部におけるトナー粒子の転動とトナー粒子への電荷注入の2つがある。ブラシ接触部におけるトナー粒子の転動による電荷付与とは、トナー粒子がブラシ接触部を抜けていく過程で、ブラシ繊維bfとの接触によってトナー粒子が転動し、トナー粒子が摩擦帯電することによる電荷付与を指す。トナー粒子への電荷注入とは、ブラシ繊維bfとして導電性繊維を使用した場合に、ブラシ電圧によってブラシ繊維bfを介してトナー粒子に電荷が注入されることを指す。ブラシ接触部においてトナー粒子に正規極性の電荷を付与することで、帯電不良の原因となる非正規極性に帯電したトナー粒子や、かぶり像の原因となる帯電量が少ないトナー粒子の割合を減らすことができる。
【0043】
なお、ブラシ部材11にブラシ電圧を印加しない構成としてもよい。この場合でも、ブラシ接触部におけるトナー粒子の転動によりトナー粒子を帯電させることができる。
【0044】
本実施形態におけるブラシ繊維bfは、バインダー材としてナイロンを用い且つ導電材としてカーボンを混合した導電ナイロン繊維を用いる。ただし、ブラシ繊維bfの材質はこれに限らない。例えばバインダー材がポリエステルやアクリルなどの材料であっても導電性が付与されたものであれば同様に使用できる。また、ブラシ繊維bfは導電性を有しない繊維であってもよい。
【0045】
本実施形態におけるブラシ部材11の短手方向の長さは5mmに設定される。ブラシ部材11の短手方向とは、感光ドラム1の周方向に沿った方向である。ブラシ部材11の短手方向の長さは、5mmに限定されない。例えば、ブラシ部材11の短手方向の長さが長い程、ブラシ部材11が回収可能な紙粉量が多くなるため、画像形成装置100やプロセスカートリッジの寿命が長ければ短手方向の長さを5mmより長くしてもよい。
【0046】
本実施形態におけるブラシ部材11の繊維部110の高さは5mmに設定される。繊維部110の高さとは、ブラシ部材11が感光ドラム1に当接される前の状態における、基材111に対する繊維部110の先端までの突出量である。なお、本実施形態ではブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いるため、繊維部110の高さは個々のブラシ繊維bfの長さと異なる。ブラシ部材11の繊維部110の高さは、5mmに限定されない。
【0047】
本実施形態におけるブラシ部材11の長手方向の長さは230mmに設定される。ブラシ部材11の長手方向とは、感光ドラム1の回転軸方向である。ブラシ部材11の短手方向の長さは、230mmに限定されない。例えば、画像形成装置100が画像を形成可能な最大幅のシートSが通過する長手方向の範囲(最大通紙領域)に応じてブラシ部材11の長手方向の長さを変更してもよい。紙粉は感光ドラム1とシートSとの接触によって発生するため、ブラシ部材11の長手方向の長さは、最大通紙領域の幅以上であることが好ましい。
【0048】
本実施形態におけるブラシ繊維bfの繊度は、2d(デニール:g/9000m)とするが、これに限らない。ただし、繊度が高いと1本1本の繊維のコシが強く感光ドラム1への当接圧が強くなり、摺擦により感光ドラム1の表面を傷つける可能性もある。そのため、繊度は例えば1d以上6d以下が望ましい。
【0049】
なお、「1デニール以上6デニール以下」は、「1.1デシテックス以上6.7デシテックス以下」と言い換えることができる。本実施形態に用いたナイロン製のブラシ繊維bfの場合、恒長式の単位である1d以上6d以下を繊維径に換算し、繊維径で5μm以上30μm以下の太さのブラシ繊維bfを使用してもよい。
【0050】
本実施形態におけるブラシ繊維bfの繊維密度は120kF/inch^2(kF/inch^2は1平方インチ当たりのフィラメント数)としたが、これに限らない。なお、1平方インチは約645mm^2であることから、1kF/inch^2が645000本/mm^2に等しいことに基づいて繊維密度の単位を換算することができる。
【0051】
本実施形態における感光ドラム1に対するブラシ部材11の侵入量は1.5mmとしたが、これに限らない。ただし、侵入量が小さいと紙粉がすり抜ける可能性が高まるため、侵入量は例えば1mm以上であることが好ましい。
【0052】
本実施形態におけるブラシ部材11の電気抵抗値は、次のようにして測定した場合において、1.0×10^5Ωである。つまり、ブラシ部材11を、アルミシリンダに対してブラシ部材11のパイル長さ方向にパイルの先端から1mm侵入させた状態で固定した。そして、アルミシリンダを50mm/secで回転させた状態でブラシ部材11に50Vを印加したときの電流値に基づいてブラシ部材11の電気抵抗値を測定した。ただし、ブラシ部材11の電気抵抗値はこれに限るものではなく、例えば1.0×10^8Ω程度の高抵抗なブラシを用いてもよい。
【0053】
本実施形態におけるブラシ部材11の繊維部110は、繊維の本数で50%以上のブラシ繊維bfが捲縮糸であり、且つ、捲縮糸のブラシ繊維bfが分散して配置されているものとする。捲縮糸とは、捲縮処理を施された糸である。
【0054】
捲縮糸のブラシ繊維bfは、短手方向における繊維部110の全域に亘って分散される。仮に、短手方向における繊維部110の一部の領域にのみ捲縮糸のブラシ繊維bfが存在し、他の領域に捲縮糸のブラシ繊維bfが存在しないというように、捲縮糸が極端に偏在していたとする。この場合、捲縮糸のブラシ繊維bfが存在しない領域では、ブラシ繊維bf同士の絡み合いが形成されず、後述する毛束割れの低減効果が得られない。そのため、本実施形態では、短手方向における繊維部110の全域に亘って捲縮糸のブラシ繊維bfが分散して配置される。
【0055】
また、捲縮糸のブラシ繊維bfは、好ましくは、長手方向における最大通紙領域の全域に亘って(より好ましくは、長手方向における繊維部110の全域に亘って)分散される。これは、長手方向における繊維部110の一部の領域にのみ捲縮糸のブラシ繊維bfが配置されると、捲縮糸のブラシ繊維bfが存在しない領域では、捲縮糸のブラシ繊維bfによる後述する毛束割れの低減効果が得られないからである。ただし、長手方向において繊維部110が配置される領域では毛束割れの低減効果が得られる。そのため、例えば紙粉が発生しやすい領域や、紙粉の流出が帯電不良や画像不良を引き起こしやすい領域等が判明している場合は、長手方向における繊維部110の一部の領域にのみ捲縮糸のブラシ繊維bfを配置することも考えられる。
【0056】
なお、「捲縮糸のブラシ繊維bfが分散して配置される」とは、捲縮糸のブラシ繊維bfが1本単位で分散している場合に限らず、単位面積当たりでブラシ繊維bf全体の本数に対する捲縮糸のブラシ繊維bfの本数の比が一定となる態様であればよい。例えば、パイル織物によってブラシ部材11を作成する場合、複数本のブラシ繊維bfが基材111の1箇所から株状に突出する。この場合、全ての株に捲縮糸のブラシ繊維bfが含まれる態様に限らず、捲縮糸のブラシ繊維bfを含む株が規則的に配置された領域は、捲縮糸のブラシ繊維bfが分散して配置された領域に該当する。
【0057】
ブラシ部材11から採取したブラシ繊維bfが捲縮糸であるか否かは、次のように判別することができる。ある1本のブラシ繊維bfが捲縮糸であるか否かは、図3のように判別される。当該ブラシ繊維bfを所定の方向から平行投影することで得られる曲線を曲線Cと定義する。所定の方向とは、例えばブラシ繊維bfを水平面に載置したときの真上(重力方向の反対方向)である。この場合、曲線Cは、重力方向の平行光線によって水平面に形成される当該ブラシ繊維bfの影である。
【0058】
曲線Cの片方の端点を曲線Cの始点として定義し、曲線Cの他方の端点を曲線Cの終点として定義する。曲線Cの始点から曲線Cに沿って曲線C上の任意の点pまで測った長さを変数xとして、xの関数f(x)を、曲線Cの両端点を結ぶ直線と点pとの間の距離として定義する。
【0059】
この関数f(x)が変曲点を有する場合、このブラシ繊維bfは捲縮糸であると定義する。なお、関数f(x)はブラシ繊維bfが捲縮処理された繊維か否かを判別できる程度の細かさでサンプリングすればよい。曲線Cの極端に短い波長成分に基づいて変曲点を検出しないように、例えば曲線Cの全長を百等分した点で観測したf(x)に基づいて変曲点の有無を判別するとよい。
【0060】
本実施形態のブラシ部材11は、繊維部110の繊維の50%以上が上記の判別方法で捲縮糸として判別されるものとする。繊維部110の繊維全てが捲縮糸であっても構わない。
【0061】
捲縮糸は、原糸を捲縮処理することで作成される。捲縮処理の方法は限定されないが、例えば一般にディスクフリクション仮撚方式と呼ばれる仮撚加工法を用いることができる。ディスクフリクション仮撚方式とは、回転するディスクの外周に加熱した原糸を接触させ、ディスクと原糸間の摩擦力により原糸に撚りを与える方式である。このとき、ディスク突入時の原糸温度や原糸の送り速度、ディスク回転速度、ディスク外周部の素材等を適宜変更することで、捲縮度合いを制御することができる。例えば、ディスクの回転数を下げることで捲縮度合いの小さな繊維を作製することができる。
【0062】
図3を用いて、捲縮糸のブラシ繊維bfと捲縮糸でない繊維の違いを説明する。図3の左列は、実際の繊維の写真である。図3の中央列は、繊維の平行投影を単純化して表した模式図と、曲線C・変数x・関数f(x)の取り方を示す図である。図3の右列は、中央列のxとf(x)について、横軸をx、縦軸をf(x)としたグラフの概略図である。図3の左列と中央列は必ずしも同じ繊維ではない。
【0063】
ブラシ繊維bfが捲縮糸に該当するか否かを判別する際は、基材111と繊維部110との境界でブラシ繊維bfを切り離して採取したのち、顕微鏡等を用いた観察を通して実施する。また、感光ドラム1との摺擦によりブラシ繊維bfの形状は徐々に変化し得るため、ブラシ繊維bfの観察は画像形成装置100の新品の状態で行う。
【0064】
ブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いることで、ブラシ繊維bf同士が絡み合うため、繊維部110の毛束割れを生じにくくすることができる。ここで、毛束割れとは、繊維部110の一部がブラシ部材11の長手方向の一方側と他方側とに分かれるようにして、繊維部110の一部に繊維密度の低い領域が生じた状態を指す。毛束割れが生じると、局所的に紙粉の回収不良が発生し、帯電不良とそれに伴う画像不良が発生する場合がある。
【0065】
本実施形態によれば、ブラシ繊維bf同士が絡み合うことで繊維部110が長手方向に広がりにくくなるため、毛束割れが生じにくくなる。
【0066】
特に、本実施形態のブラシ部材11は、転写残トナーを現像部において回収するクリーナーレス方式の構成において、紙粉を回収する役割を有する。そのため、累積通紙枚数の増加に伴ってブラシ部材11における紙粉の蓄積量が増加し、蓄積された紙粉によってブラシ繊維bfが押しのけられることで毛束割れが生じる可能性がある。図5(a)は、蓄積された紙粉PDにより繊維部110の毛束割れが発生する様子を模式的に示す。蓄積された紙粉によって毛束割れが生じた場合、毛束割れ領域から紙粉が一度に流出し、帯電ローラ2に紙粉塊が付着する。そして、帯電ローラ2への紙粉塊の付着により、帯電不良とそれに伴う画像不良が発生する等、ブラシ接触部の下流側で紙粉による弊害が生じる可能性がある。
【0067】
これに対し、本実施形態ではブラシ繊維として捲縮糸を用いるので、図5(b)に示すように、紙粉PDが蓄積されてもブラシ繊維bfが押しのけられにくくなり、毛束割れが生じにくくなる。そのため、累積通紙枚数が増大しても、毛束割れ領域からの紙粉の流出による帯電不良等の弊害が生じにくくなる。つまり、本実施形態によれば、紙粉の流出が発生しにくい画像形成装置を提供することができる。
【0068】
なお、上記の帯電不良及び画像不良を発生させる可能性がある紙粉PDは、長さが概ね100μm以上の紙粉である。また、この紙粉PDは、シートSの繊維片のみで構成されたものに限らず、繊維片とその他の異物(トナーの外添剤やシートSの填料等)との凝集体であり得る。本実施形態によれば、このような紙粉PDの流出を低減し、帯電不良及び画像不良の可能性が低減することができる。
【0069】
本実施形態におけるブラシ部材11のより好ましい構成として、ブラシ部材11のパラメータα、βについて説明する。
【0070】
パラメータα、βの値は、基材111の単位面積(1mm四方)の領域(以下、単位領域という)内のブラシ繊維bfに基づいて、以下の定義で定められる値である。
α:各ブラシ繊維bfのf(x)の最大値を、単位領域内の全てのブラシ繊維bfについて平均した値。
β:単位領域におけるブラシ繊維bfの繊維密度ρ(本/mm^2)に基づいて次の式で定まる値。
【数1】
【0071】
パラメータαの意味について図4(a)を用いて説明する。各ブラシ繊維bfについて、f(x)の最大値a_kは、当該ブラシ繊維bfの両端点を結ぶ直線に対して、両端点の間の部分がどの程度逸れているかを表す。つまり、f(x)の最大値a_kは、そのブラシ繊維bfの捲縮度合い(曲がりの強さ。1本のブラシ繊維bfの広がりの程度)を表す。図中のブラシ繊維bf1のf(x)の最大値はa_1であり、ブラシ繊維bf2のf(x)の最大値はa_2である。
【0072】
αはf(x)の最大値a_kの平均値ave(a_k)だから、単位領域内のブラシ繊維bfの平均的な捲縮度合いを表す。言い換えると、αの値が大きい程、繊維部110の高さ方向(基材111の法線方向)に対して直交する方向に大きく逸れるように縮れたブラシ繊維bfが多いことを意味する。
【0073】
パラメータβの意味について図4(b)を用いて説明する。βは、ブラシ繊維bfの繊維密度ρを変数とする量である。繊維密度ρは、単位面積(S)当たりのブラシ繊維bfの本数(N)の比(N/S)で与えられる。βは、ブラシ繊維bfの先端が2次元における最密充填である六方配置をとると考えた場合に、あるブラシ繊維bfを中心として、当該ブラシ繊維bfと最も近接する他のブラシ繊維bfを通る円周の直径を表す。
【0074】
βの値に対するαの値の比が大きくなる程、近接するブラシ繊維bf同士の平均的な間隔に対して、個々のブラシ繊維bfの捲縮度合いが大きいことになり、近接するブラシ繊維bf同士が絡み合いやすくなる。そのため、本実施形態では、α>βであることが好ましい。また、α>2βとすることで、よりブラシ繊維bf同士が絡み合いやすくすることができる。
【0075】
なお、例えばパイル織物によってブラシ部材11を作成する場合、複数のブラシ繊維bfが基材111の1箇所に対して株状に配置されることがある。具体的には、複数本の繊維を束ねたフィラメント糸をパイル糸として使用し、パイル糸のループをカットした場合、基材111の1箇所に複数本のブラシ繊維bfが株状に支持される。この場合、基材111付近(繊維部110の根元)ではブラシ繊維bfの粗密が存在するが、基材111から離れ、繊維部110の先端に向かうにつれてブラシ繊維bf同士の間隔が広がり、均一な配置に近づく。そのため、このような場合であっても、ブラシ繊維bfの平面配置は六方配置であるものとして考えることができる。つまり、基材111付近でブラシ繊維bfの粗密が存在する場合でも、βの値に対するαの値の比が大きくなる程、近接するブラシ繊維bf同士が絡み合いやすくなることは同じである。
【0076】
パラメータαの値を求めるには、単位領域内のブラシ繊維bfを基材111と繊維部110との境界で切り離して採取したのち、顕微鏡等を用いた観察を通して実施する。また、感光ドラム1との摺擦によりブラシ繊維bfの形状は徐々に変化し得るため、ブラシ繊維bfの観察は画像形成装置100の新品の状態で行う。
【0077】
α>βの関係が満たされる場合、ブラシ繊維bf同士の絡み合いがより強固になり、ブラシ部材11に紙粉が蓄積されても毛束割れがより生じにくくなる。そのため、累積通紙枚数が増大しても、毛束割れ領域からの紙粉の流出による帯電不良等の弊害がさらに生じにくくなる。
【0078】
なお、α>βの関係を満たす単位領域は、ブラシ部材11の少なくとも一部に存在すればよいものとするが、前述の最大通紙領域の全体でα>βであることが好ましい。
【0079】
(紙粉回収試験)
本実施形態の利点を確認するために行った紙粉回収試験の結果について説明する。試験は、表1に示すブラシ部材11の例1~例4を装着した画像形成装置100を用いて行った。ブラシ部材11以外の構成は、これまで説明してきた実施形態の通りであり、例1~例4の間で共通である。
【表1】
【0080】
試験方法は、試験用紙に対してテスト画像を形成させ、累積通紙枚数に対する画像不良の発生回数を計測した。試験用紙はXerox社製のXerox Vitality Multipurpose Printer Paper(商品名、坪量75g/m^2)を用いた。テスト画像は、0.254mm幅の横線(有効印刷範囲の全体に亘ってシートSの搬送方向と直交する幅方向に延びる直線)と25.146mm幅の空白とが繰り返される横線パターン画像を用いた。画像不良とは、図6に示すように周期性を持つ横黒帯状の画像を指す。
【0081】
図6に示すような画像不良は、ブラシ部材11の毛束割れによって、ブラシ接触部を紙粉塊がすり抜けることで発生する。この場合、ブラシ接触部をすり抜けて帯電部に到達した紙粉塊が帯電ローラ2に付着し、付着した紙粉塊によって帯電ローラ2と感光ドラム1の間に空隙が生まれる。この空隙により、帯電ローラ2の回転周期に相当する周期で感光ドラム1の表面に帯電不良が発生する。本実施形態では反転現像方式を採用しているため、帯電不良領域に像Df1、Df2が現像されることで、図6のような画像不良が発生する。なお、図6において、塊状の像Df1は帯電ローラ2に付着した紙粉塊の周辺で発生する帯電不良領域に対応し、横線状の像Df2は帯電ローラ2に付着した紙粉塊によって生じた空隙によって発生する帯電不良領域に対応する。このように、テスト画像として横線パターン画像を使用し、帯電ローラ2への紙粉付着時に発生する特徴的な画像不良を観察することで、ブラシ部材11の紙粉回収性を評価することができる。表2は、各試験ブラシを用いた場合の画像不良の累計発生回数を、累積通紙枚数1万枚毎に集計した結果である。
【表2】
【0082】
表1に示すように、ブラシ部材11の例1、例2は、ブラシ繊維bfとして捲縮処理を施していない繊維(非捲縮糸)を用いたか捲縮処理を施した繊維(捲縮糸)を用いたかが異なる。表2に示すように、例1と例2を比較すると、ブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いた例2では、ブラシ繊維bfとして非捲縮糸を用いた例1に比べて、画像不良の発生を低減できた。特に、例1では累積通紙枚数が1万枚の時点で画像不良が発生していたのに対し、例2では累積通紙枚数が1万枚になる前に画像不良は発生しなかった。これは、例2では、ブラシ繊維bfが捲縮処理を施されているためにブラシ繊維bf同士が絡み合いやすくなっており、ブラシ部材11に蓄積された紙粉PDによりブラシ繊維bfが押しのけられることによる毛束割れ(図5(a))が生じにくいからである。
【0083】
ただし、例2では、累積通紙枚数1万枚~2万枚の間で画像不良が発生し、更に2万枚を超えると画像不良の発生頻度が増加した。これは、ブラシ繊維bfの捲縮度合いが比較的小さく、ブラシ繊維bf同士の絡み合いの強度が比較的弱いため、ブラシ部材11に蓄積された紙粉の量が増えると毛束割れを十分に抑制できなかったためと考えられる。
【0084】
表1に示すように、ブラシ部材11の例2、例4は、共にブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いたが、例4ではα>βであり、例2ではα<βである点が異なる。表2に示すように、例2と例4を比較すると、α>βである例4では、α<βである例2に比べて、累積通紙枚数が多くなっても画像不良の発生を十分に低減できた。これは、例4では、α>βの関係によってブラシ繊維bf同士がより強固に絡み合っており、ブラシ部材11に多量の紙粉PDが蓄積された状態でも、ブラシ繊維bfが押しのけられることによる毛束割れ(図5(a))がさらに生じにくいからである。したがって、ブラシ繊維bfとして捲縮糸を使用し且つα>βの関係とすることで、長期間に亘って安定した紙粉回収性を実現することができる。
【0085】
なお、参考例として、例3ではブラシ繊維bfとして非捲縮糸を使用し、且つ他の例に比べてブラシ繊維の密度を高く(360kF/inch^2)設定した。表2に示すように、例3では、例1及び例2に比べて画像不良の発生頻度が低減された。これは、個々のブラシ繊維bfの曲げ剛性が例1、例2と同じでも、紙粉塊がブラシ接触部を通り抜ける時に押しのけるブラシ繊維bfの本数が多くなったことで毛束割れが生じにくくなり、結果としてブラシ部材11から紙粉塊が排出されにくいからである。ただし、例3では、累積通紙枚数の増加に伴って画像不良の発生頻度が増加した。これは、ブラシ繊維bf同士が絡み合っていないため、ブラシ部材11に蓄積された紙粉の量が増えると結局は毛束割れが発生して紙粉塊が排出されるからだと考えられる。
【0086】
例4では、例3に比べてさらに画像不良の発生頻度が少なかった。つまり、ブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いることで、ブラシ繊維bfの繊維密度が低いにも関わらず良好な紙粉回収性を実現できた。このことは、例4のようにブラシ繊維bfとして捲縮糸を用い且つα>βとすることで、トナーがブラシ接触部を通過しやすいブラシ繊維bfの密度に設定しつつ、良好な紙粉回収性を実現できることを意味する。特に、クリーナーレス方式の画像形成装置においては、トナーがブラシ接触部を通過しやすいことで、現像部における転写残トナーの回収効率が向上する利点がある。
【0087】
ブラシ繊維bfの繊維密度は、トナーの通過が許容されるように、例えば200kF/inch^2以下とすることが好ましい。繊維密度がこの値より高い場合、転写残トナーがブラシ接触部を通過できず、せき止められたトナーが飛散して画像形成装置100内部を汚染する可能性がある。また、繊維密度がこの値より高い場合、繊維部110でせき止められたトナーが感光ドラム1上の電位変動部に吐き出され、吐き出されたトナーが感光ドラム1を介してシートS上に転写されることでシート上のトナー汚れが発生する可能性がある。
【0088】
感光ドラム1の電位変動部とは、例えばシートSの後端が転写部を通過する時に形成される、感光ドラム1の表面電位が段差状に変化する部分である。つまり、転写部においてシートSと接触していた感光ドラム1の表面領域を接触領域とし、感光ドラム1の回転方向において接触領域と隣接し且つ転写部においてシートSと接触していなかった感光ドラム1の表面領域を非接触領域とする。シートSの後端が転写部を通過する時に、抵抗であるシートSを間に挟んで転写ローラ5と対向する接触領域に比べて、シートSを介さずに転写ローラ5と直接対向している非接触領域に転写電流が集中する。その結果、感光ドラム1上の接触領域と非接触領域の境界部において、非接触領域の電位が接触領域の電位に対して転写電圧と同極性側(本実施例では正極性)に急激に変化する電位変動部が形成される。ブラシ部材11にトナーが蓄積された状態で感光ドラム1上の電位変動部がブラシ部材11を通過すると、静電気力によってトナーが電位変動部に引き付けられることでブラシ部材11から多量のトナーが吐き出され、シート上のトナー汚れが発生する場合がある。
【0089】
また、繊維密度が低すぎると紙粉回収性が低くなるため、ブラシ繊維bfの繊維密度は、例えば40kF/inch^2以上とすることが好ましい。なお、ブラシ繊維bfの捲縮度合い、ブラシ繊維bfの太さ、感光ドラム1に対するブラシ部材11の侵入量等の、繊維密度以外の条件によっても、紙粉回収性及びトナー通過性は変化し得るため、繊維密度は適宜変更可能である。
【0090】
例4と同じ捲縮度合いの繊維を用い、繊維密度を120、200、240(単位はいずれもkF/inch^2)の三段階で変えたブラシ部材11を、それぞれ例4、例5、例6とする。つまり、例4~例6は、αは366μm、βはそれぞれ158μm、122μm、112μmであり、それぞれα>βの関係を満たす。例4~例6のブラシ部材11を用いた場合にシート上のトナー汚れが発生するか否かを評価した結果を表3に示す。評価試験は、各例のブラシ部材11を取り付けた画像形成装置100に対して30,000枚の画像(表1の試験に用いたテスト画像と同様の横線パターン画像)を形成させた後で、2枚のシートSにベタ白画像を形成させた。ベタ白画像を形成された2枚のシートSの内の2枚目のシートSの上端部付近にトナー汚れがある場合は、シート上のトナー汚れ「発生」とし、2枚目のシートSの上端部付近にトナー汚れがない場合は、シート上のトナー汚れ「発生無し」とした。この試験方法は、シート上のトナー汚れが比較的発生しやすい状況を再現したものである。
【0091】
【表3】
【0092】
上記のように、繊維密度が240kF/inch^2である例6ではシート上のトナー汚れが発生した。例6では、ブラシ部材11の繊維密度が高いことにより、ブラシ部材11でせき止められたトナーが、ベタ白画像を形成される1枚目のシートSの後端が転写部を通過する際に形成された感光ドラム1上の電位変動部に対して吐き出される。そして、感光ドラム1に吐き出されたトナーが、シート上のトナー汚れとして2枚目のシートSの上端部付近に付着したと考えられる。一方、繊維密度がそれぞれ120kF/inch^2、200kF/inch^2である例4、例5では、シート上のトナー汚れが発生しなかった。従って、繊維密度が200kF/inch^2以下であれば、シート上のトナー汚れを低減することができる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態では、ブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いたブラシ部材を用いることで、ブラシ繊維bf同士が絡み合い、紙粉塊がブラシ繊維bfを押しのけるようにして流出する可能性を低減することができる。これにより、紙粉の流出による帯電不良とそれに伴う画像不良が発生する可能性を低減することができる。
【0094】
《第2実施形態》
第2実施形態について説明する。本実施形態は、ブラシ部材11を感光ドラム1に対して傾斜配置する点で第1実施形態と異なり、画像形成装置100のブラシ部材11以外の構成は基本的に第1実施形態と共通である。以下、第1実施形態と共通の参照符号を付した要素は、特に説明しない限り、第1実施形態で説明したものと実質的に同じ構成及び機能を有するものとし、第1実施形態とは異なる部分を主に説明する。
【0095】
第1実施形態では、ブラシ繊維bfとして捲縮糸を用いることで、繊維部110において近接するブラシ繊維bf同士が絡み合うようにしていた。しかしながら、感光ドラム1の回転方向におけるブラシ部材11の上流端に位置するブラシ繊維bfは、当該ブラシ繊維bfのさらに上流側に隣接するブラシ繊維bfが存在しない。そのため、図7に示すように、ブラシ部材11の上流端に位置するブラシ繊維bfの一部が回転方向Rの上流側にはみ出すように毛束割れが生じることがある(図中の破線で囲った領域)。
【0096】
上流側にはみ出したブラシ繊維bfは、感光ドラム1との当接状態が不十分であり、感光ドラム1と接触していない場合もある。そのため、図7のように毛束割れが生じた部分に紙粉が蓄積されやすい。この場合でも、毛束割れが生じた部分においても、上流側にはみ出したブラシ繊維bfよりも下流側のブラシ繊維bfは互いに絡み合っており、紙粉をせき止めることができる。しかし、紙粉の蓄積量が多くなった場合や、短期間に大量の紙粉が感光ドラム1に付着した場合には、下流側のブラシ繊維bfが決壊して紙粉塊が流出し、帯電ローラ2への紙粉の付着による画像不良が発生する可能性がある。
【0097】
本実施形態では、このようなブラシ部材11の上流端における毛束割れを低減可能な構成を提案する。
【0098】
図8を用いて本実施形態におけるブラシ部材11の構成を説明する。図8は、感光ドラム1の回転軸方向(ブラシ部材11の長手方向)に見た場合の、感光ドラム1に対するブラシ部材11の基材111の位置関係を表す模式図である。
【0099】
図8において、基材111が繊維部110(図8では省略)を支持している領域のうち感光ドラム1の回転方向Rにおける上流端を通り、且つ、基材111に対して垂直な仮想直線を線L1とする。線L1と感光ドラム1の表面との交点における感光ドラム1の表面の接線を接線T1とする。
【0100】
本実施形態では、線L1に対して感光ドラム1の回転方向Rにおける上流側で且つ接線T1に対して感光ドラム1とは反対側における線L1と接線T1の間の角θが、鋭角となるように、ブラシ部材11が配置される。つまり、0°<θ<90°である。言い換えると、感光ドラム1の回転方向Rにおける下流側に向かうほど、線L1の方向における基材111と接線T1との間の距離が広がるように、ブラシ部材11は傾斜して配置される。つまり、本実施形態において、像担持体の回転方向における下流側に向かうほど、線L1(第1の線)の方向における基材111と接線T1(第2の線)との間の距離が広がるように、ブラシ部材11は接線T1(第2の線)に対して傾斜している。
【0101】
このような構成により、ブラシ部材11の上流端に位置するブラシ繊維bfは、感光ドラム1の回転によって下流側に巻き込まれやすくなる。そのため、ブラシ部材11の上流端においてブラシ繊維bfが上流側にはみ出すような毛束割れが生じにくくなり、毛束割れを生じた部分での紙粉塊の流出とそれに伴う帯電不良や画像不良の発生を低減させることができる。
【0102】
なお、本実施形態ではブラシ部材11の傾斜配置によりブラシ繊維bfの毛束割れ(感光ドラム1の回転方向Rにおける上流側への毛束割れ)を低減する構成を例示したが、他の構成でブラシ繊維bfの毛束割れを低減することも可能である。例えば、ブラシ部材11を支持部材に取付ける前に、取付け後の状態でブラシ繊維bfの先端が感光ドラム1の回転方向Rにおける下流側に向くような癖を予めブラシ繊維bfにつけておくことでも、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0103】
(他の実施形態)
上述の各実施形態では、感光ドラム1(像担持体)から被転写体としてのシート(記録材)に直接トナー像を転写する直接転写方式の構成を説明したが、本技術は、中間転写方式の画像形成装置に適用してもよい。中間転写方式の場合、転写手段(転写ユニット)とは、例えば像担持体としての感光ドラム1から被転写体としての中間転写体にトナー像を一次転写する転写ローラ(一次転写ローラ)を指す。中間転写体としては、複数のローラに張架された無端状のベルト部材を用いることができる。中間転写体に一次転写されたトナー像は、中間転写体との間に二次転写ニップ部を形成する二次転写ローラ等の二次転写手段(二次転写ユニット)により、中間転写体からシート(記録材)に二次転写される。このような中間転写方式の構成においても、上述の実施形態における転写ローラを一次転写ローラに置き換えることで、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
《本開示のまとめ》
本開示には、少なくとも以下の内容が含まれる。
(構成1)
回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電部において帯電させる帯電手段と、
前記像担持体に形成された静電潜像を、現像部においてトナーを用いてトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を転写部において被転写体に転写する転写手段と、
前記像担持体の回転方向において前記転写部の下流かつ前記帯電部の上流で前記像担持体と接触するブラシ部材と、
を備え、前記転写部において前記被転写体に転写されなかったトナーが前記現像部において前記現像手段に回収される画像形成装置であって、
前記ブラシ部材は、基材と、前記基材に支持され前記像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、
前記繊維部の繊維の50%以上は、捲縮糸であり、前記捲縮糸の繊維が前記像担持体の回転方向における前記繊維部の全域に分散して配置される、
ことを特徴とする画像形成装置。
(構成2)
回転する像担持体と、
前記像担持体を帯電部において帯電させる帯電手段と、
前記像担持体に形成された静電潜像を、現像部においてトナーを用いてトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を転写部において被転写体に転写する転写手段と、
前記像担持体の回転方向において前記転写部の下流かつ前記帯電部の上流で前記像担持体と接触するブラシ部材と、
を備え、前記転写部において前記被転写体に転写されなかったトナーが前記現像部において前記現像手段に回収される画像形成装置であって、
前記ブラシ部材は、基材と、前記基材に支持され前記像担持体と接触するように構成された繊維部と、を有し、
前記繊維部の繊維を所定の方向から平行投影することで得られる曲線の一方の端点を前記曲線の始点とし、前記始点から前記曲線に沿って前記曲線上の任意の点pまで測った長さを変数xとし、前記曲線の両端点を結ぶ直線と前記点pとの間の距離をxの関数f(x)とした場合、前記繊維部の繊維の50%以上は、前記関数f(x)が変曲点を有する繊維であり、前記変曲点を有する繊維が前記像担持体の回転方向における前記繊維部の全域に分散して配置される、
ことを特徴とする画像形成装置。
(構成3)
前記繊維部の繊維を所定の方向から平行投影することで得られる曲線の一方の端点を前記曲線の始点とし、前記始点から前記曲線に沿って前記曲線上の任意の点pまで測った長さを変数xとし、前記曲線の両端点を結ぶ直線と前記点pとの間の距離をxの関数f(x)とし、
前記繊維部の繊維ごとの前記関数f(x)の最大値を前記基材の単位面積の領域内に配置される全ての繊維について平均した値をα(mm)とし、前記領域における前記繊維部の繊維密度ρ(本/mm^2)から次の式で定まる値をβとした場合、
【数2】
α>βである、
ことを特徴とする構成1に記載の画像形成装置。
(構成4)
前記繊維部の繊維ごとの前記関数f(x)の最大値を前記基材の単位面積の領域内に配置される全ての繊維について平均した値をα(mm)とし、前記領域における前記繊維部の繊維密度ρ(本/mm^2)から次の式で定まる値をβとした場合、
【数3】
α>βである、
ことを特徴とする構成2に記載の画像形成装置。
(構成5)
前記像担持体の回転軸方向に見た場合に、前記基材が前記繊維部を支持している領域のうちの前記像担持体の回転方向における上流端を通り且つ前記基材に対して垂直な仮想直線を第1の線とし、前記第1の線と前記像担持体の表面との交点における前記像担持体の表面の接線を第2の線とした場合に、
前記回転方向における下流側に向かうほど、前記第1の線の方向における前記基材と前記第2の線との間の距離が広がるように、前記ブラシ部材は前記第2の線に対して傾斜している、
ことを特徴とする構成1から4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成6)
前記繊維部の繊維密度は、40kF/inch^2以上200kF/inch^2以下である、
ことを特徴とする構成1から5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成7)
前記ブラシ部材はパイル織物であり、前記繊維部は前記パイル織物のパイル糸である、
ことを特徴とする構成1から6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成8)
前記ブラシ部材にトナーの正規極性と同極性の電圧を印加する電圧印加手段をさらに備える、
ことを特徴とする構成1から7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成9)
前記被転写体は、記録材である、
ことを特徴とする構成1から8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(構成10)
前記被転写体は、中間転写体であり、
前記中間転写体に転写されたトナー像を記録材に転写する二次転写手段をさらに備える、
ことを特徴とする構成1から8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0105】
1…像担持体(感光ドラム)/2…帯電手段(帯電ローラ)/3…現像手段(現像装置)/5…転写手段(転写ローラ)/11…ブラシ部材/110…繊維部/111…基材/bf…繊維(ブラシ繊維)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8