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特開2024-16482シャフトの支持機構、回転機械及び軸受の取り外し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016482
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】シャフトの支持機構、回転機械及び軸受の取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/06 20060101AFI20240131BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20240131BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F16C35/06 A
F01D25/16 B
F04D29/056 A
F04D29/056 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118638
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】友田 伸孝
(72)【発明者】
【氏名】向田 民人
(72)【発明者】
【氏名】池田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 悟
【テーマコード(参考)】
3H130
3J117
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AA12
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA91D
3H130BA91E
3H130BA95D
3H130BA95E
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DJ08X
3H130EA04D
3H130EA04E
3H130EA06D
3H130EA06E
3H130EA07D
3H130EA07E
3H130ED02D
3H130ED02E
3J117AA04
3J117CA04
3J117DA01
3J117DA02
(57)【要約】
【課題】回転機械においてロータのシャフトを回転可能に支持する軸受を取り外す際にシャフトを支持する支持機構及び回転機械を提供することを目的とする。
【解決手段】回転機械1から軸受8,9を取り外す際にシャフト50を支持する支持機構は、第一側蓋21の内側及び第二側蓋22の内側の第一の位置においてシャフト50の周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第一支持材3及び第二支持材4と、第一支持材3をシャフト50の軸方向に沿って移動させかつ第一支持材3を移動した位置で静止させる第一移動手段10と、第二支持材4を前記軸方向に沿って移動させかつ第二支持材4を移動した位置で静止させる第二移動手段11とを備え、第一支持材3及び第二支持材4は、第一の位置よりも側蓋21,22から離れた第二の位置において内周面がシャフト5の一部分500の外周面と接触してシャフト50を支持する支持部31,41を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシングと、前記ケーシングに収容されたロータと、前記ロータのシャフトを回転可能に支持する一対の軸受とを備えた回転機械において前記軸受を取り外す際に前記シャフトを支持する支持機構であって、
前記ケーシングの一方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第一支持材と、
前記ケーシングの他方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第二支持材と、
前記第一支持材を前記シャフトの軸方向に沿って移動させるとともに前記第一支持材を移動した位置で静止させる第一移動手段と、
前記第二支持材を前記シャフトの軸方向に沿って移動させるとともに前記第二支持材を移動した位置で静止させる第二移動手段と、
を備え、
前記第一支持材及び前記第二支持材は、前記第一の位置よりも前記ケーシングの端部から離れた第二の位置において内周面が前記シャフトの一部分の外周面と接触して前記シャフトを支持する支持部を含む、支持機構。
【請求項2】
前記支持部の内周面は、内側に向かうに連れて次第に拡径しており、前記第二の位置において前記支持部が接触する前記シャフトの一部分は、前記シャフトの端部に向かうに連れて外周面が次第に縮径している、請求項1に記載の支持機構。
【請求項3】
前記第一支持材及び前記第二支持材には、それぞれネジ孔が少なくとも一つ形成されており、
前記ケーシングの両端部には、それぞれ前記ネジ孔と連通するボルト挿入孔が少なくとも一つ形成されており、
前記第一移動手段及び前記第二移動手段は、それぞれ、
頭部が前記ボルト挿入孔に収容されかつ前記頭部の反対側のネジ部が前記ボルト挿入孔を通過して前記ネジ孔にねじ込まれた少なくとも一つのボルトと、
前記ボルト挿入孔から前記ボルトの頭部が抜け出るのを規制する少なくとも一つの規制材と、
で構成される、請求項1に記載の支持機構。
【請求項4】
前記ボルトの頭部には、多角形の穴が形成されており、
前記規制材は、前記ボルトの頭部を覆うように前記ケーシングの端部に取り付けられる板材であり、前記板材には、前記ボルトの頭部の穴を露出させる開口が形成されている、請求項3に記載の支持機構。
【請求項5】
前記第一移動手段及び前記第二移動手段は、それぞれ、
前記第一支持材及び前記第二支持材の外周面に形成された雄ネジと、
前記ケーシングの端部に形成された、前記雄ネジと螺合する雌ネジが有するネジ孔と、
で構成される、請求項1に記載の支持機構。
【請求項6】
筒状のケーシングと、
前記ケーシングに収容されたロータと、
前記ロータのシャフトを回転可能に支持する一対の軸受と、
前記一対の軸受のうちの一方の軸受を収容した第一ハウジングであって、前記ケーシングの一方の端部に取り付けられる第一ハウジングと、
前記一対の軸受のうちの他方の軸受を収容した第二ハウジングであって、前記ケーシングの他方の端部に取り付けられる第二ハウジングと、
前記一対の軸受を取り外す際に前記シャフトを支持する請求項1から5のいずれか一項に記載の支持機構と
を備える、回転機械。
【請求項7】
筒状のケーシングと、前記ケーシングに収容されたロータと、前記ロータのシャフトを回転可能に支持する一対の軸受と、前記一対の軸受のうちの一方の軸受を収容しかつ前記ケーシングの一方の端部に取り付けられる第一ハウジングと、前記一対の軸受のうちの他方の軸受を収容しかつ前記ケーシングの他方の端部に取り付けられる第二ハウジングと、を備えた回転機械において前記軸受を取り外す方法であって、
前記ケーシングの一方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第一支持材を前記シャフトの軸方向に沿って前記一方の端部から離れる方向の第二の位置に移動させて、前記第一支持材において前記第二の位置で内周面が前記シャフトの一部分の外周面に接触する支持部により前記シャフトの一部分を支持する工程と、
前記ケーシングの他方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第二支持材を前記シャフトの軸方向に沿って前記他方の端部から離れる方向の第二の位置に移動させて、前記第二支持材において前記第二の位置で内周面が前記シャフトの他の一部分の外周面に接触する支持部により前記シャフトの他の一部分を支持する工程と、
前記第一支持材の支持部及び前記第二支持材の支持部により前記シャフトを支持して前記シャフトが水平に保たれた状態で、前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングを前記ケーシングから取り外す工程と、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械においてロータのシャフトを回転可能に支持する軸受を取り外す際にシャフトを支持する支持機構、該支持機構を備えた回転機械、及び、該回転機械からの軸受の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧縮機、蒸気タービン、発電機、送風機、電動機、駆動機、アクチュエータ、工作機械などの様々な回転機械においては、ロータのシャフトを一対の軸受によって回転可能に支持している。ロータは円筒状のケーシングに収容されており、ケーシングの両端部となる一対の側蓋にそれぞれ軸受が取り付けられている。
【0003】
軸受は使用時間がある時間を越えると破損するおそれがあり、また潤滑グリースが次第に劣化して潤滑能力が低下する。そのため、定期的にメンテナンスをして軸受を交換する必要がある。
【0004】
メンテナンス時には、ケーシングから一方の側蓋を取り外し、該側蓋とともにシャフトをケーシングから引き出して、その後、シャフトから軸受を取り外すのが一般的である(特許文献1の背景技術を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許2012-164726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した方法では、ケーシングからシャフトを引き抜く作業に多大な労力と時間を要する。また、シャフトから軸受を取り外す際には、シャフトの向きが水平のままであると、シャフトやインペラなどの自重でシャフトがぐらつくことにより軸受近傍に配置されたシール機構の破損を招くおそれがある。そのため、シャフトをその向きが垂直となるように向きを変えて静置する必要があり、軸受の取り外し作業にも多大な労力と時間を要する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することに着目してなされたものであり、回転機械においてロータのシャフトを回転可能に支持する軸受を取り外す際にシャフトを支持する支持機構、該支持機構を備えた回転機械、及び、該回転機械からの軸受の取り外し方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の支持機構を主題とする。
【0009】
項1.筒状のケーシングと、前記ケーシングに収容されたロータと、前記ロータのシャフトを回転可能に支持する一対の軸受とを備えた回転機械において前記軸受を取り外す際に前記シャフトを支持する支持機構であって、
前記ケーシングの一方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第一支持材と、
前記ケーシングの他方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第二支持材と、
前記第一支持材を前記シャフトの軸方向に沿って移動させるとともに前記第一支持材を移動した位置で静止させる第一移動手段と、
前記第二支持材を前記シャフトの軸方向に沿って移動させるとともに前記第二支持材を移動した位置で静止させる第二移動手段と、
を備え、
前記第一支持材及び前記第二支持材は、前記第一の位置よりも前記ケーシングの端部から離れた第二の位置において内周面が前記シャフトの一部分の外周面と接触して前記シャフトを支持する支持部を含む、支持機構。
【0010】
また本発明の支持機構は、上記項1に記載の支持機構の好ましい態様として、以下の項2に記載の支持機構を包含する。
【0011】
項2.前記支持部の内周面は、内側に向かうに連れて次第に拡径しており、前記第二の位置において前記支持部が接触する前記シャフトの一部分は、前記シャフトの端部に向かうに連れて外周面が次第に縮径している、項1に記載の支持機構。
【0012】
また本発明の支持機構は、上記項1及び項2に記載の支持機構の好ましい態様として、以下の項3に記載の支持機構を包含する。
【0013】
項3.前記第一支持材及び前記第二支持材には、それぞれネジ孔が少なくとも一つ形成されており、
前記ケーシングの両端部には、それぞれ前記ネジ孔と連通するボルト挿入孔が少なくとも一つ形成されており、
前記第一移動手段及び前記第二移動手段は、それぞれ、
頭部が前記ボルト挿入孔に収容されかつ前記頭部の反対側のネジ部が前記ボルト挿入孔を通過して前記ネジ孔にねじ込まれた少なくとも一つのボルトと、
前記ボルト挿入孔から前記ボルトの頭部が抜け出るのを規制する少なくとも一つの規制材と、
で構成される、項1又は項2に記載の支持機構。
【0014】
また本発明の支持機構は、上記項3に記載の支持機構の好ましい態様として、以下の項4に記載の支持機構を包含する。
【0015】
項4.前記ボルトの頭部には、多角形の穴が形成されており、
前記ボルトの頭部には、多角形の穴が形成されており、
前記規制材は、前記ボルトの頭部を覆うように前記ケーシングの端部に取り付けられる板材であり、前記板材には、前記ボルトの頭部の穴を露出させる開口が形成されている、項3に記載の支持機構。
【0016】
また本発明の支持機構は、上記項1及び項2に記載の支持機構の好ましい態様として、以下の項5に記載の支持機構を包含する。
【0017】
項5.前記第一移動手段及び前記第二移動手段は、それぞれ、
前記第一支持材及び前記第二支持材の外周面に形成された雄ネジと、
前記ケーシングの端部に形成された、前記雄ネジと螺合する雌ネジを有するネジ孔と、
で構成される、項1又は項2に記載の支持機構。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するため、以下の項6に記載の回転機械を主題とする。
【0019】
項6.筒状のケーシングと、
前記ケーシングに収容されたロータと、
前記ロータのシャフトを回転可能に支持する一対の軸受と、
前記一対の軸受のうちの一方の軸受を収容した第一ハウジングであって、前記ケーシングの一方の端部に取り付けられる第一ハウジングと、
前記一対の軸受のうちの他方の軸受を収容した第二ハウジングであって、前記ケーシングの他方の端部に取り付けられる第二ハウジングと、
前記一対の軸受を取り外す際に前記シャフトを支持する請求項1から5のいずれか一項に記載の支持機構と
を備える、回転機械。
【0020】
また、本発明は、上記課題を解決するため、以下の項7に記載の支持機構を主題とする。
【0021】
項7.筒状のケーシングと、前記ケーシングに収容されたロータと、前記ロータのシャフトを回転可能に支持する一対の軸受と、前記一対の軸受のうちの一方の軸受を収容しかつ前記ケーシングの一方の端部に取り付けられる第一ハウジングと、前記一対の軸受のうちの他方の軸受を収容しかつ前記ケーシングの他方の端部に取り付けられる第二ハウジングと、を備えた回転機械において前記軸受を取り外す方法であって、
前記ケーシングの一方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第一支持材を前記シャフトの軸方向に沿って前記一方の端部から離れる方向の第二の位置に移動させて、前記第一支持材において前記第二の位置で内周面が前記シャフトの一部分の外周面に接触する支持部により前記シャフトの一部分を支持する工程と、
前記ケーシングの他方の端部の内側の第一の位置において前記シャフトの周囲に隙間をあけて配置されるリング状の第二支持材を前記シャフトの軸方向に沿って前記他方の端部から離れる方向の第二の位置に移動させて、前記第二支持材において前記第二の位置で内周面が前記シャフトの他の一部分の外周面に接触する支持部により前記シャフトの他の一部分を支持する工程と、
前記第一支持材の支持部及び前記第二支持材の支持部により前記シャフトを支持して前記シャフトが水平に保たれた状態で、前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングを前記ケーシングから取り外す工程と、
を有する方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回転機械においてロータのシャフトを回転可能に支持する軸受を取り外す際にシャフトを支持することができる。よって、メンテナンス作業を行う際に、シャフトが水平に保った状態で保持されるので、シャフトをケーシングから引き出さなくても軸受を取り外すことができ、軸受の交換作業などを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】回転機械の断面図である。
図2図1の一部を拡大して示す断面図である。
図3図2の一部を拡大して示す断面図である。
図4図1の他の一部を拡大して示す断面図である。
図5図4の一部を拡大して示す断面図である。
図6】規制材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の支持機構は、圧縮機、蒸気タービン、発電機、送風機、電動機、駆動機、アクチュエータ、工作機械などの様々な回転機械に適用することができる。以下の実施形態は、回転機械として蒸発濃縮装置の真空蒸気圧縮機(ヒートポンプ装置)に本発明の支持機構を組み込んだ例を挙げて説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の支持機構を備えた回転機械1の内部構造を示す。回転機械1は、筒状のケーシング2と、ケーシング2に収容されるロータ5と、ケーシング2の軸方向における一方の端部(第一側蓋21)に取り付けられる第一ハウジング6と、第一ハウジング6に収容された第一の軸受8と、ケーシング2の軸方向における他方の端部(第二側蓋22)に取り付けられる第二ハウジング7と、第二ハウジング7に収容された第二の軸受9と、第一側蓋21の内側においてロータ5のシャフト50の周囲に配置されるリング状の第一支持材3と、第二側蓋22の内側においてロータ5のシャフト50の周囲に配置されるリング状の第二支持材4と、第一支持材3をシャフト50の軸方向に沿って移動させる第一移動手段10と、第二支持材4をシャフト50の軸方向に沿って移動させる第二移動手段11と、を少なくとも備える。シャフト50は、軸方向における一方の端部(以下、シャフト50の一端部という。)が第一の軸受8により回転可能に支持され、軸方向における他方の端部(以下、シャフト50の他端部という。)が第二の軸受9により回転可能に支持される。
【0026】
以下、回転機械1を主に構成する各構成部材について説明する。
【0027】
まず、図1に示すように、ケーシング2は例えば円筒状を呈している。ケーシング2は、本体20と、本体20の軸方向における一方の開口を覆う第一側蓋21と、本体20の軸方向における他方の開口を覆う第二側蓋22と、を含む。本実施形態のケーシング2は、第二側蓋22に蒸気導入部23が設けられているとともに、適当な位置にケーシング2内に供給された蒸気を圧縮後の高圧蒸気をケーシング2外に排出する蒸気導出部が設けられている。
【0028】
本体20は、ロータ5のシャフト50の中央部及び該中央部の外周面に一体に設けられた複数のインペラ51を収容する内部空間を有する。第一側蓋21及び第二側蓋22は、それぞれケーシング2の端部をなし、前記内部空間を閉じている。本実施形態では、第一側蓋21及び第二側蓋22は、本体20に取り外し可能に取り付けられている。第一側蓋21及び第二側蓋22は、例えばボルトを用いて本体20に着脱可能に固定できる。
【0029】
第一側蓋21の略中央部は凹状にへこんでいる。この凹部に位置する第一側蓋21の中央部210においてシャフト50の中央部が貫通しており、シャフト50の一端部が第一側蓋21の外側に突き出ている。なお、「外側」とは、第一側蓋21において本体20の内部空間と反対側を意味する。第一側蓋21の凹部は、カバー13により覆われている。
【0030】
第一側蓋21の中央部210には、外側面において、シャフト50と第一側蓋21との間に形成される隙間を密閉する第一軸封機構16が取り付けられている。第一軸封機構16は、この種の装置に用いられる従来から公知の構造のものを用いることができ、例えば、ドライシール、ダブルドライシール、ダブルメカニカルシールなどを例示することができる。
【0031】
図2及び図3に示すように、第一側蓋21の中央部210には、本実施形態では、内側面において、凹状にへこんだ凹部212が形成されている。また、第一側蓋21の中央部210には、本実施形態では、凹部212を通る位置にボルト挿入孔211が少なくとも一つ、好ましくは複数形成されている。複数のボルト挿入孔211は、好ましくは所望の仮想円の円周上に所定間隔をあけて位置するように第一側蓋21の中央部210に形成される。
【0032】
図1に示すように、第二側蓋22は、中央部220においてシャフト50の中央部が貫通しており、シャフト50の他端部が第二側蓋22の外側に突き出ている。なお、「外側」とは、第二側蓋22において本体20の内部空間と反対側を意味する。
【0033】
第二側蓋22の中央部220には、外側面において、シャフト50と第二側蓋22との間に形成される隙間を密閉する第二軸封機構17が取り付けられている。第二軸封機構17は、この種の装置に用いられる従来から公知の構造のものを用いることができ、例えば、ドライシール、ダブルドライシール、ダブルメカニカルシールなどを例示することができる。
【0034】
図4及び図5に示すように、第二側蓋22の中央部220には、本実施形態では、内側面において、凹状にへこんだ凹部222が形成されている。また、第二側蓋22の中央部220には、本実施形態では、凹部222を通る位置にボルト挿入孔221が少なくとも一つ、好ましくは複数形成されている。複数のボルト挿入孔221は、好ましくは所望の仮想円の円周上に所定間隔をあけて位置するように第二側蓋22の中央部220に形成される。
【0035】
なお、第一側蓋21の中央部210及び第二側蓋22の中央部220は、特に限定されないが、それぞれ第一側蓋21の他の部分、第二側蓋22の他の部分に対して取り外し可能であってもよい。
【0036】
次に、図1に示すように、ロータ5は、モータを駆動源としてケーシング2内で回転する。ロータ5は、回転軸であるシャフト50を含む。シャフト50は、円形の棒状を呈しており、大径の中央部と小径の両端部とを含む。
【0037】
シャフト50の中央部は、複数のインペラ51が軸方向に沿って間隔をあけて突設されている。シャフト50の中央部は、軸方向の長さの全長にわたって同じ外径に形成されていてもよいが、本実施形態では、図2及び図3に示すように、軸方向の両端側の一部分において、端に向かうに連れて先細る(外周面が縮径する)テーパ状に形成されている。シャフト50の中央部において、上述のテーパ状とされた部分をテーパ状部分500と称する。
【0038】
図1に示すように、シャフト50の一端部は、第一ハウジング6に収容された第一の軸受8に回転可能に支持される。シャフト50の一端は、第一ハウジング6を貫通して第一ハウジング6の外側に突き出ており、シャフト50の一端にはバランスディスク12が取り外し可能に取り付けられている。なお、「外側」とは、第一ハウジング6において第一側蓋21側と反対側を意味する。
【0039】
シャフト50の他端部は、第二ハウジング7に収容された第二の軸受9に回転可能に支持される。シャフト50の他端は、第二ハウジング7を貫通して第二ハウジング7の外側に突き出ており、シャフト50の他端部の第二ハウジング7から突き出る部分は、カップリングやプーリなどを介してモータに連結される。本実施形態では、シャフト50の他端部の前記突出部分は、プーリ14を介してモータに連結されている。なお、「外側」とは、第二ハウジング7において第二側蓋22側と反対側を意味する。
【0040】
次に、図1に示すように、第一ハウジング6は、第一軸封機構16の外側において第一側蓋21の中央部210に取り外し可能に取り付けられている。第一ハウジング6は、例えばボルト15を用いて第一側蓋21の中央部210に着脱可能に固定できる。第一ハウジング6の中央部に第一の軸受8が収容されている。第一ハウジング6の形状・構造は、第一ハウジング6を第一側蓋21に取り付けることができかつ第一の軸受8を収容できれば、特に限定されない。
【0041】
次に、図1に示すように、第二ハウジング7は、第二軸封機構17の外側において第二側蓋22の中央部220に取り外し可能に取り付けられている。第二ハウジング7は、例えばボルト15を用いて第二側蓋22の中央部220に着脱可能に固定できる。第二ハウジング7の中央部に第二の軸受9が収容されている。第二ハウジング7の形状・構造は、第二ハウジング7を第二側蓋22に取り付けることができかつ第二の軸受9を収容できれば、特に限定されない。
【0042】
次に、図1に示すように、第一の軸受8及び第二の軸受9は、シャフト50の端部をそれぞれ回転可能に支持することができれば、特に限定されるものではない。第一の軸受8及び第二の軸受9は、例えば玉軸受、コロ軸受、平軸受、アンギュラー軸受など、従来から公知のものを用いることができる。
【0043】
次に、図1から図5に示すように、第一支持材3及び第二支持材4は、それぞれ第一側蓋21の中央部210、第二側蓋22の中央部220よりもサイズの小さい円盤状を呈している。第一支持材3及び第二支持材4は、常時は、図3(A)及び図4(A)に示すように、それぞれ第一側蓋21、第二側蓋22の内側において第一側蓋21、第二側蓋22と近い位置、好ましくは隣接する位置に配置される。この位置を「第一の位置」と称する。
【0044】
本実施形態では、第一支持材3及び第二支持材4は、それぞれ外径が第一側蓋21の凹部212の内径、第二側蓋22の凹部222の内径よりも僅かに小さく、それぞれ厚みが第一側蓋21の凹部212の深さ、第二側蓋22の凹部222の深さよりも大きい。そのため、第一支持材3の一部分及び第二支持材4の一部分が、それぞれ第一側蓋21の凹部212、第二側蓋22の凹部222に嵌まり込んでいる。このように、本実施形態では、第一支持材3及び第二支持材4は、常時は、それぞれ第一の位置において、第一側蓋21の凹部、第二側蓋22の凹部と嵌合しており、シャフト50の中央部の周囲に隙間をあけた状態で静止している。
【0045】
第一支持材3の中央の開口部30の直径及び第二支持材4の中央の開口部40の直径は、シャフト50の中央部においてテーパ状部500よりもシャフト50の端に近い側の部分501の外径よりも僅かに大きい。そのため、第一支持材3及び第二支持材4は、第一の位置にあるとき、それぞれシャフト50の回転時にシャフト50と接触せず、シャフト50の回転を邪魔しない。また、第一支持材3及び第二支持材4は、それぞれ第一の位置からシャフト50の軸方向に沿って内側に移動する際にシャフト50との間に摩擦なくスムーズに移動できる。
【0046】
第一支持材3の開口部30及び第二支持材4の開口部40は、軸方向の長さの全長にわたって同じ直径に形成されていてもよいが、本実施形態では、図3及び図5に示すように、それぞれ内側(それぞれ第一側蓋21、第二側蓋22と反対側)の一部分において、内側に向かうに連れて拡がる(第一支持材3の内周面及び第二支持材4の内周面が拡径する)テーパ状に形成されている。第一支持材3及び第二支持材4において、開口部30,40が上述のテーパ状とされた部分をそれぞれ支持部31,41と称する。
【0047】
支持部31,41の内周面の軸方向に対する傾斜角度は、シャフト50のテーパ状部分500の外周面の軸方向に対する傾斜角度と一致又はほぼ一致している。そのため、第一支持材3及び第二支持材4がそれぞれ第一の位置からシャフト50の軸方向に沿って内側に移動した際には、図3(B)及び図4(B)に示すように、第一支持材3の支持部31及び第二支持材4の支持部41にそれぞれシャフト50のテーパ状部分500が嵌まり込んで、両支持部31,41の内周面とテーパ状部分500の外周面とが密に接触する。この第一支持材3及び第二支持材4がそれぞれシャフト50のテーパ状部分500と当接する位置を、「第二の位置」と称する。第二の位置は、第一の位置よりも第一側蓋21及び第二側蓋22から離れた位置である。
【0048】
図2から図5に示すように、第一支持材3及び第二支持材4には、それぞれ少なくとも一つのネジ孔32,42が形成されている。ネジ孔32,42は、それぞれ第一支持材3、第二支持材4において、第一側蓋21のボルト挿入孔211、第二側蓋22のボルト挿入孔221と連通する位置に形成されており、本実施形態では、複数のネジ孔32,42が、所望の仮想円の円周上に所定間隔をあけて位置するように、それぞれ第一支持材3、第二支持材4に形成されている。
【0049】
次に、図1から図5に示すように、第一移動手段10は、第一支持材3についてシャフト50の軸方向に沿って上述した第一の位置及び第二の位置の間で移動させるとともに、第一支持材3を移動した位置で静止させる。また、第二移動手段11は、第二支持材4についてシャフト50の軸方向に沿って上述した第一の位置及び第二の位置の間で移動させるとともに、第二支持材4を移動した位置で静止させる。なお、「静止」とは、第一支持材3及び第二支持材4がシャフト50の軸方向に沿って移動しないとともに、前記軸方向と直交する方向にも移動せずにシャフト50の周囲で定置することを意味する。
【0050】
第一移動手段10及び第二移動手段11は、本実施形態では、それぞれが、ボルト100,110と、規制材101,111とで構成されている。
【0051】
ボルト100,110は、それぞれ頭部が第一側蓋21のボルト挿入孔211、第二側蓋22のボルト挿入孔221に収容され、かつ、頭部と反対側のネジ部がボルト挿入孔211,221を通過して第一支持材3のネジ孔32、第二支持材4のネジ孔42にねじ込まれている。なお、ボルト挿入孔211,221は、それぞれボルト100,110の頭部がボルト挿入孔211,221を通り抜けないような形状に設計されている。
【0052】
図6に示すように、ボルト100,110の頭部には、それぞれ例えば六角形などの多角形の穴103,113が形成されている。六角棒レンチなどを用いることによりボルト挿入孔211,221内でボルト100,110を回転可能である。
【0053】
図2から図6に示すように、規制材101,111は、それぞれボルト挿入孔211,221からボルト100,110の頭部が抜け出るのを規制する。規制材101,111は、ボルト100,110の頭部を覆うようにそれぞれ第一側蓋21の外側面、第二側蓋22の外側面に取り付けられる板材である。規制材101,111は、例えばボルト102,112を用いて第一側蓋21、第二側蓋22に着脱可能に固定できるが、接着剤などを用いて固定してもよい。
【0054】
規制材101,111には、それぞれボルト100,110の頭部よりも小さい大きさでありかつボルト100,110の頭部の孔103,113を露出させる開口104,114が形成されている。
【0055】
次に、上記構成の回転機械1において、メンテナンスにより一対の軸受8,9を取り外す手順について説明する。
【0056】
まず、第一の軸受8側について、カバー13をケーシング2の第一側蓋21から取り外し、第一ハウジング6に形成された開口部60(図2に示す)を通して六角棒レンチなどをボルト100の頭部の穴103に係合させる。そして、六角棒レンチなどを用いてボルト100を緩める方向に回す。これにより、ボルト100は第一支持材3のネジ孔32から抜け出る方向に移動しようとするが、ボルト100の頭部が規制材101により第一側蓋21のボルト挿入孔211から抜け出るのが規制されているため、図3(A)に示すように、第一支持材3が第一側蓋21から離れる内側の方向に移動する。このとき、第一支持材3は、第一移動手段10のボルト100を介してケーシング2の第一側蓋21に保持されながらシャフト50の軸方向に沿って移動する。
【0057】
そして、ボルト100を緩める方向に回し続けて、図3(B)に示すように、第一支持材3の支持部31がシャフト50のテーパ状部分500と当接する第二の位置まで第一支持材3を内側に移動させる。これにより、第一支持材3によってシャフト50を支持する。
【0058】
次に、第二の軸受9側について、第一の軸受8側と同様に、第二ハウジング7に形成された開口部70(図4に示す)を通して六角棒レンチなどをボルト110の頭部の穴113に係合させる。そして、六角棒レンチなどを用いてボルト110を緩める方向に回す。これにより、ボルト110は第二支持材4のネジ孔42から抜け出る方向に移動しようとするが、ボルト110の頭部が規制材111により第二側蓋22のボルト挿入孔221から抜け出るのが規制されているため、図5(A)に示すように、第二支持材4が第二側蓋22から離れる内側の方向に移動する。このとき、第二支持材4は、第二移動手段11のボルト110を介してケーシング2の第二側蓋22に保持されながらシャフト50の軸方向に沿って移動する。
【0059】
そして、ボルト110を緩める方向に回し続けて、図5(B)に示すように、第二支持材4の支持部41がシャフト50のテーパ状部分500と当接する第二の位置まで第二支持材4を内側に移動させる。これにより、第二支持材4によってシャフト50を支持する。
【0060】
このように、シャフト50を一対の支持材3,4で支持することにより、一対の軸受8,9の代わりにシャフト50を水平な状態に保持できる。
【0061】
そして、ボルト15を緩めて第一軸受8を収容した第一ハウジング6を第一側蓋21から取り外すとともに第二軸受9を収容した第二ハウジング7を第二側蓋22から取り外す。これにより、一対の軸受8,9を回転機械1から取り外すことができる。
【0062】
本実施形態の支持機構を備える回転機械1によれば、一対の軸受8,9を取り外す際に、シャフト50をケーシング2から引き出す必要がないうえ、シャフト50が水平に保持された状態であるため、軸受の交換作業などのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0063】
また本実施形態の支持機構を備える回転機械1によれば、第一支持材3の支持部31及び第二支持材4の支持部41は、内周面が傾斜しており、支持部31,41が接触するシャフト5のテーパ状部分50も、外周面が支持部41の傾斜に合わせて傾斜しているので、一対の支持材3,4によりシャフト50をバランスよく支持することができる。
【0064】
以上、本実施形態の支持機構及び回転機械1について説明したが、上記実施形態は、あくまでも例示であって制限的なものではない。そのため、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0065】
例えば上記実施形態では、第一支持材3の支持部31の内周面及び第二支持材4の支持部41の内周面は、テーパ状の傾斜面であり、シャフト50において支持部31,41の内周面が接触する部分(上記実施形態ではテーパ状部分50)の外周面もテーパ状の傾斜面である。しかし、支持部31,41の内周面やシャフト5において支持部31,41の内周面が接触する部分の外周面は、支持部31,41でシャフト50を支持できれば、その形状は特に限定されず、例えば段差面であってもよい。
【0066】
また上記実施形態では、第一移動手段10及び第二移動手段11は、それぞれが、ボルト100,110と、規制材101,111とで構成されている。しかし、第一移動手段10及び第二移動手段11は、第一支持材3、第二支持材4についてシャフト50の軸方向に沿って移動させるとともに、移動した位置で静止させる機能を発揮するものであればその構成は特に限定されない。例えば、第一移動手段10及び第二移動手段11は、それぞれ、第一支持材3及び第二支持材4の外周面に形成された雄ネジと、ケーシング2の第一側蓋21及び第二側蓋22に形成された、前記雄ネジと螺合する雌ネジを有するネジ穴とで構成されていてもよい。この変形例の第一移動手段10及び第二移動手段11は、第一支持材3及び第二支持材4を前記ネジ穴にそれぞれねじ込むことで第一支持材3及び第二支持材4を第一の位置から第二の位置まで移動可能である。
【0067】
また上記実施形態では、回転機械1が真空蒸気圧縮機であるが、回転機械1は例えば圧縮機、蒸気タービン、発電機、送風機、電動機、駆動機、アクチュエータ、工作機械などの様々な回転機械であってもよく、回転機械の種類に応じて適宜構想を変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 回転機械
2 ケーシング
21 第一側蓋
22 第二側蓋
3 第一支持材
4 第二支持材
5 ロータ
50 シャフト
6 第一ハウジング
7 第二ハウジング
8 第一の軸受
9 第二の軸受
10 第一移動手段
100 ボルト
101 規制材
11 第二移動手段
110 ボルト
111 規制材
図1
図2
図3
図4
図5
図6