(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164828
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241120BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241120BHJP
【FI】
H02M7/12 Z
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078401
(22)【出願日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2023080224
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕貴
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006BB00
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006DB01
5H006FA01
5H006HA05
5H006HA08
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770JA10X
5H770KA05W
5H770QA02
5H770QA22
5H770QA25
(57)【要約】
【課題】回路基板のスペース効率を向上させつつ、共振電流による発熱を低減することにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させた電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32、第1コンデンサ31が設けられる第1基板51及び第2コンデンサ32が設けられる第2基板52を有する。第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32が互いに接続されるコンデンサ並列回路P1-P4には、電力変換回路10のスイッチング制御によって外部負荷92に対する直流電流の供給を開始した際及び前記直流電流の供給を停止した際、コンデンサ並列回路P1-P4において発生する共振電流を低減するように、第1コンデンサ31が設けられた第1基板51及び第2コンデンサ32が設けられた第2基板52を電気的に接続し、コンデンサ並列回路P1-P4を構成する連結部材53に共振抑制部材54が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する装置と外部負荷とに電気的に接続され、前記電力を供給する装置から供給された電流をスイッチング素子によるスイッチングによって任意の電圧の直流電流に変換し、前記外部負荷に対して出力する電力変換回路と、
前記電力変換回路の前記スイッチング素子を制御する制御装置と、を有する電力変換装置であって、
前記電力変換回路と電気的に並列に接続される第1コンデンサと、
前記外部負荷と電気的に並列に接続される第2コンデンサと、
前記第1コンデンサが設けられる第1基板と、
前記第2コンデンサが設けられる第2基板と、を有し、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとが互いに電気的に並列に接続されることによってコンデンサ並列回路が構成され、
前記制御装置による前記電力変換回路の前記スイッチング素子の制御によって前記外部負荷に対する直流電流の供給を開始した際及び前記直流電流の供給を停止した際、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間で発生する共振電流が低減されるように、前記第1コンデンサが設けられる前記第1基板と前記第2コンデンサが設けられる前記第2基板とを電気的に接続して前記コンデンサ並列回路の一部を構成する連結部材に前記コンデンサ並列回路のインダクタンスを変更する共振抑制部材が設けられる、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電力変換回路は、
複数の前記スイッチング素子を含むフルブリッジ回路であり、
前記第1コンデンサは、
前記複数の前記スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を吸収するスナバコンデンサであり、
前記第2コンデンサの容量は、前記第1コンデンサの容量よりも大きく、
前記第2コンデンサは、前記複数の前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流の変動を平滑化する平滑コンデンサであり、
前記共振抑制部材は、
前記スナバコンデンサと前記平滑コンデンサとの間で発生する共振電流が低減されるように、前記スナバコンデンサと前記平滑コンデンサとの間で、電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材に設けられる、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記第1基板は、
前記電力変換回路及び前記第1コンデンサが実装されているパワー基板であり、
前記第2基板は、
前記制御装置及び前記第2コンデンサが実装されている制御回路基板であり、
前記コンデンサ並列回路は、
前記パワー基板が有する回路の少なくとも一部、前記制御回路基板が有する回路の少なくとも一部、及び前記連結部材で構成され、
前記共振抑制部材は、
前記パワー基板と前記制御回路基板との間で発生する共振電流が低減されるように、前記パワー基板と前記制御回路基板との間で、電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材に設けられる、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記第1基板は、金属基板であり、
前記第2基板は、樹脂基板であり、
前記コンデンサ並列回路は、前記金属基板が有する回路の少なくとも一部、前記樹脂基板が有する回路の少なくとも一部、及び前記連結部材で構成され、
前記共振抑制部材は、前記金属基板と前記樹脂基板との間で発生する共振電流が低減されるように、前記金属基板と前記樹脂基板との間で、電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材に設けられる、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記共振抑制部材の少なくともその一部は、
第1基板のある方向に見て、前記第1基板及び前記第2基板の両方と重なる位置に設けられる、
電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記連結部材は、
前記第1基板及び前記第2基板の物理的な位置が固定される強度を備える、
電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
前記連結部材は、
前記コンデンサ並列回路の少なくとも一部を構成する前記第1基板及び前記第2基板上の導線の最大断面積よりも大きな断面積を有する導電性材料で構成される、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を供給する装置から供給された電流を任意の電圧の直流電流に変換し、外部負荷に対して出力する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、携帯性またはスペース効率向上のために小型化が求められている。このような電子機器において、IC(Integrated Circuit)、コンデンサ、抵抗及びコイル等の電子部品が実装された複数の基板を積層した状態で内部に配置することにより、電子部品を小型化する技術が知られている。例えば、特許文献1には、複数の電子部品が実装された複数のプリント配線基板を、スタッドピンによって積層した多層プリント配線基板が記載されている。前記特許文献1に記載の多層プリント配線基板は、金属製のスタッドピンによってGNDとなる金属製のシャーシプレートに支持されている。よって、前記多層プリント配線基板においてノイズ電流が発生した場合、ノイズ電流が前記スタッドピンを介して前記シャーシプレートに流れ、他の電子部品に影響を及ぼす可能性がある。そこで、前記特許文献1には、前記スタッドピンにフェライトコアを設け、ノイズ電流を抑制する技術が開示されている。
【0003】
また、前記特許文献2には、積層された2枚の回路基板を有するEV(Electric Vehicle)用のインバータ装置において、一方の回路基板において発生するノイズが他方の回路基板に与える影響を抑制する技術が開示されている。前記特許文献2に記載のインバータ装置では、インバータ制御回路基板と、パワーモジュール制御回路基板とが第1ワイヤーハーネスによって電気的に接続されるとともに、インバータ制御回路基板と外部電源とが、第2ワイヤーハーネスによって電気的に接続されている。前記第1ワイヤーハーネスは、磁性材料で形成された筒状の第1コア部内を通すように配置される。同様に、前記第2ワイヤーハーネスは、磁性材料で形成された筒状の第2コア部内を通すように配置される。このように構成されることにより、前記第1コア部及び前記第2コア部は、パワーモジュール本体または前記パワーモジュール制御回路基板において発生するノイズの影響を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-234810号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第113676062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなインバータ装置の回路基板において、コンデンサが電気的に並列に接続された並列回路では、パワーモジュール制御回路基板におけるスイッチング動作によって共振電流が発生する。前記並列回路に共振電流が発生した場合、前記コンデンサの間で充放電が繰り返されて、前記コンデンサが発熱する。しかしながら、前記特許文献1に記載のフェライト及び前記特許文献2に記載の第1コア部は、前記回路基板で発生したノイズを低減できても、前記並列回路に発生する前記共振電流を低減できない。
【0006】
一方、前記共振電流は、LC回路によって抑制可能である。しかしながら、前記LC回路によって前記共振電流を抑制するためには、前記回路基板に、前記LC回路を構成するためのコイル及びコンデンサを実装する必要がある。そのため、前記回路基板のスペース効率が低下する。
【0007】
このため、回路基板のスペース効率を向上させつつ共振電流による発熱を低減することにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させた電力変換装置が望まれている。
【0008】
本発明は、回路基板のスペース効率を向上させつつ共振電流による発熱を低減することにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させた電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、回路基板のスペース効率を向上させつつ共振電流による発熱を低減することにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させた電力変換装置を検討する中で、以下のような構成に想到した。
【0010】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、電力を供給する装置と外部負荷とに電気的に接続され、前記電力を供給する装置から供給された電流をスイッチング素子によるスイッチングによって任意の電圧の直流電流に変換し、前記外部負荷に対して出力する電力変換回路と、前記電力変換回路の前記スイッチング素子を制御する制御装置と、を有する。前記電力変換装置は、前記電力変換回路と電気的に並列に接続される第1コンデンサと、前記外部負荷と電気的に並列に接続される第2コンデンサと、前記第1コンデンサが設けられる回路基板である第1基板と、前記第2コンデンサが設けられる回路基板である第2基板と、を有する。前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとが互いに電気的に並列に接続されることによってコンデンサ並列回路が構成され、前記制御装置による前記電力変換回路の前記スイッチング素子の制御によって前記外部負荷に対する直流電流の供給を開始した際及び前記直流電流の供給を停止した際、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間で発生する共振電流が低減されるように、前記第1コンデンサが設けられる前記第1基板と前記第2コンデンサが設けられる前記第2基板とを電気的に接続して前記コンデンサ並列回路の一部を構成する連結部材に前記コンデンサ並列回路のインダクタンスを変更する共振抑制部材が設けられる。
【0011】
上述の構成では、前記制御装置による前記電力変換回路のスイッチング素子の制御によって前記外部電源から前記外部負荷に流れていた電流が止まった際、回路等のインダクタンスによって、記第1コンデンサまたは前記第2コンデンサから前記外部負荷に電流が流れる。これにより、例えば、以下のような過程を経て共振電流が発生する。前記制御装置による前記スイッチング素子の制御によって前記外部電源から前記外部負荷に流れていた電流が止まった際、前記外部負荷には、前記電力変換回路と電気的に並列に接続されている前記第1コンデンサから電流が流れる。前記第1コンデンサの放電によって前記第1コンデンサの電圧が前記第2コンデンサの電圧よりも低くなると、前記外部負荷及び前記第1コンデンサには、前記外部負荷と電気的に並列に接続される前記第2コンデンサから電流が流れる。前記第2コンデンサの放電及び前記第1コンデンサの充電によって前記第2コンデンサの電圧が前記第1コンデンサの電圧よりも低くなると、前記第2コンデンサには、前記第1コンデンサから電流が流れる。
【0012】
このように、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサが互いに電気的に並列に接続されることによって構成されるコンデンサ並列回路には、前記スイッチング素子のスイッチングによって前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間で充放電が繰り返されることによる共振電流が発生する。前記共振電流の大きさは、前記コンデンサ並列回路のインダクタンスによって定まる。
【0013】
本発明の電力変換装置は、前記第1コンデンサが設けられる第1基板と前記第2コンデンサが設けられる第2基板とを、前記第1基板及び前記第2基板と別部材である連結部材によって電気的に接続することにより、前記コンデンサ並列回路の一部が構成されている。前記連結部材は、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間に位置している。前記第1基板及び前記第2基板から取り外し可能に構成される前記連結部材にインダクタンスを変更する共振抑制部材を設けることにより、前記コンデンサ並列回路のインダクタンスが変更される。前記電力変換装置は、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間で発生する充放電の繰り返しによって生じる共振電流を、前記第1基板及び前記第2基板の外部に位置する前記共振抑制部材によって低減することができる。よって、前記第1基板及び前記第2基板と別部材である前記連結部材に前記コンデンサ並列回路の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する前記共振抑制部材が設けられているので、前記第1コンデンサが設けられる前記第1基板及び前記第2コンデンサが設けられる前記第2基板には、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加する必要がなく、前記第1基板及び前記第2基板の設計自由度が向上する。これにより、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するための前記LC回路が設けられた基板に比べて、前記第1基板及び前記第2基板を小さくして前記第1基板及び前記第2基板のスペース効率を向上させつつ、前記共振電流による発熱を低減することにより、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの熱的な負荷を低減させることができる。
【0014】
他の観点によれば、本発明の電力変換装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記電力変換回路は、複数の前記スイッチング素子を含むフルブリッジ回路である。前記第1コンデンサは、前記複数の前記スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を吸収するスナバコンデンサである。前記第2コンデンサの容量は、前記第1コンデンサの容量よりも大きい。前記第2コンデンサは、前記複数の前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流の変動を平滑化する平滑コンデンサである。前記共振抑制部材は、前記スナバコンデンサと前記平滑コンデンサとの間で発生する共振電流が低減されるように、前記スナバコンデンサと前記平滑コンデンサとの間で、電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材に設けられる。
【0015】
上述の構成によれば、前記第1コンデンサは、前記スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧が他の電子部品に影響を及ぼす前に前記サージ電圧を吸収する。前記第2コンデンサは、前記第1コンデンサよりもできるだけ前記外部負荷に近い位置で電気的に接続されることにより、前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流の脈動を平滑化して前記外部負荷に出力する。このように、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサによって、サージ電圧の対策と電流の脈動対策を行うことにより、前記第1基板及び前記第2基板の設計自由度が向上する。また、前記電力変換装置は、前記スナバコンデンサ及び前記平滑コンデンサの充放電の繰り返しにより、前記スナバコンデンサと前記平滑コンデンサとの間に共振電流が流れる。前記スナバコンデンサと前記平滑コンデンサとの間で、電流の向きが変化する部位に電気的に接続される前記連結部材に設けられた前記共振抑制部材は、インダクタンスを変更することにより前記連結部材に流れる共振電流を低減する。よって、前記第1基板及び前記第2基板と別部材である前記連結部材に前記コンデンサ並列回路の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する前記共振抑制部材が設けられているので、前記第1コンデンサが設けられる前記第1基板及び前記第2コンデンサが設けられる前記第2基板には、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加する必要がなく、前記第1基板及び前記第2基板の設計自由度が向上する。これにより、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するための前記LC回路が設けられた基板に比べて、前記第1基板及び前記第2基板を小さくして前記第1基板及び前記第2基板のスペース効率を向上させつつ、共振電流による発熱を低減することにより、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの熱的な負荷を低減させることができる。
【0016】
他の観点によれば、本発明の電力変換装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記第1基板は、前記電力変換回路及び前記第1コンデンサが実装されているパワー基板である。前記第2基板は、前記制御装置及び前記第2コンデンサが実装されている制御回路基板である。前記コンデンサ並列回路は、前記パワー基板が有する回路の少なくとも一部、前記制御回路基板が有する回路の少なくとも一部、及び前記連結部材で構成される。前記共振抑制部材は、前記パワー基板と前記制御回路基板との間で発生する共振電流が低減されるように、前記パワー基板と前記制御回路基板との間で、電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材に設けられる。
【0017】
上述の構成では、前記第1コンデンサが設けられた前記パワー基板と前記第2コンデンサが設けられた前記制御回路基板との間で電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材は、前記パワー基板及び前記制御回路基板とは別の部材である。よって、前記連結部材に設けられる前記共振抑制部材は、前記連結部材に対して容易に着脱可能である。つまり、前記コンデンサ並列回路は、前記共振抑制部材を前記連結部材に設けることにより、インダクタンスを容易に変更可能である。前記連結部材に設けられた前記共振抑制部材は、前記連結部材に流れる共振電流を低減する。よって、前記パワー基板及び前記制御回路基板と別部材である前記連結部材に前記コンデンサ並列回路の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する前記共振抑制部材が設けられているので、前記第1コンデンサが設けられる前記パワー基板及び前記第2コンデンサが設けられる前記制御回路基板には、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加する必要がなく、前記パワー基板及び前記制御回路基板の設計自由度が向上する。これにより、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するための前記LC回路が設けられた基板に比べて、前記パワー基板及び前記制御回路基板を小さくして前記パワー基板及び前記制御回路基板のスペース効率を向上させつつ、共振電流による発熱を低減することにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させることができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明の電力変換装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記第1基板は、金属基板であり、前記第2基板は、樹脂基板である。前記コンデンサ並列回路は、前記金属基板が有する回路の少なくとも一部、前記樹脂基板が有する回路の少なくとも一部、及び前記連結部材で構成される。前記共振抑制部材は、前記金属基板と前記樹脂基板との間で発生する共振電流が低減されるように、前記金属基板と前記樹脂基板との間で、電流の向きが変化する部位に設けられた前記連結部材に設けられる。
【0019】
上述の構成では、前記金属基板は、例えばパワー基板である。前記樹脂基板は、例えば制御回路基板である。前記金属基板は、金属製の基材を有している。よって、前記金属基板は、前記樹脂基板に比べて高い放熱性と剛性とを有している。このため、前記金属基板は、前記第1コンデンサ等の放熱対策が容易になり、設計自由度が向上する。また、前記第1コンデンサが設けられる前記金属基板の回路と前記第2コンデンサが設けられる前記樹脂基板の回路とを前記連結部材によって電気的に接続することにより構成される前記コンデンサ並列回路は、前記金属基板と前記樹脂基板との間で、電流の向きが変化する共振電流が流れる部位に前記連結部材が位置する。前記連結部材に設けられた前記共振抑制部材は、前記連結部材に流れる共振電流を低減する。よって、前記金属基板及び前記樹脂基板と別部材である前記連結部材に前記コンデンサ並列回路の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する前記共振抑制部材が設けられているので、前記第1コンデンサが設けられる前記金属基板及び前記第2コンデンサが設けられる前記樹脂基板には、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加する必要がなく、前記パワー基板及び前記制御回路基板の設計自由度が向上する。これにより、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するための前記LC回路が設けられた基板に比べて、前記パワー基板及び前記制御回路基板を小さくして前記金属基板及び前記樹脂基板のスペース効率を向上させつつ、共振電流による発熱を低減し、且つ金属基板によって放熱性を向上させることにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させることができる。
【0020】
他の観点によれば、本発明の電力変換装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記共振抑制部材の少なくともその一部は、第1基板のある方向に見て、前記第1基板及び前記第2基板の両方と重なる位置に設けられる。
【0021】
上述の構成では、前記共振抑制部材の少なくとも一部は、例えば前記第1基板の板厚方向に見た場合、板厚方向に間隔を空けて積層された前記第1基板及び前記第2基板の間に位置する。また、前記共振抑制部材の少なくとも一部は、例えば前記第1基板の厚み方向に直交する表面に沿う方向に見た場合、第1基板の最も広い表面に沿って横並びに配置される前記第1基板及び前記第2基板の間に位置する。このように、前記第1基板と前記第2基板との間のスペースを利用して前記第1基板及び前記第2基板と別部材である前記連結部材に前記コンデンサ並列回路の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する前記共振抑制部材が設けられているので、前記第1コンデンサが設けられる前記金属基板及び前記第2コンデンサが設けられる前記樹脂基板には、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加する必要がなく、前記第1基板及び前記第2基板の設計自由度が向上する。また、前記第1基板及び前記第2基板と別部材である前記連結部材に前記共振抑制部材を配置しているので、前記第1基板及び前記第2基板のスペース効率を向上させることができる。
【0022】
他の観点によれば、本発明の電力変換装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記連結部材は、前記第1基板及び前記第2基板の物理的な位置が固定される強度を備える。
【0023】
上述の構成では、前記連結部材は、前記第1基板に対して前記第2基板を任意の位置で支持するように構成されている。よって、前記第1基板及び前記第2基板の基板構成は、前記第1基板に対する前記第2基板の位置、姿勢による制約を受けにくい。これにより、前記第1基板及び前記第2基板と別部材である前記連結部材に前記コンデンサ並列回路の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する前記共振抑制部材が設けられているので、前記第1コンデンサが設けられる前記第1基板及び前記第2コンデンサが設けられる前記第2基板には、前記コンデンサ並列回路に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加する必要がなく、前記第1基板及び前記第2基板の設計自由度が向上する。
【0024】
他の観点によれば、本発明の電力変換装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記連結部材は、前記コンデンサ並列回路の少なくとも一部を構成する前記第1基板及び前記第2基板上の導線の最大断面積よりも大きな断面積を有する導電性材料で構成される。
【0025】
上述の構成では、前記連結部材は、前記コンデンサ並列回路を構成する回路において最大断面積を有する。つまり、前記連結部材は、導電性部材としてのインダクタンスが小さい。よって、前記連結部材に設けられる前記共振抑制部材による共振電流の抑制において、前記連結部材の影響が小さくなる。これにより、前記連結部材及び前記共振抑制部材の設計自由度が向上する。
【0026】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で利用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0027】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0028】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの一つまたは複数を含むことができる。
【0029】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な電気的接続または結合を含むことができる。
【0030】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0031】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0032】
本発明の説明においては、いくつもの技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の一つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0033】
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0034】
本明細書では、本発明に係る電力変換装置の実施形態について説明する。
【0035】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0036】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0037】
[電力変換装置]
本明細書において、電力変換装置は、電力を供給する装置である電力供給装置によって供給される電力を変換して、外部負荷に供給する装置である。また、前記電力変換装置は、例えば、前記電力供給装置から供給された直流電流又は交流電流を任意の電圧の直流電流に変換し、前記外部負荷に対して出力する。また、前記電力変換装置は、前記電力供給装置から供給された直流電流又は交流電流を、任意の電圧で且つ任意の周波数の交流電流に変換し、前記外部負荷に対して出力してもよい。
【0038】
[コンデンサの特性]
本明細書において、コンデンサの特性とは、前記コンデンサの容量、前記コンデンサの種類、前記コンデンサに含まれる絶縁体の誘電率、前記コンデンサに含まれる電極の表面積、または、前記絶縁体の厚さ等を意味する。
【0039】
[パワー基板]
本明細書において、パワー基板とは、電力を外部に供給する基板を意味する。前記パワー基板は、例えば、電力供給装置から供給された直流電流又は交流電流を、任意の電圧の直流電流に変換して出力する。また、前記パワー基板は、前記電力供給装置から供給された直流電流又は交流電流を、任意の電圧で且つ任意の周波数の交流電流に変換して出力する。前記パワー基板は、例えば、ジェネレータによって発電された交流電流を任意の電圧の直流電流に変換するための素子が実装された基板である。
【0040】
[電力供給装置]
本明細書において、電力供給装置は、外部負荷に対して電力を供給する装置を意味する。前記電力供給装置は、発電機、バッテリ又は商用電源等を含む。
【0041】
[外部負荷]
本明細書において、外部負荷とは、電力を消費する機器又は回路を意味する。つまり、前記外部負荷は、電力供給装置に対して電気的な負荷となる装置、機器、回路等である。前記外部負荷は、例えば、モータ等の電動アクチュエータ、ヒータ、照明器具、制御機器、バッテリ等を含む。
【0042】
[共振抑制部材]
本明細書において、共振抑制部材は、回路のインダクタンスを変更して、共振電流を抑制する部材を意味する。つまり、前記共振抑制部材は、例えばコイルなどのインダクタである。前記共振抑制部材は、回路の一部を構成しない部材であってもよい。前記共振抑制部材は、回路に対して、取り付け可能な部品であってもよいし、取り外し可能な部品であってもよい。
【0043】
[電力変換回路]
本明細書において、電力変換回路とは、入力側から供給される電力を変換して出力側に出力する回路である。前記電力変換回路は、例えば、制御装置によって駆動されるスイッチング素子を含む回路である。前記電力変換回路の回路方式は、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式またはフルブリッジ方式のいずれかであってもよいし、その他の公知の回路方式であってもよい。
【0044】
[スイッチング素子]
本明細書において、スイッチング素子とは、電流を流すオン状態と電流を流さないオフ状態とに切り替え可能に構成されている素子を意味する。複数のスイッチング素子は、例えばブリッジ回路を構成している。これにより、一部のスイッチング素子がオン状態またはオフ状態に切り替えられる(スイッチング制御される)ことにより、交流電流を直流電流に変換することができる。また、前記複数のスイッチング素子は、スイッチング制御されることにより、交流発電機が発電した交流電流を、変換して外部に対して出力したり前記交流発電機に還流させたりすることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一実施形態によれば、回路基板のスペース効率を向上させつつ、共振電流による発熱を低減することにより、コンデンサの熱的な負荷を低減させた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る電力変換装置の第1状態を概略的に示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る電力変換装置の第2状態を概略的に示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る電力変換装置の第3状態を概略的に示す回路図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る電力変換装置の第4状態を概略的に示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施形態3に係る電力変換装置の概略構成を示す側面模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係る電力変換装置の概略構成を示す平面模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る電力変換装置の一状態を概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0048】
[実施形態1]
図1を参照して、実施形態1に係る電力変換装置1について説明する。
図1は、実施形態1に係る電力変換装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。電力変換装置1は、電力供給装置91及び外部負荷92にそれぞれ電気的に接続されている。電力変換装置1は、電力供給装置91によって供給される電力を変換して、外部負荷92に供給する。電力供給装置91は、例えば、外部に電力を供給するジェネレータである。外部負荷92は、電力の供給先である。外部負荷92は、例えば、電力供給装置91から供給される電力を蓄積するバッテリである。
【0049】
電力変換装置1は、電力変換回路10と、制御装置20と、第1接続部15と、第2接続部16と、第1コンデンサ31と、第2コンデンサ32と、第1基板51と、第2基板52と、連結部材53と、共振抑制部材54とを有する。電力変換回路10、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32は、第1接続部15及び第2接続部16を含む回路パターンによって電気的に接続されている。
【0050】
電力変換回路10は、第1出力端子11、第2出力端子12及び入力端子13を有する。電力変換回路10の入力端子13は、電力供給装置91に電気的に接続されている。電力変換回路10の第1出力端子11及び第2出力端子12は、外部負荷92に電気的に接続されている。具体的には、電力変換回路10の第1出力端子11は、第1接続部15によって外部負荷92に電気的に接続されている。電力変換回路10の第2出力端子12は、第2接続部16によって外部負荷92に電気的に接続されている。
【0051】
電力変換回路10は、スイッチング素子を含む。電力変換回路10に含まれるスイッチング素子は、制御装置20によるスイッチング制御によってオン状態とオフ状態とに切り替えられる。電力変換回路10は、制御装置20によるスイッチング制御に応じて、電力供給装置91から供給された電流を任意の電圧の直流電流に変換し、外部負荷92に対して出力する。電力変換回路10は、例えば、整流ダイオード、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、サイリスタ、SiC半導体またはGaN半導体等のパワー半導体によって実現できる。
【0052】
第1接続部15は、複数の部材同士を電気的に接続する部材である。第1接続部15は、電力変換回路10の第1出力端子11と外部負荷92の正極側端子92aとに電気的に接続されている。第1接続部15は、例えば、基板において導電体によって構成される回路パターンの一部及び電線等の導体である。
【0053】
第2接続部16は、複数の部材同士を電気的に接続する部材である。電力変換回路10の第2出力端子12と外部負荷92の負極側端子92bとに電気的に接続されている。第2接続部16は、例えば、基板において導電体によって構成される回路パターンの一部及び電線等の導体である。
【0054】
制御装置20は、電力変換回路10を制御する。制御装置20は、電力変換回路10のスイッチング制御によって、外部負荷92に対する直流電流の供給を開始したり、前記直流電流の供給を停止したりできる。
【0055】
第1コンデンサ31は、電力変換回路10から出力される電流を安定させる。第2コンデンサ32は、外部負荷92に入力される電流を安定させる。第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32には、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、電解コンデンサまたは電気二重層コンデンサ等の各種のコンデンサを採用できる。
【0056】
第1コンデンサ31は、第1基板51に設けられている。第1コンデンサ31は、第1基板51の導線等を介して電力変換回路10と電気的に並列に接続されている。第1コンデンサ31は、第1接続部15と第2接続部16とに電気的に接続されている。第1コンデンサ31は、点P4において第1接続部15に電気的に接続されているとともに、点P3において第2接続部16に電気的に接続されている。第1コンデンサ31は、他の素子を介さずに電力変換回路10に電気的に接続されている。
【0057】
第2コンデンサ32は、第2基板52に設けられている。第2コンデンサ32は、第2基板52の導線等を介して外部負荷92と電気的に並列に接続される。第2コンデンサ32は、第1接続部15と第2接続部16とに電気的に接続されている。第2コンデンサ32は、点P1において第1接続部15に電気的に接続されるともに、点P2において第2接続部16に電気的に接続されている。第2コンデンサ32は、他の素子を介さずに外部負荷92に電気的に接続されている。
【0058】
また、第1コンデンサ31と第2コンデンサ32とは、容量または特性の少なくとも一つが互いに異なる。第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32の特性は、例えば、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32の種類、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32に含まれる絶縁体の誘電率、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32に含まれる電極の表面積、または、前記絶縁体の厚さ等である。
【0059】
第1コンデンサ31と第2コンデンサ32とは、第1基板51の導線等及び第2基板52の導線等を介して互いに電気的に並列に接続されている。これにより、第1コンデンサ31と第2コンデンサ32とは、点P1-P2-P3-P4-P1の経路からなる閉回路(以下、コンデンサ並列回路P1-P4と称する)を構成する。コンデンサ並列回路P1-P4は、他の素子を介さずに電力変換回路10と外部負荷92とに接続されている。
【0060】
第1基板51は、第1コンデンサ31が設けられる基板である。第1基板51には、回路を構成する導線、様々な種類の素子等が実装されている。第1基板51は、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線を有する。第1基板51では、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線と第1コンデンサ31とが電気的に接続されている。
【0061】
第2基板52は、第2コンデンサ32が設けられる基板である。第2基板52には、回路を構成する導線、様々な種類の素子等が実装されている。第2基板52は、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線を有する。第2基板52では、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線と第2コンデンサ32とが電気的に接続されている。
【0062】
連結部材53は、第1基板51と第2基板52とを連結する部材である。連結部材53は、第1基板51及び第2基板52から取り外し可能な別部材として構成されている。連結部材53は、導電性材料によって構成されている。連結部材53は、第1基板51が有するコンデンサ並列回路P1-P4の一部と第2基板52が有するコンデンサ並列回路P1-P4の一部とを電気的に接続している。つまり、連結部材53は、第1コンデンサ31が設けられる第1基板51と第2コンデンサ32が設けられる第2基板52と電気的に接続されている。よって、連結部材53は、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成している。連結部材53は、第1コンデンサ31と第2コンデンサ32との間且つ電流の向きが変化する部位に位置する。
【0063】
共振抑制部材54は、コンデンサ並列回路P1-P4のインダクタンスを変更する。つまり、共振抑制部材54は、インダクタである。共振抑制部材54は、制御装置20による電力変換回路10の制御によって外部負荷92に対する直流電流の供給を開始した際、及び前記直流電流の供給を停止した際に、コンデンサ並列回路P1-P4の第1コンデンサ31と第2コンデンサ32との間で発生する共振電流が低減されるように、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する連結部材53に設けられる。共振抑制部材54は、コンデンサ並列回路P1-P4において、第1接続部15の点P1と点P4との間に位置している。
【0064】
共振抑制部材54は、コンデンサ並列回路P1-P4に対して、取り付け可能及び取り外し可能な部品として、第1コンデンサ31と第2コンデンサ32とを接続する導電性材料の一部である連結部材53に取り付けられている。この際、共振抑制部材54は、コンデンサ並列回路P1-P4に電気的に接続されていない。つまり、共振抑制部材54は、コンデンサ並列回路P1-P4を構成する部材に含まれていない。共振抑制部材54は、例えば、酸化鉄を主成分とするセラミックスであるフェライトコア等により実現できる。共振抑制部材54は、フェライトコアの変更によってコンデンサ並列回路P1-P4のインダクタンスを調整することができる。共振抑制部材54は、直流電流に対しては何の作用もせずに、交流に対して電流を流さないように作用する。
【0065】
次に、コンデンサ並列回路P1-P4で発生する共振電流について説明する。
【0066】
コンデンサ並列回路P1-P4では、制御装置20による電力変換回路10のスイッチング制御によって外部負荷92に対する直流電流の供給を開始した際、または前記直流電流の供給を停止した際に、第1コンデンサ31と第2コンデンサ32との間において共振電流が発生する。前記共振電流は、第1コンデンサ31の放電によって第2コンデンサ32が充電される状態と第2コンデンサ32の放電によって第1コンデンサ31が充電される状態を交互に繰り返すことにより発生する。
【0067】
電力変換装置1では、制御装置20によるスイッチング制御によって、例えば、電力供給装置91から外部負荷92に流れていた電流が止まった際、コンデンサ並列回路P1-P4を含む回路等のインダクタンス、コンデンサの配置、コンデンサの容量または特性の相違によって、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32のうちいずれか一方から外部負荷92に電流が流れる場合がある。
【0068】
電力供給装置91から外部負荷92に流れていた電流が止まった際、例えば、回路のインダクタンスによって誘導電流が発生し、電力変換回路10と電気的に並列に接続されている第1コンデンサ31から外部負荷92に電流が流れる(
図1に示す白抜き矢印R1)。
【0069】
第1コンデンサ31の放電による電圧の低下によって、第1コンデンサ31の電圧が第2コンデンサ32の電圧よりも低くなると、第2コンデンサ32から外部負荷92及び第1コンデンサ31に電流が流れる(
図1に示す白抜き矢印R1及びR2)。
【0070】
第2コンデンサ32の放電による電圧の低下及び第1コンデンサ31の充電による電圧の上昇によって、第1コンデンサ31の電圧が第2コンデンサ32の電圧よりも高くなると、第1コンデンサ31から第2コンデンサ32に電流が流れる(
図1に示す白抜き矢印R3)。
【0071】
このようにして、コンデンサ並列回路P1-P4では、スイッチング制御による第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32の充放電の繰り返しによって、共振電流が発生する。すなわち、第1コンデンサ31または第2コンデンサ32には、各コンデンサの充放電による電圧の変化によって生じる共振電流がリプル電流として流れる。前記共振電流の大きさは、コンデンサ並列回路P1-P4のインダクタンスによって決まる。これにより、第1コンデンサ31または第2コンデンサ32に、充放電の繰り返しによって発熱する。
【0072】
次に、コンデンサ並列回路P1-P4における共振抑制部材54の作用について説明する。
【0073】
連結部材53には、第1コンデンサ31から外部負荷92に向かう電流(
図1に示す白抜き矢印R1)と、第1コンデンサ31から第2コンデンサ32に向かう電流(
図1に示す白抜き矢印R3)とが流れる。このように、連結部材53には、電流の向きが変化する共振電流が流れる。共振抑制部材54は、インダクタとして、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を減衰するように作用する。すなわち、共振抑制部材54は、電流の向きが変わる部位に設けられているので、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を熱に変換して減衰させる。よって、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32では、共振電流による充放電の繰り返しが抑制され、充放電によって生じる発熱が低減される。
【0074】
このように構成される電力変換装置1は、第1基板51及び第2基板と別部材である連結部材53にコンデンサ並列回路P1-P4の電気的特性に基づいたインダクタンスを有する共振抑制部材54を設けることにより、第1コンデンサ31が設けられる第1基板51及び第2コンデンサ32が設けられる第2基板52にコンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加することなく、共振抑制部材54によって第1コンデンサ31と第2コンデンサ32とが互いに充放電を繰り返すことにより生じる共振電流を低減することができる。これにより、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路が設けられた基板に比べて、第1基板51及び第2基板52を小さくして第1基板51及び第2基板52のスペース効率を向上させつつ、充放電の繰り返しによって生じる発熱を低減することにより、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ32の熱的な負荷を低減させることができる。
【0075】
[実施形態2]
(概略構成)
図2~
図5を参照して、実施形態2に係る電力変換装置2について説明する。
図2は、実施形態2に係る電力変換装置2の第1状態を概略的に示す回路図である。
図3は、実施形態2に係る電力変換装置2の第2状態を概略的に示す回路図である。
図4は、実施形態2に係る電力変換装置2の第3状態を概略的に示す回路図である。
図5は、実施形態2に係る電力変換装置2の第4状態を概略的に示す回路図である。
【0076】
実施形態2に係る電力変換装置2では、実施形態1に係る電力変換装置1の構成をより具体化している。なお、実施形態2の説明では、実施形態1に係る電力変換装置1と共通する部分については、詳細な説明を繰り返さない。
【0077】
電力変換装置2は、電力供給装置としてのジェネレータ911と、外部負荷としてのバッテリ921とに電気的に接続されている。すなわち、電力変換装置2は、ジェネレータ911によって発電された電力を、バッテリ921に充電可能に構成されている。電力変換装置2は、例えば、ジェネレータ911と、ジェネレータ911を駆動するためのガソリンエンジン(不図示)とを有するSHEV(Series Hybrid Electric Vehicle)用のインバータとして用いることができる。電力変換装置2は、前記ガソリンエンジンによって駆動されるジェネレータ911により得られる電力を、バッテリ921に充電する。
【0078】
ジェネレータ911は、例えば、三相交流を出力する発電機である。ジェネレータ911は、U端子、V端子及びW端子を有する。また、ジェネレータ911は、ロータの回転によって発電して三相交流を出力する。ジェネレータ911は、電力変換回路10に対して、例えば、デルタ結線によって結合されている。
【0079】
電力変換装置2は、電力変換回路10と、第1コンデンサ(実施形態1における第1コンデンサ31)としてのスナバコンデンサ311と、第2コンデンサ(実施形態1における第2コンデンサ32)としての平滑コンデンサ321と、第1基板(実施形態1における第1基板51)としてのパワー基板511と、第2基板(実施形態1における第2基板52)としての制御回路基板521と、連結部材53とを有している。また、電力変換装置2は、連結部材53に共振抑制部材としてのフェライトコア541(実施形態1における共振抑制部材54)が設けられている。電力変換装置2では、スナバコンデンサ311、平滑コンデンサ321、パワー基板511の一部、制御回路基板521の一部及び連結部材53によってコンデンサ並列回路P1-P4が構成されている。電力変換装置2の電気的接続関係は、実施形態1に係る電力変換装置1における電力変換回路10、第1コンデンサ31、第2コンデンサ32及び連結部材53の電気的接続関係と同一である。
【0080】
電力変換回路10は、ジェネレータ911に電気的に接続されている。電力変換回路10は、複数のスイッチング素子を含むフルブリッジ回路である。
【0081】
より具体的には、電力変換回路10は、U相アームQ1と、V相アームQ2と、W相アームQ3とを含む。U相アームQ1と、V相アームQ2と、W相アームQ3とは、それぞれ、第1出力端子11及び第2出力端子12に接続されている。つまり、U相アームQ1と、V相アームQ2と、W相アームQ3とは、それぞれ、第1接続部15と第2接続部16とに電気的に接続されている。よって、U相アームQ1と、V相アームQ2と、W相アームQ3とは、互いに電気的に並列に接続されている。各相のアームは、それぞれ、電気的に直列に接続される2つのスイッチング素子を含む。U相アームQ1は、2つのスイッチング素子としての上アーム用スイッチング素子QH1及び下アーム用スイッチング素子QL1を含む。上アーム用スイッチング素子QH1及び下アーム用スイッチング素子QL1を電気的に接続する導体は、U端子に電気的に接続されている。V相アームQ2は、2つのスイッチング素子としての上アーム用スイッチング素子QH2及び下アーム用スイッチング素子QL2を含む。上アーム用スイッチング素子QH2及び下アーム用スイッチング素子QL2を電気的に接続する導体は、V端子に電気的に接続されている。W相アームQ3は、2つのスイッチング素子としての上アーム用スイッチング素子QH3及び下アーム用スイッチング素子QL3を含む。上アーム用スイッチング素子QH3及び下アーム用スイッチング素子QL3を電気的に接続する導体は、W端子に電気的に接続されている。
【0082】
上アーム用スイッチング素子QH1、QH2、QH3、及び、下アーム用スイッチング素子QL1、QL2、QL3は、電流を流すオン状態と電流を流さないオフ状態とに切り替え可能に構成されている。上アーム用スイッチング素子QH1、QH2、QH3、及び、下アーム用スイッチング素子QL1、QL2、QL3とは、例えば、FETによって実現できる。
【0083】
上アーム用スイッチング素子QH1、QH2、QH3のそれぞれの一端は、第1接続部15によって、バッテリ921の正極側端子92aに電気的に接続されている。上アーム用スイッチング素子QH1の他端は、ジェネレータ911のU端子に電気的に接続されている。上アーム用スイッチング素子QH2の他端は、ジェネレータ911のV端子に電気的に接続されている。上アーム用スイッチング素子QH3の他端は、ジェネレータ911のW端子に電気的に接続されている。
【0084】
下アーム用スイッチング素子QL1、QL2、QL3のそれぞれの他端は、第2接続部16によって、バッテリ921の負極側端子92bに電気的に接続されている。下アーム用スイッチング素子QL1の一端は、ジェネレータ911のU端子に電気的に接続されている。下アーム用スイッチング素子QL2の一端は、ジェネレータ911のV端子に電気的に接続されている。下アーム用スイッチング素子QL3の一端は、ジェネレータ911のW端子に電気的に接続されている。
【0085】
制御装置20は、上アーム用スイッチング素子QH1、QH2、QH3、及び、下アーム用スイッチング素子QL1、QL2、QL3をそれぞれ駆動するためのゲートドライバと、前記ゲートドライバを制御するための制御回路とを含む(不図示)。制御装置20は、電力変換回路10に含まれる各スイッチング素子をオン/オフするスイッチング制御を行うためのPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力する。
【0086】
スナバコンデンサ311は、電力変換回路10のスイッチングにより発生するサージ電圧を吸収する。スナバコンデンサ311は、例えば、セラミックコンデンサによって実現することができる。スナバコンデンサ311は、パワー基板511に設けられている。スナバコンデンサ311は、パワー基板511の導線等を介して電力変換回路10と電気的に並列に接続されている。スナバコンデンサ311は、第1接続部15と第2接続部16とに電気的に接続されている。スナバコンデンサ311は、回路基板への実装上、平滑コンデンサ321よりも電力変換回路10に近い位置に配置される。また、スナバコンデンサ311は、他の素子を介さずに電力変換回路10に電気的に接続されている。
【0087】
平滑コンデンサ321は、電力変換回路10のスイッチングにより発生する電流の変動を平滑化する。平滑コンデンサ321は、例えば、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサ等によって実現することができる。平滑コンデンサ321は、制御回路基板521に設けられている。平滑コンデンサ321は、制御回路基板521の導線等を介してバッテリ921と電気的に並列に接続されている。平滑コンデンサ321は、制御回路基板521に設けられたスルーホールにリードが挿入され、はんだ等によって電気的に接続されるリード部品である。平滑コンデンサ321は、第1接続部15と第2接続部16とに電気的に接続されている。平滑コンデンサ321は、回路基板への実装上、スナバコンデンサ311よりもバッテリ921に近い位置に配置される。また、平滑コンデンサ321は、他の素子を介さずに、バッテリ921に電気的に接続されている。平滑コンデンサ321の容量は、スナバコンデンサ311の容量よりも大きい。
【0088】
スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321とは、パワー基板511の導線及び制御回路基板521の導線を介して互いに電気的に並列に接続されている。これにより、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321とは、点P1-P2-P3-P4-P1の経路からなる閉回路(以下、コンデンサ並列回路P1-P4と称する)を構成する。コンデンサ並列回路P1-P4は、他の素子を介さずに電力変換回路10とバッテリ921とに接続されている。このように、電力変換回路10とコンデンサ並列回路P1-P4は、ジェネレータ911とバッテリ921とに電気的に接続されている。
【0089】
パワー基板511は、ジェネレータ911によって発電された交流電流を直流電流に変換するための素子等が搭載された基板である。パワー基板511には、電力変換回路10及びスナバコンデンサ311が設けられる。パワー基板511は、例えば、アルミニウム合金、銅等の金属から構成される基材を絶縁性樹脂によって皮膜した金属基板である。パワー基板511は、基材を金属によって構成することにより、樹脂基板に比べて高い放熱性及び剛性を有する。このため、電力変換回路10及びスナバコンデンサ311が発熱しても、放熱性の観点から有利である。よって、パワー基板511は、スナバコンデンサ311等の熱的な負荷を低減させることができる。パワー基板511は、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線を有する。パワー基板511では、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線とスナバコンデンサ311とが電気的に接続されている。
【0090】
制御回路基板521は、ジェネレータ911、電力変換回路10等を制御するための素子が実装された基板である。制御回路基板521には、制御装置20及び平滑コンデンサ321が設けられる。制御回路基板521には、回路を構成する導線、様々な種類の素子等が実装されている。制御回路基板521は、例えば樹脂基板である。制御回路基板521は、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線を有する。制御回路基板521では、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成する導線と平滑コンデンサ321とが電気的に接続されている。
【0091】
連結部材53は、パワー基板511と制御回路基板521とを連結する部材である。連結部材53は、パワー基板511及び制御回路基板521から取り外し可能な別部材として構成されている。連結部材53は、パワー基板511が有するコンデンサ並列回路P1-P4の一部と制御回路基板521が有するコンデンサ並列回路P1-P4の一部とを電気的に接続している。つまり、連結部材53は、スナバコンデンサ311が設けられるパワー基板511と平滑コンデンサ321が設けられる制御回路基板521と電気的に接続されている。よって、連結部材53は、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成している。連結部材53は、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間且つ電流の向きが変化する部位に位置する。
【0092】
連結部材53は、コンデンサ並列回路P1-P4において、スナバコンデンサ311からバッテリ921に流れる電流が通過し、且つ平滑コンデンサ321からスナバコンデンサ311に流れる電流が通過する点P1と点P4との間に設けられる。コンデンサ並列回路P1-P4における点P1と点P4との間の部位は、スナバコンデンサ311からバッテリ921に電流が流れる際、点P4から点P1に向かって電流が流れ、平滑コンデンサ321からスナバコンデンサ311に電流が流れる際、点P1から点P4に向かって電流が流れる。つまり、連結部材53は、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間で、電流の向きが変化する点P1と点P4との間の部位に設けられる。
【0093】
フェライトコア541は、コンデンサ並列回路P1-P4のインダクタンスを変更する。フェライトコア541は、コンデンサ並列回路P1-P4において、第1接続部15の点P1と点P4との間に位置している連結部材53に設けられている。フェライトコア541は、例えば、軸方向に貫通する貫通孔を有するリング形状または円筒形の形状に形成されている。例えば、フェライトコア541の前記貫通孔内に連結部材53が挿入される。これにより、フェライトコア541は、コンデンサ並列回路P1-P4に電気的に接続されていない状態で、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間のインダクタンスを変更している。また、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間のインダクタンスは、パワー基板511及び制御回路基板521と取り外し可能な別部品である連結部材53に任意のインダクタンスを有するフェライトコア541を設けることにより調整することができる。
【0094】
(還流モードにおける状態遷移)
引き続き
図2~
図5を参照して、電力変換装置2の還流モードにおける電力変換装置2の運転状態の遷移について説明する。前記還流モードとは、電力変換装置2とジェネレータ911とが電気的に接続されていない状態において、ジェネレータにおいて発電された電流が再びジェネレータに戻る状態を意味する。
【0095】
(ジェネレータ911からの電流が出力される第1状態)
図2に示すように、ジェネレータ911からの電流が出力される第1状態において、電力変換装置2は、ジェネレータ911から出力された電流をバッテリ921に対して供給する。前記第1状態において、電力変換回路10に含まれる各スイッチング素子のうち、上アーム用スイッチング素子QH1、下アーム用スイッチング素子QL2、QL3は、オフ状態である。また、電力変換回路10に含まれる各スイッチング素子のうち、上アーム用スイッチング素子QH2、QH3及び下アーム用スイッチング素子QL1は、オン状態である。
【0096】
電力変換回路10は、例えば、ジェネレータ911のW端子から、上アーム用スイッチング素子QH3、バッテリ921及び下アーム用スイッチング素子QL1を介して、U端子に至る電流の経路を構成可能である。ジェネレータ911のW端子は、例えば、オン状態の上アーム用スイッチング素子QH3を介して、バッテリ921の正極側端子92aに電気的に接続されている。これにより、ジェネレータ911が発電した電流は、白抜き矢印R11、R12、R13及びR14によって示す経路によって、ジェネレータ911のW端子からバッテリ921に流れる。
【0097】
また、バッテリ921の負極側端子92bは、例えば、オン状態の下アーム用スイッチング素子QL1を介して、ジェネレータ911のU端子に電気的に接続されている。これにより、電流は、白抜き矢印R15、R16、R17及びR18が示す経路によって、バッテリ921からジェネレータ911のU端子に流れる。
【0098】
なお、ジェネレータ911のV端子からも電流が出力されるが、説明の簡便のため、その詳しい説明は省略する。以下に説明する第2状態~第4状態についても同様である。
【0099】
(スナバコンデンサ311が電流を供給する第2状態)
図3に示すように、電力変換装置2の運転状態は、制御装置20によるスイッチング制御によって、スナバコンデンサ311が電流を供給する第2状態に遷移する。具体的には、電力変換装置2の運転状態は、前記第1状態において、上アーム用スイッチング素子QH1がオン状態に切り替わり、下アーム用スイッチング素子QL1がオフ状態に切り替わることによって、前記第2状態に遷移する。前記第2状態において、電力変換装置2は、ジェネレータ911が発電した電流をバッテリ921に供給しない。
【0100】
ジェネレータ911が発電する電流は、電力変換回路10によって還流される。電力変換回路10は、例えば、ジェネレータ911のW端子から、上アーム用スイッチング素子QH3、QH1を介して、U端子に至る電流の経路を構成可能である。これにより、ジェネレータ911のW端子から出力される電流は、白抜き矢印R21、R22、R23、R24及びR25が示す経路を流れて、バッテリ921に供給されることなく、ジェネレータ911のU端子に還流される。
【0101】
一方、電力変換装置2を構成するハーネス、パワー基板511及び制御回路基板521の回路パターン、連結部材53等は、インダクタンスを有する。このため、電力変換装置2の回路には、ジェネレータ911からバッテリ921への電流供給が停止された際、誘導電流が発生する。前記誘導電流は、バッテリ921に流れる。この際、平滑コンデンサ321よりも電力変換回路10に近い位置で電力変換回路10に電気的に接続され且つ平滑コンデンサ321よりもインダクタンスが小さいスナバコンデンサ311は、バッテリ921に流れる誘導電流によって放電される。したがって、コンデンサ並列回路P1-P4に電気的に接続されているバッテリ921には、スナバコンデンサ311から放電された電流が流れる。すなわち、スナバコンデンサ311から放電された電流は、白抜き矢印R26、R27、R28及びR29が示す閉回路を構成する経路によって、バッテリ921に流れる。
【0102】
(平滑コンデンサ321が電力を供給する第3状態)
図4に示すように、電力変換装置2の運転状態は、平滑コンデンサ321から電流が供給される第3状態に遷移する。前記第2状態におけるスナバコンデンサ311の放電によってスナバコンデンサ311の電圧が平滑コンデンサ321よりも低下した場合、充電されている平滑コンデンサ321は、放電する。平滑コンデンサ321から出力された電流は、バッテリ921及びスナバコンデンサ311に対して流れる。
【0103】
コンデンサ並列回路P1-P4に電気的に接続されているバッテリ921には、平滑コンデンサ321から放電された電流が流れる。すなわち、平滑コンデンサ321から放電された電流は、白抜き矢印R31、R32、R33及びR34が示す閉回路を構成する経路によってバッテリ921に流れる。
【0104】
更に、コンデンサ並列回路P1-P4には、平滑コンデンサ321から出力された電流が流れる。すなわち、平滑コンデンサ321から出力された電流は、コンデンサ並列回路P1-P4の白抜き矢印R31、R35、R36及びR37が示す経路によってスナバコンデンサ311に流れる。
【0105】
なお、ジェネレータ911から出力された電流は、白抜き矢印R21、R22、R23、R24及びR25が示す経路によってジェネレータ911に還流されている。
【0106】
(スナバコンデンサ311が電流を供給する第4状態)
図5に示すように、電力変換装置2の運転状態は、再度、スナバコンデンサ311から電流が供給される第4状態に遷移する。前記第3状態における平滑コンデンサ321の放電によって、平滑コンデンサ321よりもインダクタンスが小さいスナバコンデンサ311の電圧が平滑コンデンサ321よりも上昇した場合、充電されているスナバコンデンサ311は、放電する。スナバコンデンサ311から出力された電流は、バッテリ921及び平滑コンデンサ321に流れる。
【0107】
コンデンサ並列回路P1-P4に電気的に接続されているバッテリ921には、スナバコンデンサ311から出力された電流が流れる。すなわち、スナバコンデンサ311から出力された電流は、白抜き矢印R41、R42、R32、R33、R34及びR44が示す閉回路を構成する経路によって、バッテリ921に流れる。
【0108】
更に、コンデンサ並列回路P1-P4には、スナバコンデンサ311から出力された電流が流れる。すなわち、スナバコンデンサ311から出力された電流は、コンデンサ並列回路P1-P4の白抜き矢印R41、R42、R43及びR44が示す経路によって平滑コンデンサ321に流れる。
【0109】
前記第4状態におけるスナバコンデンサ311の放電によってスナバコンデンサ311の電圧が平滑コンデンサ321よりも低下した場合、充電されている平滑コンデンサ321は、放電する(
図4参照)。平滑コンデンサ321から出力された電流は、バッテリ921及びスナバコンデンサ311に対して流れる。すなわち、電力変換装置2は、平滑コンデンサ321から電流が供給される第3状態に遷移する。
【0110】
このように、平滑コンデンサ321に充電されていた電流がスナバコンデンサ311に流れる前記第3状態と、スナバコンデンサ311に充電されていた電流が平滑コンデンサ321に流れる前記第4状態が繰り返されることにより、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間で共振電流が発生する。この結果、連結部材53に流れる電流の向きが変化する。
【0111】
フェライトコア541は、コンデンサ並列回路P1-P4のインダクタンスを変更する。フェライトコア541は、例えば、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321とが電気的に接続されている第1接続部15のインダクタンスを変更している。フェライトコア541は、電流の向きが変わる部位に設けられているので、インダクタとしてスナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間において発生する共振電流を熱に変換して減衰させる。よって、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321とは、共振電流による充放電の繰り返しが抑制され、充放電によって生じる発熱が低減される。この結果、電力変換装置2は、回路を流れる電流が減少して、前記第3状態と前記第4状態との遷移が止まる。
【0112】
このように構成される電力変換装置2は、パワー基板511及び制御回路基板521から取り外し可能な別部材である連結部材53にコンデンサ並列回路P1-P4の電気的特性に基づいたインダクタンスを有するフェライトコア541を設けることにより、スナバコンデンサ311が設けられるパワー基板511及び平滑コンデンサ321が設けられる制御回路基板521にコンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加することなく、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間の充放電の繰り返しによって生じる共振電流を低減することができる。これにより、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するための前記LC回路が設けられた基板に比べて、パワー基板511及び制御回路基板521を小さくしてパワー基板511及び制御回路基板521のスペース効率を向上させつつ、充放電の繰り返しによって生じる発熱を低減することにより、スナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の熱的な負荷を低減させることができる。
【0113】
なお、制御装置20のPWM信号によるスイッチング制御に応じてジェネレータ911からバッテリ921への電流供給の停止及び再開が繰り返されることによって、電力変換装置2の運転状態が前記第1状態~前記第4状態で切り替わる場合、電力変換装置2は、フェライトコア541によってコンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を低減する。
【0114】
上述の構成によれば、スナバコンデンサ311は、電力変換回路10と電気的に並列に接続されている。また、スナバコンデンサ311は、他の素子を介さずに、電力変換回路10に電気的に接続されている。これにより、スナバコンデンサ311は、電力変換回路10のスイッチングによって発生するサージ電圧が他の電子部品に影響を及ぼす前に、充電によって電圧の変動を吸収する。平滑コンデンサ321は、バッテリ921と電気的に並列に接続されている。また、平滑コンデンサ321は、バッテリ921に、できるだけ近い位置で電気的に接続されている。これにより、平滑コンデンサ321は、電力変換回路10のスイッチング動作により発生する脈動を平滑化した電流をバッテリ921に出力する。
【0115】
電力変換装置2は、コンデンサ並列回路P1-P4において電流の流れる向きが変わる部位のインダクタンスをフェライトコア541によって変更することによりスナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間で生じる共振電流を低減することができる。よって、スナバコンデンサ311が設けられるパワー基板511及び平滑コンデンサ321が設けられる制御回路基板521には、コンデンサ並列回路P1-P4に生じる共振電流を抑制するためのLC回路を追加することなく。フェライトコア541によってスナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321とが互いに充放電を繰り返すことにより生じる共振電流を低減することができる。また、パワー基板511は、樹脂基板に比べて放熱性及び剛性が高い金属基板によって構成されている。これにより、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路が設けられた基板に比べて、パワー基板511及び制御回路基板521を小さくしてパワー基板511及び制御回路基板521のスペース効率を向上させつつ、フェライトコア541によって共振電流によるスナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の発熱を低減し且つパワー基板511の放熱性を向上させることにより、スナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の熱的な負荷を低減させることができる。
【0116】
また、上述の構成では、フェライトコア541は、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321との間を電気的に接続し、且つパワー基板511及び制御回路基板521と別部材として取り外し可能に構成されている連結部材53に取り付けられている。フェライトコア541は、連結部材53にはんだ等によって電気的に接続することなく、パワー基板511及び制御回路基板521から取り外し可能な連結部材53をフェライトコア541の貫通孔内に配置することにより、コンデンサ並列回路P1-P4の電気的特性に基づいたインダクタンスに容易に変更可能である。これにより、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路が設けられた基板に比べて、パワー基板511及び制御回路基板521を小さくしてパワー基板511及び制御回路基板521のスペース効率を向上させつつ、共振電流によるスナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の発熱を低減することにより、スナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の熱的な負荷を低減させることができる。
【0117】
[実施形態3]
図6から
図8を参照して、実施形態3に係る電力変換装置3について説明する。
図6は、実施形態3に係る電力変換装置3の概略構成を示す側面模式図である。
図7は、実施形態3に係る電力変換装置3の概略構成を示す平面模式図である。
図8は、実施形態3に係る電力変換装置3の一状態を概略的に示す回路図である。
【0118】
実施形態3に係る電力変換装置3では、実施形態2に係る電力変換装置2の基板構成をより具体化している。なお、実施形態3の説明では、実施形態2に係る電力変換装置2と共通する部分については、詳細な説明を繰り返さない。
【0119】
図6から
図8に示すように、電力変換装置3は、第1基板であるパワー基板511と、第2基板である制御回路基板521と、を有する。
【0120】
図6に示すように、パワー基板511と制御回路基板521とは、柱状の連結部材53a、53bによって連結されている。パワー基板511が有する回路の少なくとも一部と制御回路基板521が有する回路の少なくとも一部とは、銅、アルミニウム合金等の導電性材料で構成される連結部材53a、53bによって電気的に接続されている。柱状の連結部材53a、53bは、パワー基板511が有する回路の少なくとも一部、制御回路基板521が有する回路の少なくとも一部及び連結部材53a、53bは、コンデンサ並列回路P1-P4の一部(
図8参照)を構成する。連結部材53a、53bの断面積は、コンデンサ並列回路P1-P4の少なくとも一部を構成するパワー基板511及び制御回路基板521が有する回路の導線の最大断面積よりも大きい。つまり、連結部材53a、53bは、導電性部材としてのインダクタンスが小さい。よって、連結部材53a、53bに設けられるフェライトコア541による共振電流の抑制において、連結部材53a、53bの影響が小さくなる。
【0121】
図7に示すように、パワー基板511と制御回路基板521とは、ある方向であるパワー基板511の厚み方向に見て、連結部材53a、53bによって所定の間隔で連結されている。パワー基板511及び制御回路基板521は、パワー基板511の厚み方向に直交する表面と制御回路基板521の厚み方向に直交する表面とが平行になるように配置されている。すなわち、パワー基板511及び制御回路基板521は、連結部材53a、53bを介して厚み方向に積層されている。
【0122】
連結部材53a、53bは、スナバコンデンサ311が設けられているパワー基板511の一側面と平滑コンデンサ321が設けられる制御回路基板521の他側面との間に配置されている。連結部材53a、53bは、パワー基板511の一側面と制御回路基板521の他側面とにネジ等によって固定されている。連結部材53a、53bの少なくとも一部は、パワー基板511の厚み方向に見て、パワー基板511及び制御回路基板521の両方と重なる位置に設けられている。また、連結部材53a、53bは、パワー基板511に対して制御回路基板521を支持している。連結部材53a、53bは、パワー基板511に対して制御回路基板521を支持する支柱としても機能する。つまり、連結部材53a、53bは、パワー基板511及び制御回路基板521の物理的な位置が固定される強度を備えた構造体としての機能を有している。
【0123】
平滑コンデンサ321は、制御回路基板521に実装されているので、パワー基板511に実装されている電力変換回路10の発熱の影響を抑制することができる。また、パワー基板511には、素子の中で基板の専有面積が大きい平滑コンデンサ321が実装されていない。よって、パワー基板511の回路設計の自由度が向上する。
【0124】
また、
図8に示すように、スナバコンデンサ311の一端が、連結部材53aの一端に電気的に接続されているとともに、平滑コンデンサ321の一端が、連結部材53aの他端に電気的に接続されている。また、スナバコンデンサ311の他端が、連結部材53bの一端に電気的に接続されているとともに、平滑コンデンサ321の他端が、連結部材53bの他端に電気的に接続されている。連結部材53aは、電源端子60を有する。
【0125】
電力変換装置3は、連結部材53aの電源端子60を介してバッテリ921の正極側端子92aに電気的に接続されている。また、電力変換装置3は、パワー基板511が有するGND端子61を介してバッテリ921の負極側端子92bに電気的に接続されている。より具体的には、スナバコンデンサ311の他端は、GND端子61を介してバッテリ921の負極側端子92bに電気的に接続されている。また、平滑コンデンサ321の他端は、連結部材53b及びGND端子61を介してバッテリ921の負極側端子92bに電気的に接続されている。
【0126】
フェライトコア541は、連結部材53aに設けられている。つまり、フェライトコア541は、パワー基板511の厚み方向に見て、パワー基板511と制御回路基板521との間に位置している。また、フェライトコア541は、スナバコンデンサ311と平滑コンデンサ321とを電気的に接続する部位に位置している。フェライトコア541の少なくとも一部は、パワー基板511の厚み方向に見て、パワー基板511及び制御回路基板521の両方と重なる位置に設けられている。フェライトコア541の貫通孔には、連結部材53aが挿入されている。よって、連結部材53aは、磁性体であるフェライトによって囲まれている。フェライトコア541は、連結部材53aを流れる共振電流に対して抵抗として機能する。
【0127】
上述の構成では、パワー基板511が有する回路の一部と制御回路基板521が有する回路の一部とを電気的に接続し、コンデンサ並列回路P1-P4の一部を構成している連結部材53a、53bは、パワー基板511及び制御回路基板521から着脱可能に構成される独立した別の部材である。よって、スナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321を含むコンデンサ並列回路のインダクタンスを用意に変更可能である。また、スナバコンデンサ311が設けられるパワー基板511及び平滑コンデンサ321が設けられる制御回路基板521にコンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路を追加することなく、パワー基板511と制御回路基板521との間のスペースを利用してパワー基板511及び制御回路基板521と別部材である連結部材53aにコンデンサ並列回路P1-P4の電気的特性に基づいたインダクタンスを有するフェライトコア541を設けることにより、共振電流を抑制している。これにより、コンデンサ並列回路P1-P4に発生する共振電流を抑制するためのLC回路が設けられた基板に比べて、パワー基板511及び制御回路基板521を小さくしてパワー基板511及び制御回路基板521のスペース効率を向上させつつ、共振電流によるスナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の発熱を低減することにより、スナバコンデンサ311及び平滑コンデンサ321の熱的な負荷を低減させることができる。
【0128】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0129】
前記各実施形態では、共振抑制部材54または共振抑制部材としてのフェライトコア541は、コンデンサ並列回路P1-P4における点P1と点P4との間に設けられている。しかしながら、共振抑制部材またはフェライトコアは、コンデンサ並列回路のいずれかの位置に設けられていればよい。例えば、共振抑制部材またはフェライトコアは、点P1と点P2との間、点P2と点P3との間または点P3と点P4との間のいずれかに設けられていてもよい。また、コンデンサ並列回路において2つ以上の共振抑制部材またはフェライトコアが設けられていてもよい。
【0130】
前記各実施形態では、第1接続部15及び第2接続部16は、それぞれ、第1コンデンサ31(スナバコンデンサ311)、第2コンデンサ32(平滑コンデンサ321)、電力変換回路10及び外部負荷92(バッテリ921)に電気的に接続されている。しかしながら、第1接続部及び第2接続部は、第1コンデンサ(スナバコンデンサ)、第2コンデンサ(平滑コンデンサ)、電力変換回路及び外部負荷(バッテリ)以外の回路又は素子に電気的に接続されていてもよい。
【0131】
前記実施形態2では、上アーム用スイッチング素子QH1及び下アーム用スイッチング素子QL1のスイッチング制御について説明した。しかしながら、3つの上アーム用スイッチング素子と、3つの下アーム用スイッチング素子とは、制御装置のPWM信号によるスイッチング制御により、上述した以外のオン/オフパターンをとり得る。複数のスイッチング素子のオン/オフ制御には、公知のインバータ制御方法を採用することができる。
【0132】
前記実施形態2では、電力変換装置2は、SHEV用のインバータとして用いることができる。しかしながら、電力変換装置は、パラレル方式又はスプリット方式のハイブリッドシステム用のインバータとして用いてもよい。また、前記電力変換装置は、ハイブリッド車両以外のEV用のインバータとして用いてもよい。前記電力変換装置は、EV以外の用途に用いることもできる。
【0133】
前記実施形態2及び3では、ジェネレータ911の三相交流の結線方式として、デルタ結線が採用されている。しかしながら、ジェネレータの三相交流の結線方式は、スター結線であってもよいし、V結線であってもよい。
【0134】
前記実施形態2及び3では、ジェネレータ911は、三相交流を出力する発電機である。しかしながら、ジェネレータは単相型でもよく、三相以外の多相型でもよい。また、ジェネレータの種類に応じて、電力変換回路に含まれるスイッチング素子によるスイッチング方式を変更できる。
【0135】
前記実施形態2及び3では、電力変換装置2、3において、電力変換回路10に対して、スナバコンデンサ311が電気的に並列に接続されている。しかしながら、電力変換装置では、3つのスナバコンデンサが、3つの上アーム用スイッチング素子のそれぞれに電気的に並列に接続されてもよい。また、電力変換装置では、3つのスナバコンデンサを、それぞれ、3つの下アーム用スイッチング素子のそれぞれに電気的に並列に接続してもよい。
【0136】
前記実施形態3では、特に説明しなかったが、連結部材53aの一部または全部は、第1接続部15に含まれていても、含まれていなくてもよい。また、連結部材53bの一部または全部は、第2接続部16に含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0137】
前記実施形態3では、フェライトコア541は、連結部材53aの一端部に設けられている。しかしながら、フェライトコアは、スナバコンデンサ及び平滑コンデンサの一端に電気的に接続される連結部材の他端部に設けられていてもよい。また、フェライトコアは、スナバコンデンサ及び平滑コンデンサの他端に電気的に接続される連結部材に設けられていてもよい。
【0138】
前記実施形態3では、連結部材53aは、柱状の形状を有する導電性の部材である。しかしながら、連結部材は、導線、ハーネス、バスバー又はフレキシブル基板等の導電性の部材であってもよい。
【0139】
前記実施形態3では、フェライトコア541は、リング状又は円筒状の形状を有する。しかしながら、フェライトコアは、プレート状であってもよい。また、フェライトコアは、一体型または分割型のいずれであってもよい。
【0140】
前記実施形態3では、電力変換装置3は、パワー基板511及び制御回路基板521の2枚の基板を有する。しかしながら、電力変換装置は、パワー基板及び制御回路基板以外の基板を含む構成であってもよい。すなわち、電力変換装置は、複数の基板を有していてもよい。電力変換装置は、第1基板に、第1コンデンサが実装されており、第2基板に、第2コンデンサが実装されており、第1基板及び第2基板が連結部材によって電気的に接続される構成であってもよい。制御装置及び複数のスイッチング素子は、第1基板及び第2基板のいずれに実装されていてもよい。また、共振抑制部材は、前記連結部材に、第1基板及び第2基板の実装部品とは別部材として設けられていてもよい。
【0141】
また、電力変換装置は、単一の基板のみを含む構成であってもよい。基板の一部から別の一部を電気的に接続するために連結部材が設けられていてもよい。また、前記連結部材に、共振抑制部材が前記基板の実装部品とは別の部材として設けられていてもよい。
【0142】
前記実施形態3では、フェライトコア541の少なくとも一部は、第1基板であるパワー基板511の厚み方向に見て、パワー基板511及び制御回路基板521の両方と重なる位置に設けられている。つまり、前記第1基板と前記第2基板とは、前記第1基板の厚み方向に重なるように位置している。しかしながら、共振抑制部材の少なくとも一部は、第1基板の厚み方向に直交する表面に沿う方向に見て、前記第1基板と前記第2基板の両方と重なる位置に設けられてもよい。
【0143】
前記第1基板と前記第2基板とは、前記第1基板の厚み方向に直交する表面に沿う方向に、横並びに配置されている。前記第1基板及び前記第2基板は、例えば、前記第1基板の厚み方向に直交する表面と前記第2基板の厚み方向に直交する表面とが平行になるように配置されている。第1コンデンサが設けられた前記第1基板及び第2コンデンサが設けられた前記第2基板は、連結部材によって電気的に接続されている。また、前記連結部材は、前記第1基板に対して前記第2基板を支持している。前記連結部材には、前記共振抑制部材が設けられている。前記共振抑制部材の少なくとも一部は、ある方向である前記第1基板の厚み方向に直交する表面に沿う方向に見て、前記第1基板及び前記第2基板の両方と重なる位置に設けられている。なお、前記第1基板と前記第2基板とは、前記第1基板の厚み方向に直交する表面と前記第2基板の厚み方向に直交する表面とが任意の角度を有するように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1、2、3 電力変換装置
10 電力変換回路
11 第1出力端子
12 第2出力端子
13 入力端子
15 第1接続部
16 第2接続部
20 制御装置
31 第1コンデンサ
311 スナバコンデンサ
32 第2コンデンサ
321 平滑コンデンサ
P1-P4 コンデンサ並列回路
51 第1基板
511 パワー基板
52 第2基板
521 制御回路基板
53、53a、53b 連結部材
54 共振抑制部材
541 フェライトコア
60 電源端子
61 GND端子
91 電源供給装置
911 ジェネレータ
92 外部負荷
92a 正極側端子
92b 負極側端子
921 バッテリ
QH1、QH2、QH3 上アーム用スイッチング素子(スイッチング素子)
QL1、QL2、QL3 下アーム用スイッチング素子(スイッチング素子)