(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016483
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】地図情報管理装置、地図情報管理方法及び地図情報管理用コンピュータプログラムならびに地図サーバ
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G08G1/09 V
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118639
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL09
5H181MB02
(57)【要約】
【課題】地図サーバから受信する地図情報において表される範囲を適切に設定することが可能な地図情報管理装置を提供する。
【解決手段】車両2に搭載される地図情報管理装置は、車両2に適用される自動運転制御のレベル及び車両2の位置に応じて、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定する地図範囲設定部231と、設定した範囲の地図情報の配信を、車両2に搭載された通信端末13を介して地図サーバ3へ要求する要求処理部232とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される地図情報管理装置であって、
前記車両に適用される自動運転制御のレベル及び前記車両の位置に応じて、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定する地図範囲設定部と、
設定した範囲の前記地図情報の配信を、前記車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する要求処理部と、
を有する地図情報管理装置。
【請求項2】
前記地図範囲設定部は、前記車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる前記車両の操作を必要としないレベルである場合、第1の範囲を設定し、一方、前記車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる前記車両の操作を必要とするレベルである場合、前記第1の範囲よりも広い第2の範囲を設定する、請求項1に記載の地図情報管理装置。
【請求項3】
前記地図範囲設定部は、前記第1の範囲として、前記車両が走行中の道路または車両の目的地へ向かう走行予定ルートにおける前記車両の進行先の所定の区間を設定し、前記第2の範囲として、前記第1の範囲を含む所定形状の領域を設定する、請求項2に記載の地図情報管理装置。
【請求項4】
前記地図範囲設定部は、前記車両の現在位置から所定距離走行して到達可能な1以上の地点を含むように前記第2の範囲を設定する、請求項2または3に記載の地図情報管理装置。
【請求項5】
前記地図範囲設定部は、前記車両が走行してきた軌跡へ向かう道路を前記第2の範囲から除外するように前記第2の範囲を設定する、請求項2または3に記載の地図情報管理装置。
【請求項6】
前記地図範囲設定部は、前記車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる前記車両の操作を必要とせず、前記車両の制御主体がドライバに移管される可能性があるレベルであり、かつ、前記車両が走行中の道路が自動車専用道である場合、第1の範囲を設定し、一方、前記車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる前記車両の操作を必要とせず、前記車両の制御主体がドライバに移管される可能性があるレベルであり、かつ、前記車両が走行中の道路が一般道である場合、前記第1の範囲よりも広い第2の範囲を設定する、請求項1に記載の地図情報管理装置。
【請求項7】
車両において実行される地図情報管理方法であって、
前記車両に適用される自動運転制御のレベル及び前記車両の位置に応じて、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定し、
設定した範囲の前記地図情報の配信を、前記車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する、
ことを含む地図情報管理方法。
【請求項8】
車両に適用される自動運転制御のレベル及び前記車両の位置に応じて、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定し、
設定した範囲の前記地図情報の配信を、前記車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する、
ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための地図情報管理用コンピュータプログラム。
【請求項9】
自動運転制御に利用される情報を含む地図情報を配信する地図サーバであって、
車両から通信部を介して受信した、前記車両に適用される自動運転制御のレベル及び前記車両の位置に応じて、前記車両へ配信する地図情報において表される範囲を設定する地図範囲設定部と、
設定した範囲の前記地図情報を、前記通信部を介して前記車両へ配信する配信処理部と、
を有する地図サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される地図情報管理装置、地図情報管理方法及び地図情報管理用コンピュータプログラムならびに車両へ地図情報を配信する地図サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、サーバから地図情報をダウンロードする技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたダウンロード方式では、自動車が走行中の道路または自動車の平均走行速度などで表される自動車側の走行状態に応じてダウンロードセンター側から選択して送信される地図データがダウンロードされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーバから車両へ送信される地図情報に表される範囲が広くなるほど、地図情報のデータ量が大きくなり、サーバと車両間での通信負荷が増大する。一方、サーバから車両へ送信される地図情報に表される範囲が限定され過ぎると、場合によっては車両がその地図情報で表される範囲からすぐに逸脱してしまうおそれがある。車両がその地図情報で表される範囲から逸脱すると、結局、車両は地図情報をサーバから再度受信する必要が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、地図サーバから受信する地図情報において表される範囲を適切に設定することが可能な地図情報管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両に搭載される地図情報管理装置が提供される。この地図情報管理装置は、車両に適用される自動運転制御のレベル及び車両の位置に応じて、地図サーバから取得する、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定する地図範囲設定部と、設定した範囲の地図情報の配信を、車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する要求処理部とを有する。
【0008】
この地図情報管理装置において、地図範囲設定部は、車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両の操作を必要としないレベルである場合、第1の範囲を設定し、一方、車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両の操作を必要とするレベルである場合、第1の範囲よりも広い第2の範囲を設定することが好ましい。
【0009】
この場合において、地図範囲設定部は、第1の範囲として、車両が走行中の道路または車両の目的地へ向かう走行予定ルートにおける車両の進行先の所定の区間を設定し、第2の範囲として、第1の範囲を含む所定形状の領域を設定することが好ましい。
【0010】
あるいは、地図範囲設定部は、車両の現在位置から所定距離走行して到達可能な1以上の地点を含むように第2の範囲を設定することが好ましい。
【0011】
あるいはまた、地図範囲設定部は、車両が走行してきた軌跡へ向かう道路を第2の範囲から除外するように第2の範囲を設定することが好ましい。
【0012】
さらに、この地図情報管理装置において、地図範囲設定部は、車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両の操作を必要とせず、車両の制御主体がドライバに移管される可能性があるレベルであり、かつ、車両が走行中の道路が自動車専用道である場合、第1の範囲を設定することが好ましい。一方、車両に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両の操作を必要とせず、車両の制御主体がドライバに移管される可能性があるレベルであり、かつ、車両が走行中の道路が一般道である場合、地図範囲設定部は、第1の範囲よりも広い第2の範囲を設定することが好ましい。
【0013】
他の実施形態によれば、車両において実行される地図情報管理方法が提供される。この地図情報管理方法は、車両に適用される自動運転制御のレベル及び車両の位置に応じて、地図サーバから取得する、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定し、設定した範囲の地図情報の配信を、車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する、ことを含む。
【0014】
さらに他の実施形態によれば、地図情報管理用コンピュータプログラムが提供される。この地図情報管理用コンピュータプログラムは、車両に適用される自動運転制御のレベル及び車両の位置に応じて、地図サーバから取得する、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報において表される範囲を設定し、設定した範囲の地図情報の配信を、車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【0015】
さらに他の実施形態によれば、自動運転制御に利用される情報を含む地図情報を配信する地図サーバが提供される。この地図サーバは、車両から通信部を介して受信した、車両に適用される自動運転制御のレベル及び車両の位置に応じて、車両へ配信する地図情報において表される範囲を設定する地図範囲設定部と、設定した範囲の地図情報を、通信部を介して車両へ配信する配信処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る地図情報管理装置は、地図サーバから受信する地図情報において表される範囲を適切に設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】地図情報管理装置及び地図サーバが実装される地図情報配信システムの概略構成図である。
【
図3】地図情報管理装置のハードウェア構成図である。
【
図4】地図情報管理処理に関する、地図情報管理装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図5】地図情報管理処理の概要を説明する図である。
【
図6】地図情報管理処理の動作フローチャートである。
【
図8】地図配信処理に関する、サーバのプロセッサの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しつつ、地図情報管理装置、地図サーバ、及び、地図情報管理装置にて実行される地図情報管理方法ならびに地図情報管理用コンピュータプログラムについて説明する。この地図情報管理装置は、自動運転制御を適用可能な車両に搭載され、高精度地図の配信を地図サーバへ要求するとともに、地図サーバから受信した高精度地図を管理する。そのために、この地図情報管理装置は、車両に適用される自動運転制御のレベル及び車両の位置に応じて、地図サーバから取得する、高精度地図において表される範囲を設定する。そしてこの地図情報管理装置は、設定した範囲の高精度地図の配信を、車両に搭載された通信端末を介して地図サーバへ要求する。
【0019】
なお、高精度地図は、車両の自動運転制御に利用される情報を含む地図情報の一例である。高精度地図は、車両の自動運転制御に利用される情報として、高精度地図に表される範囲に含まれる個々の道路区間について、その道路区間に設けられた車線区画線及び一時停止線などの道路標示、道路標識、及び、縁石といった道路端を表す地物等の情報を含む。
【0020】
図1は、地図情報管理装置及び地図サーバが実装される地図配信システムの概略構成図である。本実施形態では、地図配信システム1は、少なくとも一つの車両2と、地図サーバ3とを有する。各車両2は、例えば、地図サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して地図サーバ3と接続される。なお、
図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されているが、地図配信システム1は、複数の車両2を有していてもよい。同様に、
図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。
【0021】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、カメラ11と、GPS受信機12と、無線通信端末13と、地図情報管理装置14と、電子制御装置(ECU)15とを有する。カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13、地図情報管理装置14及びECU15は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、車両2の走行予定ルートを探索し、その走行予定ルートに従って車両2が走行するようナビゲートするナビゲーション装置(図示せず)をさらに有してもよい。
【0022】
カメラ11は、車両2の周囲を撮影するための撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ11は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ11は、所定の撮影周期ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ11により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ11が設けられてもよい。
【0023】
カメラ11は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU15へ出力する。
【0024】
GPS受信機12は、測位装置の一例であり、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機12は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介して地図情報管理装置14及びECU15へ出力する。なお、車両2はGPS受信機12以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0025】
無線通信端末13は、通信端末の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して地図サーバ3と接続される。そして無線通信端末13は、地図情報管理装置14から受け取った配信要求を含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末13は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、配信要求を地図サーバ3へ送信する。また、無線通信端末13は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、地図サーバ3から配信された高精度地図を地図情報管理装置14へわたす。
【0026】
図3は、地図情報管理装置14のハードウェア構成図である。地図情報管理装置14は、必要に応じて地図サーバ3に対して高精度地図の配信を要求するとともに、地図サーバ3から配信された高精度地図を記憶する。さらに、地図情報管理装置14は、ECU15からの要求に応じて高精度地図をECU15へ出力する。そのために、地図情報管理装置14は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。
【0027】
通信インターフェース21は、車内通信部の一例であり、地図情報管理装置14を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース21は、車内ネットワークを介して、カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13及びECU15と接続される。そして通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った配信要求を、車内ネットワークを介して無線通信端末13へ出力する。また、通信インターフェース21は、カメラ11から受信した画像、及び、GPS受信機12から受信した測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、無線通信端末13を介して地図サーバ3から受信した高精度地図をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ECU15から受信した、車両2に適用されている自動運転制御のレベルを表す制御レベル情報、車両2の走行予定ルートを表すルート情報、または、高精度地図の取得要求をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、メモリ22から読み出された高精度地図を、車内ネットワークを介してECU15へ出力する。
【0028】
メモリ22は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ22は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ22は、地図サーバ3から受信した高精度地図、及び、地図情報管理装置14のプロセッサ23により実行される地図情報管理処理において使用される各種のデータを記憶する。そのようなデータには、例えば、測位情報及び制御レベル情報が含まれる。さらに、そのようなデータには、ナビゲーション装置が走行予定ルートを探索するために利用するナビゲーション用の地図情報、ルート情報及びカメラ11から受信した画像の何れかが含まれてもよい。さらにまた、メモリ22は、プロセッサ23で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0029】
なお、メモリ22のメモリ容量には限りがある。そこで、メモリ22には、高精度地図の保存用として、高精度地図に表される所定の広さを持つ領域に相当するデータ量を記憶することが可能なメモリ領域が設定される。そのため、高精度地図保存用のメモリ領域が一杯になると、新しい高精度地図を受信する度に、所定の順序でメモリ22に記憶されている高精度地図の一部が消去される。なお、所定の順序は、例えば、地図サーバ3からの受信順、あるいは、Least Recently Used(LRU)方式に従った順序、すなわち、ECU15へ出力されたタイミングの古い順とすることができる。
【0030】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、車両2が走行している間、地図情報管理処理を実行する。また、プロセッサ23は、通信インターフェース21を介してカメラ11から受信した画像、GPS受信機12から受信した測位情報、ECU15から受信した制御レベル情報及びルート情報などをメモリ22に記憶する。
【0031】
図4は、地図情報管理処理に関するプロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、地図範囲設定部231と、要求処理部232と、受信処理部233と、出力処理部234とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0032】
地図範囲設定部231は、車両2の現在位置から、車両2の進行方向における、メモリ22に記憶されている高精度地図で表される範囲の外縁までの距離が所定距離未満になると、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲を設定する。その際、地図範囲設定部231は、制御レベル情報で示される車両2に適用される自動運転制御のレベル及び車両2の現在位置に応じて、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲を設定する。
【0033】
本実施形態では、地図範囲設定部231は、車両2に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両2の操作を必要としないレベルである場合、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲として第1の範囲を設定する。一方、車両2に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両2の操作を必要とするレベルである場合、地図範囲設定部231は、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲として第1の範囲よりも広い第2の範囲を設定する。
【0034】
本実施形態における、ドライバによる車両2の操作を必要としない自動運転制御のレベルは、ドライバによるアクセル、ブレーキ及びステアリングの操作を必要としない運転制御のレベルであればよい。すなわち、この自動運転制御のレベルは、ドライバによる車両の周囲の監視、あるいはドライバによるステアリングの保持が要求されるレベルであってもよく、要求されないレベルでもよい。例えば、この自動運転制御のレベルは、Society of Automotive Engineers (SAE)による定義における、レベル2~レベル5の何れの自動運転制御レベルであってもよい。一方、ドライバによる車両2の操作を必要とするレベルは、ドライバによるアクセル、ブレーキ及びステアリングの少なくとも何れかの操作を必要とする運転制御のレベルとすることができる。例えば、この自動運転制御のレベルは、SAEによる定義における、レベル0またはレベル1の自動運転制御レベルとすることができる。
【0035】
地図範囲設定部231は、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲として第1の範囲を設定する場合、第1の範囲に、車両2が走行中の道路または車両2の目的地へ向かう走行予定ルートにおける車両2の進行先の所定の区間を含める。
【0036】
例えば、地図範囲設定部231は、第1の範囲に車両2が走行中の道路における所定の区間を含める場合、最新の測位情報で示される車両2の現在位置と、メモリ22に記憶されている高精度地図とを参照することで車両2が走行中の道路を特定する。具体的に、地図範囲設定部231は、高精度地図に表されている個々の道路区間のうち、車両2の現在位置を含む道路区間を、車両2が走行中の道路として特定する。
【0037】
あるいは、地図範囲設定部231は、カメラ11から受信した画像とメモリ22に記憶されている高精度地図とを照合することで、車両2が走行中の道路を特定してもよい。この場合、地図範囲設定部231は、道路標識、道路標示または縁石といった所定の地物を検出するように予め学習された識別器に画像を入力することで、画像に表された1以上の所定の地物を検出する。そして地図範囲設定部231は、カメラ11の設置位置、向き及び焦点距離を参照して、車両2の位置及び進行方向を仮定して検出した地物を高精度地図上に投影することで、検出された地物と高精度地図に表された対応する地物との一致度を算出する。地図範囲設定部231は、仮定する車両2の位置及び進行方向を変えながら、検出した地物の投影及び一致度の算出を繰り返すことで、一致度が最大となるときの車両2の位置及び進行方向を特定する。地図範囲設定部231は、特定した車両2の位置及び進行方向を、実際の車両2の位置及び進行方向として推定する。そして地図範囲設定部231は、高精度地図に表された、推定した車両2の位置を含む道路を、車両2が走行中の道路として特定する。なお、地図範囲設定部231は、識別器として、例えば、コンボリューショナルニューラルネットワーク型あるいはself attention network型のアーキテクチャを有するディープニューラルネットワーク、あるいは、サポートベクトルマシンを利用できる。識別器は、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って、検出対象となる地物が表された多数の教師画像を用いて予め学習される。
【0038】
地図範囲設定部231は、車両2が走行中の道路が自動車専用道である場合、車両2の現在位置または現在位置から車両2の進行方向に沿って所定距離先の地点を始点とし、その始点から車両2の進行方向に沿って所定の長さを有する区間を所定の区間とする。なお、所定長は、例えば、数km~数10kmの長さとすることができる。また、始点は、車両2が既に受信している高精度地図の範囲内に含まれることが好ましい。同様に、車両2が走行中の道路が一般国道または地方主要道である場合も、始点から車両2の進行方向に沿ってその道路上で所定の長さを有する区間を所定の区間とすればよい。また、車両2が走行中の道路が自動車専用道、一般国道及び地方主要道の何れでも無い場合には、車両2の現在位置から車両2の進行方向に沿って、最も直線的なルートとなる区間、あるいは、最も車線の幅が広い区間を所定の区間とすればよい。
【0039】
また、地図範囲設定部231は、第1の範囲に車両2の目的地へ向かう走行予定ルートにおける車両2の進行先の所定の区間を含める場合、ルート情報で示される走行予定ルート及び車両2の現在位置を参照することで、その所定の区間を特定すればよい。
【0040】
車両2に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両2の操作を必要としないレベルである場合、車両2は、現在走行中の道路または走行予定ルートに沿ってそのまま走行すると想定される。そこで地図範囲設定部231は、上記のように決定した、車両2が走行中の道路または車両2の目的地へ向かう走行予定ルートにおける車両2の進行先の所定の区間のみを含むように第1の範囲を設定することができる。これにより、地図サーバ3から次に受信する高精度地図で表される範囲が狭くなるので、地図情報管理装置14は、車両2の自動運転制御が継続されることを可能としつつ、地図サーバ3と無線通信端末13間の通信負荷を軽減できる。
【0041】
ただし、上記の所定の区間のみが含まれるように第1の範囲が設定されると、地図サーバ3における、高精度地図からその第1の範囲を切り出す処理が煩雑になることがある。そこで、地図範囲設定部231は、上記の所定の区間を含む、所定の形状の領域として第1の範囲を設定してもよい。この場合、所定の形状は、例えば、矩形、六角形あるいは円形とすることができる。
【0042】
ドライバによる車両2の操作を必要とするレベルの自動運転制御が適用されている場合、車両2が走行する可能性の有る道路を特定することが困難なことがある。そこで、地図範囲設定部231は、ドライバによる車両2の操作を必要とするレベルの自動運転制御が適用されている場合、上記のように設定した第1の範囲を含み、かつ、第1の範囲よりも広くなるように第2の範囲を設定する。
【0043】
その際、地図範囲設定部231は、上記の所定の形状の領域として第2の範囲を設定する。あるいは、地図範囲設定部231は、車両2の現在位置から、車両2が所定距離だけ走行して到達可能と推定される1以上の地点、より好ましくは、到達可能な全ての地点を含むように第2の範囲を設定してもよい。この場合、地図範囲設定部231は、ナビゲーション用の地図情報を参照して、車両2の現在位置から、車両2が所定距離だけ走行して到達可能と推定される1以上の地点のそれぞれを特定すればよい。例えば、車両2の現在位置が自動車専用道、高架上またはトンネル内である場合、車両2が所定距離だけ走行しても、その自動車専用道、高架またはトンネルのすぐ近くに存在する他の道路へ到達できないことがある。そこで、地図範囲設定部231は、車両2が所定距離だけ走行しても到達不能な道路は第2の範囲から外れるように、第2の範囲を設定してもよい。
【0044】
さらに、車両2がその出発地点へ戻る可能性は低いと考えられる。そこで、地図範囲設定部231は、車両2がこれまで走行してきた軌跡及びナビゲーション用の地図情報を参照して、その軌跡へ向かう道路区間を特定してもよい。そして地図範囲設定部231は、特定した道路区間が第2の範囲から外れるように、第2の範囲を設定してもよい。なお、地図範囲設定部231は、直近の一定期間内にGPS受信機12から受信した一連の測位情報で表される車両2の位置を時間順に並べたものを、車両2がこれまで走行してきた軌跡とすればよい。
【0045】
なお、地図範囲設定部231は、第1の範囲を設定する場合でも、車両2の現在位置から、車両2が所定距離だけ走行して到達不能な道路区間を第1の範囲から除外してもよい。また、地図範囲設定部231は、車両2がこれまで走行してきた軌跡へ向かう道路区間を第1の範囲から除外してもよい。
【0046】
地図範囲設定部231は、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲を設定すると、その範囲を要求処理部232へ通知する。
【0047】
要求処理部232は、地図範囲設定部231から、取得する高精度地図の範囲が通知されると、その範囲を表す情報を含む、地図サーバ3への配信要求を生成する。要求処理部232は、配信要求に、車両2の識別情報を含めてもよい。そして要求処理部232は、生成した配信要求を、通信インターフェース21を介して無線通信端末13へ出力する。これにより、地図サーバ3へ、配信要求が送信される。
【0048】
受信処理部233は、地図サーバ3から無線通信端末13及び通信インターフェース21を介して受信した高精度地図をメモリ22の高精度地図保存用のメモリ領域に書き込む。その際、受信処理部233は、そのメモリ領域の空き領域のサイズよりも、新たに受信した高精度地図のデータ量が大きい場合、既に保存されている高精度地図の何れかに新たに受信した高精度地図を上書きする。その際、受信処理部233は、メモリ22に関して説明したように、所定の順序で上書きする高精度地図を決定すればよい。
【0049】
また、受信処理部233は、直近の一定期間における車両2の走行履歴に基づいて、道路区間ごとに車両2が走行する頻度を求めてもよい。そして受信処理部233は、車両2が走行する頻度が所定の頻度閾値よりも高い道路区間を特定し、特定した道路区間を含む範囲の高精度地図については、一旦地図サーバ3から配信されると、上書きまたは消去されないように保護してもよい。この場合、受信処理部233は、メモリ22において、保護する範囲の高精度地図を保存するメモリ領域と他の範囲の高精度地図を保存するメモリ領域とを区分してもよい。そして受信処理部233は、保護する範囲の高精度地図が保存されたメモリ領域についてはLRU方式に従った順序で上書きする範囲を決定し、他のメモリ領域については地図サーバ3からの受信順で上書きする範囲を決定してもよい。
【0050】
出力処理部234は、ECU15から通信インターフェース21を介して高精度地図の取得要求を受信すると、メモリ22に保存されている高精度地図の範囲から、車両2の現在位置を含む所定の範囲を切り出してECU15へ出力する。所定の範囲は、メモリ22に保存されている高精度地図の範囲よりも狭い範囲に設定される。
【0051】
図5は、地図情報管理処理の概要を説明する図である。この例では、車両2は、道路500上を、ナビゲーション装置(図示せず)により設定された走行予定ルート501に沿って走行しているものとする。
【0052】
車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要としないレベルである場合、車両2の進路前方における、走行予定ルート501上の所定の区間501aを含むように、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲510が設定される。この例では、範囲510は、区間501a以外の道路を含まないように設定されている。しかし、点線で示されるように、範囲510は、所定の区間501aを含む所定形状(この例では矩形形状)の範囲として設定されてもよい。
【0053】
また、車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要とするレベルである場合、所定の区間501aを含み、かつ、範囲510よりも広くなるように、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲520が設定される。特に、範囲520については、車両2の進路が必ずしも特定されていないため、走行予定ルートから外れる他の道路も含まれるように設定される。ただし、道路区間503は、車両2が走行してきた軌跡502へ向かっているため、第1の範囲510及び第2の範囲520からは除外されてもよい。
【0054】
図6は、地図情報管理処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、車両2の現在位置から、車両2の進行方向における、メモリ22に記憶されている高精度地図で表される範囲の外縁までの距離が所定距離未満になると、この動作フローチャートに従って地図情報管理処理を実行する。
【0055】
プロセッサ23の地図範囲設定部231は、レベル情報を参照して、車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要とするレベルか否か判定する(ステップS101)。車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要としないレベルである場合(ステップS101-No)、地図範囲設定部231は、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲として第1の範囲を設定する(ステップS102)。一方、車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要とするレベルである場合(ステップS101-Yes)、地図範囲設定部231は、地図サーバ3から取得する高精度地図の範囲として第2の範囲を設定する(ステップS103)。
【0056】
ステップS102またはS103の後、プロセッサ23の要求処理部232は、取得する高精度地図の範囲を表す情報を含む、地図サーバ3への配信要求を生成する(ステップS104)。そして要求処理部232は、その配信要求を、通信インターフェース21を介して無線通信端末13へ出力することで、その配信要求を地図サーバ3へ送信する。
【0057】
配信要求の送信後、プロセッサ23の受信処理部233は、地図サーバ3から無線通信端末13及び通信インターフェース21を介して高精度地図を受信すると、受信した高精度地図をメモリ22の高精度地図保存用のメモリ領域に書き込む(ステップS105)。そしてプロセッサ23は、地図情報管理処理を終了する。
【0058】
次に、地図サーバ3について説明する。
図7は、地図サーバ3のハードウェア構成図である。地図サーバ3は、通信インターフェース31と、ストレージ装置32と、メモリ33と、プロセッサ34とを有する。通信インターフェース31、ストレージ装置32及びメモリ33は、プロセッサ34と信号線を介して接続されている。地図サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0059】
通信インターフェース31は、通信部の一例であり、地図サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース31は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース31は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した配信要求をプロセッサ34へわたす。また、通信インターフェース31は、プロセッサ34から受け取った高精度地図を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0060】
ストレージ装置32は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置32は、高精度地図を記憶する。ストレージ装置32に記憶される高精度地図は、車両2に配信される範囲と比較して相対的に広い範囲をカバーする。さらに、ストレージ装置32は、プロセッサ34上で実行される、地図配信処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0061】
メモリ33は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ33は、地図配信処理の実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0062】
プロセッサ34は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ34は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ34は、地図配信処理を実行する。
【0063】
図8は、地図配信処理に関連するプロセッサ34の機能ブロック図である。プロセッサ34は、配信処理部341を有する。配信処理部341は、例えば、プロセッサ34上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、配信処理部341は、プロセッサ34に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0064】
配信処理部341は、車両2から通信ネットワーク4及び通信インターフェース31を介して受信した配信要求で示される範囲を、ストレージ装置32に記憶されている高精度地図から切り出すことで、配信用の高精度地図を作成する。すなわち、配信要求で示される範囲が上記の第1の範囲である場合、配信処理部341は、その第1の範囲をストレージ装置32に記憶されている高精度地図から切り出す。また、配信要求で示される範囲が上記の第2の範囲である場合、配信処理部341は、その第2の範囲をストレージ装置32に記憶されている高精度地図から切り出す。
【0065】
配信処理部341は、切り出した範囲の高精度地図を、通信インターフェース31及び通信ネットワーク4を介して車両2へ送信する。
【0066】
図9は、地図サーバ3における、地図配信処理の動作フローチャートである。地図サーバ3のプロセッサ34は、車両2から配信要求を受信すると、以下に示される動作フローチャートに従って地図配信処理を実行すればよい。
【0067】
プロセッサ34の配信処理部341は、ストレージ装置32に記憶されている高精度地図から、受信した配信要求で示される範囲を切り出す(ステップS201)。そして配信処理部341は、切り出した範囲の高精度地図を、通信インターフェース31及び通信ネットワーク4を介して車両2へ送信する(ステップS202)。そしてプロセッサ34は、地図配信処理を終了する。
【0068】
以上に説明してきたように、この地図情報管理装置は、車両に搭載され、車両に適用される自動運転制御のレベル及び車両の位置に応じて、地図サーバから取得する、高精度地図において表される範囲を設定する。そのため、この地図情報管理装置は、地図サーバから受信する地図情報において表される範囲を適切に設定することができる。
【0069】
変形例によれば、地図範囲設定部231は、車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要としないレベルであっても、そのレベルまたは車両2が走行中の道路に応じて配信を要求する範囲を変更してもよい。
【0070】
例えば、車両2に適用される自動運転制御のレベルが、SAEの定義によるレベル3相当のレベルである場合、運転制御の主体がドライバに移管されることがある。また、車両2が走行中の道路が一般道である場合、車両2が走行中の道路と交差し、あるいは分岐する他の道路が複数存在することがある。このような場合、運転制御の主体がドライバに移管された後に車両2が走行予定ルートと異なるルートを進む可能性がある。そこで、車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要とせず、ドライバに制御主体が移管される可能性が有るレベルであり、かつ、車両2が走行中の道路が一般道である場合、地図範囲設定部231は第2の範囲を設定してもよい。
【0071】
一方、車両2が走行中の道路が自動車専用道である場合、その道路と交差または分岐する他の道路は存在しないか、存在してもその数は限られる。そのため、ドライバに制御主体が一旦移管されても、その後に制御主体がECU15に戻るまで、車両2は同じ道路を走行し続ける可能性が高い。そこで、車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両2の操作を必要とせず、かつ、ドライバに制御主体が移管される可能性が有るレベルでも、車両2が走行中の道路が自動車専用道であれば、地図範囲設定部231は第1の範囲を設定する。なお、この場合において、ドライバに制御主体が移管されてから所定期間が経過しても、制御主体がECU15に戻らない場合、地図範囲設定部231は、第2の範囲を設定し、要求処理部232は、第2の範囲の高精度地図の配信を地図サーバ3へ要求してもよい。なお、車両2に適用される自動運転制御のレベルが、ドライバによる車両2の操作を必要とせず、かつ、ドライバに制御主体が移管される可能性が無いレベルである場合には、地図範囲設定部231は、上記の実施形態と同様に、第1の範囲を設定すればよい。ドライバによる車両2の操作を必要とせず、かつ、ドライバに制御主体が移管される可能性が無いレベルは、例えば、SAEの定義によるレベル4またはレベル5相当の自動運転レベルとすることができる。
【0072】
この変形例によれば、地図情報管理装置14は、地図サーバ3へ配信を要求する高精度地図の範囲をより適切に設定することができる。
【0073】
他の変形例によれば、車両2の地図情報管理装置14のプロセッサ23により実行される地図範囲設定部231の処理は、地図サーバ3のプロセッサ34により実行されてもよい。この場合、地図情報管理装置14の要求処理部232は、配信要求に、車両2の現在位置及びレベル情報を含めればよい。さらに、要求処理部232は、配信要求に、車両2の走行予定ルート他、配信が要求される地図の範囲の設定に利用される各種の情報を含めてもよい。そして地図サーバ3のプロセッサ34が有する地図範囲設定部231は、配信要求に含まれるそれらの情報を参照して、上記の実施形態または変形例と同様に配信する高精度地図の範囲を設定し、設定した範囲を配信処理部に通知すればよい。
この変形例においても、地図情報管理装置は、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、地図範囲設定部231の処理が地図サーバ3により実行される場合、地図範囲設定部231は、配信する高精度地図の範囲として第2の範囲を設定する場合、多数の車両の走行軌跡を参照して、配信対象となるその第2の範囲を設定してもよい。この場合、地図配信システム1には、複数の車両2が含まれる。複数の車両2のそれぞれは、配信要求にその車両の走行軌跡を表す情報を含める。そして地図サーバ3は、複数の車両2の何れかから走行軌跡を表す情報を受信する度に、受信した情報をストレージ装置32に保存する。この変形例では、ストレージ装置32に記憶されている高精度地図に表される領域は複数の区画に分割される。地図範囲設定部231は、区画ごとに、その区画を通る走行軌跡の数と、その区画に隣接する他の区画のそれぞれについて、その区画から他の区画へ向かう走行軌跡の数とを計数する。さらに、地図範囲設定部231は、区画ごとに、その区画を通る走行軌跡の数に対する、その区画に隣接する他の区画のそれぞれについて、その区画から他の区画へ向かう走行軌跡の数の比を、進行確率として算出する。そして地図範囲設定部231は、配信要求を送信した車両2の現在位置を含む区画に隣接する他の区画のうち、進行確率が所定の閾値以上となる他の区画を含むように第2の範囲を設定すればよい。この変形例によれば、地図サーバ3は、高精度地図の配信を要求する車両2に適用される自動運転制御のレベルがドライバによる車両の操作が必要とされるレベルであっても、車両2が走行する可能性が高い領域を配信する高精度地図の範囲に含めることができる。
【0075】
上記の実施形態または変形例による地図情報管理装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0076】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 地図配信システム
2 車両
11 カメラ
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 地図情報管理装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
231 地図範囲設定部
232 要求処理部
233 受信処理部
234 出力処理部
3 地図サーバ
31 通信インターフェース
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 プロセッサ
341 配信処理部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局