(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164830
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】マイクロトルクコンバータのためのクロージャ
(51)【国際特許分類】
F16H 41/24 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
F16H41/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078632
(22)【出願日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】18/197,362
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン オルセン
(72)【発明者】
【氏名】エリック アルトゥーロ バスケス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル アレハンドロ レイナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】性能を改善させながら製造及び良好な組み立て効率を提供するトルクコンバータアセンブリのための改善された構成を提供する。
【解決手段】筒状体を含むカバーと、シェルを含むポンプとを有するトルクコンバータアセンブリ。ポンプのシェルは、カバーの筒状体の中に受容され、ポンプのシェルは、円周溶接部でカバーに接合される。カバーの筒状体は、周方向に延在する溝を含むことができ、円周溶接部は、溝と軸方向に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータアセンブリであって、
筒状体を含むカバーと、
シェルを含むポンプと、を備え、
前記ポンプの前記シェルが、前記カバーの前記筒状体に受容されており、
前記ポンプの前記シェルが、円周溶接部で前記カバーに接合されている、トルクコンバータアセンブリ。
【請求項2】
前記カバーの前記筒状体が、周方向に延在する溝を含み、前記円周溶接部が、前記溝と軸方向に少なくとも部分的に位置合わせされている、請求項1に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項3】
前記溝が、0.5mm~1.5mmの径方向の深さを有する、請求項2に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項4】
前記ポンプの前記シェルが、周方向に延在するフランジを含み、前記円周溶接部が、前記フランジと前記カバーの前記筒状体との間に延在する、請求項3に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項5】
前記フランジが、前記溝と前記軸方向に少なくとも部分的に位置合わせされている、請求項4に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項6】
前記溝が、前記フランジの軸方向長さよりも大きい軸方向長さを有する、請求項5に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項7】
前記フランジが、前記フランジの前記軸方向長さに対して前記軸方向に沿って中心に置かれている、請求項6に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項8】
前記溝が、約7mm~11mmの軸方向長さを有する、請求項7に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項9】
前記溝の前記軸方向長さに対する前記フランジの前記軸方向長さの比が、約0.5~1の範囲を有する、請求項1に記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項10】
トルクコンバータアセンブリを作製する方法であって、前記方法が、
筒状体を含むカバーを提供することと、
シェルを含むポンプを提供することと、
前記筒状体の内径又は前記ポンプの前記シェルの外径のうちの少なくとも一方を機械加工することと、
前記カバーの前記筒状体の中に前記ポンプの前記シェルを位置決めすることと、
それらの間に溶接部を形成するように、溶接によって前記ポンプの前記シェルを前記カバーに接合することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記カバーの前記筒状体の径方向外面に周方向に延在する溝を形成し、かつ前記溝内で少なくとも部分的に溶接することによって前記ポンプの前記シェルを前記カバーに接合することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溝が、前記溝の径方向に0.5mm~1.5mmの深さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポンプの前記シェルが、周方向に延在するフランジを含み、前記溶接部が、前記フランジと前記カバーの前記筒状体との間に延在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フランジを前記溝と軸方向に少なくとも部分的に位置合わせすることを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溝が、前記フランジの軸方向長さよりも大きい軸方向長さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フランジが、前記フランジの前記軸方向長さに対して前記軸方向に沿って中心に置かれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溝が、約7mm~11mmの軸方向長さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記溝の軸方向長さに対する前記フランジの軸方向長さの比が、約0.5~1の範囲を有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トルクコンバータを対象とし、より詳細には、マイクロトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータアセンブリはよく知られている。トルクコンバータアセンブリは、概して、ロックアップクラッチなどの内部構成要素を密閉するフロントカバー及びポンプカバーを含む。
【0003】
トルクコンバータアセンブリの様々な構成要素間の接続は、複雑であり、かなりの人件費及び組み立て時間を必要とすることがある。
【0004】
それゆえに、性能を改善させながら製造及び組み立て効率を提供するトルクコンバータアセンブリのための改善された構成を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
カバーハウジングと、カバーの中に受容されたポンプとを有するトルクコンバータアセンブリであって、ポンプが、カバーに直接溶接されている、トルクコンバータアセンブリ。
【0006】
一態様によれば、トルクコンバータアセンブリは、筒状体を含むカバーと、シェルを含むポンプとを備える。ポンプのシェルは、カバーの筒状体の中に受容されており、ポンプのシェルは、円周溶接部でカバーに接合されている。
【0007】
カバーの筒状体は、周方向に延在する溝を含むことができ、円周溶接部は、溝と軸方向に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。溝は、0.5mm~1.5mmの径方向の深さを有することができる。ポンプのシェルは、周方向に延在するフランジを含むことができ、円周溶接部は、フランジとカバーの筒状体との間に延在し得る。フランジは、溝と軸方向に少なくとも部分的に位置合わせすることができる。溝は、フランジの軸方向長さよりも大きい軸方向長さを有することができる。フランジは、フランジの軸方向長さに対して軸方向に沿って中心に置くことができる。溝は、約7mm~11mmの軸方向長さを有することができる。溝の軸方向長さに対するフランジの軸方向長さの比は、約0.5~1の範囲を有することができる。
【0008】
別の態様によれば、トルクコンバータアセンブリを作製する方法は、筒状体を含むカバーを提供することと、シェルを含むポンプを提供することと、筒状体の内径又はポンプのシェルの外径のうちの少なくとも一方を機械加工することと、ポンプのシェルをカバーの筒状体の中に位置決めすることと、間に溶接部を形成するように、溶接によってポンプのシェルをカバーに接合することと、を含む。
【0009】
本方法は、カバーの筒状体の径方向外面に、周方向に延在する溝を形成し、かつ溝内で少なくとも部分的に溶接することによってポンプのシェルをカバーに接合することを含むことができる。溝は、溝の径方向に0.5mm~1.5mmの深さを有することができる。ポンプのシェルは、周方向に延在するフランジを含むことができ、溶接部は、フランジとカバーの筒状体との間に延在し得る。溝は、フランジの軸方向長さよりも大きい軸方向長さを有することができる。溝は、約7mm~11mmの軸方向長さを有することができる。溝の軸方向長さに対するフランジの軸方向長さの比は、約0.5~1の範囲を有することができる。
【0010】
本方法は、フランジを溝と軸方向に少なくとも部分的に位置合わせすること、及び/又はフランジをフランジの軸方向長さに対して軸方向に沿って中心に置くことを含むことができる。
【0011】
更なる実施形態が本明細書に開示される。
【0012】
前述の概要及び以下の詳細な説明は、本開示の好ましい実施形態を示す添付図面と併せて読むと、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】先行技術のトルクコンバータアセンブリのある特定の構成要素の分解斜視図である。
【
図2】組み立てられた状態の
図1のトルクコンバータアセンブリの構成要素の断面図である。
【
図4】本開示による例示的なトルクコンバータアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、ある特定の用語が便宜的にのみ使用されており、限定的なものではない。「前」、「後」、「上」、及び「下」という用語は、参照される図面における方向を称する。「内向きに」及び「外向きに」という用語は、図面で参照される部品に向かう方向及び部品から離れる方向を指す。「軸方向に」は、シャフトの軸に沿った方向を指す。「a、b、又はcのうちの少なくとも1つ」と引用されている項目のリストへの言及(a、b、及びcがリスト化されている項目を表す)は、項目a、b、若しくはcのうちのいずれか1つ、又はそれらの組み合わせを意味する。用語には、上記で具体的に述べた語、その派生語、及び類似の重要な語が含まれる。
【0015】
図1には、簡略化された先行技術のトルクコンバータアセンブリ10が分解された状態で示されている。簡略化されたトルクコンバータアセンブリ10は、カバー14と、ポンプ18と、溶接リング22とを含む。例解の簡略化されたトルクコンバータアセンブリ10は、本開示に関連する構成要素のみを含むが、当業者には、クラッチアセンブリなどの他の追加の構成要素(図示せず)が、典型的には、完全なトルクコンバータアセンブリ10を構成することになることが認識されよう。
【0016】
図2及び
図3において、先行技術の簡略化されたトルクコンバータアセンブリ10は、典型的には、まず溶接リング22をポンプ18に溶接部26でMIG溶接し、次いでポンプ18及び溶接リング22をカバー14内に位置決めすることによって組み立てられることが理解されよう。次いで、溶接リング22は、溶接部28によってカバー14に接合される。
【0017】
図4及び
図5を参照すると、本開示による例示的なトルクコンバータアセンブリのある特定の構成要素が例解されている。トルクコンバータアセンブリは、概して参照符号50で示されており、カバー54と、シェル又はハウジング60を有するポンプ58とを含む。
図1~
図3のトルクコンバータアセンブリ10とは異なり、
図4及び
図5では、溶接リングは存在せず、ポンプ58は、溶接部62を介してカバー54に直接溶接されている。例解のトルクコンバータアセンブリ50は、本開示に関連する構成要素のみを含むが、当業者には、クラッチアセンブリ、ポンプブレード及びコアなどの他の追加の構成要素(図示せず)が、典型的には、完全なトルクコンバータアセンブリ10を構成することになることが認識されよう。したがって、ポンプシェルが、概して、ポンプブレードがトルク伝達のために支持される内部容積を画定することが理解されよう。
【0018】
カバー54は、径方向外面66と径方向内面68とを有する略筒状体64を含む。ポンプ58のシェル60は、カバー54の径方向内面68に当接するように適合された径方向外面72を有する周方向に延在するフランジ70を含む。カバー54の径方向外面66は、およそフランジ70の軸方向長さの軸方向(
図4のA-A)の長さを有する周方向溝又はアンダーカット74を含む。一実施例では、アンダーカット74は、約0.5mm~1.5mmの深さを有し、一構成形態では、約0.95mmの深さであり、約7mm~11mmの軸方向長さを有し、一構成形態では、約9mmの軸方向長さであり、一方、フランジ70は、約4mm~8mmの軸方向長さを有し、一構成形態では、約6.3mmの軸方向長さを有している。フランジ70は、アンダーカット74と軸方向に概して位置合わせされている(例えば、軸方向に沿って同一の広がりを有する)。いくつかの実施例では、アンダーカット74の軸方向長さに対するフランジ70の軸方向長さの比は、約0.5~1の範囲であり、一構成形態では、約0.7である。ある特定の実施例では、フランジ70は、アンダーカット74がフランジ70の各軸方向端部を越えて軸方向に延在するように、アンダーカット74に対して軸方向に中心に置かれている。いくつかの実施例では、径方向におけるカバー54の厚さに対するアンダーカット74の深さの比は、約2~4であり、一構成形態では、約3.2である。
【0019】
カバー54及びポンプ58は、別個の構成要素として製造される。典型的には、カバー54の内径及びポンプ58の径方向外面72は、ポンプ58がカバー54内に緊密に受容されるように機械加工されている。そのため、ポンプ58のフランジ70は、カバー54の初期内径を超える初期外径を有することができる。次いで、構成要素は、クリアランスのために機械加工される。
【0020】
トルクコンバータアセンブリ50を組み立てるために、機械加工されたポンプ58は、機械加工されたカバー54内に位置決めされる。ポンプ58の外径は、ポンプ58がカバー54内に緊密に受容され、フランジ70がカバー54の径方向内面68に当接又は至近に隣接するように、カバー54の内径に緊密に合致している。次いで、カバー54をポンプ58に固定するために溶接部62が形成される。一実施例では、カバー54をポンプ58に溶接するために、レーザ溶接プロセスが使用される。例示的なレーザ溶接部は、レーザエネルギーをカバー54とポンプ58との間の界面に向けて構成要素を加熱し、溶接部62を生成することによって形成することができる。本開示の範囲から逸脱することなく、溶接部62を形成するために広範囲の溶接技術を用いることができる。
【0021】
トルクコンバータアセンブリは、典型的には、原動機に結合されるように構成されていることを理解されたい。例解の例示的なトルクコンバータアセンブリ50は、例えば、電気車両のeモータのハウジングなどのハウジング内に少なくとも部分的に受容され、eモータから車両の他のドライブトレイン構成要素にトルクを伝達するためにハウジングに動作可能に結合されるように構成されている。そのため、カバー54の径方向外面66の寸法は、その後の設備中にeモータのハウジングとの適切な嵌合を確実にするために均一であるべきである。したがって、溶接プロセスから生じるあらゆる変形は、カバー54の径方向外面66がeモータのハウジングと嵌合するためのその形状を維持するように、アンダーカット74内に軸方向及び/又は径方向に封じ込められる。
【0022】
本開示の態様は、先行のアセンブリと比較して、応力領域がより大きい領域にシフトされるので、耐久性の改善をもたらす。加えて、構成要素の撓みが低減されることが示されている。
【0023】
このように本実施形態を詳細に説明してきたが、多くの物理的な変更は、そのうちのいくつかのみが本開示の詳細な説明に例示されているが、実施形態内に具現化されている本発明の概念及び原理を変更することなく行うことができることが理解され、かつ当業者には明らかであろう。
【0024】
また、好ましい実施形態の一部のみを組み込んだ多数の実施形態が可能であり、これらの部分に関しては、実施形態内で具現化された本発明の概念及び原理を変更しないことを理解されたい。
【0025】
したがって、本実施形態及び任意選択的な構成は、全ての点において例示的及び/又は説明的なものであり、制限的なものではないとみなされ、本開示の範囲は、前述の明細書ではなく、添付の特許請求の範囲によって示されるものであり、したがって、当該特許請求の範囲の目的及びその等価物の範囲内に入る全ての代替の実施形態及び本実施形態への変更は、当該特許請求の範囲に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0026】
10 トルクコンバータアセンブリ
14 カバー
18 ポンプ
22 溶接リング
26 ポンプ溶接部
28 溶接部
50 トルクコンバータアセンブリ
54 カバー
58 ポンプ
60 シェル/ハウジング
62 溶接部
64 筒状体
66 カバーの外面
68 カバーの内面
70 フランジ
72 フランジの径方向外面
74 アンダーカット/溝
【外国語明細書】